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特許7594776締結構造並びにこれを用いたバルブ及び結合装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】締結構造並びにこれを用いたバルブ及び結合装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20241128BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16K27/00 B
F16B5/02 A
F16B5/02 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020186595
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076260
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】堀河 裕生
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-164021(JP,A)
【文献】特開2018-100604(JP,A)
【文献】特開2013-036584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289711(US,A1)
【文献】実開昭51-010475(JP,U)
【文献】特開昭52-036813(JP,A)
【文献】特開2010-143508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00
F16B 5/02
F16B 21/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合
わせてボルトにより結合する締結構造であって、
前記開口を挟むように前記下部構造体に形成されたボルト挿通孔及びピン挿通孔と、当
該ボルト挿通孔及びピン挿通孔にそれぞれ対応するように前記上部構造体に形成されたね
じ孔及び非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボ
ルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて上端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位
置決めピンとを有し、
前記位置決めピンの上端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前
記位置決めピンの上端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が
前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えら
れており、
前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ
、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの上端部が前記係合部を押す力と
がバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造。

【請求項2】
下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、
前記開口を挟むように前記上部構造体に形成されたボルト挿通孔及びピン挿通孔と、当該ボルト挿通孔及びピン挿通孔にそれぞれ対応するように前記下部構造体に形成されたねじ孔及び非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて下端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、
前記位置決めピンの下端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの下端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、
前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの下端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造。
【請求項3】
下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、
前記開口を挟むように前記下部構造体に形成されたボルト挿通孔及び前記上部構造体に形成されたピン挿通孔にそれぞれ対応するように、前記上部構造体に形成されたねじ孔及び前記下部構造体に形成された非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて下端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、
前記位置決めピンの下端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの下端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、
前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの下端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造。
【請求項4】
下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、
前記開口を挟むように前記上部構造体に形成されたボルト挿通孔及び前記下部構造体に形成されたピン挿通孔にそれぞれ対応するように、前記下部構造体に形成されたねじ孔及び前記上部構造体に形成された非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて上端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、
前記位置決めピンの上端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの上端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、
前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの上端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造。
【請求項5】
前記位置決めピンが、前記下部構造体と一体に形成されている請求項1または4に記載の締結構造。
【請求項6】
前記位置決めピンが、前記上部構造体と一体に形成されている請求項2または3に記載の締結構造。
【請求項7】
前記変形部材の材質が樹脂または軟鉄であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の締結構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の締結構造を備えるバルブであって、前記上部構造体にはアクチュエータが備えられており、前記下部構造体には流体流路が形成されているバルブ。
【請求項9】
流体流路が形成され下向き開口を有する上段通路ブロックと、流体流路が形成され上向き開口を有する下段通路ブロックとを有する通路ブロックの結合装置であって、
前記上段通路ブロックが前記上部構造体であり、前記下段通路ブロックが前記下部構造体であり、前記上段通路ブロックと下段通路ブロックとは、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の締結構造によって締結されている通路ブロックの結合装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブや流体制御装置に使用される上部構造体と下部構造体を結合する際などに好適な締結構造並びにこれを用いたバルブ及び結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータを含む上部構造体と流体通路を有する下部構造体を有するバルブは、ねじ機構により一般的に締結される。また、半導体製造装置等に使用されるマスフローコントローラ等の流体制御装置は、複数列に配置されるとともに、隣り合う列の流体制御機器の流路同士が所定箇所において機器接続手段により接続されることにより構成されている。マスフローコントローラや開閉弁などを、チューブを介さずに接続する集積化が進められており、このような流体制御装置では、通路ブロック(上段通路ブロック)が設けられ、これとブロック状継手部材(下段通路ブロック)とが上方からの2本のボルトにより結合されている。
【0003】
バルブの上部構造体と下部構造体を締結するバルブの数が多いと、ねじ締結に要する工数が増える。また、上記流体制御装置では、上段通路ブロックを下段通路ブロックに取り付ける工数が多数回あり、ボルトの締付け作業の効率化、特に、上段通路ブロックのボルト挿通孔と下段通路ブロックのねじ孔との位置決め及びボルト本数の低減が重要課題となっている。
【0004】
この課題を解決するために、特許文献1に記載の結合装置は、図10に示すような結合構造としている。結合装置600は、上部構造体610と下部構造体620が、ボルト630と位置決めピン640によって締結されている。上部構造体の上には、例えば、マスフローコントローラ660が配置させられている。上部構造体610には、下向き開口611、ボルト挿通孔612及びピン挿通孔613が形成されている。下部構造体620には、上向き開口621、ねじ孔622及び非ねじ孔623が形成されている。非ねじ孔623には、突出部625が形成されている。位置決めピン640の下端近くには切り欠き部644が形成され、突出部625と切り欠き部644とは嵌め合わされ、その後に前記ボルト630が締め付けられ、この際、前記ボルト630の締付け力と位置決めピン640の下端部が係合部突出部625を押す力とがバランスされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-164021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の結合装置によると、ボルト本数の低減を図ることができ、組み立ても容易となって、製造コストの削減を行うことができる。
【0007】
しかしながら、ボルトと位置決めピンで結合する方法では、ボルトが少しでも緩むとがたつきや係合部の破損につながるおそれがある。また、例えば、ボルト間、位置決めピン間及びボルト-位置決めピン間の距離が長くなると、加工精度によっては上部構造体と下部構造体との固定が難しくなる可能性があり、距離が短くなると係合部にかかる負荷が過大になって、係合部の破損が引き起こされる可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボルトの本数を削減してバルブ等の組み立て容易にすることである。さらに、ボルトが緩みにくくすると共にボルト間、位置決めピン間及びボルト-位置決めピン間の距離にかかわらず締結力が維持され、かつ、係合部の破損リスクが低い締結構造、並びにこの締結構造を用いたバルブ及び結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、
前記開口を挟むように前記下部構造体に形成されたボルト挿通孔及びピン挿通孔と、当該ボルト挿通孔及びピン挿通孔にそれぞれ対応するように前記上部構造体に形成されたねじ孔及び非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて上端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、前記位置決めピンの上端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの上端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの上端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造である。
【0010】
特許文献1に記載の従来発明では、剛性が高く変形しにくい金属材料で作られている下部構造体と位置決めピンが、切り欠き部と突出部(係合部)で直接に接触しているので、ボルトの少しの緩みでも締結力の大きな低下につながるのに対して、本発明(1)では、切り欠き部と係合部の間に変形部材が介在しているので、ボルトの締結によって変形部材は圧縮弾性変形し、ボルト締結後においても変形部材には、上下方向に拡がろうとする力が働き、この力がボルトに伝わってボルトの緩みの可能性が低減される。また、変形部材が介在することによって、加工精度にかかわらず、ボルト間等の距離等によって締結力が影響を受けることが低減され、係合部に大きな負荷がかかっても変形部材がその負荷を吸収してくれるため、締結部の破損の可能性が低減される。
【0011】
本発明(2)は、下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、前記開口を挟むように前記上部構造体に形成されたボルト挿通孔及びピン挿通孔と、当該ボルト挿通孔及びピン挿通孔にそれぞれ対応するように前記下部構造体に形成されたねじ孔及び非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて下端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、前記位置決めピンの下端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの下端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの下端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造である。
【0012】
本発明(2)の基本構造と技術思想は、本発明(1)のそれらと同じである。異なっているのは、本発明(1)の場合は、ボルトと位置決めピンが下から上方向に挿入されるのに対して、本発明(2)の場合は、ボルトと位置決めピンが上から下方向に挿入される。
【0013】
本発明(3)は、下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、前記開口を挟むように前記下部構造体に形成されたボルト挿通孔及び前記上部構造体に形成されたピン挿通孔にそれぞれ対応するように、前記上部構造体に形成されたねじ孔及び前記下部構造体に形成された非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて下端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、前記位置決めピンの下端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの下端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの下端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造である。
【0014】
本発明(3)の基本構造と技術思想は、本発明(1)のそれら同じである。異なっているのは、本発明(1)の場合は、ボルトと位置決めピンが下から上方向に挿入されるのに対して、本発明(2)の場合は、ボルトは、下から上方向に挿入され、位置決めピンは、上から下方向に挿入される。
【0015】
本発明(4)は、下向き開口を有する上部構造体と上向き開口を有する下部構造体とを開口同士を突き合わせてボルトにより結合する締結構造であって、前記開口を挟むように前記上部構造体に形成されたボルト挿通孔及び前記下部構造体に形成されたピン挿通孔にそれぞれ対応するように、前記下部構造体に形成されたねじ孔及び前記上部構造体に形成された非ねじ孔と、前記ボルト挿通孔に挿通されて前記ねじ孔にねじ合わされているボルトと、前記ピン挿通孔に挿通されて上端部が前記非ねじ孔に嵌め合わさせられている位置決めピンとを有し、前記位置決めピンの上端近くに切欠き部が形成されるとともに、前記非ねじ孔の径が前記位置決めピンの上端部の径より大きく形成されて、前記切欠き部に嵌まり合う係合部が前記非ねじ孔に形成され、前記切欠き部と前記係合部との間に介在する変形部材が備えられており、前記切欠き部と前記係合部とが先に嵌め合わされ、その後に前記ボルトが締め付けられ、この際、前記ボルトの締付け力と前記位置決めピンの上端部が前記係合部を押す力とがバランスされ、前記変形部材が上下方向に圧縮されるように押圧される締結構造である。
【0016】
本発明(4)の基本構造と技術思想は、本発明(1)のそれら同じである。異なっているのは、本発明(1)の場合は、ボルトと位置決めピンが下から上方向に挿入されるのに対して、本発明(4)の場合は、ボルトは、上から下方向に挿入され、位置決めピンは、下から上方向に挿入される。
【0017】
本発明(5)は、前記位置決めピンが、前記下部構造体と一体に形成されている本発明(1)または(4)の締結構造である。
【0018】
本発明(1)及び(4)の締結構造の場合、位置決めピンと下部構造体と別体であるが、本発明(5)の締結構造の場合、位置決めピンと下部構造体と一体となっているので、部品点数削減による製造コスト低減と、組立がさらに容易になる。なお、本発明(5)では、位置決めピン挿入孔は不要となる。
【0019】
本発明(6)は、前記位置決めピンが、前記上部構造体と一体に形成されている本発明(2)または(3)の締結構造である。
【0020】
本発明(2)及び(3)の締結構造の場合、位置決めピンと上部構造体と別体であるが、本発明(6)の締結構造の場合、位置決めピンと上部構造体と一体となっているので、部品点数削減による製造コスト低減と、組立がさらに容易になる。なお、本発明(6)では、位置決めピン挿入孔は不要となる。
【0021】
本発明(7)は、前記変形部材の材質が樹脂または軟鉄であることを特徴とする本発明(1)~(6)のいずれかの締結構造である。
【0022】
本発明(7)は、変形部材の材質が価格の安い樹脂または軟鉄であるので、コストダウンをさらに進めることができる。
【0023】
本発明(8)は、本発明(1)~(7)のいずれかの締結構造を備えるバルブであって、前記上部構造体にはアクチュエータが備えられており、前記下部構造体には流体流路が形成されているバルブである。
【0024】
本発明(8)のバルブは、本発明(1)~(7)のいずれかの締結構造を備えているので、本発明(1)と同じ効果を得ることができる。
【0025】
本発明(9)は、流体流路が形成され下向き開口を有する上段通路ブロックと、流体流路が形成され上向き開口を有する下段通路ブロックとを有する通路ブロックの結合装置であって、前記上段通路ブロックが前記上部構造体であり、前記下段通路ブロックが前記下部構造体であり、前記上段通路ブロックと下段通路ブロックとは、本発明(1)~(7)のいずれかの締結構造によって締結されている通路ブロックの結合装置装置である。
【0026】
本発明(9)の結合装置装置は、上段通路ブロックと下段通路ブロックとが、本発明(1)~(7)のいずれかの締結構造を備えているので、本発明(1)と同じ効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ボルトの本数を削減してバルブ等の組み立てを容易にすることができる。さらに、ボルトが緩みにくくすると共にボルト間、位置決めピン間及びボルト-位置決めピン間の距離にかかわらず締結力が維持され、かつ、係合部の破損リスクが低い締結構造、並びにこの締結構造を用いたバルブ及び結合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明(1)の締結構造を有するバルブの実施形態1を示す。
図2】実施形態1に用いられる位置決めピンと変形部材示し、(A)は、組み立て前を、(B)は組立後を斜視的に示す。
図3】実施形態1の組み立てにおいて、位置決めピンが所定位置に配置される前の状態を示す。
図4】実施形態1の組み立てにおいて、位置決めピンが所定位置に配置され、ボルトの締結前の状態を示す。
図5】実施形態1の組み立てにおいて、位置決めピンが所定位置に配置され、ボルトの締結後の状態を示す。
図6】本発明(2)の締結構造を有するバルブの実施形態2を示す。
図7】本発明(5)の締結構造を有するバルブの実施形態3を示す。
図8】本発明(6)の締結構造を有するバルブの実施形態4を示す。
図9】本発明(2)の締結構造を有し、流体制御機器としてマスフローコントローラを搭載した通路ブロックの結合装置の実施形態5を示す。
図10】特許文献1に記載の従来の通路ブロックの結合装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1図5に、本発明(1)の締結構造を有するバルブの実施形態1を示す。
【0031】
図1に示すバルブ100は、アクチュエータ115を備え、下向き開口111を有する上部構造体110と、上流側配管124と下流側配管125とを備え、上向き開口121を有する下部構造体120とを基本構造としている。両構造体110、120は、両開口111、121とが向き合う形で配置され、下部構造体120には、ボルト挿通孔122及びピン挿通孔123が形成され、上部構造体110には、ねじ孔112及び非ねじ孔113が形成されている。両構造体110、120の対向面間には、流体の漏れを防止する環状パッキン160が配されている。
【0032】
ピン挿通孔123から挿入された位置決めピン140には切り欠き部144が形成され、非ねじ孔113には嵌め合わせる係合部が形成される。この係合部は非ねじ孔113の開口端部としてもよいが、本実施形態では、図に示すように、段差を設けた係合部114が形成され、切り欠き部144には変形部材150がセットされ、変形部材150がセットされた状態で切り欠き部144と係合部114とが嵌め合わさっている。ボルト挿通孔122から挿入されたボルト130は、ねじ孔112と螺合させられている。ボルト130をねじ込むことによって、変形部材150には圧縮力が働き圧縮変形をするので、その反力がボルトに伝わり、ボルト130の緩みを防止する。また、変形部材150がショックアブソーバーの働きをするので、過大な応力を一時的に吸収して締結構造の係合部の破損のリスクを低減することができる。
【0033】
図2(A)は、実施形態1に用いられる位置決めピン140と変形部材150とが組み立てられる前の状態を示し、図2(B)は、組み立てられた後の状態を示している。位置決めピン140は、頭部141、シャフト部142及び先端部143を有し、シャフト部142には、下端から先端部143近くまで一面が削られた切り欠き部144が形成されている。変形部材150には、凹部153が形成され、両端には、右端部151と左端部152が突出している。図2(B)では、変形部材150がシャフト部142の切り欠き部144の上端に嵌め合わせさせられている。右端部151と左端部152とがシャフト部142を抱え込むように配置され、加工寸法を調整して手で押し込んで係止できるようにしてある。
【0034】
図3は、実施形態1の組み立てにおいて、位置決めピン140が所定位置に配置される前の状態を示す。変形部材150が取り付けられた位置決めピン140がピン挿通孔123から挿入され非ねじ孔113にまで入り込んでいる。上部構造体110は少し傾けられており、変形部材150の下面は、係合部114の上面にまで嵌め入れられていない。この状態でも位置決めピン140が非ねじ孔113に入り込めるように、非ねじ孔113の径は位置決めピン140の上端部の径より大きく形成されている。
【0035】
図4は、上部構造体110の傾きが水平とされ、変形部材150の下面は、係合部114の上面にまで嵌め入れられている。この状態は、まだボルト130が挿入されておらず、上部構造体110と下部構造体120とは、しっかりと固定される状態にまでは至っていない。
【0036】
図5は、ボルト130が挿入螺合させられている状態を示している。ボルト130により、上部構造体110と下部構造体120とはしっかりと締結されており、変形部材150は圧縮されている。圧縮状態からの反力がボルト130にも伝達されるので、ボルト130の緩みのリスクが低減される。また、バルブ100の稼働中における過負荷を変形部材150が吸収するので、係合部の破損の可能性を低減することができる。
【0037】
図6は、本発明(2)の締結構造を有するバルブの実施形態2を示している。バルブ200は、アクチュエータ215を備え、下向き開口211を有する上部構造体210と、上流側配管224と下流側配管225とを備え、上向き開口221を有する下部構造体220とを基本構造としている。両構造体210、220は、両開口211、221とが向き合う形で配置され、上部構造体210には、ボルト挿通孔212及びピン挿通孔213が形成され、下部構造体220には、ねじ孔222及び非ねじ孔223が形成されている。両構造体210、220の対向面間には、流体の漏れを防止する環状パッキン260が配されている。
【0038】
ピン挿通孔213から挿入された位置決めピン240には切り欠き部244が形成され、非ねじ孔223には係合部225が形成され、切り欠き部244には変形部材250がセットされ、変形部材250がセットされた状態で切り欠き部244と係合部225とが嵌め合わさっている。ボルト挿通孔212から挿入されたボルト230は、ねじ孔222と螺合させられている。ボルト230をねじ込むことによって、変形部材250には圧縮力が働き圧縮変形をするので、その反力がボルト230に伝わり、ボルト230の緩みを防止する。また、変形部材250がショックアブソーバーの働きをするので、過大な応力を一時的に吸収して締結構造の係合部の破損のリスクを低減することができる。
【0039】
図7は、本発明(5)の締結構造を有するバルブの実施形態3を示す。バルブ300は、アクチュエータ315を備え、下向き開口311を有する上部構造体310と、上流側配管324と下流側配管325とを備え、上向き開口321を有する下部構造体320とを基本構造としている。両構造体310、320は、両開口311、321とが向き合う形で配置され、下部構造体320には、ボルト挿通孔322が形成され、上部構造体310には、ねじ孔312及び非ねじ孔313が形成されている。両構造体310、320の対向面間には、流体の漏れを防止する環状パッキン360が配されている。
【0040】
位置決めピン340は、下部構造体320と一体で形成されている。位置決めピン340には切り欠き部344が形成され、非ねじ孔313には係合部314が形成され、切り欠き部344には変形部材350がセットされ、変形部材350がセットされた状態で切り欠き部344と係合部314とが嵌め合わさっている。ボルト挿通孔322から挿入されたボルト330は、ねじ孔312と螺合させられている。ボルト330をねじ込むことによって、変形部材350には圧縮力が働き圧縮変形をするので、その反力がボルト330に伝わり、ボルト330の緩みを防止する。また、変形部材350がショックアブソーバーの働きをするので、過大な応力を一時的に吸収して締結構造の係合部の破損のリスクを低減することができる。
【0041】
図8は、本発明(6)の締結構造を有するバルブの実施形態4を示す。バルブ400は、アクチュエータ415を備え、下向き開口411を有する上部構造体410と、上流側配管424と下流側配管425とを備え、上向き開口421を有する下部構造体420とを基本構造としている。両構造体410、420は、両開口411、421とが向き合う形で配置され、上部構造体410には、ボルト挿通孔412が形成され、下部構造体420には、ねじ孔422及び非ねじ孔423が形成されている。両構造体410、420の対向面間には、流体の漏れを防止する環状パッキン460が配されている。
【0042】
位置決めピン440は、上部構造体410と一体で形成されている。位置決めピン440には切り欠き部444が形成され、非ねじ孔423には係合部425が形成され、切り欠き部444には変形部材450がセットされ、変形部材450がセットされた状態で切り欠き部444と係合部425とが嵌め合わさっている。ボルト挿通孔412から挿入されたボルト430は、ねじ孔422と螺合させられている。ボルト430をねじ込むことによって、変形部材450には圧縮力が働き圧縮変形をするので、その反力がボルト430に伝わり、ボルト430の緩みを防止する。また、変形部材450がショックアブソーバーの働きをするので、過大な応力を一時的に吸収して締結構造の係合部の破損のリスクを低減することができる。
【0043】
図9は、本発明(2)の締結構造を有し、流体制御機器としてマスフローコントローラを搭載した通路ブロックの結合装置の実施形態5を示す。結合装置500は、上部構造体510と下部構造体520が、ボルト530と位置決めピン540によって締結されている。上部構造体510の上には、マスフローコントローラ560が配置させられている。上部構造体510には、下向き開口511、ボルト挿通孔512及びピン挿通孔513が形成されている。下部構造体520には、上向き開口521、ねじ孔522及び非ねじ孔523が形成されている。非ねじ孔523には、係合部525が形成されている。位置決めピン540の下端近くには切り欠き部544が形成されている。
【0044】
切り欠き部544には変形部材550がセットされ、変形部材550がセットされた状態で切り欠き部544と係合部525とが嵌め合わさっている。ボルト挿通孔512から挿入されたボルト530は、ねじ孔522と螺合させられている。ボルト530をねじ込むことによって、変形部材550には圧縮力が働き圧縮変形をするので、その反力がボルト530に伝わり、ボルト530の緩みを防止する。また、変形部材550がショックアブソーバーの働きをするので、過大な応力を一時的吸収して締結構造の係合部の破損のリスクを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、ボルトの本数を削減してバルブ等の組み立て容易にすることができる。さらに、ボルトが緩みにくくすると共にボルト間、位置決めピン間及びボルト-位置決めピン間の距離にかかわらず締結力が維持され、かつ、係合部の破損リスクが低い締結構造、並びにこの締結構造を用いたバルブ及び結合装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
100、200、300、400:バルブ
110、210、310、410:上部構造体
111、211、311、411:下向き開口
112、222、312、422:ねじ孔
113、223、313、423:非ねじ孔
114、225、314、425:係合部
115、215、315、415:アクチュエータ
120、220、320、420:下部構造体
121、221、321、421:上向き開口
122、212、322、412:ボルト挿通孔
123、213:ピン挿通孔
124、224、324、424:上流側配管
125、225、325、425:下流側配管
130、230、330、430:ボルト
140、240、340、440:位置決めピン
141:頭部
142:シャフト部
143:先端部
144、244、344、444:切り欠き部
150、250、350、450:変形部材
153:凹部
151:右端部
152:左端部
160、260、360、460:環状パッキン
500:結合装置
510:上部構造体(上段通路ブロック)
511:下向き開口
512:ボルト挿通口
513:ピン挿通孔
520:下部構造体(下段通路ブロック)
521:上向き開口
522:ねじ孔
523:非ねじ孔
525:係合部
530:ボルト
540:位置決めピン
544:切り欠き部
550:変形部材
560:マスフローコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10