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特許7594706印刷インキ組成物、積層体、包装材、及び建装材
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  • 特許-印刷インキ組成物、積層体、包装材、及び建装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】印刷インキ組成物、積層体、包装材、及び建装材
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20241127BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20241127BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20241127BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20241127BHJP
   C09C 1/64 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/08
C09D11/102
C09D11/106
C09C1/64
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024097601
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】目黒 貴彦
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139582(WO,A1)
【文献】特開2002-309148(JP,A)
【文献】特開2005-272568(JP,A)
【文献】特開2018-162421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)(但し、ロジン誘導体(C)を除く)と、アルミニウム微粒子(B)と、ロジン誘導体(C)と、溶媒(D)と、を含む印刷インキ組成物であって、
前記バインダー樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、及びフッ素変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記ロジン誘導体(C)がロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、水添ロジン、重合ロジン、及びテルペンフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対する前記アルミニウム微粒子(B)の含有量が9~29質量%であり、
前記アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径が5~20μmであり、
前記ロジン誘導体(C)の酸価が20mgKOH/g以上であり、
前記アルミニウム微粒子(B)に対する前記バインダー樹脂(A)の質量比は、2~9であり、
前記ロジン誘導体(C)に対する前記アルミニウム微粒子(B)の質量比は、1.43~10である、印刷インキ組成物。
【請求項2】
前記アルミニウム微粒子(B)の表面が(メタ)アクリル樹脂、脂肪酸、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種により処理されている、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記ロジン誘導体(C)がロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及びテルペンフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記ロジン誘導体(C)の酸価が250mgKOH/g以下である、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項4】
以下の測定方法により測定される、保管前の印刷層の光学濃度(保管前OD値)と、保管後の印刷層の光学濃度(保管後OD値)が以下の式1を満たす、請求項1に記載の印刷インキ組成物。
保管前OD値-保管後OD値≦0.25 式1
[測定方法]
前記印刷インキ組成物を、粘度がザーンカップ#3で25℃において16秒となるように調整した粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管前OD値とする。前記粘度調整印刷インキ組成物を容器に入れて、前記容器を20℃の恒温室に1か月間保管した後に、前記容器を振とうし、保管後の粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管後OD値とする。
【請求項5】
グラビア印刷用である請求項1~のいずれか1項に記載の印刷インキ組成物。
【請求項6】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に、請求項に記載の印刷インキ組成物を用いて形成された印刷層と、を備える、積層体。
【請求項7】
請求項に記載の積層体を備える包装材。
【請求項8】
請求項に記載の積層体を備える建装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ組成物、積層体、包装材、及び建装材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材や建装材に用いられるフィルム等の基材には、情報伝達やデザイン及び機能の付与を目的として印刷が施される。また、さらなる意匠性、高級感を与えるために光輝性の顔料を分散した印刷インキが印刷されることがある。光輝性の顔料としては一般的に、安価で加工が容易な平板状のアルミニウム微粒子が用いられる。また、アルミニウム微粒子を分散した印刷インキは遮光性にも優れ、意匠性だけでなく内容物の保護や光の遮断を目的として使用されることもある。グラビア印刷やフレキソ印刷などの方法に適した粘度とするため、印刷インキには溶媒が含まれるが、アルミニウム微粒子は、比重が高いため、印刷インキ中で沈降しやすいという問題がある。
【0003】
また、印刷インキとして使用後に残るいわゆる残肉と呼ばれる印刷インキは、廃棄されることもあるが、コストダウンや廃棄物量低減のために再利用することが求められている。アルミニウム微粒子が含まれる印刷インキは、アルミニウム微粒子の高い比重に加え、使用後に残る残肉では、粘度が低下することにより、アルミニウム微粒子の沈降がさらに発生しやすいという問題がある。なお、ジャイロミキサー等を用いた機械撹拌により、残肉中の沈降したアルミニウム微粒子を再分散させることは考えられるが、時間及びコスト等の観点から効率的ではなく、例えば、人の手による比較的弱い振とうのみで再分散可能な印刷インキが求められている。
【0004】
特許文献1には、アルミニウム粒子と、有機溶剤と、バインダー樹脂としてポリアミド樹脂及びセルロース樹脂を特定の割合で含む表刷り用グラビアインキが開示されている。前記グラビアインキでは、アルミニウム粒子の沈降が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-59806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のグラビアインキのアルミニウム微粒子の再分散性は充分ではない。また、再分散性と、得られる印刷層の基材との密着性、隠蔽性、及び耐熱性との両立についてはいまだ充分な検討がなされていない。
本発明は、アルミニウム微粒子の再分散性に優れ、かつ得られる印刷層の基材との密着性、隠蔽性、及び耐熱性に優れる印刷インキ組成物、前記印刷インキ組成物を含む印刷インキ、前記印刷インキを用いて形成された印刷層を有する積層体、並びに前記積層体を含む包装材及び建装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] バインダー樹脂(A)と、アルミニウム微粒子(B)と、ロジン誘導体(C)と、溶媒(D)と、を含む印刷インキ組成物であって、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対する前記アルミニウム微粒子(B)の含有量が9~29質量%であり、前記アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径が5~20μmであり、前記ロジン誘導体(C)の酸価が20mgKOH/g以上であり、前記アルミニウム微粒子(B)に対する前記バインダー樹脂(A)の質量比は、2~9であり、前記ロジン誘導体(C)に対する前記アルミニウム微粒子(B)の質量比は、1.43~10である、印刷インキ組成物。
[2] 前記アルミニウム微粒子(B)の表面が(メタ)アクリル樹脂、脂肪酸、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種により処理されている、[1]に記載の印刷インキ組成物。
[3] 前記バインダー樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、及びフッ素変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の印刷インキ組成物。
[4] 前記ロジン誘導体(C)がロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及びテルペンフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記ロジン誘導体(C)の酸価が250mgKOH/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
[5] 以下の測定方法により測定される、保管前の印刷層の光学濃度(保管前OD値)と、保管後の印刷層の光学濃度(保管後OD値)が以下の式1を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
保管前OD値-保管後OD値≦0.25 式1
[測定方法]
前記印刷インキ組成物を、粘度がザーンカップ#3で25℃において16秒となるように調整した粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管前OD値とする。前記粘度調整印刷インキ組成物を容器に入れて、前記容器を20℃の恒温室に1か月間保管した後に、前記容器を振とうし、保管後の粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管後OD値とする。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の印刷インキ組成物を含む印刷インキ。
[7] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に、[6]に記載の印刷インキを用いて形成された印刷層と、を備える、積層体。
[8] [7]に記載の積層体を備える包装材。
[9] [7]に記載の積層体を備える建装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によればアルミニウム微粒子の再分散性に優れ、かつ得られる印刷層の基材との密着性、隠蔽性、及び耐熱性に優れる印刷インキ組成物、前記印刷インキ組成物を含む印刷インキ、前記印刷インキを用いて形成された印刷層を有する積層体、並びに前記積層体を含む包装材及び建装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
「固形分」とは、印刷インキ組成物(印刷インキ)に含まれる成分のうち、水や有機溶剤等の揮発する媒体を除いた成分を指し、最終的に印刷層を形成することになる成分であり、具体的にはJIS K 5601-1-2:2008に準拠して測定したものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル樹脂」とは、「アクリル樹脂」及び「メタクリル樹脂」の総称である。「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。「(メタ)アクリルアミド」とは、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の総称である。
樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121:2012に準拠し、以下のようにして測定される。示差走査熱量計を用い、樹脂10mgを-100℃から160℃まで、20℃/分の条件で昇温させて得られる曲線(DSC曲線)におけるベースラインと吸熱カーブの接線との交点からガラス転移温度を求める。
樹脂の軟化点は、JIS K 5601-2-2:1999に準拠した環球法により測定できる。
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に準拠した中和滴定法により測定できる。
樹脂のアミン価は、アミン価とは、試料1g中に含まれる1級、2級及び3級アミンを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいう。ASTM D2074に準拠して測定できる。
【0011】
≪印刷インキ組成物≫
本発明の一実施形態に係る印刷インキ組成物は、バインダー樹脂(A)と、アルミニウム微粒子(B)と、ロジン誘導体(C)と、溶媒(D)と、を含む。
印刷インキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じてバインダー樹脂(A)、アルミニウム微粒子(B)、ロジン誘導体(C)、及び溶媒(D)以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0012】
<バインダー樹脂(A)>
本発明に用いるバインダー樹脂(A)としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、及びフッ素変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂がより好ましく、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂の両方を含むことがさらに好ましい。
【0013】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単位を含む樹脂である。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート以外の単量体との共重合体などが挙げられる。また、(メタ)アクリル樹脂としては、ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂、シリコーン変性(メタ)アクリル樹脂等も含まれる。ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂としては、多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物、又は多価イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物などが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂を構成する全ての単量体単位の総質量に対する(メタ)アクリレート単位の割合は、10~100質量%が好ましく、20~100質量%がより好ましい。 これらの(メタ)アクリル樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン等の不飽和カルボン酸;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
アクリル樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)は、5~105℃が好ましく、10~80℃がより好ましく、15~60℃がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂のTgが上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性が向上しやすい。(メタ)アクリル樹脂のTgが上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)、10,000~200,000が好ましく、20,000~150,000がより好ましく、30,000~120,000がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂のMwが上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性が向上しやすい。(メタ)アクリル樹脂のMwが上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0018】
(メタ)アクリル樹脂としては、市販品を用いてもよい。
(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、例えば大成ファインケミカル社製の「アクリット」シリーズ、三菱ケミカル社製の「ダイヤナール」シリーズが挙げられる。
【0019】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物であり、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドが挙げられる。
多塩基酸としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,4- シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。また、これら多塩基酸に加えて、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
多価アミンとしては、例えばポリアミンなどが挙げられる。ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン;キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。また、これら多価アミンに加えて、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等の一級又は二級モノアミンを併用することもできる。
【0020】
ポリアミド樹脂の具体例としては、植物性材料から作られる脂肪酸や、それを原料とした重合脂肪酸を用いた熱可塑性ポリアミド樹脂が一般的である。植物を原材料とする脂肪酸の代表例として、トール油、大豆油、やし油、パーム油、カシューナッツオイル、米ぬか、カカオ豆などが挙げられる。一方、重合脂肪酸としては、ダイマー酸やそれを水素還元した水添ダイマー酸などが挙げられる。
これらのポリアミド樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリアミド樹脂のMwは、2,000~50,000が好ましく、2,500~30,000がより好ましく、3,000~10,000がさらに好ましい。ポリアミド樹脂のMwが上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐摩擦性や耐熱性が向上しやすい。ポリアミド樹脂のMwが上記上限値以下であると、溶媒(D)への溶解性が向上しやすい。
【0022】
ポリアミド樹脂の酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下がさらに好ましい。ポリアミド樹脂の酸価が上記上限値以下であると、印刷インキの安定性が向上しやすい。
ポリアミド樹脂のアミン価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0023】
ポリアミド樹脂の軟化点は、80~140℃が好ましく、90~135℃がより好ましく、95~130℃がさらに好ましい。ポリアミド樹脂の軟化点が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐熱性や耐ブロッキング性が向上しやすい。ポリアミド樹脂の軟化点が上記上限値以下であると、基材に対する密着性が向上しやすい。
【0024】
ポリアミド樹脂としては、市販品を用いてもよい。
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば花王社製の「レオマイド」シリーズ、ハリマ化成社製の「ニューマイド」シリーズ、T&K TOKA社製の「トーマイド」シリーズ、エアープロダクツジャパン社製の「サンマイド」シリーズ、築野食品工業社製の「ベジケムグリーン」シリーズが挙げられる。
【0025】
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、セルロース、及びセルロースが有する水酸基の少なくとも一部が他の基に置換されたセルロース誘導体等が挙げられ、セルロース誘導体が好ましい。セルロース誘導体としては、例えば、ニトロセルロース(ニトロ基置換体);セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレート等の低級アシル基置換体;メチルセルロース及びエチルセルロース等の低級アルキル基置換体;ベンジルセルロース等のアラルキル基置換体;並びにヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシメチルプロピルセルロース等のヒドロキシアルキル基を有するセルロース誘導体等を挙げることができ、ニトロセルロースが好ましい。
これらのセルロース系樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
ニトロセルロースのJIS K 6703:1995に準拠した粘度測定によって規定される種類及び粘度記号は、H1/8、H1/4、H1/2、H1、H2又はH20が好ましく、H1/4、H1/2、H1、H2又はH20がより好ましく、H1/2、H1、H2又はH20がさらに好ましい。前記種類及び粘度記号がH1/8より高粘度のニトロセルロース(硝化綿)であると、印刷インキ組成物より形成される印刷層の耐摩擦性、耐熱性、耐ブロッキング性が向上しやすい。前記種類及び粘度記号がH20より低粘度の硝化綿であると、印刷インキ組成物の安定性や、印刷層の基材に対する密着性、耐もみ性が向上しやすい。なお、ニトロセルロースの種類がLであると、印刷インキ組成物に対する相溶性が低下することがある。すなわち、ニトロセルロースの種類がHであると、印刷インキ組成物に対する相溶性が向上しやすい。
【0027】
前記種類は、ニトロセルロース中の窒素分に応じて規定される。
窒素分が10.7%以上、11.5%未満であるニトロセルロースの場合、種類はLとなる。
窒素分が11.5%以上、12.2%以下であるニトロセルロースの場合、種類はHとなる。
前記種類及び粘度記号は、所定の固形分濃度におけるニトロセルロース溶液中で、所定の鋼球が標線間を落下する時間(落下時間)に応じて規定される。
前記種類及び粘度記号がH1/8であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が1.6~2.9秒である。
前記種類及び粘度記号がH1/4であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が3.0~8.9秒である。
前記種類及び粘度記号がH1/2であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が3.0~4.9秒である。又は、固形分濃度が25質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が9.0~22.0秒である。
前記種類及び粘度記号がH1であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が5.1~9.0秒である。
前記種類及び粘度記号がH2であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が12.2質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が1.5~2.5秒である。又は、固形分濃度が20質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が15.0~40.0秒である。
前記種類及び粘度記号がH20であるニトロセルロースの場合、固形分濃度が12.2質量%であるニトロセルロース溶液中での鋼球の落下時間が16.0~24.0秒である。
これらのニトロセルロースは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
ニトロセルロースとしては、市販品を用いてもよい。
ニトロセルロースの市販品としては、例えばキミア社製の「RS」シリーズが挙げられる。
【0029】
(フッ素変性ポリオレフィン樹脂)
フッ素変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン性の不飽和結合を有する炭化水素単量体が重合して得られた樹脂において、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された樹脂が挙げられる。すなわち、フッ素変性ポリオレフィン樹脂の単量体としては、例えば、フッ素化オレフィン、エチレン性不飽和結合を有するオレフィン以外のフッ素化化合物が挙げられる。フッ素化オレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等を上げることができるが、これらに限られない。またエチレン性不飽和結合を有するフッ素化化合物としてはエチレン性炭化水素類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類において、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された樹脂が挙げられる。さらにこれらの単量体に加え、非フッ素のオレフィン、エチレン性不飽和結合を有するオレフィン以外の化合物を共重合させてもよい。
【0030】
上記のフッ素化オレフィンやエチレン性不飽和結合を有するオレフィン以外のフッ素化化合物は、いずれも1種又は2種以上が使用されていてもよい。
これらのフッ素変性ポリオレフィン樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0031】
フッ素変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いてもよい。
フッ素変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えばAGC社製の「ルミフロン」シリーズ、ダイキン工業社製の「ゼッフル」シリーズが挙げられる。
【0032】
<アルミニウム微粒子(B)>
アルミニウム微粒子(B)は、光輝性の顔料として機能する。アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径は、5~20μmであり、5.5~19μmが好ましく、6~18μmがより好ましい。アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径が上記下限値以上であると、得られる印刷物の透過濃度が上がり、隠蔽性が向上しやすい。アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径が上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。
アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径は、レーザー回折・光散乱法によって測定される体積基準の累積50%粒子径である。
【0033】
アルミニウム微粒子(B)の表面は、(メタ)アクリル樹脂、脂肪酸、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種により処理されていることが好ましい。すなわち、アルミニウム微粒子(B)は表面に(メタ)アクリル樹脂、脂肪酸、及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる被覆層を有することが好ましい。このようなアルミニウム微粒子(B)を用いることにより、経時での発色安定性に優れた印刷インキ組成物を得ることができる。これらのアルミニウム微粒子(B)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
アルミニウム微粒子(B)の表面処理に用いられる(メタ)アクリル樹脂としては、上述のバインダー(A)で説明した(メタ)アクリル樹脂と同様である。これらの(メタ)アクリル樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
アルミニウム微粒子(B)の表面処理に用いられる脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸いずれでもよく、炭素数は12~22が好ましい。飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等が挙げられる。不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、エルカ酸、リシノール酸が挙げられる。これらの脂肪酸は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
アルミニウム微粒子(B)の表面処理に用いられるシリカとしては、天然品及び合成品のいずれでもよく、合成法としては、乾式法及び湿式法のいずれでもよい。乾式法としては、燃焼法及びアーク法、湿式法としては、沈降法及びゲル法が挙げられる。また、結晶性及び非結晶性のいずれでもよく、疎水性及び親水性のいずれであってもよい。これらのシリカは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0037】
<ロジン誘導体(C)>
本実施形態の印刷インキ組成物がロジン誘導体(C)を含むことにより、印刷インキ組成物におけるアルミニウム微粒子(B)の再分散性が向上しやすい。また、印刷層をアルカリ溶液などで脱離させ、基材を再利用する場合に、印刷層の脱離が促進されやすい。
ロジン誘導体(C)としては、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、水添ロジン、重合ロジン、テルペンフェノール樹脂が挙げられ、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
これらのロジン誘導体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ロジン誘導体(C)の酸価は、20mgKOH/g以上であり、20~330mgKOH/gが好ましく、20~300mgKOH/gがより好ましく、22~250mgKOH/gがさらに好ましく、25~220mgKOH/gが特に好ましい。ロジン誘導体の酸価が上記下限値以上であると、印刷インキ組成物におけるアルミニウム微粒子(B)の再分散性が向上しやすい。ロジン誘導体の酸価が上記上限値以下であると、印刷インキ組成物の安定性が向上しやすい。
【0039】
ロジン誘導体(C)の軟化点は、80~200℃が好ましく、85~190℃がより好ましく、90~180℃がさらに好ましい。ロジン誘導体(C)の軟化点が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性が向上しやすい。ロジン誘導体(C)の軟化点が上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0040】
ロジン誘導体(C)としては、市販品を用いてもよい。
ロジン誘導体(C)の市販品としては、例えばハリマ化成社製の「ハリマック」シリーズ、「ハリフェノール」シリーズ、「ハリエスター」シリーズ、「ハリタック」シリーズ、荒川化学工業社製の「パインクリスタル」シリーズ、「マルキード」シリーズ、「タマノル」シリーズ、イーストマンケミカル社製の「フォーラル」シリーズが挙げられる。
【0041】
<溶媒(D)>
溶媒としては、上記印刷インキ組成物に含まれる各成分を溶解又は分散させるものを用いることができる。溶媒としては、例えば、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤及び水等を挙げることができ、それらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等を挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びn-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;並びにシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びシクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸イソブチル等を挙げることができる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等を挙げることができる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びn-ブタノール等の1価アルコール;並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。
【0043】
<任意成分>
任意成分としては、例えば顔料、顔料誘導体、体質顔料、ワックス、ブロッキング防止剤、塩素化ポリオレフィン、脂肪酸アミド、キレート剤、硬化剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、安定剤などが挙げられる。これらの任意成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
<各成分の含有量>
バインダー樹脂(A)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して55~82質量%が好ましく、56~82質量%がより好ましく、57~82質量%がさらに好ましい。
バインダー樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。バインダー樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷物の透過濃度が上がり、隠蔽性が向上しやすい。
【0045】
アルミニウム微粒子(B)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の総質量に対して2~10質量%が好ましく、2~9質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましく、3~8質量%が特に好ましい。
アルミニウム微粒子(B)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して9~29質量%であり、10~25質量%が好ましく、11~22質量%がより好ましい。
アルミニウム微粒子(B)の含有量が、上記下限値以上であると、得られる印刷物の透過濃度があがり、隠蔽性が向上しやすい。アルミニウム微粒子(B)の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0046】
ロジン誘導体(C)の固形分の含有量は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して1.5~10質量%が好ましく、2~9質量%がより好ましく、3~8質量%がさらに好ましい。
ロジン誘導体の含有量が上記下限値以上であると、再分散性が向上しやすい。ロジン誘導体の含有量が上記上限値以下であると、得られる印刷層の耐ブロッキング性、耐熱性が向上しやすい。
【0047】
ロジン誘導体(C)の固形分に対するアルミニウム微粒子(B)の固形分の質量比は、1.43~10であり、1.59~10が好ましく、1.67~5がより好ましく、1.82~5がさらに好ましい。
質量比が上記下限値以上であると、得られる印刷層の耐熱性が向上しやすい。質量比が上記上限値以下であると、アルミニウム微粒子(B)の再分散性が向上しやすい。
【0048】
アルミニウム微粒子(B)の固形分に対するバインダー樹脂(A)の固形分の質量比は、2~9であり、2.5~8が好ましく、3~7がより好ましい。
質量比が上記下限値以上であると、得られる印刷層の基材に対する密着性が向上しやすい。質量比が上記上限値以下であると、得られる印刷層の透過濃度があがり、隠蔽性が向上しやすい。
【0049】
ロジン誘導体(C)の固形分に対するバインダー樹脂(A)の固形分の質量比は、6~36が好ましく、6~33がより好ましく、6~30がさらに好ましい。
【0050】
溶媒(D)の含有量は、印刷インキ組成物の総質量に対して10~80質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。溶媒(D)の含有量が上記下限値以上であると、印刷インキ組成物の流動性が向上しやすい。溶媒(D)の含有量が上記上限値以下であると、印刷適性が向上しやすい。
【0051】
任意成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、例えば印刷インキ組成物の固形分の総質量に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0052】
<印刷インキ組成物の製造方法>
本実施形態の印刷インキ組成物は、例えば、バインダー樹脂(A)と、アルミニウム微粒子(B)と、ロジン誘導体(C)と、必要に応じて任意成分と、を溶媒(D)に溶解又は分散させることで得られる。
各成分の混合方法としては特に限定されず、種々の方法により各成分を混合することができる。
【0053】
<印刷インキ>
本実施形態の印刷インキは、上記印刷インキ組成物を含む。使用される印刷方法に応じて、溶媒(D)を適宜添加し、バインダー樹脂(A)、アルミニウム微粒子(B)、ロジン誘導体(C)の濃度を調整することが好ましい。印刷方法は特に限定されず、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、及びスクリーン印刷法等が挙げられ、グラビア印刷法が好ましい。
【0054】
<印刷インキ組成物(印刷インキ)の用途>
本実施形態の印刷インキは、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、及びスクリーン印刷等により、基材の表面、又は基材の表面に形成されたカラーインキ層の表面に印刷する際の印刷インキとして好適である。特に、グラビア印刷により基材の表面、又は基材の表面に形成されたカラーインキ層の表面に印刷する際の光輝性のインキとして好適である。すなわち、本実施形態の印刷インキ組成物は、グラビア印刷用として好適である。
【0055】
グラビア印刷を行う際には、印刷インキは適切な粘度に調整され、粘度測定にはザーンカップを用いた測定法が広く用いられている。一般的にグラビア印刷を行う際の粘度は、20℃におけるザーンカップ#3による測定で10~25秒が好ましく、14~22秒がより好ましい。
上記下限値以上であると、泳ぎが発生しにくくなる。上記上限値以下であると、転移不良やレベリング不良が発生しにくくなる。
【0056】
本実施形態において、アルミニウム微粒子(B)の再分散性は、印刷インキを用いた印刷物の光学濃度(OD値)により評価できる。評価方法としては、以下の測定方法により測定される、保管前の印刷層の光学濃度(保管前OD値)と、保管後の印刷層の光学濃度(保管後OD値)の差により評価できる。
【0057】
以下、測定方法を説明する。粘度がザーンカップ#3で25℃において16秒となるように調整した粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管前OD値とする。前記粘度調整印刷インキ組成物を容器に入れて、前記容器を20℃の恒温室に1か月間保管した後に、前記容器を振とうし、保管後の粘度調整印刷インキ組成物を乾燥質量2g/mとなるように、厚さ20μmの透明PETフィルム上に塗工した印刷物の光学濃度を保管後OD値とする。なお、振とうの方法としては、例えば振とう幅を20cmで、3往復/秒の速度で、20往復振とうする方法が例示される。
そして、ΔOD=保管前OD値-保管後OD値を計算する。
【0058】
ΔODは、0.40以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。ΔODが0.40を超過すると、隠蔽性が低下していることを意味する。すなわち沈降や凝集の発生によりアルミニウム微粒子(B)が印刷インキ中に良好に再分散されていないことを表す。すなわち、ΔODが上記上限値以下であるということは、隠蔽性が向上していることを意味する。すなわち、沈降や凝集の発生が抑制されており、アルミニウム微粒子(B)が印刷インキ中に良好に再分散されていることを意味する。
【0059】
<作用機序>
本発明の印刷インキ組成物は、ロジン誘導体(C)を含む。酸化が20mgKOH/g以上のロジン誘導体(C)がアルミニウム微粒子(B)の表面に相互作用することにより、アルミニウム微粒子(B)が凝集しにくくなる。その結果、アルミニウム微粒子(B)の再分散性が向上すると考えられる。また、本発明の印刷インキ組成物は、平均粒子径が5~20μmのアルミニウム微粒子(B)を含む。このようなアルミニウム微粒子を含むことによって、得られる印刷物の透過濃度が上がり、隠蔽性が向上すると考えられる。また、本発明の印刷インキ組成物は、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対する前記アルミニウム微粒子(B)の含有量が9~29質量%であり、アルミニウム微粒子(B)に対する前記バインダー樹脂(A)の質量比は、2~9である。このような含有量及び質量比とすることによって、得られる印刷層の基材に対する密着性の向上と、隠蔽性の向上が両立する。さらに、本発明の印刷インキ組成物は、ロジン誘導体(C)に対するアルミニウム微粒子(B)の質量比は、1.43~10である。このような質量比とすることによって、得られる印刷層の耐熱性の向上と、アルミニウム微粒子(B)の再分散性の向上が両立する。以上より、アルミニウム微粒子の再分散性に優れ、かつ得られる印刷層の基材との密着性、隠蔽性、及び耐熱性に優れる印刷インキ組成物が得られると考えられる。
【0060】
<積層体>
図1、2に、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す。なお、図1、2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
図1の積層体10は、基材11と、基材11の一方の面上に設けられた印刷層12と、を備える印刷物である。
図2の積層体20は、基材21と、基材21の一方の面上に設けられた第一の印刷層22と、前記第一の印刷層の前記基材とは反対の面上に設けられた第二の印刷層23と、を備える印刷物である。
なお、積層体をラベルとして包装容器に装着する場合、基材11、21が、印刷層12及び第二の印刷層23よりも内側(包装容器と接する側)、すなわち、印刷層12及び第二の印刷層23が外側となるように装着することが好ましい。
【0061】
<基材>
基材11、21の種類は、積層体10、20の種類等に応じて適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、プラスチック基材又は紙基材が好ましい。プラスチック基材としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリスチレン(PS)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、セロファン、フッ素変性オレフィン(例えばエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等)のプラスチック基材などが挙げられる。これらの材質からなる基材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を貼り合わせて使用してもよい。
プラスチック基材の表側の面(表面)及び裏側の面(裏面)の少なくとも一方には、必要に応じてコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0062】
基材11、21は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。すなわち、基材11、21は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムであってもよい。基材11、21が積層フィルムである場合、同じ種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよいし、異なる種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよい。好ましいフィルムの組み合わせの一例としては、ポリエステルフィルムを基材11、21の表面側とし、ポリスチレンフィルムもしくはポリオレフィンフィルムを基材11、21の裏面側とする組み合わせ、環状ポリオレフィンフィルムを基材11、21の表面側とし、ポリエチレンフィルムもしくはポリプロピレンフィルムを基材11、21の裏面側とする組み合わせなどが挙げられる。
【0063】
基材11、21の厚さは、5~100μmが好ましく、12~60μmがより好ましく、12~50μmがさらに好ましい。
【0064】
<印刷層、第二の印刷層>
積層体10において、印刷層12は、基材11の一方の面上に設けられている。積層体20において、第二の印刷層23は、基材21の一方の面上に設けられた第一の印刷層22の前記基材21とは反対の面上に設けられている。
印刷層12、第二の印刷層23は、上述した本実施形態の印刷インキを用いて形成された印刷層(W)である。なお、本発明において、印刷インキを用いて形成された印刷層(W)である、印刷層12を「印刷層(W)」といい、第二の印刷層23を「第二の印刷層(W)」ともいう。
印刷層12、第二の印刷層23の厚さは、0.2~3.0μmが好ましく、0.3~2.0μmがより好ましく、0.3~1.5μmがさらに好ましい。
【0065】
<第一の印刷層>
積層体20において、第一の印刷層22は、基材21の一方の面上に設けられている。
第一の印刷層22は、積層体20に意匠性や機能性等を付与する点でインキ組成物を用いて形成された印刷層(C)(以下、「カラー印刷層(C)」ともいう。)である。
第一の印刷層22は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
第一の印刷層22の合計の厚さは、0.2~15μmが好ましく、0.3~10μmがより好ましく、0.3~8μmがさらに好ましい。
【0066】
第一の印刷層22の形成に用いられるインキ組成物は、着色顔料を含む。インキ組成物としては、印刷インキ組成物が好ましい。
印刷インキ組成物としては特に限定されず、公知のものを使用できるが、例えばバインダー樹脂と、溶媒と、着色顔料と、必要に応じて他の成分とを含有する組成物などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、本分野で公知のバインダー樹脂を使用できる。
溶媒としては、上述した本発明の印刷インキ組成物の説明において先に例示した溶媒などが挙げられる。
着色顔料としては、例えばアゾ系顔料(モノアゾ、縮合アゾ等)、スレン系顔料(アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等)、フタロシアニン系顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等)、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、ピロロピロール系顔料、アニリンブラック、有機蛍光顔料等の有機顔料;天然物(クレー等)、フェロシアン化物(紺青等)、硫化物(硫化亜鉛等)、硫酸塩、酸化物(酸化クロム、亜鉛華、酸化鉄等)、水酸化物(水酸化アルミニウム等)、ケイ酸塩(群青等)、炭酸塩、炭素(カーボンブラック、グラファイト等)、金属粉(アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉等)、焼成顔料等の無機顔料などが挙げられる。また、着色顔料としては、上述の酸化チタン、沈降性硫酸バリウムも挙げられる。
他の成分としては、例えばワックス、分散剤、消泡剤、滑剤、pH調整剤、増粘剤などが挙げられる。
【0067】
<積層体の製造方法>
図1の積層体10の製造方法は、基材11の一方の面上に、本実施形態の印刷インキを用いて印刷層12を形成する工程を含む。
図2の積層体20の製造方法は、基材21の一方の面上に、インキ組成物を用いて第一の印刷層22を形成する工程(1)と、前記第一の印刷層22の前記基材21とは反対の面上に、本実施形態の印刷インキを用いて第二の印刷層23を形成する工程(2)を含む。
【0068】
図1の積層体10の製造方法では、例えば基材11の一方の面上に本実施形態の印刷インキを塗工し、乾燥させて印刷層12を形成する。
なお、印刷インキを基材11の一方の面上に塗工し、乾燥させて印刷層12を形成した後、さらに印刷インキを塗工(重ね塗り)してもよい。
【0069】
印刷インキの塗工方法としては特に限定されず、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、ハケ塗り、グラビアコーター法、ダイコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法及びカーテンコート法等の公知の塗工方法を用いることができる。これらの中でも、品質及び生産性の高さから、グラビア印刷が好ましい。
【0070】
乾燥方法としては、基材11の一方の面上に塗工された印刷インキに含まれる溶媒を除去できれば特に制限されないが、例えば減圧乾燥、加圧乾燥、加熱乾燥、風乾が挙げられる。
加熱する際の温度は、30~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。
【0071】
図2の積層体20の製造方法は、上記工程(1)と上記工程(2)をこの順で含む。
工程(1)では、例えば基材21の一方の面上にインキ組成物を塗工し、乾燥させて第一の印刷層22を形成する。工程(2)では、例えば前記第一の印刷層22の基材21とは反対の面上に本実施形態の印刷インキを塗工し、乾燥させて第二の印刷層23を形成する。
工程(1)は1回でもよいし、2回以上でもよい。すなわち、インキ組成物を重ね塗りしてもよい。
工程(2)は1回でもよいし、2回以上でもよい。すなわち、印刷インキを重ね塗りしてもよい。
工程(1)、工程(2)における塗工方法、乾燥方法としては、積層体10の製造方法と同様の方法を適用できる。
【0072】
<用途>
積層体10、20は、軟包装等の包装材、建装材をして使用することが好ましい。「軟包装」とは、柔軟性を有する材料で構成されている包装材、すなわちフレキシブルパッケージのことであり、食品や日用品等の包装に用いられる。「建装材」とは、建築物を構成する構造体に用いるプラスチック基材のことであり、建築物(壁材、屋根材等)の加飾や保護のために用いられる。
【0073】
<他の実施形態>
積層体は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、図1に示す積層体10の場合、印刷層12は基材11の一方の面の全体に設けられているが、印刷層12は基材11の一方の面の一部に設けられていてもよい。この場合、基材11の一方の面の印刷層12が設けられていない領域には、他の印刷層が設けられていることが好ましい。他の印刷層は、例えばニス組成物より形成される層などが挙げられる。
同様に、図2に示す積層体20の場合、第二の印刷層23は第一の印刷層22の一方の面の全体に設けられているが、第二の印刷層23は第一の印刷層22の一方の面の一部に設けられていてもよい。この場合、第一の印刷層22の一方の面の第二の印刷層23が設けられていない領域には、他の印刷層が設けられていることが好ましい。他の印刷層は、例えばニス組成物より形成される層などが挙げられる。
【0074】
また、図1に示す積層体10の場合、印刷層12の基材11とは反対の面上に、他の印刷層が設けられていてもよい。他の印刷層は、例えばニス組成物より形成される層などが挙げられる。
同様に、図2に示す積層体20の場合、第二の印刷層23の第一の印刷層22とは反対の面上に、他の印刷層が設けられていてもよい。他の印刷層は、例えばニス組成物より形成される層などが挙げられる。
【実施例
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
[使用原料]
バインダー樹脂(A)として、以下に示す化合物を用いた。
・A-1:アクリル樹脂(大成ファインケミカル社製、製品名「アクリット1LO-846」、重量平均分子量37,000、ガラス転移温度60℃)。
・A-2:ポリアミド樹脂(花王株式会社製、製品名「レオマイドS-8200」、重量平均分子量10,000、軟化点115℃、酸価5mgKOH/g、アミン価3.5mgKOH/g)。
・A-3:ニトロセルロース樹脂(キミア社製、製品名「RS20」、種類及び粘度記号H20)。
・A-4:フッ素変性ポリオレフィン樹脂(AGC社製、製品名「ルミフロンLF200」)。
以上のバインダー樹脂(A)は固形分を30質量%に調整して使用した。
【0077】
アルミニウム微粒子(B)として、以下に示す化合物を用いた。
・B-1:アクリル樹脂被覆アルミニウム微粒子(旭化成株式会社製、製品名「TR2100」、平均粒子径:7μm)。
・B-2:ステアリン酸被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「0700M」、平均粒子径:8μm)。
・B-3:オレイン酸被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「TD180T」、平均粒子径:16μm)。
・B-4:シリカ被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「EMR6390」、平均粒子径:8μm)。
・B-5:オレイン酸被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「2173」、平均粒子径:6μm)。
・B-6:オレイン酸被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「7620NS」、平均粒子径:18μm)。
・B-7:オレイン酸被覆アルミニウム微粒子(東洋アルミニウム社製、製品名「HS-2」、平均粒子径:23μm)。
以上のアルミニウム微粒子(B)は固形分を50質量%に調整して使用した。
【0078】
ロジン誘導体(C)として、以下に示す化合物を用いた。
・C-1:ロジン変性フマル酸樹脂(ハリマ化成社製、製品名「ハリマックAS-5」、酸価185~210mgKOH/g、軟化点160℃)。
・C-2:ロジン変性マレイン酸樹脂(ハリマ化成社製、製品名「ハリタック4740」、酸価28mgKOH/g、軟化点120℃)。
・C-3:テルペンフェノール樹脂(荒川化学工業社製、製品名「タマノル803L」、酸価45~60mgKOH/g、軟化点153℃)。
・C-4:水添ロジン樹脂(荒川化学工業社製、製品名「パインクリスタルKR-140」、酸価140mgKOH/g、軟化点140℃)。
・C-5:ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製、製品名「マルキードNO33」、酸価290~320mgKOH/g、軟化点175℃)。
・C-6:ロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業社製、製品名「タマノル414」、酸価18mgKOH/g、軟化点185℃)。
【0079】
溶媒(D)として、以下に示す化合物を用いた。
・D-1:酢酸エチルとイソプロピルアルコールの質量比1:1の混合物。
・D-2:酢酸エチルとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールの質量比2:2:1の混合物。
・D-3:メチルエチルケトン。
【0080】
任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・ブロッキング防止剤:セルロースアセテートブチレート(Eastman Ehemical社製、製品名「CAB-381-0.5」)。
・ワックス:ポリオレフィン系ワックス(ポリコン社製、製品名「ポリコンB-310」)。
【0081】
[評価方法]
(再分散性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の光学濃度(保管前OD値)をエックスライト社製の卓上式透過濃度計361Tを使用して測定した。測定は3回行い平均値をとり、保管前OD値とした。
実施例及び比較例において、ザーンカップ#3を用いて測定される25℃における粘度が16秒となるように調整した印刷インキの100gを円筒状の金属製容器に入れて20℃の恒温槽で30日間静置した。静置した後に容器を手で20往復振とうし(振とう幅:20cm、振とう速度:3往復/秒)、得られた印刷インキを、網175線/inch(30μm)グラビア彫刻版を備えたグラビア印刷機(松尾産業株式会社製、商品名「Kプリンティングプルーファー」)を使用し、片面をコロナ放電処理したOPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、商品名「FOR」、厚さ:25μm)の処理面に印刷した。得られた印刷物の光学濃度(保管後OD値)をエックスライト社製の卓上式透過濃度計361Tを使用して測定した。測定は3回行い平均値をとり、保管後OD値とした。得られた保管前OD値及び保管後OD値を用いて下式2によりΔODを算出した。この数値が小さいほど、再分散性が良好であることを示す。
ΔOD=保管前OD値-保管後OD後 式2
下記に示す基準に従って再分散性を評価した。△~◎を合格とした。なお、〇又は◎であるとさらに好ましい。
◎:ΔODが0.15以下である。
〇:ΔODが0.15超0.25以下である。
△:ΔODが0.25超0.40以下である。
×:ΔODが0.40超である。
【0082】
(密着性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けて、貼り付けられたセロテープ(登録商標)を印刷面となす角が90度となる方向ですみやかに剥離した。剥離後、印刷物のフィルム上に残ったインキ塗膜の状態を目視にて確認し、下記に示す基準に従って密着性を評価した。△~◎を合格とした。
◎:印刷層が全く剥離していない(剥離割合が0%)。
〇:印刷層の剥離割合が0%超、10%未満である。
△:印刷層の剥離割合が10%以上、20%未満である。
×:印刷層の剥離割合が20%以上である。
【0083】
(隠蔽性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の光学濃度(OD値)をエックスライト社製の卓上式透過濃度計361Tを使用して測定した。測定は3回行い平均値をとった。この数値が大きいほど、隠蔽性が高いことを示す。下記に示す基準に従って隠蔽性を評価した。△~◎を合格とした。
◎:OD値が0.8以上である。
〇:OD値が0.6以上0.8未満である。
△:OD値が0.5以上0.6未満である。
×:0.5未満である。
【0084】
(耐熱性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷直後の印刷物をドライヤーで10秒乾燥させた後に、印刷層の表面(印刷面)にアルミニウム箔を重ね、その上からヒートシールテスター(テスター産業株式会社製、製品名「TP-701-C ヒートシールテスター」)を用いて、2kg/cmの荷重で1秒間ヒートシールを行った。ヒートシール温度は80℃~160℃範囲を20℃刻みで行った。その後、アルミニウム箔を剥がし、以下の評価基準にて印刷層の耐熱性を評価した。
◎:アルミニウム箔側に印刷層が全く移行していない。△~◎を合格とした。
〇:アルミニウム箔に移行した印刷層の面積の割合が0%超10%未満である。
△:アルミニウム箔に移行した印刷層の面積の割合が10%以上20%未満である。
×:アルミニウム箔に移行した印刷層の面積の割合が20%以上である。
【0085】
<総合評価>
再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の評価において、×が一つ以上ある場合、不合格とした。すなわち、再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の評価において、×が一つもない場合、合格とした。
なお、再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の評価以外に、以下の耐水性、耐ブロッキング性、脱離性の評価を実施した。耐水性、耐ブロッキング性、脱離性は本願の課題に直結するものではない。再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の評価において、×が一つもなく、耐水性、耐ブロッキング性、脱離性の評価結果が高い印刷インキ組成物は、より高性能な印刷インキ組成物と判断できる。
【0086】
(耐水性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物を密閉された容器に水道水とともに入れ、40℃の恒温槽で24時間静置した後、印刷層の外観を目視観察で評価し、下記に示す基準に従って耐水性を評価した。
◎:印刷層に変化は見られない。
〇:印刷層の一部に白化が見られる。
△:印刷層の複数の箇所に白化が見られる又は膨潤がみられる。
【0087】
(耐ブロッキング性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物の印刷層と、印刷を施していない二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」という。)の未処理面とを重ね合わせて、印刷物の裏面から4kg/cmの荷重をかけた状態で40℃、湿度80%環境下で24時間保管した。保管後、重ね合わせた印刷層を剥離し、下記に示す基準に従って耐ブロッキング性を評価した。
◎:印刷層がOPPフィルムに移し取られず、剥離抵抗も無い。
〇:印刷層が0%超10%未満OPPフィルムに移し取られ、剥離抵抗がやや有る。
△:印刷層が10%以上OPPフィルムに移し取られ、剥離抵抗がある。
【0088】
(脱離性の評価)
実施例及び比較例で得られた印刷物を1.5質量%の水酸化ナトリウムに入れて、40℃で30分撹拌して、印刷層の脱離状態を目視観察で評価し、下記の基準でそれぞれ評価した。なお、脱離性とは、印刷層をアルカリ溶液で脱離させ、基材を再利用する場合における、印刷層の脱離のしやすさを意味する。
◎:印刷層が80%以上剥離した。
○:印刷層が50%以上80%未満剥離した。
△:印刷層が10%以上50%未満剥離した。
×:印刷層が10%未満脱離した。
【0089】
[実施例1~19、比較例1~7]
<印刷インキ組成物の調製>
表1~4に示す配合に従って、バインダー樹脂(A)、アルミニウム微粒子(B)、ロジン誘導体(C)、溶媒(D)、及びその他の任意成分を混合した後、得られた混合物をディスパーにて30分間撹拌し、印刷インキ組成物を得た。なお、表1~4中の数字は、揮発分も含む配合量である。空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量部)を意味する。「NV」は、各成分の固形分を意味する。
【0090】
<印刷物の作製>
調製したインキ組成物を、ザーンカップ#3を用いて測定される25℃における粘度が16秒となるように、インキ配合に使用した溶媒と同じものを用いて希釈を行い、印刷インキを調製した。網175線/inch(30μm)グラビア彫刻版を備えたグラビア印刷機(松尾産業株式会社製、商品名「Kプリンティングプルーファー」)を使用し、片面をコロナ放電処理したOPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、商品名「FOR」、厚さ:25μm)の処理面に、調製した印刷インキを塗布した。その後、80℃で10秒間熱風乾燥を行い、印刷物を作製した。
得られた印刷物を用いて、再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の評価を行った。また、耐水性、耐ブロッキング性、脱離性の評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表1~3に示すように、各実施例の印刷インキ組成物から得られた印刷物は、再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性に優れていた。すなわち、各実施例で得られた印刷インキ組成物から得られた印刷物は、再分散性、密着性、隠蔽性、耐熱性の4つの特性を兼ね備えていた。
【0096】
表4に示すように、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対するアルミニウム微粒子(B)の含有量が低く、かつ、アルミニウム微粒子(B)に対するバインダー樹脂(A)の質量比が高い比較例1の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、隠蔽性に劣った。一方、印刷インキ組成物の固形分の総質量に対するアルミニウム微粒子(B)の含有量が高く、かつ、アルミニウム微粒子(B)に対するバインダー樹脂(A)の質量比が低い比較例2の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、密着性に劣った。
【0097】
ロジン誘導体(C)に対するアルミニウム微粒子(B)の質量比が低い比較例3の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、耐熱性に劣った。一方、ロジン誘導体(C)に対するアルミニウム微粒子(B)の質量比が高い比較例4の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、再分散性に劣った。
【0098】
平均粒子径が大きいアルミニウム微粒子(B)を含む比較例5の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、密着性に劣った。酸価が低いロジン誘導体(C)を含む比較例6の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、再分散性に劣った。また、ロジン誘導体(C)を含まない比較例7の印刷インキ組成物から得られた印刷物では、再分散性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の印刷インキ組成物は、アルミニウム微粒子の再分散性に優れるため、特にグラビア印刷用のインキとして有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 積層体
11 基材
12 印刷層(印刷層(W))
20 積層体
21 基材
22 第一の印刷層(カラー印刷層(C))
23 第二の印刷層(印刷層(W))
【要約】
【課題】アルミニウム微粒子の再分散性に優れ、かつ得られる印刷層の基材との密着性、隠蔽性、及び耐熱性に優れる印刷インキ組成物、前記印刷インキ組成物を含む印刷インキ、前記印刷インキを用いて形成された印刷層を有する積層体、並びに前記積層体を含む包装材及び建装材の提供。
【解決手段】バインダー樹脂(A)と、アルミニウム微粒子(B)と、ロジン誘導体(C)と、溶媒(D)と、を含む印刷インキ組成物であって、前記印刷インキ組成物の固形分の総質量に対するアルミニウム微粒子(B)の含有量が9~29質量%であり、アルミニウム微粒子(B)の平均粒子径が5~20μmであり、ロジン誘導体(C)の酸価が20mgKOH/g以上であり、アルミニウム微粒子(B)に対するバインダー樹脂(A)の質量比は、2~9であり、ロジン誘導体(C)に対するアルミニウム微粒子(B)の質量比は、1.43~10である、印刷インキ組成物。
【選択図】なし
図1
図2