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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20241128BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20241128BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C03B33/02
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020206627
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093901
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 将夫
(72)【発明者】
【氏名】李 昊錫
(72)【発明者】
【氏名】端 世志彦
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525056(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100981(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/129907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/02-33/04
B28D 5/00
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するガラスリボンを縦姿勢で下方に搬送しつつ幅方向に切断することで、前記ガラスリボンからガラス板を切り出すにあたり、
前記ガラスリボンの幅方向に延びる切断予定部の一方面にスクライブ線を形成するスクライブ工程と、
前記スクライブ工程後の前記ガラスリボンを他方面側から支持部材に支持させた状態で、前記支持部材を支点として前記ガラスリボンの前記切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させ、前記スクライブ線に沿って前記ガラスリボンを折り割って切断する折割工程と、
を実行するガラス板の製造方法であって、
前記折割工程では、前記ガラスリボンにおける前記切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張って、前記ガラスリボンにおける前記支持部材に支持される部位を幅方向に延ばしてから、前記ガラスリボンの前記切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させ
前記スクライブ工程では、
前記ガラスリボンにおける前記切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張って、前記切断予定部を幅方向に延ばすと共に、
前記切断予定部を他方面側からスクライブ補助部材に支持させた状態で、前記切断予定部の一方面上でスクライブ線形成具を移動させることで、前記スクライブ線を形成し、
前記ガラスリボンの長手方向に沿った距離に関し、
前記スクライブ工程と前記折割工程との間で、前記ガラスリボンを引っ張る箇所から前記切断予定部までの離間距離を相違させ、前記スクライブ工程での離間距離を前記折割工程での離間距離よりも短くすることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記支持部材および前記スクライブ補助部材として、前記ガラスリボンと接触する接触部が、前記ガラスリボンの幅方向に沿って凸となるように湾曲した部材を用いることを特徴とする請求項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラスリボンの長手方向に沿った距離に関し、
前記折割工程において前記ガラスリボンを引っ張る箇所から前記切断予定部までの離間距離を200mm以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスリボンの長手方向における複数箇所を幅方向に引っ張ることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
ガラス板の製造装置であって、
縦姿勢で下方に搬送中の可撓性を有するガラスリボンを幅方向に切断することで、前記ガラスリボンからガラス板を切り出す切断機構を備え、
前記切断機構が、前記ガラスリボンの幅方向に延びる切断予定部の一方面にスクライブ線を形成するスクライブ機構と、前記スクライブ線が形成された前記ガラスリボンの前記切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させ、前記スクライブ線に沿って前記ガラスリボンを折り割って切断する折割機構と、を有し、
前記折割機構が、前記ガラスリボンを他方面側から支持する支持部材と、前記ガラスリボンにおける前記切断予定部よりも下方の部位を保持する保持部材と、前記下方の部位を保持した状態の前記保持部材を前記ガラスリボンの一方面側から他方面側に向かって移動させることで、前記支持部材を支点として前記ガラスリボンの前記切断予定部を湾曲させる移動装置と、を備え、
前記折割機構による前記ガラスリボンの折割時に、前記保持部材は、前記下方の部位を幅方向に引っ張ることにより、前記ガラスリボンにおける前記支持部材に支持される部位を幅方向に延ばすように構成されており、
前記スクライブ機構による前記スクライブ線の形成時に、前記保持部材は、前記下方の部位を幅方向に引っ張ることにより、前記ガラスリボンにおける前記切断予定部を幅方向に延ばすと共に、
前記切断予定部を他方面側からスクライブ補助部材に支持させた状態で、前記切断予定部の一方面上でスクライブ線形成具を移動させることで、前記スクライブ線を形成し、
前記ガラスリボンの長手方向に沿った距離に関し、
前記前記スクライブ機構による前記スクライブ線の形成時と前記折割機構による前記ガラスリボンの折割時との間で、前記ガラスリボンを引っ張る箇所から前記切断予定部までの離間距離を相違させ、前記前記スクライブ機構による前記スクライブ線の形成時における離間距離を前記折割機構による前記ガラスリボンの折割時での離間距離よりも短くすることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス板の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板を製造するための手法の一つとして、ダウンドロー法により成形したガラスリボンを縦姿勢で下方に搬送しつつ幅方向に切断することで、ガラスリボンからガラス板を切り出す手法が挙げられる。特許文献1には同手法の具体的な形態の一例が開示されている。
【0003】
同文献に開示された形態では、まず、縦姿勢で下方に搬送中のガラスリボンの一方面に対して幅方向に沿ってスクライブ線を形成する。その後、ガラスリボンを他方面側から支持部材(同文献では支点バー)で支持した状態の下、支持部材を支点としてスクライブ線が形成された部位を一方面側が凸となるように湾曲させる。これにより、スクライブ線に沿ってガラスリボンを折り割って切断する。なお、特許文献1に開示された形態では、可撓性を有するガラスリボン(例えば、厚みが300μm以下)を切断の対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-90446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の形態を実施するに際しては、ガラスリボンが可撓性を有することから、その搬送中に皺や弛みが発生しやすい。この皺や弛みに起因して、ガラスリボンを折り割って切断する際に、支持部材の一部の箇所がガラスリボンと非接触の状態となることがある。つまり、ガラスリボンにおいて皺や弛みの生じた箇所が部分的に支持部材から浮いた状態となる。このような状態になると、本来的にスクライブ線に沿って形成されるべき切断部がスクライブ線から逸れてしまい、結果としてガラスリボンが破損してしまうという問題があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、縦姿勢で下方に搬送中の可撓性を有するガラスリボンを切断してガラス板を切り出すにあたり、ガラスリボンの破損を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためのガラス板の製造方法は、可撓性を有するガラスリボンを縦姿勢で下方に搬送しつつ幅方向に切断することで、ガラスリボンからガラス板を切り出すにあたり、ガラスリボンの幅方向に延びる切断予定部の一方面にスクライブ線を形成するスクライブ工程と、スクライブ工程後のガラスリボンを他方面側から支持部材に支持させた状態で、支持部材を支点としてガラスリボンの切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させ、スクライブ線に沿ってガラスリボンを折り割って切断する折割工程と、を実行する方法であって、折割工程では、ガラスリボンにおける切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張って、ガラスリボンにおける支持部材に支持される部位を幅方向に延ばしてから、ガラスリボンの切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させることを特徴とする。
【0008】
本方法では、折割工程において、ガラスリボンにおける切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張って、ガラスリボンにおける支持部材に支持される部位を幅方向に延ばしてから、切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させている。そのため、可撓性に由来してガラスリボンに皺や弛みが生じた場合であっても、少なくとも支持部材に支持される部位においては、ガラスリボンを折り割る前(切断予定部を湾曲させる前)に皺や弛みを幅方向に延ばして消失させることが可能となる。これにより、折り割りに際し、皺や弛みに起因して、支持部材の一部の箇所がガラスリボンと非接触の状態となることを防止できる。その結果、折割工程でガラスリボンに形成される切断部がスクライブ線から逸れることを回避でき、ガラスリボンの破損を防止することが可能となる。
【0009】
上記の方法において、スクライブ工程では、ガラスリボンにおける切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張って、切断予定部を幅方向に延ばすと共に、切断予定部を他方面側からスクライブ補助部材に支持させた状態で、切断予定部の一方面上でスクライブ線形成具を移動させることで、スクライブ線を形成することが好ましい。
【0010】
このようにすれば、スクライブ工程において、スクライブ線が形成されることになる切断予定部を幅方向に延ばすことができる。つまり、ガラスリボンに皺や弛みが生じた場合でも、切断予定部上に存在する皺や弛みを幅方向に延ばして消失させることが可能となる。そのため、皺や弛みに起因して、切断予定部が部分的にスクライブ補助部材から浮いた状態となることを回避できる。これにより、スクライブ補助部材から浮いた状態の箇所をスクライブ線形成具が通過していくことを防止でき、スクライブ線の形成に伴ってガラスリボンが破損したり、スクライブ線が不連続となることを可及的に回避することが可能となる。
【0011】
上記の方法において、支持部材およびスクライブ補助部材として、ガラスリボンと接触する接触部が、ガラスリボンの幅方向に沿って凸となるように湾曲した部材を用いることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、ガラスリボンの切断予定部において、スクライブ線が形成される面である一方面が、スクライブ工程および折割工程にて幅方向に沿って凸に湾曲した状態となる。これにより、スクライブ工程でスクライブ線を形成しやすくなると共に、折割工程でガラスリボンを折り割って切断しやすくなる。加えて、本方法では、ガラスリボンにおける切断予定部よりも下方の部位を幅方向に引っ張っている。そのため、当該下方の部位において、折り割り時に意図せず他方面側が凸となるような湾曲が生じることを回避できる。これにより、当該下方の部位と切断予定部との間で湾曲の向きが逆となることを防止できるため、より正確なガラスリボンの折り割りが可能となる。
【0013】
上記の方法において、ガラスリボンの長手方向に沿った距離に関し、スクライブ工程と折割工程との間で、ガラスリボンを引っ張る箇所から切断予定部までの離間距離を相違させ、スクライブ工程での離間距離を折割工程での離間距離よりも短くすることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、スクライブ工程では、相対的に切断予定部に近い箇所でガラスリボンを引っ張ることで、上述したスクライブ補助部材からの切断予定部の部分的な浮き上がりを確実に防止する。これにより、スクライブ線の形成を安定して行うことが可能となる。また、折割工程では、相対的に切断予定部から遠い箇所でガラスリボンを引っ張ることで、上述した支持部材に支持される部位の皺や弛みを消失させる効果を維持しつつ、その上で、ガラスリボンの折り割りに悪影響を及ぼす応力(本来的に折り割りに不要な応力)が切断予定部に作用することを防止する。これにより、折り割りを安定して行うことが可能となる。
【0015】
上記の方法において、ガラスリボンの長手方向に沿った距離に関し、折割工程においてガラスリボンを引っ張る箇所から切断予定部までの離間距離を200mm以上とすることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、上述した折り割りに悪影響を及ぼす応力の切断予定部への作用を一層確実に防止することが可能となる。
【0017】
上記の方法において、ガラスリボンの長手方向における複数箇所を幅方向に引っ張ることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、一箇所のみを幅方向に引っ張った場合のように、ガラスリボンに対して局所的に力が作用して、これによりスクライブ工程および折割工程に悪影響が及ぶようなおそれを可及的に回避することが可能となる。
【0019】
また、上記の課題を解決するためのガラス板の製造装置は、縦姿勢で下方に搬送中の可撓性を有するガラスリボンを幅方向に切断することで、ガラスリボンからガラス板を切り出す切断機構を備え、切断機構が、ガラスリボンの幅方向に延びる切断予定部の一方面にスクライブ線を形成するスクライブ機構と、スクライブ線が形成されたガラスリボンの切断予定部を一方面側が凸となるように湾曲させ、スクライブ線に沿ってガラスリボンを折り割って切断する折割機構と、を有し、折割機構が、ガラスリボンを他方面側から支持する支持部材と、ガラスリボンにおける切断予定部よりも下方の部位を保持する保持部材と、下方の部位を保持した状態の保持部材をガラスリボンの一方面側から他方面側に向かって移動させることで、支持部材を支点としてガラスリボンの切断予定部を湾曲させる移動装置と、を備え、折割機構によるガラスリボンの折割時に、保持部材は、下方の部位を幅方向に引っ張ることにより、ガラスリボンにおける支持部材に支持される部位を幅方向に延ばすように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本装置によれば、上記のガラス板の製造方法と同様の作用・効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係るガラス板の製造方法および製造装置によれば、縦姿勢で下方に搬送中の可撓性を有するガラスリボンを切断してガラス板を切り出すにあたり、ガラスリボンの破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ガラス板の製造装置を示す正面図である。
図2図1におけるA-A断面を示す断面図である。
図3】ガラス板の製造方法におけるスクライブ工程を示す断面図である。
図4】ガラス板の製造方法におけるスクライブ工程を示す断面図である。
図5】ガラス板の製造方法における折割工程を示す断面図である。
図6】ガラス板の製造方法における折割工程を示す断面図である。
図7】ガラス板の製造方法における折割工程を示す断面図である。
図8】ガラス板の製造方法における折割工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係るガラス板の製造方法および製造装置について、添付の図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向である。
【0024】
<ガラス板の製造装置>
まず、図1及び図2に示したガラス板の製造装置1(以下、単に製造装置1と表記)から説明する。
【0025】
製造装置1は、縦姿勢で下方に搬送中のガラスリボンGを切断予定部Gpに沿って幅方向(X方向)に切断することで、切断予定部Gpの下方に存する切出対象部GxをガラスリボンGから切り出すための切断機構2を備えている。切断機構2によりガラスリボンGが切断されると、切出対象部Gxがガラス板Gsとして切り出される。
【0026】
製造装置1は、可撓性を有するガラスリボンGを切断の対象としている。ガラスリボンGは、ダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法)により成形されたガラスである。ガラスリボンGは、幅方向の中央に存する有効部G1と、幅方向の両端にそれぞれ存する非有効部G2とを含んでいる。有効部G1は、後に製品ガラス板となる部分を含む部位であり、非有効部G2は、製品ガラス板とはならずに廃棄される部位である。有効部G1の厚みは、一例として0.4mm以下である。なお、図1には有効部G1と非有効部G2との境界を二点鎖線で表示している。
【0027】
切断機構2は、ガラスリボンGの幅方向に延びる切断予定部Gpの一方面Gaにスクライブ線S(図3及び図4を参照)を形成するためのスクライブ機構3と、スクライブ線Sに沿ってガラスリボンGを折り割って切断(図5図8を参照)するための折割機構4とを有する。
【0028】
スクライブ機構3は、ガラスリボンGの切断予定部Gpを他方面Gb側から支持するスクライブ補助部材5と、切断予定部Gpの一方面Ga上を移動(走行)しながらスクライブ線Sを形成するスクライブ線形成具としてのスクライブホイール6とを備えている。
【0029】
スクライブ補助部材5およびスクライブホイール6の両者は、図示省略の昇降装置により上下方向(Y方向)に沿って昇降動作が可能となっている。両者5,6は、スクライブ線Sの形成時において、ガラスリボンGの下方への搬送速度と同じ速度でガラスリボンGに追従降下する。つまり、スクライブ線Sの形成時には、両者5,6とガラスリボンGとの上下方向における相対的な位置関係が変化しないようになっている。
【0030】
スクライブ補助部材5は、ガラスリボンGの幅方向に沿って長尺となるように形成されている。スクライブ補助部材5は、ガラスリボンG(切断予定部Gp)と直接に接触する接触部5aを有する。なお、図1以外の図には、スクライブ補助部材5の全体のうち、接触部5aのみを表示している。接触部5aは、ガラスリボンG(切断予定部Gp)の全幅のうち、幅方向の両端を除いた部位と接触することが可能であると共に、ガラスリボンGの幅方向に沿って凸となるように湾曲している(図3を参照)。
【0031】
ここで、本実施形態の変形例として、スクライブ補助部材5の接触部5aが、ガラスリボンGの幅方向に沿って湾曲することなく平坦に形成されていてもよい。
【0032】
スクライブホイール6は、刃状の周部を備えた円盤状の部材である。スクライブホイール6は、ガラスリボンG(切断予定部Gp)を介してスクライブ補助部材5の接触部5a上を走行する。スクライブホイール6は、走行に伴ってガラスリボンG(切断予定部Gp)の全幅のうち、幅方向の両端を除いた部位にスクライブ線Sを形成する(図3を参照)。
【0033】
スクライブ補助部材5およびスクライブホイール6の両者は、ガラスリボンGの厚み方向(Z方向)に沿って所在位置の変更が可能である。詳述すると、両者5,6は、ガラスリボンGに接触する接触位置(図2に二点鎖線で示した位置)と、ガラスリボンGから離反した待機位置(図2に実線で示した位置)との間を移動することが可能である。両者5,6は、スクライブ線Sの形成時には接触位置に存在し、スクライブ線Sの形成時以外には待機位置に存在する。
【0034】
折割機構4は、スクライブ線Sが形成されたガラスリボンGの切断予定部Gpを一方面Ga側が凸となるように湾曲させ、これに伴って切断予定部Gpに曲げ応力を作用させることで、ガラスリボンGを切断する機能を有する(図7及び図8を参照)。
【0035】
折割機構4は、ガラスリボンGを他方面Gb側から支持する支持部材7と、ガラスリボンGの切出対象部Gxを保持する保持部材8と、切出対象部Gxを保持した状態の保持部材8を移動させる移動装置9(図2では図示省略)とを備えている。なお、保持部材8および移動装置9については、折割機構4に属する一方で、ガラスリボンGの折り割り時のみでなくスクライブ線Sの形成時にも稼働する(詳細は後述)。
【0036】
支持部材7は、図示省略の昇降装置により上下方向に沿って昇降動作が可能となっている。保持部材8は、後に詳述するとおり、移動装置9により上下方向に移動が可能となっている。支持部材7および保持部材8の両部材は、ガラスリボンGの折り割り時において、ガラスリボンGの下方への搬送速度と同じ速度でガラスリボンGに追従降下する。これにより、ガラスリボンGの折り割り時には、両部材7,8とガラスリボンGとの上下方向における相対的な位置関係が変化しないようになっている。
【0037】
支持部材7は、ガラスリボンGを折り割って切断する際に、切断予定部Gpを湾曲させるための支点となる部材である。支持部材7は、ガラスリボンGの幅方向に沿って長尺となるように形成されている。支持部材7は、ガラスリボンGと直接に接触する接触部7aを有する。なお、図1以外の図には、支持部材7の全体のうち、接触部7aのみを表示している。接触部7aは、ガラスリボンGの全幅のうち、幅方向の両端を除いた部位と接触することが可能であると共に、ガラスリボンGの幅方向に沿って凸となるように湾曲している(図6を参照)。
【0038】
ここで、本実施形態の変形例として、支持部材7の接触部7aが、ガラスリボンGの幅方向に沿って湾曲することなく平坦に形成されていてもよい。
【0039】
支持部材7は、ガラスリボンGの厚み方向に沿って所在位置の変更が可能である。具体的には、支持部材7は、ガラスリボンGに接触する接触位置(図2に二点鎖線で示した位置)と、ガラスリボンGから離反した待機位置(図2に実線で示した位置)との間を移動することが可能である。支持部材7は、ガラスリボンGの折り割り時には接触位置に存在し、ガラスリボンGの折り割り時以外には待機位置に存在する。
【0040】
保持部材8は、切出対象部Gxにおける幅方向の一端側と他端側とで対向する一対のアーム10,10を有する。一対のアーム10,10の各々は、上下方向に延びるアーム本体11と、上下方向に配列された状態でアーム本体11に取り付けられた複数のチャック12とを有する。
【0041】
複数のチャック12の各々は、切出対象部Gxの非有効部G2を厚み方向(Z方向)の両方から把持する一対の爪12a,12aを備えている。一対の爪12a,12aは開閉動作が可能となっている。これにより、各爪12aを閉じた閉状態(図2に実線で示した状態)とすることで、切出対象部Gxを把持すると共に、各爪12aを開いた開状態(図2に二点鎖線で示した状態)とすることで、切出対象部Gxの把持を解除する。なお、複数のチャック12の各々は、他のチャック12とは独立して切出対象部Gxの把持および把持の解除を行うことが可能である。
【0042】
アーム本体11は、移動装置9により移動しつつ、図示省略の案内機構によりX方向に延びる軸線を中心として回転動作が可能である。回転動作の中心となる軸線は、アーム本体11よりも上方に位置している。回転動作に伴って、アーム本体11は、上下方向に平行な鉛直姿勢(図2に実線で示した姿勢)と、鉛直姿勢に対して傾いた傾斜姿勢(図2に二点鎖線で示した姿勢)とを取ることが可能となっている。これにより、複数のチャック12が切出対象部Gxを把持した状態の下、アーム本体11の姿勢が鉛直姿勢から傾斜姿勢に移行することで、ガラスリボンGの切断予定部Gpを湾曲させる。
【0043】
移動装置9は、アーム10を上下方向(Y方向)に移動させるための第一機構13と、アーム10をガラスリボンGの幅方向(X方向)に移動させるための第二機構14と、アーム10をガラスリボンGの厚み方向(Z方向)に移動させるための第三機構15とを備えている。
【0044】
第一機構13は、アーム10(アーム本体11)と組み付けられたプレート16と、プレート16の上下動を案内するためのガイドレール17と、プレート16が上下動するための動力を付与するボールネジ18と、ガイドレール17およびボールネジ18が設置されたフレーム19と、ボールネジ18と連結されたサーボモーター20とを有する。
【0045】
本製造装置1では、第一機構13の稼働によりプレート16が上下動することで、アーム10が上下方向に移動する。そして、プレート16が下方に移動することで、アーム10がガラスリボンGに追従降下する。
【0046】
第二機構14は、フレーム19と固定されたプレート21と、ガラスリボンGの幅方向に沿ったプレート21の移動を案内するためのガイドレール22と、プレート21が移動するための動力を付与するボールネジ23と、ガイドレール22およびボールネジ23が設置されたフレーム24と、ボールネジ23と連結されたサーボモーター25とを有する。
【0047】
本製造装置1では、第二機構14の稼働によりプレート21が移動することで、ガラスリボンGの幅寸法の大小に合わせてアーム10の位置を調節することが可能となっている。さらに、一対のアーム10,10に切出対象部Gxを保持させた状態の下、プレート21の移動に伴って各アーム10を幅方向の外側に移動させることで、切出対象部Gxを幅方向に引っ張ることが可能となっている(図3および図6を参照)。なお、アーム10が複数のチャック12を有するため、切出対象部GxはガラスリボンGの長手方向(Y方向)における複数箇所を幅方向に引っ張られる。
【0048】
第三機構15は、ガラスリボンGの厚み方向に沿ったフレーム24の移動を案内するためのガイドレール26と、フレーム24が移動するための動力を付与するボールネジ27と、ガイドレール26およびボールネジ27が設置されたベース28と、ボールネジ27と連結された図示省略のサーボモーターとを有する。
【0049】
本製造装置1では、第三機構15の稼働によりフレーム24が移動するのに伴って、アーム本体11の姿勢が鉛直姿勢から傾斜姿勢に移行しつつ、アーム10がガラスリボンGの一方面Ga側から他方面Gb側に向かって移動する。
【0050】
<ガラス板の製造方法>
以下、上記の製造装置1を用いたガラス板の製造方法について説明する。
【0051】
本製造方法では、ダウンドロー法により成形したガラスリボンGからガラス板Gsを切り出すにあたり、ガラスリボンGにスクライブ線Sを形成するスクライブ工程P1(図3及び図4)と、ガラスリボンGをスクライブ線Sに沿って折り割って切断する折割工程P2(図5図8)とを実行する。
【0052】
図3及び図4に示したスクライブ工程P1では、まず、成形後に下方に搬送中のガラスリボンGについて、当該ガラスリボンGに追従降下する一対のアーム10,10によりガラスリボンGの切出対象部Gxを保持させる。具体的には、一対のアーム10,10の各々が有する複数のチャック12のそれぞれにおいて、一対の爪12a,12aを開状態から閉状態とすることで切出対象部Gxを把持させる。
【0053】
このとき、ガラスリボンGの長手方向(Y方向)に沿った距離に関し、複数のチャック12のうちの最上段のチャック12からガラスリボンGの切断予定部Gpまでの離間距離L1は、100mm以下とすることが好ましい。離間距離L1を100mm以下とするのは、後述する切断予定部Gp上の皺や弛みを消失させる効果を好適に得るためである。なお、最上段のチャック12がスクライブ補助部材5およびスクライブホイール6と干渉しないようにするため、離間距離L1は、30mm以上とすることが好ましい。
【0054】
次に、切出対象部Gxを保持した状態の一対のアーム10,10の各々をガラスリボンGの幅方向の外側に移動させることで、各チャック12により切出対象部Gxを幅方向に引っ張る。このとき、各アーム10を幅方向の外側に移動させる距離としては、例えば1mm~2mmである。ここで、一対のアーム10,10の一方と他方とが移動する距離は、本実施形態のように均等としてもよいし、本実施形態とは違って不均等としてもよいし、一方のアーム10のみを移動させてもよい。切出対象部Gxの引っ張りに伴い、ガラスリボンGの切断予定部Gpを幅方向に延ばす。これにより、切断予定部Gp上に存在する皺や弛み(図3に二点鎖線で示す)を幅方向に延ばして消失させる。
【0055】
次に、スクライブ補助部材5およびスクライブホイール6の両者をガラスリボンGに追従降下させつつ、両者5,6をそれぞれ待機位置から接触位置に移動させる。これにより、スクライブ補助部材5の接触部5aがガラスリボンG(切断予定部Gp)と接触し、切断予定部Gpが幅方向に沿って一方面Gaが凸となるように湾曲した状態となる。この状態の下、スクライブホイール6に切断予定部Gpの一方面Ga上を走行させることで、スクライブ線Sを形成する。以上によりスクライブ工程P1が完了する。
【0056】
なお、スクライブ工程P1の完了後には、スクライブ補助部材5およびスクライブホイール6の両者を接触位置から待機位置に移動させる。さらに、両者5,6をスクライブ線Sの形成前の高さ位置まで上昇させる。一方、一対のアーム10,10のガラスリボンGへの追従降下、及び、各チャック12による切出対象部Gxの幅方向への引っ張りは継続させる。各チャック12による切出対象部Gxの引っ張りは、折割工程P2の実行によりガラスリボンGからガラス板Gsが切り出されるまで継続させる。
【0057】
ここで、本実施形態では、一対のアーム10,10を移動させて切出対象部Gxを幅方向に引っ張った後(切断予定部Gpを幅方向に延ばした後)、スクライブ補助部材5およびスクライブホイール6を待機位置から接触位置に移動させている。しかしながらこの限りではなく、本実施形態の変形例として、スクライブ補助部材5を待機位置から接触位置に移動させた後、一対のアーム10,10を移動させて切出対象部Gxを引っ張るようにしてもよい。そして、更にその後、スクライブホイール6を待機位置から接触位置に移動させるようにしてもよい。
【0058】
図5に示すように、折割工程P2では、まず、複数のチャック12のうちの最上段のチャック12について、一対の爪12a,12aを閉状態から開状態とすることで、切出対象部Gxの把持を解除する。最上段を除いた残りのチャック12については、切出対象部Gxの把持を継続させる。これにより、折割工程P2の実行時には、スクライブ工程P1の実行時と比較して、切断予定部Gpから遠い箇所で切出対象部Gxを引っ張っている。
【0059】
このとき、ガラスリボンGの長手方向(Y方向)に沿った距離に関し、上から二段目のチャック12(切出対象部Gxを把持した状態にあるチャック12の中で最上方のチャック12)からガラスリボンGの切断予定部Gpまでの離間距離L2は、200mm以上とする。勿論、離間距離L2は上記の離間距離L1よりも長い。離間距離L2を200mm以上とするのは、ガラスリボンGを折り割る際に、切断予定部Gpの湾曲の曲率が過大になることを回避するためである。
【0060】
次に、支持部材7をガラスリボンGに追従降下させつつ、待機位置から接触位置に移動させる。これにより、支持部材7の接触部7aがガラスリボンGと接触する。本実施形態では、切断予定部Gpよりも上方で接触部7aをガラスリボンGに接触させる。勿論この限りではなく、本実施形態の変形例として、接触部7aを切断予定部Gpに接触させてもよい。支持部材7の接触部7aがガラスリボンGと接触すると、図6に示すように、ガラスリボンGにおける支持部材7に支持される部位(以下、被支持部と表記)が幅方向に沿って一方面Gaが凸となるように湾曲した状態となる。
【0061】
ここで、上述のとおりスクライブ工程P1の実行時から継続して、各チャック12により切出対象部Gxを幅方向に引っ張っている。これにより、ガラスリボンGの被支持部は幅方向に延ばされた状態の下、つまり皺や弛み(図6に二点鎖線で示す)が消失した状態の下、支持部材7の接触部7aと接触する。なお、スクライブ工程P1と折割工程P2との間で、各チャック12により切出対象部Gxを幅方向に引っ張るために、各アーム10を幅方向の外側に移動させる距離は、本実施形態のように同じであってもよいし、本実施形態とは違って異なっていてもよい。
【0062】
次に、図7に示すように、アーム本体11を回転動作させることで、アーム本体11の姿勢を鉛直姿勢から傾斜姿勢に移行させる。これにより、ガラスリボンGの切断予定部Gpを湾曲させる。湾曲に伴って切断予定部Gpに曲げ応力が作用すると、スクライブ線Sに沿ってガラスリボンGが折り割られる。そして、図8に示すように、ガラスリボンGからガラス板Gsが切り出される。以上により折割工程P2が完了する。
【0063】
なお、折割工程P2の完了後は、支持部材7を接触位置から待機位置に移動させる。さらに、支持部材7をガラスリボンGの折り割り前の高さ位置まで上昇させる。また、ガラスリボンGから切り出したガラス板Gsは、ガラス板Gsを下流工程に移送するための図示省略の移送装置に受け渡す。移送装置へのガラス板Gsの受け渡し後には、一対のアーム10,10がスクライブ線Sの形成前の位置に復帰する。
【0064】
以下、上記の製造装置1および製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0065】
上記の製造装置1および製造方法では、ガラスリボンGにおける切出対象部Gxを幅方向に引っ張って、ガラスリボンGにおける被支持部(支持部材7に支持される部位)を幅方向に延ばしてから、切断予定部Gpを湾曲させている。そのため、可撓性に由来してガラスリボンGに皺や弛みが生じた場合でも、少なくとも被支持部においては、ガラスリボンGを折り割る前(切断予定部Gpを湾曲させる前)に皺や弛みを幅方向に延ばして消失させることが可能となる。これにより、折り割りに際し、皺や弛みに起因して、支持部材7(接触部7a)の一部の箇所がガラスリボンGと非接触の状態となることを防止できる。その結果、折り割り時にガラスリボンGに形成される切断部がスクライブ線Sから逸れることを回避でき、ガラスリボンGの破損を防止することが可能となる。
【0066】
ここで、上記の実施形態に対しては、以下のような変形例を適用することも可能である。上記の実施形態では、一対のアーム10,10をガラスリボンGの幅方向の外側に移動させるのに伴い、切出対象部Gxを幅方向に引っ張っている。しかしながら、変形例として、切出対象部Gxを幅方向に引っ張ることが可能な限りで任意の機構を採用してよい。また、上記の実施形態では、スクライブ工程P1と折割工程P2との間で、同一の手段(一対のアーム10,10)により切出対象部Gxを幅方向に引っ張っている。しかしながら、変形例として、スクライブ工程P1と折割工程P2との間で、異なる手段(装置や機構)により切出対象部Gxを幅方向に引っ張るようにしてもよい。更なる変形例として、切出対象部Gxの幅方向への引っ張りは、折割工程P2のみで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ガラス板の製造装置
2 切断機構
3 スクライブ機構
4 折割機構
5 スクライブ補助部材
5a 接触部
6 スクライブホイール
7 支持部材
7a 接触部
8 保持部材
9 移動装置
10 アーム
G ガラスリボン
Ga 一方面
Gb 他方面
Gp 切断予定部
Gs ガラス板
Gx 切出対象部
L1 離間距離
L2 離間距離
P1 スクライブ工程
P2 折割工程
S スクライブ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8