(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤ及びその電気めっきプロセス
(51)【国際特許分類】
C25D 5/10 20060101AFI20241128BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20241128BHJP
C25D 3/50 20060101ALI20241128BHJP
C25D 3/48 20060101ALI20241128BHJP
C25D 3/52 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C25D5/10
C25D7/00 H
C25D3/50 102
C25D3/48
C25D3/52
(21)【出願番号】P 2023186870
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】202310754554.X
(32)【優先日】2023-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523412980
【氏名又は名称】上海万生合金材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI WONSUNG ALLOY MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, No.60 Jinfu Road, Baoshan District, Shanghai 201900, China.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】劉実
(72)【発明者】
【氏名】劉儀
(72)【発明者】
【氏名】劉百川
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225610(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101348928(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスであって、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品を得る工程であって、
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを含む工程を含む、ことを特徴とするパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項2】
電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を5~8g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を5~15mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を1~5mg/Lに維持する、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項3】
前記第1のパラジウムめっき液は、メチオニンをさらに含み、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記メチオニンの濃度は、10~20mg/Lである、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項4】
前記第2のパラジウムめっき液は、パラジウム塩、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項5】
前記パラジウム塩は、テトラアミノパラジウムジクロライド、ジニトロジアンミンパラジウム、ジアミノパラジウムジクロライド、トランスジアミノパラジウムジブロミドの1種以上である、ことを特徴とする請求項4に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項6】
電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記パラジウム塩の濃度を6~10g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を3~13mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を2~6mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を12~22mg/Lに維持する、ことを特徴とする請求項4に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項7】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液であり、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも10~15である、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項8】
前記ベースライン銅の直径は、180~220μmであり、前記電気めっきプロセスは、前記めっき半加工品に対して伸線後の直径が90~105μmになるように1回目の伸線を行う工程をさらに含み、前記電気めっきプロセスは、前記めっき完成品に対して伸線後の直径が15~22μmになるように2回目の伸線を行う工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【請求項9】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっき温度をいずれも70~85℃、電流をいずれも10~80mA、各層の電気めっき時間をいずれも10~30minに設定する、ことを特徴とする請求項1に記載のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気めっき技術の分野に関し、より具体的には、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤ及びその電気めっきプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディングワイヤは、一般的に安価な金属をコアワイヤとし、コアワイヤの外面に耐酸・耐アルカリ、耐酸化の貴金属層をめっきし、LED、ICなどの半導体のパッケージ、例えば、ピンとシリコンウェハーを接続して電気信号を伝達するために用いられることができる。ボンディングワイヤは、安価であり、コストを低減させるように、従来の金線などに置き換えることができる。一般的なボンディングワイヤは、優れた電気的、熱伝導、機械的特性、及び化学的安定性を有するべきである。しかし、いくつかの関連するボンディングワイヤは、めっき層の被覆率が不十分であり、溶接後に化学的腐食に弱いなどの問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、いくつかの関連するボンディングワイヤには、めっき層の被覆率が不十分であり、溶接後に化学的腐食に弱いなどの問題を改善するために、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤ及びその電気めっきプロセスを提供し、且つ以下の技術的解決手段を採用する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本願は、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスを提供し、且つ以下の技術的解決手段を採用する。
【0005】
パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスであって、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品を得る工程であって、前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを含む工程を含む。
【0006】
上記技術的解決手段を採用することにより、第1のパラジウムめっき液中でテトラアミノ酢酸パラジウムのパラジウム両端が2つの酢酸基に結合し、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド両端のスルホンアミド基及びカルボキシル基と錯化することができ、6-アザウラシルは、ピリミドピリミジンの複素環及び複素環におけるカルボニル基を有し、4-カルボキシベンゼンスルホンアミドのスルホンアミド基及びカルボキシル基と互いに引き合う電子基を形成して錯化することができ、パラジウムの析出速度を共に緩衝し、銅基材の表面の各箇所でパラジウムの析出速度を均一にし、パラジウム析出結晶粒を微細化し、4-カルボキシベンゼンスルホンアミドと6-アザウラシルとの錯化構造により他の不純物がベースライン銅の表面に近づくことを阻止することもでき、得られた第1のパラジウム層の厚さを均一にし、緻密な第1のパラジウム層を得、めっき層の被覆率が高く、気泡、突起、めっき漏れなどが生じにくく、第1のパラジウム層の純度が高く、ベースライン銅が剥離しにくい。ベースライン銅の表面に緻密な第1のパラジウム層を電気めっきした後、後に電気めっきする第2の金層、第3のパラジウム層及び第4の金層の接合の密着度を向上させることに寄与し、各電気めっき層が剥離しにくく、各めっき層の被覆率が高く、ベースライン銅への保護を補強し、ベースライン銅が酸化されにくく、酸アルカリに腐食されにくく、電荷を効率的に伝導するなどの効果を奏する。銅、パラジウム、金は、いずれも一定の可塑性を有するため、溶接時に両端が溶融されて球形又は長円片状となり、各めっき層が依然としてベースライン銅に被覆されることができ、割れにくく、剥離しにくく、銅コアが酸化され又は酸アルカリに腐食されにくくなるように銅コアを効果的に保護し、ボンディングワイヤの信頼性及び耐用年数を向上させることができる。
【0007】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を5~8g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を5~15mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を1~5mg/Lに維持する。
【0008】
上記技術的解決手段を採用することにより、緻密な第1のパラジウム層を製造して得ることができる。テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度が大きすぎると析出の均一性に影響を及ぼし、小さすぎるとめっき膜の効率が低くなりすぎ、めっき膜のムラも生じやすくなる。4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルの濃度が大きすぎると錯化作用が増強されて析出効率が低下し、同様にめっき膜のムラが生じ、小さすぎると錯化作用が弱まり、同様に析出の均一性に影響を及ぼす。
【0009】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記第1のパラジウムめっき液は、メチオニンをさらに含み、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記メチオニンの濃度は、10~20mg/Lである。
【0010】
上記技術的解決手段を採用することにより、メチオニンは、鎖状末端カルボキシル基、末端アミノ基及び炭素-硫黄結合を含有し、4-カルボキシベンゼンスルホンアミドと6-アザウラシルとを結合させることができ、パラジウム析出後の脱着効率を増強させ、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを速やかに役に再立て、運転効率を向上させる。
【0011】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記第2のパラジウムめっき液は、パラジウム塩、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。
【0012】
上記技術的解決手段を採用することにより、3-クロロ-4-フルオロアニリンは、パラジウム原子に対して強く引き合う作用を有し、パラジウム塩を錯化することができ、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムは、3-クロロ-4-フルオロアニリンを分散させる作用を有し、β-シアノアラニンは、分散効果を安定化させる作用を有し、パラジウムの析出の均一性及び緻密性を向上させ、被覆率の高い第3のパラジウム層を得る。第3パラジウム層は、第2の金層に強固に被覆されることができ、また、第4の金層の付着に極めて強い結合力のある着床を提供することができる。
【0013】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記パラジウム塩は、テトラアミノパラジウムジクロライド、ジニトロジアンミンパラジウム、ジアミノパラジウムジクロライド、トランスジアミノパラジウムジブロミドの1種以上である。
【0014】
上記技術的解決手段を採用することにより、当該パラジウム塩は、いずれも3-クロロ-4-フルオロアニリンにより錯化され、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムにより分散され、β-シアノアラニンに安定化され、ベースライン銅における析出速度を緩和し、各箇所の析出膜を均一且つ緻密にさせることができる。
【0015】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記パラジウム塩の濃度を6~10g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を3~13mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を2~6mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を12~22mg/Lに維持する。
【0016】
上記技術的解決手段を採用することにより、緻密で表裏両面の金層と強固に接続可能な第2のパラジウム層を製造して得ることができる。パラジウム塩の濃度が大きすぎると析出の均一性に影響を及ぼし、小さすぎるとめっき膜の効率が低くなりすぎ、めっき膜のムラも生じやすくなる。3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度が大きすぎると錯化作用が増強されて析出効率が低下し、同様にめっき膜のムラが生じ、小さすぎると錯化作用が弱まり、同様に析出の均一性に影響を及ぼす。ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度が大きすぎでも小さすぎでも分散作用が弱まる。β-シアノアラニンの濃度が大きすぎでも小さすぎでも安定化作用が低下する。
【0017】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液であり、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも10~15である。
【0018】
上記技術的解決手段を採用することにより、アルカリ性液中で、水酸化物が電子求引性基として、金イオンの電子吸引析出のバランスを取るように役に立ち、金電気めっきの効率を向上させる。
【0019】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記ベースライン銅の直径は、180~220μmであり、前記電気めっきプロセスは、前記めっき半加工品に対して伸線後の直径が90~105μmになるように1回目の伸線を行う工程をさらに含み、前記電気めっきプロセスは、前記めっき完成品に対して伸線後の直径が15~22μmになるように2回目の伸線を行う工程をさらに含む。
【0020】
上記技術的解決手段を採用することにより、太線を2回伸線することで、細線と比較して電気めっき効率がより高く、しかも銅と電気めっき層は、いずれも延性が良好であり、めっき層の被覆は、伸線後も依然として飽和する。
【0021】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの電気めっきプロセスの改良として、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっき温度をいずれも70~85℃、電流をいずれも10~80mA、各層の電気めっき時間をいずれも10~30minに設定する。
【0022】
上記技術的解決手段を採用することにより、当該温度、電流、時間の電気めっきパラメータを採用し、電気めっき効率が高く、めっき層が平めて緻密で、付着力が強い。
【0023】
第2の態様において、本願は、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤをさらに提供し、且つ以下の技術的解決手段を採用する。
【0024】
パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤであって、上記電気めっきプロセスにより製造される。前記パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である。
【0025】
上記技術的解決手段を採用することにより、第1のパラジウム層、第2の金層、第3のパラジウム層及び第4の金層がめっきされた銅ボンディングワイヤを製造して得、各層のめっき膜は、均一で、被覆率が高く、付着力が強く、裂けにくく、剥がれにくく、溶接後に端部が変形した後も、銅コアが依然として各めっき層により完全に被覆されるため、化学腐食に強く、LEDなどの電子製品に適用され、電気や熱伝導性が高く、信頼性が高い。
【発明の効果】
【0026】
要約すると、本願のパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤ及びその電気めっきプロセスは、以下の有益な効果を有する。
【0027】
当該パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤでは、第1のパラジウムめっき液中の各成分の錯化、緩衝などの作用により、銅基材の表面の各箇所でパラジウムの析出速度を均一にし、パラジウム析出結晶粒を微細化し、緻密な第1のパラジウム層を得、めっき層の被覆率が高く、ベースライン銅が剥離しにくい。
【0028】
ベースライン銅の表面に緻密な第1のパラジウム層を電気めっきした後、後に電気めっきする第2の金層、第3のパラジウム層及び第4の金層の接合の密着度を向上させることに寄与し、各電気めっき層が剥離しにくく、各めっき層の被覆率が高く、ベースライン銅への保護を補強し、溶接後にワイヤ本体及び端部が酸化されにくく、酸アルカリに腐食されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤで作られる球形の先端を電解腐食した後のSEM図である。
【
図2】対照例6で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤで作られる球形の先端を電解腐食した後のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例1
本実施例は、電気めっきプロセスによりパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造し、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品、すなわちパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを得る工程を含む。得られたパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である。
【0031】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっきの温度をいずれも70℃、電流をいずれも10mA、各層のめっき時間をいずれも10minに設定する。
【0032】
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を7~8g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を12~15mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を1~2mg/Lに維持する。
【0033】
前記第2のパラジウムめっき液は、テトラアミノパラジウムジクロライド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノパラジウムジクロライドの濃度を6~8g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を10~13mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を2~4mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を18~22mg/Lに維持する。
【0034】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液である。電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液中で、シアン化第一金カリウムの濃度を6~8g/Lに維持し、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも10~12.5である。
【0035】
実施例2
本実施例は、実施例1と比較し、電気めっきの温度、電流、時間、及び各めっき液の配合比、pH、パラジウム塩の種類を調整し、具体的には、以下のとおりである。
【0036】
本実施例は、電気めっきプロセスによりパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造し、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品、すなわちパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを得る工程を含む。得られたパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である。
【0037】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっきの温度をいずれも85℃、電流をいずれも80mA、各層のめっき時間をいずれも30minに設定する。
【0038】
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を5~6g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を5~8mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を4~5mg/Lに維持する。
【0039】
前記第2のパラジウムめっき液は、ジニトロジアンミンパラジウム、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記ジニトロジアンミンパラジウムの濃度を8~10g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を3~5mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を4~6mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を12~15mg/Lに維持する。
【0040】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液である。電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液中で、シアン化第一金カリウムの濃度を6~8g/Lに維持し、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも13~15である。
【0041】
実施例3
本実施例は、実施例1と比較し、電気めっきの温度、電流、時間、及び各めっき液の配合比、pH、パラジウム塩の種類を調整し、さらにメチオニンを第1のパラジウムめっき液に添加し、具体的には、以下のとおりである。
【0042】
本実施例は、電気めっきプロセスによりパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造し、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品、すなわちパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを得る工程を含む。得られたパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である。
【0043】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっきの温度をいずれも75℃、電流をいずれも40mA、各層のめっき時間をいずれも20minに設定する。
【0044】
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド、6-アザウラシル、及びメチオニンを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を6~7g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を9~11mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を3~4mg/L、前記メチオニンの濃度を10~12mg/Lに維持する。
【0045】
前記第2のパラジウムめっき液は、ジアミノパラジウムジクロライド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記ジアミノパラジウムジクロライドの濃度を7~8.5g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を8~10mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を3~4mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を16~18mg/Lに維持する。
【0046】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液である。電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液中で、シアン化第一金カリウムの濃度を6~7g/Lに維持し、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも12~13である。
【0047】
実施例4
本実施例は、実施例1と比較し、電気めっきの温度、電流、時間、及び各めっき液の配合比、pH、パラジウム塩の種類を調整し、さらにメチオニンを第1のパラジウムめっき液に添加し、具体的には、以下のとおりである。
【0048】
本実施例は、電気めっきプロセスによりパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造し、前記電気めっきプロセスは、
第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品、すなわちパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを得る工程を含む。得られたパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である。
【0049】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっきの温度をいずれも73℃、電流をいずれも60mA、各層のめっき時間をいずれも25minに設定する。
【0050】
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド、6-アザウラシル、及びメチオニンを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を6~7g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を8~10mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を4~5mg/L、前記メチオニンの濃度を18~20mg/Lに維持する。
【0051】
前記第2のパラジウムめっき液は、トランスジアミノパラジウムジブロミド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記トランスジアミノパラジウムジブロミドの濃度を8~9g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を6~8mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を5~6mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を20~22mg/Lに維持する。
【0052】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液である。電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液中で、シアン化第一金カリウムの濃度を7~8g/Lに維持し、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも11~12である。
【0053】
実施例5
本実施例は、実施例1と比較し、電気めっきの温度、電流、時間、及び各めっき液の配合比、pH、パラジウム塩の種類を調整し、さらにメチオニンを第1のパラジウムめっき液に添加し、具体的には、以下のとおりである。
【0054】
本実施例は、電気めっきプロセスによりパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造し、前記電気めっきプロセスは、
直径200μmのベースライン銅を選択し、第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、前記めっき半加工品に対して伸線後の直径が97μmになるように1回目の伸線を行い、次いで第2のパラジウムめっき液を用いて前記めっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品を得、前記めっき完成品に対して伸線後の直径が18μmになるように2回目の伸線を行い、得られたパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、内側から外側に向かって、順に銅コアワイヤ、前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層である工程を含む。
【0055】
前記第1のパラジウム層、前記第2の金層、前記第3のパラジウム層、及び前記第4の金層を電気めっきする過程において、電気めっきの温度をいずれも77℃、電流をいずれも35mA、各層のめっき時間をいずれも30minに設定する。
【0056】
前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド、6-アザウラシル、及びメチオニンを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を6~7g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を11~13mg/L、前記6-アザウラシルの濃度を4~5mg/L、前記メチオニンの濃度を14~16mg/Lに維持する。
【0057】
前記第2のパラジウムめっき液は、ジアミノパラジウムジクロライド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記ジアミノパラジウムジクロライドの濃度を6~7g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を10~12mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を3~4.5mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を15~17mg/Lに維持する。
【0058】
前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液は、いずれもシアン化第一金カリウム溶液である。電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液中で、シアン化第一金カリウムの濃度を7~8g/Lに維持し、且つアンモニア水で調節して電気めっきする過程において、前記第1の金めっき液及び前記第2の金めっき液のpHは、いずれも12~13である。
【0059】
対照例1
本対照例は、前記第1のパラジウムめっき液から4-カルボキシベンゼンスルホンアミドを除去したことのみが異なるだけで、実施例1と基本的に同じ技術的解決手段を採用し、
すなわち、前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム及び6-アザウラシルを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を7~8g/L、前記6-アザウラシルの濃度を1~2mg/Lに維持する。
【0060】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0061】
対照例2
本対照例は、前記第1のパラジウムめっき液から6-アザウラシルを除去したことのみが異なるだけで、実施例1と基本的に同じ技術的解決手段を採用し、
すなわち、前記第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム及び4-カルボキシベンゼンスルホンアミドを含む。電気めっきする過程において、前記第1のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノ酢酸パラジウムの濃度を7~8g/L、前記4-カルボキシベンゼンスルホンアミドの濃度を12~15mg/Lに維持する。
【0062】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0063】
対照例3
本対照例は、前記第2のパラジウムめっき液から3-クロロ-4-フルオロアニリンを除去したことのみが異なるだけで、実施例1と基本的に同じ技術的解決手段を採用し、
すなわち、前記第2のパラジウムめっき液は、テトラアミノパラジウムジクロライド、ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウム、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノパラジウムジクロライドの濃度を6~8g/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を2~4mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を18~22mg/Lに維持する。
【0064】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0065】
対照例4
本対照例は、前記第2のパラジウムめっき液からジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムを除去したことのみが異なるだけで、実施例1と基本的に同じ技術的解決手段を採用し、
すなわち、前記第2のパラジウムめっき液は、テトラアミノパラジウムジクロライド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、及びβ-シアノアラニンを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノパラジウムジクロライドの濃度を6~8g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を10~13mg/L、前記β-シアノアラニンの濃度を18~22mg/Lに維持する。
【0066】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0067】
対照例5
本対照例は、前記第2のパラジウムめっき液からβ-シアノアラニンを除去したことのみが異なるだけで、実施例1と基本的に同じ技術的解決手段を採用し、
すなわち、前記第2のパラジウムめっき液は、テトラアミノパラジウムジクロライド、3-クロロ-4-フルオロアニリン、及びジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムを含む。電気めっきする過程において、前記第2のパラジウムめっき液中で、前記テトラアミノパラジウムジクロライドの濃度を6~8g/L、前記3-クロロ-4-フルオロアニリンの濃度を10~13mg/L、前記ジノナンナフタレンスルホン酸カルシウムの濃度を2~4mg/Lに維持する。
【0068】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0069】
対照例6
本対照例は、前記第1のパラジウムめっき液及び第2のパラジウムめっき液の成分が実施例1と異なる点のみが異なるだけで、実施例1と類似の技術的解決手段を採用し、具体的には、以下のとおりである。
【0070】
本対照例で採用する第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノパラジウムジクロライド、エチレンジアミン(配位子として)、及び硫酸ナトリウム(溶液の導電性を増強する)を含む。電気めっきする過程において、第1のパラジウムめっき液中で、テトラアミノパラジウムジクロライドの濃度を7~8g/L、エチレンジアミンの濃度を1~2g/L、硫酸ナトリウムの濃度を5~6g/Lに維持する。
【0071】
本対照例で採用する第2のパラジウムめっき液と第1のパラジウムめっき液の成分配合比は、いずれも同じである。
【0072】
最後に、パラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤを製造して得る。
【0073】
試験例1
以下、実施例1~5及び対照例1~6で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤに対して、抵抗率、繰り返し曲げ-引っ張り試験を行い、結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1の結果から分かるように、実施例1~5で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、外観が平らで光沢があり、電気抵抗率が低く、及び耐屈曲性が良好であり、対照例1~6の結果よりも優れ、これは、第1のパラジウムめっき液の各成分及び第2のパラジウムめっき液の各成分が、めっき膜の均一性、析出結晶粒の細かさなどに及ぼす影響により引き起こされた。
【0076】
試験例2
ボンディングワイヤが溶接された後、腐食されて失効しやすい位置は、一般的に、溶接先端であり、先端は、一般的に、球形又は長円形であるため、実施例1及び対照例6で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの先端を球形に製造し、且つ当該球形の先端に対してGB/T6466-2008規格に準拠した電解腐食試験(促進腐食試験に相当する)を行い、電解腐食後のボンディングワイヤ端部SEM画像を
図1及び
図2に示した。
図1は、実施例1で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの球形の先端を電解腐食した後のSEM図である。
図2は、対照例6で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤの球形の先端を電解腐食した後のSEM図である。
【0077】
図1と
図2との対照から分かるように、
図1の球形の先端は、促進腐食後のクラックが比較的少なく、
図2の球形の先端は、促進腐食後のクラックが比較的多く、実施例1の解決手段で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、耐腐食性により優れる。
【0078】
試験例3
実施例1~5及び対照例1~6のベースライン銅の代わりに、同じ銅片を11枚用いて、且つそれぞれ実施例1~5及び対照例1~6の解決手段でパラジウム金めっきの銅片を製造し、11枚のパラジウム金めっきの銅片に対して表面被覆率試験を行い、結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
表2の結果から分かるように、実施例1~5の製造プロセスは、基層に対する被覆率が99.2~99.7%に達することができ、対照例1~6の結果よりも顕著に高い。ここで、実施例3~4において、めっき層の被覆率が最も高く、これは、実施例1と比較して、さらにメチオニンを第1のパラジウムめっき液に添加するからであり、さらにめっき膜の被覆率を向上させた結果である。
【0081】
以上のことから分かるように、本実施例の解決手段で製造したパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤは、めっき膜の均一性や被覆率がいずれも高く、表面が平らで光沢があり、耐腐食性、耐屈曲性、めっき層が剥れにくいという利点を有し、半導体などの素子に適用した場合に高い信頼性を有する。
【0082】
以上は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の原理を逸脱せずに、多様な改良及び修飾を加えることができ、このような改良及び修飾も本願の保護範囲に属するものと見なされるべきである。
【要約】 (修正有)
【課題】めっき層の被覆率が高く、剥離しにくく、ベースライン銅への保護を補強し、溶接後にワイヤ本体及び端部が酸化されにくく、酸アルカリに腐食されにくいパラジウム金めっきの銅ボンディングワイヤ及びその電気めっきプロセスを提供する。
【解決手段】第1のパラジウムめっき液を用いてベースライン銅の表面に第1のパラジウム層を電気めっきし、さらに第1の金めっき液を用いて第2の金層をめっきしてめっき半加工品を得、次いで第2のパラジウムめっき液を用いてめっき半加工品に第3のパラジウム層をめっきし、最後に第2の金めっき液を用いて第4の金層をめっきしてめっき完成品を得る。第1のパラジウムめっき液は、テトラアミノ酢酸パラジウム、4-カルボキシベンゼンスルホンアミド及び6-アザウラシルを含む。
【選択図】
図1