(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高精度制御される自転車ギアシフト装置および自転車ギアシフト装置におけるギアシフト方法
(51)【国際特許分類】
B62M 9/124 20100101AFI20241128BHJP
B62M 9/125 20100101ALI20241128BHJP
B62M 9/126 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
B62M9/124
B62M9/125
B62M9/126
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019176015
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】102018000009245
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】パスカ・パオロ
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150030(JP,A)
【文献】特開平08-020375(JP,A)
【文献】特開平05-071740(JP,A)
【文献】実開昭48-043352(JP,U)
【文献】実開昭55-065291(JP,U)
【文献】実開平06-061686(JP,U)
【文献】特開平08-169387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281899(US,A1)
【文献】実開昭62-016584(JP,U)
【文献】特開昭52-086639(JP,A)
【文献】特開2014-162478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用のギアシフト装置(10;110;210)であって、
- 基体(12)と可動体(14)とを有する関節接続型の四辺形リンク(11)であって、前記基体(12)および前記可動体(14)は、当該基体(12)と当該可動体(14)とに関節接続された一対のコネクティングロッド(13,15)を介して互いに連結されている前記四辺形リンク(11)と、
- 前記基体(12)を前記自転車のフレーム(4)に固定する固定部(30)と、
- 前記可動体(14)に取り付けられたチェーンガイド(20)と、を備え、
前記関節接続型の四辺形リンク(11)は、当該関節接続型の四辺形リンク(11)を変形させることで、前記基体(12)に対する前記可動体(14)の変位を決定し、それにより、コグセット(2)の軸心(A)に対して軸方向への前記チェーンガイド(20)の一次変位を決定するように適合された、前記ギアシフト装置(50;250)を作動させる手段と関連付けられており、
前記固定部(30)は、
- 軸心(C)を有し、前記自転車の前記フレーム(4)に前記基体(12)を固定するように構成されたピン本体(31)と、
- 前記チェーンガイド(20)の前記一次変位に応じて、前記関節接続型の四辺形リンク(11)の前記基体(12)と前記フレーム(4)との間の相対角度位置を変更する機構(60)とを備え、
前記基体(12)と前記フレーム(4)との間の前記相対角度位置を変更する前記機構(60)は、
- 回転体(61)であって、当該回転体(61)の回転が、前記ピン本体(31)と前記基体(12)との間における前記軸心(C)を中心とした相対回転を決定するように前記ピン本体(31)に連結され、
前記基体(12)に対して相対回転する回転体(61)と、
- 前記ギアシフト装置(50;250)を作動させる前記手段によって直接的または間接的に回転状態に設定されるピン(16;116;216)と、
- 前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間のトランスミッション(62,63;162,163)と、を備えるギアシフト装置において、
前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間の前記トランスミッション(62,63;162,163)は、可変ギア比を有することを特徴とするギアシフ
ト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車用のギアシフト装置(10;110;210)において、前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間の前記トランスミッションは、前記回転体(61)と一体として回転する歯付きセクタ(62)および前記ピン(16;116;216)と一体として回転するスプロケット(63;163)を有する非円形ギアを備え、前記歯付きセクタ(62)および前記スプロケット(63)は互いに係合しており、可変径の歯状部を有するギアシフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)および前記スプロケット(163)は、少なくとも2つの相互角度位置において選択的に連結可能であるギアシフト装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)および前記スプロケット(163)は、前記少なくとも2つの相互角度位置において選択的に、カップリングを介して連結可能であり、
前記カップリングは、
- 前記スプロケット(163)に形成された軸方向孔(170)であって、当該軸方 向孔(170)
の中心から径方向に延びる少なくとも2対の対向する座部(171,172)が 設けられた軸方向孔(170)と、
- 前記ピン(116;216)において前記径方向に延びるように形成された2つの対向するフィン(173)であって、前記スプロケット(163)の前記軸方向孔(170)における前記座部の対(171,172)のうちの一方の対に着脱可能に係合しているフィン(173)と、を有するギアシフト装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)は、前記基体(12)と前記2つのコネクティングロッドのうちの第1のコネクティングロッド(13)との間において、当該第1のコネクティングロッド(13)に形成された座部(175)に収容され、前記座部(175)に回転不能にロックされた状態で且つ前記基体(12)に対して回転可能に取り付けられているギアシフト装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、前記ピン(116)は、多角形断面を有するステム(174)を有し、前記座部(175)は、対応する多角形断面を有するギアシフト装置。
【請求項7】
請求項5に記載の自転車用のギアシフト装置(210)において、前記第1のコネクティングロッド(13)の前記座部(175)は、当該
第1のコネクティングロッド(13)の着脱可能な部分(278)により形成された成形部分(277)を有し
、前記ピン(116,216)は多角形断面を有するステム(174,274)を有し、前記座部(175)は前記ステム(274)と対応する多角形断面を有するギアシフト装置。
【請求項8】
請求項5に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)は、前記座部(175)において、スプロケット(163)と連結されている引き込み時の連結位置と、前記スプロケット(163)との連結が解除されている引出し時の非連結位置との間で軸方向に移動可能であり、前記ピン(116;216)を 、引き込み時は前記連結位置に、引出し時は前記非連結位置に保持するために、着脱可能な係止手段が設けられているギアシフト装置。
【請求項9】
請求項8に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記ピン(116)に形成された2つの凹部(180,181)であって、前記ピン(116)の軸心(B)の方向に離間して並ぶ凹部(180,181)と、
- 前記座部(175)に形成された横孔(184)に取り付けられたポインタ(183)と、
- 前記横孔(184)内の弾性要素(185)であって、前記ポインタ(183)を 径方向に弾性的に押圧して、前記2つの凹部(180,181)の一方または他方と係合 させた状態に保持する弾性要素(185)とを備えるギアシフト装置。
【請求項10】
請求項8に記載の自転車用のギアシフト装置(210)において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記座部(175)において横方向に開口したスリット(284)と、
- 前記スリット(284)の長手方向
にあり、かつ前記第1のコネクティングロッド(13)の外側に面する、前記スリット(284)の側方窓(282)と、
- ボルト(283)であって、当該ボルト(283)が前記座部(175)の内部で突出し且つ前記スプロケット(163)との前記引き込み時の連結位置で前記ピン(216)を保持する保持位置と、当該ボルトが前記座部(175)内に突出しておらず、前記スプロケット(163)から引き出された前記引出し時の非連結位置に前記ピン(216)を移動させることができる解除位置との間で、前記スリット(284)に移動可能に取り付けられたボルト(283)と、
- 前記保持位置へと前記ボルト(283)を押圧する弾性要素(285)と、
- 前記弾性要素(285)とは反対方向に前記ボルト(283)を移動させるように作動可能に前記側方窓(282)から突出する前記ボルトの操作部(281)と、を備えるギアシフト装置。
【請求項11】
請求項8に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、引出し時の前記非連結位置を超えて前記座部(175)から前記ピン(116)が引き出されるのを防止する前記ピン(116)のエンドストップ機構(186~188)を備えるギアシフト装置。
【請求項12】
請求項3に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)と前記スプロケット(163)との間の前記相互角度位置
を示すための外側インジ ケータ(190~192)を備えるギアシフト装置。
【請求項13】
自転車用のギアシフト装置(10;110;210)においてギアシフト動作を行う方法であって、
- 伝動チェーン(5)をチェーンガイド(20)と係合させることと、
- 前記チェーンガイド(20)において、コグセット(2)に対して軸方向への一次変位を生じさせて、前記コグセット(2)のスプロケット間で前記伝動チェーン(5)を移動させることと、
- 同時に、前記チェーンガイド(20)において、前記コグセット(2)に対して径方向に二次変位を生じさせて、前記伝動チェーン(5)がより大きいスプロケットからより小さいスプロケットへと移動されたときに、前記チェーンガイド(20)を前記コグセット(2)に向かって移動させ、および、前記伝動チェーン(5)がより小さいスプロケットからより大きいスプロケットへと移動されたときに、前記チェーンガイド(20)を前記コグセット(2)から離すように移動させることと、を含む方法において
- 前記二次変位は、前記コグセットにおいて
相対的により大きいスプロケットに対応する位置で前記一次変位が生じたときに、より大きな変位となり、前記コグセットにおいて
相対的により小さいスプロケットに対応する位置で前記一次変位が生じたときに、より小さな変位となることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記二次変位は、前記ギアシフト装置(110;210)に取り付けられた前記コグセット(2)を
構成する複数のスプロケットの組み合わせに応じて調節可能である方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記二次変位は、最大可動域と、前記最大可動域の一部のみに延在する有用可動域と、を有するトランスミッションを用いた前記一次変位によって実現され、前記二次変位は、前記最大
可動域の範囲内で異なる範囲である前記有用可動域を選択することによって調節可能である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度制御される自転車ギアシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車ギアシフト装置という用語は、伝動チェーンが係合しているチェーンガイドを移動させる目的で、異なるチェーンリング間で当該チェーンを変位させる機械装置を指している。
【0003】
本明細書および添付の請求の範囲において、ギアシフト装置とは、自転車の後輪と関連付けられたコグセットの異なるスプロケット間で伝動チェーンを移動させるリアギアシフト装置を指している。
【0004】
通常、自転車用ギアシフト装置は、関節接続型の四辺形リンク(通常、関節接続型の平行四辺形)であって、基体と、この関節接続型の四辺形において上記基体とは反対側にある可動体と、を有する四辺形リンクを備え、これら基体および可動体は、4つのピン要素を介して4本のヒンジ連結軸に沿って上記基体および可動体にヒンジ連結された一対のコネクティングロッドを介して互いに連結され、上記基体は自転車のフレームに固定され、上記可動体はチェーンガイドに固定されている。
したがって、上記関節接続型の四辺形の変形により、上記コグセットの軸方向における上記フレームに対する上記チェーンガイドの一次変位が決定され、これにより、ギアシフト動作が決定される。
【0005】
上記関節接続型の四辺形の変形は、手動で制御レバーを動作させ、その動作がケーブル(例えば、ボーデンケーブル)を介して当該関節接続型の四辺形へ伝達されることによって、または電気モータによるモータ作動で、サイクリストによって与えられる適宜の制御の後に適宜機構を介して当該関節接続型の四辺形の互いに異なる部品を移動させることによって、当該関節接続型の四辺形を変形させ、それによってチェーンガイドを移動させて実現することができる。
【0006】
ギアシフト装置の製造者は、ギアシフト装置の操作の容易さと信頼性とが決まる作動精度を向上させることを常に目的としている。
この要件は、ギアシフト装置がハイレベルの自転車競技における使用を意図されているものであるほど、より重要な要件となる。
公知の自転車用ギアシフト装置において高精度の制御を実現するために、フレームの形態および構造ならびに後輪と関連付けられたコグセットの形態および構造に応じてチェーンのテンションを最適化する目的で、自転車の初期調節が行われる。
【0007】
一部のギアシフト装置、特にマウンテンバイクに用いられるギアシフト装置は、上記リンクの基体と上記フレームとの間の相対角度位置の初期設定インターフェース、および上記リンクに挿入されたチェーンテンションばねを備えることにより、トランスミッションのチェーンと係合されたとき、上記チェーンガイドの形態を決定することが可能である。
【0008】
このような種類のギアシフト装置において、初期調節は、上記リンクの基体と上記フレームとの間の相対角度位置に作用し、また、上記リンクに挿入されたばねに作用して、様々な走行形態において伝動チェーンの適切なテンションを維持するために、場合により上記ばねに予圧を加える。
【0009】
上記基体とフレームとの間の相対角度位置および上記チェーンテンションスプリングの予圧の初期設定は、上記チェーンガイドを持ち上げて上記スプロケットに可能な限り近付けるように行われる。
実際、上記チェーンガイドとスプロケットとの間の距離が低減されることにより、このような状況においては、上記スプロケットの軸心と平行な上記チェーンガイドの変位成分が、チェーンに加えられる傾きであって、1つのスプロケットから他のスプロケットへの移動を生じさせるために十分な傾きと一致するので、より高い制御感度が決まる。
【0010】
しかしながら、上記スプロケットに向かって上記チェーンガイドを持ち上げることは、最も大径のスプロケットによって制限される。実際、最も大径のスプロケットに近付け過ぎると、最も低いギア比と次のギア比との間のシフトが荒く感じられたり、低いギア比でペダリングが遅くなる場合(pedaling backwards)チェーンとチェーンガイドとの間が擦れ合ってしまったりするなどの問題が生じる。
【0011】
しかし、これらのスプロケットに最も近い調節形態において、最も大きいスプロケットのサイズにより、上記チェーンガイドとより小さいサイズのスプロケットとの間には依然として上下方向に大きな隙間が存在するので、より高い比の間でのギアシフト制御の精度は、より低い比の間でのギアシフト制御の精度よりも低い。
【0012】
これらの欠点を回避しつつ、ギアシフト動作の精度を向上するために、本願と同じ出願人による特許文献1には、ギアシフト装置の可動体が(任意のギアシフト装置作動システムによって)移動されて、コグセットの軸心方向にチェーンガイドの一次変位を決定したとき、自転車のフレームに対して基体が回転されることにより、上記コグセットの軸心に対して径方向に上記チェーンガイドの同時的な二次変位を決定するように、可動体が複雑な動作を行うギアシフト装置が記載されている。これにより、チェーンがより小さいスプロケットの1つと係合している場合であっても、上記チェーンガイドが上記コグセットに極めて近い状態にすることが可能である。
【0013】
この解決手段は、チェーンガイドをコグセットに近づけることにより、いかなる場合においてもギアシフト動作の精度を向上させることが可能であるものの、出願人は、特定のコグセットにより、特には、一般的になりつつある極めて多数(11枚、12枚、またはそれよりも多く)のスプロケットを有するコグセットにより、上記チェーンガイドと上記コグセットとの間の径方向距離は、最も大きいスプロケットおよび最も小さいスプロケットにおいてのみ最小限にすることができ、中間のスプロケットにおいては、より大きな距離が存在することが避けられないということに気付いた。
【0014】
この短所の理由としては、多数のスプロケットを有するコグセットにおいて、2つの隣接するスプロケット間の歯数の差は、通常、最も小さいスプロケットでは1であり、最も大きいスプロケットでは2であって、これらの状況は、当該分野においてジャンプ1(jump 1)およびジャンプ2(jump 2)と簡潔に示されることが多い周知の状況である。これにより、(径方向に、例えば、走行方向に対して後方から見たとき)コグセットの外形が円錐形状から外れて、ファネル状の形状、すなわち、突き合わされた2つの円錐形状が、より小さいスプロケットにおける(より低い、つまり前記コグセットの軸心と平行な状態からの逸脱が少ない)第1の傾斜と、より大きいスプロケットにおける(より大きい)第2の傾斜という異なる傾斜を有することによって決定される形状を有することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の根底をなす課題は、ギアシフト動作の精度をさらに高めることができる自転車用のギアシフト装置を提供することによって、上記の欠点を回避することである。
より具体的にいえば、本発明の根底をなす課題は、特許文献1から公知のギアシフト装置と比較して、チェーンガイドと中間サイズのスプロケットとの間の位置決めの距離を低減することが可能な自転車用のギアシフト装置を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、請求項1に記載の自転車用のギアシフト装置と、請求項13に記載のギアシフト動作を行う方法とに関し、前記自転車用のギアシフト装置および前記方法の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0018】
より具体的にいえば、前記自転車用のギアシフト装置は、
- 基体と可動体とを有する関節接続型の四辺形リンクであって、前記基体および前記可動体は、当該基体と当該可動体とに関節接続された一対のコネクティングロッドを介して互いに連結されている四辺形リンクと、
- 前記基体を自転車のフレームに固定する固定部と、
- 前記可動体に取り付けられたチェーンガイドと、を備え、
前記関節接続型の四辺形リンクは、当該関節接続型の四辺形リンクを変形させることで、前記基体に対する前記可動体の変位を決定し、それにより、コグセットの軸心(A)に対して軸方向への前記チェーンガイドの一次変位を決定するように適合された前記ギアシフト装置を作動させる手段と関連付けられている。
前記固定部は、
- 軸心(C)を有し、前記自転車の前記フレームに前記基体を固定するように構成されたピン本体と、
- 前記チェーンガイドの前記一次変位に応じて、前記関節接続型の四辺形リンクの前記基体と前記フレームとの間の相対角度位置を変更する機構とを備え、
前記基体と前記フレームとの間の前記相対角度位置を変更する前記機構は、
- 回転体であって、当該回転体の回転が、前記ピン本体と前記基体との間における前記軸心(C)を中心とした相対回転を決定するように前記ピン本体に連結されている回転体と、
- 前記ギアシフト装置を作動させる前記手段によって直接的または間接的に回転状態に設定されるピンと、
- 前記ピンと前記回転体との間のトランスミッションとを備える。
本発明によると、前記ピンと前記回転体との間の前記トランスミッションは、可変ギア比(variable gear ratio)を有する。
【0019】
以下において、可変ギア比を有するトランスミッションという用語は、2つの回転部材(実際には、前記ピンおよび前記回転体など)の間のトランスミッションであって、これらの回転部材自体が回転する間にギア比が変化するような形態を有するトランスミッションを意味している。
ギア比が可変であることにより、前記ピン本体に対する、従って(前記チェーンガイドの二次変位を生じさせる)前記フレームに対する前記可動体の回転は、(前記チェーンガイドの一次変位と関連する)前記ピンの回転に対して直線的に比例しないものとなる。よって、このトランスミッションを適切に選択し適切な大きさとすることにより、(1つのスプロケットと次のスプロケットとの間の歯数の差が2である)ジャンプ2の状況において、より大きなスプロケットを有する前記コグセットの領域において一次変位が生じた場合には、(1つのスプロケットと次のスプロケットとの間の歯数の差が1である)ジャンプ1の状況において、より小さなスプロケットを有する前記コグセットの領域において一次変位が生じた場合と比較すると、一次変位における前記チェーンガイドの二次変位が比較的大きくなるようにすることが可能である。
好ましくは、前記ピンおよび前記回転体は、前記ギアシフト装置に対して様々な初期調整(initial calibration)を施すことができるように、少なくとも2つの相互角度位置において共に連結されていてもよい。
【0020】
好ましくは、前記ピンと前記回転体との間の前記トランスミッションは、前記回転体と一体として回転する歯付きセクタおよび前記ピンと一体として回転するスプロケットを有する非円形ギアを備え、前記歯付きセクタおよび前記スプロケットは互いに係合しており、可変径の歯状部(toothings with variable diameter)を有する。ここで、可変径の歯状部という用語は、各歯における歯状部の直径が隣接する歯における直径とはそれぞれ異なる歯状部を意味している。
【0021】
したがって、前記歯付きセクタおよび前記スプロケットの寸法を、前記コグセット全体にわたっての前記チェーンガイドの軸方向への移動に対応して前記スプロケット(したがって前記ピン)が回転するときに、ギア比が最小値から最大値まで変化するような寸法とすることが可能である。前記歯付きセクタおよび前記スプロケットの角度方向の範囲は360°未満であるが、この範囲には、前記チェーンガイドの全可動域に対応する角度が十分含まれる。通常、上記範囲は、前記歯付きセクタに対しては45~90°とし、前記スプロケットに対しては90~180°とすることが必要である。トランスミッションの良好な均一性を確保するために、歯数の観点から、前記歯付きセクタおよび前記スプロケットの歯数が同一または一つ異なる数であることが好ましく、前記歯数は少なくとも4であり、より望ましくは少なくとも5であって、前記スプロケットにおいては7、前記歯付きセクタにおいては8であることが好ましい。
【0022】
好ましくは、前記ピンおよび前記スプロケットは、少なくとも2つの相互角度位置において互いに選択的に、より好ましくはカップリングを介して連結可能である。したがって、前記軸方向の様々な位置において様々な値の前記チェーンガイドの二次変位を(つまり、前記コグセットに対して径方向に)実現するように前記可変比を有するトランスミッションを様々な方法で調節することで、前記ギアシフト装置に対して様々な調整を施すことが可能である。実際には、これにより、設置された特定のコグセットに応じた様々な方法で前記ギアシフト装置を調整することが可能である。このようにすることが可能であることは、例えば、自転車を急な上り坂ではなく平坦なレースに適合させるために、異なるコグセットを取り付けることが選択できる場合に特に有益である。
換言すれば、前記トランスミッションは、最大角度可動域と、有用角度可動域とを有し、この有用可動域は、使用を所望するコグセットに応じて前記最大可動域の制限内で選択することができる。
【0023】
好ましくは、前記カップリングはフロントカップリングであり、
- 前記スプロケットに形成された軸方向孔であって、当該軸方向孔から径方向に延びる少なくとも2対の対向する座部が設けられた軸方向孔と、
- 前記ピンにおいて前記径方向に延びるように形成された2つの対向するフィンであって、前記スプロケットの前記孔の前記座部の対のうちの一方の対に着脱可能に係合しているフィンと、を有する。
この構成により連結の確実性が十分に確保され、この確実性により、変形を最小限とし、したがって高精度の作動が確保される。
さらにより好ましくは、座部は2対のみ設けられている。実際のところ、実用上、十分以上の調節を可能とするためには、前記ピンと前記スプロケットとの間に2つの相互連結位置があれば、通常は十分である。
好ましくは、前記座部の対は10~45°の範囲の角度で、好ましくは約35°の角度で互いにオフセットしている。
【0024】
好ましくは、前記ピンは、前記基体と前記2つのコネクティングロッドのうちの第1のコネクティングロッドとの間において、当該コネクティングロッドに形成された座部に収容され、前記座部に回転不能に係止された状態で且つ前記基体に対して回転可能に取り付けられている。これにより、前記ピンは、前記基体に対する前記第1のコネクティングロッドのヒンジ連結を確保するピンであって、したがって、前記ギアシフト装置の動作中に、前記第1のコネクティングロッドが前記基体に対して回転する角度と同一の角度で前記基体に対して直接回転するものと同一のピンである。中間要素が存在しないことにより、最大限の操作精度が確保される。
【0025】
好ましくは、前記ピンは、多角形断面を有するステムを有し、前記座部は、対応する多角形断面を有する。このカップリングにより、角度方向における最大限の精度が確保されるので、あらゆる回転が死角なしで伝達されつつ、軸方向への変位が可能となる。
あるいは、前記コネクティングロッドの前記座部は、当該コネクティングロッドの着脱可能な部分により形成された成形部分を有し、前記ステムは対応する成形部を有する。この連結および優れた精度により、組み立て操作が容易となる。
【0026】
好ましくは、前記ピンは、前記座部において、前記スプロケットと連結されている引き込み時の連結位置と、前記スプロケットとの連結が解除されている引出し時の非連結位置との間で軸方向に移動可能であり、前記ピンを前記引き込み位置および場合によっては前記引出し位置に保持するために、着脱可能な係止手段が設けられている。前記連結位置は、当然に通常動作の位置であり、前記非連結位置は、前記ピンを外さずに前記スプロケットに対して前記ピンを回転させて、使用されるコグセットに応じて、一対の座部が係合する一対のフィンを選択できるようにすることを可能とする。
【0027】
好適な実施形態において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記ピンに形成された2つの凹部であって、前記ピンの前記軸心の方向に離間して並ぶ凹部と、
- 前記座部に形成された横孔に取り付けられたポインタと、
- 前記横孔内の弾性要素であって、前記ポインタを前記径方向に弾性的に押圧して、前記2つの凹部の一方または他方と係合させた状態に保持する弾性要素とを備える。
これにより、前記凹部における前記ポインタの押し付けを解消するように前記ピンを前記軸方向に押すだけで、前記ピンをそのカップリング位置から非カップリング位置へと、また、非カップリング位置からカップリング位置へと容易に移動させることが可能である。
【0028】
他の好適な実施形態において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記座部において横方向に開口したスリットと、
- 前記スリットの長手方向にあり、かつ前記第1のコネクティングロッドの外側に面する前記スリットの側方窓と、
- ボルトであって、前記スリットにおいて、当該ボルトが前記座部の内部で突出し且つ前記スプロケットとの前記引き込み時の連結位置で前記ピンを保持する保持位置と、当該ボルトが前記座部内に突出しておらず前記スプロケットから引き出された前記引出し時の非連結位置に前記前記ピンを移動させることができる解除位置との間で移動可能に取り付けられたボルトと、
- 前記保持位置へと前記ボルトを押圧する弾性要素と、
- 前記弾性要素とは反対方向に前記ボルトを移動させるように作動可能に前記窓から突出する前記ボルトの操作部と、を備える。
この場合においても、前記弾性要素の押し付けとは反対方向に前記スリット内で前記ボルトを移動させて前記ピンを軸方向に解放するだけで、前記ピンをその連結位置から非連結位置へと、また、非連結位置から連結位置へと容易に移動させることが可能である。
【0029】
好ましくは、前記引出し位置を超えて前記座部から前記ピンが滑り出るのを防止する前記ピンのエンドストップ機構が設けられている。
これにより、前記ピンを意図せず完全に抜き取ってしまい、前記第1のコネクティングロッドを前記基体から分離して、前記関節接続型の四辺形が分解されてしまうということはない。
【0030】
好ましくは、前記ギアシフト装置は、前記ピンと前記スプロケットとの間に、前記相互角度位置の外部インジケータを備える。
これにより、ユーザは、いずれの部品も取り外さずに外部から、ピンとスプロケットとの間においていずれの初期調整が行われているか、したがって、当該ギアシフト装置がいずれのコグセットに用いられる形態となっているのかを直ちに認識することができる。
【0031】
本発明の更なる構成および利点は、添付の図面に言及しつつ行う、幾つかの好適な実施形態についての以下の詳細な説明からより明瞭となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(模式的にのみ示された)本発明に係る自転車用のギアシフト装置を用いた自転車の模式的な側方斜視図である。
【
図2】自転車のフレーム及びコグセットと関連付けられた本発明に係る自転車用ギアシフト装置の図である。
【
図3】自転車(図示せず)の横方向から見たときの本発明に係るギアシフト装置の正面図である。
【
図4】自転車(図示せず)の横方向から見たときの
図3のギアシフト装置の背面図である。
【
図5】平面V-Vに沿った
図3のギアシフト装置の断面図である。
【
図6】
図3のギアシフト装置の可変比を有するトランスミッションの拡大図である。
【
図7】先行技術の固定比を有するトランスミッションの(
図6と同様の)図である。
【
図8】
図6(本発明のギアシフト装置)の可変比を有するトランスミッションの挙動と、
図7(先行技術のギアシフト装置)のトランスミッションの挙動と、を比較するグラフであって、駆動輪(スプロケット)の回転に対する従動輪(歯付きセクタ)の変位角度の変化(progression)を示すグラフである。
【
図9】最大比に設定された
図3のギアシフト装置の模式背面図であって、最小比および中間比に設定した場合のチェーンガイドの位置も模式的に示されている図である。
【
図10】比較のための先行技術のギアシフト装置の(
図9と同様の)図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る可変比を有するトランスミッションの部品の拡大図である。
【
図12】
図11の本発明の実施形態に係る可変比を有するトランスミッションの他の部品の拡大図である。
【
図13】
図11および
図12の実施形態に係るギアシフト装置の平面XIII-XIIIに沿った部分断面図である。
【
図14】
図13のギアシフト装置の平面XIV-XIVに沿った部分断面図である。
【
図15】同ギアシフト装置の設定操作時における
図14と同様の図である。
【
図16】第1設定位置において、本発明の構成をより良く示すために同ギアシフト装置の他の部分から、
図13のギアシフト装置の一部の部品を取り出して示した正面図である。
【
図17】
図16に示されたギアシフト装置の部品の背面図である。
【
図18】第2設定位置における、
図16に示されたギアシフト装置の一部の部品と同一の部品の正面図である。
【
図19】
図18に示されたギアシフト装置の部品の背面図である。
【
図20】
図11~
図19(本発明のギアシフト装置)の可変比を有するトランスミッションの挙動と、
図7(先行技術のギアシフト装置)のトランスミッションの挙動とを比較する、
図8と同様のグラフであって、駆動輪(スプロケット)の回転に対する従動輪(歯付きセクタ)の変位角度の変化を示すグラフである。
図11~
図19のトランスミッションにより2つの異なる設定位置が可能になることから、
図20のグラフには、これら2つの設定位置に対応する2本の曲線が示されている。
【
図21】
図20のグラフから得られるグラフであって、2つの設定位置に対応する曲線のみを取り出して強調して示すグラフである。
【
図22】
図20のグラフから得られるグラフであって、2つの設定位置に対応する曲線のみを取り出して強調して示すグラフである。
【
図23】本発明の第3実施形態を示す、
図3と同様の図である。
【
図24】
図23に示された平面XXIV-XXIVに沿った
図23のギアシフト装置の断面図である。
【
図25】同ギアシフト装置の設定操作時における
図24と同様の図である。
【
図26】
図24に示されたギアシフト装置の平面XXVI-XXVIに沿った部分断面図である。
【
図27】
図25に示されたギアシフト装置の平面XXVII-XXVIIに沿った部分断面図である。
【
図28】
図26に示されたギアシフト装置の部品の背面図である。
【
図29】
図23~
図28の本発明の実施形態に係る可変比を有するトランスミッションの部品の拡大図である。
【
図30】
図23~
図28の本発明の実施形態に係る可変比トランスミッションの部品の拡大図である。
【
図31】
図26および
図27のギアシフト装置の平面XXXI-XXXIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面に示された自転車用のギアシフト装置について、その全体を符号10で示す。
当該自転車用のギアシフト装置10は、自転車1の後輪3と関連付けられた、軸心Aを有するコグセット2に集められた複数のスプロケット間で伝動チェーン5を移動させるリアギアシフト装置を指している。
【0034】
自転車用のギアシフト装置10は、一対のコネクティングロッド13,15を介して互いに連結された基体12と可動体14とを有する関節接続型の四辺形リンク11を備え、前記一対のコネクティングロッドのうち、第1のコネクティングロッド13は、第1のヒンジ連結軸心Bにおいて第1のピン16を介して基体12に、および第2のヒンジ連結軸心において第2のピン17を介して可動体14に関節接続されており、第2のコネクティングロッド15は、第3のヒンジ連結軸心において第3のピン18を介して基体12に、および第4のヒンジ連結軸心において第4のピン19を介して可動体14に関節接続されている。
【0035】
基体12は、自転車1のフレーム4に固定されるように構成されている。
可動体14は、関節接続型の四辺形11において基体12とは反対側に、チェーンガイド20を支持している。
チェーンガイド20は、チェーン5を中継するために、上部ローラ22と下部ローラ23とを支持するロッカーアーム21を備える。
【0036】
基体12とフレーム4との間を連結するために、軸心Cを有するピン本体31を備える第1固定部30が設けられており、ピン本体は、自転車1のフレーム4に当該基体12を固定するように構成されている。
ピン本体31は、円筒状ブッシュ31bと、基体12に当接するように適合された拡大ヘッドが設けられた閉止ねじ31aと、を備える。円筒状ブッシュ31bおよび閉止ねじ31aは、その間に基体12を保持するために互いに螺合されていることにより、これら円筒状ブッシュおよび閉止ねじの軸心Cに沿った軸方向移動を防止しつつ、その回転を許容する。
【0037】
ピン本体31の閉止ねじ31aは、固定要素40においてフレーム4に係合されており、フレーム4に対する当該閉止ねじの相対角度位置は調節可能である。
このため、固定要素40に接線方向に係合し且つフレーム4に固定された突起部42と当接する調節ねじが設けられている。
したがって、フレーム4に対する固定要素40と調節ねじ41とは、基体12とフレーム4との間の相対角度位置の初期設定インターフェースを構成する。
【0038】
関節接続型の四辺形リンク11の基体12とフレーム4との間の初期相対角度位置の調節は、一般的に取付け時に行われ、自転車用のギアシフト装置10を様々な形式のフレーム4及びコグセット2に適合させることを目的とするものであるので、そのようなフレーム4に対して、したがってコグセット2に対してチェーンガイド20が取ることのできる位置に影響を与える。
【0039】
相対角度位置の初期設定インターフェース40,41は、一対の孔44,45が設けられ且つ突起部42が形成されたリレー要素43と協働する。特に、固定要素40は第1の孔44に挿入され、第2の孔45は、締結ねじ46を介してフレーム4に固定するように構成されている。
【0040】
耐衝撃ばね25は、ピン本体31に同軸に設置されていることが好ましい。耐衝撃ばねという用語は、通常動作時には剛性であるが、衝撃があった場合には、したがって特定の限界値を超える外力が加わったときには、変形してその外力を吸収することにより干渉するばねを意味している。
【0041】
ギアシフト装置10において、衝撃があった場合、耐衝撃ばね25はその動作を基体12に伝達することで、基体12とピン本体31との間において一時的に相互回転可能とし、これにより、ギアシフト装置10および特に関節接続型の四辺形リンク11に対する損傷を防止する。このため、耐衝撃ばね25の第1の端は基体12と間接的に関連付けられており、第2の端はピン本体31と関連付けられている。
【0042】
可動体14とチェーンガイド20のロッカーアーム21の間を回転結合するために固定部が設けられているが、それ自体は従来的なものであり、以下において図示および詳細な説明は行わない。
また、関節接続型の四辺形リンク11の形態を変更するように適合されたギアシフト装置10を作動させて、可動体14と基体12との間の相対変位を決定し、その結果、フレーム4に対するチェーンガイド20の変位を決定するための手段も設けられている。
このような作動手段は、当該分野で公知の様々な種類の手段のいずれであってもよく、手動式またはモータ式のものとすることができる。図面では、あくまでも例として、手動操作式のボーデンケーブルの端部(図示せず)を収容するように適合されたシース座部50が見られる。
【0043】
また、図面では強調されていないものの、関節接続型の四辺形リンク11におけるシース座部50とは斜め反対側の位置に、ボーデンケーブルのコアの端部を固定するクランプも設けられており、このケーブルのシースとコアとの間の相対移動によって加えられる牽引により、関節接続型の四辺形リンク11の変形が決定される。
前記ケーブルのシースとコアとの間の相対移動によって加えられる前記牽引は、第4のピン19に設けられた戻りばね51によって相殺される。
【0044】
本発明によると、第1固定部30は、チェーンガイド20の一次変位に応じて、関節接続型の四辺形リンク11の基体12とフレーム4との間の相対位置を変更して、チェーンガイド20の形態の変化を決定する機構60を備える。
前記相対位置を変更する機構60は、回転体61であって、回転体61の回転が、ピン本体31の軸心Cを中心としたピン本体31と基体12との間の相対回転を決定するように、ピン本体31に連結された少なくとも1つの歯付きセクタ62が設けられた回転体61と、少なくとも1つのスプロケット63であって、好ましくは円錐台形の形態を有し、歯付きセクタ62へと指令された回転を伝達するために当該歯付きセクタと係合しているスプロケット63とを備える。
【0045】
歯付きセクタ62及びスプロケット63は、それぞれの軸心を中心として360°にわたって延在しておらず、それよりも極めて小さく、操作要件を満たすために十分な角度にわたってのみ延在している。特に、歯付きセクタ62は45~90°の範囲内の角度(好ましくは、約60°)にわたって延在しており、スプロケット63は90~180°の範囲内の角度(好ましくは約120°)にわたって延在している。好ましくは、歯付きセクタ62及びスプロケット63の歯数は同一であるか、異なる数であり、好ましくは少なくとも4つである。図示された例において、歯付きセクタ62は8つの歯を有し、スプロケット63は7つの歯を有する。(従動側の)歯付きセクタ62及び(駆動側の)スプロケット63の角度範囲の比は1:2である。
【0046】
特に、回転体61は、耐衝撃ばね25の介在により、ピン本体31の円筒状ブッシュ31bに拘束されている。スプロケット63はピン16に固定的に連結された状態で取り付けられており、当該ピンに対して、少なくとも1つの軸方向成分を有するチェーンガイド20の変位を同時に決定する、指令された回転が与えられる。したがって、歯付きセクタ62及びスプロケット63は、ピン16と回転体61との間のトランスミッションを構成するギアを共に形成する。
【0047】
初期相対位置を変更する機構60は、基体12と関節接続型の四辺形リンク11の第1のコネクティングロッド13との間の相対回転を介して作動される。また、このような基体12と第1のコネクティングロッド13との間の相対回転は、関節接続型の四辺形リンク11の変形を決定し、また、その結果として軸心Aに沿ったチェーンガイド20の一次変位を決定する。
【0048】
基体12とコネクティングロッド13との間の回転がスプロケット63の回転を決定するように、スプロケット63は第1のピン16に固定的に連結されており、当該第1のピンは第1のコネクティングロッド13に嵌合され、すなわち、この第1のコネクティングロッドと一体で(例えば、多角形または溝付きの形状結合により)回転する。
【0049】
これにより、第1のコネクティングロッド13の動きは第1のピン16の動きを生じさせ、当該第1のピンはスプロケット63の回転を決定し、その結果として、回転体61の歯付きセクタ62及びピン本体31の円筒状ブッシュ31bの回転を決定する。
したがって、これにより、基体12と第1固定部30のピン本体31との間において、チェーンガイド20の軸方向変位と相関する相対回転が生じる。
【0050】
特に
図6において明白に認められるように、歯付きセクタ62及びスプロケット63がなす係合は非円形ギアであり、このギアにおいて、歯は非円形の線上に配置されているので、各歯はその回転軸心に対して、隣接する歯とは異なる半径をそれぞれ有する。したがって、前記トランスミッションのギア比は最小値と最大値の間で可変である。
一方、比較のために、
図7には先行技術の類似のギアシフト装置(例えば、引用した特許文献1の装置)のギア62TN,63TNが示されており、このギアシフト装置においてトランスミッションは固定比を有し、円形の歯付きセクタ62TN及びスプロケット63TNを用いている。
【0051】
図8のグラフには、先行技術のギア62TN,63TNと比較した、本発明のギア62,63の運動学的挙動が示されている。特に、駆動輪(スプロケット)の回転角度と従動輪(歯付きセクタ)の回転角度との間の関係は、先行技術においては直線状の推移であるが、本発明の場合は、スプロケットの回転角度が大きくなるほど曲線の傾きが大きくなることから直線状に推移していないこと、すなわち、ギア比が増大していることが分かる。
特に、前記ギア比は、初めの部分では約1:4とし、最後の部分では1:2に到達するようにすることが可能であり、マウンテンバイク用のギアシフト装置の場合などにおいて、直径が大きく変化するコグセットに適合させるために、初期値を1:6とし、1:1.5まで到達するようにすることも可能である。
【0052】
図9および
図10には、チェーンガイド20、特にその上部ローラ22の位置決めに対する上記の異なる運動学的挙動の影響が示されている。
図9には、本発明に係るギアシフト装置10が示されており、上部ローラ22が3つの位置に、すなわち、(速度比がより大きい)最も小さいスプロケット、(速度比がより小さい)最も大きいスプロケット、および中間のスプロケットに示されている。
図10には、先行技術に係る(すなわち、一定ギア比を有する)ギア62TN,63TNを備える点を除き、ギアシフト装置10と同一のギアシフト装置10TNが示されている。
図10では、各要素に対して、本発明の対応する要素の符号と同一の符号の後にTNを加えたものを用いている。したがって、前記コグセットの最初と最後のスプロケットでは、コグセット2に対する上部ローラ22の位置はコグセット2TNに対する上部ローラ22TNの位置と同一であり、対照的に、コグセット2,2TNの中間スプロケットでは、上部ローラ22とコグセット2との間の距離dは、ローラ22TNとコグセット2TNとの間の距離dTNよりも実質的に短いことが分かる。
【0053】
可変比を有するトランスミッション62,63の非線形性(漸進性)によって、チェーンガイド20がコグセット2により近くなることから、コグセット2の中間スプロケットにおけるギアシフト動作の精度、感度および速度を向上させることが可能であり、このため、より大きいスプロケット及びより小さいスプロケットにおけるスライデイングまたはインターフェアレンスが生じない。
【0054】
図11から
図19には、本発明の第2実施形態に係るギアシフト装置110であって、更なる調節が可能なものが示されている。本実施形態に係るギアシフト装置110は、スプロケットおよびピンに関してのみ、前述のギアシフト装置10とは相違しており、これらの要素については以下で説明する。なお、ギアシフト装置110の他の要素についてはギアシフト装置10について説明したとおりであり、以下の説明および図面においては、単に同一の符号で示すものとして理解されたい。
【0055】
ギアシフト装置10では、スプロケット63はピン16に取り付けられているが、ギアシフト装置110では、スプロケット163及びピン116は、様々なコグセットに対してより良好な初期調整が可能となるように、少なくとも2つの異なる相互角度位置における取付けを可能とするカップリングを介して互いに連結することができる。
【0056】
これにより、スプロケット63と歯付きセクタ62とによって構成されるトランスミッションは、最大角度可動域と、有用角度可動域とを有し、この有用可動域は、使用を所望するコグセット2に応じて前記最大可動域の制限内で選択することができる。
このため、スプロケット163は、略円筒状の軸方向孔170であって、径方向および軸方向の両方向に孔170内を延びる2対の対向する横座部171,172が設けられた軸方向孔を備え、一対の対向する座部171は、一対の対向する座部172に対して10~30°の範囲内の角度(好ましくは約20°)で角度方向にオフセットしている。よって、ピン116は、当該ピン116上を軸方向に当該ピン116から径方向に延びる2つの対向するフィン173を備える。この装置をより多くの数のコグセットに適合可能とすることを所望する場合、3対以上の横座部を設けることが可能である。
【0057】
したがって、要素170~173は、ピン116とスプロケット163との間のカップリングを形成し、このカップリングにより、いずれの対の座部171,172にフィン173が係合するかに応じて、ピン116とスプロケット163とを2つの異なる角度位置においてカップリングすることが可能である。この構成は、例えば、サイクリストが対処しなければならない状況に応じて選択される、様々なコグセットとのカップリングを提供するギアシフト装置において有用である。この場合、カップリング170~173により、前記コグセットの全てのスプロケットにおいて前記チェーンガイドのローラ22とコグセット2との間の距離を最小とするために、ギアシフト装置110に様々な初期フェーズ設定を施して、歯付きセクタ62とスプロケット163との間のトランスミッションの非線形性を最大限に活用することが可能である。
【0058】
図20~
図22のグラフを参照すると、前記トランスミッションの有用角度可動域(つまり、動作時に実際に使用される可動域)は最大可動域の一部であり、ピン116の位置決めを介して調節可能である。実施例の場合には、スプロケット163の最大角度可動域(駆動角度)は130°であり、歯付きセクタ62の最大角度可動域(従動角度)は約45°であり、その比は約1:2.9である。
図20には、
図8と同様に、先行技術のギアの運動学的挙動と比較した、本発明のギアの運動学的挙動が示されている。ピン116が座部171においてスプロケット163と連結されている場合、
図20の一点鎖線YYによって示されるように、また、
図21にも単独で強調して示されるように、前記最大角度可動域の初頭および中央の部分が使用される。この位置において、駆動輪によって使用される可動域は80°であり、従動輪によって使用される可動域は約25°であり、その比は約1:3.2であり、最も小さいスプロケットの歯数が11で最も大きいスプロケットの歯数が32であるコグセット(すなわち、z11~z32)に最適である。前記ピンが座部172にカップリングされている場合、
図20の破線WWによって示されるように、また、
図22(ゼロ角度は、
図20において、「絶対」角度で駆動輪における約35°、従動輪における約10°に相当する)にも単独で強調して示されるように、前記最大角度可動域の中央および最後の部分が使用される。この位置において、駆動輪によって使用される可動域は80°であり、従動輪によって使用される可動域は約30°であり、その比は約1:2.7であり、最も小さいスプロケットの歯数が11で最も大きいスプロケットの歯数が36であるコグセット(すなわち、z11~z36)に最適である。このことから、本発明のギアシフト装置は、取付けられたコグセットに応じて連結機構が可変のフェーズ設定を有するので、つまり、
図20の曲線のうちのいずれの部分に沿って、前記トランスミッションの有用角度可動域に相当する部分を前記最大角度可動域のうちの異なる箇所に配置するか選択することが可能である(
図20~22を参照)ので、「適合性」であると決めることができる。
【0059】
ピン116は、コネクティングロッド13と共に角度方向に移動可能でありながらも、軸心Bに沿って軸方向に移動可能であるように、当該コネクティングロッドに取り付けられている。このため、ピン116は、多角形断面を有するステム174を有し、コネクティングロッド13は、ステム174と適合する形状の、軸心Bに沿って延びる多角形座部175を有する。
【0060】
ピン116は、座部175において軸心Bに沿って、(
図14に示される)連結位置と(
図15に示される)非連結位置という2つの位置の間で移動させることができる。前記連結位置では、ピン116は、対の座部171,172の一方にフィン173が完全に挿入された状態で抜き取られるので、スプロケット163はピン116に対して角度方向に拘束されている。したがって、この位置は、ギアシフト装置110の通常動作の位置である。一方、前記非連結位置では、フィン173が対の座部171,172から解放されるように、ピン116が軸心Bに沿って(部分的に)引き出される。したがって、当該位置において、スプロケット163はピン116から角度方向に解除されている。これにより、ギアシフト装置110に施すことを所望する初期調整に応じて、スプロケット163に対してピン116を角度方向に移動させて、対の座部171または172のいずれがフィン173に係合するのかを選択することが可能である。
【0061】
また、ピン116をその連結位置または非連結位置に保持するために、着脱可能な係止手段が設けられている。これらの着脱可能な係止手段は、ピン116の側部に形成されて軸心Bに沿って離間して並ぶ2つの凹部180,181と、座部175に形成された横穴184に取り付けられた丸い形状のポインタ183(実際上は、小さなボール)と、横穴184に挿入されたばね185であって、ポインタ183が2つの凹部180,181の一方または他方に係合した状態に保たれるように前記ポインタをピン116の側部に弾性的に押し付けるばね185とを有する。ポインタ183の丸い形状により、軸心Bの方向への圧力によって、凹部180,181からポインタ183を外すことが可能である。
【0062】
初期調整操作の間に、ピン16がその座部175から完全に滑り出てしまうことを防止するために、前記ピンのためのエンドストップ機構も設けられている。このエンドストップ機構は、ピン116の側部に凹部186を有し、この凹部に、ダボ(dowel)187が座部175の横穴188に挿入された状態で係合する。
【0063】
また、ギアシフト装置110は、ピン116とスプロケット163との間に設定された相互角度位置の外部インジケータを備える。前記外部インジケータは、基体12に回転可能に取り付けられ、且つスプロケット163と一体で回転するインジケータ190と、基体12に形成された2つの確認ノッチ191,192とを備える。フィン173が座部171または172のいずれに係合するかに応じて、インジケータ190は確認ノッチ191,192の一方または他方を指す。これにより、いずれの設定がなされているのか、したがって、ギアシフト装置110がいずれのコグセット2と有利に使用することができるのかということを、外部において直ちに視認することができる。
【0064】
図11および
図12には、スプロケット163及びピン116が個別に示されており、
図13~
図15の断面図には、係止手段180~185及びエンドストップ機構186~188が明瞭に示されている。特に、
図14の断面図にはピン116の連結位置が示されており、
図15の断面図には前記ピンの非連結位置が示されている。
【0065】
図16~
図19には、2つの考え得る初期調整または設定条件が明瞭に示されている。特に、
図16および
図17では、フィン173が座部171に係合したことにより、インジケータ190は確認ノッチ191を指しており、
図18および
図19では、フィン173が座部172に係合したことにより、インジケータ190は確認ノッチ192を指している。
【0066】
図23から
図31には、本発明の第3実施形態に係るギアシフト装置210が示されており、第3実施形態では、第2実施形態と同様の調節が可能である。当該実施形態に係るギアシフト装置210は、前記ピンを保持する着脱可能な係止手段に関してのみ、前述のギアシフト装置110とは相違しており、これらの要素については以下で説明する。なお、ギアシフト装置210の他の要素についてはギアシフト装置110およびギアシフト装置10について説明したとおりであり、以下の説明および図面においては、単に同一の符号で示すものとして理解されたい。したがって、ギアシフト装置210の運動学的挙動は、ギアシフト装置110の運動学的挙動を示す
図20~
図22に同様に示されている。
なお、ギアシフト装置210は、符号250で一般的に示されるモータ式の作動手段を用いた形式のものであり、このようなモータ式作動手段自体は、本発明の目的と関連がないので詳細には図示していない。
【0067】
ピン216は、(特に、
図24,
図25,
図29および
図30から分かるように)2つの同軸部分216aおよび216bから形成されており、これらの同軸部分は、互いに軸方向にスライド可能に連結されているものの、依然として一体として回転する。この構成は、(図面においては視認できない)角柱状の連結により実現される。前記部分216aはフィン173を有し、これらのフィンにより、ギアシフト装置110と全く同様の方法で、座部171,172に係合する。また、部分216aには、コネクティングロッド13の座部175の対応する成形部分277において鉤形カップリングするための成形ステム274も設けられている。成形部分277は、2つのねじ279によってコネクティングロッド13の他の部分に結合された状態で、(
図31において視認できる)コネクティングロッド13の着脱可能部分278により、コネクティングロッド13に形成されている。
【0068】
ピン216の部分216aを連結位置に保持する着脱可能な係止手段は、部分216aにおけるフランジ280と、コネクティングロッド13の座部175において横方向に開口したスリット284にスライド可能に取り付けられたボルト283とを備える。ボルト283は、保持位置(
図24および
図26)と解除位置(
図25および
図27)との間で移動可能である。前記保持位置において、ボルト283は、部分216aがスプロケット163から外れないように、座部175の内部に突出し、ピン216の部分216aのフランジ280を保持する。前記解除位置において、ボルト283は、スリット284に収容されておりフランジ280と干渉しないので、部分216aは部分216bに対して軸方向にスライドして、スプロケット163から外れることが可能である。スリット284には、ボルト283を前記保持位置に向かって押圧するばね285が設けられている。スリット284には、スリット284に対して長手方向に延び、かつコネクティングロッド13の外部に向かって開口した側方窓282が設けられている。窓282を介して、ボルト283の操作部281を手動で操作して、ばね285に反してボルト283をその解除位置へと押圧することが可能である。
【0069】
ギアシフト装置110とは異なり、ギアシフト装置210では、エンドストップ機構は本質的に無用であるので、エンドストップ機構は不要である。実際、いずれの場合にも、軸方向に移動可能でない部分216bによってコネクティングロッド13において座部175の内部に軸方向に係止されているピン216の部分216aのみが、軸方向にスライドする。
一方、ギアシフト装置110と全く同様の方法により、ギアシフト装置210には、
図28から分かるように、外部インジケータ190~192も設けられている。
【0070】
上記の記載および図面から、本発明の目的である自転車用のギアシフト装置の構成および作動は明瞭に理解することができ、同様に、相対的な利点も明瞭である。
前記関節接続型の四辺形リンクの前記基体と前記第1固定部の前記ピン本体との間の初期相対位置の変化により、先行技術のギアシフト装置よりも高い制御感度を実現しつつ、前記チェーンガイドが最も大径のスプロケットに近づき過ぎることに関連する欠点を抑制することができる、前記チェーンガイドと前記スプロケットとの間の相対位置を実現することが可能である。
可変比を有するトランスミッションの非線形性により、特に、前記コグセット内における前記スプロケットの軸方向位置にかかわらず、前記チェーンが係合しているスプロケットに対して前記チェーンガイドを常に可能な限り近付けることができる。
【0071】
上記の実施形態の更なる変形例も可能であり、明記はされていないものの、請求の範囲によって定められる保護の範囲に含まれる。
例えば、前記ギアシフト装置の作動手段として、様々な形式の作動手段(例えば、弾性的に作動されるもの)とすること、又は、図示された方法とは異なる方法で前記関節接続型の四辺形リンクに作用するように配置することが考えられる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕自転車用のギアシフト装置(10;110;210)であって、
- 基体(12)と可動体(14)とを有する関節接続型の四辺形リンク(11)であって、前記基体(12)および前記可動体(14)は、当該基体(12)と当該可動体(14)とに関節接続された一対のコネクティングロッド(13,15)を介して互いに連結されている前記四辺形リンク(11)と、
- 前記基体(12)を前記自転車のフレーム(4)に固定する固定部(30)と、
- 前記可動体(14)に取り付けられたチェーンガイド(20)と、を備え、
前記関節接続型の四辺形リンク(11)は、当該関節接続型の四辺形リンク(11)を変形させることで、前記基体(12)に対する前記可動体(14)の変位を決定し、それにより、コグセット(2)の軸心(A)に対して軸方向への前記チェーンガイド(20)の一次変位を決定するように適合された、前記ギアシフト装置(50;250)を作動させる手段と関連付けられており、
前記固定部(30)は、
- 軸心(C)を有し、前記自転車の前記フレーム(4)に前記基体(12)を固定するように構成されたピン本体(31)と、
- 前記チェーンガイド(20)の前記一次変位に応じて、前記関節接続型の四辺形リンク(11)の前記基体(12)と前記フレーム(4)との間の相対角度位置を変更する機構(60)とを備え、
前記基体(12)と前記フレーム(4)との間の前記相対角度位置を変更する前記機構(60)は、
- 回転体(61)であって、当該回転体(61)の回転が、前記ピン本体(31)と前記基体(12)との間における前記軸心(C)を中心とした相対回転を決定するように前記ピン本体(31)に連結されている回転体(61)と、
- 前記ギアシフト装置(50;250)を作動させる前記手段によって直接的または間接的に回転状態に設定されるピン(16;116;216)と、
- 前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間のトランスミッション(62,63;162,163)と、を備えるギアシフト装置において、
前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間の前記トランスミッション(62,63;162,163)は、可変ギア比を有することを特徴とするギアシフト装置。
〔態様2〕態様1に記載の自転車用のギアシフト装置(10;110;210)において、前記ピン(16;116;216)と前記回転体(61)との間の前記トランスミッションは、前記回転体(61)と一体として回転する歯付きセクタ(62)および前記ピン(16;116;216)と一体として回転するスプロケット(63;163)を有する非円形ギアを備え、前記歯付きセクタ(62)および前記スプロケット(63)は互いに係合しており、可変径の歯状部を有するギアシフト装置。
〔態様3〕態様2に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)および前記スプロケット(163)は、少なくとも2つの相互角度位置において選択的に、好ましくはカップリングを介して連結可能であるギアシフト装置。
〔態様4〕態様3に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記カップリングはフロントカップリングであり、
- 前記スプロケット(163)に形成された軸方向孔(170)であって、当該軸方向孔(170)から径方向に延びる少なくとも2対の対向する座部(171,172)が設けられた軸方向孔(170)と、
- 前記ピン(116;216)において前記径方向に延びるように形成された2つの
対向するフィン(173)であって、前記スプロケット(163)の前記孔(170)の前記座部の対(171,172)のうちの一方の対に着脱可能に係合しているフィン(173)と、を有するギアシフト装置。
〔態様5〕態様1に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)は、前記基体(12)と前記2つのコネクティングロッドのうちの第1のコネクティングロッド(13)との間において、当該コネクティングロッド(13)に形成された座部(175)に収容され、前記座部(175)に回転不能にロックされた状態で且つ前記基体(12)に対して回転可能に取り付けられているギアシフト装置。
〔態様6〕態様5に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、前記ピン(116)は、多角形断面を有するステム(174)を有し、前記座部(175)は、対応する多角形断面を有するギアシフト装置。
〔態様7〕態様5に記載の自転車用のギアシフト装置(210)において、前記コネクティングロッド(13)の前記座部(175)は、当該コネクティングロッド(13)の着脱可能な部分(278)により形成された成形部分(277)を有し、前記ステム(274)は対応する成形断面を有するギアシフト装置。
〔態様8〕態様5に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)は、前記座部(175)において、前記スプロケット(163)と連結されている引き込み時の連結位置と、前記スプロケット(163)との連結が解除されている引出し時の非連結位置との間で軸方向に移動可能であり、前記ピン(116;216)を前記引き込み位置および場合によっては前記引出し位置に保持するために、着脱可能な係止手段が設けられているギアシフト装置。
〔態様9〕態様8に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記ピン(116)に形成された2つの凹部(180,181)であって、前記ピン(116)の前記軸心(B)の方向に離間して並ぶ凹部(180,181)と、
- 前記座部(175)に形成された横孔(184)に取り付けられたポインタ(183)と、
- 前記横孔(184)内の弾性要素(185)であって、前記ポインタ(183)を径方向に弾性的に押圧して、前記2つの凹部(171,172)の一方または他方と係合させた状態に保持する弾性要素(185)とを備えるギアシフト装置。
〔態様10〕態様8に記載の自転車用のギアシフト装置(210)において、前記着脱可能な係止手段は、
- 前記座部(175)において横方向に開口したスリット(284)と、
- 前記スリット(284)の長手方向にあり、かつ前記第1のコネクティングロッド(13)の外側に面する前記スリット(284)の側方窓(282)と、
- ボルト(283)であって、当該ボルト(283)が前記座部(175)の内部で突出し且つ前記スプロケット(163)との前記引き込み時の連結位置で前記ピン(216)を保持する保持位置と、当該ボルトが前記座部(175)内に突出しておらず、前記スプロケット(163)から引き出された前記引出し時の非連結位置に前記前記ピン(216)を移動させることができる解除位置との間で、前記スリット(284)に移動可能に取り付けられたボルト(283)と、
- 前記保持位置へと前記ボルト(283)を押圧する弾性要素(285)と、
- 前記弾性要素(285)とは反対方向に前記ボルト(283)を移動させるように作動可能に前記窓(282)から突出する前記ボルトの操作部(281)と、を備えるギ
アシフト装置。
〔態様11〕態様8に記載の自転車用のギアシフト装置(110)において、前記引出し位置を超えて前記座部(175)から前記ピン(116)が引き出されるのを防止する前記ピン(116)のエンドストップ機構(186~188)を備えるギアシフト装置。
〔態様12〕態様3に記載の自転車用のギアシフト装置(110;210)において、前記ピン(116;216)と前記スプロケット(163)との間に、前記相互角度位置の外側インジケータ(190~192)を備えるギアシフト装置。
〔態様13〕自転車用のギアシフト装置(10;110;210)においてギアシフト動作を行う方法であって、
- 伝動チェーン(5)をチェーンガイド(20)と係合させることと、
- 前記チェーンガイド(20)において、コグセット(2)に対して軸方向への一次変位を生じさせて、前記コグセット(2)のスプロケット間で前記伝動チェーン(5)を移動させることと、
- 同時に、前記チェーンガイド(20)において、前記コグセット(2)に対して径方向に二次変位を生じさせて、前記伝動チェーン(5)がより大きいスプロケットからより小さいスプロケットへと移動されたときに、前記チェーンガイド(20)を前記コグセット(2)に向かって移動させ、および、前記伝動チェーン(5)がより小さいスプロケットからより大きいスプロケットへと移動されたときに、前記チェーンガイド(20)を前記コグセット(2)から離すように移動させることと、を含む方法において
- 前記二次変位は、前記コグセットにおいて最も大きいスプロケットを有する領域で前記一次変位が生じたときに、より大きな変位となり、前記コグセットにおいて最も小さいスプロケットを有する領域で前記一次変位が生じたときに、より小さな変位となることを特徴とする方法。
〔態様14〕態様13に記載の方法において、前記二次変位は、前記ギアシフト装置(110;210)に取り付けられた前記コグセット(2)に応じて調節可能である方法。
〔態様15〕態様14に記載の方法において、前記二次変位は、最大可動域と、前記最大可動域の一部のみに延在する有用可動域と、を有するトランスミッションを用いた前記一次変位によって実現され、前記二次変位は、前記最大可動域の範囲内で前記トランスミッションの前記有用可動域を選択することによって調節可能である方法。