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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】内装仕上化粧板の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20241128BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04F13/08 101K
E04F13/14 102E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018145102
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020020171
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】久保 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼橋 拓
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】加藤 範久
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-226557(JP,A)
【文献】特開平7-252458(JP,A)
【文献】特開2006-168255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を固定する内装仕上化粧板の施工方法であって、
前記固定は、1種類の両面粘着テープのみを用いて行われ、
前記両面粘着テープは、厚さ1mm、幅20mmの弾性ポリマーフォーム基材であって、厚さ方向の発泡倍率が2.5~5倍であるアクリルフォーム、ポリエステルフォームまたはポリエチレンフォームであり、その引張弾性率が10~20MPaである弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤を塗布してなるものであり、
少なくとも前記両面粘着テープの片側の面には剥離ライナーを備えており、
前記窯業系化粧板の裏面には含浸シーラーが塗布されていることを特徴とする内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項2】
下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を固定する内装仕上化粧板の施工方法であって、
前記固定は、1種類の両面粘着テープのみを用いて行われ、
前記両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~30mmの弾性ポリマーフォーム基材であって、厚さ方向の発泡倍率が2.5~5倍であるアクリルフォーム、ポリエステルフォームまたはポリエチレンフォームであり、その引張弾性率が10~20MPaである弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤を塗布してなるものであり、
少なくとも前記両面粘着テープの片側の面には剥離ライナーを備えており、
前記窯業系化粧板の裏面には含浸シーラーが塗布されていることを特徴とする内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項3】
前記窯業系化粧板が、かさ密度0.6~1.2g/cm3の化粧けい酸カルシウム板であることを特徴とする請求項1または2に記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項4】
前記含浸シーラーが、湿気硬化型のポリウレタン樹脂系の無溶剤含浸シーラーであり、塗布量が5~30g/m2であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項5】
窯業系化粧板裏面とせっこうボードを前記両面粘着テープで接着したときの平面引張強度が0.2MPa以上であり、かつ前記窯業系化粧板1枚あたりに対する前記両面粘着テープによる接着面積の割合が、8~20%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項6】
前記窯業系化粧板裏面の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから該窯業系化粧板を壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項7】
窯業系化粧板の製造工場または加工場において、あらかじめ施工する壁面あるいは天井面の割付けに合わせた寸法および数量の窯業系化粧板の裏面に対し、前記両面粘着テープを配置して圧着したものを作成し、当該両面粘着テープ付窯業系化粧板を施工現場に搬入したのち、剥離ライナーを剥がしてから壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することを特徴とする請求項6に記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【請求項8】
壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に、仕上施工する窯業系化粧板の割付け位置および寸法に対し、外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の施工方法、より詳しくは建築物の内装壁面および天井面に対し、仕上材として窯業系化粧板を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の内装仕上材として繊維強化セメント板等の窯業系材料を基板とし、その表面に塗膜層を形成し、あるいは化粧フィルムを接着した、不燃性の窯業系化粧板が広く使われている。窯業系化粧板は、工場生産により化粧面の品質が安定しており、施工後の現場塗装も必要無いため工期が短縮できるといったメリットがある。また、建築基準法の内装制限を受けるような大型の建築物に必要な不燃性能を容易に確保出来ることも窯業系化粧板が普及した要因といえる。
【0003】
窯業系化粧板の施工方法としては、軽量鉄骨等に、せっこうボードをビス留めした下地を組み、その上に仮止め用の両面粘着テープと弾性接着剤を併用して固定する、いわゆる接着工法が主流となっている(特許文献1)。この接着工法では、施工直後の固定を仮止め用の両面粘着テープが担い、その後に弾性接着剤が硬化することで恒久的に固定される構成となっており、ビス留めに比べて仕上がりがきれいなため広く採用されている。また、こうした従来型の接着工法の改良技術として、弾性接着剤の代わりに硬化性を有する接着剤を塗布した両面接着テープを用い、これを仮止め用の両面粘着テープと併用することによりテープのみで行える施工方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-312671号公報
【文献】特開平7-18818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような接着工法では、現場での弾性接着剤の塗布に手間と時間がかかり、また作業者の違いによって弾性接着剤の塗布量にばらつきが生じ易いことから、施工品質の確保という面の不安もある。近年、建築現場においては慢性的な労働力不足と作業者の高齢化が進む傾向にあり、これに対応すべく現状よりも効率が良く、より簡易的な内装材の施工方法に対する要求が高まっている。特許文献2のようにテープのみで行える施工方法は、一見すると簡易で効率が良い施工方法と考えられるが、硬化性を有する両面接着テープは、使用するまでの保存安定性等に問題があり、また併用する仮止め用の両面粘着テープとの使い分けが繁雑となるため、取り違えが生じた場合には脱落等のリスクが生じるといった問題がある。
【0006】
従って、本発明の課題は、化粧板の固定の効率が良好で、操作が簡便かつ品質の安定した施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、前記の問題点について鋭意検討した結果、下貼りをせっこうボードに、仕上材を窯業系化粧板に限定した上で、双方の被着面に対する接着性が良好な粘着剤層を、長期にわたって安定した弾性を有するポリマーフォーム基材の両面に形成し、かつ片面に剥離ライナーを有する両面粘着テープのみを用いてせっこうボードと窯業系化粧板とを圧着固定すれば、仮止め用両面粘着テープが担う初期接着力と、硬化性の接着剤が担う恒久接着力の両方の機能を、1種類の両面粘着テープのみで担保できる施工方法を見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕下貼りであるせっこうボードの表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する内装仕上化粧板の施工方法であって、
前記両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、
少なくとも前記両面粘着テープの片側の面には剥離ライナーを備えており、
前記窯業系化粧板の裏面には含浸シーラーが塗布されていることを特徴とする内装仕上化粧板の施工方法。
〔2〕前記弾性ポリマーフォーム基材が、独立気泡を多量に含むアクリルフォーム、ポリエステルフォームまたはポリエチレンフォームであり、その引張弾性率が10~20MPaであることを特徴とする〔1〕記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔3〕前記窯業系化粧板が、かさ密度0.6~1.2g/cmの化粧けい酸カルシウム板であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔4〕前記含浸シーラーが、湿気硬化型のポリウレタン樹脂系の無溶剤含浸シーラーであり、塗布量が5~30g/mであることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔5〕窯業系化粧板裏面とせっこうボードを前記両面粘着テープで接着したときの平面引張強度が0.2MPa以上であり、かつ前記窯業系化粧板1枚あたりに対する前記両面粘着テープによる接着面積の割合が、8~20%であることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔6〕前記窯業系化粧板裏面の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから該窯業系化粧板を壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔7〕窯業系化粧板の製造工場または加工場において、あらかじめ施工する壁面あるいは天井面の割付けに合わせた寸法および数量の窯業系化粧板の裏面に対し、前記両面粘着テープを配置して圧着したものを作成し、当該両面粘着テープ付窯業系化粧板を施工現場に搬入したのち、剥離ライナーを剥がしてから壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することを特徴とする〔6〕に記載の内装仕上化粧板の施工方法。
〔8〕壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に、仕上施工する窯業系化粧板の割付け位置および寸法に対し、外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定することを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の内装仕上化粧板の施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内装仕上化粧板の施工方法によれば、せっこうボードの下貼り面に対し、中間層に特定の厚さを有する弾性ポリマーフォーム基材を有する両面粘着テープのみを用いて効率よく窯業系化粧板を固定することが可能であり、建設現場の労働力不足に対応しうる簡易かつ品質の安定した内装材の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に用いる両面粘着テープの基本構造を示す図である。
図2】窯業系化粧板の裏面への両面粘着テープの配置例を示す図である。
図3】両面粘着テープの平面引張試験方法の概要を示す図である。
図4】本発明方法により施工した窯業系化粧板の動的変形能試験方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の内装仕上化粧板の施工方法は、下貼りがせっこうボードであり、その表面に窯業系化粧板を両面粘着テープのみで固定する施工方法であって、
前記両面粘着テープは、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmの弾性ポリマーフォーム基材の両面に、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤を塗布してなるものであり、
少なくとも前記両面粘着テープの片側の面には剥離ライナーを備えており、
前記窯業系化粧板の裏面には含浸シーラーが塗布されていることを特徴とする。
【0013】
下貼りのせっこうボードとしては、特に限定されるものではなく一般的な建築物の内装の下貼りに用いられるものであり、好ましくはJIS A 6901に準拠したせっこうボード、強化せっこうボード、シージングせっこうボード等が適用できる。
下貼りがせっこうボードであることにより、前記両面粘着テープのみで窯業系化粧板を簡便かつ効率良く固定可能となる。
【0014】
本発明に用いる窯業系化粧板は、基板となる窯業系ボードの片側の面に、塗装、印刷、シート貼り等により化粧層を形成させた建築材料であり、建築物の内装仕上材として広く用いられているものである。基板となる窯業系ボードとしては、特に限定されるものではないが、繊維強化セメント板、繊維強化せっこう板等が挙げられ、なかでもJIS A 5430に規定された繊維強化セメント板の一種であるけい酸カルシウム板は、かさ密度が0.6~1.2g/cm3と軽量であり、かつ適度な柔軟性と強度を持つことから、本発明施工方法の適用に特に適している。窯業系化粧板の化粧層を形成した側と反対側の面(裏面)は、前記両面粘着テープを用いた圧着による施工に適するよう含浸シーラーを塗布しておくことが好ましい。含浸シーラーは、特に、VOC(揮発性有機化合物)の放散源とならないよう湿気硬化型のポリウレタン樹脂系シーラー等の無溶剤含浸シーラーであることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる両面粘着テープの基本構成を図1に示す。弾性ポリマーフォームで形成された基材の両面に粘着剤が塗布されており、少なくともその片側の面には剥離ライナーを備えている。これを紙管に巻き取るなどにより、1巻あたり10~15m程度のテープとするのが施工現場での使用に適している。また、必要に応じて基材表面をプライマー処理することにより基材と粘着剤をより強固に接着しておくこともできる。窯業系化粧板を固定するために必要な両面粘着テープの使用量の増加を防止し、施工効率および、コストを上昇させない点から、せっこうボードとシーラー処理してある窯業系化粧板の裏面を両面粘着テープで接着し、接着面に対して垂直方向に引張って接着力を測定したときの平面引張強度が0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましい。
【0016】
両面粘着テープに用いる基材としては、窯業系化粧板の裏面にある凹凸や、せっこうボードの下貼り表面の不陸を吸収し、施工時に均一な圧着力で貼り付けられるようにある程度の厚さと弾性を持つ弾性ポリマーフォームが適用される。好ましい材質としてはアクリルフォーム、ポリエステルフォーム、ポリエチレンフォームなどの弾性ポリマーフォームが挙げられるが、なかでもポリエチレンフォームは加工がしやすく安価なことから使いやすい素材といえる。ただし、通常の低密度ポリエチレン(LDPE)では、発泡剤を添加してシート状のポリマーフォームとした場合にやわらかすぎて弾性の足りないシートとなってしまう。このため、適度な弾性を持たせるためにエチレン・アクリル酸エチル共重合体などの別のエチレン系樹脂をブレンドして用いるのが好ましい。
【0017】
また、当該弾性ポリマーフォーム基材は、厚さ0.5~2.5mm、幅15~35mmであることが、少ない使用量で確実な固定を実現する点で好ましい。より好ましくは、1.0~2.0mm、幅20~30mmである。さらに、独立気泡を多く含む成形体とすることにより、適度な弾性を安定して維持することができる。基材である弾性ポリマーフォームの特性としては、厚さ方向の発泡倍率が2.5~5倍の範囲であるのが好ましい。また、厚さ1mmの基材(または両面粘着テープ)を、幅20mm、長さ150mmの試験片(JIS A 712 6.1.1試験片タイプ2)とし、チャックスパン100mm、引張速度300mm/minで長さ方向に引張ったときの引張弾性率(応力-ひずみ曲線における弾性域の回帰直線の傾き)が10~20MPaであることが好ましく、10~15MPaであることがより好ましい。引張弾性率が小さすぎると、軟らかすぎて窯業系化粧板を長期にわたって固定する場合に基材のひずみによるズレや浮きが発生しやすくなるため好ましくなく、大きすぎると硬すぎて下貼りの不陸を吸収できないため仕上がりの平面性に劣り、また窯業系化粧板裏面の凹凸とのなじみが悪くなるため十分な接着力を得ることができない。本来の使用目的からすると圧縮弾性率で評価するのが適当と考えられるが、厚さ1mm程度のシート状では圧縮試験が困難なため、代用特性として引張弾性率の値で評価した。
【0018】
両面粘着テープに用いる粘着剤としては、長期にわたり強い粘着力を安定して維持できることが必要であり、アクリル系粘着剤やポリエステル系粘着剤などが有用である。特にアクリル系粘着剤は粘着力が強く、無溶剤での加工が容易であるため適している。建築物の内装材の施工に使われるものとしては、VOC(揮発性有機加工物)を発散しないものが好ましく、この点からも無溶剤アクリル系粘着剤が好適である。また、粘着剤は、アクリル樹脂等のベース材料に対し、粘着付与剤、架橋剤、老化防止剤等の各種添加剤を加えたものを使用することもできる。添加剤を加えることにより、強力な粘着力を長期間維持できるよう改良できると共に、本発明で用いる粘着剤においては、被着体であるせっこうボードの表面材(板紙)およびシーラー処理された窯業系化粧板の裏面の双方に対する接着性が良好な粘着剤となるよう添加剤を調整して用いるのが好ましい。また、粘着剤の塗布量は、両面粘着テープの片面あたり80~150μmが好ましい。塗布量が少なすぎると窯業系化粧板の裏面の凹凸に入り込んで密着するのに不十分であり、多すぎると施工後に粘着剤層でズレを生じやすくなり、長期的な保持特性が低下する可能性がある。
【0019】
本発明で用いられる両面粘着テープは、少なくともその片側の面に剥離ライナーを備えている。剥離ライナーは、紙またはプラスチックフィルムの表面に、長鎖アルキル系またはシリコーン系の剥離剤を薄く塗布したものであり、使用する粘着剤の性質に合わせたものを適宜用いることができる。
【0020】
本発明の施工方法の手順としては、まず仕上材として用いる窯業系化粧板の裏面(せっこうボードと固定する面)の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し(図2参照)、次いで剥離ライナーを剥がしてから該窯業系化粧板を壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定する方法がある。この手順は、段取りが容易であり、両面粘着テープの配置、圧着が済んだ窯業系化粧板を1枚ずつ位置合わせをしながら施工できるため比較的経験の浅い施工員であっても容易にきれいな仕上がりとすることができる。また、施工現場での作業負担をさらに軽減できる方法として、窯業系化粧板の製造工場または加工場において、あらかじめ施工する壁面あるいは天井面の割付けに合わせた寸法および数量の窯業系化粧板の裏面に対し、前記両面粘着テープを配置して圧着したものを作成し、当該両面粘着テープ付窯業系化粧板を施工現場に搬入したのち、剥離ライナーを剥がしてから壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に圧着して固定することもできる。こうすることで、施工現場での作業効率は飛躍的に向上することが期待できる。
【0021】
もう一つの手順としては、壁面または天井面に下貼りされたせっこうボードの表面に、仕上施工する窯業系化粧板の割付け位置および寸法に合わせ、施工する窯業系化粧板と対向する位置の外周端部から5~10mmあけた位置に額縁状に前記両面粘着テープを圧着し、該両面粘着テープで額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置して圧着し、次いで剥離ライナーを剥がしてから当該両面粘着テープに窯業系化粧板の裏面を圧着して固定する方法がある。この手順では、壁面または天井面に下貼りされたせっこうボード表面に対し先に両面粘着テープを配置、圧着しておくことで、段取りには手間がかかるものの、仕上材の貼付けを一気に進めることができる。また、複数人の施工員で作業する場合には、先行して段取り作業を進めておくことで全体の施工効率を上げることが可能と考えられる。さらに、この手順で施工する場合、下貼りのせっこうボードの目地位置を避けて両面粘着テープを配置することが容易であるため、意図しない接着面積の減少を回避して、より安全な仕上がりとすることができる。
【0022】
本発明の施工方法における両面粘着テープは、図2に示すように、仕上材として用いる窯業系化粧板の裏面の外周端部から5~10mmあけた位置における額縁状および該額縁状に囲われた内側の部分に長手方向に平行な向きで間隔をあけて少なくとも2本以上のスジ状に長手方向全長にわたって前記両面粘着テープを配置することを基本とするのが好ましい。この際、配置した両面粘着テープの総面積が、該窯業系化粧板の面積に対して8~20%、より好ましくは10~20%の範囲とするのが適切である。配置した両面粘着テープの総面積が該窯業系化粧板の面積に対して小さすぎると窯業系化粧板を固定して支えるための接着力が不十分となり、脱落の危険性があるほか、窯業系化粧板の吸放湿による反りで端部が剥がれたりするおそれがあるため好ましくなく、大きすぎると過剰に両面粘着テープのコストが膨らんで経済性が著しく低下するため好ましくない。
【実施例
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
実施例1
まず平面引張試験により、両面粘着テープの接着強度を測定した。試験方法の概要を図3に示す。厚さ1mm、幅20mmの弾性ポリマーフォーム基材(ポリエチレン系樹脂フォーム:引張弾性率約12.3MPa)の両面にアクリル系無溶剤粘着剤(主成分:ポリ2-エチルヘキシルアクリレート)を片面あたり約100μmの厚さで塗布して片側の面に紙製の剥離ライナーを付けた両面粘着テープを用意し、厚さ6mm×20mm角の化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)の含浸シーラー処理された裏面に圧着し、さらに剥離ライナーを剥がした面を厚さ12.5mm×50mm角のせっこうボード(タイガーボード:吉野石膏(株)製)の表面中央部にあてがい、荷重5kgで10秒間圧着して試験体を作成し、これを室温で7日間養生した。養生後の試験体の化粧けい酸カルシウム板の化粧面をエポキシ接着剤で引張試験用治具に接着し、せっこうボードを固定治具に引っかけた状態で50mm/minの試験速度で引張試験を行って平面引張強度を測定した。その結果、平面引張強度は0.35MPaであった。
【0025】
比較例1
既存の弾性接着剤と両面粘着テープの併用工法で用いる厚さ1mm、20mm幅の仮止め用両面粘着テープ(ボンドTMテープW1-20:コニシ(株)製)を用いた以外は実施例1と同様の方法で平面引張強度を測定した。その結果、平面引張強度は0.10MPaであった。
また、比較例1で用いた仮止め用両面粘着テープの引張弾性率は約3.7MPaであった。
【0026】
実施例2
次に、実施例1と同じ材料の組み合わせで、間仕切り壁における動的変形能試験を行った。試験に用いた装置と試験体の概要を図4に示す。試験装置は、油圧シリンダーを接続して上側長辺を平行方向に変形可能となるよう四隅を軸受で接合した矩形フレームで構成されており、当該フレームの内側上下に固定したランナーに455mmピッチでスタッドを立てて下地を組み、この下地組の両面に下貼りとして厚さ12.5mmのせっこうボード(タイガーボード:吉野石膏(株)製)をφ3.5×25mmのタッピンネジで固定して下貼り面を作成した。仕上材の窯業系化粧板としては、厚さ6mmの化粧けい酸カルシウム板(ステンド#400:(株)エーアンドエーマテリアル製)を使用し、裏面に図2と同様の配置で実施例1と同じ両面粘着テープを配置して圧着し、剥離ライナーを剥がして下貼りのせっこうボードの表面に圧着して図4に示した構成の試験体となる間仕切り壁の施工を行った。試験体はそのまま2週間の養生期間を置いたのち、動的変形能試験を実施した。
一般財団法人建材試験センター規格JSTM J 2001:1998「非耐力壁の面内せん断曲げによる動的変形能試験方法」に準拠し、加振枠上部水平材に正弦波による動的水平変形を強制的に加え、試験体の破損程度、脱落の有無を目視観察で評価した。大地震動を想定して振動加速度を400gal(気象庁震度階級6弱)に設定し、振動加速度と層間変形角より振動数を算出し、所定の層間変形角に相当する加振振幅まで約10秒かけて増大させ、その加振振幅を40秒保持したのち、約10秒かけて加振振幅を減少・停止させて目視観察する方法で試験を行った。層間変形角はJSTM規格の1/200、1/150、1/120、1/100とし、この4条件を1セットとして3回繰り返した。その結果、試験終了までに仕上材である化粧けい酸カルシウム板に脱落や亀裂の発生等は認められず、面内変位に対して十分な耐力を持つ施工方法であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の内装仕上化粧板の施工方法によれば、せっこうボードの下貼り面に対し、両面粘着テープのみを用いて効率よく窯業系化粧板を固定することが可能であり、建設現場の労働力不足に対応しうる簡易かつ品質の安定した内装材の施工方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4