(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20241128BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241128BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20241128BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/04 105
H04N1/00 567H
G03B27/62
G03B27/50 A
(21)【出願番号】P 2020217754
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆志
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
G06T 1/00
G03B 27/50-27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に対し読み取りを行う読取センサと、原稿を載置する原稿台と、制御部と、を備える読取装置であって、
前記原稿台は、
第1原稿と、副走査方向のサイズが前記第1原稿よりも大きい第2原稿と、を載置可能であり、
前記制御部は、
読取動作をさせない状態の前記読取センサを、初期位置から、前記第1原稿の端部を検出開始するための待機位置として予め決められている第1位置まで移動させる移動処理と、
前記読取センサを前記第1位置から前記副走査方向に所定距離移動させながら前記原稿の端部検出のための読取動作をさせる第1予備スキャン処理と、
前記第1予備スキャン処理での読み取り結果において
主走査方向である第1方向における前記原稿の端部及び当該第1方向に直交する
、前記副走査方向である第2方向における前記原稿の端部がそれぞれ検出された場合、又は、前記第1方向における前記原稿の端部及び前記第2方向における前記原稿の端部がいずれも検出されなかった場合、前記読取センサを前記初期位置へと移動させつつ読取動作をさせて前記原稿の端部の検出を行う、第2予備スキャン処理と、
前記第1予備スキャン処理での読み取り結果において前記第2方向における原稿の端部が検出されずかつ前記第1方向における前記原稿の端部が検出された場合には、前記読取センサを前記初期位置から離れる方向へ移動させつつ読取動作をさせて前記第2方向における前記原稿の端部の検出を行う第3予備スキャン処理と、
前記第2予備スキャン処理又は前記第3予備スキャン処理にて前記原稿の端部が検出されたら、前記読取センサを前記初期位置へと移動させつつ前記原稿の内容を取得するための読取動作を行う第1本スキャン処理と、
を実行する、読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、
前記原稿のサイズについての指定入力がなされているか否かを判定するサイズ指定判定処理を実行し、
前記サイズ指定判定処理により前記サイズについての指定入力がなされていないと判定された場合に、前記第2予備スキャン処理、前記第3予備スキャン処理を行う、請求項1記載の読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、
前記サイズ指定判定処理により前記原稿のサイズについて特定サイズの指定入力がなされていると判定された場合に、前記読取センサを、前記第1位置から前記特定サイズの前記第2方向における端部に対応する第2位置まで移動させた後、前記初期位置に近づく方向へ移動させつつ前記原稿の内容を取得するための読取動作を行う第2本スキャン処理を実行する、請求項2記載の読取装置。
【請求項4】
前記原稿台のカバーをさらに備え、
前記制御部は、さらに、
前記カバーの開閉を検知する開閉検知処理を実行し、
前記開閉検知処理において前記カバーが開けられたことを検知したら前記移動処理を実行し、
前記開閉検知処理において前記カバーが閉じられたことを検知したら前記第1予備スキャン処理を実行する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記第2予備スキャン処理又は前記第3予備スキャン処理で検出された前記原稿の端部に基づき、前記第1本スキャン処理で前記読取センサが読み取る読取対象領域を決定する領域決定処理を実行し、
前記第1本スキャン処理において、前記領域決定処理により決定された前記読取対象領域への読取動作を前記読取センサに実行させる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置台に載置された原稿に対して読み取りを行う読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、原稿の読み取りを実行すべき読取対象領域を決定するための読取機構の読取位置を、ホーム位置から指定シートサイズに応じた位置に変更する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、原稿の読取サイズが指定された場合に、その指定に対応した位置に読取位置を変更することで、読取対象領域を決定する予備スキャンに要する時間の短縮が図られる。しかしながら、原稿の読取サイズが特に指定されていない場合における予備スキャンの所要時間の短縮については、特に考慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、原稿の読取サイズが特に指定されていなくても、予備スキャンに要する時間を短くすることができる読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、原稿に対し読み取りを行う読取センサと、原稿を載置する原稿台と、制御部と、を備える読取装置であって、前記原稿台は、第1原稿と、副走査方向のサイズが前記第1原稿よりも大きい第2原稿と、を載置可能であり、前記制御部は、読取動作をさせない状態の前記読取センサを、初期位置から、前記第1原稿の端部を検出開始するための待機位置として予め決められている第1位置まで移動させる移動処理と、前記読取センサを前記第1位置から前記副走査方向に所定距離移動させながら前記原稿の端部検出のための読取動作をさせる第1予備スキャン処理と、前記第1予備スキャン処理での読み取り結果において第1方向における前記原稿の端部及び当該第1方向に直交する第2方向における前記原稿の端部がそれぞれ検出された場合、又は、前記第1方向における前記原稿の端部及び前記第2方向における前記原稿の端部がいずれも検出されなかった場合、前記読取センサを前記初期位置へと移動させつつ読取動作をさせて前記原稿の端部の検出を行う、第2予備スキャン処理と、前記第1予備スキャン処理での読み取り結果において前記第2方向における原稿の端部が検出されずかつ前記第1方向における前記原稿の端部が検出された場合には、前記読取センサを前記初期位置から離れる方向へ移動させつつ読取動作をさせて前記第2方向における前記原稿の端部の検出を行う第3予備スキャン処理と、前記第2予備スキャン処理又は前記第3予備スキャン処理にて前記原稿の端部が検出されたら、前記読取センサを前記初期位置へと移動させつつ前記原稿の内容を取得するための読取動作を行う第1本スキャン処理と、を実行する。
【0007】
本願発明においては、原稿台には、第1原稿と、副走査方向のサイズがそれよりも大きい第2原稿とが載置可能である。原稿台に原稿が載置された状態で、制御部は、移動処理と、第1予備スキャン処理と、を実行する。移動処理では、読取センサが、読取動作をしない状態で初期位置から第1位置まで移動する。第1位置は、予め、第1原稿の端部を検出開始するための待機位置として決められている位置である。第1予備スキャン処理では、読取センサが第1位置から副走査方向に所定距離移動しながら原稿の端部検出のための読取動作を行う。
【0008】
第1予備スキャン処理の検出結果に応じて、第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理が選択的に実行される。第1方向における原稿の端部及び第2方向における原稿の端部がそれぞれ検出された場合、又は、第1方向における原稿の端部及び第2方向における原稿の端部がいずれも検出されなかった場合は、第2予備スキャン処理が行われる。第2予備スキャン処理では、読取センサが初期位置へ移動しつつ読取動作を行い、原稿の端部の検出を行う。第2方向における原稿の端部が検出されずかつ第1方向における原稿の端部が検出された場合には、第3予備スキャン処理が行われる。第3予備スキャン処理では、読取センサが初期位置から離れる方向へ移動しつつ読取動作を行い、第2方向における原稿の端部の検出を行う。
【0009】
第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理にて原稿の端部が検出されることで読取対象領域が決定したら、第1本スキャン処理が行われる。第1本スキャン処理では、読取センサが初期位置へと移動しつつ、原稿の内容を取得するための読取動作を行う。
【0010】
本願発明によれば、原稿の読取サイズが特に指定されていなくても、第1予備スキャン処理の結果に応じた最適な第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理が選択的に行われ、原稿の端部が検出される。これにより、載置台上に第1原稿及び第2原稿のいずれが載置された場合であっても、予備スキャン全体に要する時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿の読取サイズが特に指定されていなくても、予備スキャンに要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態によるスキャナの内部構造を表す側断面図と回動カバーを開いた状態の平面図である。
【
図3】ガラス板上に載置された各用紙サイズの原稿の配置関係を表す図である。
【
図4】イメージセンサの初期位置から第1開始位置までの直行移動と、第1予備スキャン処理でのエッジ検出移動をそれぞれ表す図である。
【
図5】イメージセンサの第1開始位置から指定用紙サイズの後端位置までの前側への直行移動と、指定用紙サイズの読取対象領域に対する画像スキャン移動をそれぞれ表す図である。
【
図6】イメージセンサの第1開始位置から指定用紙サイズの後端位置までの後ろ側への直行移動と、指定用紙サイズの読取対象領域に対する画像スキャン移動をそれぞれ表す図である。
【
図7】イメージセンサの第2予備スキャン処理でのエッジ検出移動と、原稿の読取対象領域に対する画像スキャン移動をそれぞれ表す図である。
【
図8】イメージセンサの第3予備スキャン処理でのエッジ検出移動と、原稿の読取対象領域に対する画像スキャン移動をそれぞれ表す図である。
【
図9】ラインスキャンデータの逆整列処理について説明する図である。
【
図10】原稿セット処理の制御手順の一例を表すフローチャートである。
【
図11】スキャン処理の制御手順の一例を表すフローチャートである。
【
図12】スキャン処理の制御手順の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<スキャナの全体構成>
本発明の一実施形態によるスキャナ1の全体構成を
図1に示す。
図1(a)はスキャナの内部構造を表す側断面図を示し、
図1(b)は後述の回動カバーを開いた状態で
図1(a)中の矢視Ibから見たスキャナの平面図を示している。この
図1において、スキャナ1は、装置本体2を備えており、この装置本体2に、ヒンジ3と、回動カバー4と、開閉検出スイッチ5と、白テープ6と、ガラス板7と、イメージセンサ8と、ガイドレール9と、が備えられている。ヒンジ3のある側がスキャナ1の前側であり、その逆側がスキャナ1の後側である。またガラス板7のある側がスキャナ1の上側であり、その逆側がスキャナ1の下側である。なお、スキャナ1が読取装置の一例である。
【0014】
装置本体2は中空の箱形形状に形成された構造物であり、その上平面に矩形形状のガラス板7が水平に広く張り渡されるよう設けられている。なお、このガラス板7が原稿台の一例である。このガラス板7のすぐ下にはガイドレール9に沿って前後方向に移動可能なイメージセンサ8が設けられている。イメージセンサ8は、図中の左右方向におけるガラス板7の全体に渡って延伸したライン画像読取りセンサであり、図示しないモータと送りネジなどの駆動によって図中の前後方向におけるガラス板7の全体に渡って移動する。これによりイメージセンサ8は、ガラス板7の上表面に載置された原稿Pの下面全体における表記画像を光学的に読み取る(以下、スキャンするという)ことができる。
【0015】
また、装置本体2の上平面の前側に配置されたヒンジ3を介して回動カバー4が設けられており、この回動カバー4の全体がヒンジ3を中心に回動することで当該スキャナ1に対する開閉動作が可能となっている。ユーザは回動カバー4を開いた状態で原稿Pをガラス板7上に載置し、回動カバー4を閉じた状態でイメージセンサ8に原稿Pの下面をスキャンさせる。なお、回動カバー4が原稿台のカバーの一例である。
【0016】
また、装置本体2の上平面には、上記回動カバー4の開閉状態を検出する開閉検出スイッチ5が設けられている。また、装置本体2の上壁の内面側でガラス板7よりも少し前側には、図中の左右方向に渡って延伸した形状の白テープ6が貼り付けられており、上記のイメージセンサ8はこの白テープ6の下方位置まで前側に移動可能となっている。
【0017】
<制御系>
前述のモータの回転及び停止を含むスキャナ1各部の動作は、特定用途向け集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)20により制御される。ASIC20を含むスキャナ1の制御系を表すブロック図を
図2に示す。
図2に示すように、ASIC20には、CPU100が含まれる。ASIC20には、ROM110と、RAM120と、所望の表示を行うと共にユーザが操作可能なタッチパネル130と、回転駆動回路150と、ネットワーク制御部170と、イメージセンサ8がそれぞれ接続されている。なお、CPU100は制御部の一例である。
【0018】
ROM110には、後述の
図10~
図12にそれぞれ示す各フローチャートを実行するための制御プログラムを含む、スキャナ1が動作するのに必要な各種制御プログラムが記憶されている。CPU100は、ROM110から読み出したプログラムに従って各部の制御を行うとともに、後述する
図10~
図12にそれぞれ示す各フローチャートを実行する。また、RAM120の記憶領域の一部には、イメージセンサ8で原稿Pを画像スキャンした結果の画像データを記憶する画像データ記憶領域120aが設定されている。
【0019】
また、CPU100は、ASIC20を介して前述のモータの回転を制御する回転駆動回路150へ駆動制御信号を出力することで、モータの回転を制御する。さらにCPU100は、ASIC20を介してネットワーク制御部170を制御することで、無線又は有線によるネットワーク通信を介し、外部端末300との間で後述する画像データを含む各種情報の送受信を行う。
【0020】
イメージセンサ8は、出射光Laを一点照射するよう発光する発光部8aと、発光部8aから発光された出射光Laの反射光Lbを受光可能な受光部8bと、を有するセンサ素子を、上記
図1中の左右方向に渡って一列に多数個配列した構成の反射型のセンサである。なお、これら多数個のセンサ素子どうしの間では、経年劣化などによって個々の受光強度に差が生じることがある。そのため毎回のスキャン動作前には光の反射が一様な上記の白テープ6の下方位置でイメージセンサ8にスキャン動作を実行させ、それにより個々のセンサ素子で検出された受光強度データ間でのシェーディング補正を行う必要がある。なお、このイメージセンサ8が読取センサの一例である。
【0021】
<適用する定型用紙サイズと配置関係について>
本実施形態のスキャナ1では、主にA5、A4、A3、及びLetterの各定型用紙サイズにある原稿Pをスキャン対象として適用するものとし、それらを上記のガラス板7上に載置する際には上記
図1(b)に対応する
図3に示すような配置でセットされる。具体的には、本実施形態の例では矩形形状のガラス板7自体がその長手方向及び幅方向の両方の寸法でA3の原稿Pよりも少しだけ大きく形成されており、その長手方向が当該スキャナ1の前後方向と平行となる姿勢で配置されている。そしてユーザが手作業で原稿Pをガラス板7状に載置する際には、そのガラス板7の前方右側の角点である載置基準点Tに原稿Pのいずれかの一点の角点を合わせ、当該原稿Pの各辺を前後方向と左右方向に対して平行または直交させる、いわゆる前詰めかつ右詰めの配置で載置させるものとする。なお、用紙サイズがA3の原稿Pに対してはその長手方向を前後方向に平行とする横置きの姿勢でしか載置できないが、その他の用紙サイズの原稿Pに対してはその横置きの姿勢と、長手方向を左右方向に平行とする縦置きの姿勢とをユーザが任意で選択して載置してよいとする。
【0022】
そしてA4の定型サイズ(297mm×210mm)は、A3の定型サイズ(420mm×297mm)を長手方向に2分割した大きさであり、A5の定型サイズ(210mm×148.5mm)は、A4の定型サイズを長手方向に2分割した大きさである。また、Letterの定型サイズ(279.4mm×215.9mm)は、A4の定型サイズよりも長手方向寸法が少し短く幅方向寸法が少し長い大きさである。これらの各定型サイズの原稿Pを上記の載置条件に従ってガラス板7上に載置した場合には
図3に示すような位置と姿勢の配置関係となり、それぞれのイメージセンサ8による読取対象領域が一意に決まる。この読取対象領域についてこの例では、A5横置き配置、A5縦置き配置、A4横置き配置、A4縦置き配置、Letter横置き配置、Letter縦置き配置、及びA3横置き配置のそれぞれに対応した7通りの読取対象領域のいずれか1つとなる。
【0023】
このうち特にA5横置き配置の場合の後端位置と、A4縦置き配置の場合の後端位置とが一致し、またそれより少しの離間距離(5.9mm)だけ後側にLetter縦置き配置の場合の後端位置が位置する配置関係となる。また、A3横置き配置の場合には、その後端と左端で少しだけガラス板7の縁部との間に隙間が空く配置となる。なお、この例のA5横置き、A4縦置き、及びLetter縦置きのそれぞれの読取対象領域に対応する原稿Pが第1原稿の一例であり、この例のA4横置き、Letter横置き、A3横置きのそれぞれの読取対象領域に対応する原稿Pが第2原稿の一例である。
【0024】
<イメージセンサの詳細について>
また、この
図3中においては図示の煩雑を回避するためにイメージセンサ8の図示を省略しているが、そのイメージセンサ8は上述したようにガラス板7の左右の延伸方向に多数個のセンサ素子を一列に配列したライン画像読取りセンサである。それが、前後方向における一方側から他方側へ向けてガラス板7の下方で移動することにより、原稿Pの下面全体における表記画像を光学的にスキャンできる。このとき、イメージセンサ8で一括してスキャンできる1ライン分の方向、つまり上記の延伸方向で、特に本実施形態では図示する例の上下を主走査方向と呼称する。また、イメージセンサ8が移動する前後方向を副走査方向と呼称する。なお、主走査方向が第1方向の一例であり、副走査方向が第2方向の一例である。
【0025】
そしてイメージセンサ8の各センサ素子は、ガラス板7を介して原稿Pの表面領域と上記回動カバー4の下面領域とを区別して認識可能な程度に高い感度を有している。このため、イメージセンサ8は副走査方向の所定位置で、センサ素子どうしの間の受光強度の差に基づいて原稿Pの表面領域と回動カバー4の下面領域の境界の有無、つまり主走査方向における原稿Pのエッジの有無を検出できる。また、イメージセンサ8は副走査方向での移動中に、1ライン全体での受光強度の変化に基づいて原稿Pの表面領域と回動カバー4の下面領域の境界の位置、つまり副走査方向における原稿Pのエッジ位置を検出できる。なお、イメージセンサ8によるこのエッジ検出と上記の画像スキャンとは内部的な処理が異なり、エッジ検出の方が画像スキャンよりも比較的簡易な処理で行える。ここで簡易な処理とは、例えば、イメージセンサ8で設定可能な読取解像度のうち、最も低解像度でスキャンをすることを含む。また、このイメージセンサ8によるエッジ検出が端部検出のための読取動作の一例である。
【0026】
またイメージセンサ8は、上述したように原稿Pに対するスキャン動作の実行前に毎回白テープ6の下方位置でシェーディング補正を行う必要がある。このため本実施形態では、上記の開閉検出スイッチ5が回動カバー4の閉状態から開状態への変化を検出してユーザによる原稿Pの載置作業が行われていることが推定された際には、CPU100が回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を白テープ6の下方位置である初期位置HPまで移動させ、すぐにシェーディング補正の処理を行う。なお本実施形態の例では、イメージセンサ8の副走査方向における移動速度について、上記初期位置HPなどの特定位置まで直行する移動速度と、上記のエッジ検出をしながらの移動速度と、原稿Pの画像スキャンをしながらの移動速度がいずれも同じ速度とする。
【0027】
<第1予備スキャン処理について>
以上のようなスキャナ1の構成から、その画像スキャン動作の全体に係る所要時間は主に副走査方向におけるイメージセンサ8の画像スキャン移動距離、すなわち原稿Pの副走査方向における長さ寸法の大きさに強く依存する。このため、この画像スキャン動作全体の所要時間を短縮するためには、あらかじめイメージセンサ8の読取対象領域、すなわち原稿Pの用紙サイズとその載置姿勢を特定している必要がある。これに対してユーザがあらかじめ上記のタッチパネル130や外部端末300での入力操作を介して原稿Pの用紙サイズと載置姿勢を指定している場合には、その指定に基づいて読取対象領域を一意に特定できる。
【0028】
しかし、ユーザからそのような指定がない場合、原稿Pが載置された後で画像スキャン動作を実行する直前に当該原稿Pの用紙サイズとその載置姿勢を迅速に特定するための予備スキャン処理を、画像スキャンよりも簡易に行えるエッジ検出によって別途実行する必要がある。しかし上述したように、原稿Pの載置作業時にはイメージセンサ8がガラス板7よりも少し前側の初期位置HPに位置しており、そこからイメージセンサ8にエッジ検出させながら副走査方向の後側へ移動させた場合には原稿Pの副走査方向の長さ寸法全体に渡ってエッジ検出移動させなければならず、当該予備スキャン処理自体に係る所要時間が長くかかってしまう。
【0029】
そこで本実施形態では、上述したA5横置き配置の後端位置と、A4縦置き配置の後端位置と、Letter縦置き配置の後端位置とが一致または密集している狭い領域を最初にエッジ検出することで、載置されている原稿Pがそれらの用紙サイズと載置姿勢にあるか否かを検出する第1予備スキャン処理を優先的に実行する。具体的には、上記
図3に示しているように、A5横置き配置の後端位置とA4縦置き配置の後端位置とが一致している位置よりも少し前側の副走査方向位置を第1開始位置S1とする。なお、この第1開始位置S1が待機位置と第1位置の一例である。また、Letter縦置き配置の後端位置よりも少し後側の副走査方向位置を第1終了位置S2とする。そして第1予備スキャン処理として、イメージセンサ8にこれら第1開始位置S1と第1終了位置S2の間の領域をエッジ検出させる。第1開始位置S1と第1終了位置S2のそれぞれの正確な副走査方向位置としては、イメージセンサ8がA5横置き配置の後端位置と、A4縦置き配置の後端位置と、Letter縦置き配置の後端位置のいずれに対しても確実にエッジ検出できる程度でかつできるだけ短い間隔幅となる位置に設定すればよい。
【0030】
また、この第1予備スキャン処理までの具体的な工程としては、まず回動カバー4の開状態を検出してイメージセンサ8が初期位置HPでシェーディング補正を行った後、すぐに
図4(a)に示すようにイメージセンサ8を初期位置HPから第1開始位置S1まで直行移動させる。イメージセンサ8を直行移動させている間は、イメージセンサ8にスキャンをさせていない。その後に回動カバー4の閉状態が検出された際には、その時点でガラス板7上に原稿Pが載置されているとして、
図4(b)に示すように第1開始位置S1から第1終了位置S2までイメージセンサ8にエッジ検出移動させて第1予備スキャン処理を実行する。
【0031】
そして、以上の第1予備スキャン処理によって、イメージセンサ8が主走査方向と副走査方向の両方で原稿Pのエッジを検出できていた場合には、載置された原稿Pの読取対象領域がA5横置き、A4縦置き、又はLetter縦置きのいずれか1つに対応するものであると判定できる。また、主走査方向と副走査方向のいずれにおいても原稿Pのエッジを検出できなかった場合には、A5縦置きに対応する読取対象領域であると判定できる。また、主走査方向においては原稿Pのエッジを検出できたものの、副走査方向においては原稿Pのエッジを検出できなかった場合には、A4横置き、Letter横置き、又はA3横置きのいずれか1つに対応する読取対象領域であると判定できる。そして以上をまとめると、主走査方向におけるエッジが検出され、かつ副走査方向におけるエッジが検出されなかった場合には、原稿Pの読取対象領域がA4横置き、Letter横置き、又はA3横置きのいずれか1つに対応するものであると判定できる。すなわち、当該読取対象領域の後端位置は第1終了位置S2より後側に位置していると判定できる。そしてその他の場合には、原稿Pの読取対象領域がA5縦置き、A5横置き、A4縦置き、Letter縦置きのいずれか1つに対応するものであると判定できる。すなわち、当該読取対象領域の後端位置は第1終了位置S2より前側に位置していると判定できる。
【0032】
なお、上記の第1予備スキャン処理は回動カバー4の閉動作に同期して必ず実行されるものであり、その実行後にはイメージセンサ8が第1終了位置S2に位置している。しかし、当該第1予備スキャン処理の実行後から次に画像スキャンの開始が指示されるまでの間に、ユーザによって原稿Pの用紙サイズと載置姿勢の指定操作が別途行われる場合もある。このような場合には、既に実行済みの第1予備スキャン処理の検出結果は利用されず、指定された用紙サイズと載置姿勢に対応した読取対象領域の後端位置に強制的にイメージセンサ8を直行移動させる。なお、この場合にユーザから指定された用紙サイズが特定サイズの一例である。
【0033】
このとき、例えばA5横置きが指定されている場合のようにその後端位置が第1終了位置S2より前側に位置している場合には、
図5(a)に示すようにイメージセンサ8が第1終了位置S2から前側へ向かう方向で後端位置まで直行移動する。そして後端位置に到着後には、
図5(b)に示すように引き続き前側へ向かう方向、つまり初期位置HPへ向かう方向でイメージセンサ8が移動しながら画像スキャンする。この場合でも、最初にイメージセンサ8が初期位置HPから移動を開始してA5横置きの読取対象領域に対し画像スキャン移動する場合と同等の所要時間で済む。
【0034】
また、例えばA4横置きが指定されている場合のようにその後端位置が第1終了位置S2より後側に位置している場合には、
図6(a)に示すようにイメージセンサ8が第1終了位置S2から後側へ向かう方向で後端位置まで直行移動する。そして後端位置に到着後には、
図5(b)に示すように引き続き後側へ向かう方向、つまり初期位置HPから離れる方向でイメージセンサ8が移動しながら画像スキャンする。この場合には、最初にイメージセンサ8が初期位置HPから移動を開始してA4横置きの読取対象領域に対し画像スキャン移動する場合よりも所要時間が増大するが、その増大時間分は比較的少なく済む。なお、上記
図5(a)と
図6(a)のそれぞれの場合における原稿Pの後端位置が第2位置の一例である。
【0035】
<第2予備スキャン処理、第3予備スキャン処理について>
上述したように第1予備スキャン処理によれば、用紙サイズと載置姿勢が指定されていない原稿Pについてその読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも前側と後側のいずれの側に位置しているかを自動的に判定できる。
【0036】
そして本実施形態では、この第1予備スキャン処理によって、例えばA5縦置きの場合のように読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも前側に位置していると判定された場合には、
図7(a)に示すような第2予備スキャン処理を実行する。具体的には、イメージセンサ8が第1終了位置S2から前側へ向かう方向で原稿Pの後端位置を検出するまでエッジ検出移動する。このような第2予備スキャン処理では、最初にイメージセンサ8が初期位置HPからエッジ検出移動を開始してA5縦置きの読取対象領域の後端位置まで到達するよりも所要時間を短縮化できる。そして第2予備スキャン処理で後端位置に到着した後には、
図7(b)に示すように引き続き前側へ向かう方向、つまり初期位置HPへ向かう方向でイメージセンサ8が移動しながら画像スキャンする。
【0037】
また、第1予備スキャン処理によって、例えばA4横置きの場合のように読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも後側に位置していると判定された場合には、
図8(a)に示すような第3予備スキャン処理を実行する。具体的には、イメージセンサ8が第1終了位置S2から後側へ向かう方向で原稿Pの後端位置を検出するまでエッジ検出移動する。このような第3予備スキャン処理では、最初にイメージセンサ8が初期位置HPからエッジ検出移動を開始してA4横置きの読取対象領域の後端位置まで到達するよりも大幅に所要時間を短縮化できる。そして第3予備スキャン処理で後端位置に到着した後には、
図8(b)に示すように折り返し前側へ向かう方向、つまり初期位置HPへ向かう方向でイメージセンサ8が移動しながら画像スキャンする。
【0038】
<ラインスキャンデータの逆整列処理について>
なお、上記の
図5(b)、
図6(b)、
図7(b)、及び
図8(b)で実行されるいずれの場合の画像スキャンにおいても、イメージセンサ8は読取対象領域に対して後端位置から前端位置へ向かう方向での画像スキャン移動となるため、以下のような不都合が生じる。すなわち、通常の場合には、
図9(a)に示すようにイメージセンサ8が主走査方向での1ラインスキャンを副走査方向における前側から後側へ向かう方向での移動中に繰り返し実行する。そして、取得した各ラインスキャンデータをその取得順に対応したラインデータ整列方向で上記の画像データ記憶領域120a中に並べて記憶することで、原稿Pの表記画像と上下方向、左右方向ともに一致させた正対姿勢の画像データとして記憶させることができる。
【0039】
しかし、
図9(b)に示すようにイメージセンサ8を通常と逆の方向で画像スキャン移動させていながら、ラインデータ整列方向を変更せずに各ラインスキャンデータを取得順のまま画像データ記憶領域120a中に記憶させた場合には、上下方向を反転させた内容の画像データとして記憶されてしまう。
【0040】
これに対して本実施形態では、
図9(c)に示すように通常と逆の方向での画像スキャン移動で取得した各ラインスキャンデータをその取得順で別途のバッファ領域に一旦記録させておき、その後に取得順と逆順で各ラインスキャンデータを再整列させる逆整列の処理により本来の記憶領域に記録する。これにより、原稿Pの表記画像と上下方向を一致させた正対姿勢の画像データとして記憶させることができる。なお、各ラインスキャンデータの取得時にラインデータ整列方向自体を通常の場合と逆方向に変更して画像データ領域に記録させてもよい。
【0041】
<制御手順>
上記の手法を実現するための手法の一例として、CPU100が実行する制御手順を、
図10~
図12のフローチャートを用いて説明する。まず
図10に示す原稿セット処理の制御手順は、ガラス板7上に原稿Pが載置されておらず回動カバー4が閉状態となっている際に実行が開始される。
【0042】
まずS5で、開閉検出スイッチ5を介して回動カバー4が開状態であるか否かを判定する。回動カバー4が閉状態であると判定されている間はループ待機し、開状態であると判定された際にS10へ移行する。
【0043】
S10では、その時点でイメージセンサ8が初期位置HPに位置しているか否かを判定する。イメージセンサ8が初期位置HPに位置している場合にはYES判定となり、後述のS20へ移行する。一方、イメージセンサ8が初期位置HPに位置していない場合にはNO判定となり、S15へ移行する。
【0044】
S15では、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を初期位置HPへ直行移動させる。
【0045】
次にS20で、初期位置HPの白テープ6に対しイメージセンサ8にスキャン動作を実行させ、それにより個々のセンサ素子で検出された受光強度データ間でのシェーディング補正を行う。
【0046】
その後S25で、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を第1開始位置S1へ直行移動させる。
【0047】
そしてS30で、開閉検出スイッチ5を介して回動カバー4が閉状態であるか否かを判定する。回動カバー4が開状態であると判定されている間はループ待機し、閉状態であると判定された際にS35へ移行する。
【0048】
S35では、イメージセンサ8を第1開始位置S1から第1終了位置S2までエッジ検出移動させる第1予備スキャン処理を実行する。そして、このフローを終了する。
【0049】
次に
図11、
図12に示すスキャン処理の制御手順について説明する。スキャン処理は、上記原稿セット処理の実行後でユーザから特に図示しないスタートボタンの押下操作などを介して画像スキャンの開始が指示された際に実行が開始される。
【0050】
まずS105で、この時点までにユーザからタッチパネル130や外部端末300を介して原稿Pの用紙サイズ及び載置姿勢の指定入力があったか否かを判定する。用紙サイズ及び載置姿勢の指定入力があった場合にはYES判定となり、S110へ移行する。
【0051】
S110では、指定入力された用紙サイズと載置姿勢に対応する読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2より後側であるか否かを判定する。後端位置が第1終了位置S2より前側である場合にはNO判定となり、S115へ移行する。
【0052】
S115では、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を前側へ向かう方向で読取対象領域の後端位置へ直行移動させる(上記
図5(a)参照)。次にS120で、イメージセンサ8を前側へ向かう方向で移動させつつ読取対象領域中を画像スキャンさせる(上記
図5(b)参照)。
【0053】
その後S125で、それまでに取得された各ラインスキャンデータに対して逆整列させて画像データ記憶領域120a中に記憶する。そして、このフローを終了する。
【0054】
一方、上記S110において、指定入力された用紙サイズと載置姿勢に対応する読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2より後側である場合にはYES判定となり、S130へ移行する。
【0055】
S130では、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を後側へ向かう方向で読取対象領域の後端位置へ直行移動させる(上記
図6(a)参照)。次にS135で、イメージセンサ8を前側へ向かう方向で移動させつつ読取対象領域中を画像スキャンさせる(上記
図6(b)参照)。そして、上記S125へ移行する。
【0056】
また一方、上記S105において、原稿Pの用紙サイズ及び載置姿勢の指定入力がない場合にはNO判定となり、S140へ移行する。
【0057】
S140では、上記S35の第1予備スキャン処理での読取り結果から、主走査方向におけるエッジが検出され、かつ副走査方向におけるエッジが検出されなかったか否かを判定する。言い換えると、用紙サイズと載置姿勢が指定されていない原稿Pについてその読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも前側と後側のいずれの側に位置しているかを判定する。主走査方向と副走査方向の両方でエッジが検出された場合、または主走査方向と副走査方向の両方でエッジが検出されなかった場合、言い換えると読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも前側に位置していると判定された場合にはNO判定となり、S145へ移行する。
【0058】
S145では、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を前側へ向かう方向で移動させつつ原稿Pの後端位置をエッジ検出させる第2予備スキャン処理(上記
図7(a)参照)を実行させる。そしてS150で、後端位置をエッジ検出するまでイメージセンサ8の移動を繰り返し、エッジ検出した際には検出したエッジに基づき読取対象領域を決定し、S155へ移行する。S155では、引き続きイメージセンサ8を前側へ向かう方向で移動させつつ原稿Pの読取対象領域中を画像スキャンさせる(上記
図7(b)参照)。そして、上記S125へ移行する。
【0059】
一方、上記S140において、主走査方向におけるエッジが検出され、かつ副走査方向におけるエッジが検出されなかった場合、言い換えると読取対象領域の後端位置が第1終了位置S2よりも後側に位置していると判定された場合にはYES判定となり、S160へ移行する。
【0060】
S160では、回転駆動回路150を制御してイメージセンサ8を後側へ向かう方向で移動させつつ原稿Pの後端位置をエッジ検出させる第3予備スキャン処理(上記
図8(a)参照)を実行させる。そしてS165で、後端位置をエッジ検出するまでイメージセンサ8の移動を繰り返し、エッジ検出した際には検出したエッジに基づき読取対象領域を決定し、S170へ移行する。S170では、それまでのイメージセンサ8の後側へ向けての移動を停止する。そしてS175で、イメージセンサ8を前側へ向かう方向に折り返して移動させつつ原稿Pの読取対象領域中を画像スキャンさせる(上記
図8(b)参照)。そして、上記S125へ移行する。
【0061】
なお、上記のS25の手順が移動処理の一例であり、上記のS155とS175の手順が第1本スキャン処理の一例であり、上記S105がサイズ指定判定処理の一例であり、上記のS120とS135の手順が第2本スキャン処理の一例であり、上記のS5とS30の手順が開閉検知処理の一例であり、上記のS150とS165の手順が領域決定処理の一例である。
【0062】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のスキャナ1は、ガラス板7には、A5縦置き、A5横置き、A4縦置き、及びLetter縦置きの各サイズと載置姿勢にある原稿Pと、副走査方向のサイズがそれよりも大きいA4横置き、Letter横置き、A3横置きの各サイズと載置姿勢にある原稿Pとが載置可能である。ガラス板7に原稿Pが載置された状態で、CPU100は、S25の手順と、S35の手順と、を実行する。S25の手順では、イメージセンサ8が、スキャン動作をしない状態で初期位置HPから第1開始位置S1まで移動する。第1開始位置S1は、予め、A5横置き、A4縦置き、及びLetter縦置きの各サイズと載置姿勢にある原稿Pの端部を検出開始するための待機位置として決められている位置である。S35の第1予備スキャン処理では、イメージセンサ8が第1開始位置S1から副走査方向に所定距離移動しながら原稿Pの端部検出のためのエッジ検出動作を行う。
【0063】
S35の第1予備スキャン処理の検出結果に応じて、上記S145の第2予備スキャン処理又は上記S160の第3予備スキャン処理が選択的に実行される。主走査方向における原稿Pの端部及び副走査方向における原稿Pの端部がそれぞれ検出された場合、又は、主走査方向における原稿Pの端部及び副走査方向における原稿Pの端部がいずれも検出されなかった場合は、S145の第2予備スキャン処理が行われる。この第2予備スキャン処理では、イメージセンサ8が初期位置HPへ移動しつつエッジ検出動作を行い、原稿Pの後端位置の検出を行う。副走査方向における原稿Pの端部が検出されずかつ主走査方向における原稿Pの端部が検出された場合には、S160の第3予備スキャン処理が行われる。この第3予備スキャン処理では、イメージセンサ8が初期位置HPから離れる方向へ移動しつつエッジ検出動作を行い、副走査方向における原稿Pの後端位置の検出を行う。
【0064】
第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理にて原稿Pの後端位置が検出されることで読取対象領域が決定したら、上記のS155とS175の手順が行われる。S155とS175の手順では、イメージセンサ8が初期位置HPへと移動しつつ、原稿Pの内容を取得するための画像スキャン動作を行う。
【0065】
本実施形態によれば、原稿Pの用紙サイズや載置姿勢が特に指定されていなくても、第1予備スキャン処理の結果に応じた最適な第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理が選択的に行われ、原稿Pの後端位置が検出される。これにより、ガラス板7上にいずれの用紙サイズがいずれの載置姿勢で載置された場合であっても、予備スキャン全体に要する時間を短くすることができる。
【0066】
また、本実施形態では特に、CPU100によりS105の手順が実行され、原稿Pの用紙サイズや載置姿勢についての指定入力がなされているか否かが判定される。前述の第2予備スキャン処理及び第3予備スキャン処理は、S105の手順において用紙サイズや載置姿勢についての指定入力がなされていないと判定された場合に、行われる。
【0067】
本実施形態においては、原稿Pの用紙サイズや載置姿勢が指定されていない場合において、S25の移動処理→S35の第1予備スキャン処理→S145の第2予備スキャン処理又はS160の第3予備スキャン処理→S155又はS175の第1本スキャン処理の流れで各処理が実行される。本実施形態によれば、原稿Pの用紙サイズや載置姿勢が指定されていない場合に、用紙サイズや載置姿勢を検知して読取対象領域を決定するまでのイメージセンサ8の移動量を低減することで、予備スキャン全体に要する時間を短縮することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、CPU100は、S105の手順において用紙サイズや載置姿勢についての指定入力がなされていると判定された場合に、S120又はS135の手順が行われる。S120又はS135の手順では、イメージセンサ8は、第1開始位置S1から指定された用紙サイズと載置姿勢の副走査方向における後端位置まで移動した後に、初期位置HPに近づく方向へ移動しつつ原稿Pの内容を取得するためのスキャン動作を行う。
【0069】
本実施形態によれば、原稿Pの用紙サイズと載置姿勢が指定されている場合にその用紙サイズと載置姿勢の副走査方向の後端位置まで移動してS120又はS135の手順を実行するので、これらの画像スキャン動作前に読取対象領域を決定するまでにかかる時間を短縮することができる。
【0070】
また、本実施形態では特に、CPU100はS5とS30の手順を実行し、回動カバー4が開けられたらS15の手順でのイメージセンサ8の移動処理を実行し、さらに回動カバー4が閉じられたらS35での第1予備スキャン処理を実行する。本実施形態によれば、回動カバー4を閉じてからイメージセンサ8が第1開始位置S1に移動する場合と比べ、予備スキャン完了までにかかる時間を短縮することができる。
【0071】
また、本実施形態では特に、S145の第2予備スキャン処理又はS160の第3予備スキャン処理の後、S150又はS165の判定手順が行われる。S150又はS165の判定手順では、第2予備スキャン処理又は第3予備スキャン処理で検出された原稿Pの後端位置に基づいて、S155又はS175の手順でイメージセンサ8がスキャンすべき読取対象領域が決定される。S155又はS175の手順においては、イメージセンサ8は、上記決定された読取対象領域に対して画像スキャン動作を実行する。
【0072】
本実施形態によれば、第2又は第3予備スキャン処理での検出結果に基づき決定された読取対象領域に対しイメージセンサ8が画像スキャンを行うことにより、画像スキャンの所要時間を短縮することができる。
【0073】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0074】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0075】
また、
図10、
図11、
図12等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0076】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0077】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 スキャナ(読取装置の一例)
4 回動カバー(カバーの一例)
7 ガラス板(原稿台の一例)
8 イメージセンサ(読取センサの一例)
100 CPU(制御部の一例)
P 原稿