IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上海市潔能科技有限公司の特許一覧

特許7594823水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管
<>
  • 特許-水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管 図1
  • 特許-水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管 図2
  • 特許-水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/14 20060101AFI20241128BHJP
   C04B 35/08 20060101ALI20241128BHJP
   F17C 1/02 20060101ALI20241128BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20241128BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20241128BHJP
【FI】
C04B35/14
C04B35/08
F17C1/02
H01M8/0606
H01M8/04 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023537449
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2020127683
(87)【国際公開番号】W WO2022041488
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202010884669.7
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523072027
【氏名又は名称】上海市潔能科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】史金滬
(72)【発明者】
【氏名】徐燕
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110953477(CN,A)
【文献】中国実用新案第211146067(CN,U)
【文献】特開平07-315840(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110804705(CN,A)
【文献】特開2010-019315(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1948818(CN,A)
【文献】特開2004-293564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
F17C 1/02
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素貯蔵構造用材料組成物の原料が、ポリイミド20~24重量部、ポリ酢酸ビニル12~13重量部、塩化アルミニウム15~17重量部、塩化マグネシウム3~5重量部、塩化バリウム3~5重量部、アルミナ10~12重量部、ジルコニア15~17重量部、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.5~0.7重量部、シリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム1.5~2.5重量部、酸化イットリウム1.5~3重量部、チタニア及び/又は炭化チタン6~8重量部、並びに酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウム0.3~0.5重量部、を含み、
記の水素貯蔵構造用材料組成物の原料が、さらに、水と、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる極性溶媒を含み、
記の水素貯蔵構造用材料組成物の粘度が、90000±10000cPであ
前記の水素貯蔵構造用材料組成物が、以下の工程を含む方法によって調製される:
(1)塩化アルミニウムと塩化マグネシウムを混合し、水で溶解させ、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加し、反応させて白色沈殿を生成し、白色沈殿を取り、塩化バリウムを添加し、均一に攪拌した後、乾燥させ、700~900℃の高温処理を経て、粉砕し、組成物Aを得る工程、ここで、前記の水を添加して得られる塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合溶液の濃度が、40~60wt%であり、前記の高温処理の時間が、80~100minであり、前記の粉砕後の組成物Aのメッシュ数が、8000メッシュ以上であり、
(2)アルミナ、ジルコニア、酸化イットリウム、チタニア及び/又は炭化チタン、並びに酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウムを混合して組成物Bを得る工程、
(3)ポリイミド溶液に、シリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウムを添加し、均一に攪拌した後、組成物Bを添加し、均一に攪拌した後、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物を添加し、均一に攪拌した後、組成物Cを得る工程、ここで、前記のポリイミド溶液が、ポリイミドを極性溶媒に溶解させた溶液であり、前記の極性溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンから選ばれ、前記ポリイミド溶液の粘度が、90000cP±2000cPであり、工程(3)が、35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空度下で行われ、
(4)ポリ酢酸ビニル溶液に、組成物Aを添加し、均一に攪拌した後、得られた混合物を組成物Cと混合し、均一に攪拌する工程、ここで、前記のポリ酢酸ビニル溶液が、ポリ酢酸ビニルの水溶液であり、その濃度が、70~80wt%であり、ポリ酢酸ビニル溶液と組成物Aの混合物を、組成物Cと35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空度下で混合し、ポリ酢酸ビニル溶液と組成物Aの混合物を、組成物Cと混合した後、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンから選ばれる極性溶媒を添加して混合物の粘度を90000±10000cPに調整する、を含み、
これらの工程により、前記の水素貯蔵構造用材料組成物を得る、
水素貯蔵構造用材料組成物。
【請求項2】
素貯蔵構造用材料の全質量で、シリカ及び/又は酸化ベリリウム33~39wt%、アルミナ17~22wt%、ジルコニア20~28wt%、チタニア6~10wt%、酸化ハフニウム0.25~0.5wt%、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.45~0.9wt%、酸化イットリウム1~2.7wt%、酸化カリウムおよび/又は酸化ナトリウム0.12~1wt%、酸化マグネシウム0.18~0.4wt%、酸化バリウム1~1.7wt%、および不可避的不純物を含
請求項1に記載の水素貯蔵構造用材料組成物を、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う、ことを含む方法によって前記の水素貯蔵構造用材料が製造される、
水素貯蔵構造用材料。
【請求項3】
素貯蔵構造用材料と補強フィラーとを含む水素貯蔵構造用複合材料であり
前記の水素貯蔵構造用材料は、水素貯蔵構造用材料の全質量で、シリカ及び/又は酸化ベリリウム33~39wt%、アルミナ17~22wt%、ジルコニア20~28wt%、チタニア6~10wt%、酸化ハフニウム0.25~0.5wt%、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.45~0.9wt%、酸化イットリウム1~2.7wt%、酸化カリウムおよび/又は酸化ナトリウム0.12~1wt%、酸化マグネシウム0.18~0.4wt%、酸化バリウム1~1.7wt%、および不可避的不純物を含み、
請求項1に記載の水素貯蔵構造用材料組成物と補強フィラーとの混合物を、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う、ことを含む方法によって前記の水素貯蔵構造用複合材料が製造される、
水素貯蔵構造用複合材料。
【請求項4】
水素貯蔵ユニットを含み、前記の水素貯蔵ユニットの材質が、請求項に記載の水素貯蔵構造用材料であり、前記の水素貯蔵ユニットが、ハニカム微孔構造を有する、水素貯蔵単管。
【請求項5】
前記の微孔の壁厚が35~40μmである、請求項4に記載の水素貯蔵単管。
【請求項6】
前記の微孔径が140~150μmである、請求項4に記載の水素貯蔵単管。
【請求項7】
前記の水素貯蔵単管が、さらに、シェルを含み、前記のシェルの材質が、請求項に記載の水素貯蔵構造用材料又は請求項に記載の水素貯蔵構造用複合材料である、請求項に記載の水素貯蔵単管。
【請求項8】
請求項に記載の水素貯蔵単管を製造する方法であって、前記の方法は、以下の工程:
(1)請求項1に記載の水素貯蔵構造用材料組成物でポリマー繊維束を含浸する工程、
(2)水素貯蔵構造用材料組成物に含浸されたポリマー繊維束を、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う工程;あるいは、水素貯蔵構造用材料組成物に含浸されたポリマー繊維束を、管状金型に充填した後、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う工程、を含み、
前記管状金型の材質が、請求項に記載の水素貯蔵構造用材料又は請求項に記載の水素貯蔵構造用複合材料である、水素貯蔵単管の製造方法。
【請求項9】
工程(1)において含浸を行う前に、水素貯蔵構造用材料組成物の粘度を200000±10000cPに調整する、請求項8に記載の水素貯蔵単管の製造方法。
【請求項10】
ポリマー繊維の融点が、150℃~380℃である、請求項8に記載の水素貯蔵単管の製造方法。
【請求項11】
ポリマー繊維束中の単本繊維の直径が、100~150μmである、請求項8に記載の水素貯蔵単管の製造方法。
【請求項12】
工程(1)において、前記の含浸により、ポリマー繊維束中の各単本繊維の表面を被覆する水素貯蔵構造用材料組成物の平均厚みは、25~30μmである、請求項8に記載の水素貯蔵単管の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の水素貯蔵構造用材料組成物、請求項に記載の水素貯蔵構造用材料、請求項に記載の水素貯蔵構造用複合材料、若しくは請求項に記載の水素貯蔵単管の高圧水素貯蔵および/又は液体水素保存における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵技術分野に属し、具体的には、水素貯蔵構造用材料及び水素貯蔵単管に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年は、我が国が水素エネルギー産業チェーンを全面的にスタートさせる初期発展段階であった。水素エネルギーは、クリーンな代替エネルギーとでき、重要な水素貯蔵技術は、直接に、社会安全や、水素貯蔵、移動輸送、移動応用のマクロ社会利益と効率に影響している。そのため、高い安全安定性の前提下での70MPa~110MPa高圧水素貯蔵技術は、ますます重視されている。
【0003】
我が国の35MPaと70MPaの移動水素貯蔵容器は、技術的に、多くのものは、国際的に普遍的に採用されている中空内胆構造を用い、且つ、日本の東レM40又はT1000型の高質炭素繊維を併用するものであり、これは、軽量化の利点を実現する一方、総合的な安全問題も存在している。高品質密度比の高圧強、高い安全性と安定性を確実に実現するには、本発明では、極めて困難なミクロン級孔径の高圧水素貯蔵構造及び耐高圧軽質材料の実現に対して技術面的に突破することが求められている。
【0004】
水素貯蔵技術の高い安全性及び安定性は、水素エネルギー産業の健全な発展を考慮する最も肝心な度量指標である。現在に依存している容器の炭素繊維厚被覆層によって実現された外形圧強は、その応用面で、使用期間内に予見できないハイリスク性が存在することを決め、使用期間内に常に定期的に安全性能検査を通過する必要があるが、水素動的高圧エネルギー及び応力が、容器圧力層の破壊と老化を招き、潜在的なハイリスクは依然として存在している。
【0005】
我が国の現在の35MPa容器では、水素貯蔵容量による航続能力が不足であり、多くのものは、多容器並列接続が採用され、狭い設置空間内で何倍も増大したハイリスクの危険性がある。70MPa容器でも、同じような大きくて不器用な円筒状の外形を持つ、非常に大きな体積空間を占める。
【0006】
35MPa~70MPaの中空内胆構造は、高温と動的環境下で発生される限界高圧を避けることができず、容器の高圧自動放出により安全値に達する必要があり、高圧放出と同時に水素損失も非常に甚大である。
【0007】
我が国の現在の容器水素貯蔵技術及び将来の発展が、輸入炭素繊維に依存し続ければ、その高い応用コストは、水素エネルギーの急速な普及や発展に不利で、経済利益や社会利益にも不利で、懸念されているサプライチェーンの緊張問題は、結局ボトルネックになってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本分野では、中空内胆の移動高圧水素貯蔵技術に存在している上記の総合的な問題を解決することができ、高圧強、高い安全性と安定性がある、新型の高圧水素貯蔵技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明は、水素貯蔵構造用材料組成物を提供する。前記の水素貯蔵構造用材料組成物の原料が、ポリイミド20~24重量部、ポリ酢酸ビニル12~13重量部、塩化アルミニウム15~17重量部、塩化マグネシウム3~5重量部、塩化バリウム3~5重量部、アルミナ10~12重量部、ジルコニア15~17重量部、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.5~0.7重量部、シリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム1.5~2.5重量部、酸化イットリウム1.5~3重量部、チタニア及び/又は炭化チタン6~8重量部、酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウム0.3~0.5重量部、任意選択の塩化カルシウム0.3~0.5重量部の及び任意選択の炭化亜鉛10重量部以下、を含む。
【0010】
1つ又は複数の実施形態では、水素貯蔵構造用材料組成物の原料は、さらに、水と極性溶媒を含む。
【0011】
1つ又は複数の実施形態では、前記の極性溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる。
【0012】
1つ又は複数の実施形態では、前記の水素貯蔵構造用材料組成物の粘度が、90000±10000cPである。
【0013】
本発明は、また、本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料組成物を製造する方法を提供する。前記方法は、以下の工程:
(1)塩化アルミニウムと塩化マグネシウムを混合し、水で溶解させ、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加し、反応させて白色沈殿を生成し、白色沈殿を取り、塩化バリウムと任意選択の塩化カルシウムを添加し、均一に攪拌した後、乾燥させ、700~900℃の高温処理を経て、粉砕し、組成物Aを得る工程、
(2)アルミナ、ジルコニア、酸化イットリウム、チタニア及び/又は炭化チタン、酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウム、及び任意選択の炭化亜鉛を混合して組成物Bを得る工程、
(3)ポリイミド溶液に、シリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウムを添加し、均一に攪拌した後、組成物Bを添加し、均一に攪拌した後、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物を添加し、均一に攪拌した後、組成物Cを得る工程、及び
(4)ポリ酢酸ビニル溶液に、組成物Aを添加し、均一に攪拌した後、得られた混合物を組成物Cと混合し、均一に攪拌する工程、を含み、
これらの工程により、前記の水素貯蔵構造用材料組成物を得る。
【0014】
1つ又は複数の実施形態では、前記の方法は、以下の1つ又は複数の特徴を有する。
(1)工程(1)において、加水溶解された塩化アルミニウムと塩化マグネシウムの混合溶液の濃度が、40~60wt%であり、
(2)工程(1)において、高温処理の時間が、80~100minであり、
(3)工程(1)において、粉砕後の組成物Aのメッシュ数が、8000メッシュ以上であり、
(4)工程(3)において、前記のポリイミド溶液が、ポリイミドを極性溶媒に溶解させた溶液であり、前記の極性溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンから選ばれ、前記ポリイミド溶液の粘度が、90000cP±2000cPであり、
(5)工程(3)が、35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空度下で行われ、
(6)工程(4)において、前記のポリ酢酸ビニル溶液が、ポリ酢酸ビニルの水溶液であり、その濃度が、70~80wt%であり、
(7)工程(4)において、ポリ酢酸ビニル溶液と組成物Aの混合物を、組成物Cと35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空度下で混合し、
(8)工程(4)において、ポリ酢酸ビニル溶液と組成物Aの混合物を、組成物Cと混合した後、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンから選ばれる極性溶媒を添加して混合物の粘度を90000±10000cPに調整する。
【0015】
また、本発明は、水素貯蔵構造用材料を提供する。前記の水素貯蔵構造用材料の全質量で、シリカ及び/又は酸化ベリリウム33~39wt%、アルミナ17~22wt%、ジルコニア20~28wt%、チタニア6~10wt%、酸化ハフニウム0.25~0.5wt%、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.45~0.9wt%、酸化イットリウム1~2.7wt%、酸化カリウムおよび/又は酸化ナトリウム0.12~1wt%、酸化マグネシウム0.18~0.4wt%、酸化バリウム1~1.7wt%、酸化亜鉛0~10wt%、任意的に存在する酸化カルシウム0.07~0.7wt%、および不可避的不純物を含む。
【0016】
また、本発明は、本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料と補強フィラーとを含む、水素貯蔵構造用複合材料を提供する。
【0017】
また、本発明は、本文に記載の水素貯蔵構造用材料又は水素貯蔵構造用複合材料の製造方法を提供する。前記の方法は、本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料組成物、又は水素貯蔵構造用材料組成物と補強フィラーとの混合物を、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う、ことを含む。
【0018】
また、本発明は、水素貯蔵単管を提供する。前記の水素貯蔵単管は、水素貯蔵ユニットを含み、前記の水素貯蔵ユニットの材質が、本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料であり、前記の水素貯蔵ユニットが、ハニカム微孔構造を有し、好ましくは、微孔の壁厚が35~40μmであり、好ましくは、微孔径が140~150μmである。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、前記の水素貯蔵単管が、さらに、シェルを含み、前記のシェルの材質が、本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料又は水素貯蔵構造用複合材料である。
【0020】
また、本発明は、前記の水素貯蔵単管の製造方法を提供する。前記の方法は、以下の工程:
(1)本文においていずれか実施形態に記載の水素貯蔵構造用材料組成物でポリマー繊維束を含浸する工程、
(2)水素貯蔵構造用材料組成物に含浸されたポリマー繊維束を、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う工程;あるいは、水素貯蔵構造用材料組成物に含浸されたポリマー繊維束を、管状金型に充填した後、40~45℃で200~250minの硬化処理を行い、その後50~60℃で50~70minの加熱処理を行い、その後360~480℃で50~70minの加熱処理を行い、その後850~900℃で80~100minの焼結処理を行い、その後1400~1450℃で250~350minの焼結処理又は3000℃±100℃で焼結処理を行う工程、を含む。
【0021】
1つ又は複数の実施形態では、工程(1)において含浸を行う前に、水素貯蔵構造用材料組成物の粘度を200000±10000cPに調整する。
【0022】
1つ又は複数の実施形態では、前記のポリマー繊維の融点が、150℃~380℃である。
【0023】
1つ又は複数の実施形態では、前記のポリマー繊維束中の単本繊維の直径が、100~150μmである。
【0024】
1つ又は複数の実施形態では、工程(1)において、前記の含浸により、ポリマー繊維束中の各単本繊維の表面を被覆する水素貯蔵構造用材料組成物の平均厚みが、25~30μmになる。
【0025】
また、本発明は、本文に記載の水素貯蔵構造用材料組成物、水素貯蔵構造用材料、水素貯蔵構造用複合材料、水素貯蔵構造、水素貯蔵単管の高圧水素貯蔵及び/又は液体水素保存における応用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の単管の内部のミクロンハニカム水素貯蔵構造の概略図を示す。
図2図2は、本発明の円形の単管の写真を示す。
図3図3は、実施例2の六角形の水素貯蔵単管からなるハニカム構造モジュールの力学的概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の特徴や効果を当業者に理解させるために、以下では、明細書及び特許請求の範囲に記載される術語及び用語について、一般的に説明及び定義する。特に指定がない限り、本文で使用されるすべての技術及び科学上の語彙は、当業者が本発明について理解している通常の意味であり、衝突がある場合は、本明細書の定義に準拠すべきである。
本明細書で説明や開示される理論又はメカニズムは、正しいか間違っているかにかかわらず、いかなる方式でも本発明の範囲を制限すべきではない、即ち、本発明の内容はいかなる特定の理論又はメカニズムにも制限されずに実施することができる。
【0028】
本文では、数値範囲又はパーセント範囲で定義されるすべての特徴、例えば数量、含有量、濃度は、単に簡潔で便利のためである。このため、数値範囲又はパーセンテージ範囲の説明は、すべての可能な2次範囲や範囲内の個別の数値(整数や分数を含む)をカバーし、且つ、具体的に開示したものと見做すべきである。
本文では、特に説明がなければ、比率は質量比を指し、百分率は質量百分率を指す。
【0029】
本文では、説明を簡潔にするために、各実施形態又は実施例における各技術特徴の可能なすべての組み合わせについて説明していない。したがって、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、各実施形態又は実施例における各技術的特徴は任意選択の組み合わせを行うことができ、可能な組み合わせはすべて本明細書に記載される範囲であると認められる。
【0030】
水素エネルギーの普及や発展に最も重要な一環は、高い安全性がある高圧水素貯蔵である。国際的に現行の高圧水素貯蔵容器は、多くのは、中空内胆の、外面に多層を被覆する高質炭素繊維/エポキシ樹脂複合材料(CFRP)を採用し、表層の圧強負荷により高圧強を実現し、品質密度比の利点があり、今、我が国もこの技術を採用している。しかし、複雑な動的環境下で、水素の動的高圧と温度上昇、内部応力による崩壊漏洩の危険性は、炭素繊維被覆層を厚くすることで解決できるものではなく、我が国ではすでに70MPa天然ガス移動工具の漏洩爆発死傷事故が多数発生している。このほか、輸入炭素繊維を大量に使用することは、コストが高く、資源が限られるだけではなく、持続可能な発展と経済的実用性なども多くの問題がある。今の中空内胆の高圧水素貯蔵容器の安全性や安定性の各問題に対して、本発明は、新型の高圧水素貯蔵構造用複合材料及び高圧水素貯蔵構造を提案する。本発明の基本設計構想は、1.輸入炭素繊維の依存の代わりに、質量比重が軽い高性能材料、2.中空内胆の代わりに、ミクロン級微孔ハニカム構造を研究開発することを含む。本発明では、大容量水素を、髪の毛の糸のような細かい隔離貯蔵空間に分離することにより、高圧水素の活性エネルギーを非常に効果的に制限でき、集束された微孔ハニカム構造が、中空内胆の高圧水素貯蔵に存在するハイリスク問題を徹底的に除去でき、安全圧力が70MPa~110MPaに達し、そして何倍の安全係数があり、中空内胆外の厚くて巨大な被覆層を省き、水素貯蔵効率を高め、体積を大幅に減少させ、水素貯蔵の経済利益を効果的に高めることができる。
【0031】
本発明は、水素貯蔵構造を製造するために用いられる複合材料組成物(水素貯蔵構造用材料組成物とも称される)を提供し、該複合材料組成物は、常温で一定の粘度を有する固液混合物である。本発明の水素貯蔵構造用材料は、本発明の水素貯蔵構造用材料組成物を硬化、焼結させて得られる。本発明の水素貯蔵構造は、本発明の複合材料組成物でポリマー繊維を含浸した後に硬化、焼結させて得られる。本発明の水素貯蔵構造は、高圧水素貯蔵に適用するので、高圧水素貯蔵構造とも称される。
【0032】
本発明の複合材料組成物の原料は、ポリイミド(PI)を含む。本発明の複合材料は、無機物金相構造を有する。そこで、本文では、本発明の複合材料は、PMTS材料(有機高分子PI+無機物金相構造の略称)と略称され、本発明の複合材料組成物は、PMTS材料組成物とも略称され、本発明の高圧水素貯蔵構造は、PMTS材料高圧水素貯蔵構造とも略称される。本発明の複合材料は、水素貯蔵構造の材料として好適であるため、水素貯蔵構造用材料とも称される。
【0033】
本発明のPMTS材料組成物の原料は、ポリイミド10~40重量部、ポリ酢酸ビニル8~18重量部、金属塩化物15~40重量部、金属酸化物及び/又は金属炭化物10~70重量部、シリカ及び/又は炭化ケイ素10~40重量部、希土類金属酸化物0.5~5重量部、アルカリ金属水酸化物1~5重量部を含む。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料は、さらに、適量の水と極性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料として、金属塩化物が、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を含み、好ましくは、金属塩化物が、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、及び塩化バリウムを含み、任意に塩化カルシウムをさらに含む。PMTS材料組成物の原料中に、含有される場合、塩化アルミニウムの使用量が10~20重量部が好ましく、塩化マグネシウムの使用量が1~10重量部が好ましく、塩化バリウムの使用量が1~10重量部が好ましく、塩化カルシウムの使用量が0.1~1重量部が好ましい。本明細書において、金属酸化物が、希土類金属酸化物を含まない。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料として、金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ハフニウム及び酸化ベリリウムから選ばれる1種以上を含む。PMTS材料組成物の原料中に、含有される場合、アルミナの使用量が5~15重量部が好ましく、ジルコニアの使用量が10~20重量部が好ましく、チタニアの使用量が5~10重量部が好ましく、酸化ハフニウムの使用量が0.1~1重量部が好ましく、酸化ベリリウムの使用量が30~40重量部が好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料として、金属炭化物が、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ハフニウム及び炭化亜鉛から選ばれる1種以上を含む。PMTS材料組成物の原料中に、含有される場合、炭化ケイ素の使用量が10~40重量部が好ましく、炭化チタンの使用量が5~10重量部が好ましく、炭化ハフニウムの使用量が0.1~1重量部が好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料として、希土類金属酸化物が、酸化ランタン、セリウム酸化物、ランタンセリウム酸化物及び酸化イットリウムから選ばれる1種以上を含み、好ましくは、酸化ランタン、セリウム酸化物、ランタンセリウム酸化物から選ばれる1種以上及び酸化イットリウムを含む。PMTS材料組成物の原料中に、含有される場合、酸化ランタン、セリウム酸化物、ランタンセリウム酸化物の合計の使用量が0.2~1重量部が好ましく、酸化イットリウムの使用量が1~5重量部が好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料として、アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの1種又は2種を含む。
【0034】
好ましい実施形態では、PMTS材料組成物の原料は、ポリイミド(PI)20~24重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)12~13重量部、塩化アルミニウム(AlCl)15~17重量部、塩化マグネシウム(MgCl)3~5重量部、塩化バリウム(BaCl)3~5重量部、アルミナ(Al)10~12重量部、ジルコニア(ZrO)15~17重量部、酸化ランタン(La)、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.5~0.7重量部、シリカ(SiO)、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部、水酸化ナトリウム(NaOH)及び/又は水酸化カリウム(KOH)1.5~2.5重量部、酸化イットリウム(Y)1.5~3重量部、チタニア(TiO)及び/又は炭化チタン6~8重量部、酸化ハフニウム(HfO)及び/又は炭化ハフニウム0.3~0.5重量部、任意選択の塩化カルシウム(CaCl)0.3~0.5重量部、及び任意選択の炭化亜鉛10重量部以下、を含む。いくつかの実施形態では、前記のシリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部は、シリカ及び/又は炭化ケイ素32~35重量部、或いは、シリカ及び/又は炭化ケイ素及び酸化ベリリウム32~35重量部であり、その中、酸化ベリリウムの使用量が5~15重量部が好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料は、PI 20~24重量部、ポリ酢酸ビニル12~13重量部、塩化アルミニウム15~17重量部、塩化マグネシウム3~5重量部、塩化バリウム3~5重量部、アルミナ10~12重量部、ジルコニア15~17重量部、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.5~0.7重量部、シリカ及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム1.5~2.5重量部、酸化イットリウム1.5~3重量部、チタニア(TiO)6~8重量部、酸化ハフニウム(HfO)0.3~0.5重量部、及び任意選択の塩化カルシウム(CaCl)0.3~0.5重量部を含む。いくつかの実施形態では、前記のシリカ及び/又は酸化ベリリウム32~35重量部は、シリカ32~35重量部、或いは、シリカ及び酸化ベリリウム32~35重量部であり、その中、酸化ベリリウムの使用量が5~15重量部が好ましい。本発明では、任意選択の酸化ベリリウム5~15重量部は、シリカ又は炭化ケイ素の一部を代わりに、より優れた質量比重と硬度を実現する。
【0035】
PMTS材料組成物の原料は、さらに、適量の水と極性溶媒を含む。PMTS材料組成物の原料は、PVAc 12~13重量部に対して、水3~5.5重量部を含むことが好ましく、水3.5~5重量部を含むことがより好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の原料は、上記重量部のPI、PVAc、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物、シリカ、炭化ケイ素及び/又はベリリウム、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、酸化イットリウム、チタニア及び/又は炭化チタン、酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウム、水、任意選択の塩化カルシウム、任意選択の炭化亜鉛、および適量の極性溶媒、を含む又はからなるものである。本発明では、PMTS材料組成物の原料として極性溶媒の使用量が、PMTS材料組成物の粘度が90000±10000cPになるようにする量が好ましい。
【0036】
本発明では、水は、蒸留水又は脱イオン水であることが好ましい。本発明では、極性溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN-メチルピロリドン(NMP)から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0037】
本明細書において、重量部は、各原料/材料の間の重量部の配合比を表し、理解できることは、各原料の重量部の和は100重量部であることを要求しない。
【0038】
本発明では、ジルコニア、酸化ハフニウム、炭化ハフニウム、酸化ランタン、セリウム酸化物及びランタンセリウム酸化物以外の金属酸化物及び金属炭化物原料は、ナノ級の超微細粉末であることが好ましく、微細度が1万レベル以上であることが好ましく、平均粒径が300nm~2μmであることが好ましい。PMTS材料の高品質を保証し、高温焼結過程中に有害な不純物の酸化や崩壊を回避するために、本発明では、高純度の原料、例えば純度4N級、5N級又は6N級の原料を使用することが好ましい。本発明に用いられる原料は、いずれも市販品であってもよく、自ら高圧気流粉砕懸濁微粉収集法などの方法により超微細加工を行って得られたものであってもよい。
【0039】
PMTS材料組成物は、以下の工程を含む方法により得られる:
(1)塩化アルミニウムと塩化マグネシウムを混合し、適量の水で溶解させ、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加し、反応させて白色沈殿を生成し、白色沈殿を取り、塩化バリウムと任意選択の塩化カルシウムを添加し、均一に攪拌した後、乾燥させ、700~900℃の高温処理を経て、粉砕し、組成物Aを得る工程、
(2)アルミナ、ジルコニア、酸化イットリウム、チタニア及び/又は炭化チタン、酸化ハフニウム及び/又は炭化ハフニウム、及び任意選択の炭化亜鉛を混合して組成物Bを得る工程、
(3)ポリイミド溶液に、シリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウムを添加し、均一に攪拌した後、組成物Bを添加し、均一に攪拌した後、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物を添加し、均一に攪拌した後、組成物Cを得る工程、及び
(4)ポリ酢酸ビニル溶液に、組成物Aを添加し、均一に攪拌した後、得られた混合物を組成物Cと混合し、均一に攪拌する工程、を含み、
これらの工程により、PMTS材料組成物が得られる。
【0040】
上記工程の番号は、各工程を区別するためだけで、各工程の操作順序を制限するものではなく、ある工程を行う前に必要な原料と/材料を準備すればよく、例えば、まず工程(2)と(3)を行い、その後工程(1)を行い、最後に工程(4)を行ってもよいことが理解できる。
【0041】
本発明では、塩化アルミニウムは、分析純無水塩化アルミニウムが好ましく、塩化マグネシウムは、分析純塩化マグネシウムが好ましく、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムは、分析純ものが好ましい。工程(1)において、塩化アルミニウムの使用量が15~17重量部、塩化マグネシウムの使用量が3~5重量部である。工程(1)において、水の使用量は、塩化アルミニウム及び塩化マグネシウムを溶解させた溶液の濃度が40wt%~60wt%、例えば40wt%~50wt%となるようにすることが好ましい。工程(1)において、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計の使用量が1.5~2.5重量部であり、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの使用量が通常に特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウムのみ又は水酸化カリウムのみを使用してもよい。工程(1)において、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加する場合、段階的に添加することが好ましい。好ましい実施形態では、工程(1)において、水酸化ナトリウム1.2~2重量部、水酸化カリウム0.3~0.5重量部を添加する。水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加した後、反応は発熱する。反応を冷却までに、白色沈殿物を生成し、白色沈殿物を取り、塩化バリウムと任意選択の塩化カルシウムを添加することが好ましい。工程(1)において、塩化バリウムの使用量が3~5重量部である。塩化カルシウムを添加してもよく、添加しなくてもよく、添加する場合、塩化カルシウムの使用量が0.3~0.5重量部である。いくつかの実施形態では、工程(1)において、塩化バリウムと任意選択の塩化カルシウムを添加し、攪拌した後、静置して乾燥させ、静置時間が30分以上であることが好ましい。工程(1)において、乾燥温度が90~110℃であることが好ましい。工程(1)において、高温処理の温度が700~900℃であることが好ましく、時間が80~100分であることが好ましい。いくつかの実施形態では、工程(1)において、高温処理後、冷却し、ボールミルで8000メッシュ以上に粉砕し、組成物Aを得る。
【0042】
本発明では、アルミナがナノアルミナであり、ジルコニアが超微細ジルコニア、好ましくはミクロン級ジルコニア(例えば、粒子径1~5μm)である;酸化イットリウムがナノ酸化イットリウムであり、チタニアがナノチタニアであり、好ましくはルチル型チタニアであり、酸化ハフニウムが超微細酸化ハフニウム(例えば粒径800nm~2μm)である;炭化ハフニウムが超微細炭化ハフニウム(例えば粒径800nm~2μm)である;炭化チタンがナノ炭化チタンである;炭化亜鉛がナノ炭化亜鉛である。工程(2)において、アルミナの使用量が10~12重量部、ジルコニアの使用量が15~17重量部、酸化イットリウムの使用量が1.5~3重量部、チタニアと炭化チタンの合計の使用量が6~8重量部、酸化ハフニウムと炭化ハフニウムの合計の使用量が0.3~0.5重量部である;添加される場合、炭化亜鉛の使用量が10重量部未満である。
【0043】
本発明に好適なPIは、好ましくは電気工学レベル又はそれ以上のレベルのPIであり、熱硬化性PI、例えば米国デュポンのSP-1であってもよく、熱可塑性PI、例えば日本三井化学のJNF3020であってもよい。本発明に好適なPIの特性粘度が0.52~0.81dL/gであることが好ましい。本発明では、PI溶液は、PIを極性溶媒で希釈した溶液である。工程(3)において、PIの使用量が20~24重量部、即ち、用いられるPI溶液に含まれるPIの重量部が20~24重量部である。工程(3)で用いられるPI溶液の粘度が90000cP±2000cPである。本発明では、粘度は、常温常圧(25℃、1気圧下)で測定した粘度である。工程(3)で用いられるPI溶液の製造方法は、特に制限されず、例えば、固体PI原料を用いて、固体PIを適量の極性溶媒に溶解させ、粘度90000cP±2000cPのPI溶液を得ることができる;予め極性溶媒に溶解した粘度が大きいPI溶液(例えば濃度28~32wt%のPI溶液)を原料とし、極性溶媒で希釈し、粘度90000cP±2000cPのPI溶液を得ることもできる。いくつかの実施形態では、35~45℃および-94kPaから-101kPaの真空下で固体PI又は濃度28~32wt%のPI溶液に、極性溶媒を添加し、攪拌して粘度90000cP±2000cPのPI溶液を得る;攪拌の回転数が8~12r/minであることが好ましく、攪拌時間が15~25minであることが好ましい。工程(3)において、35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空度下で、PI溶液とシリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウムを混合し、さらに組成物Bと混合し、さらに酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物と混合することが好ましい。工程(3)において、攪拌の回転数が8~12r/minであることが好ましい。工程(3)において、PI溶液とシリカ、炭化ケイ素及び/又は酸化ベリリウムを混合する場合、好ましくは10~15分間攪拌する、組成物Bを添加した後、好ましくは15~20分間攪拌する。酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物を添加した後、15~20分間攪拌することが好ましい。本発明では、シリカがナノシリカであり、粒径が100nm~500nmであるものが好ましい。炭化ケイ素がナノ炭化ケイ素であり、粒径が100nm~500nmであるものが好ましい。酸化ベリリウムが純度99.95%以上であることが好ましく、この物は猛毒であるため、生産安全管理を強化する必要がある。工程(3)において、シリカ、炭化ケイ素及び酸化ベリリウムの合計の使用量が32~35重量部であり、使用される場合、酸化ベリリウムの使用量が5~15重量部が好ましい。工程(3)において、シリカを添加する場合は、段階的に添加することが好ましい。工程(3)において、組成物Bの使用量が、工程(2)で得られた組成物Bの合計量である。本発明では、酸化ランタン、セリウム酸化物、ランタンセリウム酸化物は、超微細酸化ランタン、超微細セリウム酸化物、超微細ランタンセリウム酸化物(好ましくは粒子径1μm~5μm)である。工程(3)において、酸化ランタン、セリウム酸化物及びランタンセリウム酸化物から選ばれる1種以上を選択して使用してもよく、酸化ランタン、セリウム酸化物及びランタンセリウム酸化物の合計の使用量が0.5~0.7重量部である。
【0044】
PIは、理想的な高絶縁、帯電防止、高圧強耐性などの精密な可塑性を有し、不足点が、高分子重合特性によって決められる高温限界である。本発明は、PIミクロン級の精密加工の可塑性及び無機物の高低温に耐える高強度を得て、そして高温焼結下で収縮変形しないために、配合中のイオンキレートと金相構造により、成分を調整し続けて、硬化過程において温度との相互関連関係中に質量比重が軽量化された高強度と耐高温特性を実現する。
【0045】
本発明に好適なPVAcは、工業レベル又はそれ以上のレベルのPVAcである。PVAcの純度は、99.9%以上が好ましい。本発明に好適なPVAcの特性粘度は、0.7~0.9dL/gが好ましい。本発明では、PVAc溶液はPVAcの水溶液である。工程(4)において、PVAcの使用量が12~13重量部、即ち、用いられるPVAc溶液に含まれるPVAcの重量部が12~13重量部である。工程(4)において、用いられるPVAc溶液の固形分含有量は70~80wt%、例えば73~77wt%程度である。工程(4)において、組成物Aの使用量が、工程(1)で得られた組成物Aの総量である。工程(4)において、組成物Aを添加した後、好ましくは15~25分間攪拌する。工程(4)において、組成物Cの使用量が、工程(3)で得られた組成物Cの総量である。工程(4)において、組成物AとPVAc溶液の混合物を、組成物Cと35~45℃及び-94kPa~-101kPaの真空下で混合することが好ましい。いくつかの実施形態では、35~45℃および-94kPa~-101kPaの真空下で、組成物AとPVAc溶液の混合物を、工程(3)で得られた組成物Cに添加する。組成物AとPVAc溶液の混合物を組成物Cと混合する際の攪拌回転数は、8~12r/minであることが好ましい。いくつかの実施形態では、組成物AとPVAc溶液の混合物を組成物Cと混合する際に、極性溶媒を添加して、PMTS材料組成物の粘度を90000±10000cPに調整する。好ましい実施形態では、組成物AとPVAc溶液の混合物を組成物Cと混合する際、極性溶媒を加え、45~52℃に加熱し、8~12r/minの回転速度で攪拌してPMTS材料組成物の粘度を90000±10000cPに調整する。本発明のPMTS材料組成物は、白色、無気泡の、一定の粘度がある固液混合物であり、粘度が90000±10000cPであることが好ましい。本発明のPMTS材料組成物は、粘度が90000±10000cPの状態で安定的に貯蔵できる。
【0046】
本発明は、有機-無機複合体の改良特性に基づき、有機相と無機相成分を調整することにより、有機-無機イオンの間のキレート親和反応でPMTS材料組成物を得る。PMTS材料組成物は、PIの水平延性を有し、十数ミクロン厚さのフィルムを得ることができる。50℃~60℃の脱溶媒処理により、3つの異なる特性の応用:1.液体から可塑固相になる、PI曲げ可能特性の応用、2.ダンプされた後、加工可能な精密ミクロン級構造がPI可塑特性を持つ応用、3.ダンプされた後から高温焼結まで、軽量化の高硬度精密応用、を得ることができる。
【0047】
PMTS材料組成物を常温常圧で硬化させることにより、必要に応じて以下の製品/材料:1.数十ミクロンから数百ミクロン厚さがある性能フィルム、2.射出成形又は高温焼結によって得られる各種精密部品、3.高温焼結後に精密加工用の各種の型材、4.精密加工と高温焼結成形により得られる本発明の高圧水素貯蔵構造、を製造できる。
【0048】
PMTS材料組成物は、40~45℃硬化、50~60℃加熱処理及び360~480℃高温処理により、固体半製品を得ることができる。したがって、本発明は、PMTS材料組成物を40~45℃、50~60℃、360~480℃の3段階処理して得られた固体半製品も含む。本発明では、40~45℃硬化の時間は200~250minが好ましく、40~45℃硬化時の環境湿度は8~12%が好ましい。本発明では、50~60℃加熱処理の時間が50~70minであることが好ましく、360~480℃加熱処理の時間が50~70minであることが好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物を、40~45℃で200~250min硬化させ、その後50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70minダンプ(ダンプとは、高分子材料が高温下で気相に分解することを意味する)し、固体半製品を得る。
【0049】
PMTS材料組成物は、40~45℃硬化、50~60℃加熱処理、360~480℃高温処理及び850~900℃高温焼結により、金相構造を持つ半製品を得ることができる。したがって、本発明は、PMTS材料組成物を40~45℃、50~60℃、360~480℃及び850~900℃の4段階処理して得られた金相構造を持つ半製品も含む。本発明では、850~900℃加熱処理の時間が80~100minであることが好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物を、40~45℃で200~250min硬化させ、その後50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70min処理し、その後850~900℃で80~100min焼結して、金相構造を持つ半製品を得る。
【0050】
PMTS材料組成物は、40~45℃硬化、50~60℃加熱処理、360~480℃高温処理、850~900℃高温焼結及び1400~1450℃高温焼結により、PMTS材料を得ることができる。したがって、本発明のPMTS材料は、PMTS材料組成物を40~45℃、50~60℃、360~480℃、850~900℃及び1400~1450℃の5段階処理して得られることができる。本発明では、1400~1450℃加熱処理の時間が250~350minであることが好ましい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物を、40~45℃で200~250min硬化させ、その後50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70min処理し、その後850~900℃で80~100min焼結し、その後1400~1450℃で250~350min焼結して、PMTS材料を得る。第5段階として1400~1450℃焼結の方法を用いてPMTS材料を製造する際に、用いられるPMTS材料組成物は、本文に記載の原料として、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物、シリカ、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、酸化イットリウム、チタニア、酸化ハフニウム及び任意選択の塩化カルシウムを含むPMTS材料組成物であってもよく、上記原料中のシリカの一部又は全部が炭化ケイ素に置換され、チタニアの一部又は全部が炭化チタンに置換され、酸化ハフニウムの一部又は全部が炭化ハフニウムに置換され、及び/又はさらに炭化亜鉛を含んで得られたPMTS材料組成物であってもよい。原料中のシリカの一部又は全部が炭化ケイ素に置換され、原料中のチタニアの一部又は全部が炭化チタンに置換され、原料中の酸化ハフニウムの一部又は全部が炭化ハフニウムに置換され、および/又は原料中にさらに炭化亜鉛を含む場合、炭化物の合計の使用量が原料中の炭化物と酸化物の合計の使用量の45%を超えないことが好ましく、30%を超えないことがより好ましい。
【0051】
本文では、硬化、硬化処理、加熱、加熱処理、高温処理、高温焼結、焼結、焼結処理などの類似用語は、すべて、一定の温度で材料を熱処理する意味を表現するために使用されるという意味があり、通常は、一定の温度の環境にしばらく放置される。本発明では、「50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70min処理し」とは、材料を50~60℃の環境に50~70min放置した後、360~480℃の環境に移して50~70min放置することを意味し、以下のように類推する。本発明では、加熱/高温/焼結処理ための装置は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の加熱/高温/焼結処理は、トンネル窯で行われ、トンネル窯では、予め各段の窯体温度を設定し、段ごとに焼結する。例えば、PMTS材料を製造する際、トンネル窯がそれぞれ50~60℃、360~480℃、850~900℃、1400~1450℃に設定された4段を含んでもよい。
【0052】
PMTS材料組成物は、40~45℃硬化、50~60℃加熱処理、360~480℃高温処理、850~900℃高温焼結、3000℃±100℃焼結によっても、PMTS材料を得ることができる。したがって、本発明のPMTS材料は、PMTS材料組成物を40~45℃、50~60℃、360~480℃、850~900℃、および3000℃±100℃の5段階処理により得られることができる。本発明では、3000℃±100℃焼結の方式は、特に制限されず、温度が3000℃±100℃に達すればよく、例えば、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、略称SPS)プロセスで3000℃±100℃焼結を行ってもよい。本発明に好適なSPSは、例えば直流型放電プラズマ焼結(Direct Current Sintering、DCSと略称する)など、公知の種々のSPS技術であってもよい。本発明では、SPSで3000℃±100℃焼結を行う場合、焼結時間が通常1~10s、好ましくは3~6sである。他の焼結方式で3000℃±100℃焼結を行う場合、焼結時間は、実際の状況に基づいて決めてもよい。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物は、40~45℃で200~250min硬化させ、その後50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70min処理し、その後850~900℃で80~100min焼結し、その後3000℃±100℃で焼結してPMTS材料を得る。第5工程として3000℃±100℃焼結の方法でPMTS材料を製造する際に、用いられるPMTS材料組成物は、本文に記載の原料として、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物、シリカ、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、酸化イットリウム、チタニア、酸化ハフニウム及び任意選択の塩化カルシウムを含むPMTS材料組成物であってもよく、好ましくは、上記原料中のシリカの一部又は全部が炭化ケイ素に置換され、チタニアの一部又は全部が炭化チタンに置換され、酸化ハフニウムの一部又は全部が炭化ハフニウムに置換され、及び/又は、より好ましくは、さらに炭化亜鉛を含んで得られたPMTS材料組成物である。本発明では、PMTS材料組成物の原料に酸化物が対応な炭化物に置換された(例えば、シリカが炭化ケイ素に置換され、チタニアが炭化チタンに置換され、酸化ハフニウムが炭化ハフニウムに置換されたもの)、およびPMTS材料組成物の原料に炭化亜鉛を導入する場合、これらの炭化物は、焼結中に微小電極とすることができ、それにより、3000℃±100℃焼結の進行、特に3000℃±100℃でのSPS焼結の進行に有利になる。原料中の一部又は全部が炭化ケイ素に置換され、原料中のチタニアの一部又は全部が炭化チタンに置換され、原料中の酸化ハフニウムの一部又は全部が炭化ハフニウムに置換され、および/又は原料中にさらに炭化亜鉛を含む場合、炭化物の合計の使用量が原料中の炭化物と酸化物の合計の使用量の45%を超えないことが好ましく、30%を超えないことがより好ましい。
【0053】
PMTS材料組成物で本明細書に記載の固体半製品、金相構造を持つ半製品、及びPMTS材料を製造する場合、必要に応じてPMTS材料組成物の粘度を調整した後、上記の40~45℃硬化及び後続処理を行ってもよく、例えば、加熱によりPMTS材料組成物の粘度を20000cP±10000cPに調整した後、上記の40~45℃硬化及び後続処理を行ってもよいことが理解できる。
【0054】
PMTS材料組成物、本発明の固体半製品、本発明の金相構造を持つ半製品及びPMTS材料は、レジスト/精密プレス/3Dプリント、耐高温、耐強酸アルカリ、耐高圧強、難燃断熱、強引張張力、帯電防止、高絶縁、高硬度及び/又は可塑性を持つ、精密なミクロン級微孔材料及び特殊構造の製造に適用する。本発明のPMTS材料は、さらに、水素と化学反応しない特徴もある。
【0055】
本発明の高圧水素貯蔵構造の材質は、PMTS材料であり、PMTS材料組成物をポリマー繊維に含浸した後、硬化させ、焼結して得られるものであるので、PMTS材料水素貯蔵構造とも称される。具体的には、高圧水素貯蔵構造は、PMTS材料組成物でポリマー繊維を含浸した後、40~45℃で200~250min硬化させ、その後50~60℃で50~70min処理し、その後360~480℃で50~70min処理した後、その後850~900℃で80~100min焼結し、その後1400~1450℃で250~350min又は3000℃±100℃で焼結して得られてもよい。
【0056】
本発明の高圧水素貯蔵構造は、ハニカム構造を有する(図1に示す)。PMTS材料組成物でポリマー繊維を含浸する場合、ポリマー繊維が繊維束の形で含浸される。含浸後の繊維束中の各単本繊維の表面が、一定の厚さがあるPMTS材料組成物に被覆され、且つ、隣接する各単本繊維が互いに接着されるため、各単本繊維は、繊維束の横断面にハニカム状に配列される;このPMTS材料組成物に含浸された繊維束は、焼結された後、ポリマー繊維が気相に分解され、ハニカム構造の微孔(単孔管とも称される)が残され、繊維の表面のPMTS材料組成物がPMTS材料を形成してハニカム構造の孔壁を形成する。本文では、ハニカム構造は、通常の意味を持ち、断面から見ると、各微孔の周囲に6つの隣接する微孔が緊密に配置される。本文では、微孔は、長径比を有する単孔管であり、微孔の直径(即ち単孔管の内径)が通常100~200μmであることが理解できる。本発明の水素貯蔵構造が備える上記のハニカム構造及び微孔構造は、ハニカム微孔構造とも称される。本文では、隣接する単孔管の管壁が融合しており、微孔の管壁厚とは、2つの隣接する単孔管の間の融合した管壁厚を意味する。
【0057】
本発明のPMTS材料の水素貯蔵構造は、以下の突出した利点を具備する:質量比重が軽く、可塑精度誤差が±2μm、孔径が150μm、管壁厚が35μmであるミクロ微孔ハニカム構造の限界圧強>200MPa、ロックウェル硬度86~89、耐高温>1900℃、耐低温<-260℃であり、熱伝導が低く、高温断熱、強酸アルカリに強く、高密度水素作業雰囲気や複雑な動的環境の下でも、PMTS材料の水素貯蔵構造が非常に安定である。
【0058】
現在、材料分野で集束ハニカム構造を実現でき、一定の圧強を有する材料としては、石英ガラス毛細管、4種類の繊維、水素と反応しない金属系材質、有機高分子系毛細管、無機セラミックスミリメートル級ハニカム構造などの完成品材料が挙げられる。本発明は、上述の材料を研究した後、これらの材質はそれぞれ利点があるが、その材質やプロセスによって水素雰囲気と高圧強下での不良が決められ、具体的には、水素化、老化しやすく、水素敏感的に温度上昇反応し、質量密度比重が大きく、完成品に瑕疵があるなどの多数の不確定要素、高い瑕疵除去コスト、高い材料コスト及び高い再加工コストなどのいくつかの大きな問題が存在することを発見した。本発明は、所望の最適な材料特性及びミクロン級微孔ハニカム構造の制御可能な品質に基づいて、本発明の高圧水素貯蔵構造を構成する。
【0059】
本発明では、微小体積と質量密度比との圧強関係に基づいて、信頼性が高い、高水素密度、高安全性、高安定性の貯蔵構造を構築し、有機-無機の最適化によって実現されるPMTS材料特性は、肝心な決定要素である。水素貯蔵容器の高圧動作のハイリスク性に対して、開発されたPMTS材料とミクロン級孔径とを結合して実現しうる高安全、安定性のハニカム構造に対して、加工技術の研究を行った:PMTS材料を、ロックウェル硬度が86~89、直径が約25mmである型材に、約14000個の微孔からなる、孔径が約150μm、孔径壁厚が約35μm、深さは約600mmであるハニカム構造に加工することを実現しようとすると、従来の各種ミクロン級孔径の精密加工技術では実現が困難である。本発明が研究開発により実現した解決方法は、以下の通りである:PMTS材料組成物の緻密な液相接着性と、緻密な金相構造の高温溶融焼結による高精度及び数十ミクロン壁厚の高強度によって、ミクロン級直径の高分子重合繊維自身が占有する空間体積を骨格とし、高温熱分解によりミクロン空間を形成するとともに、PMTSの硬化されたミクロン級被覆層が高温焼結によりミクロン空間が緊密に相互接続された隔離管壁を形成し、これにより、ミクロン級孔径ハニカム構造を実現できた。
【0060】
本発明のPMTS材料の水素貯蔵構造は、以下の工程を含む方法により得られる。
(1)PMTS材料組成物でポリマー繊維束を含浸する工程、
(2)PMTS材料組成物に含浸されたポリマー繊維束を、40~45℃で硬化させ、その後50~60℃で処理し、その後360~480℃で処理し、その後850~900℃で焼結し、その後1400~1450℃で焼結又は3000℃±100℃で焼結する工程。
これらの工程により、PMTS材料の水素貯蔵構造が得られる。
【0061】
工程(2)において、40~45℃硬化、50~60℃処理、360~480℃処理、850~900℃焼結、1400~1450℃焼結及び3000℃±100℃焼結の好ましいプロセス条件(例えば時間)は、上記のいずれかの実施形態に記載の通りである。
【0062】
本発明が直面する多くの克服しようとする加工難題の中で、高温焼結収縮変形及び高残留率は、克服の主要な難点であり、以下の要求を実現する必要がある:高温焼結過程に比較的に高い耐安定性があり、金相により比較的に軽い質量比重を実現し、耐高温が1900℃より大きく、耐低温が-260℃より小さく、孔径100~150μm/管壁厚35μmの水素貯蔵構造の圧強限界が200MPaより大きく、形成されたハニカム力学構造は強い引張張力を持ち、ロックウェル硬度が86程度に達し、比較的高い断熱係数を持つ必要がある。本発明では、工程(2)のプロセスパラメータの最適化によって、上述の要求を実現する。
【0063】
いくつかの実施形態では、適切な接着性及び流動性を提供するために、まず、加熱によりPMTS材料組成物の粘度を200000cP±10000cPに調整し、そして、ポリマー繊維束を含浸する。好ましくは、PMTS材料組成物を40~45℃で処理してその粘度を200000cP±10000cPに調整する。いくつかの実施形態では、PMTS材料組成物の初期粘度が90000±10000cPである。PMTS材料組成物の使用量が、通常、ポリマー繊維を完全に含浸できる量であればよい。いくつかの実施形態では、ポリマー繊維がPMTS材料組成物に完全に含浸された後、PMTS材料組成物の液面が繊維より約10mm高い。
【0064】
本発明に好適なポリマー繊維の材質は、融点が150℃~380℃であれば特に限定されない。ポリマー繊維は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ABSプラスチック、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA、ナイロン、ナイロン)などのポリマーの連続繊維、フィラメントを含むが、これらに限定されない。ポリマー繊維の直径は、ミクロン~ミリメートルの範囲、例えば70μm~5000μmであってもよい。所望の細孔の大きさに応じて適切な直径のポリマー繊維を選択してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー繊維の直径が、100~150μm、例えば140~150μmである。ポリマー繊維の長さが10mm以上であることが好ましい。ポリマー繊維の長さの上限は、PMTS材料組成物に含浸されたポリマー繊維束が高温焼結下で変形しなければ特に制限されない。好ましくは、本発明では、直径誤差が小さく、不純物がなく、可撓性が一致するポリマー繊維を使用する。
【0065】
繊維束中の繊維の本数は特に制限されないが、例えば1万本~20万本であってもよい。含浸前の集束体積と含浸後の集束体積との関係は、含浸後の集束体積=含浸前の集束体積+集束含浸被覆層体積である。PMTS材料組成物でポリマー繊維集合体を含浸する方法は、含浸後の繊維集合体中の各単本繊維の表面が一定の厚さがあるPMTS材料組成物に被覆し、且つ、隣接する各単本繊維が互いに接着されば特に制限されない。いくつかの実施形態では、繊維束の両端をロックする(例えば、サスペンションバイスでロックする)、繊維集合体の両端が、それぞれに、所定の長さ(例えば、50mm程度)の繊維集合体を含浸せず、繊維集合体をPMTS材料組成物に含浸し、両端を中間へ推進させて繊維集合体を弛緩させ、各単本繊維の表面が一定の厚さがあるPMTS材料組成物に被覆されるまで何度も繰り返す;集束繊維を取り出し、両端を緊張させ、長さの2分の1でせん断し、1端を垂直に吊るし、PMTS材料組成物の平衡張力と重力の液滴過程により、集束を自動的に接着させる。本発明では、PMTS材料組成物に含浸された繊維束のうち、各単本繊維の被覆層の平均厚さは、25~30μmであることが好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、工程(2)において、PMTS材料組成物に含浸された繊維束を、管状金型に充填した後、40~45℃で硬化させ、その後50~60℃で処理を行い、その後360~480℃で処理を行い、その後850~900℃で処理を行い、その後1400~450℃で焼結又は3000℃±100℃で焼結を行うことにより、水素貯蔵構造を有する単管(水素貯蔵単管とも略称される)を製造することができる。PMTS材料が、常温常圧で硬化しうるため、基本的に硬化しないときにPMTS材料組成物に含浸された繊維束を管状金型に充填する必要があることが理解できる。本発明では、管状金型の材質は、本発明のPMTS材料又はPMTS複合材料であることが好ましい。本発明のPMTS複合材料は、本発明のPMTS材料と補強フィラーを含むか、又は、本発明のPMTS材料と補強フィラーからなるものであって、本発明のPMTS材料組成物に補強フィラーを添加して本文に記載の40~45℃、50~60℃、360~480℃、850~900℃、および1400~1450℃の5段階処理を経て得られる。本発明のPMTS複合材料に好適な補強フィラーは、PMTS材料の比重を軽減させ、および/又は強度を向上させるために、公知の各種の軽量で強度が高い補強フィラーであってもよい。補強フィラーは、例えば炭素繊維であってもよい。補強フィラーの添加量は、必要に応じて決められてもよい。本発明に好適な管状金型の形態は、PMTS材料組成物に含浸された繊維束の形状を装填して固定できれば特に限定されないが、例えば、管状金型は、内管とスリーブとを含んでもよい。管状金型の断面形状は、特に限定されないが、例えば、六角形、円形、矩形、四角形、三角形、凹凸楔合形、平行多角形などであってもよい。装填を容易にするために、内管は2半に分けてもよい;2つの内管にそれぞれ集束繊維を敷き詰め、平らにした後、2つの内管を接着して装填を完了する。内管壁厚は、150μm~300μmであってもよい。内管の内部空間の断面面積は、69mm~1940mmであることが好ましく、内管の外径は、円形断面を例に、10mm~50mmであることが好ましい。管状金型の長さが、ポリマー繊維の長さに合い、通常に充填されたポリマー繊維の長さよりやや小さいことが理解できる。スリーブの両端が開口する。スリーブの断面形状及び大きさ、長さは、内管の断面形状及び大きさ、長さに合い、例えばスリーブの断面形状が通常内管の断面形状と同じであり、スリーブの内径が通常に内管の外径よりやや大きく、スリーブの長さが内管の長さと同じであってもよいことが理解できる。スリーブの壁厚は、1.0mm~2.5mm、例えば1.5mm程度であることが好ましい。いくつかの実施形態では、内管をスリーブに入れた後、PMTS材料組成物(例えば粘度1000000±20000cPのPMTSブロック液、PMTS材料組成物から溶媒を除いて粘度を調整して得られる)で密封し、プラスチック封止フィルムを被覆し、40~45℃硬化及びその後の処理を行う。工程(2)において、50~60℃処理の前に、必要に応じて集束繊維の非含浸部分を除去してもよいことが理解できる。
【0067】
PMTS材料組成物に含浸されたポリマー繊維の集束は、工程(2)により、本発明の高圧水素貯蔵構造を得、又は、管状金型に充填した場合、工程(2)により、本発明のハニカム水素貯蔵構造を有する単管(モノ管と略称される)を得る。したがって、本発明の単管は、本発明の高圧水素貯蔵構造及び単管管壁(別名シェルとも称され、単管を製造する際に用いられる管状金型から)を含む。焼結後、高圧水素貯蔵構造は、管状金型(例えば、内管とスリーブ)と一体化される。
【0068】
本発明の高圧水素貯蔵構造は、微孔の壁厚が35~40μmであることが好ましく、微孔径が140~150μmであることが好ましい。本発明の単管は、六角形、円形、矩形、四角形、三角形、凹凸楔合形、平行多角形などを含むがこれらに限定されない複数の管型に製造され、且つ、特殊な設計及び装備に適用することができる。単管の管体長さは、800mm以内であることが望ましい。単管の高圧水素貯蔵構造の断面面積は特に制限されず、断面が円形である単管を例に、例えば、移動水素貯蔵交通手段に用いられる場合、単管の高圧水素貯蔵構造の直径を10mm~50mmの間で最適化的に選択してもよい;例えば、大型水素貯蔵ステーション及び艦船、高速鉄道などの大型移動ツールを含む、水素貯蔵移動輸送及び移動水素化ステーションに応用される場合、その直径は200mmに拡大してもよい。単管内の高圧水素貯蔵構造の大きさに応じて、単管の管壁厚が1~15mm、例えば1~5mmであってもよい。いくつかの実施形態では、図2に示すように、本発明の単管は、円形管であり、その外径が25mm、内径(高圧水素貯蔵構造の直径)が22mm、長さが600mm、微孔孔径が150μm、壁厚が35μm、単孔(単孔管とも称される)の容積が10.5975mm、単孔管の数が約14000個、単管の水素貯蔵総容積が148365mmである。
【0069】
本発明のPMTS材料の水素貯蔵構造は、70MPaの水素貯蔵需要を満たすことができ、特に高圧気体水素の貯蔵に適用する。また、本発明のPMTS材料は、優れた耐低温性能を有し、PMTS材料を、保温湯たんぽのような二層真空構造に製作し、且つ高断熱材料で補助することにより、液体水素の超低温保存に適用することができる。したがって、本発明は、本発明のPMTS材料の高圧水素貯蔵及び液体水素保存における使用も含む。
【0070】
前記の単管の作製が完了した後、設定される単管集束の形状及び直径に基づいて、N個の単管をPMTS整合型管に入れて一つの集束管にさせ、N個の集束管をハニカム構造のモジュールボックスに配置することにより、総合性能に優れたモジュールが得られる;N個のマルチモジュールは、所望の容量及びさまざまな形状に非常に柔軟に組み合わせることができる。多くのN個のモジュールを並列接続すると、所望の大規模な容量を形成できる。小容量、高圧強、高安全、安定性のミクロン級微孔ハニカム構造の単量体水素貯蔵管を用い、N管集束によりモジュール(以下モジュールという)に組み合わせることにより、所望の任意容量に組み合わせることができる。これは、材料と構造性能によって高安全性と高安定性を実現する高圧水素貯蔵方法である。どんな水素貯蔵容量も、N個の単管を集束管に組み合わせ、N個の集束管をモジュールに組み合わせることにより実現することができる。モジュールの安全な水素貯蔵圧強が70MPa~110MPaで、圧強限界が200MPaより大きく、100MPaでの水素貯蔵安全係数が2.3倍になる。
【0071】
本発明のPMTS材料は、PMTS材料の全質量で、通常、シリカ15~50wt%、遷移金属酸化物0.5~5wt%、金属酸化物45~85wt%、および不可避的不純物を含む。遷移金属酸化物としては、酸化ランタン、セリウム酸化物、ランタンセリウム酸化物及び酸化イットリウムから選ばれる1種以上を含んでもよく、好ましくは、酸化ランタン、セリウム酸化物及びランタンセリウム酸化物から選ばれる1種以上及び酸化イットリウムを含む。場合によっては、PMTS材料中に、酸化ランタン、セリウム酸化物及びランタンセリウム酸化物の合計の含有量が0.2~1wt%であることが好ましく、酸化イットリウムの含有量が0.5~5wt%%であること好ましい。金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ハフニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛及び酸化ベリリウムから選ばれる1種以上を含んでもよく、好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ハフニウム、酸化カリウム及び/又は酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、任意選択の酸化亜鉛、任意選択の酸化カルシウム、及び任意選択の酸化ベリリウムを含んでもよい。PMTS材料中に、含有される場合、アルミナの含有量が15~30wt%、ジルコニアの含有量が15~35wt%、チタニアの含有量は5~15wt%、酸化ハフニウムの含有量が0.1~10wt%、酸化カリウムと酸化ナトリウムの合計の含有量が0.1~1wt%、酸化マグネシウムの含有量が0.1~0.5wt%、酸化バリウムの含有量が1~2wt%、酸化カルシウムの含有量が0.05~1wt%、酸化亜鉛の含有量が0~10wt%であることが好ましく、酸化ベリリウムの含有量が1~20wt%であることが好ましい。
【0072】
好ましくは、PMTS材料は、PMTS材料の全質量で、シリカ及び/又は酸化ベリリウム33~39wt%、アルミナ17~22wt%、ジルコニア20~28wt%、チタニア6~10wt%、酸化ハフニウム0.25~0.5wt%、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.45~0.9wt%、酸化イットリウム1~2.7wt%、酸化カリウム及び/又は酸化ナトリウム0.12~1wt%(例えば、酸化カリウム0.1~0.2wt%及び酸化ナトリウム0.5~0.9wt%)、酸化マグネシウム0.18~0.4wt%、酸化バリウム1~1.7wt%、酸化亜鉛0~10wt%、任意存在の酸化カルシウム0.07~0.7wt%、及び不可避的不純物を含む、又はからなる。本発明では、不可避的不純物は、通常、炭素、酸化クロム及び三酸化二鉄から選ばれる1種以上を含み、水銀、砒素、リン、マンガン、銅、亜鉛などの元素をも含んでもよい。含有される場合、炭素の含有量は、PMTS材料の全質量で、通常0.013~0.015wt%である。含有される場合、酸化クロムの含有量は、PMTS材料の全質量で、通常0.01~0.02wt%である。含有される場合、三酸化二鉄の含有量は、PMTS材料の全質量で、通常0.01~0.015wt%である。三酸化二鉄及び酸化クロムは、原料に含まれる微量成分によるものであり、炭素は、ポリマー又は炭化物が焼結された後に残されるものであることが理解できる。いくつかの実施形態では、PMTS材料は、PMTS材料の全質量で、炭素0.013~0.015wt%、三酸化二鉄0.01~0.015wt%、酸化クロム0.01~0.02wt%を含む。本発明では、不可避的不純物中に、炭素、酸化クロム及び三酸化二鉄以外の不純物の合計の含有量は、通常PMTS材料の総質量の0.01wt%を超えないが、このような不純物は、例えば水銀、砒素、リン、マンガン、銅、亜鉛などの元素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PMTS材料に含まれるシリカ及び/又は酸化ベリリウム33~39wt%は、シリカ33~39wt%、又は、シリカおよび酸化ベリリウム33~39wt%であってもよく、その中、酸化ベリリウムの含有量がPMTS材料の全質量の3~15wt%、例えば3~13wt%、5~15wt%であることが好ましい。
【0073】
いくつかの実施形態において、PMTS材料は、炭化亜鉛を含まないPMTS材料組成物から調製され、このようなPMTS材料は、PMTS材料の全質量で、シリカ及び/又は酸化ベリリウム37~39wt%、アルミナ19~22wt%、ジルコニア23~28wt%、チタニア7~10wt%、酸化ハフニウム0.3~0.5wt%、酸化ランタン、セリウム酸化物及び/又はランタンセリウム酸化物0.5~0.9wt%、酸化イットリウム1.2~2.7wt%、酸化カリウム及び/又は酸化ナトリウム0.12~1wt%(例えば、酸化カリウム0.1~0.2wt%及び酸化ナトリウム0.5~0.9wt%)、酸化マグネシウム0.2~0.4wt%、酸化バリウム1.2~1.7wt%、任意存在の酸化カルシウム0.08~0.7wt%、及び不可避的不純物を含む、又はからなる。これらの実施形態では、PMTS材料に含まれるシリカ及び/又は酸化ベリリウム37~39wt%は、シリカ37~39wt%、又はシリカおよび酸化ベリリウム37~39wt%であってもよく、その中、酸化ベリリウムの含有量が、PMTS材料の全質量の5~18wt%、例えば7~18wt%、5~15wt%であることが好ましい。
【0074】
本発明と近似した実現方案:ミクロン級ガラス毛細管は、一般的に非圧力用途に応用され、高圧水素貯蔵の面でも、一定の圧強がある集束水素貯蔵材料としてもよい。その利点:70MPaの水素貯蔵需要を満たすことができ、圧強限界140MPa、安全係数2である。欠点:1.材質によって圧強上限が決められ、発展潜在力がない;2.原料及びプロセスによる不純物/気泡/亀裂の瑕疵を解決することが難しく、肉眼では検出しにくい瑕疵率が非常に高い;1個の毛細管上の瑕疵が高圧下で発生された崩壊は、公共水素貯蔵システム全体にわたって漏れを招き、数十万個の毛細管が集積された水素貯蔵容器では、品質を制御することが難しく、ハイリスクの危険性がある;3.ミクロン級孔径のガラス毛細管を水素貯蔵容器に応用することによる高コスト=(1)毛細管1個当たりの応用コスト×数十万個の毛細管+(2)毛細管瑕疵の取り上げコスト+(3)毛細管1個当たりの高温封口コスト及び封口瑕疵の取り上げコスト+(4)N個の毛細管の接着集束コスト+(5)時間コスト。
【0075】
本発明は、ミクロン級ガラス毛細管の方案に比べて、以下の突出した利点を有する:
【0076】
1.新型の高圧水素貯蔵構造に指向性設計されたPMTS材料と特殊なプロセスで作られたミクロン孔径が一体化されたハニカム水素貯蔵構造の単管は、インテリジェント化高温焼結により、比重が軽く、高光潔度、高精密度と高硬度の広い応用があり、プロセス品質は、比較的に優れた一致性がある;
【0077】
2.PMTSミクロン孔径ハニカム構造の各方面の性能は、石英毛細管の限界指標の2倍以上を超え、そのハニカム構造の150μm孔径、35μm壁厚でのマイクロチューブ圧強>200MPa;
【0078】
3.生産コスト比較:1個の直径25mmの微孔ハニカム構造の単管は、孔径150μmの微小孔数が14000個、長さが600mmであり、量産パイプラインでの生産コストは、孔径150μm/長さ1000mmの石英毛細管1本のコストに比べて、石英毛細管コストの3分の1である;
【0079】
4.PMTS材質の金相構造の分析及び老化試験:PMTS微孔ハニカム構造の水素貯蔵容器は、連続使用寿命が20000時間より大きく、石英毛細管の連続使用寿命8000時間より2倍以上高い。
【0080】
本発明は、以下の利点を有する:
【0081】
1.本発明は、軽質、耐高圧、耐高温、耐強酸塩基、高安全安定性がある水素貯蔵容器材料PMTS(以下PMTSと略称され、有機高分子PI+無機物金相構造と略称される)を提供し、輸入高質炭素繊維の代わりに、より高い水素貯蔵質量密度を実現する。
【0082】
2.PMTSの上に、ミクロン微孔が一体化されたハニカム高圧水素貯蔵構造を発明し、ミクロン孔径の微小な水素貯蔵空間により水素の動的活発な衝突による連鎖劣化反応を制限し、複雑な動的作業環境下で高安全性と高い安定性がある70MPa~110MPaの高圧水素貯蔵能力を実現し、且つ2倍以上の安全係数を有し、同等の圧力、同等の容量の炭素繊維容器に比べて、体積が50%減少し、容器の被覆層CFRPの形が大きく不器用な現状を覆した。本発明のミクロン級微孔ハニカム高圧水素貯蔵構造は、非常に便利に各種形状に形成でき、非常に強い使用利便性と柔軟性を有し、わが国の国情により適用できる、広大な発展の見通しを持つ参考技術とすることができる。
【0083】
3.PMTS材料及びミクロン孔径ハニカム構造の突出した利点:
(1)質量比重:5.2g/cm程度に達することができる;
(2)ガス充填が速い:同じ容量でガス充填は数秒で、5kg/3minのガス充填基準より大幅に小さい、
(3)体積が小さくて微小化することができる:ミクロン級微孔ハニカム構造は、超強い高圧水素貯蔵能力を持ち、厚くて不器用な炭素繊維被覆層を省略し、水素貯蔵モジュールは、同じ圧力容量の炭素繊維容器の体積より半分小さい、水素貯蔵単管は、配置柔軟性があり、科学的な設計により、飛行機の翼、車室板、車底板、いかなる板壁にも合理的に配置されると、水素貯蔵容器はほとんど見られない。ミクロン微孔ハニカム高圧水素貯蔵構造は、微小化でき、微型水素燃料電池と結合(結合体積は、シガレットケースの大きさのように)、装着式の微型移動給電装置とすることができる、
(4)硬度:ロックス86~89、
(5)高い圧強:PMTS材質の優秀性とミクロン微孔ハニカムネットの力学構造により、70MPa~110MPaの水素貯蔵圧強を容易に実現でき、安全係数は2.3倍に達し、質量比重が大きい石英集束毛細管と高圧水素貯蔵比較試験を行ったところ、石英集束毛細管が140MPaで破裂したが、PMTS微孔ハニカム構造単体管が200MPaに達しても許容余裕がある、
(6)大きい水素貯蔵容量:微小体積で耐高強圧、高密度に水素貯蔵でき、単体管の並列集束により形成されたモジュールを、任意個数のモジュールと並列に接続すると、任意容量の水素移動ツール、高密度水素輸送、移動水素添加ステーション、及び大規模な水素貯蔵ステーションを実現することができる;
(7)強い安定性:モジュールの引張張力が3200MPaであり、耐高温>1900℃、耐酸塩基pHが3~14であり、予見できない不可抗力でも良好な安全安定性がある;
(8)高い安全性:PMTS微孔ハニカム構造は、その密布した微孔により高圧水素注入気流の衝撃下での流体乱流を分解するので、高圧温度上昇は発生しない。その微孔ハニカム構造は、いかなる動態下でも効果的に水素の動態活性化エネルギーを制限し、予見できない超高圧強による内応力がハニカム構造中に即ち瞬時に分解しても、高圧の高流速温度上昇による内応力の危害を効果的に回避でき、それによって容器の品質安定性と高安全性を保証する;
(9)使用寿命:連続使用寿命が、20000時間以上であり、石英毛細管の連続使用寿命の約3倍である;
(10)強い経済性:構造が堅固で、瑕疵率が極めて小さく、使用寿命が長く、コストは、炭素繊維容器の30~40%にすぎない。
【0084】
4.本発明のPMTS及び微孔ハニカム構造から形成された集束水素貯蔵モジュールは、軽量化、小体積で、100MPaを超える高安全、高安定性がある高圧水素貯蔵技術を実現し、CFRPに依存する中空水素貯蔵の品質密度の技術路線を覆した。CFRP技術の70MPa高圧水素貯蔵における応用限界に対して、PMTS及び微孔ハニカム構造は、高圧水素貯蔵能力では、大きな品質向上の潜在力及びより多い水素エネルギー応用分野がある。本発明の微孔単管集束モジュールは、いかなる容量や外形の制限にも拘わらない。本発明の高安全/高安定性の水素貯蔵方法は、その応用効果及び経済性が水素エネルギーの普及応用を極めて促進することができる。本発明は、特殊分野において各種の複雑な作業環境に適任することができ、微小型化水素燃料電池の移動発電分野において更に広い応用潜在力がある。
【実施例
【0085】
以下、本発明を具体的な実施形態として説明するが、本発明の内容をよりよく理解することを目的とする。これらの実施形態は、単に例示的なものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。実施例で用いられる原料及び試薬は、特に記載がない限り、市場で通常に購入されるものである。実施例で用いられる実験方法、製造方法及び測定方法は、特に説明がなければ、全て、通常の方法、又はメーカーの推奨する方法である。実施例で用いられる機器設備は、特に説明がなければ、すべて、当分野での通常の機器設備である。実施例では、特に記載がない場合、パーセンテージは、質量パーセンテージを指す。
【0086】
以下の実施例において、高純度の超微細酸化ハフニウム、超微細酸化ランタンを除く、他の高純度酸化物(純度4N、5N、6N級)として、すべて、高圧気流粉砕懸濁微粉収集法により得られた1万級以上の超微粉末である;用いられる金属酸化物粒子として、すべて、ナノサイズの高純度原料を用いた。
ここで、以下の材料/製品の性質/性能検出装置/方法及び実験装置/条件が採用された:
【0087】
1.原料品質検査:Thermo Scientific NITON(Niton)XL5手持ち式アロイアナライザ。
【0088】
2.プロセス製品及び最終製品の元素検査:Thermo Fisher ARL Perform’X 4200 XRF波長分散逐次走査型X線蛍光分光計;X線発生器の最大出力電力:≧4.2kW;定格電圧:≧70kW;定格電流:≧140kW;X線光管:Rhターゲット;セラミック端窓X線管:4.2kW以上;ベリリウム窓厚:≦50μm;試料励起距離:≦16mm;照射方式:下照射方式、即ち、試料がX線管の上にある;固体高周波発生器:外電圧変動1%、出力電圧の安定性が±0.00005%であり、試験の高精度を保証する;スキャン方式:連続スキャン;検出器:流体正比カウンタ、シンチレーションカウンタ、2つのカウンタが平行に配置され、すべてスペクトル室内にある;検出形式:逐次検出、自動記録;サンプルには汚染がないことが要求された。
【0089】
3.粘度試験:NDJ-8S回転数顕粘度計。
【0090】
4.金相分析:カール・ツァイス研究級正立金相顕微鏡Axio Lab A1 Pol。
【0091】
5.耐酸アルカリ性試験:pH3試験:PMTSテンプレートから寸法30mmの立方体数枚をレーザー切断し、精密な研磨を必要とせず、顕微準備して保存した;実験室の25℃環境で、純エタノール入りガラスビーカーに装入して30min含浸させ、竹挟みで取り出して乾燥ろ紙皿に20min放置し、3枚を取って、操作箱にpH=3の塩酸溶液入りガラスビーカーに装入し、24時間で密閉静置して取り出し、清水ですすぎ、乾燥紙で吸乾した。pH14試験:操作箱中のpH=3の塩酸溶液入りガラスビーカーを、pH=14の水酸化ナトリウム溶液入りガラスビーカーに置き換え、他の工程をpH3で試験した;pH顕微組織検査及び評価基準:微食金属及び合金規程ASTM E 407-07(Reapproved 2015)el 7.1-7.15検査基準。
【0092】
6.耐高温性能試験:熱伝導係数テスタで、試験に夏の猛暑をシミュレートするように車内温度を60℃とした。
【0093】
7.高低温シャルピー衝撃試験:70MPa気圧で負荷された単管を、50℃の高温環境に置いて15min保持し、そして20sを経て-15℃の低温環境に移して15min保持することを17回(高温9回、低温8回)転換し、各回の高低温の保持時間が全て15minで、高温、低温の間の転換時間がすべて20sで、単管に破裂が発生したかどうかを観察した。
【0094】
8.引張強度試験:汎用材料性能テスタを用い、力値精度が±0.5%である;試料は、厚さが30mm、長さが1000mm、幅が500mmであり、検査用のPMTS成形テンプレートが3個であった。
【0095】
9.密度試験:電子比重計。
【0096】
10.焼結分析、温度モニタ:遠赤外温度自動検出器。
【0097】
11.電気液サーボ疲労試験:MTS電気液サーボ疲労テスタ;検査基準:エンジンブレード及び材料振動疲労試験方法HB 5287-96 7;持続耐久性及び連続使用寿命シミュレーション。
【0098】
12.限界圧強試験:コンピュータ型200MPa試験台、シュミット、型番:SUPC_XT_200。
【0099】
13.ガス充填速度試験:SUPC_XT_200試験台、シュミット、0.1Pa~70MPa水圧速度試験:試料圧力に基づいて、増圧ポンプで設定の高圧を出力した;試験圧力:0~200MPa;増圧流量:1.2L/min;圧力制御精度:上限+2%、下限-1%;試験媒体:液体水;圧力制御:コンピュータ/マニュアル;操作方法:コンピュータ/マニュアル;構造:循環システム、圧力制御システム;ワークピース:取り付け装置、マニュアル制御;注:本試験の内容及び方法は、相応な検査機構や検査基準がないので、発明者が自ら設計した試験方法であった;施設の取り付け、試験工程:
(1)試験用の70MPa、5kg容量のエアタンク(Aタンク)のインフレーションバルブを、試験台の加圧ポンプの高圧出力コネクタに取り付け、加圧ポンプの吸水口を試験専用のろ過型浄化水源に接続した;
(2)PMTS水素貯蔵容量2kgの水素貯蔵モジュール(Bタンク)の給気弁を開き、膨張弁をクロムモリブデン接続管に介して高圧流量計→圧力計→コンピュータ制御圧力電磁弁をAタンクの給気電磁弁のインタフェースに接続し、Aタンクの給気弁及び膨張弁を開き、その後、Bタンクの給気弁に真空ポンプを接続し、検査後に、真空ポンプを起動し、接続されたA、Bタンクを真空にしてA、Bタンクの給気弁を閉鎖した。
(3)試験台のコンピュータに出力圧力値を70MPaと設定した;
(4)Aタンクの空気入りバルブを開けた;
(5)試験台をコンピュータ起動又はマニュアル起動した;
(6)試験台を増圧出力してAタンクに設定圧力値70MPaに達した時、圧力を受ける時間を2分間保持し、Aタンクの給気電磁弁を開いてBタンクに供給し、数秒の間に、Bタンク圧力が70MPaに達し、Bタンクのガス入り電磁弁を閉じ、試験が完了した。
【0100】
14.間欠及び恒温温度制御:インテリジェント高温調節コンソール。
【0101】
15.真空反応釜/真空ポンプ/温度/インテリジェント制御:真空反応釜は、予備作動状態が35℃、作動状態が40℃~42℃であり、真空度が常に-96kPa~-101kPaの範囲に保持する必要があった。
【0102】
16.動作状態/動作安定性試験:Tenney(TJR-T2)環境試験箱/圧力計、PMTS材料及び水素貯蔵管の70MPa圧強時の-18℃~65℃の温度での動作状態/動作安定性。
【0103】
17.ロックウェル硬度試験:試験精度基準が標準GB/T230、ISO6508に基づく、120度角ダイヤモンド円錐圧子で2つのステップに分けて試料表面に圧入し、主試験力を除去した後、最初の試験力の下で圧痕残留深さを測定し、圧痕残留深さで硬度の高低を表した。
【0104】
18.液体窒素超低温試験:PMTS精密構造物を、液体窒素10minに入れて取り出した。
【0105】
実施例1
本実施例は、以下のプロセスにより、本発明のPMTS材料組成物を製造した:
【0106】
(1)組成物Aの調製:透明反応釜に、分析純無水塩化アルミニウム17重量部と分析純塩化マグネシウム5重量部を添加し、混合し、蒸留水22重量部を添加し、攪拌し、濃度50wt%の塩化アルミニウム、塩化マグネシウム混合溶液を得、分析純水酸化ナトリウム1.2重量部と分析純水酸化カリウム0.5重量部を段階的に添加し、反応させて冷却し、白色沈殿を生成し、透明液体を抽出し、白色沈殿物に分析純塩化バリウム3重量部を添加し、攪拌後30min静置し、100℃で乾燥させ、高温870℃で90min処理した後、冷却し、ボールミルで8000メッシュ以上に粉砕し、準備用の組成物Aが調製された、
【0107】
(2)組成物Bの調製:ナノアルミナ12重量部(型番:MG-AI032、純度99.99%)、ジルコニア16重量部(型番:VK-R60、粒子径1~5μm、純度99.9%)、ナノ酸化イットリウム(純度99.99%)、ナノチタニア8重量部(型番:DT-O-007-2、ルチル型、純度>99.9%)、超微細酸化ハフニウム0.5重量部(型番:H301462、純度99.99%)を攪拌し、組成物Bが調製された。
【0108】
(3)組成物Cの調製:PI(米国デュポンSP-1)24重量部をジメチルホルムアミドに溶解し、濃度30wt%のPI溶液を得、真空反応釜に添加し、釜内温度を40℃に維持し、真空度を-94kPaに維持し、ジメチルホルムアミドを段階的に添加して粘度を90000cPに調節し、10r/minの回転速度で25min攪拌し、その後、ナノシリカ(純度99.999%、5N級)33重量部を段階的に添加し、15min攪拌し、工程(2)で調製された組成物B全体を加え、20min混合し、さらに超微細酸化ランタン(純度99.99%)0.5重量部を加え、15min攪拌し、組成物Cが調製された。
【0109】
(4)PMTS材料組成物の調製:PVAc(山東済南普莱華化工有限公司、工業級、純度99.9%、特性粘度0.80dL/g)12重量部を蒸留水で濃度75wt%まで希釈し、10min攪拌し、工程(1)で調製された組成物A全体を加えて20min攪拌し、得られた混合物を、工程(3)で調製された全組成物C全体が入られた真空反応釜に添加し、ジメチルホルムアミドを適量注入し、45℃に加温し、10r/minの回転速度で攪拌し、粘度を90000cPに調整し、白色の無気泡の生成物、即ちPMTS材料組成物が調製された。
【0110】
本実施例で得られたPMTS材料組成物は、安定に貯蔵でき、PMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管の製造に適用でき、詳しくは実施例2を参照する。
【0111】
実施例2
本実施例は、実施例1で製造されたPMTS材料組成物を用いて、以下のプロセスにより、本発明のPMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管を製造した:
【0112】
第1工程:実施例1で調製された粘度90000cPのPMTS材料組成物を、ステンレス鋼U型平底槽(長さ1500mm、幅500mm、高さ200mm)に入れ、42℃に加温して粘度を20000cPに調整し、PMTS濃縮液を調製し、最終的にPMTS濃縮液の平底槽への添加量は、ポリマー繊維を入れた後、PMTS濃縮液の液面が完全に含浸された繊維より10mm高くなるようにした。
【0113】
第2工程:予め16800本程度の直径150μm、長さ1340mmのポリプロピレン連続繊維からなる繊維集束を準備し、繊維集束の両端をサスペンションバイスでロックし、繊維集合体の両端が、それぞれに、50mmの長さを含浸せず、繊維集合体を第1工程で調製されたPMTS濃縮液に含浸し、両端を中間へ推進させて繊維集合体を弛緩させ、各単本繊維の表面が厚さ約25μm~30μmのPMTS濃縮液に被覆されるまで何度も繰り返す;液槽から集束繊維を取り出し、両端を緊張させ、長さの2分の1でせん断し、1端を垂直に吊るし、PMTS濃縮液の平衡張力と重力の液滴過程により、集束を自動的に接着させた。接着が完了した集束繊維は、硬化させる前に、配置断面が正六角形、平行対辺外径(壁厚を含む平行対辺間の距離)が24.5mmである、壁厚150μm、長さ620mmの内管に置入され、内管が2半に分けられ、2半の内管の中に集束繊維を敷き詰め、平らにした後に他の半分の内管を接着した;内管を、断面が正六角形、平行対辺の内径(壁厚を含む平行対辺間の距離を除く)が25mmである、管壁厚1.5mm、長さ620mmのスリーブに挿入し、一端を粘度1000000cPのPMTSブロック液(実施例1のPMTS材料組成物から45℃で溶媒を除去して粘度を調整したもの)で密封した後、プラスチック封止フィルムを被覆し、吊り硬化を続け、室内恒温42℃、空気湿度10%の密閉環境で240min硬化させた。
【0114】
本実施例で用いられた管状金型(内管とスリーブを含む)の材質は、PMTS材料であり、実施例1で調製されたPMTS材料組成物を、42℃、湿度10%の密閉環境で240min硬化させ、その後50℃で60min硬化させ、その後480℃で60min焼結し、硬化半製品を得、その後880℃で90min焼結し、金相構造半製品を得、その後1430℃で300min焼結して得た。
【0115】
第3工程:集束繊維の未含浸部分を除去し、トンネルキルンに入れ、予めトンネルキルンの各段のキルン体温度を設定し、50℃で60min硬化させ、その後480℃で60min焼結し、硬化半製品を得、その後880℃で90min焼結し、金相構造半製品を得、その後1430℃で300min焼結し、焼結が完了し、PMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管を得た。
【0116】
X線蛍光分光計(Thermo Fisher ARL Perform’X 4200 XRF)で測定し、本実施例で製造されたPMTS材料は、PMTS材料の全質量で、シリカ38.74wt%、アルミナ19.71wt%、ジルコニア26.32wt%、チタニア8.65wt%、酸化ハフニウム0.46wt%、酸化ランタン0.71wt%、酸化イットリウム2.43wt%、酸化カリウム0.12wt%、酸化ナトリウム0.84wt%、酸化マグネシウム0.36wt%、炭素0.015wt%、酸化バリウム1.61wt%、三酸化二鉄0.013wt%、酸化クロム0.014wt%、及び不純物0.008wt%からなる。
【0117】
本実施例で製造されたPMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管は、ミクロン微孔ハニカム構造を有し、単管の長さが620mm、断面が正六角形、スリーブの平行対辺外径が28mm、平行対辺内径が25mm、各微孔の壁厚の顕微寸法が35μm~40μmであり、各微細孔の顕微直径が140μm~150μmであった。1個の単管には約16800個のミクロン単孔管があり、各ミクロン単孔管の水素貯蔵容積が約10.6mm程度であった。したがって、1個の微孔ハニカム構造を有する単管は、水素貯蔵容積が約178080mm、即ち0.000178mであった。このPMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管は、複雑な動的環境に応用でき、高安全、高安定性の高い水素貯蔵を実現できた。このPMTS材料の高圧水素貯蔵構造単管の体積は、70MPaの同容量の中空内胆炭素繊維容器に比べて50%減少した。N個の単管を並列に接続して得られた集束管、N個の集束管を組み合わせたモジュール及び/又はN個のモジュールの組み合わせにより、所望の水素貯蔵容量又は規模を実現できる。本実施例の単管からなるハニカム構造モジュールの力学的概略図を図3に示す。
【0118】
試験例1:PMTS材料の高圧水素貯蔵構造単体管の性能試験
実施例2で製造された単管について高低温シャルピー衝撃試験を行った結果、単管に破裂漏れがなく、本発明の単管が70MPaの水素貯蔵要求を満たすことができることを示した。
【0119】
実施例2で製造された単管について電気液サーボ疲労試験を行った結果、単管の連続使用寿命シミュレーション測定>20000時間、本発明の単管が長い使用寿命を有することを示した。
【0120】
200MPa試験台で、実施例2で製造された単管の限界圧強を測定した結果、単管が耐えられる圧力は、検出限界(検出限界が200MPa)を超え、本発明の単管が高い限界圧強を有することを示した。安全水素貯蔵圧力は、限界圧強に基づいて、安全水素貯蔵圧強=水素貯蔵限界圧強÷安全係数(通常は2である)になるように設定された;特殊な用途には、より大きな安全係数で、比較的小さな安全水素貯蔵圧強を設定する必要がある。本発明のミクロン級微孔ハニカム水素貯蔵構造は、任意の環境下での高圧水素活性化エネルギーの圧力上昇を抑制するので、本発明のミクロ微孔ハニカム水素貯蔵構造は、2倍の安全係数で、任意の複雑な環境下で特に高い安全性と高い安定性を有することができる。
【0121】
実施例2で製造された単管についてガス充填速度試験を行った結果、70MPaの模擬ガス充填速度が2kg/3sであり、本発明の水素貯蔵構造は速いガス充填速度を持つことを表明し、PMTS材質と微孔ハニカム水素貯蔵構造が中空内胆水素貯蔵構造の高速ガス充填流による乱流のガス充填速度に与える影響を取り除いたことを示した。現在、国内外の70MPa中空内胆水素貯蔵容器のガス充填速度の達成基準は5kg/3minである。
【0122】
実施例2で製造された単管について液体窒素超低温試験を行った結果、単管は、液体窒素に10min入られた後に取り出され、破裂変形がなく、本発明の単管は優れた耐低温性能を有することを表明した。
【0123】
実施例2で製造された単管について作動状態/作動安定性試験を行った結果、単管は、低温(-18℃)と高温(65℃)で各15min保持され、70MPa時に±5%の範囲内の圧強変化があり、本発明の単管が良い作動安定性を有することを表明した。
【0124】
試験例2:PMTS材料の性能試験
実施例1のPMTS材料組成物を、薄板にキャストし、42℃、湿度10%の密閉環境で240min硬化させ、その後50℃で60min硬化させ、その後480℃で60min焼結し、硬化半製品を得、その後880℃で90min焼結し、金相構造半製品を得、その後1430℃で300min焼結し、厚さ5mm及び30mmのPMTSサンプルを得た。
【0125】
実施例1のPMTS材料組成物から製造された厚さ5mmのPMTSテンプレートは、比重が5.2g/cm、ロックウェル硬度が87であった、本発明のPMTS材料が高い硬度を有することを示した。
【0126】
厚さ5mmのPMTSテンプレートについて耐酸塩基性試験を行った結果、pH=3及びpH=14下で、PMTSテンプレートはいずれも腐食損傷がなかった(ASTM E407-07(Reapproved 2015)el 7.1-7.15測定基準)、耐酸塩基性pH3試験とpH14試験を行ったPMTSサンプルについてロックウェル硬度測定を行った結果、硬度がすべて87であった、本発明のPMTS材料が優れた耐酸塩基性を有することを表明した。
【0127】
厚さ5mmのPMTSテンプレートについて夏の猛暑日曝露をシミュレーションするように車内温度60℃として耐高温性能試験を行った結果、実施例1のPMTS材料組成物から製造されたPMTSテンプレートの熱伝導率が2.67W/(m・K)であり、本発明のPMTS材料が優れた耐高温性能を有することを示した。
【0128】
厚さ30mmのPMTSテンプレートについて引張強度試験を行った結果、実施例1のPMTS材料組成物から製造されたPMTSテンプレートの引張強度>3000MPa、本発明のPMTS材料が高い引張強度を有することを示した。
図1
図2
図3