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特許7594793組成物、膜、有機発光素子、発光組成物を提供する方法およびプログラム
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  • 特許-組成物、膜、有機発光素子、発光組成物を提供する方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】組成物、膜、有機発光素子、発光組成物を提供する方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20241128BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241128BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241128BHJP
   H10K 101/20 20230101ALN20241128BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20241128BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/60
C09K11/06 690
C09K11/06 645
H10K101:20
H10K101:30
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2021575819
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003826
(87)【国際公開番号】W WO2021157593
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020017201
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020090095
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020147167
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】垣添 勇人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 礼隆
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユソク
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204947(JP,A)
【文献】特開2019-023183(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235402(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017760(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/181846(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110498790(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0138422(KR,A)
【文献】特表2018-501354(JP,A)
【文献】LI, Junming, et al.,Design principles of carbazole/dibenzothiophene derivatives as host material in modern efficient org,Journal of Materials Chemistry C,英国,The Royal Society of Chemistry,2017年06月26日,vol. 5,6989-6996,DOI: 10.1039/c7tc02248d
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 50/88
H10K 85/60
C09K 11/06
H10K101/20
H10K101/30
CAplus/REGISTRY (STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)を満たす第1化合物と、下記式(2b)を満たす第2化合物をともに含む組成物[ただし、第1化合物と第2化合物は下記式(A)を満たす]であって、
下記条件(1)~(6)の少なくとも1つを満たす組成物
【数1】
[上式において、PBHT(1)は前記第1化合物のPBHT値である。ΔEST(2)は、前記第2化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(2)と前記第2化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(2)の差である。ES1(1)は前記第1化合物の最低励起一重項エネルギー準位である。]
<条件(1)>
前記第1化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【化1】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y ~Y およびY 11 ~Y 18 は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y 21 ~Y 28 は、各々独立にNまたはC-R’を表し、R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+p+1)価の共役連結基を表す。nは1以上の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のY 11 ~Y 18 は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY 21 ~Y 28 は互いに同一であっても異なっていてもよい。n+pは1以上である。]
<条件(2)>
前記第1化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する。
【化2】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y ~Y およびY 11 ~Y 18 は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは1以上の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のY 11 ~Y 18 は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
<条件(3)>
前記第1化合物が、下記一般式(3)で表される構造を有する。
【化3】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y 、Y 、Y ~Y およびY 11 ~Y 18 は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY 11 ~Y 18 は互いに同一であっても異なっていてもよい。]条件(4)
<条件(4)>
前記第1化合物が、下記一般式(4)で表される構造を有する。
【化4】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y ~Y およびY 12 ~Y 18 は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY 11 ~Y 18 は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
<条件(5)>
前記第1化合物が、下記一般式(5)で表される構造を有する。
【化5】
[上式において、XはOまたはSを表す。Y ~Y は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y 21 ~Y 28 は、各々独立にNまたはC-R’を表し、R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(p+1)価の共役連結基を表す。pは1以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY 21 ~Y 28 は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、下記(a)および(b)の少なくとも一方を満たす。
(a)Lが、連結鎖として1,4-フェニレン基または2,6-ピリジレン基を含む。
(b)nが2である。]
<条件(6)>
前記組成物が、前記第1化合物と前記第2化合物のみからなるか、前記第1化合物と前記第2化合物と蛍光材料である第3化合物のみからなる組成物である[前記第1化合物と前記第2化合物と前記第3化合物は下記式(B)を満たす。]
S1 (1) > E S1 (2) > E S1 (3) 式(B)
[上式において、E S1 (3)は前記第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位である。]
【請求項2】
前記第1化合物が下記式(1c)も満たす、請求項1に記載の組成物。
【数2】
[上式において、BDE(1)は前記第1化合物のカチオンの結合エネルギーである。
【請求項3】
前記第2化合物が下記式(2a)も満たす、請求項1に記載の組成物。
【数3】
[上式において、PBHT(2)は前記第2化合物のPBHT値である。]
【請求項4】
前記第1化合物が下記式(1c)も満たし、なおかつ、前記第2化合物が下記式(2a)も満たす、請求項1に記載の組成物。
【数4】
[上式において、BDE(1)は前記第1化合物のカチオンの結合エネルギーである。PBHT(2)は前記第2化合物のPBHT値である。]
【請求項5】
前記PBHT(1)が0.910より大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2化合物が下記式(2d)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【数5】
[上式において、τDELAYは前記第2化合物の遅延蛍光寿命である。]
【請求項7】
前記第1化合物が、トリアジン構造、カルバゾール構造、フルバレン構造およびチオバレン構造からなる群より選択される1つ以上の構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1化合物が、ジベンゾフラン構造かジベンゾチオフェン構造の少なくとも一方を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記条件(1)を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記条件(2)を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記条件(3)を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記条件(4)を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記条件(6)を満たし、なおかつ、前記第1化合物が下記一般式(5)で表される構造を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】
[上式において、XはOまたはSを表す。Y~Yは、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y21~Y28は、各々独立にNまたはC-R’を表し、R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(p+1)価の共役連結基を表す。pは1以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY21~Y28は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項14】
Lが、ベンゼン環およびピリジン環からなる群より選択される1つ以上の環を連結した構造を有する、請求項9~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
Lが、連結鎖として1,3-フェニレン基または2,6-ピリジレン基を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
Lが、連結鎖として1,4-フェニレン基または2,6-ピリジレン基を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
nが2である、請求項9~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
Rが水素原子または置換もしくは無置換のアリール基である、請求項9~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1化合物の含有量を100重量部としたとき、前記第2化合物の含有量が0.01~70重量部である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
さらに下記式(B)を満たす第3化合物も含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【数6】
[上式において、ES1(3)は前記第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位である。]
【請求項21】
前記第3化合物が下記式(3b)も満たす、請求項20に記載の組成物。
【数7】
[ΔEST(3)は、前記第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(3)と前記第3化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(3)の差である。]
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物の発光組成物としての使用。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物を含む膜。
【請求項24】
請求項23に記載の膜の発光膜としての使用。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物を含む有機発光素子。
【請求項26】
遅延蛍光を放射する請求項25に記載の有機発光素子。
【請求項27】
有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項25または26に記載の有機発光素子。
【請求項28】
前記発光素子に含まれる材料のうち、前記第2化合物からの発光量が最も多い、請求項25~27のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項29】
前記組成物が請求項20または21に記載の組成物であり、前記発光素子に含まれる材料のうち、前記第3化合物からの発光量が最も多い、請求項26~28のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項30】
ΔEST(2)が0.20eV未満である第2化合物と組み合わせる第1化合物を設計して、前記第1化合物と前記第2化合物を含む発光組成物を提供する方法であって、
前記第2化合物を、ES1(2)よりもES1(1)が大きくて、PBHT(1)が0.730より大きくなるように設計することを含む方法。
【請求項31】
PBHT(1)が大きくなるように前記第1化合物を設計することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
複数の候補化合物の中から、PBHT(1)がより大きな化合物を選択して前記第1化合物とすることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項30~32のいずれか1項に記載の方法を実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた発光特性を有する組成物と、その組成物を用いた膜と有機発光素子に関する。また本発明は、発光組成物を提供する方法と、その方法を実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、遅延蛍光材料を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
【0003】
遅延蛍光材料は、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じた後、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光を放射する化合物である。こうした経路による蛍光は、基底状態から直接生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測されるため、遅延蛍光と称されている。ここで、例えば、発光性化合物をキャリアの注入により励起した場合、励起一重項状態と励起三重項状態の発生確率は統計的に25%:75%であるため、直接生じた励起一重項状態からの蛍光のみでは、発光効率の向上に限界がある。一方、遅延蛍光材料では、励起一重項状態のみならず、励起三重項状態も上記の逆項間交差を介した経路により蛍光発光に利用することができるため、通常の遅延蛍光材料に比べて高い発光効率が得られることになる。
【0004】
こうした遅延蛍光材料として、特許文献1には、カルバゾリル基等のヘテロアリール基またはジフェニルアミノ基と少なくとも2つのシアノ基を有するベンゼン誘導体が提案され、そのベンゼン誘導体を発光層に用いた有機EL素子で高い発光効率が得られたことが確認されている。
また、非特許文献1には、下記式で表されるカルバゾリルジシアノベンゼン誘導体(以下、「4CzIPN」という)が熱活性型遅延蛍光材料であること、また、4CzIPNを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子で、高い内部EL量子効率を達成したことが報告されている。さらに、非特許文献2には、4CzIPNを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を最適化することにより、高い発光効率と高い耐久性を実現したことが報告されている。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-43541号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】H. Uoyama, et al., Nature 492, 234 (2012)
【文献】H. Nakanotani, et al., Scientific Reports, 3, 2127 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、これまでの研究は遅延蛍光材料として有用な化合物を見いだしたり、遅延蛍光材料を用いた発光素子の構造を最適化したりすることにより、発光素子の特性を改善することが主たる目的として行われてきた。このため、現在では遅延蛍光材料として多くの化合物が提案され、また、発光素子の構造として多くの改良が提案されるに至っている。一方、遅延蛍光材料を用いて発光素子を製造する際には、遅延蛍光材料をホスト材料と組み合わせて製膜しているが、このとき組み合わせるホスト材料については試行錯誤のうえ選択しているのが現状である。
このような現状の課題に鑑みて、本発明者らは、遅延蛍光材料と組み合わせるホスト材料を選択する際に有用な指標を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、PBHT値を用いることにより耐久性が高い有機発光素子を提供できることを見いだした。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に、以下の構成を有する。
[1] 下記式(1a)を満たす第1化合物と、下記式(2b)を満たす第2化合物をともに含む組成物[ただし、第1化合物と第2化合物は下記式(A)を満たす]。
【数1】
[上式において、PBHT(1)は前記第1化合物のPBHT値である。ΔEST(2)は、前記第2化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(2)と前記第2化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(2)の差である。ES1(1)は前記第1化合物の最低励起一重項エネルギー準位である。]
[2] 前記第1化合物が下記式(1c)も満たす、[1]に記載の組成物。
【数2】
[上式において、BDE(1)は前記第1化合物のカチオンの結合エネルギーである。]
[3] 前記第2化合物が下記式(2a)も満たす、[1]に記載の組成物。
【数3】
[上式において、PBHT(2)は前記第2化合物のPBHT値である。]
[4] 前記第1化合物が下記式(1c)も満たし、なおかつ、前記第2化合物が下記式(2a)も満たす、[1]に記載の組成物。
【数4】
[上式において、BDE(1)は前記第1化合物のカチオンの結合エネルギーである。PBHT(2)は前記第2化合物のPBHT値である。]
[5] 前記PBHT(1)が0.910より大きい、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 前記第2化合物が下記式(2d)を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
【数5】
[上式において、τDELAYは前記第2化合物の遅延蛍光寿命である。]
[7] 前記第1化合物が、トリアジン構造、カルバゾール構造、フルバレン構造およびチオバレン構造からなる群より選択される1つ以上の構造を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] 前記第1化合物が、ジベンゾフラン構造かジベンゾチオフェン構造の少なくとも一方を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9] 前記第1化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する、[8]に記載の組成物。
【化2】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y21~Y28は、各々独立にNまたはC-R’を表し、R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+p+1)価の共役連結基を表す。nは0以上の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY21~Y28は互いに同一であっても異なっていてもよい。n+pは1以上である。]
[10] 前記第1化合物が、下記一般式(2)で表される構造を有する、[8]に記載の組成物。
【化3】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは1以上の整数を表す。nが2以上であるとき、複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[11] 前記第1化合物が、下記一般式(3)で表される構造を有する、[8]に記載の組成物。
【化4】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y、Y、Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[12] 前記第1化合物が、下記一般式(4)で表される構造を有する、[8]に記載の組成物。
【化5】
[上式において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y~YおよびY12~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[13] 前記第1化合物が、下記一般式(5)で表される構造を有する、[8]に記載の組成物。
【化6】
[上式において、XはOまたはSを表す。Y~Yは、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y21~Y28は、各々独立にNまたはC-R’を表し、R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(p+1)価の共役連結基を表す。pは1以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY21~Y28は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[14] Lが、ベンゼン環およびピリジン環からなる群より選択される1つ以上の環を連結した構造を有する、[9]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[15] Lが、連結鎖として1,3-フェニレン基または2,6-ピリジレン基を含む、[9]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[16] Lが、連結鎖として1,4-フェニレン基または2,6-ピリジレン基を含む、[9]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[17] nが2である、[9]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[18] Rが水素原子または置換もしくは無置換のアリール基である、[9]~[17]のいずれかに記載の組成物。
[19] 前記第1化合物の含有量を100重量部としたとき、前記第2化合物の含有量が0.01~70重量部である、[1]~[18]のいずれかに記載の組成物。
[20] さらに下記式(B)を満たす第3化合物も含む、[1]~[19]のいずれかに記載の組成物。
【数6】
[上式において、ES1(3)は前記第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位である。]
[21] 前記第3化合物が下記式(3b)も満たす、[20]に記載の組成物。
【数7】
[ΔEST(3)は、前記第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(3)と前記第3化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(3)の差である。]
[22] [1]~[21]のいずれかに記載の組成物の発光組成物としての使用。
[23] [1]~[21]のいずれかに記載の組成物を含む膜。
[24] [23]に記載の膜の発光膜としての使用。
[25] [1]~[21]のいずれかに記載の組成物を含む有機発光素子。
[26] 遅延蛍光を放射する[25]に記載の有機発光素子。
[27] 有機エレクトロルミネッセンス素子である、[25]または[26]に記載の有機発光素子。
[28] 前記発光素子に含まれる材料のうち、前記第2化合物からの発光量が最も多い、[25]~[27]のいずれかに記載の有機発光素子。
[29] 前記組成物が[20]または[21]に記載の組成物であり、前記発光素子に含まれる材料のうち、前記第3化合物からの発光量が最も多い、[26]~[28]のいずれかに記載の有機発光素子。
[30] ΔEST(2)が0.20eV未満である第2化合物と組み合わせる第1化合物を設計して、前記第1化合物と前記第2化合物を含む発光組成物を提供する方法であって、
前記第2化合物を、ES1(2)よりもES1(1)が大きくて、PBHT(1)が0.730より大きくなるように設計することを含む方法。
[31] PBHT(1)が大きくなるように前記第1化合物を設計することを含む、[30]に記載の方法。
[32] 複数の候補化合物の中から、PBHT(1)がより大きな化合物を選択して前記第1化合物とすることを含む、[31]に記載の方法。
[33] [30]~[32]のいずれかに記載の方法を実行するプログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物を用いれば、優れた耐久性を有する有機発光素子を提供することができる。また、本発明の方法によれば、優れた耐久性を有する有機発光素子の製造に有用な組成物を簡便に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
図2】第1化合物のPBHT値とLT95の測定結果の関係を示すグラフである。
図3】第1化合物のPBHT値とLT95の測定結果の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべてHであってもよいし、一部または全部がH(デューテリウムD)であってもよい。
【0013】
(第1化合物)
第1化合物は、PBHT値が0.730より大きい化合物である。PBHT値は、Michael J. Peach, Peter Benfield, Trygve Helgaker,およびDavid J. Tozerにより提唱された値であり、4名の名字の頭文字を連ねて命名された値である。PBHT値は、励起状態の軌道の性質を表す数値である。一重項と三重項のPBHT値があるが、本発明では三重項のPBHT値を採用する。小さいPBHT値は励起状態が電荷移動性(CT性)であることを示し、大きいPBHT値は励起状態が局在電子性(LE性)であることを示している。PBHT値は、下記式により算出される値Λである。
【数8】
上式における各項の定義は下記の通りである。
【数9】
PBHT値の算出法については、J. Chem. Phys. 128, 044118 (2008)「Excitation energies in density functional theory: An evaluation and a diagnostic test」に詳しく記載されており、その論文の全頁を本明細書の一部としてここに引用する。
第1化合物のPBHT値は0.730より大きいことが好ましく、0.750より大きいことが好ましく、0.800より大きいことが好ましく、0.830より大きいことが好ましく、0.850より大きいことが好ましく、0.900より大きいことが好ましく、0.920より大きいことが好ましく、0.950より大きいことが好ましく、0.980より大きいことが好ましく、0.990より大きいことが好ましい。
【0014】
第1化合物は、カチオンの結合エネルギーBDE(1)が4.20eVより大きい化合物であることが好ましい。カチオンの結合エネルギーBDE(1)は、4.40eVより大きいことが好ましく、4.60eVより大きいことが好ましく、4.80eVより大きいことが好ましく、5.00eVより大きいことが好ましく、5.20eVより大きいことが好ましく、5.40eVより大きいことが好ましく、5.60eVより大きいことが好ましく、5.80eVより大きいことが好ましく、6.00eVより大きいことが好ましく、6.10eVより大きいことが好ましい。
カチオンの結合エネルギー(bond dissociation energy)は、b3lyp/6-31gsを用いて計算することにより求めることができる。
第1化合物として、例えばPBHT値が0.80より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.30eVより大きい化合物を好ましく選択することができる。PBHT値が0.82より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.35eVより大きい化合物も好ましく選択することができる。PBHT値が0.85より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.30eVより大きい化合物も好ましく選択することができる。
さらに第1化合物として、例えばPBHT値が0.91より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.30eVより大きい化合物を好ましく選択することができる。PBHT値が0.91より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.35eVより大きい化合物も好ましく選択することができる。PBHT値が0.95より大きくて、カチオンの結合エネルギーが4.30eVより大きい化合物も好ましく選択することができる。
【0015】
第1化合物の構造は、式(1a)を満たすものであれば特に制限されない。好ましい第1化合物は、トリアジン構造、カルバゾール構造、フルバレン構造およびチオバレン構造からなる群より選択される1つ以上の構造を有する。これらの構造は2つ以上有していてもよく、2つ以上有する場合それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。より好ましい第1化合物は、ジベンゾフラン構造かジベンゾチオフェン構造の少なくとも一方を有する。ジベンゾフラン構造を2つ以上有していてもよいし、ジベンゾチオフェン構造を2つ以上有していてもよいし、ジベンゾフラン構造とジベンゾチオフェン構造をともに有していてもよい。
【0016】
好ましい第1化合物として、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
【化7】
【0017】
一般式(1)において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。化合物中に存在するXは、すべてがOであってもよいし、すべてがSであってもよいし、OとSが混在していてもよい。好ましい化合物として、一般式(1)の右側の3環構造を構成するn個のXがすべてがOである化合物を挙げることができる。また、好ましい化合物として、一般式(1)の右側の3環構造を構成するn個のXがすべてがSである化合物を挙げることができる。
【0018】
一般式(1)において、nは0以上の整数を表し、pは0以上の整数を表す。n+pは1以上である。nが2以上であるとき、複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。pが2以上であるとき、複数のY21~Y28は互いに同一であっても異なっていてもよい。
好ましい化合物として、nが2以上である化合物を挙げることができ、より好ましい化合物としてnが2である化合物を挙げることができる。このとき、pは0~2のいずれかの整数であることが好ましく、例えばpが0であるものや、pが1であるものを挙げることができる。nが2以上であるとき、n個のY11がすべて同じであり、n個のY12がすべて同じであり、n個のY13がすべて同じであり、n個のY14がすべて同じであり、n個のY15がすべて同じであり、n個のY16がすべて同じであり、n個のY17がすべて同じであり、n個のY18がすべて同じである化合物が好ましい。本発明の一態様として、nが3である化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、nが1である化合物も挙げることができる。
また、他の好ましい化合物として、pが1である化合物を挙げることもできる。このとき、pは1~3のいずれかの整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0とすることもできる。
一般式(1)で表される化合物は、PBHT値が0.91以上である化合物が好ましく、PBHT値が0.91以上であってnが2以上である化合物がより好ましく、PBHT値が0.91以上であってnが2である化合物がさらに好ましい。また、PBHT値が0.91以上であって、pが1であり、nが0である化合物や、pが1であり、nが1である化合物も好ましい。
【0019】
一般式(1)において、Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。RがLへの直接結合を表すのは、Y~Yのうちの1つだけであり、また、Y11~Y14のうちの1つだけである。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y11がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y12がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y13がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y14がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。
nが2以上であるとき、n個のジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環においてRがLへの直接結合を表すY11~Y14は、同じであっても異なっていてもよい。好ましいのは同じである場合である。
一般式(1)におけるY~YおよびY11~Y18は、すべてがC-Rであってもよい。また、Y~YおよびY11~Y18のうちNを表すものは分子中に1つ以上であってもよく、2つ以上であってもよく、3つ以上であってもよく、4つ以上であってもよく、6つ以上であってもよく、9つ以上であってもよい。Y~YおよびY11~Y18のうちNを表すものは分子中に15個以下であってもよく、10個以下であってもよく、7つ以下であってもよく、5つ以下であってもよい。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y11がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y12がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y13がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y14がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y15がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y16がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y17がNである化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y18がNである化合物を挙げることができる。
一般式(1)において、Y21~Y28は、各々独立にNまたはC-R’を表す。R’は水素原子または置換基を表す。Y21~Y28のうちNを表すものの個数は、0~3であることが好ましく、0~2であることがより好ましく、1であってもよい。また、Y21~Y28のすべてがC-R’であってもよい。
一般式(1)において、Y~YおよびY11~Y18のうちの互いに隣接する2つがいずれもC-Rを表し、そのRが互いに結合することにより環状構造を形成していてもよい。また、一般式(1)において、Y21~Y28のうちの互いに隣接する2つがいずれもC-R’を表し、そのR’が互いに結合することにより環状構造を形成していてもよい。環状構造は、5~8員環であることが好ましく、5~7員環であることがより好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。形成される環状構造は単環であってもよいし、さらに環が縮合した多環であってもよい。また、形成される環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、また炭化水素環であっても複素環であってもよい。
【0020】
RおよびR’が表す置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数6~40のアリールオキシ基、炭素数6~40のアリールチオ基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数3~40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3~40のヘテロアリールチオ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、シアノ基、ジアリールアミノ基(2つのアリール基は互いに結合していない)、ジアリールアミノ基(2つのアリール基は互いに結合して環状構造を形成している)等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。さらに置換されているときのさらなる置換基として、上に例示した置換基を挙げることができる。より好ましい置換基は、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。例えば、置換もしくは無置換のアリール基を選択して採用することもできる。
一般式(1)内に存在するRは、Lへの直接結合を除くすべてが水素原子であってもよい。 一般式(1)内に存在するRのうち1つだけが置換基であってもよく、2つが置換基であってもよく、3つが置換基であってもよく、4つ以上が置換基であってもよく、6つ以上が置換基であってもよく、9つ以上が置換基であってもよい。また、一般式(1)内に存在するRのうち15個以下が置換基であってもよく、10個以下が置換基であってもよく、7つ以下が置換基であってもよく、5つ以下であってもよい。
一般式(1)内に存在するR’は、すべてが水素原子であってもよい。一般式(1)内に存在するR’のうち1つだけが置換基であってもよく、2つが置換基であってもよく、3つが置換基であってもよく、4つ以上が置換基であってもよい。また、一般式(1)内に存在するRのうち8つ以下が置換基であってもよく、6つ以下が置換基であってもよく、4つ以下が置換基であってもよく、5つ以下であってもよい。
【0021】
一般式(1)において、Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+p+1)価の共役連結基を表す。ここでいう共役連結基とは、一般式(1)の左側の3環構造と、右側のn個の3環構造と、上側のp個の3環構造とを連結する構造が共役している構造を意味する。これらの3環構造を結ぶ構造は、芳香環または複素芳香環のみからなるものであってもよいし、芳香環または複素芳香環と、芳香環、複素芳香環、アルケニレン基およびアルキニレン基からなる群より選択される1以上の構造との組み合わせからなるものであってもよい。2以上の構造を組み合わせる場合は、同種の構造(例えば芳香環と芳香環)を組み合わせてもよいし、異種の構造(例えば芳香環とアルケニレン基)を組み合わせてもよい。組み合わせる場合は、芳香環と芳香環、芳香環と複素芳香環、芳香環とアルケニレン基、複素芳香環と複素芳香環、複素芳香環とアルケニレン基の組み合わせを例示することができる。ここでいう芳香環、複素芳香環およびアルケニレン基は置換基で置換されていてもよい。ここでいう置換基の例としては、一般式(1)のRの説明にて例示した置換基を挙げることができる。アルケニレン基の例として、エチレン基、フェニルエチレン基、ジフェニルエチレン基、ナフチルエチレン基、ジナフチルエチレン基を挙げることができる。
Lの具体例として、(n+p+1)価のベンゼン環、(n+p+1)価のナフタレン環、(n+p+1)価のアントラセン環、(n+p+1)価のフェナントレン環、(n+p+1)価のトリフェニレン環、(n+p+1)価のピレン環、(n+p+1)価のクリセン環、(n+p+1)価のピリジン環を挙げることができる。また、Lの具体例として、(n+p+1)価のベンゼン構造、(n+p+1)価のビフェニル構造、(n+p+1)価のo-ターフェニル構造、(n+p+1)価のm-ターフェニル構造、(n+p+1)価のp-ターフェニル構造を挙げることもできる。好ましいLの具体例として、(n+p+1)価のベンゼン構造と(n+p+1)価のビフェニル構造を挙げることができ、(n+p+1)価のベンゼン構造がより好ましい。
Lがビフェニル構造であるとき、好ましい実施態様では、ビフェニル構造の少なくとも3位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と5位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と5位と3’位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と5位と4’位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と5位と2’位が3環構造で置換されている。また、別の好ましい実施態様では少なくとも4’位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と4’位が3環構造で置換されている。また、別の好ましい実施態様では少なくとも2’位が3環構造で置換されている。好ましい実施態様では、少なくとも3位と2’位が3環構造で置換されている。
Lがベンゼン構造であるとき、好ましい実施態様では、ベンゼン構造に結合する3環構造のうちの2つはメタ位またはパラ位で置換していることが好ましく、メタ位で弛緩していることが特に好ましい。Lがフェニレン基を含むとき、フェニレン基は1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基のいずれであってもよく、1,3-フェニレン基または1,4-フェニレン基であることが好ましく、1,3-フェニレン基であることが特に好ましい。
また、Lがピリジレン基を含むとき、2,3-ピリジレン基、2,4-ピリジレン基、2,5-ピリジレン基、2,6-ピリジレン基、3,4-ピリジレン基、3,5-ピリジレン基のいずれであってもよく、2,6-ピリジレン基であることが好ましい。
【0022】
好ましい第1化合物として、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を挙げることもできる。
【化8】
【0023】
一般式(2)において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは1以上の整数を表す。複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。
X、Y~Y、Y11~Y18、Lおよびnの説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。
本発明の好ましい一態様として、一般式(2)のnが2以上の整数である化合物を挙げることができる。例えば、一般式(2)のnが2である化合物を例示することができる。本発明の別の好ましい一態様として、一般式(2)のnが1であって、Lがヘテロアリーレン基である化合物を挙げることができる。例えば、n1が1であって、Lが2価のピリジン環である化合物を例示することができる。本発明の別の好ましい一態様として、一般式(2)のY12がC-R(RはLへの単結合)である化合物を挙げることができる。本発明の別の好ましい一態様として、一般式(2)のYがC-R(RはLへの単結合)であり、Y12がC-R(RはLへの単結合)である化合物を挙げることができる。本発明のさらに好ましい一態様として、一般式(2)のYがC-R(RはLへの単結合)であり、Y12がC-R(RはLへの単結合)であり、Lがピリジレン基等の2価のヘテロアリーレン基である化合物を挙げることができる。
【0024】
好ましい第1化合物として、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を挙げることもできる。
【化9】
【0025】
一般式(3)において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y、Y、Y~YおよびY11~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。
X、Y、Y、Y~Y、Y11~Y18、Lおよびnの説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。なお、YはC-Rであって、RがLへの直接結合を表す。
本発明の好ましい一態様として、一般式(3)のY11がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y12がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y13がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、Y14がC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる
【0026】
好ましい第1化合物として、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を挙げることもできる。
【化10】
【0027】
一般式(4)において、複数のXは各々独立にOまたはSを表す。Y~YおよびY12~Y18は、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(n+1)価の共役連結基を表す。nは2以上の整数を表す。複数のY11~Y18は互いに同一であっても異なっていてもよい。
X、Y~Y、Y12~Y18、Lおよびnの説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。なお、Y11はC-Rであって、RがLへの直接結合を表す。
本発明の一態様として、一般式(4)のYがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の好ましい一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる。本発明の一態様として、YがC-RであってRがLへの直接結合を表す化合物を挙げることができる
【0028】
好ましい第1化合物として、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を挙げることもできる。
【化11】
【0029】
一般式(5)において、XはOまたはSを表す。Y~Yは、各々独立にNまたはC-Rを表し、Rは水素原子、置換基またはLへの直接結合を表す。Y21~Y28は、各々独立にNまたはC-R’を表す。R’は水素原子または置換基を表す。Lは、少なくとも1つの芳香環または複素芳香環を含む(p+1)価の共役連結基を表す。pは1以上の整数を表す。pが2以上であるとき、複数のY21~Y28は互いに同一であっても異なっていてもよい。
X、Y~Y、Y21~Y28、Lおよびpの説明と好ましい範囲については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。本発明の別の好ましい一態様として、一般式(5)のYがC-R(RはLへの単結合)である化合物を挙げることができる。本発明の別の好ましい一態様として、Lがフェニレン基、より好ましくは1,3-フェニレン基である化合物を挙げることができる。本発明の別の好ましい一態様として、pが1である化合物を挙げることができる。
【0030】
一般式(1)~(5)のそれぞれに含まれるジベンゾフラン構造およびジベンゾチオフェン構造は、Lに1位で結合するもの、Lに2位で結合するもの、Lに3位で結合するもの、Lに4位で結合するもののいずれであってもよい。Lがベンゼン環(好ましくはメタフェニレン基のようにメタ位で結合するベンゼン環)であるときは、ジベンゾフラン構造およびジベンゾチオフェン構造はLに1位または2位で置換する化合物が好ましく、2位で置換する化合物がより好ましい。Lがビフェニル構造であるときは、ジベンゾフラン構造およびジベンゾチオフェン構造はLに2位または4位で置換する化合物が好ましく、4位で置換する化合物がより好ましい。
【化12】
【0031】
以下において、第1化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる第1化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化13-1】
【化13-2】
【0032】
【化14】
【0033】
化合物1~21のPBHT値とカチオンの結合エネルギーは、以下の表に示す通りである。
【表1】
【0034】
(第2化合物)
第2化合物は、最低励起一重項エネルギー準位が第1化合物よりも小さくて、ΔEST(2)が0.20eV未満である化合物である。第2化合物は、最低励起一重項エネルギー準位ES1(2)と最低励起三重項エネルギー準位ET1(2)が近いことにより、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし易い傾向がある。第2化合物が逆項間交差を起こすものであることは、逆項間交差により生じた励起一重項状態が基底一重項状態へ輻射失活する際に放射する遅延蛍光を観測することで確認することができる。
ここで、本明細書中における「遅延蛍光」とは、蛍光発光寿命(τ)が200ns(ナノ秒)以上であるものを意味する。また、本明細書中における「蛍光発光寿命(τ)」とは、溶液もしくは蒸着膜試料に、窒素雰囲気下や真空下のような酸素非存在下の条件で、光励起終了後の発光減衰測定を行うことにより求められる時間のことをいう。ここで、蛍光発光寿命が異なる2種類以上の蛍光成分が観測された場合には、発光寿命が最も長い蛍光成分の発光寿命が「蛍光発光寿命(τ)」であることとする。また、本明細書では蛍光発光寿命が200ns以上である発光寿命を特に遅延蛍光寿命(τDELAY)という。第2化合物の遅延蛍光寿命(τDELAY)は10μs(マイクロ秒)未満であることが好ましい。
第2化合物は、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こす材料であることが好ましく、遅延蛍光を放射する材料であることがより好ましい。第2化合物が逆項間交差を起こすものであることにより、励起三重項状態が励起一重項状態へ変換されるようになり、その励起一重項エネルギーを第2化合物や発光材料(第3化合物)の発光に有効に利用することができる。
また、第2化合物のΔEST(2)は、より低いことが好ましく、具体的には0.15eV未満であることが好ましく、0.10eV未満であることがより好ましく、0.05eV未満であることがさらにより好ましく、0.01eV未満であることがなおより好ましく、理想的には0eVである。第2化合物は、ΔEST(2)が小さいもの程、逆項間交差を起こし易い傾向があり、励起三重項状態を励起一重項状態に変換する作用を効果的に発現することができる。
【0035】
第2化合物は、PBHT値が0.10より大きい化合物であることが好ましく、0.15より大きい化合物であることがより好ましく、0.20より大きい化合物であることがさらに好ましい。また、第2化合物は、PBHT値が0.50より小さい化合物であることが好ましく、0.45より小さい化合物であることがより好ましく、0.40より小さい化合物であることがさらに好ましい。第2化合物は、PBHT値が0.20より大きく、0.40より小さい化合物であることが特に好ましい。
【0036】
第2化合物は、式(2b)を満たす単一の化合物からなる材料であってもよいし、エキサイプレックスを形成するような2種以上の化合物からなり、そのエキサイプレックスの最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1の差が0.20eV未満であるものであってもよい。なお、第2化合物は、常温(300K)で励起三重項状態から基底一重項状態への輻射失活を生じ易いことから、IrやPtのような重金属元素を中心金属とする金属錯体のような、通常の燐光材料ではないことが好ましい。すなわち、第2化合物は金属元素を含まない化合物であることが好ましく、重金属元素を含まない化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましい。
【0037】
第2化合物として、例えば下記一般式(2A)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(2A)
D-L-A
一般式(2A)において、Dは置換アミノ基を有する置換基を表し、Lは置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表し、Aはシアノ基、または少なくとも1つの窒素原子を環骨格構成原子として含む置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。
Lが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。Lが縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。Lを構成する環の具体例として、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ナフタレン環を挙げることができる。Lが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基の具体例として、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、9,10-アントラセニレン基、1,8-アントラセニレン基、2,7-アントラセニレン基、2,6-アントラセニレン基、1,4-アントラセニレン基、1,3-アントラセニレン基、これらの基の環骨格構成原子の1つが窒素原子に置換した基、これらの基の環骨格構成原子の2つが窒素原子に置換した基、およびこれらの基の環骨格構成原子の3つが窒素原子に置換した基を挙げることができる。Lが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。置換基を2つ以上有する場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基、置換アミノ基を有する置換基、シアノ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
Aにおける、少なくとも1つの窒素原子を環骨格構成原子として含むヘテロアリール基において、環骨格構成原子としての窒素原子の数は1~3つであることが好ましい。ヘテロアリール基の好ましい範囲と具体例については、上記のLが表すヘテロアリーレン基の好ましい範囲と具体例を1価の基に読み替えて参照することができる。中でも、Aにおけるヘテロアリール基は、1~3つの窒素元素を環骨格構成原子として含む6員環からなる基であることが好ましく、ピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基であることがより好ましく、トリアジニル基であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基は置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲と具体例については、上記のLが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基に置換してもよい置換基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
Aはこれらの置換もしくは無置換のヘテロアリール基もとりうるが、シアノ基であることが好ましい。特にAがシアノ基であるものは、Aがトリアジニル基であるものよりも好ましい。
【0038】
一般式(2A)で表される化合物として、以下の一般式(2B)で表されるシアノベンゼン骨格を含む化合物や一般式(2C)で表されるトリアジン骨格を含む化合物を挙げることができる。
【化15】
【0039】
一般式(2B)において、R~Rの0~4つはシアノ基を表し、R~Rの少なくとも1つは置換アミノ基を有する置換基を表し、残りのR~Rは水素原子、または置換アミノ基を有する置換基とシアノ基以外の置換基を表す。
【0040】
【化16】
一般式(2C)において、R~Rの少なくとも1つは置換アミノ基を表し、残りのR~Rは水素原子、または置換アミノ基を有する置換基とシアノ基以外の置換基を表す。
【0041】
一般式(2A)~(2C)でいう置換アミノ基を有する置換基は、ジアリールアミノ基を有する置換基であることが好ましく、ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに連結して例えばカルバゾリル基となっていてもよい。また、一般式(2B)における置換アミノ基を有する置換基はR~Rのいずれであってもよいが、例えばR、R、R、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRとR、RとRとR、RとRとR、RとRとR、RとRとRとR、RとRとRとRとRなどを好ましく例示することができる。また、一般式(2C)における置換アミノ基を有する置換基はR~Rのいずれであってもよいが、例えばR、RとR、RとRとRを例示することができる。
【0042】
一般式(2A)~(2C)でいう置換アミノ基を有する置換基は、以下の一般式(W1)で表される置換基であることが好ましい。一般式(W1)で表される置換基は、分子内に2つ以上存在していてもよいし、3つ以上存在していてもよい。一般式(2A)または一般式(2B)で表される化合物である場合は、一般式(W1)で表される置換基は分子内に4つ以上存在していてもよい。一般式(W1)で表される置換基の置換位置は特に制限されない。
【化17】
一般式(W1)において、ArとArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。Lは単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。*は、一般式(2A)~(2C)における炭素原子(C)への結合位置を表す。
一般式(W1)におけるArとArは、互いに結合することにより一般式(W1)の窒素原子とともに環状構造を形成していてもよい。
ArおよびArが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。ArおよびArを構成する環の具体例として、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ナフタレン環を挙げることができる。ArおよびArが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基の具体例として、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基を挙げることができる。ArおよびArが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。置換基を2つ以上有する場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数1~20のアリール置換アミノ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数7~21のアリールアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数1~20のアリール置換アミノ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基である。
【0043】
一般式(W1)で表される置換基は、以下の一般式(W2)で表される置換基であることが好ましい。
【化18】
一般式(W2)において、R11~R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Lは単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は互いに結合して環状構造を形成するために必要な連結基を形成してもよい。また、R15とR16は互いに結合して単結合または連結基を形成してもよい。*は、一般式(2A)~(2C)における炭素原子(C)への結合位置を表す。
11~R20がとりうる置換基の具体例と好ましい範囲については、一般式(2A)におけるArおよびArが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基の置換基の対応する記載を参照することができる。
【0044】
11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して形成する環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
【0045】
一般式(W1)および(W2)において、Lは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。Lは、単結合、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましい。
Lが表すアリーレン基を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。Lが表すアリーレン基を構成する芳香環の炭素数は、6~22であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~14であることがさらに好ましく、6~10であることがさらにより好ましい。アリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニレン基を挙げることができる。
また、Lが表すヘテロアリーレン基を構成する複素環は、単環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が縮合した縮合環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が連結した連結環であってもよい。複素環の炭素数は5~22であることが好ましく、5~18であることがより好ましく、5~14であることがさらに好ましく、5~10であることがさらにより好ましい。複素環を構成する複素原子は窒素原子であることが好ましい。複素環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。
Lが表すより好ましい基はフェニレン基である。Lがフェニレン基であるとき、フェニレン基は1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基のいずれであってもよいが、1,4-フェニレン基であることが好ましい。また、Lは置換基により置換されていてもよい。Lの置換基の数および置換位置は特に制限されない。Lに導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11~R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0046】
一般式(W2)で表される置換基は、下記の一般式(W3)~(W7)のいずれかの一般式で表される置換基であることが好ましい。
【化19-1】
【化19-2】
【0047】
一般式(W3)~(W7)において、R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R58、R61~R65、R81~R90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11~R20の置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R58、R61~R65、R71~R79、R81~R90は、各々独立に上記一般式(W3)~(W7)のいずれかで表される基であることも好ましい。また、一般式(W3)のR21、R23、R28、R30のうちの少なくとも2つは置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、R21、R23、R28、R30の全てが置換もしくは無置換のアルキル基であるか、R21とR30が置換もしくは無置換のアルキル基であるか、R23とR28が置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、その置換もしく無置換のアルキル基は炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。一般式(W7)のR89およびR90は置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。一般式(W3)~(W7)における置換基の数は特に制限されない。すべてが無置換(すなわち水素原子)である場合も好ましい。また、一般式(W3)~(W7)のそれぞれにおいて置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。一般式(W3)~(W7)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(W3)であればR22~R24、R27~R29のいずれかであることが好ましく、R23およびR28の少なくとも1つであることがより好ましく、一般式(W4)であればR32~R37のいずれかであることが好ましく、一般式(W5)であればR42~R47のいずれかであることが好ましく、一般式(W6)であればR52、R53、R56、R57、R62~R64のいずれかであることが好ましく、一般式(W7)であればR82~R87、R89、R90のいずれかであることが好ましい。
【0048】
一般式(W3)~(W7)において、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R54とR61、R55とR65、R81とR82、R82とR83、R83とR84、R85とR86、R86とR87、R87とR88、R89とR90は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造の説明と好ましい例については、上記の一般式(W2)において、R11とR12等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。
【0049】
一般式(W3)~(W7)において、L~Lは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。*は、一般式(2A)~(2C)における炭素原子(C)への結合位置を表す。L~Lが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、Lが表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。L~Lは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましい。
【0050】
第2化合物は、遅延蛍光を放射する化合物として知られている化合物が多い。そのような化合物として、WO2013/154064号公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/011955号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/081088号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-116975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/133359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-9224号公報の段落0008~0048および0067~0076に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物を好ましく挙げることができる。これらの公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
また、遅延蛍光を放射する化合物(遅延蛍光体)として、特開2013-253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物を好ましく挙げることができる。これらの公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
【0051】
第2化合物の発光波長は特に制限されず、本発明の組成物の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物を画像表示や色表示のための有機発光素子の発光層に用いる場合には、第2化合物は、赤色領域(620~750nm)や緑色領域(495~570nm)、青色領域(450~495nm)に発光極大波長を有するものであることが好ましい。
【0052】
以下において、第2化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる第2化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
【化20-4】
【化20-5】
【化20-6】
【化20-7】
【0053】
(第1化合物と第2化合物を含む組成物)
本発明の組成物は第1化合物と第2化合物を含む。本発明の組成物には、第1化合物と第2化合物のみからなるものであってもよいし、それ以外の化合物を含むものであってもよい。
第1化合物と第2化合物は上記式(A)の関係を満たす。このため、第1化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(1)は、第2化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(2)よりも高い。これにより、第1化合物から第2化合物への励起一重項エネルギーの移動が容易になる。ES1(1)とES1(2)の差[ES1(1)-ES1(2)]は、例えば0.1eV以上、0.2eV以上、0.3eV以上、0.5eV以上にしたり、1.2eV以下、1.0eV以下、0.8eV以下、0.6eV以下にしたりしてもよい。
第1化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(1)は、第2化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(2)よりも高いことが好ましい。これにより、第2化合物の分子中に励起三重項エネルギーが閉じ込められ、その励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差の発生確率を向上させることができる。その結果、発光効率が高い組成物が得られる。
【0054】
最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1は以下の測定方法により求めることができる。測定に際しては、測定対象化合物をトルエンに溶解させた溶液の試料や、測定対象化合物の濃度が6重量%となるようにホスト材料と共蒸着した膜の試料を用意する。ホスト材料は、測定対象化合物のES1よりも最低励起一重項エネルギー準位が高くて、測定対象化合物のET1よりも最低励起三重項エネルギー準位が高いものの中から選択する。なお、本明細書のES1とET1は、Si基板上に測定対象化合物の濃度が6重量%となるようにmCPと共蒸着した厚さ100nmの膜の試料を用いて測定した値である。
(1)最低励起一重項エネルギー準位ES1
常温(300K)で試料の蛍光スペクトルを測定する。励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得る。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とする。この発光スペクトルの短波側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をES1とする。
換算式:ES1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、例えば励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を用い、検出器にストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いることができる。
(2) 最低励起三重項エネルギー準位ET1
最低励起一重項エネルギー準位ES1と同じ試料を77[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定する。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得る。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をET1とする。
換算式:ET1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
【0055】
本発明の組成物は、第1化合物が式(1a)を満たし、第2化合物が式(2b)を満たし、第1化合物と第2化合物が式(A)の関係を満たすものであることが必要とされる。
好ましい一態様では、本発明の組成物は、第1化合物が式(1a)と式(1c)を満たし、第2化合物が式(2b)を満たし、第1化合物と第2化合物が式(A)の関係を満たす。
好ましい別の一態様では、本発明の組成物は、第1化合物が式(1a)を満たし、第2化合物が式(2a)と式(2b)を満たし、第1化合物と第2化合物が式(A)の関係を満たす。
好ましい別の一態様では、本発明の組成物は、第1化合物が式(1a)と式(1c)を満たし、第2化合物が式(2a)と式(2b)を満たし、第1化合物と第2化合物が式(A)の関係を満たす。
【0056】
本発明の組成物に含まれる第1化合物の含有量を100重量部としたとき、第2化合物の含有量は0.01重量部以上であることが好ましく、例えば0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、9重量部以上の範囲から選択することが可能である。また、第2化合物の含有量は、第1化合物の含有量を100重量部としたとき、例えば50重量部未満、30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、6重量部以下、2重量部以下、0.5重量部以下の範囲から選択することが可能である。また、例えば30~70重量部の範囲内から選択したり、40~55重量部の範囲内から選択したりしてもよい。
本発明の組成物における第1化合物の含有量は、30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。例えば70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上の範囲とすることが可能である。本発明の組成物における第1化合物の含有量は、99.99重量%以下であることが好ましく、例えば99.9重量%以下、99重量%以下、95重量%以下、85重量%以下、75重量%以下、55重量%以下、35重量%以下の範囲とすることが可能である。また、例えば50~90重量%の範囲内から選択したり、60~80重量%の範囲内から選択したりしてもよい。
【0057】
本発明の組成物は、金属元素を含まないことが好ましく、重金属元素を含まないことが好ましい。本発明の組成物は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選択される原子のみから構成されることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみから構成されることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成されることが好ましく、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる群より選択される原子のみから構成されることが好ましい。
本発明の組成物は、本発明の組成物からの発光のうち、第2化合物からの発光量が最大であるように調整することが可能である。このとき、第2化合物からの発光量は、組成物からの全発光量の50%以上であることが好ましく、70%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、100%に調整することも可能である。
なお、本明細書において組成物からの発光量に言及する場合は、組成物を薄膜にして一対の電極間に挿入した素子を電流励起したときの発光量を示すものとする。
【0058】
(第3化合物)
本発明の組成物は、第1化合物と第2化合物の他に、下記式(B)を満たす第3化合物を含んでいてもよい。
【数10】
【0059】
式(B)において、ES1(1)は第1化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(2)は第2化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表し、ES1(3)は第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位を表す。
S1(2)とES1(3)の差[ES1(2)-ES1(3)]は、例えば0.1eV以上、0.2eV以上、0.3eV以上、0.5eV以上にしたり、1.2eV以下、1.0eV以下、0.8eV以下、0.6eV以下にしたりしてもよい。式(B)を満たす第3化合物を採用することにより、第2化合物の励起一重項エネルギーが第3化合物へ移動し易くなり、第2化合物の逆項間交差で生じた励起一重項状態のエネルギーを第3化合物の発光に効率よく利用することができる。
【0060】
第3化合物は、蛍光材料であることが好ましい。本発明における「蛍光材料」とは、トルエンやジクロロメタンのような溶液試料もしくは蒸着膜試料に、20℃で励起光を照射したとき蛍光を放射する有機材料のことを意味する。ここで、「蛍光」とは、励起一重項状態から基底一重項状態への失活の際に放射される光であり、最低励起一重項エネルギー準位S1,qと最低励起三重項エネルギー準位T1,qが、蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位S1,fと最低励起三重項エネルギー準位T1,fに対し
1,q > S1,f
1,q < T1,f
である三重項失活材や酸素の導入により消光しないことによって燐光と区別することができる。本発明における蛍光材料は、蛍光とともに燐光を放射するものであってもよいが、その場合の蛍光強度は燐光強度の9倍以上であることが好ましい。
第3化合物には、蛍光発光寿命(τ)が200ns(ナノ秒)未満であるものを採用してもよいし、蛍光発光寿命(τ)が200ns(ナノ秒)以上である遅延蛍光材料を採用してもよい。蛍光発光寿命(τ)の説明については、第2化合物の蛍光発光寿命(τ)についての説明を参照することができる。
第3化合物は、下記式(3b)も満たすものであることが好ましい。
【数11】
【0061】
式(3b)において、ΔEST(3)は、第3化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1(3)と第3化合物の最低励起三重項エネルギー準位ET1(3)の差である。
第3化合物のΔEST(3)は、例えば0.15eV未満、0.10eV未満、0.05eV未満、0.01eV未満の範囲内とすることが可能である。第3化合物は、ΔEST(3)が小さいもの程、逆項間交差を起こし易い傾向があり、励起三重項状態を励起一重項状態に変換する作用を効果的に発現することができる。
【0062】
第3化合物は、式(B)を満たす単一の化合物からなる材料であってもよいし、エキサイプレックスを形成するような2種以上の化合物からなり、そのエキサイプレックスの最低励起一重項エネルギー準位ES1が式(B)を満たすものであってもよい。また、エキサイプレックスを形成する場合、そのエキサイプレックスの最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1の差が0.20eV未満であることが好ましい。第3化合物は、金属元素を含まない化合物であることが好ましく、重金属元素を含まない化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましく、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる群より選択される原子のみからなる化合物であることが好ましい。
【0063】
本発明の組成物が第3化合物を含有するとき、第3化合物の含有量は第1化合物の含有量よりも少ないことが好ましい。また、第3化合物の含有量は第2化合物の含有量よりも少ないことが好ましい。第3化合物の含有量は、第1化合物と第2化合物の合計量を100重量部としたとき、0.01重量部以上であることが好ましく、例えば0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、9重量部以上の範囲から選択することが可能である。また、第3化合物の含有量は、第1化合物と第2化合物の合計量を100重量部としたとき、例えば30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、6重量部以下、2重量部以下、0.5重量部以下の範囲から選択することが可能である。また、例えば0.01~5重量部の範囲内から選択したり、0.1~3重量%の範囲内から選択したりしてもよい。
【0064】
本発明の組成物が第3化合物を含有するとき、本発明の組成物からの発光のうち、第3化合物からの発光量が最大であるように調整することができる。このとき、第3化合物からの発光量は、組成物からの全発光量の50%以上であることが好ましく、70%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、100%に調整することも可能である。
本発明の組成物が第3化合物を含有するときであっても、本発明の組成物からの発光のうち、第2化合物からの発光量が最大であるように調整することも可能である。このとき、第2化合物からの発光量は、組成物からの全発光量の50%以上、70%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.99%以上となるように調整してもよく、また、第3化合物からの発光量は0.01~50%の範囲内、0.01~30%の範囲内、0.01~10%の範囲内、0.01~5%の範囲内、0.01~1%の範囲内となるように調整してもよい。
第2化合物と第3化合物の発光量は、第2化合物と第3化合物の種類と含有量を調整することにより制御することが可能である。
【0065】
第3化合物の発光波長は特に制限されず、本発明の組成物の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物を画像表示や色表示のための有機発光素子の発光層に用いる場合には、第3化合物は、赤色領域(620~750nm)や緑色領域(495~570nm)、青色領域(450~495nm)に発光極大波長を有するものであることが好ましい。
【0066】
第3化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、クリセン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、スチルベン誘導体、フルオレン誘導体、アントリル誘導体、ピロメテン誘導体、ターフェニル誘導体、ターフェニレン誘導体、フルオランテン誘導体、アミン誘導体、キナクリドン誘導体、オキサジアゾール誘導体、マロノニトリル誘導体、ピラン誘導体、カルバゾール誘導体、ジュロリジン誘導体、チアゾール誘導体、ジアザボラナフトアントラセン等の含ホウ素多環芳香族骨格を持つ化合物等の多重共鳴効果を有する化合物等を用いることが可能である。これらの例示骨格には置換基を有してもよいし、置換基を有していなくてもよい。また、これらの例示骨格どうしを組み合わせてもよい。
【0067】
第3化合物の具体例としては、第2化合物の具体例として挙げた化合物を挙げることができる。ただし、第2化合物に対して式(B)の関係を満たすように第3化合物を選択する。第3化合物として用いられる化合物は、60%以上のPL発光量子収率を示すことが好ましく、80%以上であることがより好ましい。また、第3化合物として用いられる化合物は、50ns以下の瞬時蛍光寿命を示すことが好ましく、20ns以下であることがより好ましい。この時の瞬時蛍光寿命とは、熱活性型遅延蛍光を示す化合物について、発光寿命測定を行った時に観測される複数の指数減衰成分のうち最も早く減衰する成分の発光寿命のことである。また、第3化合物として用いられる化合物は、S1から基底状態への蛍光放射速度がS1からT1への項間交差速度よりも大きいことが好ましい。化合物の速度定数の算出方法については、熱活性型遅延蛍光材料に関する公知の文献(H. Uoyama, et al., Nature 492, 234 (2012)やK. Masui, et al., Org. Electron. 14, 2721, (2013)等)を参照することができる。
また、第3化合物に用いることができるその他の化合物の具体例として、以下に記載の化合物を例示することもできる。例示化合物の構造中、t-butylおよびt-Buはいずれもターシャリーブチル基を表す。ただし、本発明において第3化合物に用いることができる化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0068】
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【化22-5】
【化22-6】
【化22-7】
【化22-8】
【化22-9】
【化22-10】
【化22-11】
【0069】
(発光組成物)
本発明の第1化合物と第2化合物を含む組成物は、発光組成物として有用である。
発光組成物は、溶液状態であってもよいし、固体状態であってもよい。溶液状態にする際に用いる溶媒は、組成物を溶解することができるものの中から適宜選択することができる。例えばトルエンなどの有機溶媒を挙げることができる。固体状態にする場合は、膜(フィルム状、薄膜状)にすることが好ましい。薄膜状態にする場合は、例えば積層構造を有する発光素子の1層として形成してもよい。
ある実施形態では、本発明の組成物を含む膜は、湿式工程で形成することができる。湿式工程では、本発明の組成物を溶解した溶液を面に塗布し、溶媒の除去後に膜を形成する。湿式工程として、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工程では、本発明の組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して用いる。ある実施形態では、組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げる置換基(例えばアルキル基)を導入することができる。
ある実施形態では、本発明の組成物を含む膜は、乾式工程で形成することができる。ある実施形態では、乾式工程として真空蒸着法を採用することができる、これに限定されるものではない。真空蒸着法を採用する場合は、膜を構成する化合物を個別の蒸着源から共蒸着させてもよいし、化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよい。単一の蒸着源を用いる場合は、化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、その混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して冷却した混合物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比の膜を形成することができる。形成される膜の組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の組成比を有する膜を簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着される各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採用することができる。
【0070】
(発光組成物を提供する方法)
本発明は、第1化合物と第2化合物を含む発光組成物を提供する方法にも関する。
本発明の発光組成物を提供する方法は、ΔEST(2)が0.20eV未満である第2化合物と組み合わせる第1化合物を設計して、前記第1化合物と前記第2化合物を含む発光組成物を提供する方法である。その方法の特徴は、第2化合物を、ES1(2)よりもES1(1)が大きくて、PBHT(1)が0.730より大きくなるように設計することを含む。設計を行う際には、特定の分子構造についてPBHT値とES1を求め、その特定の分子構造の一部を変更した分子構造についてPBHT値とES1を求め、ES1がES1(1)と同等であることを確認しつつ、PBHT値がより大きな構造を選択するステップを1回以上行うことが好ましい。ステップは複数回繰り返して、分子構造の変更によりPBHT値の向上が見込まれなくなるまで行うことが好ましい。分子構造の一部の変更は、分子構造中の水素原子を置換基に変更したり、分子構造中の置換基を別の置換基に変更したりすることにより行うことができる。ここでいう置換基としては、第1化合物のRが表す置換基として挙げたものを例示することができる。また、環骨格構成原子を炭素原子から窒素原子へ変更したり、窒素原子から炭素原子へ変更したりすることもできる。さらに、環骨格構成原子を酸素原子から硫黄原子へ変更したり、硫黄原子から酸素原子へ変更したりすることもできる。あるいは、置換基の置換位置を変更したり、結合位置を変更したりすることもできる。これらの変更を行いながら、ES1がES1(1)と同等であることを確認しつつ、PBHT値がより大きな構造を選択することができる。
例えば、上記一般式(1)で表される特定の構造を有する化合物についてPBHT値とES1を求め、その構造の一部を変更した化合物についてPBHT値とES1を求めて比較することにより、本発明の方法を実施することができる。変更に際しては、一般式(1)のXを変更したり、Y~YおよびY11~Y18の少なくとも1つをC-RからNへ変更したりNからC-Rへ変更したり、Y~YおよびY11~Y18の少なくとも1つのC-RのRを変更したり、nを変更したり、Lの置換基を変更したり、Lの骨格を変更したり、Lに結合するY~Yを変更したり、Lに結合するY11~Y14を変更したりすることができる。これらの変更を適宜行って、ES1がES1(1)と同等であることを確認しつつ、PBHT値がより大きな構造を選択することができる。
本発明の方法において、PBHT値とES1は計算により求めてもよい。また、本発明の方法を実行するプログラムを作成し、そのプログラムを用いて方法を実施してもよい。プログラムはパソコン等のコンピューターを用いて作動させることができる。
【0071】
(有機発光素子)
本発明の組成物は、発光組成物として有用である。このため、本発明の組成物を用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基材上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層、励起子障壁層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基材、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。本発明の組成物は発光層に用いることができる。
【0072】
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基材と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基材と発光層にも該当する。
【0073】
基材:
いくつかの実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材により保持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子で一般的に用いられる、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたいずれかの材料を用いればよい。
【0074】
陽極:
いくつかの実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス装置の陽極は、金属、合金、導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。いくつかの実施形態では、前記の金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。いくつかの実施形態では、前記金属はAuである。いくつかの実施形態では、導電性の透明材料は、CuI、酸化インジウムスズ(ITO)、SnOおよびZnOから選択される。いくつかの実施形態では、IDIXO(In-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形成できるアモルファス材料を使用する。いくつかの実施形態では、前記陽極は薄膜である。いくつかの実施形態では、前記薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。いくつかの実施形態では、前記フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化される。いくつかの実施形態では、パターンが高精度である必要がない(例えば約100μm以上)場合、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマスクを用いて形成してもよい。いくつかの実施形態では、有機導電性化合物などのコーティング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法が用いられる。いくつかの実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超の透過度を有し、当該陽極は、単位面積あたり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用いる材料に応じて変動する。
【0075】
陰極:
いくつかの実施形態では、前記陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作製される。いくつかの実施形態では、前記電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物および希土類元素から選択される。いくつかの実施形態では、電子注入金属と、電子注入金属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。いくつかの実施形態では、前記混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。いくつかの実施形態では、前記混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる。いくつかの実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜として形成させることによって製造される。いくつかの実施形態では、前記陰極は単位面積当たり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmである。いくつかの実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。いくつかの実施形態では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンス素子は光放射輝度を向上させる。
いくつかの実施形態では、前記陰極を、前記陽極に関して前述した導電性の透明な材料で形成されることにより、透明または半透明の陰極が形成される。いくつかの実施形態では、素子は陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
【0076】
発光層:
いくつかの実施形態では、前記発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子が再結合して励起子を形成する層である。いくつかの実施形態では、前記層は光を発する。
発光層に、本発明の組成物を用いる。いくつかの実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。いくつかの実施形態では、放射光は燐光を含む。いくつかの実施形態では、放射光は、第2化合物からの放射光を含む。いくつかの実施形態では、放射光は、第2化合物からの放射光と、第1化合物からの放射光とを含む。また、第3化合物を用いる実施形態では、放射光は、第3化合物からの放射光を含む。第3化合物を用いる他の実施形態では、放射光は、第3化合物からの放射光と、第2化合物からの放射光を含む。第3化合物を用いる他の実施形態では、放射光は、第3化合物からの放射光と、第2化合物からの放射光と、第1化合物からの放射光を含む。第3化合物を用いるいくつかの実施形態では、第2化合物は補助ドーパントである。
【0077】
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。いくつかの実施形態では、前記注入層は駆動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。いくつかの実施形態では、前記注入層は、正孔注入層と電子注入層とを含む。前記注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することがきる。いくつかの実施形態では、注入層が存在する。いくつかの実施形態では、注入層が存在しない。
【0078】
正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化23】
【0079】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化24】
【0080】
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層の外側に拡散することを阻止できる層である。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有する層が含まれる。
【0081】
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
【0082】
次に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【化25】
【0083】
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
【0084】
以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【化26】
【0085】
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸送層まで拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、発光層における励起子の有効な閉じ込め(confinement)を可能にする。いくつかの実施形態では、装置の光放射効率が向上する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と陰極の側のいずれかで、およびその両側の発光層に隣接する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在するとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、それぞれ、発光材料の励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーより高い。
【0086】
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本発明で使用できる公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択される。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。
【0087】
以下に正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【化27】
【0088】
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料としても機能する。本発明で使用できる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはそのポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材料である。
【0089】
以下に電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
【化28】
【0090】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示したが、本発明において用いることができる材料は、上記の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
【0091】
デバイス:
いくつかの実施形態では、一般式(1)で表される化合物はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を有するOLEDを含み、前記発光層はホスト材料と発光材料とを含む。
いくつかの実施形態では、OLEDの発光層は、三重項を一重項に変換する蛍光材料を更に含む。
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の構成物は、OLEDまたは光電子デバイスなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。いくつかの実施形態では、前記構成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/または正孔輸送材料として有用でありうる。前記デバイスとしては、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検出装置、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-quench)装置(O-FQD)、発光燃料電池(LEC)または有機レーザダイオード(O-レーザー)が挙げられる。
【0092】
バルブまたはランプ:
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含み、当該発光層は、ホスト材料と、発光材料でと、OLEDドライバ回路と、を含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。いくつかの実施形態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および黄緑色)の組合せである。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、2色、4色またはそれ以上の色の組合せである。
いくつかの実施形態では、デバイスは、
取り付け面を有する第1面とそれと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、当該少なくとも1つのOLEDが、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含み、当該発光層がホスト材料と発光材料とを含む、発光する構成を有する少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なくとも1つのコネクターと、を備えるOLEDライトである。
いくつかの実施形態では、前記OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。いくつかの実施形態では、第1方向に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。いくつかの実施形態では、反射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
【0093】
ディスプレイまたはスクリーン:
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物はスクリーンまたはディスプレイにおいて使用できる。いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、限定されないが真空蒸発、堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。いくつかの実施形態では、前記基材は、独特のアスペクト比のピクセルを提供する2面エッチングにおいて有用なフォトプレート構造である。前記スクリーン(またマスクとも呼ばれる)は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーの、並びに水平方向では大きな広範囲の斜角開口部の配置を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上への化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパターン構成が可能となる。
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカットし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピクセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンにより変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要な局在化された深いエッチングが可能となる。
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとしてスピンマンドレル上へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コストの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセルマトリックスである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を使用して加工される。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
【0094】
デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
【0095】
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上に、セルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルのディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり、障壁層の端部はポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。いくつかの実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位で軟らかく切断されるように補助する。
いくつかの実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トランジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上に形成された発光ユニットと、を有してもよく、前記インタフェース部に塗布された有機フィルムは、前記平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、前記平坦化フィルムの形成と同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記発光ユニットは、不動態化層と、その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層と、によりTFT層と連結される。前記製造方法のいくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、ディスプレイユニットにもカプセル化層にも連結されない。
【0096】
前記有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記障壁層は無機フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。前記方法は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、当該ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と、インタフェース部に沿った切断の前に、前記キャリア基材をベース基材から分離する工程と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記OLEDディスプレイはフレキシブルなディスプレイである。
いくつかの実施形態では、前記不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配置された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、不動態化層上に形成された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成される。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、前記平坦化フィルムおよび有機フィルムは同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、当該有機フィルムの一部が直接ベース基材と接触し、当該有機フィルムの残りの部分が、障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接触する。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記発光層は、ピクセル電極と、対電極と、当該ピクセル電極と当該対電極との間に配置された有機発光層と、を有する。いくつかの実施形態では、前記ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
いくつかの実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピクセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニットを、ディスプレイユニットと称する。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止するカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化構造に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記カプセル化層は、複数の薄膜が積層した薄膜状カプセル化構造を有する。いくつかの実施形態では、インタフェース部に塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態様で形成される。
【0098】
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成された柔軟なベース基材を使用する。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はガラス材料で形成されたキャリア基材上に形成され、次に当該キャリア基材が分離される。
いくつかの実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成される。一実施形態では、前記障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェース部に溝が形成される。各セルパネルは、前記溝に沿って切断できる。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記の製造方法は、更にインタフェース部に沿って切断する工程を含み、そこでは溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝で形成され、当該溝がベース基材に浸透しない。いくつかの実施形態では、各セルパネルのTFT層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまたはアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態では、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなければ障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィルムと有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸入するおそれがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディスプレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0100】
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成され、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャリア基材がベース基材から分離される。いくつかの実施形態では、レーザー光線がキャリア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の相違により、ベース基材から分離される。
いくつかの実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿って切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を吸収する。いくつかの実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
いくつかの実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる。
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
【0101】
<定義>
本願明細書中で特に定義されない限り、本願で用いられる科学的および専門的用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有する。全般的には、本願明細書に記載の化学物質に関する命名法および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に用いられている。
「アルコキシ」という用語は、酸素原子が結合したアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基として、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、tert-ブトキシ基などを挙げることができる。
本発明で用いられる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」が含まれるものとし、後者については、アルケニル基の一つ以上の炭素原子上の水素原子を置換する置換基を有するアルケニル部分を指す。典型的には、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基は、特に定義されない限り、1~約20、好ましくは1~約10の炭素原子数である。そのような置換基は、1つ以上の二重結合に含まれるか若しくは含まれない1つ以上の炭素原子に存在しうる。更に、そのような置換基には、安定性を損なわない限りにおいて、後述するように、アルキル基に含まれ得る全てのものが含まれる。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が含まれるものとする。
【0102】
「アルキル」は、完全に飽和した、直鎖状若しくは分岐鎖状の非芳香族炭化水素である。典型的には、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、特に定義されない限り、1~約20、好ましくは1~約10の炭素原子数である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~8の炭素原子数、1~6の炭素原子数、1~4の炭素原子数、または1~3の炭素原子数である。直鎖上若しくは分岐鎖状のアルキル基の例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペンチル基およびオクチル基が挙げられる。
更に、明細書、実施例および特許請求の範囲全体を通じて用いられる「アルキル」という用語には、「非置換アルキル」および「置換されたアルキル」が含まれるものとし、後者については、炭化水素骨格中の1つ以上の置換可能な炭素原子上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基としては、特定されない限り、例えばハロゲン(例えばフルオロ基)、ヒドロキシル基、カルボニル基(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル基)、チオカルボニル基(例えばチオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート基)、アルコキシ基、ホスホリル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィネート基、アミノ基、アミド基、アミジン基、イミン基、シアノ基、ニトロ基、アジド基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、スルフェート基、スルホネート基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホニル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基または芳香族若しくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。好ましい実施形態では、置換アルキル基上の置換基は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシ基から選択される。より好ましい実施形態では、置換アルキル基上の置換基は、フルオロ基、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシル基から選択される。炭化水素鎖上の置換された部分が、それ自身必要に応じて置換されうることは、当業者に理解されるとおりである。例えば、置換アルキルの置換基としては、置換されたおよび非置換のアミノ基、アジド基、イミノ基、アミド基、ホスホリル基(ホスホネート基およびホスフィネート基を含む)、スルホニル基(スルフェート基、スルホンアミド基、スルファモイル基およびスルホネート基を含む)およびシリル基、並びに、エーテル、アルキルチオ基、カルボニル基(ケトン基、アルデヒド基、カルボキシレート基およびエステルを含む)、-CF、-CNなどを挙げることができる。典型的な置換アルキル基については後述する。シクロアルキル基は更に、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノアルキル基、カルボニル基で置換されたアルキル基、-CF、-CNなどで更に置換されうる。
【0103】
「Cx-y」という用語は、化学基部分(例えばアシル基、アシルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基)に関連して用いられるときは、鎖中にx~y個の炭素原子を含む基を包含することを意味する。例えば、「Cx-yアルキル基」という用語には、置換若しくは非置換の飽和炭化水素基であって、鎖中にx~y個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基および分岐鎖状アルキル基が含まれ、またハロアルキル基が含まれる。好ましいハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基およびペンタフルオロエチル基が挙げられる。Cアルキル基とは、基が末端の位置に存在する場合には水素原子を、内部に存在する場合には結合を示す。用語「C2-yアルケニル基」および「C2-yアルキニル基」は、長さおよび置換可能性において上記のアルキル基と類似する、置換若しくは非置換の不飽和脂肪族基であって、但し、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を有する基を指す。
本発明で用いられる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含んでいる脂肪族基を指し、「非置換アルキニル」および「置換されたアルキニル」が含まれるものとし、後者については、アルキニル基の1つ以上の炭素原子上の水素を置換する置換基を有するアルキニル部分を指す。典型的には、特に定義されない限り、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキニル基は、1~約20、好ましくは1~約10の炭素原子数である。そのような置換基は、1つ以上の三重結合に含まれるか若しくは含まれない1つ以上の炭素原子上に存在しうる。更に、そのような置換基には、安定性を損なわない限りにおいて、後述するように、アルキル基に含まれ得る全てのものが含まれる。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が含まれるものとする。
【0104】
用語「アミン」および「アミノ」は、当技術分野で周知であり、非置換のおよび置換されたアミンおよびその塩を指し、例えば、
【化29】
で表される部分を指し、式中、Rは各々独立に水素またはヒドロカルビル基を表すか、または、2つのRは、それらが結合するN原子と共に環構造中に4~8の原子を有する複素環を形成する。
【0105】
本発明で用いられる「アリール」という用語には、環の各原子が炭素原子である、置換されたか若しくは非置換の単環式芳香族基が含まれる。好ましくは、前記環は6または20員環、より好ましくは6員環である。「アリール」という用語にはまた、2つ以上の炭素原子が2つの隣接する環に共有される2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、当該環のうちの少なくとも1つが芳香族であり、他の環が、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が挙げられる。
本発明で用いられる用語「ハロ」および「ハロゲン」は、ハロゲン原子を意味し、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0106】
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」には、置換若しくは非置換、好ましくは5~20員環、より好ましくは5~6員環の芳香族単環構造が含まれ、その環構造中には、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子が含まれる。用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」にはまた、2つ以上の炭素原子が2つの隣接する環に共有される2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、環のうちの少なくとも1つは複素環であり、他の環は、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。ヘテロアリール基としては、例えばピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。
本発明で用いられる「ヘテロ原子」という用語は、炭素原子または水素原子以外のあらゆる元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄原子である。
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」および「複素環式」は、置換若しくは非置換の、好ましくは3~20員環、より好ましくは3~7員環の非芳香環構造を指し、その環構造には、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子が含まれる。用語「ヘテロシクリル」および「複素環」にはまた、2つ以上の炭素原子が隣接する2つの環に共有された2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、環のうちの少なくとも1つは複素環式であり、他の環は、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。ヘテロシクリル基としては、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0107】
「シリル」という用語は、3つのヒドロカルビル部分が結合したシリコン部分を指す。
「置換された」という用語は、主鎖中の1つ以上の炭素原子上の水素を置換する置換基を有する部分を指す。当然ながら、「置換」または「~で置換された」というときは、そのような置換が、置換される原子と置換基との価数に従うものであって、当該置換により化合物が安定化する(例えば、転移、環化、除去などの変化が自発的に生じない)ことを暗に含むものである。置換されてもよい部分には、本明細書に記載のあらゆる適切な置換基が含まれ、例えばアシル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキニル基、アミド基、アミノ基、アミノアルキル基、アラルキル基、カルバメート基、カルボシクリル基、シクロアルキル基、カルボシクリルアルキル基、カーボネート基、エステル基、エーテル基、ヘテロアラルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヒドロカルビル基、シリル基、スルホン基またはチオエーテル基が挙げられる。本明細書において、「置換された」という用語は、有機化合物に存在しうる全ての置換基が含まれるものとする。広義には、前記の存在しうる置換基には、非環式および環式の、分岐鎖状および非分岐鎖状の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の、有機化合物の置換基が含まれる。前記の存在し得る置換基は、適切な有機化合物に対して、1以上の、同じまたは異なるものでありうる。本発明の目的においては、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、本願明細書に記載の、当該ヘテロ原子の価数を満たす、有機化合物に存在しうるあらゆる置換基を有してもよい。置換基には、本願明細書に記載のあらゆる置換基が含まれ、例えばハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル基)、チオカルボニル基(例えばチオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート基)、アルコキシ基、ホスホリル基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィネート基、アミノ基、アミド基、アミジン基、イミン基、シアノ基、ニトロ基、アジド基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、スルフェート基、スルホネート基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホニル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基または芳香族若しくは複素環式芳香族部分が含まれる。好ましい実施形態では、置換されたアルキル基の置換基は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン、カルボニル基、シアノ基、ヒドロキシ基から選択される。より好ましい実施形態では、置換されたアルキル基の置換基は、フルオロ基、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシル基から選択される。当業者であれば、当該置換基はそれ自身適宜置換されうることを理解するであろう。「非置換の」として特に記載のない限り、本願明細書中の化学基部分に関する言及には、置換された修飾体が含まれるものとして理解される。例えば、「アリール」基または部分に関する言及には、置換されたおよび非置換の修飾体が暗に含まれる。
【0108】
本発明の化合物において、特定のアイソトープとして特定されないいかなる原子も、当該原子のいかなる安定なアイソトープとして包含される。特に明記しない限り、「H」または「水素」として状態が特定されるとき、その状態は、その天然におけるアイソトープ組成の水素を有するものとして理解される。また、特に明記しない限り、状態が「D」または「重水素」として特定されるとき、その状態は、天然における重水素の量0.015%より少なくとも3340倍高い量の重水素を有する(すなわち、少なくとも重水素の含量が50.1%の)ものとして理解される。
本発明で用いられる「アイソトープ濃縮率」という用語は、アイソトープ量と天然における特定のアイソトープ量との比率を意味する。
【0109】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、少なくとも3500(重水素原子52.5%)、少なくとも4000(60%の重水素)、少なくとも4500(67.5%の重水素)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素)、少なくとも6000(90%の重水素)、少なくとも6333.3(95%の重水素)、少なくとも6466.7(97%の重水素)、少なくとも6600(99%の重水素)または少なくとも6633.3(99.5%の重水素)のアイソトープ濃縮率(各重水素原子含量毎)を有する。
「同位体置換体」という用語は、アイソトープ組成だけが本発明の具体的化合物と異なる種のことを指す。
本発明の化合物に言及する場合、「化合物」という用語は、同一の化学構造を有する分子の集まりを指すが、但し、分子の構成原子間にアイソトープ変動が存在する場合がある。ゆえに、当業者に自明であるように、所定の重水素原子を含有する特定の化学構造で表される化合物は、当該構造内の所定の重水素のうちの1つ以上の位置において水素原子を有する、同位体置換体を若干含むこともありうる。本発明の化合物におけるそのような同位体置換体の相対量は、化合物の調製に用いられる重水素化試薬のアイソトープ純度、および化合物を調製するための様々な合成ステップにおける重水素の取り込み効率などの多くの要因に依存する。しかしながら、前述のように、そのような同位体置換体の相対量は、全体で化合物の49.9%未満である。他の実施形態では、そのような同位体置換体の相対量は、全体で化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満または0.5%未満である。
【実施例
【0110】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0111】
(青色発光素子の耐久性試験1)
第1化合物として、化合物20、PYD2Cz、Host2~4、6、7から選択されるいずれか1つを採用し、第2化合物として青色遅延蛍光材料であるT58を採用して、青色発光素子の耐久性試験を行った。
第1化合物と第2化合物の発光層における含有量は第1化合物は70質量%とし、第2化合物は30質量%とすることにより青色発光素子を製造した。
膜厚50nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上にHAT-CNを10nmの厚さに形成し、その上に、NPDを30nmの厚さに形成した。次にTris-PCzを10nmの厚さに形成し、その上にPYD2Czを5nmの厚さに形成した。次に、第1化合物と第2化合物を異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。次に、SF3-TRZを10nmの厚さに形成した後、LiqとSF3-TRZを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成した。この層におけるLiqとSF3-TRZの含有量はそれぞれ30質量%と70質量%とした。さらにLiqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)とした。
1000cd/mで発光させた青色発光素子の発光強度が初期強度の95%になるまでの時間を測定してLT95とした。第1化合物のPBHT値とLT95の測定結果の関係を示すグラフを図2に示す。図2のグラフはHOST3のLT95を1としたグラフである。図2から明らかなように、PBHT値が高いと、LT95が長くなる傾向があることが確認された。特に、PBHT値が最も高い本発明の化合物20を用いた素子は、Host3を用いた素子の7.63倍もの長いLT95が観測され、良好な性能を示した。
第1化合物として、化合物13~19および21~26をそれぞれ用いた点を変更して、上の手順にしたがって各青色発光素子を製造してLT95を測定したところ、第1化合物としてPYD2Cz(PBHT値は0.671)を用いた青色発光素子よりもさらに長いLT95が観測される。
【0112】
(青色発光素子の耐久性試験2)
第1化合物として化合物20、第2化合物としてT58、第3の化合物としてT80を用いて、発光層における含有量を第1化合物は69質量%とし、第2化合物は30質量%とし、第3化合物は1質量%とすることにした以外は、上記同様の手順にしたがっての青色発光素子の耐久性試験を行ったところ、上記と同様に良好なLT95が観測された。
【0113】
(緑色発光素子の耐久性試験1)
第1化合物としてHost1~5および化合物13から選択されるいずれか1つを採用し、第2化合物として緑色遅延蛍光材料である化合物T8(4CzIPN)を採用して緑色発光素子を製造し、12.5mA/cmで発光させた緑色発光素子の発光強度が初期強度の95%になるまでの時間を測定してLT95とした。
緑色発光素子は、膜厚50nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて真空度5.0×10-5Paで積層することにより製造した。まず、ITO上にNPD(95質量%)とHI1(5質量%)を5nmの厚さに形成し、その上に、NPDを60nmの厚さに形成した。次にPTCzを10nmの厚さに形成した。次に、第1化合物(65質量%)と第2化合物(35質量%)を異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さの層を形成して発光層とした。次に、SF3-TRZを10nmの厚さに形成した後、Liq(30質量%)とSF3-TRZ(70質量%)を異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成した。さらにLiqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)とした。
第1化合物のPBHT値とLT95の測定結果の関係を示すグラフを図3に示す。図3のグラフはHOST3のLT95を1としたグラフである。図3から明らかなように、PBHT値が高いと、LT95が長くなる傾向があることが確認された。また、HOST1のPBHT値である0.730より大きいPBHTを有する化合物について特に長いLT95が観測されることが確認された。さらに、第1化合物として、化合物14~26をそれぞれ用いた点を変更して、上の手順にしたがって各緑色発光素子を製造してLT95を測定したところ、第1化合物としてHost1を用いた緑色発光素子よりも長いLT95が観測される。
【0114】
(緑色発光素子の耐久性試験2)
第1化合物として化合物20、化合物21、化合物23から選択されるいずれか1つを選択し 第2化合物としてT69を用いて、発光層における含有量を第1化合物は65質量%とし、第2化合物は35質量%とした以外は、上記同様の緑色素子を作成したところ、上記と同様に良好なLT95が観測された。
【0115】
(緑色発光素子の耐久性試験3)
また、第1化合物として化合物20、化合物21、化合物23から選択されるいずれか1つを選択し、第2化合物としてT67を用いて、発光層における含有量を第1化合物は65質量%とし、第2化合物は35質量%とした以外は、上記同様の手順にしたがって緑色発光素子の耐久性試験を行ったところ、上記と同様に良好なLT95が観測された。
【0116】
【化30-1】
【化30-2】
【化30-3】
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の条件を満たす組成物を用いれば、優れた耐久性を有する有機発光素子を提供することができる。また、本発明の方法を用いれば、優れた耐久性を有する有機発光素子の製造に有用な組成物を簡便に設計することができる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0118】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3