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特許7594881半導体発光装置及び半導体発光モジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体発光装置及び半導体発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20241128BHJP
【FI】
H01L33/60
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020177496
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068684
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】河野 圭真
(72)【発明者】
【氏名】市川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】神原 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175531(JP,A)
【文献】特開2010-219324(JP,A)
【文献】特開2015-008274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0144462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板及び前記支持基板上に設けられた発光半導体層を有する半導体発光素子と、素子接着層によって前記半導体発光素子に接着された導光部材とを有する発光素子アセンブリと、
前記発光素子アセンブリの側面に側壁接着層によって接着され、前記側面を被覆する光反射体である無機材料からなる第1の被膜と、 を有し、
前記第1の被膜は誘電体多層膜である、
導体発光装置。
【請求項2】
前記側壁接着層が透光性樹脂である、請求項に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1の被膜の外側に接して遮光性の無機材料からなる第2の被膜を有する、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、前記支持基板上に貼り付けられたシンフィルム発光半導体層である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記導光部材は、上面視において、前記導光部材の底面が前記半導体発光素子の発光層を包含する大きさ及び配置を有して形成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記支持基板は、上面から底面に向かって面積が小さくなるように傾斜したテーパ状の側面を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記導光部材及び前記支持基板は、前記半導体層に垂直な中心軸に整列して配置され、前記支持基板は前記導光部材よりも小なる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子は成長基板を有し、前記成長基板は接着層によって前記導光部材に接着されている、請求項1乃至及び乃至のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至に記載の半導体発光装置の複数個が間隙をおいて並置して配置された半導体発光モジュールであって、
前記半導体発光装置間の前記間隙が空間である半導体発光モジュール。
【請求項10】
支持基板及び前記支持基板上に設けられた発光半導体層を有する半導体発光素子と、素子接着層によって前記半導体発光素子に接着された導光部材とを有する発光素子アセンブリと、
前記発光素子アセンブリの側面に側壁接着層によって接着されて担持され、前記側面を被覆する光反射体である無機材料からなる第1の被膜と、
を有する半導体発光装置。
【請求項11】
支持基板及び前記支持基板上に設けられた発光半導体層を有する半導体発光素子と、素子接着層によって前記半導体発光素子に接着された導光部材とを有する発光素子アセンブリと、
前記発光素子アセンブリの側面に透光性樹脂である側壁接着層によって接着され、前記側面を被覆する光反射体である無機材料からなる第1の被膜と、
を有する半導体発光装置。
【請求項12】
支持基板及び前記支持基板上に設けられた発光半導体層を有する半導体発光素子と、素子接着層によって前記半導体発光素子に接着された導光部材とを有する発光素子アセンブリと、
前記発光素子アセンブリの側面に側壁接着層によって接着され、前記側面を被覆する光反射体である無機材料からなる第1の被膜と、有し、
前記第1の被膜は、複数の被覆プレートからなり、前記複数の被覆プレートの各々は、前記発光素子アセンブリの側面にそれぞれ個別に接着されている、半導体発光装置。
【請求項13】
前記側壁接着層が透光性樹脂である請求項12に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記被覆プレートは誘電体多層膜プレートである請求項12又は13に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
前記被覆プレートはセラミックプレートである請求項12又は13に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置及び半導体発光モジュール、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を有する半導体発光装置及び半導体発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力化や配光制御のため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を複数デバイス内に配置して用いることが行われている。
【0003】
例えば、自動車用ヘッドライトにおいて、走行環境に合わせて配光を制御する配光可変型のヘッドランプ(ADB: Adaptive Driving Beam)が知られている。また、高出力の照明用LEDパッケージや、LEDを高密度に配置した情報通信機器用のLEDパッケージなどが知られている。
【0004】
しかし、一般に、複数の半導体発光素子が並置された半導体発光装置において、導通されている素子から放出された光の一部が非導通状態の素子に伝播することがあった。このような漏れ光や光のクロストークは、複数の半導体発光素子を配置して用いる様々な応用分野において問題であった。
【0005】
例えば、特許文献1には、基板及び発光素子の側面に光学反射層を設けることが開示されている。また、特許文献2には、半導体積層体の側面を覆う反射部材を有し、半導体積層体の側面上端から側方への光漏れを抑制する発光素子について開示されている。
【0006】
特許文献3には、発光セグメント間のクロストークを抑制する光反射溝を有する半導体発光装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-225862号公報
【文献】特開2015-119063号公報
【文献】特開2015-156431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、外部への光漏れ光及び外光の入射が極めて抑制され、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することを目的とする。また、隣接する発光装置との間の光のクロストークが極めて抑制され、コントラストが高く、遮光性、気密性、固定性及び信頼性に優れた半導体発光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
支持基板及び前記支持基板上に設けられた発光半導体層を有する半導体発光素子と、素子接着層によって前記半導体発光素子に接着された導光部材とを有する発光素子アセンブリと、
前記発光素子アセンブリの側面に側壁接着層によって接着され、前記側面を被覆する光反射体である無機材料からなる第1の被膜と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
図1B図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図1C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図1D】導光部材13及び内側被膜14の接着部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
図2】半導体発光素子であるLED素子11の構成の一例を模式的かつ詳細に示す断面図である。
図3A】内側被膜14がアルミナ板である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図3B】内側被膜14がアルミナ板である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図3C】内側被膜14がアルミナ板である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図4A】内側被膜14が誘電体多層膜である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図4B】内側被膜14が誘電体多層膜である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図4C】内側被膜14が誘電体多層膜である場合の半導体発光装置10の製法について説明する図である。
図5A】半導体発光装置が5×3の配列で配置された半導体発光モジュール37を示す上面図である。
図5B図5Aの線A-Aに沿った断面を示し、本実施形態の半導体発光装置10の適用例を模式的に示す断面図である。
図5C】比較例1及び2の半導体発光モジュール38の断面を模式的に示す断面図である。
図5D】本実施形態の半導体発光装置10を用いた半導体発光モジュール37と、比較例1及び2の半導体発光装置90を用いた半導体発光モジュール38との発光表示パターンの相違を模式的に示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。
図7A】本発明の第3の実施形態による半導体発光装置60の断面を模式的に示す断面図である。
図7B】半導体発光装置60を上面から見た場合を模式的に示す上面図である。
図8】本発明の第4の実施形態による半導体発光装置70の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。図1Bは、図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
【0013】
半導体発光装置10は、半導体発光素子11と、半導体発光素子11上に接着剤からなる素子接着層12によって接着された導光部材13とを有している。また、半導体発光装置10は、半導体発光素子11及び導光部材13の側面を覆う内側被膜14及び外側被膜15を有している。
【0014】
図1A図1Cに示すように、半導体発光素子11は、支持基板31上に設けられた発光半導体層20を有する。なお、以下において半導体発光素子11として発光ダイオード(LED)を例に説明するが、面発光LD(レーザダイオード)などの面発光素子であってもよい。
【0015】
本実施形態において、発光ダイオード(LED)である半導体発光素子(以下、LED素子と称する。)11の支持基板31及び導光部材13は直方体形状を有している。LED素子11、素子接着層12(以下、単に接着層12ともいう。)及び導光部材13の側面は、内側被膜14(第1の被膜)及び内側被膜14の外側に密着して形成された外側被膜15(第2の被膜)によって共通して覆われている。
【0016】
より詳細には、内側被膜14(第1の被膜)は、側壁接着層16(以下、単に接着層16ともいう)によってLED素子11、素子接着層12及び導光部材13に接着されている。LED素子11、素子接着層12及び導光部材13は側壁接着層16によって封止されていることが好ましい。
【0017】
導光部材13は、LED半導体層20の垂直方向から見たとき(以下、上面視ともいう)、導光部材13がLED半導体層20を包含する大きさ及び配置を有している。
【0018】
図1Dは、図1BにWとして示す部分、すなわち側壁接着層16による導光部材13及び内側被膜14の接着部Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0019】
より詳細には、導光部材13及び/又はLED素子11はダイシングなどによって切断され、側面が微細な凹凸を有している。図1Dに示すように、側壁接着層16は、導光部材13の側面13Fの凹凸と、内側被膜14との間を埋めるように形成されている。
【0020】
また、内側被膜14は導光部材13の側面13Fの頂部に沿って接着される。従って、側壁接着層16中を導光して光出射面13E側の上端部から光漏れすることが大きく抑制される。また、側壁接着層16が内側被膜14及び導光部材13間の凹凸を充填し、内側被膜14が導光部材13に強固に固着される。なお、支持基板31と内側被膜14との接着面も同様であり、光漏れが大きく抑制されるとともに強固に固着される。
【0021】
本実施形態において、内側被膜(第1の被膜)14及び外側被膜(第2の被膜)15としてそれぞれアルミナプレート及びアルミ/チタンタングステン(Al/TiW)が用いられている。
【0022】
あるいは、内側被膜(第1の被膜)14及び外側被膜(第2の被膜)15としてそれぞれ誘電体多層膜及びアルミニウム(Al)が用いられている。
【0023】
側壁接着層16は、内側被膜14がセラミックの場合には、透光性樹脂または白色樹脂を使用することができる。また、内側被膜14が誘電体多層膜の場合には、透光性樹脂を使用することができる。
【0024】
内側被膜(第1の被膜)14は、光反射性、絶縁性及び気密性を有し、外側被膜15(第2の被膜)は光反射性又は光吸収性による遮光性を有する。すなわち、内側被膜14と外側被膜15の積層構造によって被膜内側からの光に対して高い反射率を有し、被膜外側からの光に対して高い遮光性を両立させている。
【0025】
内側被膜14には、光反射性の白アルミナ・セラミック結着体が用いられている。セラミック結着体は被膜を構成する粒子が相互に結着した緻密な白色被膜であり、数十μm程度の厚みで、十分な光反射性を有する。このような内側被膜14は、導光部材13から内側被膜14に向かう光を効率よく反射する。
【0026】
なお、内側被膜14及び外側被膜15は、LED素子11、素子接着層12(以下、単に接着層12ともいう。)及び導光部材13が一体となった発光素子アセンブリ11Aの全側面を覆うことが好ましい。また、接着層12は、半導体発光素子11及び導光部材13の間に充填されていることが好ましい。
【0027】
内側被膜14には、白色のアルミナ、ジルコニア、マグネシア、酸化チタンなどの光反射性セラミック結着体、又は、白色アルミナ・ジルコニアなどの光反射性複合セラミック結着体を用いることができる。また、セラミック結着体と同様な反射率を有する白色のアルミナ、ジルコニア、マグネシアなどの光反射性セラミック粒子、又は白色の光反射性セラミック粒子の混合粒子を骨材とする金属ケイ酸塩系の無機接着剤からなるケイ酸塩系結着体を用いることもできる。ケイ酸塩系結着体は、無機接着剤を塗布後100℃前後の加熱によりシロキサン結合(Si-O-Si)が生成することで形成される。このケイ酸塩系結着体は、1000℃前後の耐熱性と優れた耐候性を有する。
【0028】
また、白アルミナは、半導体や液晶の製造装置用として用いられるアルミナ系ファインセラミックスで、白色又はアイボリーの色調を有する。また白アルミナ・ジルコニアなどの光反射性複合セラミック結着体は、屈折率が異なるアルミナ粒子とジルコニア粒子の境界面における反射特性が向上するので、単体のセラミック結着体より高い反射率を有する。また、成分比を調整することで発光素子アセンブリ11Aの線熱膨張係数に合わせ込むこともでき、内側被膜14のクラック等の発生を抑制できる。
【0029】
外側被膜15には、光反射性又は遮光性の金属膜を用いることができる。例えば、内側被膜14上に蒸着、スパッタ等により形成された金属膜を用いることができる。
【0030】
あるいは、金属膜及びセラミックプレートなどの外側被膜15上に、蒸着、スパッタ等により誘電体多層膜を形成して内側被膜14とすることができる。
【0031】
また、外側被膜15には、黒色のアルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化チタンなどの光吸収性セラミック結着体を用いることができる。又は、サーメットなどの耐食性金属被膜、アルミ合金又はステンレス鋼(SUS)などの反射性金属であり表面に含有金属の酸化膜からなる不動態膜を有する金属皮膜を用いることができる。また、セラミック結着体と同様な黒色のアルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化チタンなどの光吸収性セラミック粒子、又は光吸収性セラミック粒子の混合物を骨材とするケイ酸塩系結着体を用いることもできる。
【0032】
より詳細には、黒アルミナとしては、例えば、黒い色調を有するブラックアルミナ(AR(B))(アスザック株式会社製)があり、ファインセラミックスの特長である強度、耐久性を維持しつつ、表面反射を抑えることができる。(反射率は波長240~2600nmで5.1~15.3%)。
【0033】
また、アルミナ以外の黒セラミックとして、日本タングステンNPZ-96(黒ジルコニア)、NPA-2(黒アルミナ+炭化チタン)、NPN-3(黒窒化ケイ素)などがある。
【0034】
なお、外側被膜15による遮光及び耐腐食性を必要としない用途においては、外側被膜15を省略することもできる。
【0035】
導光部材13は、半導体発光装置10の上面側の封止材としても機能する。LED素子11からの発光は導光部材13の底面13Bから導光部材13に入射し、導光部材13の表面(光出射面13E)から半導体発光装置10の発光LEが出射される。
【0036】
導光部材13には、透光性のガラス板、サファイア板、樹脂板、又は波長変換部材を含有するアルミナ+YAG:Ce等からなるセラミック蛍光体板、ガラス+α又はβサイアロン等からなるガラス蛍光体板、シリコーン樹脂+シリケイト:Ce等からなる樹脂蛍光体板、YAG+Ce等からなる単結晶又は多結晶の単一結晶蛍光体板を用いることができる。
【0037】
素子接着層12は、LED素子11が放射した光を透光する樹脂、低融点ガラス、ナノ金属酸化物焼結体等を利用することができる。また、多孔質のナノ金属酸化物焼結体に樹脂又は低融点ガラスを含浸した複合体等を利用することもできる。また、接着層12内に拡散剤、光変換部材を添加することもできる。
【0038】
半導体発光装置10の裏面にはアノード電極34A及びカソード電極34Bが設けられ、半導体発光装置10の外部電極として機能する。
(1)LED素子11の構成
図2は、半導体発光素子であるLED素子11の構成の一例を模式的かつ詳細に示す断面図である。LED素子11は、発光半導体層20として、いわゆるシンフィルムLED(thin-film LED)であるLED半導体層20を支持基板31に貼り付けた構成を有している。
【0039】
より具体的には、LED半導体層(発光半導体層)20は、成長基板上にエピタキシャル成長したLED構造を有する半導体層(シンフィルムLED)を成長基板から取り外し、支持基板31に貼り付けた構成を有している。本実施形態では、成長最表面層であるp型半導体層を下面として支持基板31に貼り付け、n型半導体層を表面層としている。
【0040】
支持基板31は、P(リン)又はAs(ヒ素)などをドープしたSi(シリコン)からなるn型基板である。
【0041】
LED半導体層20は、n型半導体層21、発光層22及びp型半導体層23を有している。n型半導体層21及びp型半導体層23は、それぞれ少なくとも1つの半導体層からなり、障壁層、電流拡散層、コンタクト層など種々の半導体層を有していてもよい。
【0042】
LED半導体層20は、例えばGaN系の半導体層からなる青色発光のLED半導体層であるが、これに限定されない。発光層22は、例えば単一量子井戸(SQW)又は多重量子井戸(MQW)構造を有している。
【0043】
LED半導体層20には、p-電極25A及びn-電極25Bを有する。p-電極25Aは導電性のp側接合層26によってp側基板電極32Aに接合され、n-電極25Bは導電性のn側接合層27によってn側基板電極32Bに接合されている。
【0044】
p-電極25Aは、ITO(インジウムスズ酸化物)、Ni(ニッケル)、Pt(白金)及びAg(銀)反射膜がp型半導体層23上にこの順で形成されたITO/Ni/Pt/Ag層からなる。n-電極25Bは、Ti(チタン)又はNi(ニッケル)、Pt(白金)及びAu(金)がn型半導体層21上にこの順で形成された(Ti又はNi)/Pt/Au層からなる。
【0045】
なお、p-電極25A及びn-電極25Bの材料及び構造は上記に限定されない。光反射による取り出し効率向上、オーミック特性、素子信頼性(寿命)などの特性を考慮して適宜選択し得る。
【0046】
LED半導体層20の側面には、SiO2からなる素子保護膜28Aが設けられている。また、支持基板31の表面(LED半導体層20との接合側)には、SiO2からなる基板保護膜28Bが設けられている。
【0047】
p側基板電極32Aは導通ビア33に接続され、導通ビア33を介して半導体発光装置10の裏面のアノード電極34Aに電気的に接続されている。p側基板電極32A、導通ビア33及びアノード電極34Aは、SiO2からなる基板絶縁膜35によって支持基板31と絶縁されている。
【0048】
n側基板電極32Bは、Si基板である支持基板31を介して半導体発光装置10の裏面のカソード電極34Bに電気的に接続されている。
(2)半導体発光装置10の製法
図3Aないし図3Cを参照して、半導体発光装置10の製法について以下に説明する。まず、図3Aに示すように、LED素子11及び導光部材13を用意する。
【0049】
LED素子11の上面(出光面)に透光性のシリコーン樹脂からなる接着剤をポッティングする。続いて、LED素子11上に導光部材13を載置して、押圧する(自重押圧を含む)。LED素子11の上端外周と、導光部材13の下端外周の間を満たすまで静置する。
【0050】
オーブンで180℃、30分の加熱処理を行って接着剤を硬化し、接着層12を形成する。これによりLED素子11、接着層12及び導光部材13が一体となった発光素子アセンブリ(以下、LEDアセンブリともいう。)11Aが形成される。
【0051】
次に、図3Bに示すように、内側被膜14となる厚さ100μmのアルミナ板に外側被膜15となるアルミニウム/チタン・タングステン(Al/TiW)を蒸着する(左側の図)。次にアルミナ面をラッピングしてアルミナ板の厚みを50μmとする。
【0052】
続いて、LEDアセンブリ11Aの側壁サイズに合わせてダイシングして被膜プレート17(セラミックプレート)を形成する(右側の図)。なお、LEDアセンブリ11Aが直方体形状を有する場合など、サイズの異なる側壁に合わせて複数の大きさの被膜プレート17をダイシングして形成することができる。
【0053】
次に、図3Cに示すように、LEDアセンブリ11Aを、それぞれ導光部材13の上面及びLED素子11の底面と略同じ形状及び大きさを有する上チャックCU及び下チャックCLの間にセットする。これにより、LEDアセンブリ11Aを固定すると同時にLEDアセンブリ11Aの上面と底面をマスキングすることができる。
【0054】
続いて、LEDアセンブリ11Aの被膜接着面(側壁)の接着剤としてシリコーン樹脂を噴霧器(スプレー)SPで噴霧する。裁断された被膜プレート17(アルミナ+Al/TiW)を被膜用チャックCPで吸着し、接着剤を散布した被膜接着面に貼り付ける。この時、瞬時加熱(プレヒート)して仮接着する。
【0055】
次に、LEDアセンブリ11Aを180°回転して、先ほど被膜プレート17を貼り付けた面の反対面(対向面)に被膜プレート17を仮接着する。同じ要領で、残り2面に被膜プレート17を接着する。最後に、180℃、5分加熱して、LEDアセンブリ11Aの4側面に被膜プレート17を形成した。
【0056】
図4Aないし図4Cは、被膜プレート17の内側被膜14が誘電体多層膜である場合の半導体発光装置10の製法を示す図である。
【0057】
図4Aは、図3Aに示した場合と同様に形成されたLEDアセンブリ11Aを示す図である。図4Bに示すように、透明な樹脂フィルムFMにアルミニウム(Al)14を蒸着し、その上にTiO/SiOを多重積層して可視光を反射する誘電体多層膜15を形成する(左側の図)。
【0058】
続いて、LEDアセンブリ11Aの側壁サイズに合わせてダイシングして被膜プレート17(誘電体多層膜プレート)を形成する(右側の図)。このとき、誘電体多層膜15とAl14を切断し、フィルムFMを全切断しないように裁断する。
【0059】
次に、図3Cについて説明したように、LEDアセンブリ11Aを上チャックCU及び下チャックCLの間にセットする。これにより、LEDアセンブリ11Aを固定すると同時にLEDアセンブリ11Aの上面と底面をマスキングする。
【0060】
続いて、LEDアセンブリ11Aの被膜接着面(側壁)にシリコーン樹脂を噴霧器SPで噴霧する。誘電体多層膜プレート17をLEDアセンブリ11Aの被膜接着面に押圧して接着する。それと同時に、レーザを照射して樹脂フィルムFMから誘電体多層膜プレート17を剥離させる。
【0061】
次に、LEDアセンブリ11Aを180°回転して、先ほど被膜プレート17を貼り付けた面の反対面(対向面)に被膜を仮接着する。同じ要領で、残り2面に誘電体多層膜プレート17を接着する。最後に、180℃、5分加熱して、LEDアセンブリ11Aの4側面に誘電体多層膜プレート(被膜プレート)17を形成した。
【0062】
図5Aないし図5Dは、本実施形態(Ex.1)の半導体発光装置10と、比較例1及び2(Comp.1及びComp.2)の半導体発光装置との相違を説明するための模式的な図である。
【0063】
図5Aは、半導体発光装置が5×3の配列で配置された半導体発光モジュール37を示す上面図である。半導体発光モジュール37は、ベース37Aと、ベース37A上に設けられたフレーム(枠体)37Bと、フレーム37B内の凹部37Cとを有し、凹部37C内に半導体発光装置が領域37D内に狭い間隔で隣接して配列されている。なお、ベース37Aには半導体発光装置の各々に電流を供給するための電極が設けられているが、図示が省略されている。また、図5B及び図5Cでは、フレーム37Bより外周のベース37Aは図示が省略されている。
【0064】
図5Bは、図5Aの線A-Aに沿った断面を示し、本実施形態(Ex.1)の半導体発光装置10の適用例を示す。半導体発光モジュール37の凹部37C内には本実施形態の半導体発光装置10が配置され、配線基板(図示しない)上にマウントされているが、半導体発光装置10間を遮光する樹脂などは設けられていない。すなわち、半導体発光装置10間に樹脂などの遮光体は不要で、半導体発光装置10の各々は空隙で隔てられて実装されている。
【0065】
図5Cは、図5Aに示す半導体発光モジュール37と同様な発光モジュールであるが、フレーム内に比較例1及び2(Comp.1及びComp.2)の半導体発光装置90が配置された、比較例である半導体発光モジュール38を示している。
【0066】
比較例の半導体発光装置90は、側面に内側被膜14及び外側被膜15が設けられていない半導体発光装置であり、LED素子11及び導光部材13の側面は露出している。そして、各半導体発光装置間の遮光材として凹部37C内に樹脂が充填されている。当該遮光樹脂は、半導体発光装置90の上面に達するように充填されていることが好ましい。
【0067】
より詳細には、比較例1(Comp.1)においては、遮光材として凹部37C内に光反射性の樹脂91が充填されている。具体的には、シリコーン樹脂にTiO2粒子を含有させた白樹脂91が充填されている。
【0068】
比較例2(Comp.2)では、遮光材として凹部37C内に光吸収性の樹脂(グレー樹脂)92が充填されている。具体的には、シリコーン樹脂にTiO2粒子及びカーボンブラックを含有させたグレー樹脂92が充填されている。
【0069】
図5Dは、本実施形態(Ex.1)の半導体発光装置10を用いた半導体発光モジュール37と、比較例1及び2(Comp.1及びComp.2)の半導体発光装置90を用いた半導体発光モジュール38との発光表示パターンの相違を模式的に説明する図である
なお、図5Dには、5×3に配列された15個のうち、S字上に11個の半導体発光装置を点灯した場合の各半導体発光装置90の輝度(明暗)の状態が模式的に説明されている。輝度(明暗)の状態を分かり易く示すため、輝度が明るいほど黒く示している。
【0070】
比較例1(Comp.1)のように、遮光材91が白樹脂の場合、導光部材(蛍光体板)の外周部の光漏れによって表示が滲む。また、半導体発光装置90間のクロストークも発生する。
【0071】
比較例2(Comp.2)のように、遮光材92がグレー樹脂の場合、遮光材92による光吸収が大きく、導光部材(蛍光体板)の外周部の輝度低下が大きい。
【0072】
一方、本実施形態(Ex.1)の半導体発光装置10においては、装置側方への及び上端部からの光漏れがなく、高いコントラストの発光パターン(表示パターン)が可能となる。また、個別に点灯した場合でも、クロストークが無く半導体発光装置間の隣接距離を小さくできるので、高密度の実装が可能となる。
【0073】
なお、上記した半導体発光モジュール37において、間隙をおいて並置された複数の半導体発光装置10間を遮光する樹脂などは設けられていない場合(すなわち、間隙が空間である場合)について説明したが、複数の半導体発光装置10間に遮光性の樹脂を設けても良い。この場合、さらに高コントラストでクロストークの無い発光パターン(表示パターン)が可能な半導体発光モジュールが得られる。
【0074】
第1の実施形態の半導体発光装置によれば、発光装置の側面及び光出射面側の上端部から発光装置外への光漏れ、及び外光の入射が極めて抑制された高性能かつ高発光効率の半導体発光装置を提供することができる。また、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0075】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。半導体発光装置50の中心線(図1Aに示すA-A線)を含み、半導体発光装置50に垂直な面における断面を示している。
【0076】
半導体発光装置50において、導光部材13は直方体形状を有し、導光部材13の底面13BはLED半導体層20の外縁よりも大きい。また、LED素子11の支持基板31は逆角錐台形状、すなわち支持基板31の上面(導光部材13側の面)31Uが底面31Bよりも大きい角錐台形状を有している。従って、導光部材13の幅WEは支持基板31の底面31Bの幅WCBよりも大きい(WE>WCB)。
【0077】
導光部材13及び支持基板31は中心軸CXに関して整列して(すなわち、同軸に)配列され、中心軸CXは半導体発光装置50の中心軸を構成している。
【0078】
第1の実施形態の場合と同様に、導光部材13は、LED半導体層20の垂直方向から見たとき(上面視において)、導光部材13がLED半導体層20を包含する大きさ及び配置を有している。すなわち、LED半導体層20の幅はWLであり、WE>WLである。
【0079】
逆角錐台形状の支持基板31は、支持基板31の側面31Fが導光部材13の側面13Fとなす角θ(又は側面31Fが内側被膜14の内側表面14Fとなす角θ)であるように構成されている。すなわち、支持基板31は角度θで傾斜したテーパ状の側面31Fを有している。
【0080】
このように、支持基板が、上面から底面に向かって面積が小さくなるように傾斜したテーパ状の側面を有する場合であっても、側壁接着層16によって補間されるので、支持基板31が露出することはなく、半導体発光装置50の短絡が防止される。
【0081】
本実施形態の半導体発光装置によれば、第1の実施形態の半導体発光装置と同様に、発光装置の側面及び光出射面側の上端部から発光装置外への光漏れ、及び外光の入射が極めて抑制された高性能かつ高発光効率の半導体発光装置を提供することができる。また、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0082】
[第3の実施形態]
図7Aは、本発明の第3の実施形態による半導体発光装置60の断面を模式的に示す断面図である。半導体発光装置60の中心線(図1Aに示すA-A線)を含み、半導体発光装置0に垂直な面における断面を示している。また、図7Bは、半導体発光装置60を上面から見た場合を模式的に示す上面図である。
【0083】
半導体発光装置60において、導光部材13及び支持基板31は直方体形状を有している。本実施形態において、導光部材13の幅WEは支持基板31の底面31Bの幅WCBよりも小さい(WE<WCB)。
【0084】
なお、導光部材13は、LED半導体層20の垂直方向から見たとき(上面視において)、導光部材13がLED半導体層20を包含する大きさ及び配置を有している。すなわち、LED半導体層20の幅はWLであり、WE>WLである。
【0085】
支持基板31の大きさよりも導光部材13の大きさ小さくすることができる。図7Bは、導光部材13が支持基板31に対して上面視において傾いて接着されている場合を模式的に示しているが、導光部材13の接着ずれがあった場合でも被膜プレート17を確実に接着することができる。
【0086】
本実施形態の半導体発光装置によれば、上記した実施形態の半導体発光装置と同様に、発光装置の側面及び上端部から発光装置外への光漏れ、及び外光の入射が極めて抑制された高性能かつ高発光効率の半導体発光装置を提供することができる。また、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0087】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態による半導体発光装置70の構成を模式的に示す断面図である。図1Bに示した半導体発光装置10とは、LED素子11に代えてLED素子1が用いられている点で相違している。
【0088】
より詳細には、上記した実施形態のLED素子11は、シンフィルムLEDであるLED半導体層20を用いているが、本実施形態のLED素子71は、透光性の成長基板31A上にエピタキシャル成長したLED半導体層20を有し、LED半導体層20の表面側を支持基板31に貼り付けた構成を有している。LED素子71において、成長基板31A及びLED半導体層20からなるLEDチップが素子接着層12Aによって支持基板31に接着されている。
【0089】
具体的には、半導体発光装置70は、LED素子71と、LED素子71の成長基板31A上に接着剤からなる素子接着層12によって接着された導光部材13とを有している。また、半導体発光装置70は、LED素子71及び導光部材13の側面を覆うように側壁接着層16によって接着された被膜プレート17を有している。
【0090】
本実施形態において、LED素子71の成長基板31Aの側面も、側壁接着層16によって接着された被膜プレート17によって被覆され、遮光されている。
【0091】
本実施形態によれば、上記した実施形態の半導体発光装置と同様に、発光装置の側面及び上端部から発光装置外への光漏れが極めて抑制され、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。また、成長基板を取り除く必要が無く、簡便でコストに優れた半導体発光装置を提供することができる。
【0092】
なお、上記した実施形態においては、半導体発光素子基板及び導光部材などが直方体形状又は角錐台形状を有している場合を例に説明したが、これに限らない。回路基板上に隣接して配置する場合など、配置形態に応じて多角柱形状、円柱形状、多角錐台形状、円錐台形状など適宜改変して適用することができる。
【0093】
また、被膜プレート17が、第1の被膜(内側被膜)及び第2の被膜(外側被膜)15からなる場合について説明したが、上記したように被膜プレート17が第1の被膜のみからなっていてもよい。
【0094】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、発光装置の側面及び光出射面側の上端部から発光装置外への光漏れ及び外光の入射が極めて抑制され、気密性に優れた信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0095】
また、隣接する発光装置への光漏れ、及び隣接する発光装置からの光のクロストークが極めて抑制され、コントラストが高く、遮光性、気密性、固定安定性及び信頼性に優れた半導体発光モジュールを提供することができる。また、外光の入射による2次発光を防ぐことができ、駆動していない半導体発光装置を確実に消灯状態とすることができ、高密度配置及びローカルディミングライティングにも適した半導体発光モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
10,50,60,70:半導体発光装置、11,71:半導体発光素子、11A:発光素子アセンブリ、12:素子接着層、13:導光部材、13E:光出射面、13F:導光部材13の側面、14:第1の被膜、15:第2の被膜、16:側壁接着層、20:発光半導体層、21:n型半導体層、22:発光層、23:p型半導体層、25A:p-電極、25B:n-電極、26,27:接合層、31:支持基板、31B:支持基板の底面、31F:支持基板の側面、33:導通ビア、34A:アノード電極、34B:カソード電極、CX:半導体発光装置の中心軸、WB:導光部材の底面の幅、WCB:支持基板の底面の幅、WL:発光半導体層の幅
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8