(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】配光制御装置及び配光制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20241128BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/14 H
(21)【出願番号】P 2023552625
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037120
(87)【国際公開番号】W WO2023058185
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】井上 悟
(72)【発明者】
【氏名】井上 極
(72)【発明者】
【氏名】今儀 潤一
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-037809(JP,A)
【文献】特開平09-005449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度、及び前記車両が走行する路面上の水滴、水膜に起因する超音波の受信強度に基づき、前記路面の湿潤度合いを検出する少なくとも一つの検出部と、
前記検出された湿潤度合いが、予め定められた基準の湿潤度合いより大きいとき、前記路面に路面反射が存在すると判定する第1の判定部と、
前記車両の
速度及び前記
受信強度のうちの少なくとも一つが、前記第1の判定部による判定を誤らせるおそれがある
誤判定条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部により、前記路面に前記路面反射が存在すると判定された場合に、前記第2の判定部により、前記車両の
速度及び前記
受信強度のいずれもが前記
誤判定条件を満たさないと判定されたときには、前記路面からの正反射光を抑制するように前記車両の前照灯の配光を変更し、前記第2の判定部により、前記車両の
速度及び前記
受信強度のうちの少なくとも一つが前記
誤判定条件を満たすと判定されたときには、前記車両の前照灯の配光を維持する制御部と、
を含む配光制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記受信強度が、予め定められた範囲を超えてばらつくとき、前記車両の前照灯の配光を維持させる、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両の速度の変化が、予め定められた加速の基準または予め定められた減速の基準を超えているとき、前記車両の前照灯の配光を維持させる、
請求項1記載の配光制御装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの検出部は、前記車両の中心を通りかつ前記車両の進行方向に平行な仮想中心線からより遠いほど、前記路面上の水滴の状況を推定するための予め定められた閾値がより大きい、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの検出部は、前記車両の速度がより大きいほど、前記少なくとも一つの検出部間での、前記路面上の水滴の状況を推定するための予め定められた閾値の差がより小さい、
請求項4に記載の配光制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、前記車両の前照灯の光量を減少させることにより行う、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、前記車両の前照灯の光軸を前記車両に近付けることにより行う、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、前記車両及び前記車両の対向車両間の距離に応じて前記路面反射を低減させるように前記前照灯に照射させることにより行う、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、前記車両の前照灯が照射可能な領域のうちの部分領域に含まれる楕円形の短軸が、前記車両の対向車両に向けた仮想直線上に位置し、かつ、前記楕円形の短軸の長さが、前記車両から前記対向車両までの距離がより短いほどより長くなるように前記前照灯の光量を減少させることにより行う、
請求項8に記載の配光制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、前記車両の前照灯が照射可能な領域のうちの部分領域に含まれる楕円形の長軸が、前記車両の対向車両に向けた仮想直線上に位置し、かつ、前記楕円形の長軸の長さが、前記車両から前記対向車両までの距離がより短いほどより長くなるように、前記前照灯の光量を減少させることにより行う、
請求項8に記載の配光制御装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの検出部は、前記車両の前照灯の配光を変更することを、指数関数に従う、前記車両の速度及び前記超音波の受信強度間の関係であって、前記関係に少なくとも2つの前記予め定められた基準の湿潤度合いが設定されている前記関係に基づき行う、
請求項1に記載の配光制御装置。
【請求項12】
少なくとも一つの検出部は、車両の速度、及び前記車両が走行する路面上の水滴、水膜に起因する超音波の受信強度に基づき、前記路面の湿潤度合いを検出し、
第1の判定部は、前記検出された湿潤度合いが、予め定められた基準の湿潤度合いより大きいとき、前記路面に路面反射が存在すると判定し、
第2の判定部は、前記車両の
速度及び前記
受信強度のうちの少なくとも一つが、前記第1の判定部による判定を誤らせるおそれがある
誤判定条件を満たすか否かを判定し、
制御部は、前記第1の判定部により、前記路面に前記路面反射が存在すると判定された場合に、前記第2の判定部により、前記車両の
速度及び前記
受信強度のいずれもが前記
誤判定条件を満たさないと判定されたときには、前記路面からの正反射光を抑制するように前記車両の前照灯の配光を変更し、前記第2の判定部により、前記車両の
速度及び前記
受信強度のうちの少なくとも一つが前記
誤判定条件を満たすと判定されたときには、前記車両の前照灯の配光を維持する、
配光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配光制御装置及び配光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示に係る配光制御装置と路面状態の検知について関連する特許文献1に記載の路面状態検知装置は、車両が走行する路面の乾燥湿潤状態の判定を、前記路面上の水滴等により発生する超音波ノイズの強度、及び前記車両の走行速度に対応する車輪速度を用いて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した路面状態検知装置は、前記車両及び前記路面が通常の走行における状況とは相違するとき、例えば、前記車両が急な加速若しくは急な減速を行うとき、または、前記路面が前記車両の進行方向の右側の状態及び左側の状態間で相違するとき、上記した路面の乾燥湿潤状態の判定を誤るおそれがあった。
【0005】
本開示の目的は、路面の湿潤度合いについての誤った判定に基づき車両の前照灯の配光を制御するとの事態を回避することができる配光制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決すべく、本開示に係る配光制御装置は、車両の速度、及び前記車両が走行する路面上の水滴、水膜に起因する超音波の受信強度に基づき、前記路面の湿潤度合いを検出する少なくとも一つの検出部と、前記検出された湿潤度合いが、予め定められた基準の湿潤度合いより大きいとき、前記路面に路面反射が存在すると判定する第1の判定部と、前記車両の速度及び前記受信強度のうちの少なくとも一つが、前記第1の判定部による判定を誤らせるおそれがある誤判定条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、前記第1の判定部により、前記路面に前記路面反射が存在すると判定された場合に、前記第2の判定部により、前記車両の速度及び前記受信強度のいずれもが前記誤判定条件を満たさないと判定されたときには、前記路面からの正反射光を抑制するように前記車両の前照灯の配光を変更し、前記第2の判定部により、前記車両の速度及び前記受信強度のうちの少なくとも一つが前記誤判定条件を満たすと判定されたときには、前記車両の前照灯の配光を維持する制御部と、を含む。
【0007】
本開示に係る配光制御装置の一態様では、車両の速度、及び前記車両が走行する路面上の水滴、水膜に起因する超音波(以下、「路面反射」という。)の受信強度に基づき、前記路面の湿潤度合いを検出する少なくとも一つの検出部と、前記検出された湿潤度合いが、予め定められた基準の湿潤度合いより大きいとき、前記路面に路面反射が存在すると判定する第1の判定部と、前記車両の速度及び前記受信強度のうちの少なくとも一つが、前記第1の判定部による判定を誤らせるおそれがある誤判定条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、前記第1の判定部により、前記路面に前記路面反射が存在すると判定された場合に、前記第2の判定部により、前記車両の速度及び前記受信強度のいずれもが前記誤判定条件を満たさないと判定されたときには、前方車両へのグレアを回避するため、および自車ドライバーの前方視認性を改善するため、前記車両SRの前照灯ZTの照明光のうち、対向車量TSに向けて照射される路面からの正反射光の光量を抑制するように前記車両SRの前照灯の配光を変更し、前記第2の判定部により、前記車両の速度及び前記受信強度のうちの少なくとも一つが前記誤判定条件を満たすと判定されたときには、前記車両の前照灯の配光を維持する制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る配光制御装置によれば、路面の湿潤度合いについての誤った判定に基づき車両の前照灯の配光を制御するとの事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の配光制御装置HSSの機能ブロック図である。
【
図2】実施形態1の車両SRにおける湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)の位置を示す。
【
図3】実施形態1の車速SS、受信強度JK、及び水膜厚さ間の関係を示すグラフである。
【
図4】実施形態1の配光制御装置HSSの構成を示す。
【
図5】実施形態1の配光制御装置HSSの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6Aは、実施形態2の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)と受信強度JKとの関係(その1)を示す。
図6Bは、実施形態2の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)と受信強度JKとの関係(その2)を示す。
【
図7】
図7Aは、実施形態4の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係(その1)を示す。
図7Bは、実施形態4の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係(その2)を示す。
図7Cは、実施形態4の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係(その3)を示す。
【
図8】
図8Aは、実施形態5の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係(その1)を示す。
図8Bは、実施形態5の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係(その2)を示す。
【
図9】実施形態6の配光制御装置HSSの動作(その1)を示す。
【
図10】実施形態6の配光制御装置HSSの動作(その2)を示す。
【
図11】実施形態7の車両SR、対向車両TS、距離KY、領域RY、及び部分領域BR間の関係を示す。
【
図12】
図12Aは、実施形態7の前照灯制御部ZSの変形例の動作(その1)を示す。
図12Bは、実施形態7の前照灯制御部ZSの変形例の動作(その2)を示す。
【
図13】実施形態8の車速SSと受信強度JKとの対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る配光制御装置の実施形態について説明する。
【0011】
実施形態1.
〈実施形態1〉
実施形態1の配光制御装置HSSについて説明する。
【0012】
〈実施形態1の機能〉
図1は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能ブロック図である。実施形態1の配光制御装置HSSの機能について、
図1を参照して説明する。
【0013】
実施形態1の配光制御装置HSSは、
図1に示されるように、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)と、路面反射判定部RHと、前照灯制御部ZSと、誤判定条件判定部GHと、対向車両距離検出部TKとを含む。
【0014】
湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、「検出部」に対応し、路面反射判定部RHは、「第1の判定部」に対応し、誤判定条件判定部GHは、「第2の判定部」に対応し、前照灯制御部ZSは、「制御部」に対応する。
【0015】
図2は、実施形態1の車両SRにおける湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)の位置を示す。
【0016】
湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、
図2に示されるように、車両SRの外側後部に取り付けられている。詳しくは、湿潤度合い検出部SK(H1)は、車両SRの後部左端に取り付けられ、湿潤度合い検出部SK(M1)は、車両SRの後部右端に取り付けられ、湿潤度合い検出部SK(H2)は、車両SRの後部中央のやや左側に取り付けられ、湿潤度合い検出部SK(M2)は、車両SRの後部中央のやや右側に取り付けられている。
【0017】
図1に戻り、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、
図1に示されるように、車両SRから車両SRの車速SS及び受信強度JKの入力を受ける。
【0018】
受信強度JKは、従来知られたと同様に、例えば、車両SRが走行する路面RM(例えば、
図11に図示。)上の水滴に起因する超音波が受信されるときの強度である。
【0019】
車速SSは、「車両の速度」及び「車両の状態」に対応し、受信強度JKは、「受信強度」及び「路面の状態」に対応する。
【0020】
図3は、実施形態1の車速SS、受信強度JK、及び水膜厚さ間の関係を示すグラフである。
図3で、水膜厚さは、車両SRの車輪、例えば、後輪KR(H)、KR(M)(
図2に図示。)及び路面RM(
図11に図示。)間の水膜の厚さであり、湿潤度合いSD(
図1に図示。)に対応する。車速SSと受信強度JKとの関係は、
図3に示されるように、概ね指数関数に近似する。
【0021】
湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、車速SS及び受信強度JK(
図1に図示。)に基づき、
図3のグラフを参照することにより、水膜厚さ(
図3に図示。)である湿潤度合いSD(
図1に図示。)を検出し、検出された湿潤度合いSDを出力する。
【0022】
図1に戻り、路面反射判定部RHは、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)から湿潤度合いSDの入力を受け、また、湿潤度合い基準SDKの入力を受ける。
【0023】
湿潤度合い基準SDKは、取得された湿潤度合いSDに基づき、路面RMに路面反射が存在するか否か、路面RMの路面反射の状況がどのようであるか等を判断するための予め定められた基準である。
【0024】
路面反射判定部RHは、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)により検出された湿潤度合いSDを湿潤度合い基準SDKと比較することにより、路面RMに路面反射が存在する否かを示す判定結果HK(RH)を出力する。
【0025】
誤判定条件判定部GHは、車両SRから、例えば、車速SS及び受信強度JKの入力を受ける。誤判定条件判定部GHは、また、誤判定条件GJの入力を受ける。
【0026】
誤判定条件GJは、車両SRの状態及び路面RMの状態としての車速SS及び受信強度JKが、路面反射判定部RHが路面反射の存否を判定することを誤らせるおそれがあるか否かを判定するための予め定められた基準である。誤判定条件GJは、例えば、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)により検出される受信強度JKの各々が極めてばらつくか否か、車両SRの車速SSの変化、即ち、加速度または減速度が極めて急激であるか否かを判定するための基準である。
【0027】
誤判定条件判定部GHは、車速SS及び受信強度JKに基づき、誤判定条件GJを参照することにより、路面反射判定部RHによる判定が誤るおそれがあるか否かを判定する。
【0028】
前照灯制御部ZSは、以下の入力を受ける。
(1)車両SRから車速SS
(2)車両SRから受信強度JK
(3)湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)から湿潤度合いSD
(4)路面反射判定部RHから判定結果HK(RH)
(5)誤判定条件判定部GHから判定結果HK(GH)
(6)対向車両距離検出部TKから距離KY
(7)加減速基準KGK
(8)固有内外差NS(K)
(9)閾値TH
【0029】
加減速基準KGKは、車両SRの加速度が急な加速に該当するか、または、車両SRの減速度が急な減速に該当するかを判定するための予め定められた基準である。
【0030】
固有内外差NS(K)は、受信強度JKについての、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)間での本来的な差である。
【0031】
閾値THは、例えば、路面RM上の水滴、水膜の状況を推定するための基準である。
【0032】
前照灯制御部ZSは、判定結果HK(RH)が、路面RMに路面反射が存在することを示す場合に、判定結果HK(GH)が、車速SS及び受信強度JKのいずれもが誤判定条件GJを満たさないことを示すとき、即ち、路面反射判定部RHによる判定が誤るおそれが無いことを示すとき、路面反射を抑制するように前照灯ZTの配光を変更する。
【0033】
前照灯制御部ZSは、上記とは対照的に、判定結果HK(RH)が、路面RMに路面反射が存在することを示す場合に、判定結果HK(GH)が、車速SS及び受信強度JKの少なくとも一つが誤判定条件GJを満たすことを示すとき、即ち、路面反射判定部RHによる判定が誤るおそれがあることを示すとき、前照灯ZTの現在の配光を維持する。
【0034】
対向車両距離検出部TKは、車両SR(
図2、
図11に図示。)と対向車両TS(
図11に図示。)との間の距離KY(
図11に図示。)を検出し、検出された距離KYを出力する。
【0035】
〈実施形態1のハードウェア構成〉
図4は、実施形態1の配光制御装置HSSの構成を示す。
【0036】
実施形態1の配光制御装置HSSは、上述した機能を果たすべく、
図4に示されるように、プロセッサPCと、メモリMMと、記憶媒体KBと含み、必要に応じて、入力部NYと、出力部SYと、更にを含む。
【0037】
入力部NYは、例えば、カメラ、センサ、受信ユニットから構成される。プロセッサPCは、ソフトウェアに従ってハードウェアを動作させる、よく知られたコンピュータの中核である。出力部SYは、例えば、送信ユニットから構成される。メモリMMは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)から構成される。記憶媒体KBは、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、ROM(Read Only Memory)から構成される。
【0038】
記憶媒体KBは、プログラムPRを記憶する。プログラムPRは、プロセッサPCが実行すべき処理の内容を規定する命令群である。
【0039】
実施形態1における機能とハードウェア構成との関係については、ハードウェア上で、プロセッサPCが、記憶媒体KBに記憶されたプログラムPRを、メモリMM上で実行すると共に、必要に応じて、入力部NY及び出力部SYの動作を制御することにより、湿潤度合い検出部SK(H1)等~対向車両距離検出部TKの各部の機能を実現する。
【0040】
〈実施形態1の動作〉
図5は、実施形態1の配光制御装置HSSの動作を示すフローチャートである。実施形態1の配光制御装置HSSの動作について
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
ステップST11:湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、車両SR(
図2に図示。)から、車両SRの車速SS(
図1に図示。)、及び、車両SRが走行する路面RM(
図11に図示。)上の水滴、水膜に起因する超音波の受信強度JK(
図1に図示。)の入力を受け、即ち、取得する。
【0042】
ステップST12:湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、入力された車速SS及び受信強度JKに基づき、車速SS、受信強度JK、及び水膜厚さである湿潤度合いSDの間の関係を示すグラフ(
図3に図示。)を参照することにより、路面RMの湿潤度合いSDを検出する。
【0043】
湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、受信強度JKとして、例えば、湿潤度合い検出部SK(H1)が取得した受信強度JK、湿潤度合い検出部SK(H2)が取得した受信強度JK、湿潤度合い検出部SK(M2)が取得した受信強度JK、及び湿潤度合い検出部SK(M1)が取得した受信強度JK(いずれも、例えば、
図6に図示。)の平均値を用いる。湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)は、検出された湿潤度合いSDを出力する。
【0044】
ステップST13:路面反射判定部RHは、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)から入力を受けた湿潤度合いSDを湿潤度合い基準SDKと比較する。これにより、路面反射判定部RHは、路面RMに路面反射が存在するか否かを判定し、判定の結果を示す判定結果HK(RH)を出力する。
【0045】
判定結果HK(RH)が、路面反射が存在することを示すとき、処理は、ステップST14へ進む。他方で、判定結果HK(RH)が、路面反射が存在しないことを示すとき、処理は、終了する。
【0046】
ステップST14:誤判定条件判定部GHは、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)と同様に、車両SRから、車速SS及び受信強度JKの入力を受ける。誤判定条件判定部GHは、車速SS及び受信強度JKを誤判定条件GJと比較することにより、路面反射判定部RHが判定を誤るおそれがあるか否かを示す判定結果HK(GH)を出力する。
【0047】
判定結果HK(GH)が、車速SS及び受信強度JKのいずれもが誤判定条件GJを満たさないことを示すとき、換言すれば、路面反射判定部RHが判定を誤るおそれが無いことを示すとき、処理は、ステップST15へ進む。他方で、判定結果HK(GH)が、車速SS及び受信強度JKが誤判定条件GJを満たすことを示すとき、換言すれば、路面反射判定部RHが判定を誤るおそれがあることを示すとき、処理は、ステップST16へ進む。
【0048】
ステップST15:前照灯制御部ZSは、誤判定条件判定部GHから、車両SRの車速SS及び受信強度JKが誤判定条件GJを満たさないことを示す判定結果HK(GH)の入力を受けると、換言すれば、路面反射判定部RHが判定を誤るおそれが無いことを示す判定結果HK(GH)の入力を受けると、路面RM上の路面反射を抑制するように、即ち、路面反射を低減するように前照灯ZTの配光を変更する。
【0049】
ステップST16:前照灯制御部ZSは、誤判定条件判定部GHから、車両SRの車速SS及び受信強度JKが誤判定条件GJを満たすことを示す判定結果HK(GH)の入力を受けると、換言すれば、路面反射判定部RHが判定を誤るおそれがあることを示す判定結果HK(GH)の入力を受けると、前照灯ZTの現在の配光を変更することなく維持する。
【0050】
〈実施形態1の効果〉
上述したように、実施形態1の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、路面反射判定部RHが、路面RMに路面反射が存在すると判定した場合に(ステップST13のYES)、誤判定条件判定部GHが、車速SS及び受信強度JKのうちのいずれもが誤判定条件GJを満たさないと判定したとき(ステップST14のNO)、路面RM上の路面反射を抑制するように、前照灯ZTの配光を変更する(ステップST15)。
【0051】
前照灯制御部ZSは、他方で、路面反射判定部RHが、路面RMに路面反射が存在すると判定した場合に(ステップST13のYES)、誤判定条件判定部GHが、車速SS及び受信強度JKのうちの少なくとも一つが誤判定条件GJを満たすと判定したとき(ステップST14のYES)、前照灯制御部ZSの現在の配光を変更することなくそのまま維持する(ステップST16)。これにより、配光制御装置HSSは、車速SS及び受信強度JKに起因する、路面RM上の路面反射についての誤った判定に基づき車両SRの前照灯ZTの配光を制御するとの事態を回避することができる。
【0052】
実施形態2.
〈実施形態2〉
実施形態2の配光制御装置HSSについて説明する。
【0053】
〈実施形態2の機能及びハードウェア構成〉
実施形態2の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0054】
〈実施形態2の動作〉
実施形態2の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0055】
実施形態2の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、受信強度JK(
図1に図示。)の取り扱いが相違する。
【0056】
図6は、実施形態2の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)と受信強度JKとの関係を示す。
【0057】
図2に示唆されるように、車両SRの後部左端及び後部右端に取り付けられている湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)は、車両SRの後部中央の近傍に取り付けられている湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)と比較して、後輪の直上に配置されている湿潤度合検出部SK(H1)、SK(M1)の受信強度JKが、後輪の内側に配置されている湿潤度合検出部SK(H2)、SK(M2)の受信強度より大きくなる傾向がある。これは、後輪による水膜の巻き上げ量が大きく、後輪直上の受信強度JKが大きくなるためである。路面RM上に水膜が一様に分布していないとき、顕著に現れる。さらに、車両SRの側方を走行する他の車両(図示せず。)による路面RM上の水滴の跳ね上げ、車両SRの側方から受ける横殴りの雨等の外乱(ノイズ)の影響をより多く受ける。
【0058】
これにより、
図6Aに示されるように、車両SRの後部左端及び後部右端、即ち、車両SRの外側にある湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)と、車両SRの後部中央の近傍、即ち、車両SRの内側にある湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)との間には、受信強度JKについての本来的な差である固有内外差NS(K)(
図1にも図示。)が存在する。
【0059】
固有内外差NS(K)の範囲は、「予め定められた範囲」に対応する。
【0060】
実施形態2の配光制御装置HSSでは、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST14の「NO」の後に、前照灯制御部ZSは、
図6A、
図6Bに示されるように、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)が取得する4つの受信強度JK間の差、より正確には、例えば、4つの受信強度JKのうちの最大である受信強度JK(例えば、湿潤度合い検出部SK(H1)の受信強度JK)と最小である受信強度JK(例えば、湿潤度合い検出部SK(M2)の受信強度JK)との差である取得内外差NS(S)が、固有内外差NS(K)の範囲内であるか否か、換言すれば、取得内外差NS(S)が、固有内外差NS(K)の範囲を超えてばらつくか否かを判断する。
【0061】
前照灯制御部ZSは、
図6Bに示されるように、取得内外差NS(S)が固有内外差NS(K)の範囲内でないと判断するとき、即ち、固有内外差NS(K)の範囲を超えてばらつくと判断するとき、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)が検出する湿潤度合いSDを信頼することができないと認識する。そこで、前照灯制御部ZSは、実施形態1と相違し、ステップST15での前照灯ZTの配光の変更を行うことなく、ステップST16と同様に、前照灯ZTの現在の配光を維持する。
【0062】
〈実施形態2の効果〉
上述したように、実施形態2の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、4つの受信強度JK間の差である取得内外差NS(S)が、固有内外差NS(K)の範囲を超えてばらつくとき、車両SRの前照灯ZTの現在の配光をそのまま維持する。これにより、上述した、路面RM上の水膜の分布ばらつきに受信強度JKのばらつき、側方を走行する他の車両、側方からの横殴りの雨等の外乱(ノイズ)という悪影響を受けた受信強度JKを遠因として導出された路面RMからの超音波の有無に従って前照灯ZTの配光を制御するという好ましくない事態を回避することが可能となる。
【0063】
実施形態3.
〈実施形態3〉
実施形態3の配光制御装置HSSについて説明する。
【0064】
〈実施形態3の機能及びハードウェア構成〉
実施形態3の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0065】
〈実施形態3の動作〉
実施形態3の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0066】
実施形態3の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、車両SRの車速SS(
図1に図示。)の取り扱いが相違する。
【0067】
実施形態3の配光制御装置HSSでは、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST14の「NO」の後に、前照灯制御部ZSは、車速SSの加減速度が、加減速基準KGK(
図1に図示。)を超えているか否かを判断する。
【0068】
加減速基準KGKは、上述したように、車両SRの加速度または減速度が急であるか否かを判定するための予め定められた基準である。
【0069】
加減速基準KGKは、「予め定められた加速の基準または予め定められた減速の基準」に対応する。
【0070】
前照灯制御部ZSは、車速SSから算出される加速度が、加減速基準KGKを上回っているとき、または、車速SSから算出される減速度が、加減速基準KGKを下回っているとき、要約すれば、車速SSから算出される加速度または減速度の絶対値が、加減速基準KGKの絶対値を超えているとき、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)が検出する湿潤度合いSDを信頼することができないと認識する。そこで、実施形態1と相違し、ステップST15での前照灯ZTの配光の変更を行うことなく、ステップST16と同様に、前照灯ZTの現在の配光を維持する。
【0071】
〈実施形態3の効果〉
上述したように、実施形態3の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、車両SRの車速SSから算出される加速度又は減速度が、加減速基準KGKを超えているとき、前照灯ZTの配光をそのまま維持する。これにより、車両SRの急な加速また急な減速のときに、車両SRの後輪KR(H)、KR(M)(
図2に図示。)による路面RM上の水滴の巻き上げの急変等の外乱(ノイズ)という悪影響を受けた受信強度JKを遠因として導出された路面反射の有無に従って前照灯ZTの配光を制御するという好ましくない事態を回避することが可能となる。
【0072】
実施形態4.
〈実施形態4〉
実施形態4の配光制御装置HSSについて説明する。
【0073】
〈実施形態4の機能及びハードウェア構成〉
実施形態4の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0074】
〈実施形態4の動作〉
実施形態4の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0075】
実施形態4の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、路面RM上の水滴、水膜の状況を推定するための閾値TH(
図1にも図示。)を用いることが相違する。
【0076】
上記した閾値THは、予め定められている。
【0077】
閾値THは、「路面上の水滴、水膜の状況を推定するための予め定められた閾値」に対応する。
【0078】
図7は、実施形態4の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係を示す。
【0079】
上述したように、車両SRの後輪KR(H)、KR(M)(
図2に図示。)による路面RM上の水滴、水膜の巻き上げ等に起因して、
図7Aに示されるように、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)は、内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)に比して、取得される受信強度JKが大きくなる。
【0080】
そこで、
図7Aに示されるように、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)のための閾値TH(OUT)が、内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)のための閾値TH(IN)より大きく設定されている。
【0081】
換言すれば、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)の閾値TH(OUT)、TH(IN)は、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)の位置が、車両SRの中心を通りかつ車両SRの進行方向に平行である仮想中心線KC(
図11に図示。)からより遠いほど、より大きく設定されている。
【0082】
ここで、閾値TH(OUT)、及び閾値TH(IN)は、上述したように、路面RM上の水滴、水膜の状況を推定するための判断基準であり、例えば、路面RM上に水滴、水膜が存在するか否か、どのくらいの量の水滴、水膜が存在するかを推定するための判断基準である。
【0083】
図5に図示のフローチャートにおけるステップST14の「NO」の後で、
図7Bに示されるように、例えば、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)の両者が、閾値TH(OUT)を上回っており、かつ、内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)の両者が、閾値TH(IN)を上回っているとき、前照灯制御部ZSは、実施形態1と同様に、ステップST15で、グレアの回避、前方視認性の改善のために路面からの正反射光の光量を抑制するように前照灯ZTの配光を変更する。
【0084】
上記とは対照的に、上記したステップST14の「NO」の後で、
図7Cに示されるように、例えば、(1)一方の外側の湿潤度合い検出部SK(H1)が閾値TH(OUT)を上回っているものの、他方の外側の湿潤度合い検出部SK(M1)が閾値TH(OUT)を上回っていないとき、または、(2)一方の内側の湿潤度合い検出部SK(M2)が閾値TH(IN)を上回っているものの、他方の内側の湿潤度合い検出部SK(H2)が閾値TH(IN)を上回っていないとき、前照灯制御部ZSは、実施形態1と相違し、ステップST15での前照灯ZTの配光の変更を行うことなく、ステップST16と同様に、前照灯ZTの現在の配光を維持する。
【0085】
〈実施形態4の効果〉
上述したように、実施形態4の配光制御装置HSSでは、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)のための閾値TH(OUT)は、内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)ための閾値TH(IN)より大きく設定されている。
【0086】
より詳しくは、閾値TH(OUT)、TH(IN)は、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)の位置が、仮想中心線KC(
図11に図示。)からより遠いほど、より大きく設定されている。
【0087】
これにより、車両SRの後輪KR(H)、KR(M)による路面RM上の水滴の巻き上げ等に起因する、取得された受信強度JKのばらつきを遠因として導出された路面反射の有無に従って前照灯ZTの配光を制御するという好ましくない事態を回避することが可能となる。
【0088】
実施形態5.
〈実施形態5〉
実施形態5の配光制御装置HSSについて説明する。
【0089】
〈実施形態5の機能及びハードウェア構成〉
実施形態5の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0090】
〈実施形態5の動作〉
実施形態5の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0091】
実施形態5の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、路面RM上の水滴、水膜の状況を推定するための予め定められた閾値TH(
図1にも図示。)の取り扱いが相違する。
【0092】
図8は、実施形態5の湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)、受信強度JK、及び閾値TH間の関係を示す。
【0093】
上述したように、車両SRの後輪KR(H)、KR(M)(
図2に図示。)が、路面RM上の水滴、水膜を巻き上げるものの、当該水滴、水膜の巻き上げは、車両SRの速度がより増すほど、より多くの方向になされる。その結果、前記水滴、水膜の巻き上げの、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)への影響は、車両SRの速度がより増すほど、より均一化され、換言すれば、湿潤度合い検出部SK(H1)~湿潤度合い検出部SK(M1)間での、前記水滴、水膜の巻き上げの影響の差は、より小さくなる。
【0094】
そこで、
図8A及び
図8Bの比較から明らかであるように、車両SRが高速度であるとき、例えば、車両SRが高速道路を時速100km近くで走行しているときにおける、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)のための閾値TH(OUT_HIGH)と、内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)のための閾値TH(IN_HIGH)との差SA(HIGH)は、車両SRが通常の速度であるとき、例えば、車両SRが一般道を時速50km程度で走行しているときにおける、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)のための閾値TH(OUT_NOR)と内側の湿潤度合い検出部SK(H2)及び湿潤度合い検出部SK(M2)のための閾値TH(IN_NOR)との差SA(NOR)に比して小さく設定されている。
【0095】
ここで、閾値TH(OUT_NOR)、及び閾値TH(IN_HIGH)は、実施形態4で説明した閾値TH(OUT)、及び閾値TH(IN)と同様に、路面RM上の水滴の状況を推定するための判断基準であり、例えば、路面RM上に水滴、水膜が存在するか否か、どのくらいの量の水滴、水膜が存在するかを推定するための判断基準である。
【0096】
閾値TH(OUT_NOR)、及び閾値TH(IN_HIGH)は、「路面上の水滴、水膜の状況を推定するための予め定められた閾値」に対応する。
【0097】
例えば、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST14の「NO」の後で、
図8Aに示されるように、車両SRが通常の速度である場合、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)の両者が閾値TH(OUT_NOR)を上回り、かつ、内側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M2)が閾値TH(IN_NOR)を上回るとき、前照灯制御部ZSは、実施形態1と同様に、ステップST15で、前照灯ZTの配光を変更する。
【0098】
また、例えば、上記のステップST14の「NO」の後で、
図8Bに示されるように、車両SRが高速度である場合、外側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M1)の両者が、閾値TH(OUT_HIGH)を上回り、かつ、内側の湿潤度合い検出部SK(H1)及び湿潤度合い検出部SK(M2)の両者が、閾値TH(IN_HIGH)を上回るとき、前照灯制御部ZSは、上述したと同様に、ステップST15で、前照灯ZTの路面RMからの正反射光の光量を抑制するように前照灯ZTの配光を変更する。
【0099】
〈実施形態5の効果〉
上述したように、実施形態5の配光制御装置HSSでは、車両SRが高速度である場合の、閾値TH(OUT_HIGH)及び閾値TH(OUT_HIGH)間の差SA(HIGH)は、車両SRが通常の速度である場合の、閾値TH(OUT_NOR)及び閾値TH(IN_NOR)間の差SA(NOR)に比して小さく設定されている。
【0100】
これにより、車両SRの速度の遅速の程度に左右される、車両SRの後輪KR(H)、KR(M)による路面RM上の水滴、水膜の巻き上げ等の量の差異を考慮した上で、前照灯ZTの配光の制御をより精度高く行うことができる。
【0101】
実施形態6.
〈実施形態6〉
実施形態6の配光制御装置HSSについて説明する。
【0102】
〈実施形態6の機能及びハードウェア構成〉
実施形態6の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0103】
〈実施形態6の動作〉
実施形態6の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0104】
実施形態6の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、前照灯ZTの配光の具体的な制御が相違する。
【0105】
図9は、実施形態6の配光制御装置HSSの動作(その1)を示す。
【0106】
図10は、実施形態6の配光制御装置HSSの動作(その2)を示す。
【0107】
実施形態6の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST15で、前照灯ZTの配光を変更することを、
図9に示されるように、前照灯ZTの光量を減少させることにより行う。この結果、前照灯ZTにより路面RMに照射される範囲は、領域RY1から領域RY2へ狭小になる。
【0108】
実施形態6の配光制御装置HSSでは、また、上記したステップST15で、前照灯ZTの配光を変更することを、上記した前照灯ZTの光量を減少することに代えて、
図10に示されるように、前照灯ZTの光軸を車両SRに近付けることにより行う。この結果、前照灯ZTにより照射される範囲は、領域RY1から領域RY2へと変更される。
【0109】
〈実施形態6の効果〉
上述したように、実施形態6の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、前照灯ZTの配光の変更を、前照灯ZTの光量を減少させること、または、前照灯ZTの光軸を車両SRに近付けることにより行う。これにより、両者とも、対向車両TS(
図11に図示。)にグレア現象を発生することを抑制することができ、加えて、後者では、車両SRの直近の前方がより明るくなることから、車両SRの運転者(図示せず。)の運転し易さ(視認性)を向上させることができる。
【0110】
実施形態7.
〈実施形態7〉
実施形態7の配光制御装置HSSについて説明する。
【0111】
〈実施形態7の機能及びハードウェア構成〉
実施形態7の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0112】
〈実施形態7の動作〉
実施形態7の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0113】
実施形態7の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、前照灯ZTの配光の具体的な制御が相違する。
【0114】
図11は、実施形態7の車両SR、対向車両TS、距離KY、領域RY、及び部分領域BR間の関係を示す。
【0115】
実施形態7の配光制御装置HSSでは、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST15で、前照灯制御部ZSは、配光制御装置HSSが搭載された車両SRと、車両SRと対向する対向車両TSとの間の距離KYに応じて、即ち、対向車両距離検出部TK(
図1に図示。)により検出される距離KYに応じて、前照灯ZTの路面RMからの正反射光の光量を低減させるように前照灯ZTに照射させ、即ち、前照灯ZTの配光を制御する。前照灯ZTは、具体的には、距離KYが長いときには、前照灯ZTが照射可能な領域RYのうち、前照灯ZTの光量を低減させるべき部分領域BRの面積を小さくする。前照灯ZTは、上記とは対照的に、距離KYが短いときには、領域RYのうちの部分領域BRの面積を大きくする。
【0116】
〈実施形態7の効果〉
上述したように、実施形態7の配光制御装置HSSでは、前照灯制御部ZSは、車両SR及び対向車両TS間の距離KYに応じて、照射可能な領域RYのうち、光量を低減させるべき部分領域BRの面積を変更する。部分領域BRへ照射する光量を低減することにより、対向車両TS間でのグレア現象の発生を抑制しつつ、かつ、領域RY(部分領域BRを除く。)へ照射する光量を維持することにより、車両SRの運転者の運転し易さ(視認性)を維持することができる。
【0117】
〈変形例〉
図12は、実施形態7の前照灯制御部ZSの変形例の動作を示す。
【0118】
実施形態7の変形例では、前照灯制御部ZSは、
図12Aに示されるように、前照灯ZTが照射可能な領域RYのうち部分領域BRに含まれる楕円形の短軸TJが、対向車両TSに向けた仮想直線KT上に位置し、かつ、車両SRから対向車両TSまでの距離KY(
図11に図示。)がより短いほど、前記楕円形の短軸TJの長さがより長くなるように、部分領域BRの面積を増大させてもよい。
【0119】
実施形態7の他の変形例では、前照灯制御部ZSは、前照灯ZTが照射可能な領域RYのうち部分領域BRに含まれる楕円形の長軸CJが、対向車両TSに向けた仮想直線KT上に位置し、かつ、車両SRから対向車両TSまでの距離KYがより短いほど、前記楕円形の長軸CJの長さが長くなるように、部分領域BRの面積を増大させてもよい。
【0120】
実施形態8.
〈実施形態8〉
実施形態8の配光制御装置HSSについて説明する。
【0121】
〈実施形態8の機能及びハードウェア構成〉
実施形態8の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成は、実施形態1の配光制御装置HSSの機能及びハードウェア構成(
図1、
図4に図示。)と同様である。
【0122】
〈実施形態8の動作〉
実施形態8の配光制御装置HSSの動作は、基本的には、実施形態1の配光制御装置HSSの動作(
図5に図示。)と同様である。
【0123】
実施形態8の配光制御装置HSSの動作は、他方で、実施形態1の配光制御装置HSSの動作とは、車速SSと受信強度JK(両者とも
図1に図示。)との対応関係の取り扱いが相違する。
【0124】
図13は、実施形態8の車速SSと受信強度JKとの対応関係を示すグラフである。
【0125】
車速SSと受信強度JKとは、概ね指数関数の関係にあり、当該関係は、例えば、
図13のグラフ中に設定された少なくとも2つの湿潤度合い基準SDK1、SDK2(湿潤度合い基準SDKは、
図1にも図示。)の形状により象徴されている。
【0126】
実施形態8では、路面反射判定部RHは、
図5に図示のフローチャートにおけるステップST13で、検出された湿潤度合いSD(
図1に図示。)と湿潤度合い基準SDK1、SDK2とを比較することにより、路面反射の有無、路面反射の状況等を判断する。
【0127】
路面反射判定部RHは、例えば、検出された湿潤度合いSDが湿潤度合い基準SDK1を上回っているとき、路面RM上の水膜の厚さが大きいであろうと判断し、即ち、比較的強い路面反射が存在であろうと判断する。路面反射判定部RHは、上記とは対照的に、例えば、検出された湿潤度合いSDが湿潤度合い基準SDK2を下回っているとき、路面RM上の水膜の厚さが小さいであろうと判断し、即ち、比較的弱い路面反射が存在するであろうと判断する。
【0128】
〈実施形態8の効果〉
上述したように、実施形態8の配光制御装置HSSでは、路面反射判定部RHは、検出された湿潤度合いSDに基づき路面反射の有無、路面反射の状況等を判断することを、2つの湿潤度合い基準SDK1、SDK2が設定されている、車速SS及び受信強度JK間の関係を参照して行う。これにより、実施形態1の配光制御装置HSSに比して、路面反射の有無、状況等をより細かい精度で判断することができる。
【0129】
本開示の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態同士を組み合わせてもよく、また、各実施形態中の構成要素を適宜、削除し、変更し、または、他の構成要素を追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
あ
本開示に係る配光制御装置は、路面の湿潤度合いについての誤った判定に基づき車両の前照灯の配光を制御するとの事態を回避することに利用可能である。
【符号の説明】
【0131】
BR 部分領域、CJ 長軸、GH 誤判定条件判定部、GJ 誤判定条件、HK(GH) 判定結果、HK(RH) 判定結果、HSS 配光制御装置、JK 受信強度、KB 記憶媒体、KC 仮想中心線、KR 後輪、KT 仮想直線、KY 距離、MM メモリ、NS(K) 固有内外差、NS(S) 取得内外差、NY 入力部、PC プロセッサ、PR プログラム、RH 路面反射判定部、RM 路面、RY 領域、RY1 領域、RY2 領域、SD 湿潤度合い、SK 湿潤度合検出部、SR 車両、SS 車速、SY 出力部、TH 閾値、TJ 短軸、TK 対向車両距離検出部、TS 対向車両、ZS 前照灯制御部、ZT 前照灯。