(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】センターベアリングの支持装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/24 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B60K17/24
(21)【出願番号】P 2020187837
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 伸一
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】羽原 康明
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/200160(WO,A1)
【文献】特開2008-132803(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029086(WO,A1)
【文献】実開昭56-039374(JP,U)
【文献】特許第4840103(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用プロペラシャフトのセンターベアリングを支持する支持装置であって、
前記センターベアリングを抱持するブラケットに設けられたフランジの厚さ方向両側にそれぞれ対向配置される第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材は、
筒部と、
前記筒部の外周面に形成され、第1筒部と、該第1筒部よりも前記第2部材側に配置され、外径が第1筒部よりも小さい第2筒部とを含む第1ゴム弾性部とを有し、
前記第2部材は、
環状部と、
前記環状部における前記第1部材側の面に形成され、内部に前記第1ゴム弾性部の前記第2筒部が前記第1部材の筒部とともに前記フランジを貫通した状態で嵌合された筒状の第2ゴム弾性部とを有し、
前記第1ゴム弾性部の前記第1筒部における前記第2部材側の面と前記第2ゴム弾性部における前記第1部材側の面との間に、前記フランジが挟持され、
前記第2ゴム弾性部の内径は、前記環状部側から前記第1部材側に行くに従って次第に減少し、
前記第2ゴム弾性部の内周部には、軸方向に延びる溝部が形成され
、
前記第1ゴム弾性部の前記第2筒部の外周面には、軸方向に延びる係合突起が周方向に間隔を空けて複数形成され、
前記溝部は、前記第2ゴム弾性部の内周部に周方向に間隔を空けて複数形成され、
前記第2ゴム弾性部の内周部における相隣り合う前記溝部の間が、それぞれ係合部を構成し、
前記複数の係合突起の少なくとも1つと、前記複数の係合部の少なくとも1つとが、互いに係合する、支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の支持装置において
、
前記複数の係合突起及び前記複数の係合部は、
前記第1部材に対する前記第2部材の筒軸まわりの回転角度にかかわらず、前記複数の係合突起のうち少なくとも1つと前記複数の係合部のうち少なくとも1つとが係合するように配置されている、支持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の支持装置において、
前記複数の係合突起の数が前記複数の溝部の数と異なっている、支持装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の支持装置において、
前記複数の係合突起は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成され、
前記複数の溝部は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されている、支持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の支持装置において、
各係合部の周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起同士の間隔よりも大きい、支持装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の支持装置において、
前記各係合突起の周方向幅は、前記各溝部の周方向幅よりも大きい、支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベアリングの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、パワーユニットの駆動力を後輪等に伝達するための、車両前後方向に延びるプロペラシャフトが、車体下部に設置されている。
【0003】
特許文献1には、このプロペラシャフトの支持装置が提案されている。特許文献1の支持装置は、プロペラシャフトの中間部に取り付けられるセンターベアリングと、該センターベアリングを抱持するブラケットと、該ブラケットに設けられ車体側に取付けられるフランジと、該フランジの厚さ方向両側に配置されるゴム製の上側弾性部材(第1部材)及び下側弾性部材(第2部材)と、該上側弾性部材、下側弾性部材及びフランジを、上下方向に挿通して車体側部材に固定する螺合締結手段とを備えている。そして、前記上側弾性部材が、上側に設けられるアッパ円筒部(第1筒部)と該アッパ円筒部より小径に形成され下側に設けられるアンダ円筒部(第2筒部)とを有し、前記下側弾性部材が、該アンダ円筒部を挿入可能な穴部(内周部)を備える円筒状の本体部(第2ゴム弾性部)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1部材及び第2部材は、車体に取り付ける前に仮組みして輸送する場合がある。この場合、その輸送中に第1部材及び第2部材が互いに脱落するのを抑制するため、第2部材の第2ゴム弾性部の内径を、第1部材側に行くに従って次第に減少させることが考えられる。この構成によれば、第2ゴム弾性部の穴部に第1部材の第1筒部を挿入することにより、両部材を互いにしっかり嵌合することができるため、両部材の脱落抑制を実現することができる。
【0006】
しかし、第2ゴム弾性部の内周部形状は、第2ゴム弾性部成形用金型に対してアンダーカット形状となるので、ゴム成形後金型から離型する際、この内周部を変形させる、つまり、無理抜きすることとなる。このため、無理抜きによって第2ゴム弾性部の内周部を形成するゴムに大きな負担がかかり、ゴムのちぎれや欠損が生じる恐れがあるなど、離型性が悪くなる。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、センターベアリングの支持装置の、ゴム弾性部の離型性をよくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、第2ゴム弾性部の内径を、第1部材側に行くに従って次第に減少するようにし、且つ、第2ゴム弾性部の内周部に溝部を形成した。
【0009】
具体的には、第1の発明は、車両用プロペラシャフトのセンターベアリングを支持する支持装置であって、前記センターベアリングを抱持するブラケットに設けられたフランジの厚さ方向両側にそれぞれ対向配置される第1部材及び第2部材を備え、前記第1部材は、筒部と、前記筒部の外周面に形成され、第1筒部と、該第1筒部よりも前記第2部材側に配置され、外径が第1筒部よりも小さい第2筒部とを含む第1ゴム弾性部とを有し、前記第2部材は、環状部と、前記環状部における前記第1部材側の面に形成され、内部に前記第1ゴム弾性部の前記第2筒部が前記第1部材の筒部とともに前記フランジを貫通した状態で嵌合された筒状の第2ゴム弾性部とを有し、前記第1ゴム弾性部の前記第1筒部における前記第2部材側の面と前記第2ゴム弾性部における前記第1部材側の面との間に、前記フランジが挟持され、前記第2ゴム弾性部の内径は、前記環状部側から前記第1部材側に行くに従って次第に減少し、前記第2ゴム弾性部の内周部には、軸方向に延びる溝部が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
尚、第2ゴム弾性部の内径が、環状部側から第1部材側に行くに従って次第に減少するとは、環状部側の内径よりも第1部材側の内径が小さいことを意味し、直線的に減少していること、段階的に(階段状に)減少していること及び曲線的に減少しているという意味を含む。
【0011】
この第1の発明によれば、第2ゴム弾性部の内周部には、軸方向に延びる溝部が形成されているので、第2ゴム弾性部を成形後、金型から無理抜きする際、溝部が形成されていない場合に比べて、第2ゴム弾性部の内周部にかかる負担が小さくなる。従って、第2ゴム弾性部の離型性がよくなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1ゴム弾性部の前記第2筒部の外周面には、軸方向に延びる係合突起が周方向に間隔を空けて複数形成され、前記溝部は、前記第2ゴム弾性部の内周部に周方向に間隔を空けて複数形成され、前記第2ゴム弾性部の内周部における相隣り合う前記溝部の間がそれぞれ係合部を構成し、前記複数の係合突起及び前記複数の係合部は、前記第1ゴム弾性部の前記第2筒部が前記第2ゴム弾性部にどのように嵌合されたとしても前記複数の係合突起のうち少なくとも1つと前記複数の係合部のうち少なくとも1つとが係合するように配置されている、ことを特徴とする。
【0013】
この第2の発明によれば、複数の係合突起及び前記複数の係合部は、第1ゴム弾性部の第2筒部が第2ゴム弾性部にどのように嵌合されたとしても複数の係合突起のうち少なくとも1つと複数の係合部のうち少なくとも1つとが係合するように配置されているので、第1ゴム弾性部の第2筒部が第2ゴム弾性部に嵌合され、第1部材及び第2部材を安定して仮組みすることができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記複数の係合突起の数が前記複数の溝部の数と異なっている、ことを特徴とする。
【0015】
この第3の発明によれば、係合突起の数が溝部の数と異なっているので、係合突起の数が溝部の数と同じ場合に比べて、全係合突起の周方向の位置が、全溝部の周方向の位置と完全に一致することのないように、係合突起及び溝部の配置を設計しやすくなる。これによって、第1ゴム弾性部の第2筒部が第2ゴム弾性部にどのように嵌合されたとしても少なくとも1つの係合突起の周方向の位置が溝部の周方向の位置からずれるようになる。その結果、係合突起の周方向の位置と係合部の周方向の位置とが互いに重なって係合するようになる。従って、第1ゴム弾性部の第2筒部が第2ゴム弾性部に嵌合されるという第2の発明の効果を奏することができる。
【0016】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記複数の係合突起は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成され、前記複数の溝部は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
この第4の発明によれば、複数の係合突起は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成され、複数の溝部は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されているので、第1ゴム弾性部成形用金型及び第2ゴム弾性部成形用金型の構成が簡単になる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、各係合部の周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起同士の間隔よりも大きい、ことを特徴とする。
【0019】
この第5の発明によれば、各係合部の周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起同士の間隔よりも大きいので、第1ゴム弾性部の第2筒部が第2ゴム弾性部にどのように嵌合されたとしても係合突起のうち少なくとも1つと係合部のうち少なくとも1つとが係合する具体的な構成が得られる。
【0020】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記各係合突起の周方向幅は、前記各溝部の周方向幅よりも大きい、ことを特徴とする。
【0021】
この第6の発明によれば、各係合突起の周方向幅は、各溝部の周方向幅よりも大きいので、第5の発明と同様の効果を奏する具体的な構成が得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、センターベアリングの支持装置の、ゴム弾性部の離型性をよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る支持装置がセンターベアリングを支持している状態を車両前方から見た図である。
【
図3】第1部材を斜め下方向から見た斜視図である。
【
図4】第2部材を斜め上方向から見た斜視図である。
【
図5】
図2において、第2部材を上方向から見た断面図に、第1部材の第2筒部を上方向から見た図を重ねて示す部分断面図である。
【
図6】
図5において、第1部材を第2部材に対して筒軸回りに15°回転させた状態を示す部分断面図である。
【
図7】実施形態2に係る支持装置の
図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
<実施形態1>
―センターベアリング―
本発明に係る支持装置1は、車両の前後方向に延びる車両用プロペラシャフトのセンターベアリングBを支持するためのものである。センターベアリングBは、
図1に示すように、ブラケットBRによって抱持されている。ブラケットBRには、車幅方向両側に延びるフランジFが設けられている。フランジFには、スタッドボルトSが挿通されるための挿通孔が設けられている。フランジFは、後述する第1部材10及び第2部材20に挟持された状態で、第1部材10及び第2部材20とともにスタッドボルトSに挿通され、ナットNにより締結固定されることにより、板状の車体側部材Cに固定されている。
【0026】
―支持装置―
支持装置1は、
図2に示すように、第1部材10と第2部材20とを備えている。この第1部材10及び第2部材20は、
図1に示すように、フランジFの厚さ方向両側にそれぞれ対向配置されている。
【0027】
―第1部材―
第1部材10は、
図2及び
図3に示すように、板状の第1円環部11aと、第1円環部11aの下側で第1円環部11aと一体に形成された筒部11bと、筒部11bの外周面に形成された第1ゴム弾性部12とを有している。第1円環部11a及び筒部11bは、ともに金属製である。第1円環部11aは、その両板面を上下方向に向けて配置されている。筒部11bは、第1円環部11aの内周縁部から、第1円環部11aの下方に延びている。
【0028】
第1ゴム弾性部12は、第1筒部13と第2筒部14とを含んでいる。第1筒部13は、第1円環部11aの下面から筒部11bの外周面の略上半分に固着されている。第1筒部13は、第1円環部11aとの固着部分を除いてその外径が第1円環部11aの外径よりも少し小さく形成された上端部13aと、この上端部13aの下側において下方に行くに従って外径が次第に大きくなるように形成された中間部13bと、この中間部13bの下側において、円環状に形成された下端部13cとからなる。この下端部13cの外径は、第1円環部11aの外径よりも大きく且つ中間部13bの下端部分よりも少し大きく形成されている。この下端部13cの下側の面13dの上下方向の位置は、筒部11bの上下方向略中央である。
【0029】
第1筒部13の下端部13c及び後述する第2筒部14における第1筒部13との接続部14aには、筒部11bの外周面を囲む金属製の第1リング15が埋設されている(
図2参照)。第1リング15は、板状に形成され、その板面を上下方向に向けて配置されている。第1リング15は、その外径が第1筒部13の下端部13cの外径よりも少し小さく、その内径が筒部11bの外径よりも少し大きく形成されている。第1リング15の内周側端面15a近くの内周側端面15aに沿った部分は、全周に亘って下向きに曲がっている。すなわち、第1リング15の上面(下面)は、内周側端面15aの近くで、第1リングの内周側端面15aに近づくに従って第1リング15の径方向内側(外側)を向くように曲面を構成している。そして、第1リング15の内周側端面15aは下側を向いている。
【0030】
第2筒部14は、第1筒部13よりも下側(第2部材20側)に配置され、第1筒部13と連続している。第2筒部14は、第1筒部13の下端部13cの下側の面13dと接続された接続部14aと、この接続部14aの下側の、外周面が平坦な平坦部14bとからなる(
図3参照)。
【0031】
また、第2筒部14は、その外径が第1筒部13の外径よりも小さく形成されている。詳細に、第2筒部14の外径は、その上端部における第1筒部13との接続部14aで最大となっているが、この接続部14aの外径は、第1筒部13の最小の外径(上端部13aの外径)よりも小さく形成されている。また、この接続部14aの外径は、第1リング15の内周側端面15aの外径よりも少し大きく形成されている。第2筒部14の平坦部14bの外径は、第1リング15の内周側端面15aの内径と略同じ大きさに形成されている。第2筒部14の平坦部14bの下端部の近くの外径は、下方へ行くに従って次第に小さくなっている。
【0032】
第2筒部14の平坦部14bの外周面には、軸方向に延びる係合突起14c,14c,…が周方向に間隔を空けて複数形成されている。本実施形態では、係合突起14c,14c,…の数は12個である(
図5参照)。尚、係合突起14c,14c,…の間隔とは、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の端部間の間隔をいう(
図5参照)。
【0033】
これらの係合突起14c,14c,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されている。各係合突起14cは、その上部が下部よりも径方向外側に突出しており、上部から下部へ行くに従って突出の大きさが次第に小さくなっており、その下端部で平坦部14bの下端部となだらかに繋がっている(
図2参照)。
【0034】
―第2部材―
第2部材20は、
図2及び
図4に示すように、金属製の第2円環部21(環状部)と、この第2円環部21における上側(第1部材10側)の面に形成された筒状の第2ゴム弾性部22とを有している。
【0035】
第2円環部21は、第1部材10の筒部11bの下端部よりも少し下側に配置されている。第2円環部21の内径は、第1部材10の筒部11bの内径と略同じ大きさに形成され、第2円環部21の外径は、第1部材10の第1円環部11aの外径よりも少し大きく形成されている。
【0036】
第2ゴム弾性部22は、内部に第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第1部材10の筒部11bとともにフランジFを貫通した状態で嵌合されている(
図1及び
図2参照)。そして、第1ゴム弾性部12の第1筒部13下端部13cにおける下側の面13dと第2ゴム弾性部22における上側の面22dとの間に、フランジFが挟持されている。
【0037】
詳細に、第2ゴム弾性部22は、第2円環部21の上側の面に固着されている。第2ゴム弾性部22は、第2円環部21との固着部分を除いてその外径が第2円環部21の外径よりも少し小さく形成された下端部22aと、この下端部22aの上側において上方に行くに従って外径が次第に大きくなるように形成された中間部22bと、この中間部22bの上側において、円環状に形成された上端部22cとからなる。この上端部22cの外径は、第1ゴム弾性部12における第1筒部13の下端部13cの外径と略同じ大きさに形成されている。この上端部22cの上側の面22dの上下方向の位置は、第1ゴム弾性部12における第2筒部14の接続部14a及び平坦部14bの間である。
【0038】
第2ゴム弾性部22の上端部22cには、第2リング23が埋設されている(
図2参照)。第2リング23は、板状に形成され、その板面を上下方向に向けて配置されている。第2リング23は、その外径が第1リング15の外径と略同じ大きさに形成されており、その内径が第1リング15の内周側端面15aの外径よりも少し大きく形成されている。
【0039】
第2ゴム弾性部22の内径は、第2ゴム弾性部22の下端部で最も大きく、第2円環部21側から第1部材10側に行くに従ってテーパ状に次第に減少しており、第2ゴム弾性部22の上端部22cにおいて最も小さくなっている。
【0040】
第2ゴム弾性部22の内周面22e(内周部)には、軸方向に延びる複数の溝部22f,22f,…が周方向に互いに間隔を空けて形成されている。本実施形態では、溝部22f,22f,…の数は6個であり、係合突起の数(12個)と異なっている(
図5参照)。これらの溝部22f,22f,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されている。尚、溝部22f,22f,…の間隔とは、周方向に相隣り合う溝部22f,22f同士の端部間の間隔をいう(
図5参照)。
【0041】
第2ゴム弾性部22の内周面22eは、その上端部が、第1ゴム弾性部12の各係合突起14cの最も径方向外側に位置する部分(すなわち、係合突起14c上端部)よりも、径方向内側に位置している(
図2参照)。これによって、第1部材10の筒部11b及び第2筒部14が第2ゴム弾性部22の内部に挿入された状態では、第1部材10が第2部材20から離れる方向へ動くとき、第2ゴム弾性部22の内周面22eにおける相隣り合う溝部22f,22fの間は、各係合突起14cと接触し得る。すなわち、第2ゴム弾性部22の内周面22eにおける相隣り合う溝部22f,22fの間は、それぞれ第1ゴム弾性部12の係合突起14c,14c,…と係合する係合面(係合部)22e,22e,…を構成している。
【0042】
各係合面22eの周方向幅(すなわち、溝部22f,22f,…の間隔)は、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔よりも大きく形成されている。このため、係合突起14c,14c,…及び係合面22e,22e,…は、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22にどのように嵌合されたとしても係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合するように配置されている。
【0043】
このことを、
図5及び
図6を参照しながら詳細に説明する。
図5は、全係合突起14c,14c,…のうちの半分(6個)の周方向中心の位置C1が、全溝部22f,22f,…の周方向中心の位置C2と一致する場合を示している(各周方向中心の位置C1,C2については、
図5の一点鎖線を参照)。この場合、全係合突起14c,14c,…の数が全溝部22f,22f,…の数と異なるので、周方向中心の位置C1が、全溝部22f,22f,…の周方向中心の位置C2からずれている係合突起14c,14c,…があることがわかる。周方向中心の位置C1が、全溝部22f,22f,…の周方向中心の位置C2からずれている6個の係合突起14c,14c,…は、
図5において、全係合面22e,22e,…と重なっている(
図5の破線部分を参照)。
図5において、係合面22e,22e,…と重なった係合突起14c,14c,…は、その重なった係合面22eに係合することを意味する。
【0044】
図6は、
図5に示す嵌合状態から、第1部材10が、第2部材20に対して筒軸回り(右又は左回り)に15°回転した状態を示している。この場合、全係合突起14c,14c,…の周方向中心の位置C1は、各溝部22fの周方向中心の位置C2からずれていることがわかる。そして、全係合突起14c,14c,…は、
図6において、係合面22e,22e,…と重なっている(
図6の破線部分を参照)。
図6において、係合面22e,22e,…と重なった係合突起14c,14c,…は、その重なった係合面22eに係合することを意味する。
【0045】
以上のように、
図5及び
図6のいずれの嵌合状態でも係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合する。また、
図5及び
図6以外の嵌合状態、すなわち、
図5において、第1部材10が、第2部材20に対して筒軸回りに0°より大きく15°より小さな角度だけ回転した状態においても、係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合することは明らかである。尚、第1部材10が、第2部材20に対して筒軸回りに15°より大きな角度だけ回転した嵌合状態は、0°~15°だけ回転したいずれかの状態と同じである。
【0046】
(製造方法)
以下、支持装置1の製造方法について簡単に説明する。
【0047】
第1部材10は、図示しない第1ゴム弾性部12成形用金型に、第1円環部11a及び筒部11b並びに第1リング15をセットし、第1円環部11aの下面から筒部11bの外周面にかけてゴム材料を注入して固化して、第1ゴム弾性部12を成形することにより製造する。
【0048】
第2部材20は、図示しない第2ゴム弾性部22成形用金型に第2円環部21及び第2リング23をセットし、第2円環部21の上面にゴム材料を注入して固化して、第2ゴム弾性部22を成形することにより製造する。
【0049】
第1部材10及び第2部材20を仮組みするため又は車両に取り付けるために、第1部材10の筒部11b及び第2筒部14を第2部材20に嵌合させるときは、第2筒部14の係合突起14c,14c,…又は第2部材20の係合面22e,22e,…を弾性変形させながら、第2部材20の内部に、筒部11b及び第2筒部14を、第2部材20の上側から挿入する。
【0050】
(作用)
本実施形態によれば、第2ゴム弾性部22の内周面22eには、軸方向に延びる溝部22f,22f,…が形成されているので、第2ゴム弾性部22を成形後、金型から無理抜きする際、第2ゴム弾性部22の内周面22eにかかる負担が小さくなる。従って、第2ゴム弾性部22の離型性がよくなる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第2ゴム弾性部22の内径は、第2円環部21側から第1部材10側に行くに従って次第に減少する。このため、第2部材20に嵌合した第1部材10が、第2部材20から抜けにくくなる。
【0052】
また、本実施形態によれば、第2筒部14の平坦部14bの外周面に形成された係合突起14c,14c,…と、第2ゴム弾性部22の係合面22e,22e,…とが互いに係合する構成となっている。ここで、第2筒部14の係合突起14c,14c,…が周方向に間隔を空けて複数形成されているので、周方向に間隔を空けずに形成されている場合に比べて、第1ゴム弾性部12を金型から無理抜きする場合でも、第1ゴム弾性部12の第2筒部14にかかる負担が小さくなる。従って、第2ゴム弾性部22だけでなく第1ゴム弾性部12も離型性がよくなる。
【0053】
また、本実施形態によれば、係合突起14c,14c,…の数が溝部22f,22f,…の数と異なっているので、係合突起14c,14c,…の数が溝部22f,22f,…の数と同じ場合に比べて、全係合突起14c,14c,…の周方向の位置が、全溝部22f,22f,…の周方向の位置と完全に一致することのないように、係合突起14c,14c,…及び溝部22f,22f,…の配置を設計しやすくなる。これによって、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22にどのように嵌合されたとしても、少なくとも1つの係合突起14c,14c,…の周方向の位置が溝部22f,22f,…の周方向の位置からずれるようになる。その結果、係合突起14c,14c,…の周方向の位置と係合面22e,22e,…の周方向の位置とが重なって係合するようになる。そして、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22に嵌合され、第1部材10及び第2部材20を安定して仮組みすることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、複数の係合突起14c,14c,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成され、複数の溝部22f,22f,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されているので、第1ゴム弾性部12成形用金型及び第2ゴム弾性部22成形用金型の構成が簡単になる。
また、本実施形態によれば、各係合面22eの周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔よりも大きいので、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22にどのように嵌合されたとしても係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合する具体的な構成が得られる。
【0055】
<実施形態2>
以下、実施形態2の構成について説明する。尚、実施形態1と同じ構成については説明を省略し、
図7では、
図1~
図6と同じ部分については同じ符号を付する。
【0056】
本実施形態は、係合突起14c,14c,…の数並びにその周方向の幅及び間隔が、実施形態1とは異なっている。詳細に、係合突起14c,14c,…の数は4個であり、各係合突起14cの周方向幅及び相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔が、いずれも実施形態1よりも大きい。そして、各係合面22eの周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔よりも小さい。また、各係合突起14cの周方向幅は、各溝部22fの周方向幅よりも大きい。
【0057】
各係合突起14cの周方向幅は、各溝部22fの周方向幅よりも大きいので、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22にどのように嵌合されたとしても複数の係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと複数の係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合する。
【0058】
このことを、
図7を参照しながら詳細に説明する。
図7は、各係合突起14cの周方向中心の位置C1がいずれの溝部22fの周方向中心の位置C2とも一致しない場合を示している。この場合、全係合突起14c,14c,…は、4つの係合面22e,22e,…と重なっている(
図7の破線部分を参照)。
図7において、係合面22e,22e,…と重なった係合突起14c,14c,…は、その重なった係合面22eに係合することを意味する。
【0059】
また、
図7に示す嵌合状態から、第1部材10が、第2部材20に対して筒軸回り(右又は左回り)に15°回転すると、全係合突起14c,14c,…の周方向中心の位置C1は、4つの溝部22f,22f,…の周方向中心の位置C2と一致するが、各係合突起14cの周方向幅が、各溝部22fの周方向幅よりも大きいので、これらは互いに係合する。
【0060】
以上のように、第1ゴム弾性部12の第2筒部14が第2ゴム弾性部22にどのように嵌合されたとしても、係合突起14c,14c,…のうち少なくとも1つと係合面22e,22e,…のうち少なくとも1つとが係合する具体的な構成が得られる。
【0061】
<その他の実施形態>
前記各実施形態では、係合突起14c,14c,…は、第2筒部14の平坦部14bの外周面に周方向に間隔を空けて複数形成され、溝部22f,22f,…は、第2ゴム弾性部22の内周面22eに周方向に間隔を空けて複数形成されている構成であったが、これに限られない。例えば、1つの係合突起14cが、平坦部14bの外周面の全周に亘って間隔を空けずに形成されていてもよい。また、溝部22fの数は1つであってもよい。
【0062】
また、前記各実施形態では、係合突起14c,14c,…の数が溝部22f,22f,…の数と異なっている構成であったが、係合突起14c,14c,…の数が溝部22f,22f,…の数と同じであってもよい。
【0063】
また、前記各実施形態では、係合突起14c,14c,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成され、溝部22f,22f,…は、各々の周方向幅が互いに等しく且つ周方向に等間隔で形成されている構成であったが、これに限られない。
【0064】
また、実施形態2では、各係合面22eの周方向幅は、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔よりも小さい構成であったが、周方向に相隣り合う係合突起14c,14c同士の間隔よりも大きくてもよい。
【0065】
また、前期各実施形態では、第1円環部11a及び筒部11bは、一体に形成された1つの部材であったが、それぞれが独立した部材であってもよい。
【0066】
また、前記各実施形態では、第2ゴム弾性部22の内径は、第2円環部21側から第1部材10側に行くに従ってテーパ状に次第に減少しているとしたが、これに限られず、第2円環部21側から第1部材10側に行くに従って、テーパ状でない形状(例えば、直線的、段階的(階段状)、又は曲線的)で 減少していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、センターベアリングの支持装置として有用である。
【符号の説明】
【0068】
B センターベアリング
BR ブラケット
F フランジ
1 支持装置
10 第1部材
11b 筒部
12 第1ゴム弾性部
13 第1筒部
13d 第1筒部の下側の面
14 第2筒部
14b 平坦部(外周面)
14c 係合突起
15a 内周側端面
20 第2部材
21 第2円環部(環状部)
22 第2ゴム弾性部
22d 第2ゴム弾性部の上側の面
22e 係合面(係合部)
22f 溝部