(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 37/00 20060101AFI20241128BHJP
B62J 11/00 20200101ALI20241128BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20241128BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241128BHJP
B62J 41/00 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
B62J37/00 B
B62J11/00
B62J23/00 C
B62J45/00
B62J41/00
B62J23/00 F
B62J23/00 A
(21)【出願番号】P 2020188445
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】諸富 啓
(72)【発明者】
【氏名】石山 圭介
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067276(JP,A)
【文献】特開2002-068059(JP,A)
【文献】特開平01-175586(JP,A)
【文献】特開2017-165229(JP,A)
【文献】特開平05-086994(JP,A)
【文献】特開平04-038281(JP,A)
【文献】特開2019-093826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 37/00
B62J 23/00
B62J 45/00
B62J 11/00
B62J 41/00
B62J 99/00
B62M 7/00
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの前方で、車体の前後方向に延びる車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方にキャニスタが配置された鞍乗型車両であって、
前記エンジンを支持するメインフレームから上下方向に延びる補機ステーを備え、
前記キャニスタは、長手方向を有する長尺形状に形成され、前記補機ステーの車幅方向内側に前記長手方向が前記補機ステーに沿うように配置されて前記補機ステーに支持され、
さらに、前記キャニスタを車幅方向外側から覆う左右一対のシュラウドを備え、
前記補機ステーにより、前記シュラウドが支持さ
れ、
他の部品が、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方で、前記キャニスタと車幅方向に並んで配置されている鞍乗型車両。
【請求項2】
エンジンの前方で、車体の前後方向に延びる車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方にキャニスタが配置された鞍乗型車両であって、
前記エンジンを支持するメインフレームから上下方向に延びる補機ステーを備え、
前記キャニスタは、長手方向を有する長尺形状に形成され、前記補機ステーの車幅方向内側に前記長手方向が前記補機ステーに沿うように配置されて前記補機ステーに支持され、
さらに、エンジンの前方で、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向他側方に配置されたラジエータと、前記ラジエータの冷却液を蓄えるリザーバタンクと、を備え、
前記リザーバタンクが、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方で、前記キャニスタと車幅方向に並んで配置され、前記補機ステーに支持されている鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、前記キャニスタが、前記リザーバタンクの車幅方向外側に配置されている鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項2または3に記載の鞍乗型車両において、さらに、前記エンジンよりも車幅方向一側方に配置された排気管を備え、
前記排気管の前方に、前記リザーバタンクと前記キャニスタが位置し、
前記リザーバタンクの下端よりも上方に、前記キャニスタの下端が位置している鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両において、さらに、前記リザーバタンクおよび前記キャニスタを前方から覆うスクリーンを備え、
前記スクリーンは、前記リザーバタンクおよび前記キャニスタに対向する対向領域と、それ以外の非対向領域とを有し、
前記非対向領域に、前記排気管に走行風を案内する導風孔が形成されている鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の鞍乗型車両において、さらに、車両のブレーキを制御するABSユニットを備え、
前記ABSユニットが、前記リザーバタンクの上方で、前記キャニスタと車幅方向に並んで配置され、前記補機ステーに支持されている鞍乗型車両。
【請求項7】
エンジンの前方で、車体の前後方向に延びる車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方にキャニスタが配置された鞍乗型車両であって、
前記エンジンを支持するメインフレームから上下方向に延びる補機ステーを備え、
前記キャニスタは、長手方向を有する長尺形状に形成され、前記補機ステーの車幅方向内側に前記長手方向が前記補機ステーに沿うように配置されて前記補機ステーに支持され、
さらに、車体の前方を覆うフロントカウルと、前記フロントカウルを車体に支持するカウルステーとを備え、
前記カウルステーが、前記補機ステーに連結さ
れ、
他の部品が、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方で、前記キャニスタと車幅方向に並んで配置されている鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクからの燃料の蒸気を吸着するキャニスタを備えた鞍乗型車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のような鞍乗型車両において、キャニスタが搭載されたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、キャニスタは、その長手方向が車幅方向を向くように配置されている。鞍乗型車両は車幅方向寸法が小さいので、キャニスタを長手方向が車幅方向を向くように配置すると、車幅方向の空間が圧迫され、部品の配置が制約される。
【0005】
本発明は、車幅方向にコンパクトにキャニスタを配置することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の鞍乗型車両は、エンジンの前方で、車体の前後方向に延びる車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方にキャニスタが配置された鞍乗型車両であって、前記エンジンを支持するメインフレームから上下方向に延びる補機ステーを備えている。前記キャニスタは、長手方向を有する長尺形状に形成され、前記補機ステーの車幅方向内側に前記長手方向が前記補機ステーに沿うように配置されて前記補機ステーに支持されている。
【0007】
この構成によれば、車幅方向にコンパクトにキャニスタを配置できるので、キャニスタの近傍に他の部品を配置しやすい。したがって、部品配置の自由度が向上する。また、前記キャニスタが補機ステーの車幅方向内側に配置されているので、補機ステーにより外側からの飛散物等からキャニスタが保護される。
【0008】
本発明において、さらに、前記キャニスタを車幅方向外側から覆う左右一対のシュラウドを備え、前記補機ステーにより前記シュラウドが支持されていてもよい。この構成によれば、シュラウドによりキャニスタが外側方に露出しないので、外観がよい。また、シュラウドでキャニスタが保護される。
【0009】
本発明において、さらに、エンジンの前方で、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向他側方に配置されたラジエータを備えていてもよい。この構成によれば、キャニスタをラジエータから離して配置することができるので、ラジエータの排風でキャニスタが熱せられるのを防ぐことができる。
【0010】
この場合、さらに、前記ラジエータの冷却液を蓄えるリザーバタンクを備え、前記リザーバタンクが、前記車幅方向中心軸よりも車幅方向一側方で、前記キャニスタと車幅方向に並んで配置され、前記補機ステーに支持されていてもよい。この構成によれば、キャニスタとリザーバタンクを車幅方向の同じ側に配置することで、コンパクトに配置できる。
【0011】
この場合、前記キャニスタが、前記リザーバタンクの車幅方向外側に配置されていてもよい。この構成によれば、比較的高重量のリザーバタンクを内側に配置することで重量バランスがよい。また、キャニスタをラジエータから離して排風の影響を防ぐことができる。
【0012】
前記リザーバタンクを備える場合、さらに、前記エンジンよりも車幅方向一側方に配置された排気管を備え、前記排気管の前方に前記リザーバタンクと前記キャニスタが位置し、前記リザーバタンクの下端よりも上方に前記キャニスタの下端が位置していてもよい。この構成によれば、キャニスタを排気管から十分上方に遠ざけることで、排気管からの熱によりキャニスタの温度が上昇するのを抑制することができる。
【0013】
この場合、さらに、前記リザーバタンクおよび前記キャニスタを前方から覆うスクリーンを備え、前記スクリーンは、前記リザーバタンクおよび前記キャニスタに対向する対向領域と、それ以外の非対向領域とを有し、前記非対向領域に、前記排気管に走行風を案内する導風孔が形成されていてもよい。この構成によれば、走行風により排気管周囲の熱気が拡散され、キャニスタの温度が上昇するのを抑制できる。
【0014】
前記リザーバタンクを備える場合、さらに、車両のブレーキを制御するABSユニットを備え、前記ABSユニットが、前記リザーバタンクの上方で前記キャニスタと車幅方向に並んで配置され、前記補機ステーに支持されていてもよい。この構成によれば、ABSユニット、キャニスタ、リザーバタンクを水平方向にコンパクトに配置できる。
【0015】
本発明において、さらに、車体の前方を覆うフロントカウルと、前記フロントカウルを車体に支持するカウルステーとを備え、カウルステーが、前記補機ステーに連結されていてもよい。この構成によれば、カウルステーと補機ステーが連結されているので、支持剛性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鞍乗型車両によれば、車幅方向にコンパクトにキャニスタを配置できるので、キャニスタの近傍に他の部品を配置しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両の一種である自動二輪車の前部を示す側面図である。
【
図5】同自動二輪車の前部の要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両の一種である自動二輪車の前部を示す側面図である。本明細書において、「右」、「左」は、車両に乗車した運転者から見た「右」、「左」をいう。また、「前」「後」とは、車両の進行方向の「前」「後」をいう。
【0019】
本実施形態の自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端のヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びたのち、下方に湾曲して上下方向に延びている。リヤフレーム2は、メインフレーム1の後部から後方に延びている。本実施形態の車体フレームFRは、メインフレーム1が車幅方向の中心部を前後方向に延びる、いわゆるバックボーンフレームである。
【0020】
車体フレームFRは、さらに、ダウンフレーム3を有している。ダウンフレーム3は、ヘッドパイプ4から下方に延びたのち、後方に湾曲して前後方向に延びてメインフレーム1の下端部に連結されている。
【0021】
車体フレームFRに、上下方向に延びる補機ステー5が設けられている。補機ステー5は、左右一対設けられている。補機ステー5は、上端がメインフレーム1に連結され、下端がダウンフレーム3に連結されている。詳細には、補機ステー5から車幅方向外側に延びたのち下方に延び、さらに、車幅方向内側に延びてダウンフレーム3に連結されている。換言すれば、
図3に示すように、補機ステー5は、メインフレーム1から車幅方向外側に延びる第1のステー片5aと、第1のステー片5aの外側端から下方に延びる第2のステー片5bと、第2のステー片5bの下端から車幅方向内側に延びてダウンフレーム3に達する第3のステー片5cとを有している。
【0022】
図1に示すヘッドパイプ4に、ステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク6が回動自在に支持されている。フロントフォーク6の下端に前輪8が取り付けられている。フロンクフォーク6の上端部に、ハンドル10が取り付けられている。
【0023】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット12が設けられている。スイングアームブラケット12に、スイングアーム14が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム14の後端部に、後輪(図示せず)が取り付けられている。
【0024】
メインフレーム1の下方でスイングアームブラケット12の前方に、駆動源であるエンジンEが取り付けられている。エンジンEは、側面視で、メインフレーム1とダウンフレーム3で囲まれた領域内に配置されている。エンジンEにより、チェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪が駆動される。メインフレーム1の上部に燃料タンク22が配置され、リヤフレーム2に操縦者が着座するシート24が装着されている。燃料タンク22は、エンジンEの真上で、ヘッドパイプ4の後方かつシート24の前方に配置されている。
【0025】
本実施形態のエンジンEは、水冷単気筒エンジンである。ただし、エンジンの形式はこれに限定されず、空冷エンジンであってもよく、また、2気筒、4気筒等の多気筒エンジンであってもよい。エンジンEは、クランク軸26を回転自在に支持するクランクケース28と、クランクケース28から上方に突出するシリンダ30と、シリンダ30の上部に連結されたシリンダヘッド32とを有している。本実施形態では、クランク軸26の軸心26aは車幅方向(左右方向)に延びている。
【0026】
前記補機ステー5は、エンジンEの前方を上下方向に延びている。詳細には、補機ステー5は、エンジンEの前方の領域をシリンダヘッド32の上方からシリンダ30の下端部まで上下方向に延びている。
図2に示すように、補機ステー5は、エンジンEの外側方を上下方向に延びている。
【0027】
図1に示すシリンダヘッド32の後面に吸気ポート36が形成され、前面に排気ポート38が形成されている。吸気ポート36に燃料供給装置40が接続され、燃料供給装置40にエアクリーナ42が接続されている。エアクリーナ42は、外気を濾過して清浄空気を生成する。燃料供給装置40は、エアクリーナ42からの清浄空気に燃料を噴射して混合気を生成し、吸気ポート36に供給する。燃料供給装置40は、例えば、燃料噴射弁を備えたスロットルボディ、キャブレター等である。エアクリーナ42と燃料供給装置40により、エンジンEに空気を供給する吸気通路が構成されている。
【0028】
排気ポート38に排気管44が接続されている。排気管44は、シリンダヘッド32の前面から後方に湾曲して、シリンダヘッド32の一側方、本実施形態では右側方を後方に延びている。排気管44の後端に排気マフラ(図示せず)が接続されている。以下の説明において、車体の右側方を車幅方向一側方といい、車体の左側方を車幅方向他側方という。
【0029】
図3に示すエンジンEの前方に、ラジエータ46が配置されている。ラジエータ46は、エンジンEの冷却液を放熱するもので、冷却液を流すチューブと、このチューブに設けられた冷却フィンを有する。本実施形態では、冷却液として水が用いられている。ラジエータ46は、車体の車幅方向中心線L1よりも左側に配置されている。ラジエータ46は、補機ステー5の内側に配置され、ダウンフレーム3(
図1)および補機ステー5に支持されている。
【0030】
図1に示すエンジンEの前方に、キャニスタ48が配置されている。キャニスタ48は、燃料タンク22からの燃料の蒸気を吸着してエンジンEの燃焼室に戻す。キャニスタ48は、車体の前後方向に延びる車幅方向中心軸L1(
図2)よりも右側に配置されている。キャニスタ48は、長手方向を有する長尺形状に形成され、補機ステー5の車幅方向内側に長手方向が補機ステー5の第2のステー片5bの延在方向(上下方向)に沿うように配置されている。キャニスタ48は、排気管44の前方に配置され、キャニスタ48の下端が排気管44よりも上方に位置している。キャニスタ48の詳細は後述する。
【0031】
車体の前部にフロントカウル50が装着されている。フロントカウル50は、
図1に示すヘッドパイプ4の前方の領域を覆っている。フロントカウル50は、カウルステー51を介してメインフレーム1に支持されている。カウルステー51は、例えば、鋼製のパイプからなる。本実施形態では、カウルステー51は補機ステー5に連結されている。
【0032】
詳細には、
図3の平面図に示すように、カウルステー51は、車体に取り付けられる第1部分61と、第1部分61から上方に延びてフロントカウル50を支持する第2部分62とを有している。第1部分61は、後方に開いたU字形状で、左右の枝部61a,61aの後端が補機ステー5に連結され、基部61bがヘッドパイプ4から前方に突出して設けられたヘッドブラケット63に連結されている。さらに、第2部分62の左右に延びた中間バー62aの中央部が連結バー62bを介してヘッドブラケット63に支持されている。カウルステー51の構成はこれに限定されない。
【0033】
図1のフロントカウル50の後方下方に左右一対のシュラウド52が設けられている。シュラウド52は、ボルトのような締結部材(図示せず)により補機ステー5を介して車体フレームFRに着脱自在に取り付けられている。
図1では、フロントカウル50およびシュラウド52は二点鎖線で示されている。
図2に示す左側のシュラウド52はラジエータ46を外側方から覆い、右側のシュラウド52はキャニスタ48を外側方から覆っている。
【0034】
ラジエータ46およびキャニスタ48の前方に左右一対のインナカウル54L,54Rが配置されている。左側のインナカウル54Lは、ラジエータ46の前方に配置され、ラジエータ46に走行風を案内する。詳細には、左側のインナカウル54Lに、ラジエータ46に走行風を導入する導風口55が形成されている。導風口55には、格子状の第1(左側)スクリーン58が装着されている。第1スクリーン58は、走行時に小石等からラジエータ46を保護する。つまり、走行風はスクリーン58を通過できるが、小石等の異物はスクリーン58を通過できない。
【0035】
右側のインナカウル54Rは、キャニスタ48の前方に配置されている。右側のインナカウル54Rにも導風口55が形成されており、導風口55には、格子状の第2(右側)スクリーン60が装着されている。第2スクリーン60は、排気管44の前方を覆っている。格子状の第2スクリーン60の開口を介して排気管44に走行風が供給される。つまり、第2スクリーン60の開口が、排気管44に走行風を案内する導風孔60aを構成している。
【0036】
導風孔60aは、スクリーン60におけるキャニスタ48よりも下方の領域に形成されている。本実施形態では、第2スクリーン60は、キャニスタ48と前後方向に対向する対向領域R1と、それ以外の非対向領域R2とを有しており、非対向領域R2に導風孔60aが形成されている。本実施形態では、対向領域R1は塞がれているが、導風孔60aよりも目が細かいスリット(開口)が設けられてもよい。これにより、異物がキャニスタ48に衝突するのを防ぎつつ、走行風を後方に案内できる。
【0037】
図3に示すように、キャニスタ48は、燃料の蒸気を吸着する吸着材(図示せず)と、吸着材を収納する容器64とを有している。吸着材は、例えば、活性炭である。容器64は、長手方向を有する矩形である。容器64の上面に、ガス入口部64aとガス出口部64bが形成され、ガス入口部64aに蒸発ガス通路66が接続され、ガス出口部64bにパージ通路68が接続されている。
【0038】
蒸発ガス通路66は燃料タンク22の給油口とキャニスタ48とを連通し、蒸発ガス通路66を介して燃料の蒸気がキャニスタ48の容器64の内部に送られる。容器64に送られた燃料の蒸気は吸着材に吸着される。パージ通路68はキャニスタ48とエンジンEの前記吸気通路とを連通している。容器64の内部には、新鮮な空気(パージエア)を取り入れる通路が設けられている。パージエアが取り込まれると、燃料蒸気が吸着材から分離され、パージ通路68を介してエンジンEの吸気通路に送られる。
【0039】
パージ通路68に、
図4に示すパージバルブ69が設けられている。本実施形態では、パージバルブ69は電磁弁である。ただし、パージバルブ69はこれに限定されない。パージバルブ69は、例えば、エンジン用の電子制御ユニット(ECU)により制御される。パージバルブ69を制御することにより、エンジンEが回転して吸気通路が負圧のときのみ、燃料蒸気がキャニスタ48から吸引されるように構成されている。
【0040】
つぎに、キャニスタ48の支持構造を説明する。補機ステー5の第2のステー片5bの上部に、第1ブラケット70が設けられている。本実施形態では、第1ブラケット70は、上下方向に並んで2つ設けられている。第1ブラケット70の数はこれに限定されない。本実施形態の第1ブラケット70は、板金製であり、補機ステー5の第2のステー片5bの内側に、例えば、溶接により固着されている。第1ブラケット70に、車幅方向を向くねじ孔70aが形成されている。ねじ孔70aは、例えば、溶接ナットである。
【0041】
図1に示すように、キャニスタ48の容器64の外側面に、第2ブラケット72が取り付けられている。本実施形態の第2ブラケット72は、板金からなり、ねじ体のような締結部材(図示せず)により容器64に着脱自在に取り付けられている。ただし、第2ブラケット72は容器64に不可分一体に設けられてもよい。
【0042】
第2ブラケット72は、容器64に取り付けられる取付部72aと、後方に延びる3つの第1~第3突出片72b、72c、72dを有している。最も上の第1突出片72bと最も下の第3突出片72dは同じ突出長さで、真ん中の第2突出片72cは他の2つの突出片72b、72dよりも後方への突出長さが大きい。第1突出片72bと最も下の第3突出片72dには、車幅方向を向く挿通孔72ba、72daが形成されている。また、第2突出片72cには、
図4に示す車幅方向を向くねじ孔72caが形成されている。ねじ孔72caは、例えば、溶接ナットである。
【0043】
キャニスタ48へのパージ通路68に設けられたパージバルブ69の取付孔(図示せず)にボルトのような締結部材75が挿通され、第2ブラケット70のねじ孔72caに締め付けられている。これにより、キャニスタ48とパージバルブ69が一体化されてサブアッシが構成される。さらに、第2ブラケット72の挿通孔72ba、72daにボルトのような締結部材74が挿通され、第1ブラケット70のねじ孔70aに締め付けられている。これにより、キャニスタ48とパージバルブ69のサブアッシが補機ステー5に支持される。
【0044】
図3に示すエンジンEの前方に、リザーバタンク76が配置されている。リザーバタンク76は、ラジエータ46の冷却液を蓄える。リザーバタンク76は、車幅方向中心軸L1よりも右側(車幅方向一側方)で、キャニスタ48と車幅方向に並んで配置されている。詳細には、キャニスタ48が、リザーバタンク76の車幅方向外側(右側)に配置されている。リザーバタンク76は、
図1の側面視で、キャニスタ48と部分的に重なっている。
【0045】
リザーバタンク76およびキャニスタ48は、排気管44よりも前方に位置している。上下方向に関して、本実施形態では、リザーバタンク76の下端よりも上方で、且つ、排気管44よりも上方に、キャニスタ48の下端が位置している。
【0046】
本実施形態では、
図2に示す第2スクリーン60におけるリザーバタンク76に前後方向に対向する部分も、対向領域R1を構成している。具体的には、第2スクリーン60におけるリザーバタンク76に対向する対向領域R1は閉塞されている。
【0047】
図5に示すように、リザーバタンク76は、冷却液が貯留されるタンク本体76aと、タンク本体76aの上面の給液口を開閉するキャップ76bとを有している。タンク本体76aの下端部に出口部76cが設けられ、出口部76cとラジエータ46がゴムチューブ78により接続されている。
【0048】
タンク本体76aの左上部に、上方へ突出する第1取付片76dが設けられている。また、タンク本体76aの右下部に、右側方へ突出する第2取付片76eが設けられている。第1および第2取付片76d,76eに、前後方向を向く取付孔76da,76eaが形成されている。
【0049】
ダウンフレーム3の上部に、車体右側に突出する第1タンクステー80が設けられている。本実施形態の第1タンクステー80は、板金製で、ダウンフレーム3に溶接で接合されている。第1タンクステー80に前後方向を向くねじ孔(図示せず)が形成されている。また、補機ステー5の第2のステー片5bの下部に、車体左側に突出する第2タンクステー82(
図4)が設けられている。本実施形態の第2タンクステー82は、板金製で、補機ステー5に溶接で接合されている。第2タンクステー82に前後方向を向くねじ孔(図示せず)が形成されている。ねじ孔(図示せず)は、例えば、溶接ナットである。
【0050】
リザーバタンク76の第1および第2取付片76d,76eの取付孔76da,76eaに、ボルトのような締結部材84が前方から挿通され、第1および第2タンクステー80,82のねじ孔(図示せず)に締め付けられている。これにより、リザーバタンク76が車体フレームFRに支持されている。リザーバタンク76の支持構造は、これに限定されない。
【0051】
本実施形態では、
図6の第1タンクステー80に右側のインナカウル54R(
図2)の上部が締結部材81により取り付けられている。右側のインナカウル54Rの下部は、補機ステー5の第3のステー片5cに締結部材83により取り付けられている。さらに、右側のインナカウル54Rの外側部はシュラウド52(
図1)に連結されている。
【0052】
また、
図4の第2タンクステー82にホーン85およびイグニッションコイル86が支持されている。つまり、キャニスタ48の下方でリザーバタンク76の下部の右側方に、ホーン85およびイグニッションコイル86が前後方向に並んで配置されている。第2タンクステー82が、ホーン85とイグニッションコイル86の支持を兼ねることで、専用の部材を用いるのに比べて部品点数を減らすことができる。
【0053】
図3に示すエンジンEの前方に、ABSユニット88が配置されている。ABSユニット88は、車両のブレーキを制御する。ABSユニット88は、車幅方向中心軸L1よりも右側(車幅方向一側方)で、キャニスタ48と車幅方向に並んで配置されている。詳細には、ABSユニット88は、
図4に示すように、リザーバタンク76の上方で、キャニスタ48の左側に配置されている。より詳細には、ABSユニット88は、リザーバタンク76の左半部の上方に配置されている。つまり、ABSユニット88はリザーバタンク76のキャップ76bを避けて配置され、キャップ76bが上方に露出している。
【0054】
ABSユニット88は、ABSユニット用ブラケット90を介して車体フレームFRに支持されている。ABSユニット用ブラケット90は、板金を折り曲げることで形成されており、主面が車幅方向を向く外側壁92と、主面が上下方向を向く下壁94とを有している。
【0055】
外側壁92に車幅方向を向く取付孔92aが形成され、下壁94に上下方向を向く取付孔94aが形成されている。これら取付孔92a,94aを挿通するボルト95により、弾性部材を含むラバーマウントを介してABSユニット88がABSユニット用ブラケット90に取り付けられて、サブアッシが構成されている。
【0056】
ABSユニット用ブラケット90の外側壁92の上端が補機ステー5に支持され、下壁94の車幅方向内側端がダウンフレーム3に支持されている。補機ステー5の第1のステー片5aに下方に突出する第1のユニットステー96が設けられ、第1のユニットステー96に前後方向を向く挿通孔96a(
図5)が形成されている。一方、ABSユニット用ブラケット90の外側壁92の上端に第1取付片98が設けられ、第1取付片98に前後方向を向くねじ孔98a(例えば溶接ナット)が形成されている。
【0057】
車体の前方からボルトのような締結部材100(
図5)が第1のユニットステー96の挿通孔96aに挿通され、ABSユニット用ブラケット90のねじ孔98aに締め付けられている。これにより、ABSユニット用ブラケット90の外側壁92の上端が補機ステー5に支持される。
【0058】
一方、ABSユニット用ブラケット90の下側壁94の車幅方向内端に第2取付片104が設けられ、第2取付片104に車幅方向を向く取付孔104aが形成されている。車体の外側方(右側)からボルトのような締結部材105がABSユニット用ブラケット90の取付孔104aに挿通され、ダウンフレーム3に設けられたねじ孔(図示せず)に締め付けられている。このダウンフレーム3のねじ孔は、ダウンフレーム3に取り付けられたブラケットに形成されている。これにより、ABSユニット用ブラケット90の下壁94の車幅方向内端がダウンフレーム3に支持される。以上により、ABSユニット88がABSユニット用ブラケット90を介して車体に支持されている。
【0059】
上記構成によれば、
図2に示すように、キャニスタ48が車幅方向中心軸L1よりも右側で、その長手方向が上下方向に延びる補機ステー5に沿うように配置されている。これにより、車幅方向にコンパクトにキャニスタ48を配置できるので、キャニスタ48の近傍に、リザーバタンク76、ABSユニット88等の部品を配置しやすい。したがって、部品配置の自由度が向上する。また、キャニスタ48が補機ステー5の車幅方向内側に配置されているので、補機ステー5により外側からの飛散物等からキャニスタ48が保護される。
【0060】
また、補機ステー5に支持されたシュラウド52によりキャニスタ48が外側方から覆われている。これにより、キャニスタ48が外側方に露出しないので、外観がよい。また、シュラウド52でキャニスタ48が保護される。
【0061】
さらに、ラジエータ46が車幅方向中心軸L1よりも左側に配置されている。このように、キャニスタ48が車幅方向中心軸L1を挟んでラジエータ46の反対側に配置されているので、キャニスタ48をラジエータ46から離して配置することができ、その結果、ラジエータ46の排風でキャニスタ48が熱せられるのを防ぐことができる。
【0062】
また、リザーバタンク76が、車幅方向中心軸L1よりも右側で、キャニスタ48と車幅方向に並んで配置されている。キャニスタ48を長手方向が車幅方向を向くように配置すると、キャニスタ48と他の部品を車幅方向に並べて配置することは難しい。上記構成では、キャニスタ48を長手方向が上下方向を向くように配置しているので、キャニスタ48とリザーバタンク76を車幅方向にコンパクトに配置できる。本実施形態では、車幅方向外側に位置して上下方向に延びる補機ステー5の第2のステー片5bに、長手方向が上下方向に向くようにキャニスタ48を配置しているので、キャニスタ48とリザーバタンク76を車幅方向に並べて配置できる。
【0063】
キャニスタ48がリザーバタンク76の車幅方向外側に配置されている。このように、比較的高重量のリザーバタンク76を内側に配置することで車両の重量バランスがよい。また、キャニスタ48をラジエータ76から離して排風の影響を防ぐことができる。
【0064】
さらに、
図3に示す排気管44の前方にリザーバタンク76とキャニスタ48が配置され、
図1に示すように、リザーバタンク76の下端よりも上方で、排気管44よりも上方にキャニスタ48の下端が位置している。この構成によれば、キャニスタ48を排気管44から十分上方に遠ざけることができるので、排気管44からの熱によりキャニスタ48の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0065】
図2に示す第2スクリーン60の非対向領域R2に、排気管44に走行風を案内する導風孔60aが形成されている。これにより、排気管44の周囲の熱気が走行風により拡散され、キャニスタ48の温度が上昇するのを抑制できる。
【0066】
図3に示すように、ABSユニット88が、リザーバタンク76の上方でキャニスタ48と車幅方向に並んで配置されている。詳細には、ABSユニット88はリザーバタンク76のキャップ76bをよけてリザーバタンク76の左半部の上方に配置され、キャニスタ48はリザーバタンク76の右側に配置されている。これにより、ABSユニット88、キャニスタ48およびリザーバタンク76を水平方向にコンパクトに配置できる。
【0067】
さらに、キャニスタ48は、燃料タンク22との干渉を避けるために、ABSユニット88およびリザーバタンク76よりも前側に偏位して配置されている。具体的には、
図1のキャニスタ48の前面が、ABSユニット88の前面およびリザーバタンク76の前面よりも前側に位置するように配置されている。これにより、燃料タンク22の容量を稼ぐことができる。このように、本実施形態では、エンジン前方の水平方向のスペースを有効活用している。
【0068】
カウルステー51が補機ステー5に連結されているので、補機ステー5の支持剛性が向上する。これにより、シュラウド52、キャニスタ48、ABSユニット88およびリザーバタンク76を安定して支持できる。
【0069】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の自動二輪車の例を説明したが、本発明は自動二輪車以外の鞍乗型車両、例えば、三輪車、四輪バギー等にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 メインフレーム
5 補機ステー
44 排気管
46 ラジエータ
48 キャニスタ
50 フロントカウル
51 カウルステー
52 シュラウド
60 第2スクリーン(スクリーン)
60a 導風孔
76 リザーバタンク
88 ABSユニット
E エンジン
R1 対向領域
R2 非対向領域