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特許7594798砥石軌跡自動作成方法及び砥石軌跡自動作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】砥石軌跡自動作成方法及び砥石軌跡自動作成装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20241128BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 17/10 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G05B19/4093 J
B23Q15/00 301B
B24B17/10 P
B24B49/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022023830
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120784
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】590006343
【氏名又は名称】株式会社和井田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中提 俊太
(72)【発明者】
【氏名】高原 貴史
(72)【発明者】
【氏名】清水 智弘
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-078123(JP,A)
【文献】特開平04-143806(JP,A)
【文献】特開2010-058205(JP,A)
【文献】特開2009-214289(JP,A)
【文献】特開2008-105119(JP,A)
【文献】特開2005-025668(JP,A)
【文献】特開平05-020402(JP,A)
【文献】特開平04-315551(JP,A)
【文献】特開平02-127703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107932265(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42
B23Q 15/00-15/28
B24B 17/04
B24B 17/10
B24B 19/00
B24B 49/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより、砥石軌跡を作成する砥石軌跡自動作成方法であって、
前記コンピュータが、砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状にするとともに分割した形状を近似円弧に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する段階を有し、
または、前記コンピュータが、前記砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線で分割して前記分割線と前記砥石輪郭の交点を取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する段階を有し、
前記コンピュータが、複数の変化点を介して連結した複数の要素により構成されたワーク輪郭、及び前記砥石類似輪郭データに基づいた砥石類似輪郭をディスプレイにそれぞれ表示させるとともに、前記砥石類似輪郭の前記分割した形状の前記近似円弧、または、前記交点を、加工対象の前記要素に接触させる接触段階と、
前記コンピュータにより、前記砥石類似輪郭が前記加工対象の前記要素に接触した際の前記砥石類似輪郭の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する作成段階を含み、
前記接触段階では、前記コンピュータは、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの前記砥石類似輪郭を接触させる砥石軌跡自動作成方法。
【請求項2】
前記ワーク輪郭における加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力を前記コンピュータが、受け付ける段階を備え、
前記作成段階では、前記コンピュータは前記加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成する請求項1に記載の砥石軌跡自動作成方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、前記砥石軌跡の加工開始点への導入態様の入力、及び前記砥石軌跡の加工終了点からの退出態様を入力を受け付ける段階を備え、
前記作成段階では、前記コンピュータは、前記入力された導入態様の軌跡、及び前記入力された退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に付加する請求項2に記載の砥石軌跡自動作成方法。
【請求項4】
砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状に分割するとともに各分割した形状を近似円弧に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成するか、
または、前記砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線で分割して前記分割線と前記砥石輪郭の交点を取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する砥石類似輪郭作成部と、
複数の変化点を介して連結した複数の要素により構成されたワーク輪郭、及び前記砥石類似輪郭データに基づいた砥石類似輪郭をディスプレイにそれぞれ表示させるとともに、前記分割した形状についての前記近似円弧、または、前記交点を、加工対象の前記要素に接触させる表示制御部と、
前記砥石類似輪郭が前記加工対象の前記要素に接触した際の前記砥石類似輪郭の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する砥石軌跡作成部を備え
前記表示制御部は、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの前記砥石類似輪郭を接触させる砥石軌跡自動作成装置。
【請求項5】
前記ワーク輪郭における加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力する入力部を備え、
前記砥石軌跡作成部は前記加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成する請求項4に記載の砥石軌跡自動作成装置。
【請求項6】
前記砥石軌跡の加工開始点への導入態様の入力、及び前記砥石軌跡の加工終了点からの退出態様を入力する態様入力部を備え、
前記砥石軌跡作成部は、前記導入態様の軌跡、及び前記退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に付加する請求項5に記載の砥石軌跡自動作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石軌跡自動作成方法及び砥石軌跡自動作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式倣い研削加工方法は、投影機のスクリーンに加工物の形状を描画したチャート紙を操作者が貼り付ける。次に、前記スクリーン上に砥石車を投影させた状態で、操作者がX軸ハンドル及びY軸ハンドルを操作して、砥石車を前記チャート紙上の加工物の形状に合わせるように移動させて、前記砥石車の位置を教示する。このようなティーチングプレイバック方式を経て、NCプログラムが作成されて、加工物の研削が行われる。上記の方法は、照明が砥石車の下方から形状を映し出している。このため、砥石車の投影像にはぼやけが発生する。このぼやけを介しての砥石車の位置の見極め、すなわち、ティーチングは作業者の技量に依存する。このため、ティーチングでは作業者の技量により、砥石車の位置にはばらつきが生ずる。
【0003】
特許文献1は、この上記方法の問題点を解消するために、下記の方法を採用している。砥石車にてテストピースを研削して砥石車の形状をテストピースに転写する。得られた前記テストピースの砥石車の転写形状を、操作者が投影機のスクリーンの加工物形状に沿って移動させて加工物の形状変化点のワーク座標系の位置を教示していく。得られた形状変化点のワーク座標系の位置は、砥石座標系に変換されるとともに砥石移動経路に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-88002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のティーチングは、砥石車にてテストピースを研削後、得られたテストピースの砥石車の転写形状を、加工物が描かれているチャート紙が張られた投影機のスクリーン上に投影することにより行われる。従来は、砥石車の転写形状を前記チャート紙上の加工物の形状に合わせるように手動操作により移動させて、前記砥石車の位置を教示する。従って、この手動操作による教示は時間を要し、改善する余地がある。
【0006】
本発明の目的は、手動操作によらず砥石軌跡を自動的に形成できる砥石軌跡自動作成方法及び砥石軌跡自動作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の砥石軌跡自動作成方法は、コンピュータにより、砥石軌跡を作成する砥石軌跡自動作成方法であって、前記コンピュータが、砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状にするとともに分割した形状を近似円弧に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する段階を有し、または、前記コンピュータが、前記砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線で分割して前記分割線と前記砥石輪郭の交点を取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する段階を有し、前記コンピュータが、複数の変化点を介して連結した複数の要素により構成されたワーク輪郭、及び前記砥石類似輪郭データに基づいた砥石類似輪郭をディスプレイにそれぞれ表示させるとともに、前記砥石類似輪郭の前記分割した形状の前記近似円弧、または、前記交点を、加工対象の前記要素に接触させる接触段階と、前記コンピュータにより、前記砥石類似輪郭が前記加工対象の前記要素に接触した際の前記砥石類似輪郭の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する作成段階を含む。ここで、砥石類似輪郭は、先端形状において、砥石輪郭と複数の共通点を有するものである。
【0008】
また、前記接触段階では、前記コンピュータは、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの前記砥石類似輪郭を接触させることが好ましい。
【0009】
また、前記砥石軌跡自動作成方法は、前記ワーク輪郭における加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力を前記コンピュータが、受け付ける段階を備え、前記作成段階では、前記コンピュータは前記加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成することが好ましい。
【0010】
また、前記砥石軌跡自動作成方法は、前記コンピュータが、前記砥石軌跡の加工開始点への導入態様の入力、及び前記砥石軌跡の加工終了点からの退出態様を入力を受け付ける段階を備え、前記作成段階では、前記コンピュータは、前記入力された導入態様の軌跡、及び前記入力された退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に付加することが好ましい。
【0011】
本発明の砥石軌跡自動作成装置は、砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状に分割するとともに各分割した形状を近似円弧に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成するか、または、前記砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線で分割して前記分割線と前記砥石輪郭の交点を取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する砥石類似輪郭作成部と、複数の変化点を介して連結した複数の要素により構成されたワーク輪郭、及び前記砥石類似輪郭データに基づいた砥石類似輪郭をディスプレイにそれぞれ表示させるとともに、前記砥石類似輪郭の前記分割した形状についての前記近似円弧、または、前記交点を、加工対象の前記要素に接触させる表示制御部と、前記砥石類似輪郭が前記加工対象の前記要素に接触した際の前記砥石類似輪郭の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する砥石軌跡作成部を備えるものである。
【0012】
また、前記表示制御部は、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの前記砥石類似輪郭を接触させることが望ましい。
また、前記ワーク輪郭における加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力する入力部を備え、前記砥石軌跡作成部は前記加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成することが好ましい。
【0013】
また、前記砥石軌跡自動作成装置は、前記加工開始要素への導入態様の入力、及び前記加工終了要素からの退出態様を入力する態様入力部を備え、前記砥石軌跡作成部は、前記入力された導入態様の軌跡、及び前記入力された退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に導入軌跡及び退出軌跡を付加することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、砥石輪郭を手動操作することなく、砥石軌跡を自動的に形成できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】砥石軌跡自動作成装置の全体概略図である。
図2】砥石軌跡自動作成装置における処理の順番を示すフローチャートである。
図3】砥石類似輪郭作成のフローチャートである。
図4】(a)、(b)は近似円式の類似化処理により砥石類似輪郭を作成する場合の砥石輪郭の説明図である。
図5】(a)、(b)は多点円式の類似化処理により砥石類似輪郭を作成する場合の砥石輪郭の説明図である。
図6】条件入力のフローチャートである。
図7】ワーク輪郭をディスプレイの画面に表示した状態の説明図である。
図8】ワーク輪郭の加工範囲の入力の説明図である。
図9】ワーク輪郭に対する加工方向の入力の説明図である。
図10】砥石軌跡生成処理のフローチャートである。
図11】(a)及び(b)は、ワーク輪郭の直線要素に近似円式の砥石類似輪郭を接触した状態の説明図である。
図12】ワーク輪郭の円弧要素に近似円式の砥石類似輪郭を接触した状態の説明図である。
図13】(a)及び(b)は、ワーク輪郭の直線要素に多点式の砥石類似輪郭を接触させた状態の説明図である。
図14】ワーク輪郭の各円弧要素に多点式の砥石類似輪郭を接触させた状態の説明図である。
図15】自動設定されて、加工開始要素が直線の場合の導入態様の説明図である。
図16】自動設定されて、加工開始要素が円弧の場合の導入態様の説明図である。
図17】自動設定されて、加工終了要素が直線の場合の退出態様の説明図である。
図18】自動設定されて、加工終了要素が円弧の場合の退出態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態の砥石軌跡自動作成方法及び砥石軌跡自動作成装置を図1図18を参照して説明する。
【0017】
(1.砥石軌跡自動作成装置10の概略構成)
図1に示すように砥石軌跡自動作成装置10は、ディスプレイ12、入力装置としてコンソール14、及びマウス16を備えている。砥石軌跡自動作成装置10は、NC研削盤20と通信が可能に接続されている。
【0018】
(2.砥石軌跡自動作成装置10)
砥石軌跡自動作成装置10は、コンピュータからなり、CPU(中央処理装置)22、及び、ROM、RAM、ハードディスク等を備える記憶部24等を備えている。砥石軌跡自動作成装置10の砥石軌跡自動作成プログラムは、前記記憶部24に格納されていて、砥石軌跡自動作成の実行時に読み込まれる。また、記憶部24には、NCプログラムが格納される。
【0019】
RAMは作業用メモリである。前記ハードディスクには、複数のワークの形状図面データ、及び砥石類似輪郭データを書き込み及び読み出し可能に格納されている。前記ワークの形状図面データは、NC研削盤20が備える砥石車35によって研削がされる形状図面データであって、例えば、CADソフトで読み書き可能なDXFファイル等で保存されている。なお、前記ワークの形状図面データは、DXFファイルに限定するものではなく、他のファイル形式であってもよい。
【0020】
前記ワークの形状図面データに基づいてディスプレイ12の画面13に表示されるワークの形状輪郭は、形状の変化点、すなわち、直線と直線の変化点、直線と円弧との変化点、或いは円弧と円弧との変化点を有する。このように、前記変化点を形成する直線、及び円弧は、ワークの形状輪郭を形成する「要素」である。なお、前記円弧は、曲線に相当する。また、ワークの形状輪郭を、説明の便宜上、以下ではワーク輪郭という。
【0021】
各変化点は、機械座標系のX座標及びY座標を有する。各変化点間が直線要素の場合には、直線要素を示す属性が付与されている。各変化点間が円弧要素の場合には、円弧要素を示す属性が付与されている。なお、機械座標系は、後述するNC研削盤20の機械座標系である。
【0022】
前記砥石類似輪郭データは、砥石車の先端部の類似形状データである。前記砥石車の先端部の類似形状データは、砥石車で研削されたダミーワークの研削痕を撮像した砥石輪郭画像に対して、画像処理のエッジ検出等によりその砥石輪郭が抽出され、その後、類似化処理されたものである。なお、砥石輪郭を類似化されたものを、以下では、単に砥石類似輪郭という。この類似化処理については後述する。
【0023】
図1に示すように、CPU22は、前記砥石軌跡自動作成プログラムにより、画像処理部27、砥石類似輪郭作成部28、表示制御部25、及び砥石軌跡作成部26として機能する。また、CPU22は、NCプログラムに基づいてNC制御部29としてNC研削盤20を制御する。
【0024】
(3.ディスプレイ12)
ディスプレイ12は、液晶表示装置、有機EL表示装置、或いはCRT等からなる。ディスプレイ12は、タッチパネルディスプレイである。後述する砥石軌跡自動作成が行われる自動ティーチング時にはディスプレイ12の画面13は、ワーク輪郭及び砥石輪郭等が表示される。
【0025】
(4.入力装置)
コンソール14は、CPU22に対する数値、文字等の入力装置である。マウス16は、図1に示す画面13の図示しないマウスポインタの移動操作等を行う入力装置である。なお、以下の説明では、各種の操作、或いはティーチングは、ディスプレイ12の画面に対するタッチ操作で行うことを前提として説明する。しかし、マウス16の操作により各種ボタン等に図示しないマウスポインタを合致させた後、クリック操作でティーチング、或いは各種の入力操作等を行ってもよい。
【0026】
(4.NC研削盤20)
図1に示すように、NC研削盤20は、研削機構部30、ワーク保持機構部32、移動機構部(図示しない)、及び撮像部39を備える。研削機構部30は、砥石車35を備えていて、ワーク保持機構部32に保持されたワークWの研削加工を行う。研削機構部30は、研削加工時において、砥石車35を回転させるとともに、垂直方向(Z方向)に昇降可能となっている。ワーク保持機構部32は、前記ワークWを着脱可能に保持する。ワーク保持機構部32は、ワークWに代えて図示しないダミーワークも着脱自在に保持可能となっている。
【0027】
研削機構部30は、図示しない移動機構部上に載置されていて、ワークWに対して砥石車35を相対運動させる。前記移動機構部は、X軸用モータ37及びY軸用モータ38を備える。NC制御部29によりX軸用モータ37及びY軸用モータ38が回転制御されることにより、前記移動機構部により、砥石車35はX方向及びY方向への移動が可能である。
【0028】
本実施形態では、撮像部39は、砥石車35先端部で切削されたダミーワークの研削痕を撮像可能にワーク保持機構部32に保持されたダミーワークの上方に配置されている。撮像部39は、CMOSカメラ、或いは、CCDカメラによって構成されている。撮像部39は、砥石車35で切削された前記ダミーワークの研削痕の静止画を画像処理部27に送信する。
【0029】
(実施形態の作用)
次に、上記砥石軌跡自動作成装置10の作用を説明する。
図2は、砥石軌跡を得る場合の概略的な順序のフローチャートである。すなわち、図2に示すS10の「砥石類似輪郭作成」、S20の「条件入力」、S30の「砥石軌跡作成」が順に行われる。
【0030】
<1.S10の「砥石類似輪郭作成」>
図3は、S10の「砥石類似輪郭作成」で行われる処理のフローチャートである。
(S102)
S102では、図1に示すNC研削盤20において、ワーク保持機構部32にダミーワーク(図示しない)が保持されて、ダミーワークに対して砥石車35にて切削を行う。このダミーワーク加工は、作業者により手動、またはNCプログラムに基づいて自動で行われる。撮像部39は、ダミーワークの砥石車35の研削痕を撮像して、静止画である撮像画像を画像処理部27に送信する。
【0031】
(S104)
S104では、画像処理部27は、ダミーワークの砥石車35の研削痕の静止画に対して画像処理のエッジ検出等によりその輪郭を抽出して、砥石輪郭を取得する。この砥石輪郭のエッジは位置データを有する。
【0032】
(S106)
S106では、表示制御部25は、画像処理で取得された砥石輪郭の類似化処理を、近似円式か、或いは多点式で行うかの選択を作業者に行わせるために、ディスプレイ12の画面13に図示しない選択ボタンを表示させる。
【0033】
作業者が、近似円式を選択すると、S108に移行する。作業者が、多点式を選択すると、S120に移行する。
(S108)
S108では、砥石類似輪郭作成部28は、前記画像処理で取得された砥石輪郭A(図4(a)参照)に対して下記の類似化処理を行う。
【0034】
<近似円式の類似化処理>
図4(a)、図4(b)は、近似円式の類似化処理の説明図である。図4(a)に示すように、砥石類似輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状を、予め設定された分割数nで、等分割して複数の形状にする。なお、ここで先端形状とは、砥石車35が、ワークに対して研削に寄与する先端の形状である。先端形状の範囲は、予め設定されていて、この範囲において、等分割される。
【0035】
図4(a)は、「n=3」の場合が図示されている。以下では、等分割が「n=3」の場合について説明する。図中、θは、等分割した際の分割角である。Oは、砥石輪郭Aの先端形状が真円の円弧を有するとした場合の中心である。図4(a)において、Aa、Ab、Acは、砥石輪郭Aの先端形状を構成している分割された部位の形状を示す。部位Aa、Ab、Acは、砥石車35が、研削加工により摩耗している場合は、円弧となっていない場合があることに注意されたい。E0、E1、E2、E3は、部位Aa、Ab、Acのそれぞれの端点を示す。なお、本例では、中心Oは、真円の中心と一致させたが、これに限定するものではなく、例えば、真円の中心の近傍に位置させてもよい。以下、中心Oを仮想円の中心ということがある。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、砥石類似輪郭作成部28は、等分割された部位Aa、Ab、Ac毎に、各部位が有する位置データを用いて、最小二乗法により近似円弧を作成する。図4(b)において、Kaは、部位Aaの端点E0、E1間に作成された近似円弧であり、曲率中心Oa及び曲率半径raを有する。また、図11(b)に示すように、曲率中心Oaを中心とした近似円弧Kaの円弧と、径方向に延びる一対の区画線d1、d2にて扇形を区画形成することができる。この扇形において、区画線d1は曲率中心Oaを通るX軸と平行をなす基準線d0に対して、反時計回り方向において小さな傾斜角α1を有する。一方、この扇形において、区画線d2は曲率中心Oaを通るX軸と平行をなす基準線d0に対して、反時計回り方向において大きな傾斜角α2を有する。
【0037】
砥石類似輪郭作成部28は、これらの傾斜角を、近似円弧Kaの円弧の端点E0、E1の座標に基づいて算出する。このようにして砥石類似輪郭作成部28は、作成した近似円弧Kaについて、上記した曲率中心Oa及び曲率半径ra、並びに、径方向に延びる一対の区画線d1、d2についての傾斜角α1、α2を取得する。図4(b)に示すKbは、部位Abの端点E1、E2間に作成された近似円弧であり、曲率中心Ob及び曲率半径rbを有する。近似円弧Kbについても、図4(b)に示すように、曲率中心Obを中心とした近似円弧Kbの円弧と、径方向に延びる一対の区画線e1、e2にて扇形を区画形成することができる。砥石類似輪郭作成部28は、近似円弧Kaと同様に近似円弧Kbの曲率中心Ob及び曲率半径rb、並びに、径方向に延びる一対の区画線e1、e2についての傾斜角を取得する。
【0038】
図4(b)に示すKcは、部位Acの端点E2、E3間に作成された近似円弧であり、曲率中心Oc及び曲率半径rcを有する。近似円弧Kcについても、図4(b)に示すように、曲率中心Ocを中心とした近似円弧Kcと、径方向に延びる一対の区画線f1、f2にて扇形を区画形成することができる。砥石類似輪郭作成部28は、近似円弧Kaと同様に曲率中心Oc及び曲率半径rc、並びに、径方向に延びる一対の区画線f1、f2についての傾斜角を取得する。ここで、近似円弧を含む扇形における一対の区画線の傾斜角の間に、接触した部位における法線が存在する場合に、当該一対の区画線を有する近似円弧が、接触したと判定できる。詳細は後述する。
【0039】
このようにして、砥石類似輪郭作成部28は、端点E0、E1間を近似円弧Kaにし、端点E1、E2間を近似円弧Kbにし、さらに端点E2、E3間を近似円弧Kcにした先端形状に有する砥石類似輪郭A1を取得する。この砥石類似輪郭A1と砥石輪郭Aとは、先端形状において、共通点である端点E0、E1、E2、E3を有する。
【0040】
上記では、「n=3」で砥石輪郭Aの先端形状に対して等分割したが、等分割の数は「n=3」に限定するものではなく、他の数値でもよい。
砥石類似輪郭作成部28は砥石類似輪郭A1を取得した後、S110に移行して、修正無しの選択ボタン(図示しない)、及び修正有りの選択ボタン(図示しない)を、表示制御部25を介して、ディスプレイ12に表示させる。
【0041】
(S110)
S110において、作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正無しの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S114に移行する。作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正有りの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S112に移行する。
【0042】
(S112)
S112では、ディスプレイ12の画面13には手動微調整用の各種ツールボタン等(図示しない)が表示される。作業者は、この各種ツールボタン等にタッチ操作等を行って、砥石類似輪郭A1を微調整する。この微調整には、例えば、分割角の変更等がある。角度の変更があれば、調整後の新しい分割角で、砥石類似輪郭A1が作成される。この微調整が終了後は、S114に移行する。
【0043】
(S114)
S114では、作業者はディスプレイ12の画面13に表示された図示しない登録ボタンをタッチ操作する。これにより、砥石類似輪郭作成部28は、微調整があった場合は、微調整後の砥石類似輪郭A1を、または、微調整がない場合は、微調整がなくて作成された砥石類似輪郭A1を近似円式である旨の属性を付して記憶部24に格納する。なお、砥石類似輪郭作成部28は、後述する多点式で作成された砥石類似輪郭については、多点式である旨の属性を付した砥石類似輪郭を記憶部24に格納する。
【0044】
(S120)
S120では、砥石類似輪郭作成部28は、前記画像処理で取得された砥石輪郭A(図5(a)参照)に対して下記の類似化処理を行う。
【0045】
<多点式の類似化処理>
図5(a)、図5(b)は、多点式の類似化処理の説明図である。図5(a)に示すように、砥石類似輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状に対して、予め設定された角度αで、等分割する。角度αは、限定するものではないが、小さい角度ほど後述する砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点の数が増えるため、好ましい。
【0046】
図5(a)は、砥石輪郭Aの先端形状が真円(仮想円)の円弧を有するとした場合、仮想円の中心Oから延びる分割線gで、角度α(=10度)毎に分割した際の例が示されている。なお、本例では、中心Oは、真円の中心と一致させたが、これに限定するものではなく、例えば、真円の中心の近傍に位置させてもよい。図5(b)に示すように、砥石類似輪郭作成部28は、各分割線gと、砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点F0~Fmを求める。すなわち、砥石類似輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点F0~Fmの位置座標を取得する。mは正の整数である。
【0047】
この交点F0~Fmにおける座標データを有する砥石輪郭を、以下、砥石類似輪郭A2とする。この砥石類似輪郭A2と砥石輪郭Aとは、先端形状において、共通点である交点F0~Fmを有する。砥石類似輪郭作成部28は砥石類似輪郭A2を取得した後、S122に移行して、修正無しの選択ボタン(図示しない)、及び修正有りの選択ボタン(図示しない)を、表示制御部25を介して、ディスプレイ12に表示させる。
【0048】
(S122)
S122において、作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正無しの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S114に移行する。作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正有りの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S124に移行する。
【0049】
(S124)
S124では、ディスプレイ12の画面13には手動微調整用の各種ツールボタン等(図示しない)が表示される。作業者は、この各種ツールボタン等をタッチ操作等を行って、砥石類似輪郭A2を微調整する。この微調整には、例えば、角度αの変更等がある。角度の変更があれば、調整後の新しい分割角で、砥石類似輪郭A2が作成される。この微調整が終了後は、S114に移行する。
【0050】
<2.S20の「条件入力」>
図6は、S114の後において、S20の「条件入力」で行われる処理のフローチャートである。このフローチャートは、S202及びS204の処理が行われる。
【0051】
(S202及びS204)
S202及びS204は、作業者がコンソール14等を操作することにより、CPU22が記憶部24から加工対象のワークの形状図面データを読み出してディスプレイ12の画面13にワーク輪郭Bを表示させた状態で行う操作処理である。ここで、条件入力する際のディスプレイ12の画面13には、図示はしないが下記の操作ボタン及び数値入力欄が表示される。
【0052】
(画面13に表示される操作ボタン)
加工開始要素ボタン、加工終了要素ボタン、自動設定ボタン、数値設定ボタン
これらの加工開始要素ボタン、加工終了要素ボタン、自動設定ボタン、数値設定ボタンを表示するディスプレイ12は、前述したようにタッチパネルディスプレイであることから態様入力部に相当する。
【0053】
(数値入力欄)
直線導入軌跡入力欄、直線退出軌跡入力欄
前記数値入力欄については後述する。
【0054】
前記加工開始要素ボタンは、ワーク輪郭Bの加工開始要素を作業者がティーチングする際に使用される。加工終了要素ボタンは、ワーク輪郭Bの加工終了要素を作業者がティーチングする際に使用される。加工方向ボタンは、ワーク輪郭Bの加工方向をティーチングする際に使用される。以下、ワーク輪郭Bを例示して、S202及びS204について説明する。
【0055】
(S202)
<加工範囲の教示>
図7は、ディスプレイ12の画面13にワーク輪郭Bの一例が表示された状態を示している。図7に示す一例のワーク輪郭Bは、閉図形であって、変化点Q0~Q7を有する。反時計回りで順に配置された変化点Q0~Q3、及び変化点Q4~Q0の相互に隣接する変化点間の要素は、直線である。変化点Q3、Q4間の要素は、円弧である。
【0056】
図7図8に示すように前記ワーク輪郭Bを表示させた状態で、作業者は、加工開始要素となる変化点Q1、Q2間の要素をタッチ操作した後、前記加工開始要素ボタン(図示しない)をタッチ操作により教示する。この教示により、変化点Q1、Q2間の直線要素が「加工開始要素」となる。
【0057】
次に、図8に示すように作業者は、加工終了要素となる変化点Q3、Q4間の要素をタッチ操作した後、前記加工終了要素ボタン(図示しない)をタッチ操作により教示する。この教示により、変化点Q3、Q4間の円弧要素が「加工終了要素」となる。上述した「加工開始要素」と「加工終了要素」の教示は、「加工開始要素」と「加工終了要素」を両端にして、その両端間が加工範囲の候補として教示されることと同意である。
【0058】
<加工方向の教示>
ただし、ワーク輪郭Bは閉図形である。このため、図7に示す「加工開始要素」(Q1、Q2間の直線)を起点として「加工終了要素」(Q3、Q4間の円弧)に向かう方向は、時計回り方向と反時計回り方向があるため、各方向に前記加工範囲の候補がそれぞれ存在する。作業者は、「加工開始要素」と「加工終了要素」を教示した後に、時計回り方向と反時計回り方向のいずれかを指定することにより、「加工開始要素」と「加工終了要素」間の加工範囲を、最終的に教示する。
【0059】
図9の例では、「加工開始要素」(変化点Q1、Q2間の直線要素)と「加工終了要素」(変化点Q3、Q4間の円弧要素)間において、変化点Q2、Q3間の直線要素をタッチ操作することにより、加工方向が反時計回りであることを教示する。この教示により、図9の例では、加工範囲は、ワーク輪郭Bにおける反時計回り方向の変化点Q1~Q4の範囲が加工範囲であることが教示される。なお、この例では、時計回り方向の教示は、変化点Q2、Q3間の直線要素に対するタッチ操作で行ったが、変化点Q3、Q4間の直線要素のタッチ操作でもよい。すなわち、時計回り方向及び反時計回り方向のいずれか一方を加工方向として教示する場合、「加工開始要素」と「加工終了要素」の間に位置する要素であれば、いずれの要素にタッチ操作してもよい。
【0060】
(S204)
S204は、加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様の教示処理である。
【0061】
<自動設定による加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様の教示>
タッチパネルであるディスプレイ12の画面上の前記自動設定ボタン(図示しない)がタッチ操作された場合、加工開始要素及び加工終了要素の属性に応じて、予め設定された導入態様及び退出態様が教示される。この教示により、砥石軌跡作成部26は、後述するS316において、予め設定された導入軌跡が導入態様の軌跡として、また、退出軌跡が退出態様の軌跡としてS316に移行する前に作成された砥石軌跡TKに付加する。なお、S316において、自動設定による導入態様及び退出態様について詳説する。
【0062】
<数値設定による加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様の教示>
前記数値設定ボタン(図示しない)は、前記自動設定ボタンが操作されずに、前記数値入力欄で挙げた各入力欄に数値がコンソール14等にて入力された後、タッチ操作された場合、その数値を設定するためのものである。
【0063】
すなわち、砥石軌跡作成部26は後述するS316において、前記入力された数値に基づいて導入態様及び退出態様の軌跡を、S316に移行する前に作成された砥石軌跡TKに付加する。なお、S316において、数値設定による導入態様及び退出態様について詳説する。
【0064】
<3.S30の「砥石軌跡作成」>
続いて、ディスプレイ12の画面13にワーク輪郭Bが表示されている状態で、作業者は、記憶部24に格納されている砥石類似軌跡をCPU22に読み込ませて、画面13に表示された砥石軌跡作成ボタン(図示しない)をタッチ操作する。これにより、砥石軌跡作成部26は図10に示す砥石軌跡生成処理を実行する。
【0065】
なお、説明の便宜上、図11(a)で示すワーク輪郭BのQ3、Q4間を直線要素としているところ、及び、Q0、Q1間、Q1、Q2間、Q2、Q3間等の直線要素の長さは、図9のワーク輪郭Bとは異ならしめている。ただし、加工開始要素(変化点Q1、Q2間の直線要素)と「加工終了要素」(変化点Q3、Q4間の直線要素)、並びに加工方向は、図8図9で説明したワーク輪郭Bと同じとする。
【0066】
(S302)
S302では、砥石軌跡作成部26は、砥石類似輪郭が近似円式で作成されたか、或いは多点式で作成されたかを、砥石類似輪郭に付された属性に基づいて判定する。砥石類似輪郭が近似円式である場合は、S304に移行し、多点式である場合は、S312に移行する。
【0067】
(S304:直線要素か、円弧要素かの判定)
S304では、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素から加工終了要素の間の加工範囲の各要素が、直線要素か、円弧要素をその要素に付された属性に基づいて判定する。前記要素が直線要素の属性を有する場合には、直線要素に対して2つの砥石類似輪郭が表示される。前記要素が円弧要素の属性を有する場合には、円弧要素に対して3つの砥石類似輪郭が表示される。これらの砥石類似輪郭の前記要素に対する向きは、要素が異なっていてもいずれも同一のY方向に向かう向きである。
【0068】
<直線要素の場合>
図11(a)は、加工範囲の全ての要素が直線要素である場合の例が示されている。図11(a)に示すように、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素から加工終了要素の間の加工範囲の要素毎に、2つの近似円式の砥石類似輪郭A1を表示させて、それぞれ各要素に接触させる。ここで、要素毎に配置される2つの砥石類似輪郭A1は、当該要素を区切る両変化点のX、Y座標の間に配置される。また、要素毎に配置される2つの砥石類似輪郭A1のうち、一方の砥石類似輪郭A1は、一方の変化点の近傍に配置し、他方の砥石類似輪郭A1は他方の変化点の近傍に配置することが好ましい。
【0069】
図11(a)において、Oa1及びOa2は、近似円弧Kaの曲率中心である。Ob1及びOb2は、近似円弧Kbの曲率中心である。Oc1及びOc2は、近似円弧Kcの曲率中心である。ここで、Oa、Ob及びOcに付した「1」は、前述した一方の変化点の近傍に相対配置した近似円弧であることを示している。また、Oa、Ob及びOcに付した「2」は、前述した他方の変化点の近傍に相対配置した近似円弧であることを示している。
【0070】
<円弧要素の場合>
図12では、ワーク輪郭Bの加工範囲の全ての要素が円弧要素である場合の例が示されている。すなわち、ワーク輪郭Bは、加工開始要素の変化点Q1,Q2間の円弧要素、変化点Q2,Q3間の円弧要素、加工終了要素の変化点Q3,Q4間の円弧要素を有する。図12に示すように、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素(変化点Q1,Q2間の円弧要素)から加工終了要素(変化点Q3,Q4間の円弧要素)の加工範囲の要素毎に、3つの近似円式の砥石類似輪郭A1を表示させて、それぞれ各要素に接触させる。ここで、要素毎に配置される3つの砥石類似輪郭A1は、当該要素を区切る両変化点のX、Y座標の間に配置される。また、要素毎に配置される3つの砥石類似輪郭A1のうち、中央に配置される砥石類似輪郭A1を除く一方の砥石類似輪郭A1は、一方の変化点の近傍に配置し、他方の砥石類似輪郭A1は他方の変化点の近傍に配置することが好ましい。
【0071】
図12において、Oa3、Ob3及びOc3は、それぞれ、近似円弧Ka、近似円弧Kb及び近似円弧Kcの曲率中心である。ここで、Oa、Ob及びOcに付した「3」は、要素の略中央に相対配置した近似円弧であることを示している。
【0072】
(接触の検出)
砥石類似輪郭A1が接触したか否かの検出は、下記の通りである。砥石軌跡作成部26は、砥石類似輪郭A1をワーク輪郭Bに移動させている間、砥石類似輪郭A1とワーク輪郭Bとの法線方向距離である離間距離を演算する。砥石軌跡作成部26は前記離間距離が接触判定閾値に達していることを検出すると、ワーク輪郭Bの要素に砥石類似輪郭A1が接触したと判定する。このようにして、加工範囲における全ての要素毎に、砥石類似輪郭A1の接触の検出が行われると、これらの、各要素に接触した砥石類似輪郭A1の部位の座標を取得する。
【0073】
(S306:接触した近似円弧の判定)
砥石軌跡作成部26は、ワーク輪郭Bの加工範囲の要素毎に、配置された複数の砥石類似輪郭A1が、いずれの近似円弧で接触したか、否かを判定する。
【0074】
判定方法は、下記の通りである。ワーク輪郭Bの各要素に近似円弧が接触したとき、接触された要素が直線要素の場合は、当該直線要素は近似円弧に対して接線の関係にある。従って、接線に対する直角方向に位置する法線の傾きを求めることができる。また、接触された要素が円弧要素の場合、例えば、図12の例では、近似円弧が接触した当該円弧要素の接触部位における法線の傾きを求めることができる。従って、砥石軌跡作成部26は、接触部位における法線の傾き、すなわち、傾斜角を求める。
【0075】
図11(b)の例では、ワーク輪郭Bの変化点Q1、Q2間の要素が直線としたときに、当該要素に近似円弧Kaが接触したときの、法線haの傾斜角α3を示している。この例では、砥石軌跡作成部26は、ワーク輪郭Bの変化点Q1、Q2間の要素での接触した部位の法線haの傾斜角α3を求める。次に砥石軌跡作成部26は、求めた傾斜角α3が、いずれの近似円弧が有する一対の区画線の傾斜角の範囲内にあるか、を判定する。この例では、傾斜角α3は、近似円弧Kaの扇形が有する区画線d1、d2の傾斜角α1、α2の範囲にあることが判定される。すなわち、変化点Q1、Q2間の要素は、一対の近似円弧Kaにて接触したことが、砥石軌跡作成部26により判定される。
【0076】
以下、図11(a)の例において、砥石軌跡作成部26は、他の要素についても同様の方法により、いずれの近似円弧が接触したかを判定する。また、図12の例のように円弧要素が、加工範囲にある場合にも、同様の方法により、いずれの近似円弧が接触したかを判定する。
【0077】
(S308)
S308では、砥石軌跡作成部26は、ワーク輪郭Bの加工範囲の各要素に接触した近似円弧が特定されたことに基づいて、接触したときの当該近似円弧の曲率中心の座標を取得する。
【0078】
(S310)
S310では、砥石軌跡作成部26は、取得した当該近似円弧の曲率中心の座標と仮想円の中心Oとのズレ量に基づいて仮想円の中心Oの座標を求め。求めた仮想円の中心Oの座標に基づいて、ワーク輪郭Bの加工範囲における砥石軌跡TKを作成する。
【0079】
<直線要素に対応した砥石軌跡の作成>
図11(a)の例は、ワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1,Q2間の直線要素)、変化点Q2,Q3間の直線要素、及び加工終了要素(変化点Q3,Q4間の直線要素)を有していて、近似円弧Ka、Kb、Kcが接触したとする。
【0080】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q1,Q2間の加工開始要素では加工開始要素に接触したときの近似円弧Kaの曲率中心Oa1、Oa2の座標(位置)に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oの座標(位置)と、近似円弧Kaの曲率中心OaのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。
【0081】
そして、砥石軌跡作成部26は、算出した2つの仮想円の中心Oの位置を通過する直線の軌跡Laを算出する。この直線の軌跡Laは加工開始要素(変化点Q1,Q2間の直線要素)と平行な仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。
【0082】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q2,Q3間の要素では当該要素に接触したときの近似円弧Kbの曲率中心Ob1、Ob2の座標(位置)に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oの座標(位置)と、近似円弧Kaの曲率中心ObのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。
【0083】
そして、砥石軌跡作成部26は、算出した2つの仮想円の中心Oの位置を通過する直線の軌跡Lbを算出する。この直線の軌跡Lbは変化点Q2,Q3間の直線要素と平行な仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。 砥石軌跡作成部26は、加工終了要素(変化点Q3,Q4間の直線要素)では、当該要素に接触したときの近似円弧Kcの曲率中心Oc1、Oc2の座標(位置)に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oの座標(位置)と、近似円弧Kcの曲率中心OcのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。
【0084】
そして、砥石軌跡作成部26は、算出した2つの仮想円の中心Oの位置を通過する直線の軌跡Lcを算出する。この直線の軌跡Lcは変化点Q3,Q4間の直線要素と平行な仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。
【0085】
このように砥石軌跡作成部26は、直線要素が連結された例では、接触した近似円弧の曲率半径と、近似円弧の曲率中心と仮想円の中心とのズレ量に基づき、直線の軌跡La、Lb、Lcを含む砥石軌跡TKを作成する。
【0086】
また、砥石軌跡作成部26は、相互に隣接する要素に対して作成した軌跡同士が交わる交点を軌跡変化点とする。図11(a)の例では、直線の軌跡La、Lbの交点は軌跡変化点Jaとする。直線の軌跡Lb、Lcの交点は軌跡変化点Jbとする。
【0087】
<円弧要素に対応した砥石軌跡の作成>
図12の例は、ワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1,Q2間の円弧要素)、変化点Q2,Q3間の円弧要素、及び加工終了要素(変化点Q3,Q4間の円弧要素)を有していて、近似円弧Ka、Kb、Kcが接触したとする。
【0088】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q1,Q2間の加工開始要素では加工開始要素に接触したときの近似円弧Kaの曲率中心Oa1、Oa2、Oa3の位置に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oと、近似円弧Kaの曲率中心OaのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。そして、砥石軌跡作成部26は、算出した3つの仮想円の中心Oの位置を通過する円弧軌跡Caを円の方程式に基づいて算出する。軌跡Caは、仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。
【0089】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q2,Q3間の円弧要素では当該円弧要素に接触したときの近似円弧Kbの曲率中心Ob1、Ob2、Ob3の位置に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oと、近似円弧Kbの曲率中心ObのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。そして、砥石軌跡作成部26は、算出した3つの仮想円の中心Oの位置を通過する円弧軌跡Cbを円の方程式に基づいて算出する。軌跡Cbは、仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。
【0090】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q3,Q4間の加工終了要素では加工終了要素に接触したときの近似円弧Kcの曲率中心Oc1、Oc2、Oc3の位置に基づいて、そのときの仮想円の中心Oの位置を算出する。すなわち、このときの仮想円の中心Oの位置は、仮想円の中心Oと、近似円弧Kcの曲率中心OcのX及びY方向のズレ量に基づいて算出される。そして、砥石軌跡作成部26は、算出した3つの仮想円の中心Oの位置を通過する円弧軌跡Ccを円の方程式に基づいて算出する。軌跡Ccは、仮想円の中心Oの軌跡であって、砥石軌跡TKの一部となる。
【0091】
このように砥石軌跡作成部26は、円弧要素が連結された例では、要素毎に接触した近似円弧の曲率半径と、近似円弧の曲率中心と仮想円の中心とのズレ量に基づき、円弧軌跡Ca、Cb、Ccを含む砥石軌跡TKを作成する。
【0092】
ここで、近似円式の砥石類似輪郭では、仮想円の中心Oの位置が、砥石類似輪郭の位置に相当する。近似円式の砥石類似輪郭では、仮想円の中心Oの位置に基づいて砥石軌跡が作成される。
【0093】
また、砥石軌跡作成部26は、相互に隣接する要素に対して作成した軌跡同士が交わる交点を軌跡変化点とする。図12の例では、円弧軌跡Ca、Cbの交点は軌跡変化点Jcとする。円弧軌跡Cb、Ccの交点は軌跡変化点Jdとする。
【0094】
軌跡変化点Jcは、円弧軌跡Ca、Cbの円の方程式に基づいて算出される。また、軌跡変化点Jdは、円弧軌跡Cb、Ccの円の方程式に基づいて算出される。なお、円弧軌跡Ca、Cbの交点が求まらない場合がある。すなわち、円弧軌跡Ca、Cbの曲率中心が同一の座標位置となるとともに半径が互いに異なる場合である。この場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q2,Q3間の円弧要素に接触させる3つの近似円弧Kbの位置を微少量ずらして再配置させて、新たな円弧軌跡Cbを作成して、円弧軌跡Cbの曲率中心が円弧軌跡Caと同一にならないようにする。なお、再配置の対象は、近似円弧Ka(砥石輪郭A1)としてもよい。この場合は、変化点Q1,Q2間の円弧要素に接触させる3つの近似円弧Ka(砥石輪郭A1)の位置を微少量ずらして再配置させて、新たな円弧軌跡Caを作成して、円弧軌跡Caの曲率中心が円弧軌跡Cbと同一にならないようにすればよい。
【0095】
また、円弧軌跡Cb、Ccの交点が求まらない場合がある。すなわち、円弧軌跡Cb、Ccの曲率中心が同一の座標位置となるとともに半径が互いに異なる場合である。この場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q3,Q4間の円弧要素に接触させる3つの近似円弧Kcの位置を微少量ずらして再配置させて、新たな円弧軌跡Ccを作成して、円弧軌跡Ccの曲率中心が円弧軌跡Cbと同一にならないようにする。なお、再配置の対象は、近似円弧Kb(砥石輪郭A1)としてもよい。この場合は、変化点Q2,Q3間の円弧要素に接触させる3つの近似円弧Kb(砥石輪郭A1)の位置を微少量ずらして再配置させて、新たな円弧軌跡Cbを作成して、円弧軌跡Cbの曲率中心が円弧軌跡Cbと同一にならないようにすればよい。
【0096】
なお、図示はしないが、ワーク輪郭Bの加工範囲に直線要素と円弧要素が混合しているときは、上記の直線要素で実行した処理と円弧要素で実行した処理を組み合わせればよい。
【0097】
なお、直線要素に対応した直線の軌跡と、円弧要素に対応した円弧軌跡との交点が求まらない場合がある。この場合、当該円弧要素に接触させる3つの近似円弧の位置を微少量ずらして再配置させて、新たな円弧軌跡を作成して、新たな円弧軌跡と前記直線要素に対応した直線の軌跡の交点を求めるようにする。この当該円弧要素に接触させる3つの近似円弧の前述した再配置は、前記交点が求められる迄、繰り返せばよい。
【0098】
<加工開始点J0及び加工終了点Je>
また、ワーク輪郭Bの加工範囲における軌跡の端点である加工開始点J0及び加工終了点Jeは下記のようにして決定する。
【0099】
(加工開始要素、加工終了要素が直線軌跡の場合)
図11(a)のようにワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1,Q2間の直線要素)である場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q1,Q2間の直線要素の変化点Q1において、当該要素と直交する垂直線h0と直線の軌跡Laとの交点を加工開始点J0とする。図11(a)のようにワーク輪郭Bの加工終了要素(変化点Q3,Q4間の直線要素)である場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q3,Q4間の直線要素の変化点Q4において、当該要素と直交する垂直線heと直線の軌跡Lcとの交点を加工終了点Jeとする。
【0100】
(加工開始要素、加工終了要素が円弧軌跡の場合)
図12のようにワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1,Q2間の円弧要素)である場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q1,Q2間の円弧要素の変化点Q1における法線h01と円弧軌跡Caとの交点を加工開始点J0とする。図12のようにワーク輪郭Bの加工終了要素(変化点Q3,Q4の円弧要素)である場合、砥石軌跡作成部26は、変化点Q3,Q4間の円弧要素の変化点Q4における法線he1と円弧軌跡Ccとの交点を加工終了点Jeとする。
【0101】
上記のようにして、加工開始点J0から加工終了点Jeの範囲を含む、ワーク輪郭Bの加工範囲に対応した砥石軌跡TKが、砥石軌跡作成部26により作成される。
図11(a)の例では、加工開始点J0から軌跡変化点Jaまでの直線の軌跡La、軌跡変化点Jaから軌跡変化点Jbまでの直線の軌跡Lb及び軌跡変化点Jbから加工終了点Jeまでの直線の軌跡Lcがワーク輪郭Bの加工範囲に対応した砥石軌跡TKとなる。
【0102】
図12の例では、加工開始点J0から軌跡変化点Jcまでの円弧軌跡Ca、軌跡変化点Jcから軌跡変化点Jdまでの円弧軌跡Cb及び軌跡変化点Jdから加工終了点Jeまでの円弧軌跡Ccがワーク輪郭Bの加工範囲に対応した砥石軌跡TKとなる。この後、S316に移行するが、S316については後述する。
【0103】
次にS302において、砥石類似輪郭が多点式であると判定されてS312に移行した場合について説明する。
(S312:直線要素か、円弧要素かの判定)
S312では、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素から加工終了要素の間の加工範囲の各要素が、直線要素か、円弧要素をその要素に付された属性に基づいて判定する。前記要素が直線要素の属性を有する場合には、直線要素に対して2つの砥石類似輪郭A2が表示される。前記要素が円弧要素の属性を有する場合には、円弧要素に対して3つの砥石類似輪郭A2が表示される。これらの砥石類似輪郭の前記要素に対する向きは、要素が異なっていてもいずれも同一のY方向に向かう向きである。
【0104】
<直線要素の場合>
図13(a)は、加工範囲の全ての要素が直線要素である場合の例が示されている。図13(a)に示すように、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素から加工終了要素の間の加工範囲の要素毎に、2つの多点式の砥石類似輪郭A2を表示させて、それぞれ各要素に接触させる。ここで、要素毎に配置される2つの砥石類似輪郭A2は、当該要素を区切る両変化点のX、Y座標の間に近似円式の砥石類似輪郭A1と同様に配置される。
【0105】
また、要素毎に配置される2つの砥石類似輪郭A2のうち、一方の砥石類似輪郭A2は、一方の変化点の近傍に配置し、他方の砥石類似輪郭A2は他方の変化点の近傍に配置することが好ましい。図13(a)では、一方の砥石類似輪郭A2の先端形状の中心には、O1を、他方の砥石類似輪郭A2の先端形状の中心には、O2を付与して図示している。
【0106】
<円弧要素の場合>
図14では、ワーク輪郭Bの加工範囲の全ての要素が円弧要素である場合の例が示されている。なお、図14のワーク輪郭Bの例は、図12のワーク輪郭Bの例と同様であるため、その説明を省略する。図14に示すように、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素(変化点Q1,Q2間の円弧要素)から加工終了要素(変化点Q3,Q4間の円弧要素)の加工範囲の要素毎に、3つの多点式の砥石類似輪郭A2を表示させて、それぞれ各要素に接触させる。
【0107】
ここで、要素毎に配置される3つの砥石類似輪郭A2は、当該要素を区切る両変化点のX、Y座標の間に配置される。また、要素毎に配置される3つの砥石類似輪郭A2のうち、中央に配置される砥石類似輪郭A2を除く一方の砥石類似輪郭A2は、一方の変化点の近傍に配置し、他方の砥石類似輪郭A2は他方の変化点の近傍に配置することが好ましい。図14において、O3は、各要素の中央に相対配置した砥石類似輪郭A2の先端形状の中心である。
【0108】
(接触の検出)
砥石類似輪郭A2が接触したか否かの検出は、下記の通りである。砥石軌跡作成部26は、砥石類似輪郭A2をワーク輪郭Bの各要素に移動させている間、砥石類似輪郭A2の交点F0~Fmとワーク輪郭Bの各要素との法線方向距離である離間距離をそれぞれ演算する。砥石軌跡作成部26は、砥石類似輪郭A2の交点F0~Fmのうち、いずれか1つの交点とワーク輪郭Bとの前記離間距離が接触判定閾値に達していることを検出すると、ワーク輪郭Bの要素に砥石類似輪郭A2が接触したと判定する。このようにして、加工範囲における全ての要素毎に、砥石類似輪郭A2の接触の検出が行われると、これらの、各要素において、各砥石類似輪郭A2が接触したときの先端形状の中心Oの座標を取得する。図13(b)の例は、砥石類似輪郭A2の交点Fm-2が、ワーク輪郭Bの直線要素YSに対して、最も近い切り間距離であることを示している。
【0109】
(S314)
S314では、砥石軌跡作成部26は、各要素において、各砥石類似輪郭A2が接触したときの先端形状の中心Oの座標に基づいて、ワーク輪郭Bの加工範囲における砥石軌跡TKを作成する。
【0110】
<直線要素に対応した砥石軌跡の作成>
この場合、砥石軌跡作成部26は加工開始要素では砥石類似輪郭A2の先端形状の中心O1、O2の座標に基づいて加工開始要素から平行で、かつ加工開始要素と接触した交点と中心O1、O2の距離分離間した直線の軌跡Laを砥石軌跡TKの一部として作成する。砥石軌跡作成部26は、変化点Q2,Q3間の直線要素では砥石類似輪郭A2の先端形状の中心O1、O2の座標に基づいて、変化点Q2,Q3間の直線要素から平行で、かつ直線要素と接触した交点と中心O1、O2の距離分離間した直線の軌跡Lbを作成する。直線の軌跡Lbは、砥石軌跡TKの一部となる。
【0111】
砥石軌跡作成部26は、加工終了要素では、砥石類似輪郭A2の先端形状の中心O1、O2の座標に基づいて、加工終了要素から平行で、かつ加工終了要素と接触した交点と中心O1、O2の距離分離間した直線の軌跡Lcを砥石軌跡TKの一部として作成する。
【0112】
このように砥石軌跡作成部26は、直線要素が連結された例では、当該要素と接触した交点と中心Oの距離分離間した平行軌跡となり、直線の軌跡La、Lb、Lcを連結した砥石軌跡TKを作成する。また、砥石軌跡作成部26は、相互に隣接する要素に対して作成した軌跡同士が交わる交点を軌跡変化点とする。図13(a)の例では、直線の軌跡La、Lbの交点は軌跡変化点Jaとする。直線の軌跡Lb、Lcの交点は軌跡変化点Jbとする。
【0113】
<円弧要素に対応した砥石軌跡の作成>
図14は、図12のワーク輪郭Bと同様のワーク輪郭Bが示されている。この場合、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素(変化点Q1,Q2間の円弧要素)では、加工開始要素に接触した砥石類似輪郭A2の中心O1,O2、O3の座標に基づいて砥石軌跡の一部となる円弧軌跡Caを取得する。すなわち、3つの砥石類似輪郭A2の中心O1,O2、O3の座標を通過する円弧軌跡Caを円の方程式に基づいて算出して作成する。
【0114】
砥石軌跡作成部26は、変化点Q2,Q3間の円弧要素では、上記と同様にして変化点Q2,Q3間の円弧要素に接触した砥石類似輪郭A2の中心O1,O2、O3の座標を通過する円弧軌跡Cbを円の方程式に基づいて算出して作成する。
【0115】
砥石軌跡作成部26は、加工終了要素(変化点Q3,Q4間の円弧要素)では、上記と同様にして加工終了要素に接触した砥石類似輪郭A2の中心O1,O2、O3の座標を通過する円弧軌跡Ccを円の方程式に基づいて算出して作成する。このように砥石軌跡作成部26は、円弧要素が連結された例では、接触した砥石類似輪郭A2の中心O1,O2、O3を通る円弧軌跡Ca、Cb、Ccを連結した砥石軌跡TKを作成する。
【0116】
また、砥石軌跡作成部26は、相互に隣接する要素に対して作成した軌跡同士が交わる交点を軌跡変化点とする。図14の例では、円弧軌跡Ca、Cbの交点は軌跡変化点Jcとする。円弧軌跡Cb、Ccの交点は軌跡変化点Jdとする。軌跡変化点Jc及び軌跡変化点Jdの算出方法は、前述した近似円式の場合と同様であるため、説明を省略する。なお、図示はしないが、ワーク輪郭Bの加工範囲に直線要素と円弧要素が混合しているときは、上記の直線要素で実行した処理と円弧要素で実行した処理を組み合わせればよい。
【0117】
ここで、多点式の砥石類似輪郭では、砥石類似輪郭A2の先端形状の中心Oの位置が、砥石類似輪郭の位置に相当する。多点式の砥石類似輪郭では、砥石類似輪郭A2の先端形状の中心Oの位置に基づいて砥石軌跡が作成される。
【0118】
<加工開始点J0及び加工終了点Je>
加工開始点J0及び加工終了点Jeの決定については、S310と同様であるため、図13(a)、及び図14には、図11(a)及び図12で付与した符号をそのまま付すことにより、その説明を省略する。従って、砥石軌跡作成部26により、図13(a)及び図14の例では加工開始点J0から加工終了点Jeの範囲を含む、ワーク輪郭Bの加工範囲に対応した砥石軌跡TKが作成される。この後S316に移行する。
【0119】
(S316:導入軌跡及び退出軌跡の付加)
S316は、導入軌跡及び退出軌跡の付加処理である。
<1.自動設定による加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様>
S204で自動設定ボタン(図示しない)がタッチ操作されていると、砥石軌跡作成部26は、下記の処理を行う。
【0120】
<1.1.導入軌跡:加工開始要素が直線要素の場合>
図15に示すように砥石軌跡作成部26は、例えばワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1、Q2間の要素)が直線要素の場合、砥石軌跡TKにおいて、この直線要素に対応する軌跡は、直線の軌跡Laとなる。
【0121】
この場合、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素の属性に基づいて軌跡Laが直線であると判定し、直線の軌跡Laの加工開始点J0から、直線の導入軌跡Ldを延長して作成する。導入軌跡Ldの延長の長さは、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定されている。さらに、砥石軌跡作成部26は、導入軌跡Ldの始点Psから、ワーク輪郭Bとは反対側(-Y方向)に向かって、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された所定長さ分のアプローチ軌跡Lpを作成する。アプローチ軌跡Lpの始点はアプローチ点P0となる。
【0122】
<1.2.導入軌跡:加工開始要素が円弧要素の場合>
図16に示すように砥石軌跡作成部26は、例えばワーク輪郭Bの加工開始要素(変化点Q1、Q2間の要素)が円弧要素の場合、砥石軌跡TKにおいて、この円弧要素に対応する軌跡は、円弧軌跡Caとなる。
【0123】
この場合、砥石軌跡作成部26は、加工開始要素の属性に基づいて円弧軌跡Caが円弧であると判定し、円弧軌跡Caの加工開始点J0に接続された円弧の導入軌跡Ldを作成する。この円弧の導入軌跡Ldの始点Psは、ワーク輪郭Bから離間する方向に配置される。具体的には、円弧の導入軌跡Ldは、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された半径Rs1の円の1/4円弧からなる。この1/4円弧の曲率中心Os1は、ワーク輪郭Bの変化点Q1の法線上に位置する。なお、本例では、1/4円弧としたが、1/4円弧に限定するものではなく、ワーク輪郭Bから-Y方向へ移動する円弧であればよい。
【0124】
さらに、砥石軌跡作成部26は、導入軌跡Ldの始点Psから、ワーク輪郭Bとは反対側(-Y方向)に向かって、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された所定長さ分のアプローチ軌跡Lpを作成する。アプローチ軌跡Lpの始点はアプローチ点P0となる。
【0125】
<1.3.退出軌跡:加工終了要素が直線要素の場合>
次に、図17に示すように砥石軌跡作成部26は、例えばワーク輪郭Bの加工終了要素(変化点Q3、Q4間の要素)が直線要素の場合、砥石軌跡TKにおいて、この直線要素に対応する軌跡は、直線の軌跡Lcとなる。
【0126】
この場合、砥石軌跡作成部26は、加工終了要素の属性に基づいて直線の軌跡Lcが直線であると判定し、直線の軌跡Lcの加工終了点Jeから、直線の退出軌跡Ltを延長して作成する。退出軌跡Ltの延長の長さは、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定されている。
【0127】
さらに、砥石軌跡作成部26は、退出軌跡Ltの終点Ptから、ワーク輪郭Bとは反対側(-Y方向)に向かって、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された所定長さ分のエスケープ軌跡Lsを設定する。エスケープ軌跡Lsの終点はエスケープ点Peとなる。なお、エスケープ軌跡Lsの所定長さは、アプローチ軌跡Lpの所定長さと同じ長さとすることが好ましいが、これに限定するものではない。
【0128】
<1.4.退出軌跡:加工終了要素が円弧要素の場合>
図18に示すように砥石軌跡作成部26は、例えばワーク輪郭Bの加工終了要素(変化点Q3、Q4間の要素)が円弧要素の場合、砥石軌跡TKにおいて、この円弧要素に対応する軌跡は、円弧軌跡Ccとなる。
【0129】
この場合、砥石軌跡作成部26は、加工終了要素の属性に基づいて円弧軌跡Ccが円弧であると判定し、円弧軌跡Ccの加工終了点Jeに接続された円弧の退出軌跡Ltを作成する。この円弧の退出軌跡Ltの終点Ptは、ワーク輪郭Bから離間する方向に配置される。具体的には、円弧の退出軌跡Ltは、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された半径Rs2の円の1/4円弧からなる。この1/4円弧の曲率中心Os2は、ワーク輪郭Bの変化点Q4の法線上に位置する。なお、本例では、1/4円弧としたが、1/4円弧に限定するものではなく、ワーク輪郭Bから-Y方向へ移動する円弧であればよい。
【0130】
さらに、砥石軌跡作成部26は、退出軌跡Ltの終点Ptから、ワーク輪郭Bとは反対側(-Y方向)に向かって、砥石軌跡自動作成プログラムに予め設定された所定長さ分のエスケープ軌跡Lsを設定する。エスケープ軌跡Lsの終点はエスケープ点Peとなる。次に、数値設定による加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様を説明する。
【0131】
<2.数値設定による加工開始点への導入態様、及び加工終了点からの退出態様>
S204で、自動設定ボタンが操作されずに、数値入力欄で挙げた各入力欄に数値がコンソール14等にて入力された後、数値設定ボタン(図示しない)がタッチ操作された場合、砥石軌跡作成部26は、下記の処理を行う。
【0132】
<2.1.導入軌跡:直線導入軌跡入力欄に数値入力があった場合>
図示しない直線導入軌跡入力欄に数値が入力されて、図示しない数値設定ボタンが操作されていると、砥石軌跡作成部26は、下記の処理を行う。
【0133】
砥石軌跡作成部26は、砥石軌跡TKの軌跡La(直線軌跡、または円弧軌跡)の加工開始点J0から導入軌跡Ldを延長して作成する。この場合の導入軌跡Ldの長さは、直線導入軌跡入力欄に数値で行われる。なお、軌跡Laが円弧軌跡の場合は、加工開始点J0から接線方向に導入軌跡Ldが作成される。アプローチ軌跡Lpの作成は、自動設定による場合と同様である。
【0134】
<2.2.退出軌跡:直線退出軌跡入力欄に数値入力があった場合>
図示しない直線退出軌跡入力欄に数値が入力されて、図示しない数値設定ボタンが操作されていると、砥石軌跡作成部26は、下記の処理を行う。
【0135】
砥石軌跡作成部26は、砥石軌跡TKの直線の軌跡Lc、または円弧軌跡の加工終了点Jeから延長した直線の退出軌跡Ltを作成する。この場合の退出軌跡Ltの長さは、直線退出軌跡入力欄に入力された数値である。エスケープ軌跡Lsの作成は、自動設定による場合と同様である。
【0136】
図10のS316の処理が終了すると、砥石軌跡の生成を終了する。
この後、作業者がディスプレイ12の画面の図示しない保存ボタンがタッチ操作されると、この砥石軌跡が記憶部24に格納される。すなわち、記憶部24に格納される砥石軌跡は、アプローチ軌跡、導入軌跡、ワーク輪郭Bの各要素毎に対応して作成された軌跡、退出軌跡及びエスケープ軌跡を含む。
【0137】
このように作成された砥石軌跡の軌跡毎に、研削時に行われる軸移動速度、研削前のアプローチ速度、研削後のエスケープの軸移動速度の情報等が付与されると、工程プログラムを作成することが可能となる。この工程プログラムがNC研削盤20に転送されて、NC研削盤20にて転送された工程プログラムが実行されることにより、ワークの研削加工が行われる。
【0138】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の砥石軌跡自動作成方法は、コンピュータである砥石軌跡自動作成装置10により、砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状にする。合わせて砥石軌跡自動作成装置10により、分割した形状を近似円弧に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する。または、砥石軌跡自動作成装置10により、砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線gで分割して分割線gと砥石輪郭の交点Fmを取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する。そして、砥石軌跡自動作成装置10が、ワーク輪郭B、及び砥石類似輪郭データに基づいた砥石類似輪郭A1、A2をディスプレイ12にそれぞれ表示させる。合わせて、砥石軌跡自動作成装置10が砥石類似輪郭の前記分割した形状の前記近似円弧、または、交点Fmを、加工対象の前記要素に接触させる。そして、砥石軌跡自動作成装置10により、砥石類似輪郭A1、A2が前記加工対象の前記要素に接触した際の前記砥石類似輪郭A1、A2の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する。
【0139】
上記方法を容易に実現するために砥石軌跡自動作成装置10は、砥石類似輪郭作成部28、表示制御部25、及び砥石軌跡作成部26を備える。前記砥石類似輪郭作成部28は、砥石輪郭画像に基づいて取得された砥石輪郭の先端形状を、等角度で分割して複数の形状に分割するとともに各分割した形状を近似円弧Ka等に変換して各近似円弧を連結した先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する。または、前記砥石類似輪郭作成部28は、砥石輪郭の先端形状を、等角度で配置される複数の分割線gで分割して前記分割線gと前記砥石輪郭の交点Fmを取得して各交点を備えた先端形状を有する砥石類似輪郭データを作成する。前記表示制御部25は、ワーク輪郭B、及び前記砥石類似輪郭データに基づく砥石類似輪郭A1、A2をディスプレイ12にそれぞれ表示させて、砥石類似輪郭の前記分割した形状についての近似円弧Ka等、または、交点Fmを、ワーク輪郭Bの加工対象の要素に接触させる。前記砥石軌跡作成部26は、砥石類似輪郭が前記加工対象の前記要素に接触した際の砥石類似輪郭A1、A2の位置に基づいて、砥石軌跡を作成する。この結果、砥石輪郭を手動操作することなく、砥石軌跡を自動的に形成できる。
【0140】
(2)本実施形態の砥石軌跡自動作成方法は、砥石軌跡自動作成装置10が、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの砥石類似輪郭A1、A2を接触させる。
【0141】
上記方法を容易に実現するために、砥石軌跡自動作成装置10の表示制御部25は、前記加工対象の要素が直線要素の場合は2つ、前記加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの前記砥石類似輪郭を接触させる。
【0142】
この結果、加工対象の要素が直線要素の場合は2つの砥石類似輪郭A1、A2の位置に基づいて、当該加工対象に相対する直線の砥石軌跡を作成することが容易となる。また、加工対象の要素が円弧要素の場合は3つの砥石類似輪郭A1、A2の位置に基づいて、当該加工対象に相対する円弧の砥石軌跡を作成することが容易となる。
【0143】
(3)本実施形態の砥石軌跡自動作成方法は、ワーク輪郭Bにおける加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力を砥石軌跡自動作成装置10が、受け付ける段階を備える。そして、作成段階では、砥石軌跡自動作成装置10は加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成する。
【0144】
上記方法を容易に実現するために、砥石軌跡自動作成装置10は、前記ワーク輪郭における加工開始要素、加工終了要素及び加工方向の入力する入力部を備える。砥石軌跡作成部26は、前記加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、前記加工方向における前記砥石軌跡を作成する。
【0145】
この結果、加工開始要素、前記加工終了要素の範囲で、かつ、加工方向における砥石軌跡を自動で作成できる。
(4)本実施形態の砥石軌跡自動作成方法は、砥石軌跡自動作成装置10が、砥石軌跡の加工開始点への導入態様の入力、及び前記砥石軌跡の加工終了点からの退出態様の入力を受け付ける段階を備える。そして、砥石軌跡自動作成装置10は、作成段階では、入力された導入態様の軌跡、及び入力された退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に付加する。
【0146】
上記方法を容易に実現するために、砥石軌跡自動作成装置10は、前記砥石軌跡の加工開始点への導入態様の入力、及び前記砥石軌跡の加工終了点からの退出態様を入力する態様入力部を備える。前記砥石軌跡作成部26は、前記導入態様の軌跡、及び前記退出態様の軌跡を前記砥石軌跡に付加する。この結果、ワーク輪郭Bの加工対象の要素に相対した砥石軌跡に対して、導入態様の軌跡、及び退出態様の軌跡を付加することができる。
【0147】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0148】
・前記実施形態では、図3において砥石類似輪郭A1、または、砥石類似輪郭A2を選択的に作成したが、いずれか一方の砥石類似輪郭のみを作成してもよい。この場合、図10のフローチャートでは、作成された砥石類似輪郭に対して、S304~S316、或いはS312~S316の処理が行われる。
【0149】
・前記実施形態では、前記ワーク輪郭の要素に円弧を含めるようにしたが、要素としての曲線は円弧に限定されない。円弧の以外に、例えば、スプライン曲線、サイクロイド曲線、楕円等に含まれる部分曲線を含んでいてもよい。
【0150】
・前記実施形態の図13(b)において、多点式の砥石類似輪郭のワーク輪郭Bに対する接触検出は、砥石類似輪郭A2の交点F0~Fmとワーク輪郭Bの各要素との法線方向距離である離間距離をそれぞれ演算するようにした。この代わりに、図13(b)に示す分割線gからの延長線を、ワーク輪郭Bの要素と交わらせて交点を形成させる。そして、当該交点と、前記分割線gにおける砥石類似輪郭A2上の交点Fm間の長さが、前記接触判定閾値に達した場合、ワーク輪郭Bに対して砥石類似輪郭A2が接触したものと判定してもよい。
【符号の説明】
【0151】
10…砥石軌跡自動作成装置
12…ディスプレイ
13…画面1
14…コンソール
16…マウス
20…NC研削盤
22…CPU
24…記憶部
25…表示制御部
26…砥石軌跡作成部
27…画像処理部
28…砥石類似輪郭作成部
29…NC制御部
30…研削機構部
32…ワーク保持機構部
35…砥石車
37…X軸用モータ
38…Y軸用モータ
39…撮像部
g…分割線
A…砥石輪郭
Aa、Ab、Ac…部位
A1…砥石類似輪郭
A2…砥石類似輪郭
B…ワーク輪郭
E0、E1、E2、E3…端点
F0、F1、F2、Fm…交点
Ka、Kb、Kc…近似円弧
O、O1、O2、O3…中心
Oa、Ob、Oc…曲率中心
P0…アプローチ点
Pe…エスケープ点
Q1~Q7…変化点
Ra、Rb、Rc…曲率半径
TK…砥石軌跡
W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18