(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】二成分無溶剤接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20241128BHJP
C09J 5/04 20060101ALI20241128BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241128BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J5/04
C09J11/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2019539942
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(86)【国際出願番号】 US2017061803
(87)【国際公開番号】W WO2018140116
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ルイ・シエ
(72)【発明者】
【氏名】カリヤン・セハノビシュ
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509316(JP,A)
【文献】国際公開第2015/168670(WO,A1)
【文献】特開2007-169548(JP,A)
【文献】特開昭63-278988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分無溶剤接着剤組成物であって、
イソシアネートを含むイソシアネート成分と、
イソシアネート反応性成分と、を含み、前記イソシアネート反応性成分が、
2つ以上の第一級ヒドロキシル基と
1つの第三級アミンを組み込んだ骨格とを含むアミン開始ポリオールと、
リン酸エステルポリオールと、を含む、二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項2】
前記アミン開始ポリオールが、2~12の官能価、5~1,830のヒドロキシル価、および25℃において500~30,000mPa-sの粘性を含む、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項3】
前記アミン開始ポリオールが、前記イソシアネート反応性成分の総重量を基準として、前記イソシアネート反応性成分の0.5~30重量パーセントを構成する、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項4】
前記アミン開始ポリオールが、構造Iを有し、
【化1】
式中、R
1、R
2、およびR
3が、独立して、直鎖または分枝鎖のアルキル基である、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項5】
前記リン酸エステルポリオールが、前記イソシアネート反応性成分の総重量を基準として、前記イソシアネート反応性成分の0.2~30重量パーセントを構成する、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項6】
前記リン酸エステルポリオールが、三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、およびポリイソシアネートから作製され、前記リン酸エステルポリオールが、前記リン酸エステルポリオールの重量を基準として、3重量パーセント未満のリン酸含有量、および25℃において40,000cps未満の粘性を有する、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項7】
接着促進剤をさらに含む、請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着促進剤が、カップリング剤、エポキシ樹脂、リン酸、ポリリン酸、リン酸エステル、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の二成分無溶剤接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の二成分無溶剤接着剤組成物を含む、積層構造体。
【請求項10】
積層構造体を形成するための方法であって、
第1の基材にイソシアネート成分を均一に塗布することであって、前記イソシアネート成分がイソシアネートを含む、塗布することと、
第2の基材にイソシアネート反応性成分を均一に塗布することであって、前記イソシアネート反応性成分が、
第一級ヒドロキシル基と第三級アミンを組み込んだ骨格とを含むアミン開始ポリオールと、
リン酸エステルポリオールと、を含む、塗布することと、
前記第1および第2の基材を
接触させ、それによって前記イソシアネート成分と前記イソシアネート反応性成分とを混合し、反応させて、前記第1および第2の基材の間に接着剤を形成することと、
前記接着剤を硬化させて、前記第1および第2の基材を接合させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2017年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/451,304号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、無溶剤接着剤組成物に関する。より詳細には、本開示は、積層された構造体で使用するための二成分無溶剤ポリウレタン接着剤組成物に関する。開示された接着剤組成物は、改善された変換効率を有し、高性能食品包装用途(例えば、ボイルインバッグ用途)での使用に適した積層構造体を提供するアミン開始ポリオールおよびリン酸エステルポリオールを含む。
【0003】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、高い反応性を示し、したがって2つの基材に独立して塗布され、その後、これらの2つの基材が一緒にされて接着剤組成物を混合し反応させるように調合される。特に、接着剤組成物の一方の成分は、第1の基材の表面に均一に塗布されるように構成され、接着剤組成物の他方の成分は、第2の基材の表面に塗布されるように構成される。その後、第1および第2の基材は一緒にされ、それによって2つの成分を混合し、反応させて、第1の基材および第2の基材の間に接着剤を形成する。このようにして、接着剤を硬化させ、それによって第1および第2の基材を接合させることができる。
【背景技術】
【0004】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、接着剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、紙、またはセロファンなどの基材を一緒に接合させて、複合フィルム、すなわち、積層体を形成するために使用される。異なる最終使用用途における接着剤の使用は一般に知られている。例えば、接着剤は、包装産業において、特に食品包装のために使用されるフィルム/フィルムおよびフィルム/ホイル積層体の製造に使用することができる。積層用途で使用される接着剤、すなわち「積層接着剤」は、一般に、溶剤系、水系、および無溶剤の3つのカテゴリーに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリーによって、また接着剤が塗布される用途によって変わる。
【0005】
無溶剤積層接着剤は、有機溶剤または水性担体のいずれも用いずに、最大100パーセントの固形分を塗布することができる。塗布時に有機溶剤または水を接着剤から乾燥する必要がないため、これらの接着剤は高いラインスピードで稼働させることができ、迅速な接着剤塗布を必要とする用途において好ましい。溶媒系および水系の積層接着剤は、接着剤の塗布後に溶剤または水が効果的に乾燥し、積層構造体から除去することのできる速度によって限定される。環境、健康、および安全の理由から、積層接着剤は、好ましくは水性または無溶剤である。しかしながら、無溶剤接着剤は、特に、ボイルインバッグ用途のような高性能用途において、短いポットライフ、低い初期接着、遅い接着発現、遅い一級芳香族アミン(「PAA」)およびイソシアネート(「NCO」)崩壊、金属表面への低い接着性、ならびに乏しい化学的および熱的耐性などの問題に度々遭遇する。
【0006】
無溶剤積層接着剤のカテゴリーには多くの種類がある。1つの特定の種類には、予備混合された二成分ポリウレタン系積層接着剤が含まれる。典型的には、二成分ポリウレタン系積層接着剤は、イソシアネート含有プレポリマーおよび/またはポリイソシアネートを含む第1の構成成分と、ポリオールを含む第2の構成成分と、を含む。プレポリマーは、1分子当たり2つ以上のヒドロキシル基を含有するポリエーテルおよび/またはポリエステルと過剰のイソシアネートとの反応によって得ることができる。第2の成分は、1分子当たり2つ以上のヒドロキシル基で開始されるポリエーテルおよび/またはポリエステルを含む。2つの成分は、所定の比で組み合わされるか、または「予備混合」され、その後、第1の基材(「キャリアウェブ」)に塗布される。次いで、第1の基材を第2の基材と一緒にして、積層構造体を形成する。
【0007】
追加の基材層を構造体に追加し、各連続する基材の間に接着剤組成物の追加の層を配置することができる。次に、接着剤を室温または高温で硬化させ、それによって基材を一緒に接合する。
【0008】
積層構造体のさらなる加工は接着剤の硬化速度に依存する。接着剤の硬化速度は、積層された基材間の機械的結合がさらなる加工を可能にするのに十分であり、積層加工が適用可能な規制(例えば、食品接触規制)に準拠するのにかかる時間によって示される。硬化速度が遅いと、変換効率が低下する。予備混合された二成分無溶剤積層接着剤は、従来の溶剤含有接着剤と比較して、弱い初期結合および遅い硬化速度を示す。加工産業における一般的な傾向は、積層接着剤をより速く硬化させることにある。より速い硬化は、コンバータの作業効率を改善する。具体的には、完成品を倉庫から迅速に移動させることで、直前の注文(例えば、小売販促キャンペーン)を処理するための生産能力と柔軟性を増大させる。動作効率を向上させるために、既存の接着剤組成物よりも遥かに高い反応性を有する接着剤組成物を使用して積層体を形成すべきである。しかしながら、そのような接着剤組成物は、従来の接着剤塗布技術の課題を提供し得る。
【0009】
したがって、改善された接合強度、より速い硬化速度、および高性能塗布能力を有する二成分無溶剤ポリウレタン系積層接着剤組成物が望ましい。
【発明の概要】
【0010】
二成分無溶剤ポリウレタン接着剤組成物が開示されている。いくつかの実施形態では、無溶剤接着剤組成物は、イソシアネートを含むイソシアネート成分を含む。無溶剤接着剤組成物は、2つ以上の第一級ヒドロキシル基および第三級アミンを組み込んだ骨格を含む高反応性アミン開始ポリオールを含むイソシアネート反応性成分をさらに含む。イソシアネート反応性成分は、リン酸エステルポリオールをさらに含む。いくつかの実施形態では、イソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、約2~約12の官能価、約5~約1,830のヒドロキシル価、および約200~約20,000の分子量を含むことができる。いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、ポリオールとポリリン酸との反応生成物である。イソシアネート反応性成分は、1つ以上の非アミン開始ポリオールをさらに含むことができる。
【0011】
開示された接着剤組成物は、既存の二成分無溶剤接着剤組成物と比較して速い硬化速度および向上した性能を示す。結果として、接着剤組成物を含む積層構構造体は、積層後わずか2時間以内にスリットすることができ、2日以内に顧客に配送することができる。既存の汎用接着剤組成物を含む積層体は、典型的には、スリッティングのための積層からの2~3日間と、送達のための5~7日間とを必要とする。したがって、開示された接着剤組成物を使用してプロセス効率が大幅に改善される。さらに、開示された接着剤組成物の操作ウィンドは、既存の汎用接着剤の20~30分の可使時間と比較して不明確。これは、以下に説明するように、開示された接着剤組成物のポットライフが硬化プロセスから完全に切り離されるためである。
【0012】
開示された接着剤組成物は、既存の接着剤組成物よりも反応性が高く、より速い硬化速度を示すように配合されているので、それらは、既存の接着剤塗布装置での使用に理想的には適さない。これは、2つの成分が非常に迅速に反応するため、接着剤がゲル化し、基材への塗布に適合していない。この理由から、開示された接着剤組成物は、イソシアネートおよびソシアネート反応性成分が、予備混合されキャリアウェブ上に塗布される代わりに、2つの異なる基材上に別々に塗布されるように配合される。
【0013】
特に、開示された接着剤組成物は、イソシアネート成分を第1の基材の表面に均一に塗布することができ、イソシアネート反応性成分を第2の基材の表面に塗布することができるように配合される。次いで、第1の基材の表面を第2の基材の表面に接触させて、2つの成分を混合し、反応させて、それによって、積層体を形成する。次いで、接着剤組成物は、硬化可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示による二成分無溶剤接着剤組成物は、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を含む。
【0015】
イソシアネート成分
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分はイソシアネートを含む。イソシアネートが、モノマーイソシアネート、ポリマーイソシアネート、プレポリマーイソシアネート、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。本明細書中で使用される場合、プレポリマーイソシアネートは、イソシアネートとポリオール、例えばポリエステルポリオールとを含む反応物の反応生成物である。「プレポリマーイソシアネート」は、ポリイソシアネート自体であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、イソシアネートは、1.5~10、または1.8~5、または2~3の官能価を含む。イソシアネート成分に関して使用される場合、「官能価」は、1分子当たりのヒドロキシル反応性部位の数を指す。イソシアネート成分のようなイソシアネート基を有する化合物は、化合物の重量を基準とした重量によるイソシアネート基の量であるパラメータ「NCO%」によって特徴付けることができる。パラメータNCO%は、ASTM D2572-97(2010)の方法によって測定される。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、少なくとも3重量%、または少なくとも6重量%、または少なくとも10重量%のNCO%を有する。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、25%、または18%、または14%を超えないNCO%を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、0~50%、または5~40%、または10~30%の遊離モノマー含有量を含む。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、200~3,000g/mol、または300~2,000g/mol、または500~1,000g/molの分子量を含む。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、ASTM D2196の方法で測定した場合、25℃で300~40,000mPa-s、または500~20,000mPa-s、または1,000~10,000mPa-sの粘度を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分のイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。「芳香族ポリイソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有するイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」は、芳香族環を含有しない。「脂環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環状構造を有する脂肪族ポリイソシアネートのサブセットである。
【0019】
本開示による使用に適したイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)の異性体、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)の異性体、キシレンジイソシアネート(「XDI」)の異性体、メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)の異性体、例えば、4,4-MDI、2,2-MDIおよび2,4-MDI、トルエンジイソシアネート(「TDI」)の異性体、例えば、2,4-TDI、2,6-TDI、ナフタレンジイソシアネート(「NDI」)の異性体、例えば、1,5-NDI、ノルボルナンジイソシアネート(「NBDI」)の異性体、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(「TMXDI」)の異性体、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。MDIの異性体、特に、4,4-MDIと2,4-MDIとの混合物(すなわち液体MDI)、または4,4-MDI(すなわち固体MDI)が好ましい。
【0020】
いくつかの実施形態では、イソシアネート成分中のイソシアネートの量は、イソシアネート成分の重量を基準として、少なくとも40重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも90重量%である。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分中のイソシアネートの量は、イソシアネート成分の重量を基準として、100重量%を超えない、または95重量%を超えない、または90重量%を超えない量である。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分中のイソシアネートの量は、イソシアネート成分の重量を基準として、40~100重量%である。
【0021】
イソシアネート成分は、当業者に一般的に既知の他の成分をさらに含むことができる。
【0022】
イソシアネート反応性成分
無溶剤接着剤組成物は、高反応性アミン開始ポリオールを含むイソシアネート反応性成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、第一級ヒドロキシル基と少なくとも1つの第三級アミンを組み込んだ骨格とを含む。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分は、アミン非開始ポリオールである他の種類のポリオールも含み得る。例えば、イソシアネート反応性成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。各ポリオール種類は、1種類のポリオールを含み得る。あるいは、各ポリオールタイプは、異なる種類のポリオールの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、一方のポリオールタイプは1種類のポリオールであり得、他方のポリオールタイプは異なる種類のポリオールの混合物であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、第一級ヒドロキシル基と少なくとも1つの第三級アミンを組み込んだ骨格とを含む。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、Iの化学構造を有し、
【0024】
【0025】
式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、直鎖または分枝鎖のアルキル基である。例えば、それぞれ独立して、C1-C6の直鎖または分枝鎖のアルキル基であり得る。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、第三級アミンおよび第二級アミンを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、2~12、または3~10、または4~8の官能価を含む。イソシアネート反応性成分に関して使用される場合、「官能価」は、1分子当たりのイソシアネート反応性部位の数を指す。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、5~1,830、または20~100、または31~40のヒドロキシル価を含む。イソシアネート反応性成分に関して使用される場合、「ヒドロキシル価」は、反応に利用可能な反応性ヒドロキシル基の量の尺度である。この数は、湿式分析法で決定され、1グラムの試料中に見出されるヒドロキシル基に相当する水酸化カリウムのミリグラム数として報告される。ヒドロキシル価を決定するために最も一般的に使用される方法は、ASTM D4274Dに記載されている。いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、25℃で500~30,000mPa-s、または1,000~15,000mPa-s、または1,500~10,000mPa-sの粘度を含む。
【0027】
本開示による使用に好適なアミン開始ポリオールは、1つ以上のアミン開始剤を1つ以上のアルキレンオキシドでアルコキシル化することによって作製される。
【0028】
いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分中のアミン開始ポリオールの量は、イソシアネート反応性成分の重量を基準として、少なくとも0.2重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも5重量%である。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分中のアミン開始ポリオールの量は、イソシアネート反応性成分の重量を基準として、30重量%を超えない、または15重量%を超えない、または10重量%を超えない量である。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分中のアミン開始ポリオールの量は、イソシアネート反応性成分の重量を基準として、0.2~30重量%である。
【0029】
いくつかの実施形態では、非アミン開始ポリオールは、イソシアネート反応性成分に任意に含まれ得る。適切な非アミン開始ポリオールの例には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、非アミン開始ポリオールは、ASTM D2196の方法で測定した場合、25℃で30~40,000mPa-s、または50~30,000mPa-s、または70~20,000mPa-sの粘度を有する。好ましくは、非アミン開始ポリオールは、ASTM D2196の方法で測定した場合、25℃で100~10,000mPa-sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、非アミン開始ポリオールは25℃で固体である。
【0030】
いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分中の非アミン開始ポリオールの量は、少なくとも0重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%である。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分中の非アミン開始ポリオールの量は、98重量%を超えない、または90重量%を超えない、または70重量%を超えない量である。
【0031】
いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分はさらにリン酸エステルポリオールを含む。いくつかの実施形態ででは、リン酸エステルポリオールは、三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、およびポリイソシアネートから作製される。本開示による使用に適した三官能性プロピレングリコールの市販の例には、商品名、VORANOL(商標)CP-450、VORANOL(商標)CP-260、VORANOL(商標)CP-755、およびVORANOL(商標)CP-1055で販売される製品が含まれ、それぞれDow Chemical Companyから入手可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、リン酸エステルポリオールの重量を基準として4重量パーセント未満のリン酸含有量、またはリン酸エステルポリオールの重量を基準として0~3重量パーセントのリン酸含有量、またはリン酸エステルポリオールの重量を基準として1.5~2.5重量パーセントのリン酸含有量を有する。いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、ASTM D2196の方法で測定した場合、25℃で40,000cps未満、または25℃で30,000cps未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、330g/mol未満のヒドロキシル当量を有する。いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、リン酸エステルポリオールの重量を基準として、2,000g/mol未満の当量を有する三官能性ポリエーテルポリオールを0~100重量パーセント有する。
【0033】
イソシアネート成分対イソシアネート反応性成分の重量による混合比は、それぞれの成分のそれぞれのその基材に対するコーティング重量を調整することによって制御される。いくつかの実施形態では、最終接着剤組成物中のイソシアネート成分対イソシアネート反応性成分の混合比は、100:100、または100:90、または100:80とすることができる。開示された接着剤組成物は、従来の接着剤よりも寛容であり、いくらかのコーティング重量誤差(例えば、最大約10%のコーティング重量誤差)を吸収することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤が、任意に接着剤組成物中に含まれ得る。そのような添加剤の例としては、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、溶剤、およびそれらのうちの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
イソシアネート反応性成分は、当業者に一般的に既知の他の成分、例えば追加のポリオール、イソシアネートなどをさらに含むことができる。
【0036】
積層体形成
開示された無溶剤接着剤組成物のイソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分は、別々に配合され、望ましくは、それが積層構造体を形成するまで貯蔵されることが企図される。好ましくは、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分は、25℃で液体状態である。成分が25℃で固体であっても、必要に応じて成分を加熱して液体状態にすることが可能である。
【0037】
開示された接着剤組成物を含む積層体は、2つのフィルムなどの2つの異なる基材に別々に接着剤組成物のイソシアネートおよびイソシアネート反応性成分を塗布することにより形成することができる。本明細書で使用される場合、「フィルム」は、1つの寸法が0.5mm以下であり、他の2つの寸法が両方とも1cm以上である任意の構造である。「ポリマーフィルム」は、ポリマーまたはポリマーの混合物から作製されるフィルムである。ポリマーフィルムの組成物は、典型的には、80重量パーセント以上の1つ以上のポリマーである。
【0038】
例えば、イソシアネート成分の層は、第1の基材の表面に塗布される。好ましくは、第1の基材上のイソシアネート成分の層の厚さは、0.5~2.5μmである。イソシアネート反応性成分の層は、第2の基材の表面に塗布される。好ましくは、第2の基材上のイソシアネート反応性成分の層の厚さは、0.5~2.5μmである。各基材に塗布される層の厚さを制御することによって、成分の比を制御することができる。
【0039】
次いで、第1および第2の基材の表面は、ニップローラーなどの第1および第2の基材に外圧を加えるための装置に通される。イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を一緒にすると、硬化性接着剤混合物層が形成される。第1および第2の基材の表面を一緒にすると、硬化性接着剤混合層の厚さは、1~5μmである。第1および第2の基材を一緒にして、成分が互いに接触すると、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分とが混合し、反応し始める。これは、硬化プロセスの始まりを示す。
【0040】
さらなる混合および反応は、第1および第2の基材が様々な他のローラを通り、最終的に巻戻しローラに通されるときに達成される。各基材が各ローラを横切って他の基材よりも長いまたは短い経路をとるため、第1および第2の基材がローラを通過するときに、さらなる混合および反応が起こる。このようにして、2つの基材は、互いに対して移動し、それぞれの基材上の成分を混合する。塗布装置におけるそのようなローラの配置は、当該技術分野において一般的に既知である。次いで、硬化性混合物は、硬化させるか、または硬化することが可能になる。
【0041】
積層構造体における適切な基材としては、紙、織布および不織布、金属箔、ポリマーフィルム、ならびに金属被覆ポリマーフィルムなどのフィルムが含まれる。いくつかのフィルムは、接着剤組成物と接触し得るインクで画像が印刷される表面を任意に有する。本開示による接着剤組成物が1つ以上の基材を一緒に接着している状態で、基材を積層させ積層構造体を形成する。
【0043】
したがって、接着剤組成物のイソシアネート反応性成分中に開示されたアミン開始ポリオールを含むことは、著しく速い反応性プロファイルを有する接着剤組成物を提供する。そのような接着剤組成物は、本明細書に開示されている方法による積層に特に適している。
【実施例】
【0044】
本開示は、開示された接着剤組成物および既存の接着剤組成物を例証する例(総称して「実施例」)を説明することによって、ここで、さらに詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、実施例に限定されない。
【0045】
実施例のイソシアネート反応性成分は、以下の表1に特定されている原料を使用して調製される。
【0046】
【0047】
実施例は、以下の表2に列挙された成分を重量パーセントで示した配合に従って調製される。
【0048】
【0049】
例示的実施例1(「IE1」)
【0050】
【0051】
VORANOL(商標)CP450、VORANOL(商標)CP755、およびISONATE(商標)125Mを窒素パージ下、80℃で2時間反応器中で反応させて、OH末端ポリエーテル系ポリウレタンを形成する。合成されたポリエーテル系ポリウレタンは、SPECFLE(商標)ACTIV2306およびMOR-FREE(商標)88-138と配合されて、共反応物質2D(「CR2D」)を形成する。CR2Dの詳細な組成物情報は表3に記載されている。
【0052】
約52.2重量%のポリイソシアネートAおよび47.8重量%のCR2Dを含むポリウレタン接着剤を使用して、ホイル/ポリエチレン(「PE」)構造およびポリエチレンテレフタレート(「PET」)/PE構造を接合する。生成された積層体は、25℃および相対湿度50%で硬化させる。生成された積層体試料は15mm幅のストリップに切断し、そのT-剥離接合強度をThwing-Albert剥離試験機で4インチ/分で評価する。基材のうちの1つが伸ばされたり裂けたりした場合、最大力または破断時の力が記録される。2つの基材が分離されている場合、試験中の力の平均値が記録される。接合強度値は、少なくとも3つの試料ストリップの平均値である。
【0053】
接着剤が完全に硬化した後に、ホイル/PE積層体についてボイルインバッグ試験が実施される。ボイルインバッグ試験用のパウチは、4インチ×6インチの内部サイズを有し、100mlの1:1:1ソース(すなわち、等量の、酢、コーン油、およびケチャップ)で充填されている。続いて、パウチを沸騰水中に30分間入れる。完了したら、少なくとも3つの25.4mm幅のストリップは、沸騰水と接触する領域から切断し、Thwing-Albert剥離試験機で10インチ/分で各ストリップの接合強度を測定する。
【0054】
例示的実施例2(「IE2」)
【0055】
【0056】
VORANOL(商標)CP755、およびISONATE(商標)125Mを窒素パージ下、80℃で2時間反応器中で反応させて、OH末端ポリエーテル系ポリウレタンを形成する。合成されたポリエーテル系ポリウレタンは、VORANOL(商標)CP450、SPECFLE(商標)ACTIV2306およびMOR-FREE(商標)88-138と配合されて、CR2Fを形成する。CR2Fの詳細な組成物情報は表4に記載されている。
【0057】
約52.6重量%のポリイソシアネートAおよび47.4重量%のCR2Fを含むポリウレタン接着剤を使用して、ホイル/PE構造およびPET/PE構造を接合する。生成された積層体は、25℃および相対湿度50%で硬化させる。積層体試料は15mm幅のストリップに切断し、そのT-剥離接合強度をThwing-Albert剥離試験機で4インチ/分で評価する。基材のうちの1つが伸ばされたり裂けたりした場合、最大力または破断時の力が記録される。2つの基材が分離されている場合、試験中の力の平均値が記録される。接合強度値は、少なくとも3つの試料ストリップの平均値である。
【0058】
接着剤が完全に硬化した後に、ホイル/PE積層体についてボイルインバッグ試験が実施される。ボイルインバッグ試験用のパウチは、4インチ×6インチの内部サイズを有し、100mlの1:1:1ソース(すなわち、等量の、酢、コーン油、およびケチャップ)で充填されている。続いて、パウチを沸騰水中に30分間入れる。完了したら、少なくとも3つの25.4mm幅のストリップは、沸騰水と接触する領域から切断し、Thwing-Albert剥離試験機で10インチ/分で各ストリップの接合強度を測定する。
【0059】
比較例1(「CE1」)
約52.6重量%のMOR-FREE(商標)L-PLUSおよび47.4重量%のCR121-14を含むポリウレタン接着剤を使用して、ホイル/PE構造およびPET/PE構造を接合する。製造された積層体は、25℃および相対湿度50%で硬化させる。積層体試料は15mm幅のストリップに切断し、そのT-剥離接合強度をThwing-Albert剥離試験機で4インチ/分で評価する。基材のうちの1つが伸ばされたり裂けたりした場合、最大力または破断時の力が記録される。2つの基材が分離されている場合、試験中の力の平均値が記録される。接合強度値は、少なくとも3つの試料ストリップの平均値である。
【0060】
接着剤が完全に硬化した後に、ホイル/PE積層体についてボイルインバッグ試験が実施される。ボイルインバッグ試験用のパウチは、4インチ×6インチの内部サイズを有し、100mlの1:1:1ソース(すなわち、等量の、酢、コーン油、およびケチャップ)で充填されている。続いて、パウチを沸騰水中に30分間入れる。完了したら、少なくとも3つの25.4mm幅のストリップは、沸騰水と接触する領域から切断し、Thwing-Albert剥離試験機で10インチ/分で各ストリップの接合強度を測定する。
【0061】
比較例2
【0062】
【0063】
VORANOL(商標)CP450、VORANOL(商標)CP755、およびISONATE(商標)125Mを窒素パージ下、80℃で2時間反応器中で反応させて、OH末端ポリエーテル系ポリウレタンを形成する。合成されたポリエーテル系ポリウレタンをSPECFLE(商標)ACTIV2306と配合して、CR2Eを形成する。CR2Eの詳細な組成物情報は表5に記載されている。
【0064】
約50.5重量%のポリイソシアネートAおよび49.5重量%のCR2Eを含むポリウレタン接着剤を使用して、ホイル/PE構造およびPET/PE構造を接合する。生成された積層体は、25℃および相対湿度50%で硬化させる。積層体試料は15mm幅のストリップに切断し、そのT-剥離接合強度をThwing-Albert剥離試験機で4インチ/分で評価する。基材のうちの1つが伸ばされたり裂けたりした場合、最大力または破断時の力が記録される。2つの基材が分離されている場合、試験中の力の平均値が記録される。接合強度値は、少なくとも3つの試料ストリップの平均値である。
【0065】
接着剤が完全に硬化した後に、ホイル/PE積層体についてボイルインバッグ試験が実施される。ボイルインバッグ試験用のパウチは、4インチ×6インチの内部サイズを有し、100mlの1:1:1ソース(すなわち、等量の、酢、コーン油、およびケチャップ)で充填されている。その後、それらを沸騰水中に30分間置く。完了したら、少なくとも3つの25.4mm幅のストリップは、沸騰水と接触する領域から切断し、Thwing-Albert剥離試験機で10インチ/分で各ストリップの接合強度を測定する。
【0066】
比較例3
【0067】
【0068】
VORANOL(商標)CP450、VORANOL(商標)CP755、およびISONATE(商標)125Mを窒素パージ下、80℃で2時間反応器中で反応させて、OH末端ポリエーテル系ポリウレタンを形成する。合成されたポリエーテル系ポリウレタンは、SPECFLE(商標)ACTIV2306と配合されて、CR2Cを形成する。CR2Cの詳細な組成物情報は表6に記載されている。
【0069】
約49.5重量%のポリイソシアネートAおよび50.5重量%のCR2Cを含むポリウレタン接着剤を使用して、ホイル/PE構造およびPET/PE構造を接合する。生成された積層体は、25℃および相対湿度50%で硬化させる。積層体試料は15mm幅のストリップに切断し、そのT-剥離接合強度をThwing-Albert剥離試験機で4インチ/分で評価する。基材のうちの1つが伸ばされたり裂けたりした場合、最大力または破断時の力が記録される。2つの基材が分離されている場合、試験中の力の平均値が記録される。接合強度値は、少なくとも3つの試料ストリップの平均値である。
【0070】
接着剤が完全に硬化した後に、ホイル/PE積層体についてボイルインバッグ試験が実施される。ボイルインバッグ試験用のパウチは、4インチ×6インチの内部サイズを有し、100mlの1:1:1ソース(すなわち、等量の、酢、コーン油、およびケチャップ)で充填されている。その後、それらを沸騰水中に30分間置く。完了したら、少なくとも3つの25.4mm幅のストリップは、沸騰水と接触する領域から切断し、Thwing-Albert剥離試験機で10インチ/分で各ストリップの接合強度を測定する。
【0071】
性能結果
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表7および8は、IE1およびIE2が超速硬化および接合強度の進展を有することを示している。例えば、IE1およびIE2は両方とも、2時間の硬化後に1N/15mmを超える接合強度を有する。IE1およびIE2は、CE1~CE3と比較して、24時間の硬化後に高い乾燥接合を示す。表9に示されるように、1:1:1のボイルインバッグ試験の後、CE1~CE3までの積層体は全て剥離した。対照的に、IE1およびIE2は依然としてそれぞれ約383および386g/インチの接着強度を有し、優れた温度および化学的耐性を示す。