(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】建具用電動開閉機構
(51)【国際特許分類】
E05F 15/622 20150101AFI20241128BHJP
E05D 15/30 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E05F15/622
E05D15/30
(21)【出願番号】P 2020185246
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕樹
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-143624(JP,U)
【文献】特開2016-069879(JP,A)
【文献】実開平02-030492(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0424970(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
E05D 15/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体内に配置される障子を有する建具に設けられ、前記障子を開閉する建具用電動開閉機構であって、
前記枠体に沿って配置されるねじ軸体及び前記ねじ軸体に螺合し、前記ねじ軸体に沿って移動可能なナット体を有するすべりねじ機構と、
前記すべりねじ機構及び前記障子に接続されて前記障子を開閉するアーム部と、
前記すべりねじ機構を駆動する駆動部と、を備え
、
前記ナット体は、前記ねじ軸体との間に前記ねじ軸体の回転による摩擦抵抗を低減する潤滑油を収容するとともに、前記ねじ軸体の中心に対して偏心する偏心孔を有するグリース収容部を有する、建具用電動開閉機構。
【請求項2】
前記アーム部は、前記すべりねじ機構に連結される連結部と、
前記連結部に連結され、前記すべりねじ機構の移動に伴って前記障子を移動させる操作アームと、を有し、
前記すべりねじ機構は、前記連結部と並列して配置される、請求項1に記載の建具用電動開閉機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建具用電動開閉機構と、
前記枠体と、
前記枠体内に配置される前記障子と、を備え、
前記枠体は、前記すべりねじ機構が配置される開閉機構格納部と、前記開閉機構格納部を覆うカバー部と、を有する、電動建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具用電動開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具の枠体に電気で駆動されるボールねじを設け、ボールねじと障子を開閉するアーム部とを接続して障子を開閉する開閉機構を備えた電動建具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動建具は、停電時や電源の非接続時には、開閉機構を制御するサーボ制御が一般的には行われない構造を取ることが多い。開閉機構をボールねじや、不思議遊星歯車や進み角が小さいウォームギアといったセルフロック特性を持った歯車を除く噛み合い式の歯車、磁気式歯車等、機械要素部品を組み合わせて構成した場合、サーボ制御が行われない間に機械要素部品が位置ずれを起こす場合がある。電源の非接続時に手動で開閉機構に力を加えた場合、開閉機構が意図しない動きをし、通電時に機械要素部品の位置情報の認識に誤りが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、枠体と、前記枠体内に配置される障子を有する建具に設けられ、前記障子を開閉する建具用電動開閉機構であって、前記枠体に沿って配置されるねじ軸体及び前記ねじ軸体に螺合し、前記ねじ軸体に沿って移動可能なナット体を有するすべりねじ機構と、前記すべりねじ機構及び前記障子に接続されて前記障子を開閉するアーム部と、前記すべりねじ機構を駆動する駆動部と、を備える、建具用電動開閉機構に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態の電動建具の開いた状態を示す図である。
【
図2】本実施形態の電動建具の閉じた状態を示す図である。
【
図3A】本実施形態の下枠カバーを開閉機構格納部に取り付ける前の図である。
【
図3B】本実施形態の下枠カバーを開閉機構格納部に取り付けた図である。
【
図4A】本実施形態の建具用電動開閉機構の横断面図である。
【
図4C】本実施形態の建具用電動開閉機構の縦断面図である。
【
図6】本実施形態のグリースケージの分解斜視図である。
【
図7】本実施形態の内側ケージを内側から視た斜視図である。
【
図8】本実施形態の潤滑油が収容される状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。電動建具100は、例えば、
図1及び
図2に示すように、建物の開口部に設けられる横すべり出し窓である。電動建具100は、枠体10と、障子50と、建具用電動開閉機構1と、を有する。電動建具100は、枠体10内を障子50が開閉可能に取り付けられて構成される。
【0008】
枠体10は、上枠11、下枠12、一対の縦枠13、14接続された方形の枠である。枠体10の内側且つ室外側に、後述する障子50が取り付けられる。本実施形態では、下枠12に建具用電動開閉機構1が配置される。
【0009】
下枠12は、側面視で上部が開口した略コの字状に形成されている。下枠12は、開閉機構格納部120と、カバー部としての下枠カバー123と、を有する。
【0010】
開閉機構格納部120は、下枠12の室内側で、下枠12の上面に形成される凹部である。開閉機構格納部120は、
図3A~
図4Aに示すように、底面部121と、側壁部122とを有する。底面部121は、下枠12の略水平方向に延びる略長方形の面である。側壁部122は、室内側側壁部122aと、室外側側壁部122bと、連結孔122cと、を有する。室内側側壁部122aは、底面部121の室内側の側縁から起立し、底面部121の長手方向の一方及び他方に分かれていて長手方向の中央部側には存在しない。室外側側壁部122bは、底面部121の室外側の側縁から起立し、底面部121の長手方向の一方から他方まで連続して形成される。連結孔122cは、室外側側壁部122bに形成される貫通孔である。連結孔122cは、長手方向が下枠12の見付方向に沿う長方形の形状を有する。連結孔122cは、後述するすべりねじ機構2と後述するアーム部3とを連結するために形成されている。
【0011】
下枠カバー123は、開閉機構格納部120を覆う樹脂製のカバーである。
図3Aに示すように、下枠カバー123は、下枠12の延びる方向に沿って延びる長尺の部材であり、一対の縦枠13、14の間に配置される。下枠カバー123は、一対のカバー側壁部123aと、カバー上面部123bとを有する。カバー側壁部123aは、下枠12の側壁部122と連続した面を形成するように取り付けられる。
図3Bに示すように、下枠カバー123を開閉機構格納部120に取り付けた状態では、室内側のカバー側壁部123aは、下枠の室内側側壁部122aの間に配置されている。図示を省略するが、室外側において、室外側のカバー側壁部123aが、室外側側壁部122bの上端に接し、下枠カバー123の長手方向の一方から他方まで延びる。室外側のカバー側壁部123aも、室外側側壁部122bと連続した面を形成する。カバー上面部123bは、一対のカバー側壁部123aの上端を接続するとともに、開閉機構格納部120の上面を覆う。下枠カバー123は、開閉機構格納部120と着脱可能に形成される。
【0012】
障子50は、枠体10内に配置される。障子50は、上枠11を軸として回動可能に取り付けられ、
図1に示すように、一対の縦枠13、14及び下枠12側から室内外方向に開閉可能に取り付けられる。障子50は、枠体10の内部に配置される框51と、ガラス52とを有する。框51は、枠状に組まれ、上框51a、下框51b、一対の縦框51c、51dを有する。
図4Cに示すように、下框51bは、下枠12の下端部よりも下方に位置している。
【0013】
建具用電動開閉機構1は、電力で駆動され、障子50を開閉する機構である。建具用電動開閉機構1は、すべりねじ機構2と、アーム部3と、駆動部4と、制御部9と、を有する。
【0014】
すべりねじ機構2は、
図4A及び
図4Bに示すように、ねじ軸体21と、ガイドレール22と、ナット体23と、駆動部接続部24と、を有する。すべりねじ機構2は、回転運動を直線運動に変換する直動変換機構である。すべりねじ機構2は、後述するねじ軸体21のねじ溝210と、ナット体23のナット体ねじ溝230とが係合することにより、ナット体23が進退するように構成される。
【0015】
ねじ軸体21は、下枠12の底面部121に、下枠12の延びる方向に沿って配置される。ねじ軸体21は、外周にねじ溝210が形成された略円柱状の棒である。ねじ軸体21の長手方向の端部には、長手方向の中央側よりも径の小さな中心軸部213が形成されている。中心軸部213が、底面部121から上方に突出する第1軸受ブラケット211及び第2軸受ブラケット212により支持されることにより、ねじ軸体21は、底面部121から上方に浮いている。ねじ溝210のねじ山は、三角や台形等の形状に形成されている。ねじ軸体21は、例えばステンレス鋼、クロムモリブデン鋼等の金属で構成されている。
【0016】
ガイドレール22は、底面部121よりも幅が狭く、長さの短い長方形の板である。ガイドレール22は、底面部121の上でねじ軸体21の下に固定されている。ガイドレール22の長手方向の両端側には、第1軸受ブラケット211及び第2軸受ブラケット212が固定されている。ガイドレール22は、後述するナット体23が移動する際にナット体23を案内する。
【0017】
ナット体23は、ねじ軸体21に螺合し、ねじ軸体21に沿って移動可能に設けられる。本明細書において、障子50を閉じた状態のナット体23の位置を閉位置と言い、このときナット体23が位置している側を閉位置側と言う。
図2は、室内側から電動建具100を視た図である。
図2に示すように、閉位置では、ナット体23は枠体10の室内側から視て左側に位置し、後述する駆動部4から離れた位置にある。障子50を開いた状態のナット体23の位置を開位置と言い、このときナット体23が位置してる側を開位置側と言う。
図1は室外側から電動建具100を視た図である。
図1を参照しつつも、仮に開位置を室内側から視た場合には、ナット体23は右側に位置することとなり、駆動部4に隣接する。
図4A及び
図4Bに示すように、ナット体23は、ねじ軸係合体231と、ダンパ部232と、グリースケージ233と、ナット軸受けブラケット234と、ガイド235(
図4C参照)と、を有する。
【0018】
ねじ軸係合体231は、ねじ軸体21のねじ溝210に係合して移動する樹脂製の部品である。
図4Bに示すように、ねじ軸係合体231は、筒状部231aと、フランジ部231bと、を有する。筒状部231aは、中心にねじ軸体21が挿通する孔を有し、孔の内壁にはねじ軸体21のねじ溝210に係合可能なナット体ねじ溝230が形成されている。フランジ部231bは、筒状部231aの開位置側の開口から外側へ延びる。ねじ軸係合体231は、例えばPPS、ポリアセタール等の樹脂またはりん青銅等の金属で構成されている。
【0019】
ナット軸受けブラケット234は、ねじ軸係合体231及び後述するダンパ部232を支持する部品である。ナット軸受けブラケット234は底部234aと、起立壁234bとを有し、底部234a及び起立壁234bが側面視略L字状となるように接合されている。底部234aは、ガイドレール22の上に、後述するアーム部3の連結部31を介して取り付けられる。
【0020】
ガイド235は、
図4Cに示すように、ガイドレール22の幅方向の一方及び他方に、ガイドレール22を間に挟むように配置される。ガイド235の高さ寸法は、ガイドレール22の高さ寸法よりも小さい。ガイド235は、後述するアーム部3の連結部31を介してナット軸受けブラケット234に結合されている。ガイド235は、底面部121とは接触せず、浮いた状態である。ガイド235により、ナット軸受けブラケット234がガイドレール22に沿って進退するときに、ナット軸受けブラケット234がガイドレール22から外れないように支持される。
【0021】
ダンパ部232は、ねじ軸係合体231の外側を覆う部品であり、内部に潤滑油Gを収容してねじ軸体21の回転による摩擦を和らげる。ダンパ部232は、ダンパホルダ232aと、ケージ収容部232bと、を有する。
【0022】
ダンパホルダ232aは、
図5に示すように、本体部2321と、ホルダカバー2322と、ホルダ蓋2323と、皿ばね2324と、ゴム2325と、を有する。本体部2321は、ダンパ部232の外形を形成する略円筒形の部品である。ホルダカバー2322は、ダンパホルダ232aのねじ軸係合体231に接しない側、すなわち閉位置側の端部に接続される。ホルダカバー2322は、本体部2321と外径が同じ円筒形の部品である。ホルダ蓋2323は、皿ばね2324のばね力によってホルダカバー2322の閉位置側の端部を塞ぐように取り付けられる略円形のプレートである。ホルダ蓋2323は、中心に貫通孔が形成され、ねじ軸体21が挿通可能になっている。
【0023】
皿ばね2324は、ホルダ蓋2323の内側に配置される。皿ばね2324は、外周側から内周側に向かうにしたがって、ホルダ蓋2323側へ突出するように盛り上がっている。ゴム2325は、ホルダ蓋2323の外側に取り付けられ、ナット体23が第1軸受ブラケット211まで到達したときに、ホルダ蓋2323と第1軸受ブラケット211とが衝突することを緩和する。
【0024】
ケージ収容部232bは、本体部2321の内壁側に形成される。ケージ収容部232bは、
図4Bに示すように、本体部2321のねじ軸体21及びねじ軸係合体231が挿通する中空部よりも拡径した略円柱状の中空部である。ケージ収容部232bは、ダンパ部232の閉位置側に形成され、後述するグリースケージ233を収容する。
【0025】
グリースケージ233は、ダンパ部232のケージ収容部232b内に収容される。
図6に示すように、グリースケージ233は、筒状の部品が二重に重ねられて構成されている。グリースケージ233は、外側ケージ236と、内側ケージ237と、グリース収容部238と、を有する。グリースケージ233は、ダンパ部232のケージ収容部232b内で回転可能に収容されている。
【0026】
外側ケージ236は、
図6に示すように、円筒部236aと、蓋部236bと、蓋段差部236dと、内側ケージ収容部236eと、を有する。円筒部236aは、ダンパ部232のケージ収容部232b内に配置可能な外径を有し、ケージ収容部232b内に配置される。蓋部236bは、円筒部236aの開口を閉じる方向に延びる面である。蓋部236bの中心側に、ねじ軸体21が挿通する貫通孔236cが形成されている。蓋段差部236dは、蓋部236bの外周側が、内周側よりも外側へ突出することで形成される段差である。蓋段差部236dには、皿ばね2324が当接する。内側ケージ収容部236eは、円筒部236a及び蓋部236bの内側に形成され、内側ケージ237を収納可能な外側ケージ236の凹部である。
【0027】
図4Bに示すように、外側ケージ236と、ケージ収容部232bの間には、皿ばね2324が配置される隙間Sが形成されている。皿ばね2324の内周側の端部が、ダンパホルダ232aにおけるホルダ蓋2323の内側に接する。これにより、内側ケージ237が皿ばね2324のばね力の影響を受けることなく内側ケージ収容部236e内で容易に回転する。
【0028】
内側ケージ237は、
図6に示すように、外側ケージ236の内側に重ねて固定され、ナット体23及び外側ケージ236に対して回転可能に設けられている。内側ケージ237は、円筒部237aと、蓋部237bと、を有する。円筒部237aは、外側ケージ236の内側ケージ収容部236e内に収容可能な外径を有する筒状の部分である。
図7に示すように、円筒部237aの内側面に、後述するグリース収容部238が形成される。蓋部237bは、円筒部237aの閉位置側の開口を閉じる方向に延びる面であり、中心側にねじ軸体21が挿通する貫通孔237cが形成されている。
【0029】
グリース収容部238は、内側ケージ237の円筒部237aの内壁面により形成される。グリース収容部238は、ねじ軸体21の中心に対して偏心する偏心孔2380を有する。偏心孔2380は、内側ケージ237の貫通孔237cよりも内径が大きく、ねじ軸体21の挿通方向を遮らないので、ねじ軸体21が挿通可能である。偏心孔2380は、内側ケージ237の円筒部237aの内壁が部分的に厚く、及び部分的に薄く形成されることで形成される。グリースケージ233における外側ケージ236の貫通孔236c及び内側ケージ237の貫通孔237cを通ってねじ軸体21がダンパ部232を挿通する。
図4A、
図4B及び
図8に示すように、偏心孔2380の内側面とねじ軸体21との間に潤滑油Gが充填される。
【0030】
駆動部接続部24は、ねじ軸体21と後述する駆動部4のギアとを接続する円筒状の部品である。駆動部接続部24は、内側の中空部でねじ軸体21から突出する軸と後述する駆動部4の軸とを接続し、固定する。
【0031】
駆動部4は、モータであり、出力軸の周囲を回転する歯車を有する(図示省略)。駆動部4は、駆動部本体41と、減速機42とを有する。駆動部4は、すべりねじ機構2を駆動し、ねじ軸体21を回転させる。
【0032】
アーム部3は、すべりねじ機構2と障子50とを接続し障子を開閉する。アーム部3は、連結部31と、スライド板32と、操作アーム33と、を有する。
【0033】
連結部31は、板金部材を折り曲げた金具であり、ナット体接続面311と、スライド板接続面312と、段差部313と、を有する。ナット体接続面311と、スライド板接続面312と、段差部313とは、一体に連続して形成されている。
図1に示すように、連結部31は、すべりねじ機構2と並列して配置され、連結される。
【0034】
ナット体接続面311は、平坦な板面をナット体23の下側に配置してナット体23と接続される。より詳細には、
図4Cに示すように、ナット体接続面311は、ナット体23のナット軸受けブラケット234における底部234aの下面と、ガイドレール22及びガイド235の上面との間に配置され、ナット軸受けブラケット234、ナット体接続面311、及びガイド235が重ねて固定される。
【0035】
スライド板接続面312は、ナット体接続面311の室外側に延びる平坦な板面である。スライド板接続面312は、後述するスライド板32にねじにて固定される。
【0036】
段差部313は、ナット体接続面311とスライド板接続面312とを接続する部分である。ナット体接続面311及びスライド板接続面312は、ナット体接続面311がスライド板接続面312より上方に、スライド板接続面312がナット体接続面311より下方に位置しており、これらを上下方向に繋いでいる。段差部313は、室外側側壁部122bの連結孔122cを挿通して下方に延びる。
【0037】
スライド板32は、障子50が閉じられた状態で障子50の下框51bの下面に位置し、障子50が開かれるとともに縦枠13側へ移動する板材である。スライド板32には、連結部31が固定される。
図1に示すように、スライド板32は、連結部31及びすべりねじ機構2と並列して配置されている。
【0038】
操作アーム33は、すべりねじ機構2と障子50とを接続する部材である。操作アーム33は、薄く平坦な板材で形成され、障子50が閉じている間は、障子50の下框51bの下側で、スライド板32の下に収納されている。操作アーム33は、段階的に屈曲して室外側に向かって反るように略半月状に曲がっている。
図4Cに示すように、操作アーム33の他端には、上方に向かって突出する軸部331が設けられ、軸部331が障子50の下框51bの下面に形成された凹部511に係合することで接続されている。操作アーム33は、連結部31にスライド板32を介して連結されている。操作アーム33は、スライド板32がすべりねじ機構2の移動に伴って閉位置側から開位置側へ移動すると、移動した距離の分、操作アーム33がスライド板32と連動しながら、弧を描く軌道で室外側へ押し出されて突出するように移動する。
【0039】
制御部9は、上枠11や一対の縦枠13、14のいずれかの内部に配置される電子基板である。
図9に示すように、制御部9は、受信部91と、駆動部制御部92と、電源制御部93と、を有する。受信部91は、例えばリモートコントローラー等の操作機器94から送信された使用者からの指示を受信する。電源制御部93は、外部電源95からの電力の供給を受け、駆動部制御部92に電力を供給する。駆動部制御部92は、すべりねじ機構2を駆動し、障子50を開閉する。
【0040】
建具用電動開閉機構1の設置及び障子50の開閉操作について説明する。電動建具100の設置時には、枠体10を建物の開口部に取り付ける。下枠12の開閉機構格納部120は、上部が開口しており、内部が視認しやすい状態である。開閉機構格納部120に建具用電動開閉機構1のすべりねじ機構2、駆動部4を配置し、連結部31をすべりねじ機構2と並列してナット体23に連結する。その後、アーム部3及び障子50をそれぞれ接続した後、開閉機構格納部120を下枠カバー123で覆って取り付ける。
【0041】
図2に示すように、障子50が閉じた閉位置では、すべりねじ機構2のナット体23は、ガイドレール22上で駆動部4側の端部と反対側の端部に位置している。使用者が操作機器94を操作して、障子50を開くように支持する信号が電動建具100へ送信され、制御部9の受信部91が信号を受信すると、駆動部制御部92により駆動部4が駆動される。
【0042】
駆動部4によりすべりねじ機構2が駆動されると、ねじ軸体21が回転する。ナット体23のねじ軸係合体231は、ねじ軸体21に係合しているため、ねじ軸体21に沿って移動する。ナット体23は、ガイドレール22上を駆動部4側へ近づくように移動する。ねじ軸体21とねじ軸係合体231の係合によれば、通電していない間でも、ねじ軸係合体231の位置がずれることはない。
【0043】
ナット体23の移動に伴い、ナット体23のナット軸受けブラケット234に連結されているアーム部3の連結部31が移動する。連結部31は、下枠12の室外側側壁部122bに形成された連結孔122cを挿通して室外側に位置するスライド板32に接合されており、連結部31が移動することで、スライド板32も移動する。スライド板32には、室外側へ反るように屈曲した操作アーム33が接続されている。スライド板32が移動するに伴い、操作アーム33は、室外側へ突出するように回転する。これにより、障子50が開かれる。ナット体23がガイドレール22の駆動部4側の端部へ着くと、障子50が最大に開いた状態になる。
【0044】
次に、ナット体23の内部の動きについて説明する。すべりねじ機構2がまだ新しい間は、ナット体23のグリース収容部238に充填された潤滑油Gは十分な潤滑性があるため、ねじ軸体21の回転に不具合は生じにくい。しかし、すべりねじ機構2では、ねじ軸体21とねじ軸係合体231の摩擦によってねじ軸係合体231が進退するので、ねじ軸体21とねじ軸係合体231が擦り合う部分の摩耗により生じる摩耗粉が潤滑油G内に混ざることがある。摩耗粉は、ねじ軸体21の周囲、すなわちグリース収容部238の内周側に堆積する。摩耗粉は、グリースケージ233が固定されていた場合は、グリース収容部238の外周側まで潤滑油G内を移動しにくい。グリースケージ233が固定されていた場合、グリース収容部238の内周側で、摩耗粉が潤滑油Gに混ざり続けることで、グリース収容部238の内周側の潤滑油Gは経年劣化により硬化、潤滑性能劣化しやすい。グリース収容部238の外周側には、グリースに働く遠心力、せん断力等の影響により比較的摩耗粉の少ない柔らかい潤滑油Gが保持されている。
【0045】
本実施形態では、ナット体23のケージ収容部232b内に、グリースケージ233の内部に配置されている内側ケージ237が回転可能に保持されている。グリースケージ233の内側ケージ237に形成されたグリース収容部238は、偏心孔2380を有して形成されている。偏心孔2380の中央には、ねじ軸体21が挿通している。偏心孔2380におけるねじ軸体21の周囲で潤滑油Gが劣化して硬化、潤滑性能劣化すると、ねじ軸体21が回転しようとするときに、ねじ軸体21とグリース収容部238内の潤滑油Gの間の粘性抵抗が増大する。粘性抵抗が増大すると、
図8に示すように、ねじ軸体21が回転する際に、硬化した潤滑油Gに矢印方向のせん断力がグリース収容部238と、ねじ軸体21の間で発生する。使用により硬化した潤滑油Gによって生じるせん断力により、内側ケージ237が回転する。内側ケージ237が回転すると、硬化した潤滑油Gと比較的柔らかい潤滑油Gが混合される。
【0046】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。建具用電動開閉機構1を、枠体10と、枠体10内に配置される障子50を有する電動建具100に設けられ、障子50を開閉させた。建具用電動開閉機構1を、枠体10に沿って配置されるねじ軸体21及びねじ軸体21に螺合し、ねじ軸体21に沿って移動可能なナット体23を有するすべりねじ機構2と、すべりねじ機構2及び障子50に接続されて障子50を開閉するアーム部3と、すべりねじ機構2を駆動する駆動部4と、を含んで構成した。すべりねじ機構2は、ナット体23とねじ軸体21との係合の剛性が高く、意図しない方向に力が加わっても動きにくい。このため、通電していない間にナット体23がねじ軸体21に沿って移動して位置がずれることを防止することができ、剛性の高い開閉機構を実現することができる。
【0047】
本実施形態によれば、アーム部3を、すべりねじ機構2に連結される連結部31と、連結部31に連結され、すべりねじ機構2の移動に伴って障子50を移動させる操作アーム33と、を含んで構成した。すべりねじ機構2を、連結部31と並列して配置した。すべりねじ機構2と連結部31とを並列して配置することで、上側から視た場合に、すべりねじ機構2及び連結部31の位置が把握しやすい。このため、建具用電動開閉機構1の取付精度を高くすることができる。建具用電動開閉機構1を構成する部品が高い精度で正確に組み付けられることにより、すべりねじ機構2の直動運動及びこれに伴うアームの開閉の動作の可動動線以外に無駄な力が作用しにくくなる。その結果、部品同士の摩擦等で生じる騒音の低下、不要な電力の消耗を防止することによる低電力化、耐久性の向上等の効果を奏する。
【0048】
本実施形態によれば、電動建具100を、上記の建具用電動開閉機構1と、枠体10と、枠体10内に配置される障子50と、を含んで構成した。枠体10を、すべりねじ機構2が配置される開閉機構格納部120と、開閉機構格納部120を覆う下枠カバー123と、を含んで構成した。すべりねじ機構2の設置時には、下枠カバー123を外して設置し、設置後に開閉機構格納部120を下枠カバー123で覆うことができる。このため、さらに取付時の施工性が向上し、取付精度を向上させることができる。さらに仮に建具用電動開閉機構1が故障するようなことがあっても、診断がしやすく、メンテナンス性も向上させることができる。加えて、下枠カバー123で覆うようにすることで、建具用電動開閉機構1の機械的な外観を隠して電動建具100の意匠性を康応させることができる。
【0049】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。上記実施形態では、電動建具として横すべり出し窓を例に説明した。電動建具は、縦すべり出し窓、押し出し窓、戸、ルーバー、シャッター等であってよく、建具用電動開閉機構が設けられる建具であれば特に限定されない。
【0050】
上記実施形態では、開閉機構格納部120にすべりねじ機構2、駆動部4及び連結部31が配置されて組付けられ、下枠カバー123により開閉機構格納部120が覆われている。しかし、建具用電動開閉機構は、必ずしも建具に内蔵しなくてもよい。建具に建具用電動開閉機構を後付けで取り付けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 建具用電動開閉機構、 2 すべりねじ機構、 3 アーム部、 4 駆動部、 10 枠体、 21 ねじ軸体、 23 ナット体、 31 連結部、 33 操作アーム、 50障子、 100 電動建具、 120 開閉機構格納部、 123 下枠カバー(カバー部)