(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電動ポンプ用軸継ぎ手
(51)【国際特許分類】
F04D 29/043 20060101AFI20241128BHJP
F16D 1/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F04D29/043 A
F16D1/04 200
(21)【出願番号】P 2021135745
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三輪 智志
(72)【発明者】
【氏名】林 徹也
(72)【発明者】
【氏名】井上 純
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利造
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04385896(US,A)
【文献】特開2020-070792(JP,A)
【文献】実開昭50-092901(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/043
F16D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ主軸により回転駆動される第1インペラ、及び当該第1インペラを収納するとともに、前記ポンプ主軸の軸線方向一方側に吸込口が設けられた第1ポンプハウジングを有する第1ポンプ部、並びに
前記ポンプ主軸により回転駆動される第2インペラ、及び当該第2インペラを収納するとともに、前記ポンプ主軸の軸線方向他方側に吸込口が設けられた第2ポンプハウジングを有する第2ポンプ部を備える多段ポンプに適用される軸継ぎ手であって、前記ポンプ主軸に電動モータの回転力を伝達する軸継ぎ手において、
前記電動モータのモータ主軸が挿入される第1筒部、及び前記第1筒部と同一軸線上に位置して当該第1筒部と一体的に回転するとともに、前記ポンプ主軸が挿入される第2筒部を有する継ぎ手本体
であって、前記モータ主軸の回転を前記ポンプ主軸に伝達するための継ぎ手本体と、
前記モータ主軸の回転力を前記第1筒部に伝達する第1係合部と、
前記第2筒部の回転を前記ポンプ主軸に伝達する第2係合部と、
前記ポンプ主軸が前記モータ主軸に対して軸線方向一方の向き及び他方の向きに変位することを規制する規制部と
であって、前記ポンプ主軸と前記モータ主軸との間の空間に配置されたスペーサ、及び前記モータ主軸に装着されて前記第1筒部を係止する止め輪であって、当該第1筒部が前記第1ポンプ部側に変位することを規制する止め輪を少なくとも有する規制部とを備え
、
前記スペーサが前記モータ主軸の下端に接触することにより、前記継ぎ手本体及び前記ポンプ主軸が前記電動モータ部側に変位した場合であっても、前記ポンプ主軸が、予め決められた寸法を超えて、前記モータ主軸に対して軸線方向一方に変位することが規制される電動ポンプ用軸継ぎ手。
【請求項2】
前記ポンプ主軸と直交する方向に当該ポンプ主軸を貫通して前記第2筒部に嵌り込んだピンであって、前記第2係合部を構成するピ
ンを備え、
前記規制部は、前記ピン、前記スペーサ及び前記止め輪により構成されている請求項
1に記載の電動ポンプ用軸継ぎ手。
【請求項3】
前記スペーサは、軸線を中心線とする略円盤状であり、
さらに、前記スペーサの外周と前記継ぎ手本体との間には、ゴム製の環状体が配置されている請求項
1又は
2に記載の電動ポンプ用軸継ぎ手。
【請求項4】
前記スペーサ及び前記継ぎ手本体のうち一方には凸部が設けられており、
前記凸部は、軸線を中心として前記スペーサが前記継ぎ手本体に対して回転することを規制する請求項
1ないし
3のいずれか1項に記載の電動ポンプ用軸継ぎ手。
【請求項5】
前記継ぎ手本体は、軸線及び当該軸線と直交する仮想線を含む仮想面を割り面として二分割可能であり、
当該分割された継ぎ手本体
の一方を第1継ぎ手本体とし他方を第2継ぎ手本体としたとき、
前記凸部は、軸線と直交する方向に延びる突条にて構成されている
とともに、前記第1継ぎ手本体と前記第2継ぎ手本体との対向面に生じる空隙に挟まれた状態となっている請求項
4に記載の電動ポンプ用軸継ぎ手。
【請求項6】
ポンプ主軸により回転駆動される第1インペラ、及び当該第1インペラを収納するとともに、前記ポンプ主軸の軸線方向一方側に吸込口が設けられた第1ポンプハウジングを有する第1ポンプ部と、
前記ポンプ主軸により回転駆動される第2インペラ、及び当該第2インペラを収納するとともに、前記ポンプ主軸の軸線方向他方側に吸込口が設けられた第2ポンプハウジングを有する第2ポンプ部と、
前記ポンプ主軸を回転駆動する電動モータと、
前記電動モータのモータ主軸の回転力を前記ポンプ主軸に伝達する軸継ぎ手とを備え、
前記軸継ぎ手は、
前記電動モータのモータ主軸が挿入される第1筒部、
及び前記第1筒部と同一軸線上に位置して当該第1筒部と一体的に回転するとともに、前記ポンプ主軸が挿入される第2筒部
を有し、前記モータ主軸の回転を前記ポンプ主軸に伝達するための継ぎ手本体、
前記モータ主軸の回転力を前記第1筒部に伝達する第1係合部、
前記第2筒部の回転を前記ポンプ主軸に伝達する第2係合部、並びに
前記ポンプ主軸が前記モータ主軸に対して軸線方向一方の向き及び他方の向きに変位することを規制する規制部
であって、前記ポンプ主軸と前記モータ主軸との間の空間に配置されたスペーサ、及び前記モータ主軸に装着されて前記第1筒部を係止する止め輪であって、当該第1筒部が前記第1ポンプ部側に変位することを規制する止め輪を少なくとも有する規制部を備え
、
前記スペーサが前記モータ主軸の下端に接触することにより、前記継ぎ手本体及び前記ポンプ主軸が前記電動モータ部側に変位した場合であっても、前記ポンプ主軸が、予め決められた寸法を超えて、前記モータ主軸に対して軸線方向一方に変位することが規制される電動ポンプ。
【請求項7】
鉛直方向に延びるポンプ主軸により回転駆動される第1インペラ、及び当該第1インペラを収納するとともに、下方側に吸込口が設けられた第1ポンプハウジングを有する第1ポンプ部と、
前記ポンプ主軸により回転駆動される第2インペラ、及び当該第2インペラを収納するとともに、上方側に吸込口が設けられた第2ポンプハウジングを有し、前記第1ポンプ部から吐き出された流体を圧送する第2ポンプ部と、
前記ポンプ主軸を回転駆動する電動モータであって、前記第1ポンプ部及び前記第2ポンプ部の上方に配置され、モータ主軸が鉛直方向に延びる電動モータと、
前記モータ主軸の回転力を前記ポンプ主軸に伝達する軸継ぎ手とを
具備
し、
前記軸継ぎ手は、
前記電動モータのモータ主軸が挿入される第1筒部、
及び前記第1筒部と同一軸線上に位置して当該第1筒部と一体的に回転するとともに、前記ポンプ主軸が挿入される第2筒部
を有し、前記モータ主軸の回転を前記ポンプ主軸に伝達するための継ぎ手本体、
前記モータ主軸の回転力を前記第1筒部に伝達する第1係合部、
前記第2筒部の回転を前記ポンプ主軸に伝達する第2係合部、
並びに
前記ポンプ主軸と前記モータ主軸との間の空間に配置されたスペーサ、前記ポンプ主軸と直交する方向に当該ポンプ主軸を貫通して前記第2筒部に嵌り込んだピンであって、前記第2係合部を構成するピン、
及び前記モータ主軸に装着されて前記第1筒部を係止する止め輪であって、当該第1筒部が前記第1ポンプ部側に変位することを規制する止め輪を有
する規制部を備えて構成されて
おり、
さらに、前記スペーサが前記モータ主軸の下端接触することにより、前記継ぎ手本体及び前記ポンプ主軸が前記電動モータ部側に変位した場合であっても、前記ポンプ主軸が、予め決められた寸法を超えて、前記モータ主軸に対して軸線方向一方に変位することが規制される電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段ポンプに適用される軸継ぎ手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の多段ポンプでは、下向きの吸込口を有するポンプ部と上向きの吸込口を有するポンプ部とを組み合わせることにより、軸線方向の荷重(スラスト荷重ともいう。)を互いに相殺し、スラスト荷重の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等は、試作試験(数値シミレーションも含む。)等の検討により、キャビテーションの発生に伴う多段ポンプの損傷原因を発見した。
【0005】
すなわち、いずれかのポンプ部でキャビテーションが発生すると、当該キャビテーションが発生したポンプ部で生じるスラスト荷重が小さくなるため、スラスト荷重を適切に相殺することができなくなり、多段ポンプ全体でスラスト荷重が大きくなってしまう。
【0006】
スラスト荷重が大きくなると、ポンプ主軸とモータ主軸とを連結する軸継ぎ手において、ポンプ主軸が軸線方向に変位してしまうおそれがある。そして、ポンプ主軸が軸線方向に変位すると、回転するインペラと回転しないポンプハウジングとが接触し、少なくとも一方が損傷してしまうおそれがある。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、キャビテーションの発生に伴う多段ポンプの損傷を抑制可能な発明の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポンプ主軸(21)により回転駆動される第1インペラ(22A)、及び当該第1インペラ(22A)を収納するとともに、ポンプ主軸(21)の軸線方向一方側に吸込口が設けられた第1ポンプハウジング(23A)を有する第1ポンプ部(20A)、並びにポンプ主軸(21)により回転駆動される第2インペラ(22B)、及び当該第2インペラ(22B)を収納するとともに、ポンプ主軸(21)の軸線方向他方側に吸込口が設けられた第2ポンプハウジング(23B)を有する第2ポンプ部(20B)を備える多段ポンプに適用される軸継ぎ手であって、ポンプ主軸(21)に電動モータ(10)の回転力を伝達する軸継ぎ手は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0009】
すなわち、当該構成要件は、電動モータ(10)のモータ主軸(11)が挿入される第1筒部(32C)、及び第1筒部(32C)と同一軸線上に位置して当該第1筒部(32C)と一体的に回転するとともに、ポンプ主軸(21)が挿入される第2筒部(32D)を有する継ぎ手本体(32)と、第1筒部(32C)に設けられ、モータ主軸(11)の回転力を第1筒部(32C)に伝達する第1係合部(33A)と、第2筒部(32D)に設けられ、第2筒部(32D)の回転をポンプ主軸(21)に伝達する第2係合部(34A)と、ポンプ主軸(21)がモータ主軸(11)に対して軸線方向一方の向き及び他方の向きに変位することを規制する規制部(35)とを備えることである。
【0010】
これにより、当該電動ポンプ用軸継ぎ手によれば、ポンプ主軸(21)がモータ主軸(11)に対して軸線方向一方の向き及び他方の向きに変位することが規制される。したがって、ポンプ主軸(21)が軸線方向に変位してしまうことが抑制され得る。延いては、キャビテーションの発生に伴う多段ポンプの損傷が抑制され得る。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る電動ポンプの外観図である。
【
図2】第1実施形態に係る電動ポンプの一部断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る軸継ぎ手の外観図である。
【
図4】第1実施形態に係る軸継ぎ手の分解図である。
【
図5】第2継ぎ手本体が取り外された軸継ぎ手を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0014】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された電動ポンプは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.電動ポンプの概要>
本実施形態は、ビル用給水装置等の高揚程が求められる給水装置に本開示に係る電動ポンプ及び電動ポンプ用軸継ぎ手(以下、継ぎ手という。)の一例が適用されたものである。
【0017】
本実施形態に係る電動ポンプ1は、
図1に示されるように、電動モータにて構成されたモータ部10、ポンプ部20及び継手収納部30等を有する。そして、それら10、20、30は、モータ部10、継手収納部30、ポンプ部20の順に直列配置されている。
【0018】
<ポンプ部の構成>
ポンプ部20は、
図2に示されるように、多段式のタービンポンプである。ポンプ主軸21の長手方向に沿って複数のインペラ(羽根車)22が直列に並んで配置されている。このため、複数のインペラ22は、1本のポンプ主軸21により回転駆動される。
【0019】
各インペラ22を収納するポンプハウジング23は、インペラ22と同数設けられている。これらポンプハウジング23もポンプ主軸21の長手方向に沿って積層配置されている。
【0020】
つまり、本実施形態では、1つのインペラ22及び1つのポンプハウジング23により1つのタービンポンプが構成され、当該タービンポンプそれぞれがポンプ主軸21に沿って積層されてポンプ部20(多段式タービンポンプ)が構成されている。
【0021】
複数のインペラ22は、第1グループに属するインペラ(以下、第1インペラ22Aという。)、及び第2グループに属するインペラ(以下、第2インペラ22Bという。)が存在する。
【0022】
同様に、複数のポンプハウジング23は、第1グループに属するポンプハウジング(以下、第1ポンプハウジング23Aという。)、及び第2グループに属するポンプハウジング(以下、第2ポンプハウジング23Bという。)が存在する。
【0023】
第1インペラ22A及び第1ポンプハウジング23Aは、第1ポンプ部20Aを構成する。第2インペラ22B及び第2ポンプハウジング23Bは、第2ポンプ部20Bを構成する。
【0024】
つまり、本実施形態に係るポンプ部20は、4段の第1ポンプ部20A及び4段の第2ポンプ部20Bを有する8段式のタービンポンプである。なお、本実施形態に係るポンプ部20は、ポンプ主軸21の長手方向が鉛直方向に一致した状態で使用・設置される。
【0025】
そして、第1ポンプ部20Aに属する各タービンポンプは、ポンプ主軸21の軸線方向一方側(本実施形態では、下方側)に吸込口が設けられている。第2ポンプ部20Bに属する各タービンポンプは、ポンプ主軸21の軸線方向他方側(本実施形態では、上方側)に吸込口が設けられている。
【0026】
このため、ポンプ主軸21が回転してポンプ作用が生じると、第1ポンプ部20Aに属する各タービンポンプでは、軸線方向一方向きのスラスト荷重が発生し、第2ポンプ部20Bに属する各タービンポンプでは、軸線方向他方向きのスラスト荷重が発生する。
【0027】
なお、本実施形態に係るポンプ部20では、第1ポンプ部20Aが第2ポンプ部20Bの下側に配置され、かつ、第1ポンプ部20Aから水が吸い込まれる。そして、第1ポンプ部20Aでは、下方向きのスラスト荷重が発生し、第2ポンプ部20Bでは、上方向きのスラスト荷重が発生する。
【0028】
<2.軸継ぎ手の構成>
図1に示されるように、継手収納部30は、モータ部10とポンプ部20との間に配置されている。そして、使用時においては、モータ部10は、ポンプ部20の上方側に位置する。このため、モータ部10のモータ主軸11(
図2参照)は、鉛直方向に延びている。
【0029】
継手収納部30内には、
図2に示されるように、軸継ぎ手31が収納されている。なお、電動ポンプ1を保守点検する作業者は、継手収納部30に設けられたカバー30Aを取り外すことにより、軸継ぎ手31を保守点検することができる。当該カバー30Aは、軸継ぎ手31を挟んで水平方向一方側、及び水平方向他方側に設けられている。
【0030】
軸継ぎ手31は、
図3に示されるように、モータ主軸11とポンプ主軸21とを連結し、当該モータ主軸11の回転力をポンプ主軸21に伝達する。なお、モータ部10及びポンプ部20は、モータ主軸11の中心軸線とポンプ主軸21の中心軸線とが一致するように配置されている。
【0031】
当該軸継ぎ手31は、略筒状の継ぎ手本体32を備えている。なお、本実施形態に係る継ぎ手本体32は、
図4に示されるように、第1継ぎ手本体32A及び第2継ぎ手本体32Bにて構成されている。
【0032】
第1継ぎ手本体32Aと第2継ぎ手本体32Bとは、中心軸線Lo及び当該中心軸線Loと直交する仮想線を含む仮想面を割り面として二分割されたものである。そして、第1継ぎ手本体32A及び第2継ぎ手本体32Bは、複数のボルトBにて締結固定される。
【0033】
なお、本実施形態では、第1継ぎ手本体32Aと第2継ぎ手本体32Bとの対向面のうち、少なくともボルトBが挿入穴される部位の周囲は、当該ボルトBが締め付けられた状態であっても空隙32H(
図3参照)が存在する。
【0034】
このため、上記対向面には、軸線中心線Loと平行に延びる突条32E、32F(
図4参照)が設けられている。2つの突条32Eは、
図5に示されるように、モータ主軸11に近接した位置設けられている。2つの突条32Fは、ポンプ主軸21に近接した位置設けられている。
【0035】
継ぎ手本体32は、
図3に示されるように、第1筒部32C及び第2筒部32Dを有している。第1筒部32Cは、モータ主軸11が挿入される部位である。第2筒部32Dは、ポンプ主軸21が挿入される部位である。
【0036】
第2筒部32Dは、
図5に示されるように、第1筒部32Cと同一軸線上に位置して当該第1筒部32Cと一体的に回転する。つまり、第1継ぎ手本体32A及び第2継ぎ手本体32Bそれぞれに第1筒部32C及び第2筒部32Dを構成する部分が設けられている(
図4参照)。
【0037】
継ぎ手本体32は、
図4に示されるように、平行キー33A及び平行ピン34Aが設けられている。平行キー33Aは第1係合部の一例である。平行ピン34Aは第2係合部の一例である。
【0038】
すなわち、平行キー33Aは、
図3に示されるように、モータ主軸11の回転力を第1筒部32Cに伝達する。具体的には、平行キー33Aは、第1筒部32C(本実施形態では、第2継ぎ手本体32B)及びモータ主軸11それぞれに設けられたキー溝33B、33Cに嵌り込んで係合する。
【0039】
平行ピン34Aは、第2筒部32Dの回転をポンプ主軸21に伝達する。具体的には、平行ピン34Aは、
図4に示されるように、ポンプ主軸21と直交する方向に当該ポンプ主軸21を貫通して第2筒部32Dに設けられた凹部34Bに嵌り込んでいる。
【0040】
以上により、モータ主軸11の回転力は、平行キー33Aを介して継ぎ手本体32に伝達される。継ぎ手本体32に伝達された回転力は、平行ピン34Aを介してポンプ主軸21に伝達される。
【0041】
<2.1 規制部>
軸継ぎ手31は、
図4に示されるように、規制部35を備える。規制部35は、ポンプ主軸21がモータ主軸11に対して軸線方向一方の向き及び他方の向きに変位することを規制する。
【0042】
本実施形態に係る規制部35は、平行ピン34A、スペーサ36及び止め輪37を少なくとも有して構成されている。止め輪37は、
図5に示されるように、モータ主軸11に装着されて第1筒部32C、つまり継ぎ手本体32を係止する。
【0043】
そして、止め輪37は、第1筒部32C、つまり継ぎ手本体32が、モータ主軸11に対してポンプ部20側(本実施形形態では、下側)に変位することを規制する。なお、本実施形態に係る止め輪37は、略C字状の同心止め輪である。
【0044】
スペーサ36は、ポンプ主軸21とモータ主軸11との間の空間32Gに配置されたブロック状の部材である。つまり、スペーサ36は、モータ主軸11の下端とポンプ主軸21の上端との間に配置されている。
【0045】
このため、継ぎ手本体32及びポンプ主軸21がモータ部10側(
図5では、上側)に変位した場合であっても、スペーサ36がモータ主軸11の下端及びポンプ主軸21の上端に接触するため、ポンプ主軸21が、予め決められた寸法を超えて、モータ主軸11に対して軸線方向一方(
図5では、上向き)に変位することが規制される。
【0046】
また、継ぎ手本体32及びポンプ主軸21がポンプ部20側(
図5では、下向き)に変位した場合であっても、継ぎ手本体32が止め輪37にて係止され、かつ、ポンプ主軸21が平行ピン34Aにより継ぎ手本体32に連結されているので、ポンプ主軸21が、予め決められた寸法を超えて、モータ主軸11に対して軸線方向他方(
図5では、下向き)に変位することが規制される。
【0047】
<スペーサの詳細(
図6参照)>
スペーサ36は、中心軸線Loを中心線とする略円盤状の部材である。当該スペーサ36の外周と継ぎ手本体32の内周面との間には、ゴム製の環状体36Aが配置されている。なお、本実施形態では、スペーサ36は金属製であり、環状体36Aはニトリルゴム製のOリングである。
【0048】
スペーサ36又は継ぎ手本体32(本実施形態では、スペーサ36)には、凸部36Bが設けられている。当該凸部36Bは、中心軸線Loを中心としてスペーサ36が継ぎ手本体32に対して回転することを規制するため部位である。
【0049】
具体的には、凸部36Bは、中心軸線Loと直交する方向に延びる突条にて構成されているとともに、第1継ぎ手本体32Aと第2継ぎ手本体32Bとの対向面に生じる空隙32H(
図3参照)に挟まれた状態となっている。
【0050】
<3.本実施形態に係る電動ポンプ(特に、軸継ぎ手)の特徴>
本実施形態に係る軸継ぎ手31によれば、ポンプ主軸21がモータ主軸11に対して中心軸線方向Lo一方の向き及び他方の向きに変位することが規制される。したがって、ポンプ主軸21が中心軸線方向Loに変位してしまうことが抑制され得る。延いては、キャビテーションの発生に伴う多段ポンプの損傷が抑制され得る。
【0051】
スペーサ36は、中心軸線Loを中心線とする略円盤状である。これにより、軸継ぎ手31が回転したときに、スペーサ36が偏心することが抑制されるので、モータ主軸11及びポンプ主軸21の回転に悪影響が発生することが抑制され得る。
【0052】
スペーサ36の外周と継ぎ手本体32との間には、ゴム製の環状体36Aが配置されている。これにより、環状体36Aに作用する摩擦力によりスペーサ36が不必要に振動等してしまうことが抑制される。延いては、騒音及び摩耗粉の発生等が抑制されるとともに、スペーサ36が継ぎ手本体32と一体的に回転し得る。
【0053】
スペーサ36の凸部36Bは、第1継ぎ手本体32Aと第2継ぎ手本体32Bとの対向面に生じる空隙32Hに挟まれた状態となっている。これにより、継ぎ手本体32に対するスペーサ36の位置が自動的に決められる。
【0054】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ポンプ主軸21は1本の軸材により構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、複数のポンプ主軸が直列に連結されて構成されて1本のポンプ主軸21が構成されていてもよい。
【0055】
上述の実施形態に係る規制部35は、平行ピン34A、スペーサ36及び止め輪37を少なくとも有して構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、以下の(1)~(4)のいずれかの構成であってもよい。
【0056】
(1)スペーサ36が廃止され、第1筒部32Aの上端側が第2の止め輪により規制され、止め輪37及び当該第2止め輪により継ぎ手本体32がモータ部10側、つまり上側に変位することが規制される構成
(2)スペーサ36、止め輪37及び平行キー33Aが廃止され、ポンプ主軸21と同様にモータ主軸11を貫通する第2の平行ピンにより第1筒部32Aとモータ主軸11とが連結された構成
(3)スペーサ36が廃止され、継ぎ手本体の内周面に止め輪37の厚み寸法と同等の溝幅を有する溝が設けられ、かつ、当該溝に止め輪37の外周側が嵌まり込んだ構成、つまり止め輪37にて継ぎ手本体32の上下両方の変位が規制される構成
(4)スペーサ36が廃止され、モータ主軸11の下端とポンプ主軸21の上端との隙間が十分に小さい構成、つまりモータ主軸11の下端とポンプ主軸21の上端とが接触することにより、継ぎ手本体32の上下両方の変位が規制される構成
上述の実施形態では、平行ピン34Aにてピン(第2係合部)が構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、テーパピンにてピン(第2係合部)が構成されていてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、平行キーにて第1係合部が構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、テーパキーやスプライン又はセレーション等にて第1係合部が構成されていてもよい。
【0058】
上述の実施形態に係る電動ポンプ1は、中心軸線Loが鉛直方向と一致する縦型の多段ポンプであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、中心軸線Loが水平方向と一致する多段ポンプであってもよい。
【0059】
上述の実施形態に係る電動ポンプ1は、第1ポンプ部20Aが第2ポンプ20Bの下側に配置された8段式の多段ポンプであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1ポンプ部20Aが第2ポンプ20Bの上側に配置された4段式の多段ポンプであってもよい。
【0060】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1… 電動ポンプ 10…モータ部 11… モータ主軸
20… ポンプ部 20A…第1ポンプ部 20B… 第2ポンプ部
21… ポンプ主軸 22…インペラ 22A… 第1インペラ
22B… 第2インペラ 23…ポンプハウジング
23A… 第1ポンプハウジング 23B… 第2ポンプハウジング
30… 継手収納部 31…軸継ぎ手 32… 継ぎ手本体
33A… 平行キー 33B…キー溝 34A… 平行ピン
35… 規制部 36…スペーサ 36A… 環状体 36B…凸部
37… 止め輪