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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/00 20060101AFI20241128BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F26B17/00 B
B01J4/00 105A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020190874
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079966
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】島村 育幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】谷山 拓生
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156564(JP,A)
【文献】実開平04-042126(JP,U)
【文献】実開平03-038139(JP,U)
【文献】特開2002-346370(JP,A)
【文献】特開2009-166921(JP,A)
【文献】特開2007-153585(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0097288(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/00
B01J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮性の成分を含む処理対象物を処理する処理炉と、
前記処理炉に供給する前記処理対象物を貯留するホッパと、
前記ホッパから前記処理対象物を切り出して前記処理炉に供給する回転弁と、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気装置と、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側に設けられ、前記回転弁に不活性ガスを供給して、前記回転弁から前記処理炉に向けて前記処理対象物の隙間を通流させるガス供給部と、を備えた処理システム。
【請求項2】
前記ガス供給部は、前記ホッパ又は前記ホッパと前記回転弁とを接続する接続部に挿入されるガス吐出口と、当該ガス吐出口を覆う保護カバーとを有しており、
前記保護カバーは、前記供給方向に対して前記回転弁に向けて傾斜した傾斜壁を含んでいる請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記回転弁よりも前記上流側に設けられたスライド弁を更に備え、
前記スライド弁は、前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを遮断可能に構成されている請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記ガス供給部から供給される不活性ガスの供給速度が前記回転弁の回転速度に比例する請求項1又は2に記載の処理システム
【請求項5】
ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、
前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給して、前記回転弁から前記処理炉に向けて前記処理対象物の隙間を通流させる不活性ガス供給ステップと、を含む処理方法。
【請求項6】
ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、
前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップと
前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを遮断する遮断ステップと、を含み
前記処理ステップを終了する際は、前記遮断ステップの実行を完了した後に前記不活性ガス供給ステップを所定時間継続させる処理方法。
【請求項7】
ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、
前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップと
前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを連通させる連通ステップと、を含み
前記処理ステップを開始する際は、前記排気ステップ及び前記不活性ガス供給ステップを開始した後、前記連通ステップを実行する処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、汚泥から汚泥処理物(処理物)を得るための汚泥加熱処理方法及び汚泥加熱処理装置が記載されている。この汚泥加熱処理装置は、汚泥を加熱する加熱炉(処理炉)、汚泥を加熱炉に搬入する汚泥搬入部、加熱炉から搬出される汚泥処理物を汚泥加熱処理装置の外部に搬出する汚泥搬出部、加熱炉内部の温度を計測する温度計、熱風を加熱炉に供給する熱風炉を備えている。加熱炉は、外熱式の加熱炉であり、略円筒状を呈し汚泥を外気に触れない状態で加熱しながら軸方向で搬送するキルンと、キルンを囲んで設けられるジャケットとを有している。
【0003】
特許文献2には、固形燃料(処理物)の製造方法が記載されている。この特許文献2には、炭化炉(処理炉)の入口のロータリバルブで詰まりが生じる事例が記載されている。
【0004】
特許文献3には、粉粒体移送用ロータリバルブが記載されている。特許文献3では、ロータリバルブに付着した粉粒体を清掃・除去すべく、ロータリバルブに圧縮空気の送気口と排気口とを設け、圧縮空気を送排気している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-125392号公報
【文献】特開2018-111831号公報
【文献】実用新案登録第3024649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に例示されるように、処理炉に汚泥などの凝縮性の成分を含む処理対象物を供給するロータリバルブなどの供給機には、処理対象物に含まれる水分や、処理炉内で生じたガス中のタール成分などの、凝縮性の成分が凝縮することで、凝縮性の成分そのものの付着や、凝縮物を介した処理対象物の微粉末の付着、及び付着物の成長による詰まりなどが生じる問題がある。付着による詰まりが生じると、処理炉への供給が途絶えてしまい、処理システムを安定して稼働できない。
【0007】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、処理炉の上流側で凝縮物等の付着を防止する処理システム及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る処理システムの特徴構成は、凝縮性の成分を含む処理対象物を処理する処理炉と、前記処理炉に供給する前記処理対象物を貯留するホッパと、前記ホッパから前記処理対象物を切り出して前記処理炉に供給する回転弁と、前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気装置と、前記回転弁よりも前記供給方向の上流側に設けられ、前記回転弁に不活性ガスを供給して、前記回転弁から前記処理炉に向けて前記処理対象物の隙間を通流させるガス供給部と、を備えた点にある。
【0009】
上記構成によれば、乾燥汚泥などの処理対象物の供給方向(処理対象物が処理システムを流れる方向)視で、上流側から順に、ホッパ、回転弁、及び処理炉が配設される。処理炉中のガス、すなわち、処理炉内で生じたガス(以下、乾留ガスと記載する)は、排気装置により排気されているため、処理炉からホッパ及び回転弁の側(上流側)への乾留ガスの逆流は防止される。これより、乾留ガスに含まれる凝縮性の成分による回転弁への付着が防止される。なお、回転弁とは、回転体の回転駆動により乾燥汚泥などの粒状物を定量切り出しする装置であり、その一例は、ロータリバルブやスクリューフィーダである。
【0010】
また、上記構成によれば、回転弁の上流側からは、ガス供給部により不活性ガスが供給されており、不活性ガスが回転弁から処理炉に向けて、処理対象物の隙間(処理対象物の粒や粒子同士の隙間、処理対象物と容器などの壁面との隙間)を通流するため、処理炉からホッパ及び回転弁の側(上流側)への乾留ガスの逆流は防止される。これにより、乾留ガスに含まれる凝縮性の成分による回転弁への付着が防止される。
【0011】
更に、上記構成によれば、処理対象物からの染み出しや蒸発により漏出した水分は、この不活性ガスの通流により蒸発するため、水分による回転弁への付着が防止される。なお、不活性ガスや蒸発した水分の蒸気は、処理炉に誘引されて、排気装置により乾留ガスと共に排気される。上記構成の処理システムでは、以上のようにして、処理炉の上流側における凝縮性の成分の付着が防止される。また、凝縮性の成分の付着防止により、凝縮物を介した処理対象物の微粉末の付着や、これら付着の成長による詰まりが防止される。このように、凝縮性の成分を含む処理対象物として、水分等の凝縮性の成分を処理前に含む処理対象物、又は、処理炉の処理によってタール成分等の凝縮性の成分が生じる処理対象物、を処理する処理炉の上流側で凝縮物等の付着を防止することができる。
【0012】
本発明に係る処理システムの更なる特徴構成は、前記ガス供給部は、前記ホッパ又は前記ホッパと前記回転弁とを接続する接続部に挿入されるガス吐出口と、当該ガス吐出口を覆う保護カバーとを有しており、前記保護カバーは、前記供給方向に対して前記回転弁に向けて傾斜した傾斜壁を含んでいる点にある。
【0013】
上記構成によれば、ガス吐出口は、保護カバーにより覆われて、落下してくる処理対象物との衝突を免れる。これにより、ガス吐出口への処理対象物の詰まりが防止される。
【0014】
また、上記構成によれば、保護カバーに回転弁に向けて傾斜した傾斜壁が含まれているため、ガス吐出口から吐出する不活性ガスの流れが回転弁に向く。これにより、回転弁に対する凝縮物の付着を確実に防止できる。
【0015】
本発明に係る処理システムの更なる特徴構成は、前記回転弁よりも前記上流側に設けられたスライド弁を更に備え、前記スライド弁は、前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを遮断可能に構成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、必要に応じたスライド弁の開閉により、ホッパ側の空間と回転弁側の空間とを連通させ、また、遮断することができる。例えば、処理システムの処理時(動作時)は、スライド弁を開いてホッパ側の空間から回転弁側の空間への処理対象物の供給(落下)を許容する。一方、処理システムの停止時にはスライド弁を閉じてホッパ側の空間から回転弁側の空間への処理対象物の供給(落下)を禁止する。これにより、回転弁に対する凝縮物の付着を確実に防止できる。
また、本発明に係る処理システムの更なる特徴構成は、前記ガス供給部から供給される不活性ガスの供給速度が前記回転弁の回転速度に比例する点にある
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る処理方法の特徴構成は、ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給して、前記回転弁から前記処理炉に向けて前記処理対象物の隙間を通流させる不活性ガス供給ステップと、を含む点にある。
【0018】
上記構成によれば、上述の処理システムと同様の作用効果を奏することができる。
【0019】
本発明に係る処理方法の特徴構成は、ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、
前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップと
前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを遮断する遮断ステップと、を含み
前記処理ステップを終了する際は、前記遮断ステップの実行を完了した後に前記不活性ガス供給ステップを所定時間継続させる点にある。
【0020】
上記構成によれば、上述の処理システムと同様の作用効果を奏することができる。
さらに上記構成によれば、処理炉での処理を終了する際は、ホッパ側の空間と回転弁側の空間とを遮断し、その後、不活性ガスの供給を所定時間継続する。これにより、ホッパ側の空間から回転弁側の空間への処理対象物の供給が禁止された後も、引き続き不活性ガスが所定時間の間、回転弁側の空間へ供給されるため、当該空間内を不活性ガスで乾燥できると共に、当該空間内への乾留ガスの逆流による凝縮成分の凝縮を防止可能である。したがって、処理炉の上流側における凝縮物等の付着が防止される。
【0021】
本発明に係る処理方法の特徴構成は、ホッパに貯留された凝縮性の成分を含む処理対象物を回転弁で切り出して処理炉に供給する供給ステップと、
前記処理対象物を前記処理炉で処理する処理ステップと、
前記処理炉中のガスを前記回転弁よりも前記処理対象物の供給方向の下流側から排気する排気ステップと、
前記回転弁よりも前記供給方向の上流側から前記回転弁に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップと
前記ホッパ側の空間と前記回転弁側の空間とを連通させる連通ステップと、を含み
前記処理ステップを開始する際は、前記排気ステップ及び前記不活性ガス供給ステップを開始した後、前記連通ステップを実行する点にある。
【0022】
上記構成によれば、上述の処理システムと同様の作用効果を奏することができる。
さらに上記構成によれば、処理炉での処理を開始する際は、乾留ガスの排気と上流側からの回転弁への不活性ガスの供給とを開始した後、ホッパ側の空間と回転弁側の空間とを連通させる。これにより、ホッパ側の空間から回転弁側の空間へ処理対象物を供給する前に、回転弁側の空間内を不活性ガスで乾燥することができるため、処理炉の上流側における凝縮物等の付着が防止される。
【0023】
また、上記構成によれば、ホッパ側の空間から回転弁側の空間へ処理対象物を供給する前に、回転弁側の空間内への乾留ガスの逆流をあらかじめ防止するため、処理炉の上流側における凝縮物等の付着がより確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】処理システムのフロー図
図2】供給機構及びパージ機構の説明図
図3】カバー及びガスノズル配置を説明する斜視図
図4】カバー及びガスノズルの作用の説明図
図5】別実施形態に係る供給機構及びパージ機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る処理システム及び処理方法について説明する。以下では、下水などの汚泥を凝縮性の成分を含む処理対象物として、この処理対象物を処理する処理システムを例示して説明する。なお、凝縮性の成分を含む処理対象物とは、水分等の凝縮性の成分を処理前に含む処理対象物、又は、処理炉の処理によってタール成分等の凝縮性の成分が生じる処理対象物のことである。
【0026】
〔処理システムの全体構成〕
図1には、処理システムAのフロー図を示している。
【0027】
処理システムAは、汚泥を処理する設備として、汚泥を処理する処理炉3(処理ステップの一例)や処理炉3に汚泥を供給する供給機構Fを備え、CPUや記憶装置(図示せず)を備えた中央制御機構である制御部Cにより動作を制御されている。処理炉3では、汚泥が処理され、処理物が得られると共に、温度低下により凝縮するタール成分やチャー、可燃性ガス(例えば、メタン、水素、乃至、一酸化炭素のガス)を含む排ガス(乾留ガス、ガスの一例)が生じる。本実施形態の汚泥は、上流の工程(図示せず)において、あらかじめ所定の範囲の含水率まで調整等された後、供給機構Fに供給される。
【0028】
処理システムAは、処理炉3の排ガスの後処理設備などとして、処理炉3から排ガスを誘引するガス管7を備え、ガス管7上において処理炉3の側から下流に向けて、排ガスの流量を計測する流量計FL、排ガス中の酸素濃度などのガス物性を計測するガス物性計測装置6、排ガスの温度を計測する温度計T、二次燃焼炉94、臭気ガスや煤塵を除去する浄化装置95、及びファンなどの排気装置96を備えている。処理炉3で生じた排ガスは、その含まれる可燃性ガスを二次燃焼炉94で燃焼された後、浄化装置95で浄化されて外部(大気)に放出される(排気ステップの一例)。
【0029】
〔各部の説明〕
〔供給機構〕
供給機構Fは、図1図2に示すように、処理炉3に供給する汚泥を一時貯留するホッパ1、ホッパ1から処理炉3に汚泥を供給する供給機2(供給ステップの一例)、供給機2に窒素などの不活性ガスを供給するパージ機構4(ガス供給部の一例、不活性ガス供給ステップの一例)を含む。以下では、ホッパ1から処理炉3へ汚泥が供給される向きを汚泥の供給方向と定義し、汚泥の供給方向における上流側を単に上流側、その逆を単に下流側と記載する。
【0030】
ホッパ1は、コンベアなどにより上流側から搬送供給される汚泥を処理炉3に供給するために一時的に貯留する、金属製などの貯留容器である。ホッパ1の下部には、供給機2が接続されている。ホッパ1からの自由落下により、上流側のホッパ1から下流側の供給機2へ汚泥が供給される。以下では、鉛直方向下向きを下方、その逆を上方と定義する。また、上下方向は鉛直方向に沿う方向であり、水平方向は、上下方向に直交する方向であると定義する。
【0031】
供給機2は、ホッパ1から汚泥を一定速度(一定の供給速度)で切り出して下流側の処理炉3に供給する供給装置である。供給機2は、回転体の回転駆動により汚泥などの粒状物を定量切り出しする装置である回転弁20と、ホッパ1側の空間と回転弁20側の空間とを遮断可能な仕切弁であるスライド弁21とを含む。ホッパ1と回転弁20との間に位置しホッパ1と回転弁20とを接続する接続部12の側面には、スライド弁21を挿抜するための挿抜口11が形成されている。回転弁20としては、ロータリバルブやスクリューフィーダを用いることができる。回転弁20としてスクリューフィーダを用いる場合は、スクリューは横軸でも縦軸でもよく、また、コイルスクリューやオーガスクリューを用いてもよい。本実施形態では、回転弁20がロータリバルブの場合を説明する。
【0032】
回転弁20は、図2に示すように、弁本体容器25と、弁本体容器25の内部空間に収容された回転軸20a及びブレード状乃至フィン状の弁板20bとを有する。弁本体容器25の上方はホッパ1と接続されている。弁本体容器25の下方は処理炉3と接続されている。弁本体容器25、回転軸20a、及び弁板20bは、金属などで形成されている。
【0033】
回転軸20aは、弁本体容器25に軸支された状態で、例えば水平方向に沿い配設されている。弁板20bは、回転軸20aに対して均等間隔で複数枚(例えば6枚)、板面を回転軸20aの周方向に向けた状態で配設されており、回転軸20aと一体回転する。回転軸20aは、モータ(図示せず)などに回転動力を伝達可能に接続されており、モータに駆動されて例えば時計回りに所定の回転速度で回転することで、弁板20bがホッパ1に貯留された汚泥を一定速度で切り出して、処理炉3に供給する。以下では、これら回転軸20aや弁板20bの動作を、単に、「回転弁20による供給」と記載する。
【0034】
スライド弁21は、ホッパ1と回転弁20との間にある接続部12の挿抜口11にスライド可能に装着された、金属製などの板状の仕切弁である。スライド弁21は、エアシリンダなどのアクチュエータ(図示せず)により、水平方向にスライド駆動され、挿抜口11を介して接続部12の内部空間に挿抜される。
【0035】
スライド弁21は、接続部12の内部空間に挿入されることで、スライド弁21から見て、接続部12の内部空間における上方側の空間(以下、単に上方空間と記載する)と回転弁20側の空間(以下、単に下側空間と記載する)とを遮断可能に構成されている(遮断ステップの一例)。
【0036】
スライド弁21は、接続部12の内部空間から引抜きされることで、上方空間と下側空間とを連通可能に構成されている(連通ステップの一例)。
【0037】
以下では、スライド弁21を接続部12の内部空間に挿入し、上側空間と下側空間とを遮断することを単に「閉じる」などと記載する。また、逆に、スライド弁21を接続部12の内部空間から引抜いて、上側空間と下側空間とを連通させることを単に「開く」などと記載する。
【0038】
供給機構F(供給機2)から処理炉3へ汚泥を供給する際は、スライド弁21を開いて上側空間と下側空間とを連通させた状態で回転弁20を作動させる。供給機2から処理炉3への汚泥の供給停止時は、スライド弁21を閉じて上側空間と下側空間とを遮断した後、回転弁20を所定時間(少なくとも回転弁20内の汚泥が処理炉3へ排出されきるまで)作動させてから停止させる。
【0039】
パージ機構4は、図2に示すように、窒素などの不活性ガスを供給するボンベ及びレギュレータやバルブなどを備え、所定の供給速度で不活性ガスを供給するガス供給源40、供給された不活性ガスを接続部12の内部空間(回転弁20の上流側)に吹き込むガスノズル41、及びガスノズル41の閉塞を防止するカバー42(保護カバーの一例、傾斜壁の一例)を含む。
【0040】
ガスノズル41は、ガス供給源40から供給された不活性ガスを供給するノズル状で、直管状の管である。ガスノズル41は、金属などで形成されている。ガスノズル41は、ノズル孔41a(ガス吐出口の一例)となるガスノズル41の先端が、接続部12の内部空間に配設されており、他端側が、ガス供給源40と接続されている。本実施形態では、ガスノズル41は、接続部12の側面に対して例えば垂直に固定されており、そのノズル孔41aが接続部12の内部空間に向き、かつ、水平方向に沿うように配設されている。
【0041】
図3には、ノズル孔41aに向かって右斜め上からカバー42を見た斜視図を図示している。カバー42は、図3に示すように、ノズル孔41a及び接続部12の内部空間内のガスノズル41を上方側から覆い、汚泥がガスノズル41のノズル孔41a近傍に落下して衝突するなど、汚泥とノズル孔41aとの接触を回避するための邪魔板である。カバー42は、汚泥とノズル孔41aとの接触を回避することで、ノズル孔41aが汚泥で閉塞する(詰まる)不具合を回避できる。
【0042】
カバー42は、上に凸の角張った山形状(三角形状)に形成されており、その梁部42Rを中心として左右一対の板部を有する。カバー42は、接続部12の内側壁面であって、ガスノズル41の上方側の内側壁面に支持されている。カバー42は、当該内側壁面から斜め下方向に向けて延出し、且つ、ガスノズル41のノズル孔41aを上方側から覆う状態で配設されている。カバー42の先端側の端縁42Eは、全体に亘り、ノズル孔41aよりも下方、かつ、ノズル孔41aよりも接続部12の内側壁面から離間して位置している。なお、カバー42は、その全体が、上下方向においてスライド弁21よりも下方に配設されている。カバー42は、金属板などで形成されている。
【0043】
本実施形態では、梁部42Rが、接続部12の内部空間の内側に向かうにつれて下方に傾斜するようになっている。梁部42Rを中心とした左右一対の板部は、梁部42Rから梁部42Rに対する垂線方向に沿い、下方に傾斜している。梁部42Rを中心とした左右一対の板部は、左右対称(面対称)である。
【0044】
図4には、カバー42の作用の説明図を示している。図4中、白抜き矢印はガスの通流方向を示している。ノズル孔41aから水平方向に向けて供給された不活性ガスは、カバー42の下側の面により、流通方向が下向きに転換されて、回転弁20に向けて供給される。
【0045】
汚泥の粒子Pは、カバー42の上側の面に沿い流れ落ちることで、ガスノズル41のノズル孔41aとの接触を避けつつ回転弁20に向けて落下する。これにより、汚泥の粒子Pのノズル孔41a内への侵入が回避され、ノズル孔41aの詰まりが防止される。なお、カバー42の下方に落下した汚泥の粒子Pが衝突により反射してガスノズル41の方向に飛翔した場合も、ノズル孔41aは水平方向に向けられているため、汚泥の粒子Pのノズル孔41a内への侵入が回避され、ノズル孔41aの詰まりが防止される。
【0046】
ガスノズル41から供給される不活性ガスにより、回転弁20は、処理炉3からの排ガスの逆流を防止され、また、当該排ガス中に含まれるタール成分などの凝縮による汚損を免れる。また、汚泥に含まれる水分が回転弁20内で揮発し、当該揮発後に回転弁20の内表面で凝縮して付着の原因となる不具合を防止できる。
【0047】
ガスノズル41から供給する不活性ガスの供給速度(体積流量)は、回転弁20により供給される汚泥の粒子群(粒子層)の空間率の大きさに比例させるとよい。すなわち、単位時間あたりに回転弁20により供給される汚泥の粒子群の容積の内、空間部分の容積の割合に比例した供給速度で不活性ガスを供給するとよい。例えば回転弁20により供給される汚泥の体積流量に、粒子層の空間率と、安全率などの所定の掛け率とを乗じた速度で供給する。具体例では、回転弁20により供給される汚泥の体積流量が10L/minであり、粒子層の空間率が40%であり、安全率などの所定の掛け率が1.2であれば、不活性ガスは、これらを乗じた毎分4.8L/minの速度で供給する。通常、回転弁20により供給される汚泥の粒子群の体積流量は、回転弁20の回転速度に比例するので、ガスノズル41から供給する不活性ガスの供給速度は、回転弁20の回転速度に比例させればよい。
【0048】
〔処理炉〕
処理炉3は、図1に示すように、汚泥等を加熱して処理する加熱炉である。処理炉3は、焼却炉、熱分解炉や炭化炉等が挙げられる。焼却炉としては、汚泥等を火格子の上で混合,撹拌しながら燃焼するストーカ式焼却炉や、流動する砂を用いて汚泥等を燃焼する流動床式焼却炉等が挙げられる。熱分解炉としては、低い空気比の一次空気を用いて汚泥等を熱分解する熱分解炉等が挙げられ、二次燃焼炉94にて燃焼ガスを完全燃焼させる循環式二段燃焼炉や、熱分解炉と二次燃焼炉94とが一体化された気泡式二段燃焼炉等で構成されている。炭化炉としては、回転容器に汚泥等を収容して攪拌しながら、回転容器内に高温のガスや蒸気を流通させて加熱又は回転容器を外部から加熱する加熱装置や、汚泥等を容器に収容してスクリューや撹拌パドルにて汚泥等を撹拌しながら加熱する加熱装置や、容器中に汚泥を層状に収容し、熱風を吹き込んで加熱する流動床式の加熱装置等が挙げられる。
【0049】
処理炉3からは、タール成分などの低温で凝縮する成分を含み、かつ、高温の排ガスが排気される。この排ガスは、ガス管7により処理炉3の外部へ誘引される。これにより、処理炉3から回転弁20への排ガスの逆流が防止される。
【0050】
〔制御部〕
制御部Cは、処理システムAの中央制御機構であり、本実施形態では、供給機構Fの動作制御を行う供給制御機構を含む。制御部Cは、あらかじめ記憶装置に記憶された運転計画や、入力装置(図示せず)により使用者などから動作指示に従って、供給機構Fなどを制御する。
【0051】
〔処理の開始時の制御〕
制御部Cは、処理炉3で汚泥の処理を開始する場合は、排気装置96の動作(処理炉3から排ガスの排気)、処理炉3の加熱、及びパージ機構4による不活性ガスの供給のそれぞれを開始した後、回転軸20a(図2参照)の回転駆動を開始して、スライド弁21を開き、回転弁20による供給を開始する。なお、排気装置96の動作(処理炉3から排ガスの排気)、処理炉3の加熱、及びパージ機構4による不活性ガスの供給のそれぞれの開始タイミングは、同時、もしくはこの順に開始するとよい。
【0052】
本実施形態では、制御部Cは、パージ機構4による不活性ガスの供給を開始した後、更に回転軸20a(図2参照)の回転駆動を開始して所定時間経過(例えば、5分経過)した後、スライド弁21を開く遅延制御を行っている。この遅延制御により、汚泥が回転弁20に落下供給される前に、回転弁20内に残留していた水分を十分に乾燥させて、供給開始後の付着物の成長を防止できる。
【0053】
〔処理中の制御〕
制御部Cは、処理炉3で汚泥の処理中は、排気装置96の動作、処理炉3の加熱、及びパージ機構4による不活性ガスの供給を維持する。供給機構Fは、回転弁20により、汚泥を処理炉3に定量供給する。処理中、制御部Cは処理炉3の内部圧力を、正圧にならないように負圧に制御する。
【0054】
〔処理の終了時の制御〕
制御部Cは、処理炉3で汚泥の処理を終了もしくは停止する場合は、まず、スライド弁21を閉じ、供給機構Fからの処理炉3への汚泥の供給を停止する。制御部Cは、スライド弁21を閉じた後も、所定時間経過するまでの間、パージ機構4による不活性ガスの供給を継続し、その後、パージ機構4による不活性ガスの供給を終了する。スライド弁21を閉じた後も不活性ガスの供給を継続することで、処理の終了後における回転弁20内の残留水分を十分に乾燥させることができる。これにより、処理の再開時の付着物の成長を防止できる。なお、この場合の所定時間との概念には、あらかじめ定めた固定の時間(例えば、10分)である場合、例えば処理炉3の炉内温度が所定の温度以下に下がるまでの変動する時間である場合、あるいは、処理炉3の平均滞留時間や処理炉3から全量排出するために要する時間に対応する時間に所定の係数を乗じた時間である場合を含む。
【0055】
本実施形態では、制御部Cは処理炉3で汚泥の処理を停止(終了)する場合は、まず、スライド弁21を閉じる。スライド弁21を閉じた後も、制御部Cは、回転弁20の動作、パージ機構4による不活性ガスの供給、及び処理炉3の運転は継続する。処理炉3の内部の汚泥が十分に処理された後、制御部Cは処理炉3の加熱を停止する。処理物の大部分が処理炉3から排出された後、処理炉3の炉内温度が所定の温度以下(例えば、摂氏200度以下)になると、制御部Cは、回転弁20の動作、パージ機構4による不活性ガスの供給、及び排気装置96の動作を停止(終了)する。パージ機構4による不活性ガスの供給を停止する際まで回転弁20の動作を維持することで、回転弁20の一部に凝縮性成分が凝縮して付着することを回避できる。
【0056】
以上のようにして、処理炉の上流側で凝縮物等の付着を防止する処理システム及び処理方法を提供できる。
【0057】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、供給機2がスライド弁21を有していたが、スライド弁21は省略可能である。
【0058】
(2)上記実施形態では、パージ機構4がガスノズル41のノズル孔41aを上方側から覆うカバー42を含む場合を説明したが、カバー42は省略可能である。
【0059】
(3)上記実施形態では、カバー42は上に凸の角張った山形状に形成されており、その梁部42Rが、接続部12の内部空間の内側に向かうにつれて下方に傾斜するようになっている場合を例示して説明した。しかし、カバー42は上に凸の形状に限られない。また、カバー42は三角形状に限られない。カバー42は、上に凸の形状とする場合に代えて、接続部12の内側壁面から斜め下方向に向けて延出し、且つ、ガスノズル41のノズル孔41aを上方側から覆う状態で配設された平板とする場合もある。また、カバー42は、上に凸の三角形状とする場合に代えて、滑らかに湾曲された上に凸の山形状とする場合もある。
【0060】
(4)上記実施形態では、ガスノズル41が直管状の管である場合を例示して説明したが、ガスノズル41は直管状の管に限られない。ガスノズル41は、接続部12の内部空間内で下方に向けて屈曲し、ノズル孔41aが下向きになるL字形状の管でもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、不活性なガスとして、窒素を例示した。しかし、不活性なガスとしては、窒素に代えて、アルゴンガスや二酸化炭素のような酸化反応を生じないガスや、酸化反応のおそれがきわめて低い低酸素濃度ガス(例えば、二次燃焼炉94での二次燃焼後の排ガスや、焼却炉や発電所などの他の産業設備の排ガス)を用いてもよい。
(6)上述した実施形態では、凝縮性の成分を含む処理対象物として汚泥を例示した。しかし、凝縮性の成分を含む処理対象物としては、食品廃棄物等のバイオマスであっても良く、回転弁20に対して付着性のある処理対象物であれば特に限定されない。
【0062】
(7)上記実施形態では、図2に示すように、スライド弁21の挿抜口11を、ホッパ1と回転弁20との間である接続部12の側面に形成し、スライド弁21は接続部12の内部空間に挿抜されるようにした。これに代えて、図5に示すように、処理対象物を収容する空間がホッパ1内に確保できるのであれば、スライド弁21の挿抜口11を、ホッパ1の本体側面に形成し、スライド弁21はホッパ1の内部空間に挿抜されるように構成してもよい。また、上記実施形態では、図2に示すように、ガスノズル41の挿入位置を、ホッパ1と回転弁20との間である接続部12とし、ガスノズル41のノズル孔41aを覆うカバー42の取付け位置を、接続部12の内側壁面とした。これに代えて、図5に示すように、処理対象物を収容する空間がホッパ1内に確保できるのであれば、ガスノズル41の挿入位置をホッパ1の本体側面とし、ガスノズル41のノズル孔41aを覆うカバー42の取付け位置をホッパ1の内側壁面としてもよい。
【0063】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、処理システム及び処理方法に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 :ホッパ
3 :処理炉
4 :パージ機構(ガス供給部)
12 :接続部
20 :回転弁
21 :スライド弁
41a :ノズル孔(ガス吐出口)
42 :カバー(保護カバー、傾斜壁)
96 :排気装置
A :処理システム
図1
図2
図3
図4
図5