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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】屋根の防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/362 20060101AFI20241128BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04D3/362 C
E04B1/348 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021084999
(22)【出願日】2021-05-20
(65)【公開番号】P2022178292
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】595034204
【氏名又は名称】SUS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】石田 保夫
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123520(JP,A)
【文献】特開2013-209824(JP,A)
【文献】特開2014-118764(JP,A)
【文献】特開2005-282001(JP,A)
【文献】特開2010-270492(JP,A)
【文献】中国実用新案第201972320(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00- 3/40
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の表側から裏側に向かって縦長に延長された屋根材を横方向に複数枚連接してなる屋根の防水構造において、
上記屋根材の一端には第1係合部が形成されているとともに他端には第2係合部が形成されていて、
隣接して設置される二つの屋根材において一方の屋根材の第1係合部の上に他方の屋根材の第2係合部を重ね、
上記第2係合部の上に第2係合部の先端と上記第1係合部との隙間を塞ぐように板材を設置し、
上記板材の上からボルトをねじ込み、その際、ボルトの先端が上記第1係合部を貫通しないようにしたことを特徴とする屋根の防水構造。
【請求項2】
請求項1記載の屋根の防水構造において、
上記第1係合部と第2係合部の間にはシール部材が介挿されていることを特徴とする屋根の防水構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の屋根の防水構造において、
上記第1係合部には上記ボルトの先端部を収容する凹部が形成されていることを特徴とする屋根の防水構造。
【請求項4】
請求項3記載の屋根の防水構造において、
上記凹部は上記屋根材の長手方向に延長して形成されていることを特徴とする屋根の防水構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の屋根の防水構造において、
上記屋根材は表側から裏側に向かって下り勾配で設置されていることを特徴とする屋根の防水構造。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに記載の屋根の防水構造において、
上記建屋はユニットハウスであることを特徴とする屋根の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅用のユニットハウスの屋根の防水構造に係り、特に、面倒な取付作業を要することなく防水機能を高めて雨水の浸入を確実に防止することができるよう工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のユニットハウスの屋根の防水構造の構成を開示するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、等がある。
上記特許文献1に記載された考案による一・二階兼用ユニットハウスには、亜鉛鉄板の継目を防水テープを内蔵したはぜ折りとした防水構造が開示されている。
上記特許文献2に記載された考案によるユニットハウス用屋根の防水構造には、隣接する屋根材のハゼ部相互に篏合帯体を圧着して屋根材相互を連結する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-56804号公報
【文献】実用新案登録第3205530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
上記特許文献1、特許文献2の何れに開示されている防水構造によっても雨水の浸入を完全に防止することはできなかった。
又、屋根材同士の連結作業も特殊工具が必要で面倒であり、多くの工数を要してしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、面倒な作業を要することなく防水機能を高めて雨水の浸入を確実に防止することができる屋根の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による屋根の防水構造は、建屋の表側から裏側に向かって縦長に延長された屋根材を横方向に複数枚連接してなる屋根の防水構造において、上記屋根材の一端には第1係合部が形成されているとともに他端には第2係合部が形成されていて、隣接して設置される二つの屋根材において一方の屋根材の第1係合部の上に他方の屋根材の第2係合部を重ね、上記第2係合部の上に第2係合部の先端と上記第1係合部との隙間を塞ぐように板材を設置し、上記板材の上からボルトをねじ込み、その際、ボルトの先端が上記第1係合部を貫通しないようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による屋根の防水構造は、請求項1記載の屋根の防水構造において、上記第1係合部と第2係合部の間にはシール部材が介挿されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による屋根の防水構造は、請求項1又は請求項2記載の屋根の防水構造において、上記第1係合部には上記ボルトの先端部を収容する凹部が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による屋根の防水構造は、請求項3記載の屋根の防水構造において、上記凹部は上記屋根材の長手方向に延長して形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による屋根の防水構造は、請求項1~請求項4の何れかに記載の屋根の防水構造において、上記屋根材は表側から裏側に向かって下り勾配で設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項6による屋根の防水構造は、請求項1~請求項5の何れかに記載の屋根の防水構造において、上記建屋はユニットハウスであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように本願発明の請求項1による屋根の防水構造によると、建屋の表側から裏側に向かって縦長に延長された屋根材を横方向に複数枚連接してなる屋根の防水構造において、上記屋根材の一端には第1係合部が形成されているとともに他端には第2係合部が形成されていて、隣接して設置される二つの屋根材において一方の屋根材の第1係合部の上に他方の屋根材の第2係合部を重ね、上記第2係合部の上に第2係合部の先端と上記第1係合部との隙間を塞ぐように板材を設置し、上記板材の上からボルトをねじ込み、その際、ボルトの先端が上記第1係合部を貫通しないようにしたので、面倒な作業を要することなく防水機能を高めて雨水の浸入を確実に防止することができる。
又、請求項2による屋根の防水構造によると、請求項1記載の屋根の防水構造において、上記第1係合部と第2係合部の間にはシール部材が介挿されているので、上記効果を高めることができる。
又、請求項3による屋根の防水構造によると、請求項1又は請求項2記載の屋根の防水構造において、上記第1係合部には上記ボルトの先端部を収容する凹部が形成されているので、仮に、板材の下を通して雨水が侵入しても凹部内に溜まることになり、そこから先に浸入することはない。
又、請求項4による屋根の防水構造によると、請求項3記載の屋根の防水構造において、上記凹部は上記屋根材の長手方向に延長して形成されているので、仮に、凹部内に雨水が溜まっても凹部に沿って流通して外部に排出される。
又、請求項5による屋根の防水構造によると、請求項1~請求項4の何れかに記載の屋根の防水構造において、上記屋根材は表側から裏側に向かって下り勾配で設置されているので、仮に、凹部内に雨水が溜まっても凹部に裏側に流通して外部に排出される。
又、請求項6による屋根の防水構造によると、請求項1~請求項5の何れかに記載の屋根の防水構造において、上記建屋はユニットハウスであるので、防水機能が高いユニットハウスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一の実施の形態を示す図で、ユニットハウスの正面図である。
図2】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のII―II矢視図である。
図3】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のIII-III矢視図である。
図4】本発明の一実施の形態を示す図で、図2のIV―IV断面図である。
図5】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のV-V断面図である。
図6】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のVI-VI断面図である。
図7】本発明の一実施の形態を示す図で、図4のVII部を拡大して示す部分断面図である。
図8】本発明の一実施の形態を示す図で、図5のVIII部を拡大して示す部分断面図である。
図9】本発明の一実施の形態を示す図で、図5のIX部を拡大して示す部分断面図である。
図10】本発明の一実施の形態を示す図で、図5のX部を拡大して示す部分断面図である。
図11】本発明の一実施の形態を示す図で、図7のXI部を拡大して示す部分断面図である。
図12】本発明の一実施の形態を示す図で、図12(a)は屋根材のアルミニウム製の枠材の端面図、図12(b)は図12(a)のb部の拡大図、図12(c)は図12(a)のc部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1乃至図12を参照して本発明の一実施の形態を説明する。この実施の形態は本発明を住宅用のユニットハウス1の屋根に適用した例を示すものである。
まず、上記ユニットハウス1には骨組構造体3があり、この骨組構造体3には複数本(この実施の形態の場合には表側4本、裏側4本、左右両側面に1本ずつ、合計10本)の柱材5が設けられている。これら10本の柱材5の下端にはベース6が取り付けられている。上記ユニットハウス1はこれら10個のベース6をアンカーボルト8によって固定することにより任意の場所に設置される。又、上記10本の柱材5の下部には床材支持部材7が縦・横格子状に配置された状態で取り付けられている。
【0010】
上記10本の柱材5の上には複数本の梁材9が設置されている。上記複数本の梁材9は、図4図5に示すように、上記10本の柱材5上に縦・横格子状に取り付けられている。
【0011】
上記骨組構造体3の表面と左右両側面の表面側半分には、図6に示すように、透明又は半透明の外壁11が設置されている。又、上記骨組構造体3の左右両側面の裏面側半分と裏面には、アルミニウム製の外壁13が設置されている。又、上記骨組構造体3の左右両側面の裏面側半分と裏面には、シナ合板製の内壁15が設置されている。
【0012】
又、図1図6に示すように、上記骨組構造体3の表面には扉17が設置されているとともに、上記扉17の周囲には内壁15が設置されている。上記扉17は既に説明した柱材5と別の柱材5´との間に開閉自在に取り付けられている。又、上記骨組構造体3の左右両側面の裏面側半分と裏面であって外壁13と内壁15との間にはプレース19が張設されている。又、上記骨組構造体3の下部には複数枚(この実施の形態の場合には6枚)の床材21が上記床材支持部材7に支持された状態で設置されている。上記扉17の内側には玄関土間23が設置されている。
【0013】
図7図10に示すように、外周に配置された梁材9の下面にはアングル材からなる金具31が複数本のボルト33によって固定されている。又、全ての梁材9の側面にはL字型の別の金具35がライナ37を介して又はライナ無しで複数本のボルト39によって固定されている。上記内壁15の上端部は上記金具31、35の間に挟持されている。又、上記金具35上には複数枚の天井板41が設置されている。上記天井板41は化粧石膏ボードである。又、上記梁材9相互間であって上記天井板41の上側にはブレース43が設置されている。
【0014】
外周に位置する梁材9の外周側には、図7図8図10に示すように、横断面形状が中空四角形の金具51が複数本のボルト52によって固定されている。これら金具51には妻側幕板53、桁側幕板55、桁側幕板56が、複数本のボルト58によって取り付けられている。又、図9に示すように、外周に位置する梁材9以外の梁材9には屋根受け材57が取り付けられている。これら妻側幕板53、桁側幕板55、桁側幕板56、屋根受け材57の上に複数枚の屋根材71が設置されている。
【0015】
上記屋根材71はアルミニウム製の枠材73とこの枠材73の内側に取り付けられたスタイロフォーム(登録商標)75とから構成されている。複数枚の屋根材71の下には複数本(この実施の形態の場合には3本)のスタイロフォーム(登録商標)落下防止材77が上記複数枚の屋根材71を横断するように設置されている。上記スタイロフォーム(登録商標)75はこれらスタイロフォーム(登録商標)落下防止部材77によってその落下が防止されている。
【0016】
上記枠材73は図12(a)に示すような端面形状をなしている。上記枠材73の端面において一端には第1係合部81が形成されていて、他端には第2係合部83が形成されている。隣接する二つの屋根材71、71を連設する場合には、図7図11に示すように、一方の屋根材71の枠材73の第1係合部81の上に他方の屋根材71の枠材73の第2係合部83を上から係合させる。上記第1係合部81は段付形状に形成されていてそこには凹部85がさらに凹んだ状態で形成されている。上記第2係合部83は他の部位に対して肉厚に形成されている。
尚、上記枠材73は図12(a)に示す断面形状が紙面に直交する方向に連続して形成された形状をなしている。
【0017】
上記枠材73には二箇所に上記スタイロフォーム(登録商標)落下防止部材77を固定するための溝87、87が形成されている。上記溝87にはナット用溝89が形成されている。図7に示すように、ボルト91を上記スタイロフォーム(登録商標)落下防止部材77に設けられた図示しない貫通孔を通して上記ナット用溝89内に内装されたナット93に螺合させることにより、上記スタイロフォーム(登録商標)落下防止部材77を上記屋根材71の枠材73に固定する。
【0018】
上記第1係合部81と第2係合部83との間には、図11に示すように、シール部材101が介挿されているとともに、別のシール部材103が介挿されている。
【0019】
隣接する2枚の屋根材71、71を連設する場合には、一方の屋根材71の枠材73の第1係合部81の上に他方の屋根材71の枠材73の第2係合部83を上側から係合させる。その際、第1係合部81と第2係合部83との間にシール部材101、103を介挿する。その状態で第2係合部83の上から板材105を介して固定ボルト107をねじ込む。上記固定ボルト107の先端部107aは上記第1係合部81、第2係合部83を貫通して上記凹部85内にセルフタッピングによって螺合される。
【0020】
上記複数枚の屋根材71の表側の端には、図8に示すように、アルミニウム製の屋根端部材121が複数本の固定ボルト122によって固定されていて、裏側には、図10に示すように、アルミニウム製の屋根端部材123が複数本の固定ボルト124によって固定されている。又、上記複数枚の屋根材71の左右両側端には、図7に示すように、アルミニウム製の水切り材125、125が設置されている。
【0021】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、住宅用のユニットハウス1としての機能であるが、入居者は扉17を開いて内部に入って生活する。内部には図示しない様々な生活設備、器具、等が装備されている。
【0022】
次に、屋根の防水機能について説明する。
図11に示すように、雨水は、板材105によってその下への浸入を防止される。仮に、浸入したとしても、シール部材103、101によってシールされているので、そこから下に浸入することはない。仮に、浸入したとしても、第1係合部81の凹部85内に溜まるだけであってそこから下に浸入することはない。又、凹部85内に溜まった雨水は、図2に示すように、屋根の傾斜によって、裏面側(図2中右端)から外部に排水される。
【0023】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、屋根における防水機能を高めて雨水の浸入を確実に防止することができる。これは隣接する一対の屋根材71、71において、一方の屋根材71の枠材73の第1係合部81に、他方の屋根材71の枠材73の第2係合部係合83を係合させ、その上から板材105を介して固定ボルト107をねじ込み、その際、固定ボルト107の先端部107aが貫通しない構成を採用したからである。
又、第1係合部81と第2係合部83との間にシール部材101、103を介挿させることにより、上記防水機能をさらに高めることができる。
又、凹部85を設けているので、上記シール部材101、103によって防ぎ切れずに浸入した雨水を凹部85内に溜めることができ、そこから先への浸入を防止することができる。それによって、防水機能をさらに高めることができる。
又、凹部85内に溜まった雨水は屋根材71の傾斜に沿って裏面側に流下させて排出することができ、凹部85内に雨水が溜まり続けることによる不具合をなくすことができる。
【0024】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、屋根材の一端に設けられる第1係合部、他端に設けられる第2係合部の形状は図示したものに限定されず、様々な形状が考えられる。
前記一実施の形態の場合には、第1係合部の凹部を1個設けたが、これを複数個設ける構成も想定される。
前記一実施の形態の場合には、建屋として住宅用のユニットハウスを例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、住宅以外の用途、例えば、工事現場の現場小屋、喫煙ブース、等のユニットハウスにも適用可能ある。
又、ユニットハウス以外の様々な建屋の屋根構造にも適用可能である。
その他図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、屋根の防水構造に係り、特に、雨水の浸入を確実に防止することができるよう工夫したものに関し、例えば、屋外に設置される住宅用のユニットハウスの屋根構造に好適である。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニットハウス(建屋)
3 骨組構造体
5 柱材
7 床支持部材
9 梁材
71 屋根材
73 枠材
81 第1係合部
83 第2係合部
85 凹部
101 シール部材
103 シール部材
105 板材
107 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12