IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置 図11
  • 特許-半導体装置 図12
  • 特許-半導体装置 図13
  • 特許-半導体装置 図14
  • 特許-半導体装置 図15
  • 特許-半導体装置 図16
  • 特許-半導体装置 図17
  • 特許-半導体装置 図18
  • 特許-半導体装置 図19
  • 特許-半導体装置 図20
  • 特許-半導体装置 図21
  • 特許-半導体装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L21/92 602D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020172419
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063971
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】二村 羊水
(72)【発明者】
【氏名】西山 雄人
(72)【発明者】
【氏名】中村 正彦
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093427(WO,A1)
【文献】特開2006-339057(JP,A)
【文献】特開2020-077723(JP,A)
【文献】特開平08-222572(JP,A)
【文献】特開2015-216344(JP,A)
【文献】特開2003-234367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60 -21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向を向く主面を有する導電部材と、
前記主面に対向する第1パッドおよび第2パッドを有する半導体素子と、
前記第1パッドから前記主面に向けて突出する第1電極と、
前記第2パッドから前記主面に向けて突出する第2電極と、
前記主面と、前記第1電極および前記第2電極の各々と、を電気的に接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、導電性を有する第1領域と、電気絶縁性を有する第2領域と、を含み、
前記第1領域は、金属部を含み、
前記第2領域の少なくとも一部は、樹脂部を含み、
前記第1電極は、前記主面に対向する対向面と、前記対向面につながり、かつ前記厚さ方向に対して直交する方向を向く側面と、を有し、
前記側面は、前記厚さ方向に対して直交する方向に向けて膨出しており、
前記接合層は、前記主面と前記対向面との間に位置する第1部と、前記第1部につながり、かつ前記厚さ方向に視て前記側面から外方にはみ出す第2部と、を有し、
前記第1部は、前記主面および前記対向面に接しており、
前記第2部は、前記主面および前記側面に接しており、
前記第1電極は、前記対向面を含む第1主部と、前記第1主部と前記第1パッドとの間に位置しており、かつ前記第1主部につながる第2主部と、を有し、
前記厚さ方向に対して直交する方向における前記第1主部の寸法は、前記対向面から前記第1主部と前記第2主部との境界面にかけて徐々に大であり、
前記厚さ方向に対して直交する方向における前記第2主部の寸法は、前記境界面から前記第1パッドにかけて徐々に小である、半導体装置。
【請求項2】
前記金属部は、焼結体である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2領域は、空孔を含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2領域の体積は、前記接合層の全体の体積の15%以上35%以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2部の前記厚さ方向に対して直交する方向に沿った断面積は、前記対向面から前記半導体素子に向かうほど徐々に小である、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電極は、前記対向面から前記主面に向けて突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記第1部に接している、請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記凸部は、前記主面から離れている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接合層において、前記対向面から前記主面に至る第1寸法は、前記厚さ方向に視て前記側面から前記第2部の周縁に至る第2寸法よりも大である、請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属部の組成は、銀を含む、請求項1ないし8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極の各々の組成は、金および銀の少なくともいずれかを含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1電極は、前記第1主部および前記第2主部を覆う副部を有し、
前記第1主部および前記第2主部の各々の組成は、銅を含み、
前記副部の組成は、パラジウムを含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記主面に接するとともに、前記半導体素子、前記第1電極および前記第2電極を覆う封止樹脂をさらに備える、請求項1ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子がフリップ実装により導電部材(リードフレームなど)に接合された半導体装置が広く知られている。特許文献1には、そのような半導体装置の一例が開示されている。当該半導体装置においては、導電部材(特許文献1では引き出し配線)に半導体素子(特許文献1では半導体チップ)の複数の電極が接合層(特許文献1では導体バンプ)により接合されている。半導体素子の複数の電極は、導電部材に対向している。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体装置の接合層は、ハンダからなる。このため、半導体素子に構成された回路に応じて複数の電極の数を増加させた場合、接合層を介して複数の電極を導電部材に接合させる際、溶融した接合層により複数の電極に短絡が発生するおそれがある。さらに接合層には、半導体素子から発した熱の影響により熱応力が作用する。接合層がハンダである場合、当該熱応力に起因した亀裂が発生しやすい。したがって、これらの対策を講じることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-85522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、複数の電極の短絡を防止しつつ、接合層における亀裂の発生を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される半導体装置は、厚さ方向を向く主面を有する導電部材と、前記主面に対向する複数のパッドを有する半導体素子と、前記複数のパッドに対して個別に形成されるとともに、前記複数のパッドから前記主面に向けて突出する複数の電極と、前記主面と前記複数の電極とを電気的に接合する接合層と、を備え、前記接合層は、導電性を有する第1領域と、電気絶縁性を有する第2領域と、を含み、前記第1領域は、金属部を含み、前記第2領域の少なくとも一部は、樹脂部を含むことを特徴としている。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供される半導体装置の製造方法は、厚さ方向の一方側に設けられた複数のパッドを有する半導体素子において、前記複数のパッドに対して複数の電極を個別に形成する工程と、前記複数の電極に接合材を塗布する工程と、前記厚さ方向を向く主面を有する導電部材に対して、前記複数の電極が前記主面に対向した状態となるように前記複数の電極を前記主面に電気的に接合する工程と、を備え、前記接合材は、金属粒子および樹脂を含む材料からなり、前記複数の電極を前記主面に接合する工程では、前記接合材を前記主面に接触させた後、大気圧下で前記接合材を焼成することによって、前記複数の電極を前記主面に電気的に接合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる半導体装置およびその製造方法によれば、複数の電極の短絡を防止しつつ、接合層における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0009】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の平面図である。
図2図1に対応する半導体装置の平面図であり、封止樹脂を透過している。
図3図2に対応する半導体装置の平面図であり、半導体素子をさらに透過している。
図4図1に示す半導体装置の底面図である。
図5図1に示す半導体装置の正面図である。
図6図1に示す半導体装置の背面図である。
図7図1に示す半導体装置の右側面図である。
図8図1に示す半導体装置の左側面図である。
図9図3の部分拡大図である。
図10図3の部分拡大図である。
図11図3のXI-XI線に沿う断面図である。
図12図3のXII-XII線に沿う断面図である。
図13図3のXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14図3のXIV-XIV線に沿う断面図である。
図15図11の部分拡大図である。
図16図11の部分拡大図である。
図17図1に示す半導体装置の製造工程を説明する部分拡大断面図である。
図18図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図19図1に示す半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図20図1に示す半導体装置の変形例の部分拡大断面図である。
図21】本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の部分拡大断面図である。
図22図21に示す半導体装置の変形例の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。添付図面の各々は模式的に描かれている。添付図面の各々は、省略された部分、および誇張された部分を含むことがある。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1図16に基づき、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置A10について説明する。半導体装置A10は、導電部材10、半導体素子20、複数の電極31、接合層32および封止樹脂40を備える。図1に示すように、半導体装置A10のパッケージ形式は、QFN(Quad Flat Non-Lead Package)である。半導体素子20は、フリップチップ型のLSIである。半導体素子20には、その内部にスイッチング回路212Aおよび制御回路212B(それぞれ詳細は後述)が構成されている。半導体装置A10においては、スイッチング回路212Aにより直流電力(電圧)が交流電力(電圧)に変換される。半導体装置A10は、たとえばDC/DCコンバータの回路を構成する一要素に用いられる。ここで、図2は、理解の便宜上、封止樹脂40を透過している。図3は、理解の便宜上、図2に対して半導体素子20をさらに透過している。これらの図において、透過した半導体素子20および封止樹脂40の各々を想像線(二点鎖線)で示している。
【0013】
半導体装置A10の説明においては、導電部材10の厚さ方向zを「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。図1および図2に示すように、半導体装置A10は、厚さ方向zに沿って視て矩形状である。また、半導体装置A10の説明においては、便宜上、第2方向yにおいて複数の第2リード12(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの一方側」と呼ぶ。第2方向yにおいて複数の第1リード11(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの他方側」と呼ぶ。
【0014】
導電部材10は、図2に示すように、半導体素子20を支持するとともに、半導体装置A10を配線基板に実装するための端子をなしている。図11図14に示すように、導電部材10は、その一部が封止樹脂40に覆われている。導電部材10は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く主面101および裏面102を有する。主面101は、厚さ方向zの一方側を向き、かつ半導体素子20に対向している。半導体素子20は、主面101に支持されている。主面101は、封止樹脂40に覆われている。裏面102は、厚さ方向zの他方側を向く。導電部材10は、単一のリードフレームから構成される。当該リードフレームは、たとえば、銅(Cu)または銅合金を含む材料からなる。導電部材10は、複数の第1リード11、複数の第2リード12および一対の第3リード13を含む。
【0015】
複数の第1リード11は、図3および図4に示すように、厚さ方向zに沿って視て第2方向yに延びる帯状である。複数の第1リード11は、第2方向yに沿って配列されている。半導体装置A10が示す例においては、複数の第1リード11は、第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの3つの端子により構成される。複数の第1リード11は、第2方向yの一方側から他方側に向けて第1入力端子11A、出力端子11C、第2入力端子11Bの順に配列されている。第1入力端子11Aおよび第2入力端子11Bは、半導体装置A10において電力変換対象となる直流電力(電圧)が入力される。第1入力端子11Aは、正極(P端子)である。第2入力端子11Bは、負極(N端子)である。出力端子11Cからは、半導体素子20に構成されたスイッチング回路212Aにより電力変換された交流電力(電圧)が出力される。
【0016】
図3に示すように、第1入力端子11Aは、第2方向yにおいて複数の第2リード12と出力端子11Cとの間に位置する。出力端子11Cは、第2方向yにおいて第1入力端子11Aと第2入力端子11Bとの間に位置する。第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々は、主部111および一対の側部112を含む。図3および図4に示すように、主部111は、第1方向xに延びている。複数の第1リード11において、半導体素子20は、主部111の主面101に支持されている。一対の側部112は、主部111の第1方向xの両端につながっている。図3図4図12および図13に示すように、一対の側部112の各々は、第1端面112Aを有する。第1端面112Aは、第1リード11の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第1端面112Aは、封止樹脂40から露出している。
【0017】
図9に示すように、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの一対の側部112の各々には、くびれ部112Bが形成されている。くびれ部112Bは、第1リード11の主面101から裏面102に至り、かつ第2方向yの両側から側部112の内方に向けて凹んでいる。くびれ部112Bは、封止樹脂40に接している。くびれ部112Bにより、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cにおいて、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法bは、主部111の裏面102の第2方向yの寸法Bよりも小となる。
【0018】
図3に示すように、第2入力端子11Bは、出力端子11Cよりも第2方向yの他方側に位置する。このため、第2入力端子11Bは、複数の第1リード11のうち第2方向yの他方側に位置する。第2入力端子11Bは、主部111、一対の側部112および複数の突出部113を含む。複数の突出部113は、主部111の第2方向yの他方側から突出している。隣り合う2つの突出部113の間には、封止樹脂40が充填されている。図11に示すように、複数の突出部113の各々は、副端面113Aを有する。副端面113Aは、第2入力端子11Bの主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの他方側を向く。副端面113Aは、封止樹脂40から露出している。図7に示すように、複数の副端面113Aは、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0019】
図10に示すように、第2入力端子11Bの一対の側部112の各々には、切込部112Cが形成されている。切込部112Cは、第2入力端子11Bの主面101から裏面102に至り、かつ第1端面112Aから第1方向xに凹んでいる。これにより、第1端面112Aは、第2方向yにおいて互いに離間した2つの領域に分断されている。切込部112Cによっても、第2入力端子11Bにおいて、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法bは、主部111の裏面102の第2方向yの寸法Bよりも小となる。なお、ここでの寸法bは、第1端面112Aの一方の領域の第2方向yの寸法b1と、第1端面112Aの他方の領域の第2方向yの寸法b2とを足し合わせたもの(b=b1+b2)である。切込部112Cには、封止樹脂40が充填されている。
【0020】
図3および図4に示すように、複数の第1リード11の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。半導体装置A10が示す例においては、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積は、ともに等しい。第2入力端子11Bの裏面102の面積は、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積よりも大である。
【0021】
第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、半導体素子20が支持される主部111の主面101には、たとえば銀(Ag)めっきを施してもよい。さらに、第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、封止樹脂40から露出する裏面102、一対の第1端面112Aおよび複数の副端面113Aには、たとえば錫(Sn)めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0022】
複数の第2リード12は、図3に示すように、複数の第1リード11よりも第2方向yの一方側に位置する。複数の第2リード12のいずれか一つは、半導体素子20に構成された制御回路212Bの接地端子である。その他の複数の第2リード12の各々には、制御回路212Bを駆動させるための電力(電圧)、または制御回路212Bに伝達するための電気信号が入力される。図3図4および図11に示すように、複数の第2リード12の各々は、第2端面121を有する。第2端面121は、第2リード12の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの一方側を向く。第2端面121は、封止樹脂40から露出している。図8に示すように、複数の第2端面121は、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0023】
図3および図4に示すように、複数の第2リード12の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。なお、複数の第2リード12の裏面102の面積は、いずれも等しい。半導体素子20が支持される複数の第2リード12の裏面102には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する複数の第2リード12の裏面102および第2端面121には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0024】
一対の第3リード13は、図3に示すように、第2方向yにおいて第1リード11(第1入力端子11A)と、複数の第2リード12との間に位置する。一対の第3リード13は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の第3リード13の各々には、半導体素子20に構成された制御回路212Bに伝達するための電気信号などが入力される。図3図4および図14に示すように、一対の第3リード13の各々は、第3端面131を有する。第3端面131は、主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第3端面131は、封止樹脂40から露出している。第3端面131は、複数の第1リード11の第1端面112Aとともに、第2方向yに沿って配列されている。
【0025】
図3および図4に示すように、一対の第3リード13の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。半導体素子20が支持される一対の第3リード13の主面101には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する一対の第3リード13の裏面102および第3端面131には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえば、ニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0026】
半導体素子20は、図11図14に示すように、導電部材10(複数の第1リード11、複数の第2リード12、および一対の第3リード13)に、複数の電極31、および接合層32を介したフリップチップ接合により電気的に接合されている。複数の電極31の各々と、接合層32とは、接合部を構成する。半導体素子20は、封止樹脂40に覆われている。図15および図16に示すように、半導体素子20は、素子本体21、複数のパッド22および表面保護膜23を有する。
【0027】
素子本体21は、半導体素子20の主要部をなす。図15および図16に示すように、素子本体21は、基板211、半導体層212およびパッシベーション膜213を有する。
【0028】
図15および図16に示すように、基板211は、その下方において半導体層212、パッシベーション膜213、複数の電極31、および表面保護膜23を支持している。基板211は、半導体材料からなる。当該半導体材料は、たとえばケイ素(Si)または炭化ケイ素(SiC)を主成分としている。基板211の厚さは、たとえば100μm以上300μm以下である。
【0029】
図11図14に示すように、半導体層212は、厚さ方向zにおいて基板211に対して導電部材10の主面101に対向する側に位置する。半導体層212は、基板211の上に積層されている。半導体層212は、ドープされる元素量の相違に基づく複数種類のp型半導体およびn型半導体を含む。半導体層212には、スイッチング回路212Aと、スイッチング回路212Aに導通する制御回路212Bとが構成されている。スイッチング回路212Aは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などである。半導体装置A10が示す例においては、スイッチング回路212Aは、高電圧領域(上アーム回路)と低電圧領域(下アーム回路)との2つの領域に区分されている。各々の領域は、1つのnチャンネル型のMOSFETにより構成されている。制御回路212Bは、スイッチング回路212Aを駆動させるためのゲートドライバや、スイッチング回路212Aの高電圧領域に対応するブートストラップ回路などが構成されるとともに、スイッチング回路212Aを正常に駆動させるための制御を行う。なお、半導体層212には、配線層(図示略)が構成されている。当該配線層により、スイッチング回路212Aと制御回路212Bとは、相互に導通している。
【0030】
図15および図16に示すように、パッシベーション膜213は、半導体層212の下面を覆っている。パッシベーション膜213は、電気絶縁性を有する。パッシベーション膜213は、たとえば、半導体層212の下面に接する酸化ケイ素膜(SiO2)と、当該酸化ケイ素膜に積層された窒化ケイ素膜(Si34)とにより構成される。パッシベーション膜213には、厚さ方向zに貫通する複数の開口213Aが設けられている。
【0031】
図15および図16に示すように、複数のパッド22は、導電部材10の主面101に対向している。複数のパッド22は、素子本体21の半導体層212に接して配置されている。これにより、複数のパッド22の各々は、半導体層212のスイッチング回路212A、および半導体層212の制御回路212Bのいずれかに導通している。複数のパッド22の各々は、その組成にアルミニウム(Al)または銅を含む。その他の複数のパッド22の各々の構成として、半導体層212から下方に向けて銅、ニッケル、パラジウムの順に積層された複数の金属層でもよい。複数のパッド22の各々は、素子本体21のパッシベーション膜213に接している。複数のパッド22の各々の一部は、パッシベーション膜213の開口213Aから露出している。
【0032】
図15および図16に示すように、表面保護膜23は、素子本体21のパッシベーション膜213を覆っている。表面保護膜23は、パッシベーション膜213、および複数のパッド22に接している。半導体装置A10においては、複数の電極31の各々は、表面保護膜23から離れている。本構成と異なり、複数の電極31の各々が、表面保護膜23に接する構成でもよい。表面保護膜23は、電気絶縁性を有する。表面保護膜23は、たとえばポリイミドを含む材料からなる。
【0033】
複数の電極31は、図15および図16に示すように、半導体素子20の複数のパッド22に対して個別に形成されるとともに、複数のパッド22から導電部材10の主面101に向けて突出している。複数の電極31の各々は、複数のパッド22のいずれかを介して半導体層212のスイッチング回路212A、および半導体層212の制御回路212Bのいずれかに導通している。複数の電極31の各々は、接合層32を介して主面101に電気的に接合されている。複数の電極31は、複数の第1電極31A、および複数の第2電極31Bを含む。複数の第1電極31Aの各々は、半導体層212のスイッチング回路212Aに導通し、かつ複数の第1リード11のいずれかの主面101に電気的に接合されている。複数の第2電極31Bの各々は、半導体層212の制御回路212Bに導通し、かつ複数の第2リード12のいずれかの主面101、または一対の第3リード13いずれかの主面101に電気的に接合されている。半導体装置A10においては、複数の電極31の各々の組成は、金を含む。この他、複数の電極31の各々の組成は、金および銀の少なくともいずれかを含む場合でもよい。
【0034】
図15および図16に示すように、複数の電極31の各々は、対向面311および側面312を有する。対向面311は、導電部材10の主面101に対向している。側面312は、対向面311につながり、かつ厚さ方向zに対して直交する方向を向く。複数の電極31の少なくともいずれかの側面312は、厚さ方向zに対して直交する方向に向けて膨出している。
【0035】
接合層32は、図11図14に示すように、導電部材10の主面101と、複数の電極31とを電気的に接合している。図15および図16に示すように、接合層32は、金属部を含む第1領域32Aと、第2領域32Bとを含む。第1領域32Aは、導電性を有する。第1領域32Aは、焼結金属粒子の結合体、すなわち焼結体である。当該焼結体が金属部に相当する。当該焼結体の組成は、銀を含む。第2領域32Bは、電気絶縁性を有する。第2領域32Bは、少なくとも樹脂部を含む。当該樹脂部は、バインダとして合成樹脂を含む材料からなる。当該合成樹脂は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。当該樹脂部のヤング率は、第1領域32Aのヤング率よりも小である。第2領域32Bとしては、次の場合がある。第1に、第2領域32Bは樹脂部からなる。第2に、第2領域32Bには、樹脂部および空孔が混在している。第2領域32Bの体積は、接合層32の全体の体積の15%以上35%以下である。
【0036】
図15および図16に示すように、接合層32は、導電部材10の主面101と、複数の電極31の各々の対向面311および側面312に接している。接合層32は、第1部321および第2部322を有する。第1部321は、主面101と複数の電極31のいずれかの対向面311との間に位置する。第1部321は、主面101および対向面311に接している。第2部322は、第1部321につながり、かつ厚さ方向zに沿って視て複数の電極31のいずれかの側面312から外方にはみ出している。第2部322の厚さ方向zに対して直交する方向に沿った断面積は、対向面311から半導体素子20に向かうほど徐々に小である。
【0037】
封止樹脂40は、図11図14に示すように、導電部材10の主面101に接するとともに、半導体素子20、および複数の電極31を覆っている。図5図8に示すように、封止樹脂40は、頂面41、底面42、一対の第1側面431、および一対の第2側面432を有する。封止樹脂40は、たとえば、黒色のエポキシ樹脂を含む材料からなる。
【0038】
図11図14に示すように、頂面41は、厚さ方向zにおいて導電部材10の主面101と同じ側を向く。図5図8に示すように、底面42は、頂面41とは反対側を向く。図4に示すように、底面42から、複数の第1リード11の裏面102、複数の第2リード12の裏面102、および一対の第3リード13の裏面102が露出している。
【0039】
図7および図8に示すように、一対の第1側面431は、頂面41および底面42の双方につながり、かつ第1方向xを向く。一対の第1側面431は、第2方向yにおいて互いに離間している。図12図14に示すように、一対の第1側面431の各々から、複数の第1リード11の第1端面112Aと、第3リード13の第3端面131とが、第1側面431と面一となるように露出している。
【0040】
図5および図6に示すように、一対の第2側面432は、頂面41、底面42および一対の第1側面431のいずれにもつながり、かつ第2方向yを向く。一対の第2側面432は、第1方向xにおいて互いに離間している。図11に示すように、第2方向yの一方側に位置する第2側面432から、複数の第2リード12の第2端面121が、第2側面432と面一となるように露出している。第2方向yの他方側に位置する第2側面432から、第2入力端子11B(第1リード11)の複数の副端面113Aが、第2側面432と面一となるように露出している。
【0041】
次に、図17図19に基づき、半導体装置A10の製造方法の一例について説明する。ここで、図17の断面位置は、図15の断面位置と同一である。図18および図19の各々の断面位置は、図11の断面位置と同一である。
【0042】
最初に、図17に模式的に示すように、半導体素子20の複数のパッド22に対して複数の電極31を個別に形成する。複数のパッド22は、半導体素子20の厚さ方向zの一方側に設けられている。複数の電極31は、ワイヤボンディングにより形成される。すなわち、複数の電極31の各々は、ボールボンディング部に相当する。その後、複数の電極31に接合材80を塗布する。接合材80は、金属粒子および合成樹脂を含む材料からなる。当該金属粒子の組成は、銀を含む。当該合成樹脂は、エポキシ樹脂など熱硬化性樹脂である。
【0043】
次いで、図18に示すように、厚さ方向zを向く主面101を有する導電部材10に対して、複数の電極31を主面101に電気的に接合する。本工程では、半導体素子20を図17に示す状態から厚さ方向zに反転させて、複数の電極31が主面101に対向した状態になるようにする。さらに本工程では、接合材80を主面101に接触させた後、大気圧下で接合材80を焼成させる。これにより、接合材80に含まれる金属粒子が互いに結合した焼結体となる。当該焼結体が、金属を含む金属部に相当する。接合材80に含まれる合成樹脂は、収縮かつ熱硬化する。この収縮により、金属粒子の結合が促進される。具体的には、この収縮により、金属粒子の相互には圧縮力が作用するため、金属粒子の結合が促進される。本工程により、複数の電極31が主面101に電気的に接合される。焼成された接合材80が、半導体装置A10の接合層32に相当する。
【0044】
次いで、図19に示すように、導電部材10の主面101に接し、かつ半導体素子20、および複数の電極31を覆う封止樹脂40を形成する。封止樹脂40は、トランスファモールド成形により形成される。その後、導電部材10および封止樹脂40を第1方向xおよび第2方向yの各々に沿ってダイシングブレードなどを用いて切断することによって、複数の個片が得られる。当該複数の個片の各々が、半導体装置A10となる。
【0045】
〔変形例〕
次に、図20に基づき、半導体装置A10の変形例である半導体装置A11について説明する。ここで、図20の断面位置は、図15の断面位置と同一である。
【0046】
図20に示すように、半導体装置A11においては、複数の電極31の構成が、半導体装置A10の当該構成と異なる。半導体装置A11の複数の電極31の各々は、半導体素子20のパッド22の上に形成された主部31Cと、主部31Cを覆うようにして形成された副部31Dとを含む。主部31Cの組成は、銅を含む。この他、主部31Cの組成は、金および銀の少なくともいずれかを含む場合でもよい。主部31Cは、図17に示す工程と同様にワイヤボンディングにより形成される。副部31Dの組成は、パラジウムを含む。副部31Dは、電解めっきにより形成される。本変形においては、複数の電極31の各々は、主部31Dが銅バンプであり、副部31Dがパラジウムめっき層である。
【0047】
次に、半導体装置A10の作用効果について説明する。
【0048】
半導体装置A10は、半導体素子20の複数のパッド22に対して個別に形成されるとともに、複数のパッド22から導電部材10の主面101に向けて突出する複数の電極31と、主面101と複数の電極31とを電気的に接合する接合層32とを備える。接合層32は、導電性を有する第1領域32Aと、電気絶縁性を有する第2領域32Bとを含む。第1電極31Aは、焼結金属粒子の結合体である。第2領域32Bの少なくとも一部は、合成樹脂を含む材料からなる。本構成をとることにより、第1に、半導体装置A10の製造の際、図18に示す複数の電極31と主面101に接合する工程において接合材80が溶融しないため、複数の電極31の短絡が防止される。第2に、同工程において接合材80が主面101の面内方向(厚さ方向zに対して直交し、かつ第1方向xおよび第2方向yを含む方向)に沿って拡がることが抑制されるため、複数の電極31の短絡が防止される。さらに、半導体素子20から発した熱に起因した熱応力が接合層32に作用すると、当該熱応力の一部は、第2領域32Bにより分担される。これにより、第1領域32Aに作用する熱応力が低減されるため、接合層32における亀裂の発生を抑制できる。したがって、半導体装置A10によれば、複数の電極31の短絡を防止しつつ、接合層32における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0049】
半導体装置A10の製造工程のうち図18に示す複数の電極31を導電部材10の主面101に電気的に接合する工程では、接合材80を主面101に接触させた後、大気圧下で接合材80を焼成することによって、複数の電極31を主面101に電気的に接合する。この場合において、第1に、加圧機構を使用して外部から強制的に接合材80を加圧した状態で焼成させる場合と比較して、接合材80の焼成に伴って発生する接合層32の残留応力が低減される。第2に、複数の電極31を主面101に電気的に接合することによって形成された接合層32は、複数の電極31のいずれかの側面312を覆う。これにより、接合材80の焼成に伴って発生する接合層32の残留応力は、側面312を覆う部分である第1部321の厚さ方向zに対して直交する方向の両端部と、第2部322とにより分担される。これらにより、接合層32における亀裂の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0050】
接合層32の第2領域32Bは、空孔を含むことが好ましい。これにより、第2領域32Bが、接合層32の第1領域32Aよりも可とう性に富んだものとなるため、第1領域32Aに作用する熱応力がより効果的に低減される。第2領域32Bの体積は、接合層32の全体の体積の15%以上35%以下である。このことによって、第1領域32Aに作用する熱応力の低減効果が十分に発揮される。
【0051】
一方、第2領域32Bの体積が接合層32の全体の体積の15%未満である場合においては、接合層32における亀裂の発生を効果的に抑制できないので、好ましくない。他方、第2領域32Bの体積が接合層32の全体の体積の35%を超える場合には、樹脂部を含む第2領域32Bの体積が比較的大となる。これにより、主面101と複数の電極31との間の電気抵抗が増加するので、好ましくない。
【0052】
接合層32の第2領域32Bに含まれる合成樹脂のヤング率は、第1領域32Aのヤング率よりも小さい。これにより、半導体装置A10に反りなどの変形が発生した場合に、接合層32を含む各接合部が、半導体装置A10の反りに(言い換えれば導電部材10の反りに)追従しやすい。したがって、導電部材10の主面101に対する複数の電極31の接合不良などの不具合の発生が抑制される。
【0053】
接合層32は、第1部321と、第1部321につながる第2部322を有する。第1部321は、導電部材10の主面101と、複数の電極31のいずれかの対向面311との間に位置する。第2部322は、厚さ方向zに沿って視て複数の電極31のいずれかの側面312から外方にはみ出している。第2部322は、複数の電極31のいずれかの側面312に接している。これにより、複数の電極31の各々において、接合層32に対する接触面積がより拡大されたものとなる。これにより、導電部材10に対する複数の電極31の接合強度の増加を図ることができる。
【0054】
接合層32の第2部322の厚さ方向zに対して直交する方向に沿った断面積は、複数の電極31のいずれかの対向面311から半導体素子20に向けて徐々に小である。これにより、接合層32に作用する熱応力が分散されるため、接合層32における亀裂の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0055】
複数の電極31の少なくともいずれかの側面312は、厚さ方向zに対して直交する方向に向けて膨出している。これにより、当該側面312と、接合層32の第2部322との界面の面積が拡大されるため、当該界面に伝達する熱応力を低減することができる。このことは、接合層32における亀裂の発生を抑制することに寄与する。
【0056】
半導体装置A11においては、複数の電極31の各々は、半導体素子20のパッド22の上に形成された主部31Cと、主部31Cを覆うように形成された副部31Dとを含む。主部31Cの組成は、銅を含む。副部31Dの組成は、パラジウムを含む。本構成をとることにより、半導体装置A11の製造工程のうち図18に示す複数の電極31と主面101に接合する工程において、接合材80の焼成に起因した複数の電極31に作用する熱衝撃が副部31Dにより低減される。これにより、主部31Cが保護されるとともに、半導体装置A10よりも製造コストを抑えることができる。
【0057】
複数の電極31の各々は、ボンディングワイヤよりも長さが小であり、かつ横断面積が大である。このため、第1リード11と、半導体素子20の複数のパッド22とをボンディングワイヤにより接続させた場合と比較して、第1リード11とスイッチング回路212Aとの間における寄生抵抗を低減させることができる。寄生抵抗が低減されると、スイッチング回路212Aにおけるオン抵抗およびノイズが低減されるという効果が得られる。
【0058】
半導体素子20の素子本体21の半導体層212には、スイッチング回路212Aが構成されている。スイッチング回路212Aには、複数の電極31の少なくともいずれかが導通している。一方、導電部材10に含まれ、かつ複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第1リード11の裏面102は、封止樹脂40の底面42から露出している。これにより、半導体装置A10の使用の際、スイッチング回路212Aの駆動により半導体素子20から発生した熱を、効率よく外部に放熱させることができる。
【0059】
複数の第1リード11の各々は、第1方向xに延びる主部111と、主部111の第1方向xの両端につながる一対の側部112を有する。一対の側部112の各々は、第1方向xを向き、かつ封止樹脂40の第1側面431から露出する第1端面112Aを有する。一対の第1端面112Aの各々は、第1側面431と面一である。第2方向yにおいて、一対の第1端面112Aの各々の寸法bは、主部111の裏面102の寸法Bよりも小である。これにより、一対の第1端面112Aの各々の面積を、従来のQFNの半導体装置におけるこれらの面積よりも小とすることができる。このため、半導体装置A10の製造において、ブレードダイシングによる個片化を行った際、一対の第1端面112Aにおける金属バリの発生が抑制される。金属バリの発生が抑制されると、配線基板に対する半導体装置A10の実装性の向上を図ることができる。
【0060】
図9に示すように、複数の第1リード11(第1入力端子11Aおよび出力端子11C)の一対の側部112の各々には、くびれ部112Bが形成されている。これにより、第2方向yにおいて、一対の第1端面112Aの各々の寸法bを、第1リード11の主部111の裏面102の寸法Bよりも小とすることができる。また、くびれ部112Bは、第1方向xにおいて封止樹脂40に接している。これにより、複数の第1リード11が封止樹脂40の一対の第1側面431から抜け出すことを防止できる。
【0061】
図10に示すように、第1リード11(第2入力端子11B)の一対の側部112の各々には、切込部112Cが形成されている。これによっても、第2方向yにおいて、一対の第1端面112Aの各々の寸法bを、第1リード11の主部111の裏面102の寸法Bよりも小とすることができる。切込部112Cには、封止樹脂40が充填されている。これにより、第1リード11は、第1方向xにおいて封止樹脂40に接する構成となる。したがって、第1リード11が封止樹脂40の一対の第1側面431から抜け出すことを防止できる。
【0062】
第2入力端子11Bは、主部111の第2方向yの他方側から突出する複数の突出部113を含む。複数の突出部113の各々は、第2方向yを向く副端面113Aを有する。複数の副端面113Aは、第2方向yの他方側に位置する封止樹脂40の第2側面432から露出している。これにより、第2入力端子11Bは、第2方向yの他方側において封止樹脂40に接する構成となる。したがって、第2入力端子11Bが第2方向yの他方側に位置する第2側面432から抜け出すことを防止できる。
【0063】
複数の第1リード11の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。これにより、複数の第1リード11は、厚さ方向zの裏面102が向く側において封止樹脂40に接する構成となる。したがって、複数の第1リード11が封止樹脂40の底面42から抜け出すことを防止できる。さらに、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第1リード11の各々の主面101の面積を、より広く確保することができる。これにより、複数の第1リード11に電気的に接合される複数の電極31の個数を、より増加させることが可能である。
【0064】
導電部材10は、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第2リード12をさらに含む。複数の第2リード12の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。したがって、先述した第1リード11の主面101および裏面102の関係と同様に、複数の第2リード12が封止樹脂40の底面42から抜け出すことを防止できる。さらに、複数の電極31の少なくともいずれかが接合される複数の第2リード12の各々の面積を、より確保することができる。これにより、複数の第2リード12に電気的に接合される複数の電極31の個数を、より増加させることが可能である。
【0065】
〔第2実施形態〕
図21に基づき、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置A20について説明する。本図において、先述した半導体装置A10の同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、図21の断面位置は、図15の断面位置と同一である。
【0066】
半導体装置A20は、複数の電極31、および接合層32の構成が、先述した半導体装置A10における当該構成と異なる。
【0067】
図21に示すように、半導体装置A20においては、複数の電極31の少なくともいずれかは、対向面311から導電部材10の主面101に向けて突出する凸部313を有する。ワイヤボンディングによって形成された凸部313を有する電極31は、スタッドバンプである。凸部313は、接合層32の第1部321に接している。さらに半導体装置A20においては、凸部313は、主面101にも接している。凸部313は、電極31の他の部分と同時にワイヤボンディングにより形成される。
【0068】
図21に示すように、半導体装置A20の接合層32においては、第1寸法d1は、第2寸法d2よりも大である。第1寸法d1は、複数の電極31のいずれかの対向面311から導電部材10の主面101に至る接合層32の第1部321の寸法である。第2寸法d2は、厚さ方向zに沿って視て複数の電極31のいずれかの側面312から接合層32の第2部322の周縁に至る第2部322の寸法である。
【0069】
〔変形例〕
次に、図22に基づき、半導体装置A20の変形例である半導体装置A21について説明する。ここで、図22の断面位置は、図21の断面位置と同一である。
【0070】
図22に示すように、半導体装置A21においては、複数の電極31の少なくともいずれかにおいて、凸部313は、導電部材10の主面101から離れている。
【0071】
次に、半導体装置A20の作用効果について説明する。
【0072】
半導体装置A20は、半導体素子20の複数のパッド22に対して個別に形成されるとともに、複数のパッド22から導電部材10の主面101に向けて突出する複数の電極31と、主面101と複数の電極31とを電気的に接合する接合層32とを備える。接合層32は、導電性を有する第1領域32Aと、電気絶縁性を有する第2領域32Bとを含む。第1電極31Aは、焼結金属粒子の結合体である。第2領域32Bの少なくとも一部は、合成樹脂を含む材料からなる。したがって、半導体装置A20によっても、複数の電極31の短絡を防止しつつ、接合層32における亀裂の発生を抑制することが可能となる。
【0073】
半導体装置A20においては、複数の電極31の少なくともいずれかは、対向面311から導電部材10の主面101に向けて突出する凸部313を有する。凸部313は、接合層32の第1部321に接している。これにより、第1部321に対する電極31の接触面積が拡大するため、導電部材10に対する電極31の接合強度がさらに増加する。さらに、電極31には、第1部321に対する投錨効果(アンカー効果)が発生する。このことは、当該接合強度の増加に寄与する。
【0074】
複数の電極31の少なくともいずれかが凸部313を有することによって、接合層32において、図20に示す第1寸法d1が、図20に示す第2寸法d2よりも大である構成をとることができる。これにより、接合層32の体積を半導体装置A10の接合層32の体積よりも小とした場合であっても、接合層32の第1部321の体積が極度に小となることが回避されるため、導電部材10に対する電極31の接合強度が半導体装置A10と同程度とすることができる。さらに、接合層32の第2部322の体積が極度に大となることを回避することができる。第2部322の体積が極度に大となると、第2部322に熱応力の集中を来すおそれがあるため、本構成により熱応力の集中を防ぐことができる。
【0075】
半導体装置A10および半導体装置A20においては、導電部材10は、同一のリードフレームから構成された複数のリード(複数の第1リード11、複数の第2リード12、および一対の第3リード13)を対象としている。その他の導電部材10の構成として、絶縁基板と、当該絶縁基板の上に配置され、かつ互いに離間した複数の領域を有する導電層とを備えるものでもよい。
【0076】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0077】
本開示によって提供される半導体装置、および半導体装置の製造方法の技術的構成について、以下に付記する。
[付記1]
厚さ方向を向く主面を有する導電部材と、
前記主面に対向する複数のパッドを有する半導体素子と、
前記複数のパッドに対して個別に形成されるとともに、前記複数のパッドから前記主面に向けて突出する複数の電極と、
前記主面と前記複数の電極とを電気的に接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、導電性を有する第1領域と、電気絶縁性を有する第2領域と、を含み、
前記第1領域は、金属部を含み、
前記第2領域の少なくとも一部は、樹脂部を含むことを特徴とする、半導体装置。
[付記2]
前記金属部は、焼結体である、付記1に記載の半導体装置。
[付記3]
前記第2領域は、空孔を含む、付記1または2に記載の半導体装置。
[付記4]
前記第2領域の体積は、前記接合層の全体の体積の15%以上35%以下である、付記1ないし3のいずれかに記載の半導体装置。
[付記5]
前記複数の電極の各々は、前記主面に対向する対向面と、前記対向面につながり、かつ前記厚さ方向に対して直交する方向を向く側面と、を有し、
前記接合層は、前記主面および前記対向面に接している、付記1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
[付記6]
前記接合層は、前記主面と前記複数の電極のいずれかの前記対向面との間に位置する第1部と、前記第1部につながり、かつ前記厚さ方向に沿って視て前記複数の電極のいずれかの前記側面から外方にはみ出す第2部と、を有し、
前記第2部は、前記複数の電極のいずれかの前記側面に接している、付記5に記載の半導体装置。
[付記7]
前記第2部の前記厚さ方向に対して直交する方向に沿った断面積は、前記対向面から前記半導体素子に向かうほど徐々に小である、付記6に記載の半導体装置。
[付記8]
前記複数の電極の少なくともいずれかの前記側面は、前記厚さ方向に対して直交する方向に向けて膨出している、付記5ないし7のいずれかに記載の半導体装置。
[付記9]
前記複数の電極の少なくともいずれかは、前記対向面から前記主面に向けて突出する凸部を有し、
前記凸部は、前記第1部に接している、付記6ないし8のいずれかに記載の半導体装置。
[付記10]
前記凸部は、前記主面から離れている、付記9に記載の半導体装置。
[付記11]
前記接合層において、前記複数の電極のいずれかの前記対向面から前記主面に至る第1寸法は、前記厚さ方向に沿って視て前記複数の電極のいずれかの前記側面から前記第2部の周縁に至る第2寸法よりも大である、付記9または10に記載の半導体装置。
[付記12]
前記金属部の組成は、銀を含む、付記1ないし11のいずれかに記載の半導体装置。
[付記13]
前記複数の電極の各々の組成は、金および銀の少なくともいずれかを含む、付記1ないし12のいずれかに記載の半導体装置。
[付記14]
前記複数の電極の各々は、前記パッドの上に形成された主部と、前記主部を覆うようにして形成された副部と、を含み、
前記主部の組成は、銅を含み、
前記副部の組成は、パラジウムを含む、付記1ないし12のいずれかに記載の半導体装置。
[付記15]
前記主面に接するとともに、前記半導体素子、および前記複数の電極を覆う封止樹脂をさらに備える、付記1ないし14のいずれかに記載の半導体装置。
[付記16]
厚さ方向の一方側に設けられた複数のパッドを有する半導体素子において、前記複数のパッドに対して複数の電極を個別に形成する工程と、
前記複数の電極に接合材を塗布する工程と、
前記厚さ方向を向く主面を有する導電部材に対して、前記複数の電極が前記主面に対向した状態となるように前記複数の電極を前記主面に電気的に接合する工程と、を備え、
前記接合材は、金属粒子および樹脂を含む材料からなり、
前記複数の電極を前記主面に接合する工程では、前記接合材を前記主面に接触させた後、大気圧下で前記接合材を焼成することによって、前記複数の電極を前記主面に電気的に接合することを特徴とする、半導体装置の製造方法。
[付記17]
前記複数の電極を形成する工程では、ワイヤボンディングにより前記複数のパッドに対して前記複数の電極を個別に形成する、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0078】
A10,A20:半導体装置
10:導電部材
101:主面
102:裏面
11:第1リード
11A:第1入力端子
11B:第2入力端子
11C:出力端子
111:主部
112:側部
112A:第1端面
112B:くびれ部
112C:切込部
113:突出部
113A:副端面
12:第2リード
121:第2端面
13:第3リード
131:第3端面
20:半導体素子
21:素子本体
211:基板
211A:基面
212:半導体層
212A:スイッチング回路
212B:制御回路
213:パッシベーション膜
213A:開口
22:パッド
23:表面保護膜
31:電極
31A:第1電極
31B:第2電極
31C:主部
31D:副部
311:対向面
312:側面
313:凸部
32:接合層
32A:第1領域
32B:第2領域
321:第1部
322:第2部
40:封止樹脂
41:頂面
42:底面
431:第1側面
432:第2側面
B:寸法
b,b1,b2:寸法
d1:第1距離
d2:第2距離
z:厚さ方向
x:第1方向
y:第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22