(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ネットブラケット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20241128BHJP
E04G 5/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04G21/32 A
E04G5/06 B
(21)【出願番号】P 2024072014
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390027269
【氏名又は名称】ユハラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正徳
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3157095(JP,U)
【文献】登録実用新案第3018902(JP,U)
【文献】実公平06-038994(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 1/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場パイプに固定するクランプ金具に着脱自在に連結する平面コ字形状の固定具と固定具に揺動自在に連結する伸縮自在なアーム部材とを備えたネットブラケットにおいて、
前記固定具は、前記クランプ金具の側面にネジ止めする固定板と、前記アーム部材を挟んで連結する左右一対の連結板とを備え、
固定板と前記クランプ金具との連結部分に回転止めを設け、
回転止めは、固定板の板面上下端部から屈曲形成され、前記クランプ金具の側面上下に係止するように構成されたことを特徴とするネットブラケット。
【請求項2】
前記アーム部材を貫通するスライドボルトを備え、該スライドボルトは前記連結板に形成されたスライド孔にスライド自在に連結され、該スライド孔は前記アーム部材が水平から立設状態に移行する円弧形状に形成されると共に、スライド孔のいずれか一方の端部から鉛直下方にボルト保持孔を延長形成し、前記アーム部材収納時にスライドボルトをボルト保持孔に保持するように構成した請求項1記載のネットブラケット。
【請求項3】
前記アーム部材を貫通する支持ボルトを備え、該支持ボルトは、前記連結板に形成された支持孔に挿通して前記アーム部材を揺動自在に支持し、該支持ボルトと前記スライドボルトとで使用時の前記アーム部材を水平に支持する請求項2記載のネットブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場に安全ネットを設置する際に使用するネットブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
仮設現場において、仮設足場と建造物との間に生じる隙間に、ネットブラケットを使用して安全ネットを設置する安全対策を講じている。このネットブラケットは、足場パイプに連結するクランプ金具を介して伸縮自在なパイプから成るアーム部材を水平に固定し、安全ネットを設置する構造である。このアーム部材は、使用時に水平に伸長し、不使用時にはアーム部材の先端を持ち上げ、縮めた状態でクランプ金具側に保持するものである。
【0003】
特許文献1に記載のネットブラケットは、足場パイプ8に沿ってクランプ金具で固定する平面コ字形状の枠本体2を設け、この枠本体2を水平に貫通するストッパボルト16を設けている。更に、アーム部材3の基端部にスライドボルト14を連結し、枠本体2に対してアーム部材3を揺動自在に連結した構成である。
【0004】
そして使用時は、アーム部材3をストッパボルト16の上に水平に載置する。一方、不使用時は、枠本体2側面に形成したガイドスリット11にスライドボルト14をスライドさせてアーム部材3を起立し保持する。
【0005】
特許文献2に記載のネットブラケットは、足場パイプにクランプ金具で固定する平面コ字形状のアーム取り付け部21を設けると共に、アーム部材の基端部に回転軸42を連結した構成である。そして、使用時は、アーム取り付け部21を水平に貫通したアーム支持具24にアーム部材を略水平に載置する。一方、不使用時には、アーム取り付け部21の板面に形成した各種のガイド31,32,35に回転軸42をスライド移動させ、ガイド回転軸保留部36に回転軸42を係止することでアーム部材を起立し保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平3-115764号公報
【文献】特開2011-58207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来のネットブラケットには次の三つの課題があった。第一の課題は、ネットブラケットが壁つなぎ用ブラケット並みに重いことにある。壁つなぎ用ブラケットとは、足場の構造強化を図るために、足場パイプと壁面とを連結する補強用のブラケットである。
【0008】
すなわち、壁つなぎブラケットを足場パイプに強固に固定するため、壁つなぎブラケットのクランプ金具の下方で足場パイプの側面に当接する補強材を設けた頑強な構造になっており、相応の重量を有するものであった。そしてこのブラケットの先端に伸縮自在なパイプから成るアーム部材を備え、このアーム部材の先端に設けた連結金具で建築物の壁面に固定する構造である。
【0009】
従来のネットブラケットは、この壁つなぎ用ブラケットの構造を利用した構造なので、クランプ金具に伸縮自在なパイプから成るアーム部材を固定する構造や、クランプ金具の下方で足場パイプの側面に当接する補強材を設けた構成は壁つなぎ用ブラケットと同じ構成を採用している。
【0010】
ところが、ネットブラケットの設置目的は、安全ネットを水平に設置することにある。そのため、ネットブラケットが傾かないように固定することが望まれる。しかしながら、従来のネットブラケットは、壁つなぎ用ブラケットのごとく、足場パイプの側面に当接する補強材を設けることで傾きを防止しているので、ネットブラケットの重量は壁つなぎ用ブラケットの重量とほぼ変わらない構成であった。
【0011】
しかも、ネットブラケットの使用頻度は壁つなぎ用ブラケットに比べて極めて多いので、この重量がネットブラケットの設置作業を遅延化する原因になっている。このように、ネットブラケットが壁つなぎ用ブラケット並みに重いことから、軽量なネットブラケットが望まれている。
【0012】
更に、従来のネットブラケットで補強材を使用していることで、新しいタイプの足場に使用できなくなる不都合も生じている。すなわち、くさび足場や次世代足場などの足場には、足場パイプに楔緊結部やフランジが設けられている。そのため、クランプ金具の下で足場パイプに当接する補強材を用いると、これらの楔緊結部やフランジが使用の妨げになるおそれもあった。
【0013】
第二の課題は、不使用時のアーム部材を立設状態で固定する際に多くの手間を要することである。例えば、特許文献1、2のネットブラケットでは、不使用時のアーム部材を枠本体2やアーム取り付け部21内に固定するために、アーム部材3の基端部に設けたスライドボルト14や回転軸42を構成するボルト・ナットを締め付けて固定する記載がある。
【0014】
このように、不使用時のアーム部材立設作業にボルト・ナットを締め付ける作業が加わると、使用時において、これらのボルト・ナットを緩めてからの作業になる。そのため、仮設足場の設置作業が更に遅延化することになり、多数の安全ネットを設置するネットブラケットでは、使用時、不使用時を問わず簡単な作業で設置、収納ができる合理的な構成が望まれている。
【0015】
第三の課題は、アーム部材を水平に支持する際に、アーム部材が損傷し易い構成になっていることである。すなわち、従来のネットブラケットは、アーム部材を水平に支持する際に、ストッパボルト16やアーム支持具24など、水平なボルトの上にアーム部材を直接載せる構成である。
【0016】
そのため、アーム部材の載置面は、ストッパボルト16やアーム支持具24のボルトを介して荷重が集中する状態になっている。そのため、この載置面は極めて傷付き易い状態になっており、載置面の傷から錆が発生しアーム部材の寿命を縮める可能性がある。
【0017】
このように従来のネットブラケットには種々の課題があった。そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、軽量で装着時の傾きを防止し、操作性と耐久性とに優れたネットブラットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、足場パイプPに固定するクランプ金具Cに着脱自在に連結する平面コ字形状の固定具10と、固定具10に揺動自在に連結する伸縮自在なアーム部材20とを備えたネットブラケットにおいて、前記固定具10は、前記クランプ金具Cの側面にネジ止めする固定板11と、前記アーム部材20を挟んで連結する左右一対の連結板12とを備え、固定板11と前記クランプ金具Cとの連結部分に回転止め11Aを設け、回転止め11Aは、固定板11の板面上下端部から屈曲形成され、前記クランプ金具Cの側面上下に係止するように構成したことにある。
【0021】
第2の手段は、前記アーム部材20を貫通するスライドボルト30を備え、該スライドボルト30は、前記連結板12に形成されたスライド孔12Aにスライド自在に連結され、該スライド孔12Aは、前記アーム部材20が水平から立設状態に移行する円弧形状に形成されると共に、スライド孔12Aのいずれか一方の端部から鉛直下方にボルト保持孔12Bを延長形成し、前記アーム部材20収納時にスライドボルト30をボルト保持孔12Bに保持するように構成している。
【0022】
第3の手段は、前記アーム部材20を貫通する支持ボルト40を備え、該支持ボルト40は、前記連結板12に形成された支持孔13に挿通して前記アーム部材20を揺動自在に支持し、該支持ボルト40と前記スライドボルト30とで使用時の前記アーム部材20を水平に支持するように構成したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のごとく、固定板11の板面とクランプ金具Cとの連結部分に回転止め11Aを設けたことにより、ネットブラケットの傾きを防止することができる。しかも、足場パイプの側面に当接する従来の補強材は不要になるので、ネットブラケットの重量を軽量化することができる。また、くさび足場や次世代足場など新しいタイプの足場に使用することも可能である。
【0024】
さらに、連結板12のスライド孔12Aの鉛直下方にスライドボルト30を保持するボルト保持孔12Bを形成したことで、アーム部材20を収納する際に、ワンタッチで収納固定することができる。この結果、使用時、不使用時を問わず簡単な作業で設置や収納が可能になる。
【0025】
また、アーム部材20は、アーム部材20の側面を貫通する支持ボルト40とスライドボルト30とで水平に支持されるので、従来のようにアーム部材を水平に支持する際に、アーム部材が損傷し易いといった課題も解消した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図5】本発明の回転止めの
参考例を示す分解斜視図である。
【
図6】(イ)乃至(ニ)は、本発明のスライド孔とボルト保持孔を示す側面図である。
【
図7】(イ)乃至(ハ)は、本発明のスライド孔とボルト保持孔の他の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明ブラケットは、仮設足場に安全ネットを設置する際に使用するネットブラケットである。本発明の基本構成は、クランプ金具Cに連結する平面コ字形状の固定具10と、固定具10に揺動自在に連結する伸縮自在なアーム部材20とを備えたものである(
図3参照)。
【0028】
固定具10は、クランプ金具Cの側面にネジ止めして連結する固定板11と、アーム部材20を挟んで連結する一対の連結板12とを備えている(
図3参照)。図示例では、固定板11と連結板12とを別々に形成しているが、固定板11と連結板12とを一枚の板で形成することも可能である(図示せず)。また、図示例では固定具10とアーム部材20とに安全ネットを連結する連結フック50を設けている。この連結フック50の位置やサイズは任意に変更することが可能である。
【0029】
更に、固定板11の板面とクランプ金具Cの側面との連結部分に回転止め11Aを設けている(
図1参照)。図示の回転止め11Aは、固定板11の板面上下端部から屈曲形成され、クランプ金具Cの側面上下に係止するように構成している(
図4参照)。
【0030】
また、回転止め11Aの構造は、定板11の板面とクランプ金具Cの側面とに形成された凹凸形状を成し、これらの凹凸形状を互いに係止するように構成しても良い(
図5参照)。図示例では、クランプ金具Cの側面に孔状の係止凹部C2を形成し、固定板11に凸状の回転止め11Aを突設し、係止凹部C2に回転止め11Aを嵌合係止しているが、クランプ金具Cと固定板11との凹凸の位置を逆にしても良い。また、凹凸の位置や数、形状等も図示例に限られるものではなく、任意に変更することが可能である。
【0031】
アーム部材20は、固定具10に揺動自在に連結する伸縮自在な部材で、図示例では伸縮自在なパイプ材にて形成されている(
図1、
図2参照)。すなわち、揺動パイプ21の先端内にスライドパイプ22をスライド自在に保持している(
図1参照)。スライドパイプ22は、揺動パイプ21に設けた長さ調整ボルト23でアーム部材20全体の長さを調整する(
図2参照)。
【0032】
使用時のアーム部材20は、スライドパイプ22を伸長して水平に支持する(
図1参照)。また不使用時には、スライドパイプ22を縮めて揺動パイプ21を足場パイプP側に立てた状態で収納する(
図2参照)。尚、このアーム部材20は、軽量化を図るために、アルミ製のアングル材を使用することも可能であり、アーム部材20の材質や形状は任意に変更することが可能である。
【0033】
この揺動パイプ21に、円形のスライド孔21Aと長孔状の支持孔21Bとを形成している(
図4参照)。更に、スライド孔21Aを貫通するスライドボルト30と、支持孔21Bを貫通する支持ボルト40とを備えている。そして、スライド孔21Aに貫通するスライドボルト30を、連結板12のスライド孔12Aに挿通し、支持孔21Bに貫通する支持ボルト40を、連結板12の支持孔13に挿通すると、アーム部材20が連結板12に揺動自在に支持される(
図1、
図2参照)。
【0034】
連結板12のスライド孔12Aは円弧形状の孔で、アーム部材20が水平から立設状態に移行する際のスライドボルト30が移動する(
図6(イ)~(ハ)参照)。更に、スライド孔12Aの端部から鉛直下方に縦スライド孔12Bを延長形成している。
【0035】
このボルト保持孔12Bは、不使用時のアーム部材20を収納する際に、スライドボルト30を保持する部位である(
図6(ニ)参照)。すなわち、スライド孔12Aの端部でアーム部材20を起立させると自重でスライドボルト30がボルト保持孔12Bに保持される。この結果、アーム部材20基端部の揺動が規制され、アーム部材20がワンタッチで固定される。
【0036】
一方、アーム部材20の支持孔21Bを貫通する支持ボルト40は、連結板12の支持孔13の位置でアーム部材20を揺動自在に支持する(
図6参照)。そして、使用時は、支持ボルト40とスライドボルト30とでアーム部材20を水平に支持する(
図6(イ)参照)。図示例では、スライド孔12Aの上端部に係止したスライドボルト30と、支持孔13の支持ボルト40とが水平になるように設定されている。
【0037】
また、不使用時のアーム部材20は、連結板12のボルト保持孔12Bまでスライドボルト30が下がる(
図6(ニ)参照)。このとき、支持ボルト40は、アーム部材20の長孔状のボルト支持孔21Bを貫通しているので、アーム部材20の基端部が垂直に移動する。
【0038】
このように、本発明ブラケットは、スライドボルト30と支持ボルト40との位置を組み合わせることで、アーム部材20の角度や収納位置を調整するものである。更に、連結板12のスライド孔12Aと、アーム部材20の支持孔21Bとの組合せは任意に変更することが可能である(
図7参照)。
【0039】
すなわち、
図7(イ)は、連結板12の上端から左側に湾曲するスライド孔12Aを形成すると共に、スライド孔12Aの下端部から下向きのボルト保持孔12Bを形成したものである。支持孔13は、スライド孔12Aの上で縦長状を成している。また、揺動パイプ21のスライド孔21Aと支持孔21Bは円形である。
【0040】
図7(ロ)は、連結板12の上端から右側に湾曲するスライド孔12Aを形成すると共に、スライド孔12Aの上端部から下向きのボルト保持孔12Bを形成している。支持孔13は、スライド孔12Aの下にスライド孔12Aのサイズを小さくした支持孔13を形成している。また、揺動パイプ21のスライド孔21Aと支持孔21Bは円形である。
【0041】
図7(ハ)は、連結板12の上端から右側に湾曲するスライド孔12Aを形成すると共に、スライド孔12Aの上端部にボルト保持孔12Bを形成している。支持孔13は、ボルト保持孔12Bの下で円形を成している。また、揺動パイプ21のスライド孔21Aは長孔状で、支持孔21Bは円形である。
【0042】
尚、本発明の構成は図示例に限られるものではなく、固定具10やアーム部材20の構成など本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由に行えるものである。
【符号の説明】
【0043】
B 連結ボルト
C クランプ金具
C1 連結孔
C2 係止凹部
P 足場パイプ
Q 次世代足場
10 固定具
11 固定板
11A 回転止め
11B 連結孔
12 連結板
12A スライド孔
12B 縦スライド孔
13 支持孔
20 アーム部材
21 揺動パイプ
21A スライド孔
21B 支持孔
22 スライドパイプ
23 長さ調整ボルト
30 スライドボルト
40 支持ボルト
50 連結フック
【要約】
【課題】軽量で装着時の傾きを防止し、操作性と耐久性とに優れたネットブラットを提供する。
【解決手段】足場パイプPに固定するクランプ金具Cを有する。クランプ金具Cに連結する平面コ字形状の固定具10を設ける。固定具10に揺動自在に連結する伸縮自在なアーム部材20を設ける。固定具10に、クランプ金具Cの側面にネジ止めする固定板11を設ける。固定具10に、アーム部材20を挟んで連結する左右一対の連結板12を設ける。固定板11の板面とクランプ金具Cの側面との連結部分に回転止め11Aを設ける。
【選択図】
図3