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特許7594771光断層画像撮影装置及び断層画像を表示するためのコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置及び断層画像を表示するためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020153095
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047278
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 皇太
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸頼
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196306(JP,A)
【文献】特開2017-153825(JP,A)
【文献】特開2017-153748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0035894(US,A1)
【文献】特開2017-080344(JP,A)
【文献】特開2014-110883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光感受型の光断層画像撮影装置であって、
被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影した前記断層画像を表示する表示部と、を備えており、
前記断層画像は、前記被検眼内の組織を散乱強度で示す画像、前記被検眼内のメラニンの分布を示す画像、前記被検眼内の線維密度を示す画像、前記被検眼内の線維の走行方向を示す画像、及び、前記被検眼内の血流を示す画像のうちの少なくとも2つの画像を含んでおり、
前記表示部は、同一断面の同一位置における前記少なくとも2つの画像を重畳して表示し、
前記少なくとも2つの画像のそれぞれにおいて、表示する指標の数値範囲を指示する範囲指示手段をさらに備えており、
前記表示部は、前記少なくとも2つの画像のそれぞれについて、各画像の指標の全範囲のうち、前記範囲指示手段によって指示された前記数値範囲の指標を表示すると共に、前記数値範囲以外の範囲の指標を表示しないように、前記少なくとも2つの画像を重畳して表示する、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの画像を重畳する順番を指示する重畳順指示手段をさらに備えており、
前記表示部は、前記重畳順指示手段によって指示された前記順番で、前記少なくとも2つの画像を重畳して表示する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記被検眼内のメラニンの分布を示す画像は、エントロピーに基づいて生成され、
前記被検眼内の線維密度を示す画像は、複屈折に基づいて生成される、請求項1又は2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影部は、
光源と、
前記光源の光から測定光を生成すると共に、生成した前記測定光を前記被検眼に照射して前記被検眼からの反射光を生成する測定光生成部と、
前記光源の光から参照光を生成する参照光生成部と、
前記測定光生成部で生成される前記被検眼からの前記反射光と、前記参照光生成部で生成される前記参照光とを合波した干渉光を検出する干渉光検出部と、を備えており、
前記測定光生成部は、
前記光源の光から第1方向に振動する第1偏光測定光と、前記第1方向とは異なる第2方向に振動する第2偏光測定光を生成して、前記第1偏光測定光と前記第2偏光測定光を前記被検眼に照射し、
前記第1偏光測定光の前記被検眼からの反射光から、前記第1方向に振動する第1偏光反射光と、前記第2方向に振動する第2偏光反射光を生成し、
前記第2偏光測定光の前記被検眼からの反射光から、前記第1方向に振動する第3偏光反射光と、前記第2方向に振動する第4偏光反射光を生成し、
前記干渉光検出部は、前記第1偏光反射光と前記参照光とを合波した第1干渉光と、前記第2偏光反射光と前記参照光とを合波した第2干渉光と、前記第3偏光反射光と前記参照光とを合波した第3干渉光と、前記第4偏光反射光と前記参照光とを合波した第4干渉光と、を検出する、請求項1~のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項5】
前記被検眼内の組織を散乱強度で示す画像は、前記第1干渉光と前記第2干渉光と前記第3干渉光と前記第4干渉光とのうちの少なくとの1つを用いて生成され、
前記被検眼内のメラニンの分布を示す画像は、前記第1干渉光と前記第2干渉光と前記第3干渉光と前記第4干渉光とを用いて生成され、
前記被検眼内の線維密度を示す画像は、前記第1干渉光と前記第2干渉光と前記第3干渉光と前記第4干渉光とを用いて生成され、
前記被検眼内の線維の走行方向を示す画像は、前記第1干渉光と前記第2干渉光と前記第3干渉光と前記第4干渉光とを用いて生成され、
前記被検眼内の血流を示す画像は、前記第1干渉光と前記第2干渉光と前記第3干渉光と前記第4干渉光とを用いて生成される、請求項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記撮影部で撮影された画像から生成される前記少なくとも2つの画像についてのEn-face画像を表示可能に構成されており、
前記表示部は、前記少なくとも2つの画像についてのEn-face画像を重畳して表示する、請求項1~のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項7】
被検眼の断層画像を表示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
前記被検眼内の組織を散乱強度で示す断層画像、前記被検眼内のメラニンの分布を示す断層画像、前記被検眼内の線維密度を示す断層画像、前記被検眼内の線維の走行方向を示す断層画像、及び、前記被検眼内の血流を示す断層画像のうちの少なくとも2つの断層画像を生成する断層画像生成部と、
前記少なくとも2つの画像のそれぞれにおいて、表示する指標の数値範囲を取得する範囲取得部と、
同一断面の同一位置における前記少なくとも2つの断層画像のそれぞれについて、各画像の指標の全範囲のうち、前記範囲取得部で取得された前記数値範囲の指標を表示すると共に、前記数値範囲以外の範囲の指標を表示しないように、前記少なくとも2つの画像を重畳して表示させる表示処理部、として機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、偏光感受型の光断層画像撮影装置及び断層画像を表示するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光断層画像撮影装置は、非侵襲、非接触であるため、生体組織の断層画像を取得する方法として眼科装置等に広く利用されている。また、光断層画像撮影装置においては、生体組織の散乱強度を示す断層画像を撮影するだけでなく、生体組織内の種々の情報を可視化する断層画像を撮影する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、偏光感受型の光断層画像撮影装置が開示されている。特許文献1の光断層画像撮影装置では、被検眼からの戻り光の強度に基づく断層輝度画像だけでなく、被検眼の偏光状態を示すリターデーション画像やDOPU画像が取得される。また、特許文献1の光断層画像撮影装置は、取得した被検眼からの戻り光の強度に基づく断層画像と被検眼の偏光状態を示す断層画像が表示部に並列に表示される。表示部において種々の特性を有する複数の断層画像を同時に表示することにより、被検眼の状態を多角的に評価し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-146445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光断層画像撮影装置では、被検体からの戻り光の強度に基づく断層画像と、同被検体の偏光状態を示す断層画像が並列に表示される。しかしながら、2つの画像が同画面に表示されていても、一方の画像で見られる被検眼内の異常等の状態が、他方の画像には表れていないことがある。このため、被検眼についての複数の異なる画像を表示しても、ユーザは両方の画像に注意を払わなくてはならず、被検眼の状態を多面的に評価することが難しかった。
【0005】
本明細書は、被検眼の状態を多面的かつ容易に把握可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する光断層画像撮影装置は、偏光感受型の光断層画像撮影装置である。光断層画像撮影装置は、被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、撮影部で撮影した断層画像を表示する表示部と、を備えている。断層画像は、被検眼内の組織を散乱強度で示す画像、被検眼内のメラニンの分布を示す画像、被検眼内の線維密度を示す画像、被検眼内の線維の走行方向を示す画像、及び、被検眼内の血流を示す画像のうちの少なくとも2つの画像を含んでいる。表示部は、同一断面の同一位置における少なくとも2つの画像を重畳して表示する。
【0007】
上記の光断層画像撮影装置では、被検眼内の組織の異なる情報を可視化する少なくとも2つの断層画像を重畳して表示する。これにより、被検眼内の組織の各位置(断面)において、複数の情報に基づく状態を多面的に把握し易くできる。結果として、断層画像に現れる疾患等の特徴的な状態(初見)の見落としを防ぎやすくなる。
【0008】
また、本明細書は、被検眼の断層画像を表示するためのコンピュータプログラムを開示する。コンピュータプログラムは、コンピュータを、被検眼内の組織を散乱強度で示す断層画像、被検眼内のメラニンの分布を示す断層画像、被検眼内の線維密度を示す断層画像、被検眼内の線維の走行方向を示す断層画像、及び、被検眼内の血流を示す断層画像のうちの少なくとも2つの断層画像を生成する断層画像生成部と、同一断面の同一位置における少なくとも2つの断層画像を重畳して表示させる表示処理部、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
図3】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
図4】被検眼の断層画像を重畳して表示する処理の一例を示すフローチャート。
図5】被検眼内の組織を散乱強度で示す断層画像(いわゆる、通常の断層画像)のみを表示する場合の一例を示す画像。
図6】被検眼内のエントロピーを示す断層画像のみを表示する場合の一例を示す画像。
図7】被検眼内の複屈折を示す断層画像のみを表示する場合の一例を示す画像。
図8】被検眼内の線維の走行方向を示す断層画像のみを表示する場合の一例を示す画像。
図9】被検眼内の血流を示す断層画像のみを表示する場合の一例を示す画像であり、(a)は被検眼内の血流を示す断層画像のみを示し、(b)は参照として(a)に対応する通常の断層画像を示す。
図10】複数の断層画像を重畳した画像の一例であり、通常の断層画像の上に被検眼内のエントロピーを示す断層画像を重ねた画像を示す。
図11】複数の断層画像を重畳した画像の他の一例であり、通常の断層画像の上に被検眼内の複屈折を示す断層画像を重ねた画像を示す。
図12】複数の断層画像を重畳した画像の他の一例であり、通常の断層画像の上に被検眼内の複屈折を示す断層画像を重ね、さらにその上に被検眼内のエントロピーを示す断層画像を重ねた画像を示す。
図13】複数の断層画像を重畳した画像の他の一例であり、通常の断層画像の上に被検眼内のエントロピーを示す断層画像を重ね、さらにその上に被検眼内の複屈折を示す断層画像を重ねた画像を示す。
図14】被検眼のEn-face画像を重畳して表示する処理の一例を示すフローチャート。
図15】En-face画像の一例であり、(a)は被検眼内の通常のEn-face画像を示し、(b)は被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を示し、(c)は被検眼内の複屈折を示すEn-face画像を示す。
図16】複数のEn-face画像を重畳した画像の一例であり、(a)は通常のEn-face画像の上に被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を重ねた画像を示し、(b)は通常のEn-face画像の上に被検眼内の複屈折を示すEn-face画像を重ねた画像を示し、(c)は通常のEn-face画像の上に被検眼内の複屈折を示すEn-face画像を重ね、さらにその上に被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を重ねた画像を示し、(d)は通常のEn-face画像の上に被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を重ね、さらにその上に被検眼内の複屈折を示すEn-face画像を重ねた画像を示す。
図17】深さ方向の範囲を選択して生成したEn-face画像の一例であり、(a)は脈絡膜浅層付近の被検眼内の通常のEn-face画像を示し、(b)は脈絡膜浅層付近の被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を示し、(c)は(a)に画像の上に(b)の画像を重畳した画像を示し、(d)は脈絡膜深層付近の被検眼内の通常のEn-face画像を示し、(e)は脈絡膜深層付近の被検眼内のエントロピーを示すEn-face画像を示し、(f)は(d)に画像の上に(e)の画像を重畳した画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1)本明細書が開示する光断層画像撮影装置は、少なくとも2つの画像のそれぞれにおいて、表示する指標の数値範囲を指示する範囲指示手段をさらに備えていてもよい。表示部は、範囲指示手段によって指示された数値範囲について、少なくとも2つの画像のそれぞれを表示してもよい。このような構成によると、ユーザが所望する評価の特徴に応じて、各画像の表示する範囲を選択することができる。
【0012】
(特徴2)本明細書が開示する光断層画像撮影装置は、少なくとも2つの画像を重畳する順番を指示する重畳順指示手段をさらに備えていてもよい。表示部は、重畳順指示手段によって指示された前記順番で、少なくとも2つの画像を重畳して表示してもよい。このような構成によると、ユーザが所望する評価の特徴に応じて、少なくとも2つの画像を重畳する際の上下の位置関係を選択することができる。
【0013】
(特徴3)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、被検眼内のメラニンの分布を示す画像は、エントロピーに基づいて生成されてもよい。被検眼内の線維密度を示す画像は、複屈折に基づいて生成されてもよい。このような構成によると、被検眼内のメラニンの分布を示す画像と被検眼内の線維密度を示す画像について、被検眼の状態を把握し易い好適な画像を表示できる。
【0014】
(特徴4)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、撮影部は、光源と、光源の光から測定光を生成すると共に、生成した測定光を被検眼に照射して被検眼からの反射光を生成する測定光生成部と、光源の光から参照光を生成する参照光生成部と、測定光生成部で生成される被検眼からの反射光と、参照光生成部で生成される参照光とを合波した干渉光を検出する干渉光検出部と、を備えていてもよい。測定光生成部は、光源の光から第1方向に振動する第1偏光測定光と、第1方向とは異なる第2方向に振動する第2偏光測定光を生成して、第1偏光測定光と第2偏光測定光を前記被検眼に照射し、第1偏光測定光の被検眼からの反射光から、第1方向に振動する第1偏光反射光と第2方向に振動する第2偏光反射光を生成し、第2偏光測定光の被検眼からの反射光から、第1方向に振動する第3偏光反射光と第2方向に振動する第4偏光反射光を生成してもよい。干渉光検出部は、第1偏光反射光と参照光とを合波した第1干渉光と、第2偏光反射光と参照光とを合波した第2干渉光と、第3偏光反射光と参照光とを合波した第3干渉光と、第4偏光反射光と参照光とを合波した第4干渉光と、を検出してもよい。このような構成によると、被検眼内の組織の異なる情報を可視化する断層画像(例えば、被検眼内の組織を散乱強度で示す画像、被検眼内のメラニンの分布を示す画像、被検眼内の線維密度を示す画像、及び、被検眼内の線維の走行方向を示す画像等)を好適に生成することができる。
【0015】
(特徴5)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、被検眼内の組織を散乱強度で示す画像は、第1干渉光と第2干渉光と第3干渉光と第4干渉光とのうちの少なくとの1つを用いて生成されていてもよい。被検眼内のメラニンの分布を示す画像は、第1干渉光と第2干渉光と第3干渉光と第4干渉光とを用いて生成されていてもよい。被検眼内の線維密度を示す画像は、第1干渉光と第2干渉光と第3干渉光と第4干渉光とを用いて生成されていてもよい。被検眼内の線維の走行方向を示す画像は、第1干渉光と第2干渉光と第3干渉光と第4干渉光とを用いて生成されていてもよい。被検眼内の血流を示す画像は、第1干渉光と第2干渉光と第3干渉光と第4干渉光とを用いて生成されていてもよい。このような構成によると、被検眼内の組織を散乱強度で示す画像、被検眼内のメラニンの分布を示す画像、被検眼内の線維密度を示す画像、被検眼内の線維の走行方向を示す画像、及び、被検眼内の血流を示す画像をそれぞれ好適に生成することができる。
【0016】
(特徴6)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、表示部は、撮影部で撮影された画像から生成される少なくとも2つの画像についてのEn-face画像を表示可能に構成されていてもよい。表示部は、少なくとも2つの画像についてのEn-face画像を重畳して表示してもよい。このような構成によると、被検眼のより広い範囲を確認し易くすることができる。
【実施例
【0017】
(実施例1)
以下、本実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。
【0018】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29、31、32)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46、51)と、測定光生成部で生成される被検眼500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部60、70と、干渉光生成部60、70で生成された干渉光を検出する干渉光検出部80、90を備えている。
【0019】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検眼500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検眼500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0020】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83、93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0021】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29、31、32)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1、S2と、2つの測定光路S1、S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるコリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検眼500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31、32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0022】
上記の測定光生成部(21~29、31、32)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)は、コリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を介して被検眼500に照射される。被検眼500に照射される光は、ガルバノミラー27、28によってx-y方向に走査される。
【0023】
被検眼500に照射された光は、被検眼500によって反射する。ここで、被検眼500で反射される光は、被検眼500の表面や内部で散乱する。被検眼500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ29、ガルバノミラー28、27及びコリメータレンズ26を通って、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される反射光を、互いに直交する2つの偏光成分に分割する。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。
【0024】
水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61、71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61、71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62、72に入力する。したがって、PMFC62、72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0025】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46、51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42、43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1、R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検眼500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0026】
上記の参照光生成部(41~46、51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42、43)に入力される。参照遅延ライン(42、43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42、43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検眼500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0027】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0028】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60、70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61、62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0029】
また、PMFC62には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0030】
第2干渉光生成部70は、PMFC71、72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0031】
また、PMFC72には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0032】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80、90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0033】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81、82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81、82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0034】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0035】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91、92(以下、単に「検出器91、92」ともいう)と、検出器91、92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検眼500の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0036】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検眼500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0037】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー27及び28を駆動することで測定光の被検眼500への入射位置を走査する。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検眼500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV、VH、VV)の断層画像を生成することができる。
【0038】
図3に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0039】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。図3に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0040】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。図3に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングクロックを生成してもよい。
【0041】
次に、図4を参照して、被検眼500の断層画像を重畳してモニタ120に表示する処理について説明する。本実施例では、被検眼500の眼底の断層画像を重畳して表示する処理を例にして説明する。なお、断層画像は、被検眼500の眼底を撮影したものに限定されるものではない。断層画像は、被検眼500の眼底とは異なる部分を撮影したものであってもよく、例えば、前眼部を撮影したものであってもよい。
【0042】
図4に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の断層画像を取得する(S12)。被検眼500の断層画像を取得する処理は、以下の手順で実行する。まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼500に対して光断層画像撮影装置の位置合わせを行う。すなわち、演算部202は、検査者の操作部材の操作に応じて、図示しない位置調整機構を駆動する。これによって、被検眼500に対する光断層画像撮影装置のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。
【0043】
次いで、演算部202は、被検眼500の眼底の断層画像を撮影する。本実施例では、ラスタースキャン方式により実行される。これにより、被検眼500の眼底の断層画像が全領域に亘って取得される。なお、被検眼500の眼底の断層画像の撮影方法は、ラスタースキャン方式に限定されない。被検眼500の眼底の断層画像が全領域に亘って取得できればよく、例えば、ラジアルスキャン方式によって撮影されてもよい。
【0044】
ステップS12において被検眼500の眼底の断層画像を取得すると、演算部202は、ステップS12で取得した断層画像から異なる特性を示す種々の断層画像を生成する(S14)。上述したように、本実施例の光断層画像撮影装置は、偏光感受型の光断層画像撮影装置であるため、被検眼500に垂直波を照射することによって撮影される断層画像と、被検眼500に水平波を照射することによって撮影される断層画像を同時に取得できる。これら2種類の断層画像を用いることによって、演算部202は、被検眼500内の組織を散乱強度で示す断層画像(いわゆる、通常の断層画像であり、以下、単に「通常の断層画像」ともいう)だけでなく、被検眼500内のエントロピーを示す断層画像(以下、単に「エントロピーを示す断層画像」ともいう)、被検眼500内の複屈折を示す断層画像(以下、単に「複屈折を示す断層画像」ともいう)、被検眼500内の線維の走行方向を示す断層画像(以下、単に「線維の走行方向を示す断層画像」ともいう)、被検眼500内の血流を示す断層画像(以下、単に「血流を示す断層画像」ともいう)等を生成することができる。本実施例では、通常の断層画像、エントロピーを示す断層画像、複屈折を示す断層画像、線維の走行方向を示す断層画像、及び、血流を示す断層画像は、4つの干渉信号HH、HV、VH、VVを用いて生成される。なお、通常の断層画像については、4つの干渉信号HH、HV、VH、VVのうちのいずれか1つ以上を用いて生成してもよい。
【0045】
エントロピーを示す断層画像、複屈折を示す断層画像、線維の走行方向を示す断層画像、及び、血流を示す断層画像は、公知の方法を用いて生成することができる。例えば、エントロピーを示す断層画像は、取得した断層画像のエントロピーを算出することによって生成できる。また、複屈折を示す断層画像は、以下の方法で取得できる。断層画像を撮影する際に、OCT分解能以下の微細構造によって生じる散乱光が干渉し合うことによって、スペックルが発生する。発生したスペックルの偏光間の信号の位相差を表示する。これによって、複屈折を示す断層画像が得られる。また、線維の走行方向を示す断層画像は、複屈折の軸を算出する事により生成できる。また、血流を示す断層画像は、以下の方法で取得できる。ステップS12で断層画像を撮影する処理を複数回実行する。このとき、OCT分解能以下の微細構造によって生じる散乱光が干渉し合うことによって、スペックルが発生する。発生したスペックルの散乱強度信号又は位相信号の分散を表示する。これによって、血流を示す断層画像が得られる。これらの種々の断層画像は、被検眼500の同一断面の同一位置を示す画像となる。なお、生成する断層画像は、偏光感受型の光断層画像撮影装置を用いて生成可能な断層画像であればよく、上記の特性を示す断層画像以外の他の特性を示す断層画像を生成してもよい。
【0046】
次に、演算部202は、ステップS14で生成した種々の断層画像をそれぞれモニタ120に表示する(S16)。すなわち、本実施例では、演算部202は、ステップS14で生成した通常の断層画像、エントロピーを示す断層画像、複屈折を示す断層画像、線維の走行方向を示す断層画像、及び、血流を示す断層画像をそれぞれ並列にモニタ120に表示する。
【0047】
各断層画像は、その断層画像が示す特性に適した指標に基づいて表示される。通常の断層画像では、指標は、例えば、散乱強度(輝度)の強さ(dB)である。図5に示す例では、断層画像は、0dBでは黒く表示され、35dBでは白く表示され、0~35dBの間でグラデーション状に変化している。また、エントロピーを示す断層画像では、指標は、例えば、無次元量である。図6に示す例では、断層画像は、0では黄色で表示され、1では青色で表示され、0~1の間で黄色、橙色、赤色、紫色、青色とグラデーション状に変化している。また、複屈折を示す断層画像では、指標は、例えば、複屈折による位相遅延量(rad)である。図7に示す例では、断層画像は、0radでは黄色で表示され、0.5radでは紺色で表示され、0~0.5radの間で黄色、黄緑色、緑色、青色、紺色とグラデーション状に変化している。また、線維の走行方向を示す断層画像では、指標は、例えば、偏光軸の角度(rad)である。図8に示す例では、断層画像は、―πでは黒く表示され、+πでは白く表示され、―π~+πの間でグラデーション状に変化している。また、血流を示す断層画像では、指標は、例えば、無次元量である。図9(a)に示す例では、断層画像は、0では黒く表示され、1では白く表示され、0~1の間でグラデーション状に変化している。
【0048】
次に、演算部202は、表示した複数の断層画像から2つ以上の断層画像が選択されたか否かを判断する(S18)。具体的には、ユーザが、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、モニタ120に表示された種々の断層画像から所望の画像を複数選択する。そして、ユーザは、画像選択作業が終了すると、画像選択作業の完了を指示する。例えば、モニタ120に「完了」を示すボタンが表示され、ユーザは入力手段を用いて「完了」を示すボタンを押すことによって、画像選択作業の完了を指示する。演算部202は、画像選択作業の完了が指示されるまで待機する(ステップS18でNO)。以下では、ユーザが、通常の断層画像とエントロピーを示す断層画像を選択した場合を例に説明する。
【0049】
画像選択作業の完了が指示されると(ステップS18でYES)、演算部202は、ステップS18で選択した複数の画像を重ねる順番が選択されたか否かを判断する(S20)。具体的には、ユーザが、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、モニタ120に表示された選択した断層画像について、重ねる順番を選択する。そして、ユーザは、順番選択作業が終了すると、順番選択作業の完了を指示する。演算部202は、順番選択作業の完了が指示されるまで待機する(ステップS20でNO)。例えば、ユーザは、ステップS18で選択した通常の断層画像とエントロピーを示す断層画像について、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重ねるように指示する。
【0050】
順番選択作業の完了が指示されると(ステップS20でYES)、演算部202は、選択した各断層画像について、指標の数値範囲(レンジ)が選択されたか否かを判断する(S22)。具体的には、ユーザが、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、選択した各断層画像について、指標の全範囲のうち表示する範囲を選択する。例えば、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重ねる場合、ユーザは、通常の断層画像については、ステップS16で表示されているのと同様の全範囲が表示されるようにするため、レンジを選択しない。一方、ユーザは、エントロピーを示す断層画像については、ステップS16で表示されている無次元量で0~1(全範囲)のうち、0付近と1付近を除くように、例えば、0.3~0.7のレンジを選択する。レンジ選択作業が終了すると、ユーザは、レンジ選択作業の完了を指示する。演算部202は、レンジ選択作業の完了を指示されるまで待機する(ステップS22でNO)。
【0051】
レンジ画像選択作業の完了が指示されると(ステップS22でYES)、演算部202は、ステップS18で選択された複数の画像を重畳してモニタ120に表示する(S24)。このとき、演算部202は、ステップS20で選択された順番に従い、複数の断層画像を重畳する順番(すなわち、表示の上下関係)を決定して重畳する。また、演算部202は、ステップS22で選択されたレンジのみを切り出した断層画像を重畳する。例えば、図10に示す例では、演算部202は、ステップS20で選択された順番に従い、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重ねる。また、演算部202は、ステップS22で選択されたレンジに従い、通常の断層画像は、全範囲を表示し、エントロピーを示す断層画像は、0.3~0.7のレンジのみを通常の断層画像の上に重ねる。
【0052】
例えば、図10に示す例では、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重ねており、このように重畳した画像がモニタ120に表示される。算出したエントロピーを表示することによって、被検眼500内の主にメラニン等の物質の分布を可視化することができる。エントロピーを示す画像のみを確認した場合には、被検眼500内の構造が詳細に把握できず、メラニンが被検眼500内のどの部分に分布しているのかがわかり難いことがある。一方、通常の断層画像では、被検眼500内の各組織の位置等を視認できる。図10に示す例では、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重畳して表示している。このため、ユーザは、通常の断層画像により被検眼500内の構造を把握しながら、被検眼500内のメラニンの分布を確認でき、被検眼500内の構造とメラニンの分布との対応関係を把握し易くなる。これにより、例えば、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)に変化が生じる病気を発見し易くなり、加齢黄斑変性症や網膜色素変性症の診断に役立てることができる。
【0053】
また、図10に示す例では、エントロピーを示す断層画像は、0~1のレンジを0.3~0.7に絞って通常の断層画像上に重畳されている。これにより、ユーザが確認したい範囲のみを表示することができる。
【0054】
なお、上記の例では、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重畳する場合について説明したが、重畳する断層画像の組み合わせは限定されない。例えば、図11に示すように、通常の断層画像の上に複屈折を示す断層画像を重畳してもよい。複屈折を示す断層画像では、被検眼500内の線維密度の分布を把握することができる。通常の断層画像の上に複屈折を示す画像を重畳することによって、被検眼500内の構造と被検眼500内の線維密度の分布との対応関係を把握し易くなる。これにより、例えば、眼軸長の進展や高眼圧によって被検眼500の構造に変化が生じる病気を発見し易くなり、強度近視や緑内障の診断に役立てることができる。
【0055】
また、通常の断層画像の上に線維の走行方向を示す断層画像を重畳してもよい。通常の断層画像の上に線維の走行方向を示す断層画像を重畳することによって、被検眼500内の構造と被検眼500内の線維の走行方向との対応関係を把握し易くなる。これにより、例えば、眼軸長の進展や高眼圧によって被検眼500の構造に変化が生じる病気を発見し易くなり、強度近視や緑内障の診断に役立てることができる。
【0056】
また、通常の断層画像の上に血流を示す断層画像を重畳してもよい。通常の断層画像の上に血流を示す断層画像を重畳することによって、被検眼500内の構造と被検眼500内の血流の分布との対応関係を把握し易くなる。このため、血管の異常を発見し易くなり、緑内障や近視等の虚血が発生する病気や、脈絡膜新生血管等の異常血管が発生する病気の診断に役立てることができる。
【0057】
また、上記の例では、2つの断層画像を重畳したが、重畳する断層画像の数は限定されるものではなく、3つ以上の断層画像を重畳してもよい。3つ以上の画像を重畳することによって、被検眼500の複数の特性の対応関係を把握し易くなる。
【0058】
例えば、図12に示す例では、通常の断層画像と、エントロピーを示す断層画像と、複屈折を示す断層画像の3つが重畳している。この場合、ステップS18において、通常の断層画像と、エントロピーを示す断層画像と、複屈折を示す断層画像の3つが選択される。次いで、ステップS20において、演算部202は、3つの断層画像を重ねる順番が選択されたか否かを判断する。例えば、ユーザは、通常の断層画像の上に複屈折を示す断層画像を重ね、さらにその上にエントロピーを示す断層画像を重ねるように指示する。次いで、ステップS22において、演算部202は、選択した3つの画像について、表示するレンジが選択されたか否かを判断する。例えば、ユーザは、通常の断層画像についてはレンジを選択しない。また、ユーザは、エントロピーを示す断層画像については、無次元量の0.3~0.7のレンジを選択する。また、ユーザは、複屈折を示す画像については、位相遅延量の0~0.5radのうち、0.1~0.3radのレンジを選択する。そして、ステップS24において、演算部202は、3つの断層画像を重畳してモニタ120に表示する。このとき、演算部202は、ステップS20で選択された順番に従い、通常の断層画像、複屈折を示す断層画像、エントロピーを示す断層画像の順に重畳する。また、演算部202は、ステップS22で選択されたレンジに従い、通常の断層画像については全範囲を表示し、複屈折を示す断層画像については0.1~0.3radのレンジのみを通常の断層画像上に重ね、エントロピーを示す断層画像については0.3~0.7のレンジのみをさらに重ねる。
【0059】
通常の断層画像の上に、エントロピーを示す断層画像と複屈折を示す断層画像を重畳することによって、被検眼500内の構造と、メラニンの分布又は線維密度の分布との対応関係が把握し易くなると共に、メラニンの分布と線維密度の分布との対応関係についても把握し易くなる。
【0060】
また、本実施例では、ステップS20で選択された順番に従い、ステップS24において複数の断層画像を重畳して表示したが、このような構成に限定されない。例えば、ステップS24において複数の断層画像を重畳して表示した後に、重畳する順番を変更できるように構成されていてもよい。ユーザが表示された画像を確認した後に、複数の断層画像を重畳する順番を変更することによって、下側に表示されていた断層画像が上側に表示され、ユーザは、複数の断層画像の対応関係をより把握し易くなる。例えば、図13は、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重ね、さらにその上に複屈折を示す断層画像を重ねた画像を示している。図12及び図13はいずれも、通常の断層画像とエントロピーを示す断層画像と複屈折を示す断層画像の3つを重畳しているが、図12では、エントロピーを示す断層画像が最も上に表示され、図13では、複屈折を示す断層画像が最も上に表示されている。このように、同じ種類の断層画像を重畳する場合であっても、重畳する順番を変更した複数の画像を比較することによって、ユーザは、複数の断層画像の対応関係をより明確に把握することができる。
【0061】
また、本実施例では、ステップS22において、各断層画像について表示するレンジを選択可能であったが、例えば、レンジだけでなく、各断層画像を表示する色についても選択可能であってもよい。具体的には、ステップS22において、各断層画像について表示するレンジが選択された後、演算部202は、各断層画像について表示する色が選択されたか否かを判断してもよい。上述したように、各断層画像は、その断層画像の指標のレンジ内においてグラデーション状に表示される。このため、表示する色が選択されなかった場合には、選択したレンジ内においてグラデーション状に表示される。グラデーション状で表示されることによって、ユーザは、その断層画像について、選択したレンジ内における数値の分布の状態を把握し易くなる。一方、表示する色が選択された場合には、その断層画像は、どのような数値であるのかに関わらず、選択された色を用いて単色で表示される。単色で表示すると、その断層画像についての情報量は減少する一方で、重畳して表示したときにどの断層画像を示しているのかを色によって把握し易くなる。このため、特に、通常の断層画像に2つ以上の断層画像を重畳する場合等のように、多くの断層画像を重畳する場合には、各断層画像を単色で表示すると、各断層画像を色によって把握し易くなる。
【0062】
また、本実施例では、ステップS22において、ユーザによって表示するレンジが選択されていたが、このような構成に限定されない。表示するレンジは、演算部202が決定してもよい。例えば、演算部202は、異常のない正常な状態の眼(すなわち、正常眼)を撮影した複数のデータを取得し、複数の正常眼のデータに基づいて、閾値を決定してもよい。具体的には、演算部202は、複数の正常眼のデータの標準偏差に基づいて閾値を決定してもよい(例えば、平均値±1σ~±3σ)。また、閾値は、臨床上の知見から関連があると証明されている値としてもよい。例えば、視力不良とされる値や、RPE細胞の断裂の検出に有用と証明された値等を閾値として用いることができる。また、演算部202が決定したレンジを提示し、提示されたレンジに基づいてユーザがレンジを変更できるように構成されていてもよい。
【0063】
また、本実施例では、各断層画像について、ステップS22において選択されたレンジのみが、ステップS24において重畳して表示されたが、例えば、レンジだけでなく、各断層画像の透過率についても選択可能であってもよい。例えば、通常の断層画像の上にエントロピーを示す断層画像を重畳する場合、演算部202は、上下関係の上側となるエントロピーを示す断層画像について、透過率が選択されたか否かを判断してもよい。これにより、上下関係の下側となる通常の断層画像が、上に重ねられたエントロピーを示す断層画像を透過して視認し易くなる。このため、2つ以上の断層画像を重畳しても、ユーザは、下側の断層画像と上側の断層画像の両方を視認することができる。また、透過率は、複数の断層画像を重畳して表示した後に変更可能であってもよい。
【0064】
また、本実施例では、ステップS18で選択された画像を重畳したが、例えば、ユーザが重畳する画像を選択する代わりに、以前にユーザが選択したものと同じ種類の画像を選択するように構成されていてもよい。具体的には、ステップS18で選択された画像の種類は、メモリ(図示省略)に記憶され、次回以降に断層画像を重畳して表示する処理を実行する際に、ステップS18において、メモリ(図示省略)に記憶された種類の画像を選択できるように構成されていてもよい。また、ステップS20で選択された画像を重ねる順番と、ステップS22で選択されたレンジについても、メモリ(図示省略)に記憶され、次回以降に断層画像を重畳して表示する処理を実行する際に、メモリ(図示省略)に記憶された順番やレンジを選択できるように構成されていてもよい。さらに、各断層画像を表示する色や透過率を選択した場合にも、一度ユーザによって選択された色や透過率を、メモリ(図示省略)から読み出して選択できるように構成されていてもよい。
【0065】
(実施例2)
上記の実施例1では、複数の断層画像を重畳して表示したが、このような構成に限定されない。例えば、重畳して表示する画像は、En-face(アンファス)画像であってもよい。En-face画像は、3次元データについて、Aスキャン毎に深さ方向で最大値、最小値又は平均値などを算出し、3次元データを2次元の正面画像に圧縮した画像である。図14図17を参照して、被検眼500のEn-face画像を重畳してモニタ120に表示する処理について説明する。
【0066】
En-face画像を生成する際には、ユーザが、マウス等の入力手段(図示省略)を用いてEn-face画像を生成する指示を入力する。これにより、En-face画像を生成する処理を開始する。その後、図14に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の断層画像を取得する(S32)。なお、ステップS32の処理は、上記の実施例1のステップS12の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、En-face画像の生成の指示は、ステップS32の処理の後に選択可能であってもよい。
【0067】
次に、演算部202は、En-face画像の生成条件が選択されたか否かを判断する(S34)。具体的には、ユーザは、En-face画像を生成する深さ方向の範囲を選択する。また、ユーザは、最大値、最小値及び平均値のうちのいずれを算出してEn-face画像を生成するのかを選択する。
【0068】
ここで、En-face画像を生成する深さ方向の範囲の選択方法について説明する。En-face画像を生成する深さ方向の範囲としては、ステップS32で取得した被検眼500の断層画像の深さ方向全体を選択することもできるし、ステップS32で取得した被検眼500の断層画像のうち特定の深さ方向の範囲のみを選択することもできる。被検眼500の断層画像のうち特定の深さ方向の範囲のみについてEn-face画像を生成する場合には、例えば、以下の手順で生成することができる。まず、演算部202は、各断層画像について被検眼500内の層の境界を特定(セグメンテーション)する。なお、セグメンテーションは、公知の方法を用いて実行することができるため、詳細な説明は省略する。次いで、ユーザにより、深さ方向の範囲が選択される。例えば、ユーザは、セグメンテーションされた所望の層の境界を2つ選択する。この場合、演算部202は、選択された2つの層の境界の間のみについて、En-face画像を生成する。また、ユーザは、1つの層の境界とEn-face画像を生成する厚さを選択してもよい。この場合、演算部202は、選択された層の境界を中心として選択された厚さについてのみのEn-face画像を生成する。なお、深さ方向の範囲は、ユーザにより選択された後に変更可能であってもよい。例えば、深さ方向の範囲は、ユーザが選択した厚さを維持して深さ方向にシフトできてもよい。
【0069】
ステップS34では、ユーザは、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、En-face画像を生成する深さ方向の範囲が、深さ方向全体なのか、特定の深さ方向の範囲なのかを選択する。また、En-face画像を生成する深さ方向の範囲が特定の深さ方向の範囲の場合には、ユーザは、セグメンテーションされた層の境界を2つ選択するか、セグメンテーションされた層の境界1つと厚さを選択する。さらに、ユーザは、En-face画像を生成する際に最大値、最小値及び平均値のうちのいずれを用いるのかを選択する。演算部202は、En-face画像の生成条件の選択作業の完了が指示されるまで待機する(ステップS34でNO)。
【0070】
En-face画像の生成条件の選択作業の完了が指示されると(ステップS34でYES)、演算部202は、ステップS32で取得した断層画像からステップS36で選択された生成条件に基づいて、異なる特性を示す種々のEn-face画像を生成する(S36)。すなわち、各特性を示す画像(例えば、被検眼500内の組織を散乱強度で示す画像、被検眼500内のエントロピーを示す画像、被検眼500内の複屈折を示す画像、被検眼500内の線維の走行方向を示す画像、及び、被検眼500内の血流を示す画像)について、En-face画像を生成する。そして、演算部202は、ステップS38で生成した種々のEn-face画像をそれぞれモニタ120に表示する(S38)。続いて、演算部202は、モニタ120に表示された複数のEn-face画像から、複数の画像が選択されたか否かを判断し(S40)、次いで、選択されたEn-face画像を重ねる順番が選択されたか否かと(S42)、各En-face画像の表示するレンジが選択されたか否かを判断する(44)。そして、演算部202は、ステップS40~ステップS44で選択された情報に基づいて、複数のEn-face画像を重畳してモニタ120に表示する(S46)。なお、ステップS40~ステップS44の処理は、上記の実施例1のステップS18~ステップS22の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、本実施例においても、重畳する順番、表示するレンジ、透過率は、En-face画像を重畳して表示した後に変更可能であってもよいし、また、ステップS34のEn-face画像の生成条件もEn-face画像を重畳して表示した後に変更可能であってもよい。複数のEn-face画像を重畳して表示することによって、被検眼500のより広い範囲を確認し易くなる。
【0071】
例えば、図15及び図16は、被検眼500の断層画像の深さ方向全体の範囲の最大値を算出してEn-face画像を生成した例を示している。図15(a)は、通常の断層画像から生成したEn-face画像(以下、通常のEn-face画像ともいう)であり、図15(b)は、エントロピーを示す断層画像から生成したEn-face画像(以下、エントロピーを示すEn-face画像ともいう)であり、図15(c)は、複屈折を示す断層画像から生成したEn-face画像(以下、複屈折を示すEn-face画像ともいう)である。
【0072】
図16(a)~図16(d)は、図15(a)~図15(c)のEn-face画像を重畳して表示する例を示している。図16(a)は、通常のEn-face画像の上にエントロピーを示すEn-face画像を重畳した画像を示している。通常のEn-face画像については、全範囲が表示されるように選択されており、エントロピーを示すEn-face画像については、0.4~0.5のレンジが選択されている。通常のEn-face画像の上にエントロピーを示すEn-face画像を重畳して表示することによって、被検眼500のより広い範囲についてメラニンの分布を把握することができ、被検眼500の眼底の表面全体におけるメラニンの分布を把握し易くなる。
【0073】
図16(b)は、通常のEn-face画像の上に複屈折を示すEn-face画像を重畳した画像を示している。通常のEn-face画像については、全範囲が表示されるように選択されており、複屈折を示すEn-face画像については、0.3~0.5radのレンジが選択されている。通常のEn-face画像の上に複屈折を示すEn-face画像を重畳して表示することによって、被検眼500の眼底の表面全体における線維密度の分布を把握し易くなる。
【0074】
図16(c)は、通常のEn-face画像の上に複屈折を示すEn-face画像を重ね、さらにその上にエントロピーを示すEn-face画像を重ねた画像を示している。また、図16(d)は、通常のEn-face画像の上にエントロピーを示すEn-face画像を重ね、さらにその上に複屈折を示すEn-face画像を重ねた画像を示している。図16(c)及び図16(d)に示すように、通常のEn-face画像の上に、エントロピーを示すEn-face画像と複屈折を示すEn-face画像の両方を重畳して表示することによって、被検眼500の眼底の表面全体におけるメラニンの分布と線維密度の分布との対応関係を把握し易くなる。
【0075】
また、例えば、図17は、被検眼500の断層画像の特定の深さ方向のみの範囲の最大値を算出してEn-face画像を生成した例を示している。図17(a)は、脈絡膜浅層付近が選択された通常のEn-face画像を示し、図17(b)は、図17(a)と同様の範囲(すなわち、脈絡膜浅層付近)のエントロピーを示すEn-face画像を示している。また、図17(c)は、図17(a)の通常のEn-face画像の上に、図17(b)のエントロピーを示すEn-face画像のうち0.2~0.5のレンジのみを重畳して表示した画像である。さらに、図17(d)は、脈絡膜深層付近が選択された通常のEn-face画像を示し、図17(e)は、図17(d)と同様の範囲(すなわち、脈絡膜深層付近)のエントロピーを示すEn-face画像を示している。また、図17(f)は、図17(d)の通常のEn-face画像の上に、図17(e)のエントロピーを示すEn-face画像のうち0.2~0.5のレンジのみを重畳して表示した画像である。図17(c)及び図17(f)に示すように、被検眼500の深さ方向の範囲を選択してEn-face画像を生成することによって、ユーザの所望の特定の範囲(組織や層)における被検眼500の状態を把握し易くなる。このため、被検眼500の疾患の診断により有効に役立てることができる。
【0076】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0077】
10:測定部
11:光源
43:参照ミラー
60、70:干渉光生成部
80、90:干渉光検出部
81、82、91、92:バランス型光検出器
83、93:信号処理器
84、85、94、95:信号処理部
100:サンプリングトリガー/クロック発生器
140:サンプリングトリガー発生器
160:サンプリングクロック発生器
200:演算装置
202:演算部
500:被検眼
S1、S2:測定光路
R1、R2:参照光路
図1
図2
図3
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