(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】副室点火装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241128BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241128BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20241128BHJP
H01T 13/32 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 E
H01T21/02
H01T13/32
(21)【出願番号】P 2020196000
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 典晃
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-117212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00-3/12
F02P 7/00-17/12
H01T 7/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端(11)が副室(41)内に位置する中心電極(10)と、該中心電極を内側に保持するハウジング(30)と、該ハウジングの先端(31)に設けられて上記副室を内側に形成する副室壁(40)とを有し、上記副室が主燃焼室内に配置されるように構成された副室点火装置(1)の製造方法であって、
上記中心電極を上記ハウジングに保持させた状態で、上記中心電極の先端が予め設定された上記副室内の狙い位置に位置するように、上記ハウジングに対する上記中心電極の先端の位置の補正を行う位置補正工程を含
み、
上記位置補正工程において、上記副室壁を上記ハウジングに取り付ける前に、上記ハウジングの先端から上記ハウジング内に位置補正治具(50)を挿入して、該位置補正治具によって上記中心電極の先端を上記狙い位置に向けて押圧して上記補正を行う、副室点火装置の製造方法。
【請求項2】
上記副室壁は円筒状をなす側壁部(42)を有しており、上記狙い位置は上記側壁部の径方向における中心線(45)上に位置している、請求項
1に記載の副室点火装置の製造方法。
【請求項3】
上記ハウジングの先端は円筒状をなしており、
上記位置補正治具は円筒状をなしているとともに、上記ハウジングの先端の内側に挿入可能に構成されており、上記位置補正治具の内周面は上記ハウジングの先端に挿入する際の挿入方向における前方から後方に向かうにつれて同軸状に縮径して上記中心線に対して傾斜した傾斜面を含んでおり、
上記位置補正工程において、上記位置補正治具を上記ハウジングの先端に挿入して、上記中心線に平行に移動させることにより、上記位置補正治具の上記内周面を上記中心電極の先端に摺接させて上記補正を行う、請求項
2に記載の副室点火装置の製造方法。
【請求項4】
上記位置補正治具の外径は、上記ハウジングの先端の内径よりも小さくなっており、
上記位置補正工程において、上記ハウジングの先端に上記位置補正治具を挿入したときに形成される上記ハウジングの先端の内周面と上記位置補正治具の外周面との間隙が大きい側に向けて上記位置補正治具を移動させる、請求項
3に記載の副室点火装置の製造方法。
【請求項5】
上記位置補正工程において、上記位置補正治具を上記間隙が大きい側に移動させる際、上記位置補正治具の移動方向における前側の間隙が後側の間隙よりも小さくなるまで上記位置補正治具を移動させる、請求項
4に記載の副室点火装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副室点火装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等に用いられる点火装置として、点火プラグの先端に副室を有する副室点火装置がある。副室点火装置では、副室内で燃料ガスに点火した後、副室壁に設けられた噴孔を介して副室から主燃焼室に火炎を噴出させて、主燃焼室の燃料ガスに着火するように構成されている。例えば、特許文献1には、中心電極を保持するハウジングの先端に副室を内側に形成するチャンバーカップを設けた構成が開示されている。当該構成では、中心電極の先端がハウジング先端から突出させるとともに、中心電極の先端との間に所定のギャップが形成されるようにハウジングの先端から接地電極を延設した後、チャンバーカップをハウジング先端に溶接して、ハウジング先端に副室を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
副室点火装置が設けられた内燃機関において、燃費を向上するには副室内で安定した火炎核を形成することが要求される。かかる要求を満たすためには、接地電極の先端と中心電極の先端との間に形成される放電ギャップを一定の大きさに保つ必要がある。しかしながら、中心電極は基端側で固定されるため、中心電極自身の歪みや組み付け時に中心電極に傾きが生じた場合には中心電極の先端の位置が狙い位置からずれた位置となる場合がある。かかる場合は、放電ギャップの大きさにバラツキが生じるため、安定した火炎核を形成することができず、初期燃焼期間が長くなって燃費が悪化する。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、放電ギャップを所定の大きさにして燃費の改善を図ることができる副室点火装置の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、先端(11)が副室(41)内に位置する中心電極(10)と、該中心電極を内側に保持するハウジング(30)と、該ハウジングの先端(31)に設けられて上記副室を内側に形成する副室壁(40)とを有し、上記副室が主燃焼室内に配置されるように構成された副室点火装置(1)の製造方法であって、
上記中心電極を上記ハウジングに保持させた状態で、上記中心電極の先端が予め設定された上記副室内の狙い位置に位置するように、上記ハウジングに対する上記中心電極の先端の位置の補正を行う位置補正工程を含み、
上記位置補正工程において、上記副室壁を上記ハウジングに取り付ける前に、上記ハウジングの先端から上記ハウジング内に位置補正治具(50)を挿入して、該位置補正治具によって上記中心電極の先端を上記狙い位置に向けて押圧して上記補正を行う、副室点火装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0007】
上記副室点火装置の製造方法では、上記位置補正工程により、中心電極をハウジングに保持させた状態で、ハウジングに対する中心電極の先端の位置を補正して狙い位置に位置させて、放電ギャップを所定の大きさとすることができる。これにより、安定した火炎核を形成することができ、初期燃焼期間が短くなって燃費を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、放電ギャップを所定の大きさにして燃費の改善を図ることができる副室点火装置の製造方法を提供することができる。
【0009】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、副室点火装置の縦断面図。
【
図3】実施形態1における、副室点火装置の製造方法を示す概念図。
【
図4】実施形態1における、副室点火装置の製造方法を示す他の概念図。
【
図5】実施形態1における、副室点火装置の製造方法を示す他の概念図。
【
図6】実施形態2における、副室点火装置の製造方法を示す概念図。
【
図7】実施形態2における、副室点火装置の製造方法を示す他の概念図。
【
図8】変形形態1における、(a)副室点火装置の縦断面図、(b)(a)におけるVIIIb-VIIIb位置断面図。
【
図9】変形形態2における、(a)副室点火装置の縦断面図、(b)(a)におけるIXb-IXb位置断面図。
【
図10】変形形態3における、(a)副室点火装置の縦断面図、(b)(a)におけるXb-Xb位置断面図。
【
図11】変形形態4における、(a)副室点火装置の縦断面図、(b)(a)におけるXIb-XIb位置断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
上記副室点火装置1の製造方法の実施形態について、
図1~
図5を用いて説明する。
本実施形態1において、副室点火装置1は、中心電極10、ハウジング30、副室壁40を有する。そして、中心電極10の先端11は、副室41内に位置している。ハウジング30は、中心電極10を内側に保持する。副室壁40は、ハウジング30の先端31に設けられて副室41を内側に形成する。当該副室41は主燃焼室101内に配置されるように構成されている。
そして、本実施形態1の副室点火装置1の製造方法は、中心電極10をハウジング30に保持させた状態で、中心電極10の先端11が予め設定された副室41内の狙い位置に位置するように、ハウジング30に対する中心電極10の先端11の位置の補正を行う位置補正工程を含む。
【0012】
以下、本実施形態の上記副室点火装置1の製造方法について、詳述する。
図1に示すように、副室点火装置1は、副室41を有する。副室41は、副室壁40により形成されている。副室壁40は、ハウジング30の先端31に設けられている。副室壁40は円筒状の側壁部42と略円形状の底部43とからなり、内側に区画された空間部が副室41となる。副室壁40には、複数の噴孔44は形成されている。噴孔44は、それぞれ副室壁40を貫通しており、副室41と内燃機関の主燃焼室101とを連通している。本実施形態では、噴孔44は4つ設けられており、副室41の中心線45を中心に同心円上に位置している。副室41の中心線45は、副室壁40の径方向Xの中心を通る仮想直線である。副室壁40の材質は特に限定されず、所望の材質であってよい。
【0013】
図1に示すように、ハウジング30は円筒状をなしている。ハウジング30の先端31には上述の副室壁40が設けられいる。ハウジング30の先端側Y1の外周面にはねじ溝が形成されており、内燃機関のシリンダヘッドに取り付け可能に構成されている。ハウジング30の基端側Y2には、図示しない接続端子が設けられている。
【0014】
図1に示すように、ハウジング30の内側に中心電極10が保持されている。中心電極10は棒状をなしており、先端側Y1の端部である先端11が副室41内に位置している。中心電極10の先端11には、接地電極20と対向する位置に貴金属からなるチップ15が設けられている。
【0015】
図1に示すように、接地電極20は棒状をなしている。本実施形態1では、接地電極20は円柱状であって、副室壁40の底部43から基端側Y2に向けて立設されている。接地電極20と中心電極10の先端11のチップ15とは互いに径方向Xに対向して所定距離で離間しており、両者の間が放電ギャップGとなっている。なお、図示しないが、接地電極20において中心電極10の先端11に対向する位置に貴金属からなるチップを設けてもよい。
【0016】
上記副室点火装置1の製造方法では、まず、
図3に示すように、中心電極10の先端11の位置が
図1に示す副室41に位置するように、ハウジング30に中心電極10を保持させた状態とする。なお、中心電極10の保持は、中心電極10の基端12側において、図示しない絶縁碍子を介してハウジング30によりカシメ固定して行うことができる。
【0017】
ハウジング30に中心電極10を保持させた直後の状態では、
図3において符号10a、10bで示すように、中心電極10の歪みや傾き、電極加工時のアンバランスなどによって中心電極10の先端11の位置である先端位置が狙い位置からずれている場合がある。なお、狙い位置は、予め設定された副室41内の位置であって、
図1及び
図2に示す中心電極10の先端11と接地電極20との間の距離、すなわち放電ギャップの大きさGが、予め設定された大きさとなる位置である。
【0018】
その後、
図3、
図4に示すように、中心電極10の先端11が狙い位置に位置するように、先端11の位置の補正をする位置補正工程を行う。本実施形態1における位置補正工程では、
図3、
図4に示す位置補正治具50を用いる。位置補正治具50は、ハウジング30の先端31からハウジング30の内側に挿入可能となっており、挿入方向Pに平行に貫通した貫通部51を有する円筒状をなしている。
図3に示すように、本実施形態1では、位置補正治具50の外周面56の径である外径D2は、ハウジング30の内周面32の径である内径D1と略同一となっている。位置補正治具50の挿入方向Pの前方、すなわちY2側に位置する上側開口部52は、位置補正治具50の外径の中心を通る中心線55を中心とする円形であって、反対側であるY1側に位置する下側開口部53よりも広く開口している。
【0019】
上側開口部52の開口径D0は、限定されないが、想定される中心電極10の傾きや歪みの大きさ、中心電極10の長さを考慮して決定することができる。例えば、
図3では、が最も傾いた状態の中心電極10を符号10a、10bで示しており、中心電極10の先端11が狙い位置にある場合の中心線13に対して最も傾いた状態の中心電極10a、10bの中心線13a、13bと中心線13とのなす角である最大ずれ角θと、中心電極10の軸方向の長さLとを用いて、開口径D0は下記の式(1)で表すことができる。
D0=2Ltan(3σ(θ)) ・・・(1)
【0020】
図3に示すように、貫通部51を形成する位置補正治具50の内周面54は、上側開口部52から下側開口部53に向かうにつれて、すなわち、挿入方向Pの前方から後方に向かうにつれて、同軸状に縮径して中心線55(45)に対して傾斜した傾斜面を含んでいる。内周面54の形状は限定されないが、上側開口部52側に広がり下側開口部53が狭くなったラッパ状とすることができる。例えば、内周面54は、中心線55を通る断面においてクロソイド曲線又はカテナリー曲線に沿う傾斜面としたり、円錐の周面に沿った傾斜面としたり、これらを組み合わせた形状とすることができ、一部に円筒面を含んでいてもよい。本実施形態1では、内周面54のうち、上側開口部52側の領域の上側内周面541はクロソイド曲線に沿った傾斜面となっており、下側開口部53側の領域の下側内周面542は中心線55を軸線とする円筒面となっている。
【0021】
そして、
図3に示す挿入方向Pに向けて位置補正治具50をハウジング30の内側に挿入し、位置補正治具50を中心線45に平行に移動する。これにより、
図4に示すように、中心電極10が中心線45に対して傾いていた場合、中心電極10の先端11が位置補正治具50の内周面54に摺接して、位置補正治具50の挿入に伴って、中心電極10の先端11が狙い位置に向けて押圧される。さらに、
図5に示すように、位置補正治具50をハウジング30に所定深さまで挿入することにより、中心電極10の先端11が狙い位置に移動することとなる。これにより、中心電極10の先端位置が補正され、位置補正工程を終了する。
【0022】
本実施形態1では、
図3に示すように、内周面54には下側開口部53側に切り欠き57が形成されている。切り欠き57には、
図5に示すように、チップ15を中心電極10の先端11に溶接するための溶接加工治具60が挿入可能となっている。そして、位置補正工程の後、溶接加工治具60により中心電極10の先端11にチップ15を溶接して取り付ける。その後、位置補正治具50及び溶接加工治具60をハウジング30の先端31から抜き取り、
図1に示すように、予め接地電極20が底部43の内側面に設けられた副室壁40をハウジング30の先端31に取り付ける。これにより、副室点火装置1が完成する。
【0023】
次に、本実施形態の副室点火装置1の製造方法における作用効果について、詳述する。
本実施形態1の副室点火装置1の製造方法では、位置補正工程により、中心電極10をハウジング30に保持させた状態で、中心電極10の先端11の位置を補正して先端11を狙い位置に位置させて、放電ギャップを所定の大きさとすることができる。これにより、安定した火炎核を形成することができ、初期燃焼期間が短くなって燃費を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態1では、位置補正工程において、副室壁40をハウジング30に取り付ける前に、ハウジング30の先端31からハウジング30内に位置補正治具50を挿入して、位置補正治具50によって中心電極10の先端11を狙い位置に向けて押圧して先端11の位置の補正を行う。これにより、当該補正の際に副室壁40が干渉することがないため、中心電極10の先端11を狙い位置に位置させやすくなる。
【0025】
また、本実施形態1では、副室壁40は円筒状をなす側壁部42を有しており、狙い位置は側壁部42の径方向Xにおける中心線45上に位置している。これにより、側壁部42の中心線45上に中心電極10の先端11が位置することとなり、放電ギャップを所定の大きさとすることができる。
【0026】
そして、本実施形態1では、内周面54は上側開口部52側に広がるとともに下側開口部53が狭くなったラッパ状となっている。これにより、位置補正工程において、中心電極10の先端11が内周面54に沿って滑らかに移動させることができる。そのため、中心電極10を緩やかに変形させることができ、当該変形に伴って中心電極10や図示しない絶縁碍子が破損することが抑制される。
【0027】
また、本実施形態1では、位置補正治具50は溶接加工治具60が挿入される切り欠き57を有する。これにより、位置補正治具50により中心電極10の先端11の位置を補正している状態で、先端11にチップ15を取り付けることができるため、チップ15の取り付け位置の精度を高めて、放電ギャップの大きさGを所定の大きさに調整しやすい。
【0028】
また、本実施形態1では、ハウジング30の先端31は円筒状をなしている。そして、位置補正治具50は円筒状をなしているとともに、位置補正治具50はハウジング30の先端31の内側に挿入可能となっており、位置補正治具50の内周面54はハウジング30の先端31に挿入する際の挿入方向Pにおける前方から後方に向かうにつれて同軸状に縮径して中心線55に対して傾斜した傾斜面を含んでいる。そして、位置補正工程において、位置補正治具50をハウジング30の先端31に挿入して、中心線55の方向に移動させることにより、内周面54を中心電極10の先端11に摺接させて、先端11の位置の補正を行う。これにより、位置補正治具50をハウジング30の先端31の内側に挿入することで、中心電極10の先端11の位置の補正を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0029】
また、本実施形態1では、接地電極20が副室壁40に設けられることにより、接地電極20をハウジング30の先端31から突出させた場合に比べて、中心電極10と副室壁40との距離を短くすることができる。これにより、副室壁40の容積を小さくすることができる。例えば、接地電極20をハウジング30の先端31から延設し、中心電極10及び接地電極20を設けた後に副室壁をハウジング30の先端31に取り付けることとした場合には、副室壁の容積が大きくなるため、熱引けが大きくなり、圧力低下により噴孔44からの火炎噴射力が低下するなどの問題が生じる恐れがある。これに対して、本実施形態1では、上述のように副室壁40の容積を小さくすることができるため、熱引けが大きくなることを抑制して、噴孔44からの火炎噴射力の低下を抑制できる。
【0030】
以上のごとく、本実施態様1によれば、放電ギャップを所定の大きさにして燃費の改善を図ることができる副室点火装置1の製造方法を提供することができる。
【0031】
(実施形態2)
本実施形態2の副室点火装置1の製造方法では、位置補正工程において、
図6に示すようにハウジング30の先端31の内径D1よりも小さい外径D2を有する位置補正治具50を用いる。内径D1と外径D2との差は限定されないが、本実施形態2では、0.2mm~0.5mmの範囲内となるように設定されている。その他の構成要素は実施形態1の場合と同様であり、本実施形態2においても実施形態1の場合と同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0032】
本実施形態2における位置補正工程では、
図6に示すように、位置補正治具50の挿入方向Pにハウジング30に挿入した後、位置補正治具50の径方向Xの固定を解除し、位置補正治具50が径方向Xに自由に移動可能にする。これにより、中心電極10の歪みや傾き、電極加工時のアンバランスが大きい場合は狙い位置に対するズレが大きくなり、位置補正治具50を適用したことによる中心電極10の弾性変形に基づく復元力によって、位置補正治具50は径方向Xにおける第1方向X1に押圧されて移動することとなる。そのため、位置補正治具50の外周面56とハウジング30の内周面32との間の隙間Qは、第1方向X1と反対側の第2方向X2の端部において最も大きくなる。その後、位置補正治具50を、第1方向X1への移動量よりも多く第2方向X2に移動させて、移動方向における前側間隙が後側間隙よりも小さくなるようにする。これにより、位置補正治具50を取り外し、中心電極10の先端11が狙い位置に位置させ、位置補正工程を終了する。その後、実施形態1の場合と同様に、中心電極10の先端11のチップ15を溶接固定し、ハウジング30の先端31に副室壁40を取り付ける。
【0033】
本実施形態2の副室点火装置1の製造方法では、位置補正工程において、ハウジング30の先端31に位置補正治具50を挿入したときに形成されるハウジング30の先端31の内周面32と位置補正治具50の外周面56との間隙Qが大きい側である第2方向X2に向けて位置補正治具50を移動させている。これにより、中心電極10の歪みや傾きが大きい場合においても中心電極10の先端11を狙い位置に高精度に位置させることができる。
【0034】
また、本実施形態2では、位置補正工程において、位置補正治具50を間隙Qが大きい側に移動させる際、位置補正治具50の移動方向X1における前側の間隙が後側の間隙よりも小さくなるまで位置補正治具50を移動させる。これにより、中心電極10の歪みや傾きが大きいために中心電極10の先端位置の補正後に位置補正治具50を中心電極10から取り外すと弾性変形に基づく復元力により中心電極10の先端位置が若干戻ることを考慮して、中心電極10の先端位置の補正をすることができる。そのため、中心電極10の先端11を狙い位置に高精度に位置させることができる。
【0035】
なお、本実施形態2の副室点火装置1の製造方法によっても、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0036】
上記実施形態1では、
図2に示すように、軸方向Yに直交する断面における中心電極10の形状は円形となっているが、これに替えて、
図8(a)及び
図8(b)に示す変形形態1のように、軸方向Yに直交する断面における中心電極10の形状を、四角形としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態1では、
図2に示すように、軸方向Yに直交する断面における接地電極20の形状は長方形となっているが、これに替えて、
図9(a)及び
図9(b)に示す変形形態2のように、軸方向Yに直交する断面における接地電極20の形状を、中心電極10側が狭くなる台形形状としてもよい。
また、
図10(a)及び
図10(b)に示す変形形態3のように、接地電極20の形状を、中心線13を軸線とする円筒形としてもよい。
また、
図11(a)及び
図11(b)に示す変形形態4のように、L字状の接地電極20をハウジング30の先端31に設けて、当該接地電極20の先端21を中心電極10の先端11に対向させるようにして、接地電極20を片持ち梁の状態としてもよい。なお、変形形態4の場合、位置補正工程の後に接地電極20をハウジング30の先端31に設けた後、副室壁40を取り付けることができる。
【0038】
本発明は上記各実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…副室点火装置、10…中心電極、11…中心電極の先端、12…中心電極の基端、13…中心電極の中心線、20…接地電極、21…接地電極の先端、30…ハウジング、31…ハウジングの先端、32…ハウジングの内周面、40…副室壁、41…副室、42…側壁部、43…底部、44…噴孔、45…副室壁の中心線、50…位置補正治具、51…貫通部、52…上側開口部、53…下側開口部、54…位置補正治具の内周面、55…位置補正治具の中心線、56…位置補正治具の外周面、60…溶接加工治具