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特許7594896生体信号処理装置およびその制御方法、ならびにコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】生体信号処理装置およびその制御方法、ならびにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20241128BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20241128BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/346
A61B5/00 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020201974
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089525
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100161399
【弁理士】
【氏名又は名称】大戸 隆広
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】薬師川 聡子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亨
(72)【発明者】
【氏名】後藤 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】津川 英範
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046477(JP,A)
【文献】特開2015-181841(JP,A)
【文献】特開2020-119324(JP,A)
【文献】特開2017-023541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0024213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録された計測データの確認および編集を行うための波形編集機能を提供する生体信号処理装置であって、
前記波形編集機能は、前記計測データに1つ以上設定可能な時間区間の調整のための動作モードを有し、
前記波形編集機能を用いてユーザが実行すべき、前記時間区間の調整を行う工程を含む複数の工程に対応した複数のタスク項目を有するタスクリストに従って波形編集動作を制御する制御手段を有し、
前記複数のタスク項目のそれぞれには、該タスク項目を実行する際の前記計測データの表示に関する設定を含む前記波形編集機能の設定を指定可能であり、
前記制御手段は、前記タスクリストに含まれる前記複数のタスク項目のうち、実行するタスク項目に指定された設定を前記波形編集機能に自動設定する、
ことを特徴とする生体信号処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記タスクリストに含まれる前記タスク項目を一覧表示することによって前記タスクリストをユーザに提示し、
前記タスク項目のそれぞれは、ユーザがタスク項目の実行を完了したことを前記制御手段に通知するための構成を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一覧表示された前記タスク項目のうち、ユーザから完了の通知を受けたタスク項目と、ユーザから完了の通知を受けていないタスク項目とを視覚的に区別できるように表示することを特徴とする請求項2に記載の生体信号処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記計測データを時間軸に沿って数値または波形として表示する編集領域を提示し、
前記時間区間の調整のための動作モードが設定されている場合、前記編集領域に対するユーザ操作を、前記時間区間を調整するための操作として認識する、
ことを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
【請求項5】
前記ユーザ操作が、開始位置と、前記開始位置と異なる終了位置とを有し、
前記制御手段は、前記開始位置および前記終了位置が、前記編集領域における前記時間区間内であるか前記時間区間外であるかに応じて、異なる動作を行う、
ことを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記開始位置と前記終了位置がいずれも前記時間区間外である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記開始位置と前記終了位置との間に前記時間区間が存在しなければ、前記開始位置と前記終了位置に対応する期間を前記時間区間として設定する、
ことを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記開始位置と前記終了位置がいずれも前記時間区間外である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記開始位置と前記終了位置との間に前記時間区間が1つ存在すれば、該時間区間の期間を、前記開始位置と前記終了位置に対応する期間に変更する、
ことを特徴とする請求項またはに記載の生体信号処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記開始位置および前記終了位置の一方が前記時間区間外であり、他方が前記時間区間内である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記他方が位置する時間区間の開始時刻もしくは終了時刻のうち、前記開始位置と前記終了位置との間に存在する時刻を、前記終了位置に対応する時刻に変更する、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記開始位置が第1の時間区間内であり、前記終了位置が第2の時間区間内である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記第1の時間区間と前記第2の時間区間との間を新たに前記時間区間に設定することにより、前記第1の時間区間と前記第2の時間区間とを含んだ1つの時間区間とする、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記開始位置と前記終了位置がいずれも前記時間区間外である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記開始位置と前記終了位置との間に複数の前記時間区間が存在すれば、該複数の前記時間区間を、前記開始位置と前記終了位置とに対応する1つの時間区間に変更する、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記開始位置が第1の前記時間区間内であり、前記終了位置が前記時間区間外である前記ユーザ操作を検出した場合、
前記開始位置と前記終了位置との間に第2の前記時間区間が存在すれば、前記第1の前記時間区間と前記第2の前記時間区間との間を前記時間区間に設定するとともに、前記第2の前記時間区間の開始時刻と終了時刻のうち前記終了位置に対応する時刻に近い方を、前記終了位置に対応する時刻に変更することにより、前記第1の前記時間区間および前記第2の前記時間区間を、1つの前記時間区間に変更する、
ことを特徴とする請求項から10のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項12】
前記ユーザ操作がドラッグ操作であることを特徴とする請求項から11のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項13】
前記制御手段は、
前記時間区間内の位置において、位置の移動を伴わないユーザ操作を検出した場合、該時間区間の設定を解除する、
ことを特徴とする請求項から12のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項14】
前記位置の移動を伴わないユーザ操作がダブルクリックもしくはトリプルクリック操作であることを特徴とする請求項13に記載の生体信号処理装置。
【請求項15】
前記時間区間が、データ削除区間またはアーチファクト区間であることを特徴とする請求項から14のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項16】
記録された計測データの確認および編集を行うための波形編集機能を提供する生体信号処理装置の制御方法であって、
前記波形編集機能は、前記計測データに1つ以上設定可能な時間区間の調整のための動作モードを有し、
前記波形編集機能を用いてユーザが実行すべき、前記時間区間の調整を行う工程を含む複数の工程に対応した複数のタスク項目を有するタスクリストに従って波形編集動作を制御する制御ステップ、を有し、
前記複数のタスク項目のそれぞれには、該タスク項目を実行する際の前記計測データの表示に関する設定を含む前記波形編集機能の設定を指定可能であり、
前記制御ステップは、前記タスクリストに含まれる前記複数のタスク項目のうち、実行するタスク項目に指定された設定を前記波形編集機能に自動設定する、
ことを特徴とする生体信号処理装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1から15のいずれか1項に記載の生体信号処理装置が有する制御手段として機能させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号処理装置およびその制御方法に関し、特には計測された生体信号の編集機能を提供する生体信号処理装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間心電図計測やPSG(polysomnography)検査では、被検者の日常生活中や睡眠中に生体情報を長期間継続して計測、記録する。長時間にわたって記録された生体情報を取り扱う生体情報処理装置には、記録された生体情報のうち信頼度の低い計測区間や不要な計測区間を特定したり、自動解析結果を修正したりするための編集機能が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4824350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)に対する社会的な関心の高まりから、広くPSG検査が行われるようになってきている。また、ホルタ心電計もデジタル化ならびに小型化が進み、以前よりも手軽に計測できるようになっている。その結果、波形編集に携わる医療関係者は増加しており、検査に対する知見や波形編集の習熟度の個人差もまた増大している。一方で、波形編集機能を用いて具体的にどのような編集を行うかは基本的に個人の裁量に任されており、個人差を抑制するような機能は提供されていなかった。
【0005】
本発明はその一態様において、作業者による波形編集内容のばらつきを抑制することが可能な生体情報処理装置およびその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的は、記録された計測データの確認および編集を行うための波形編集機能を提供する生体信号処理装置であって、波形編集機能は、計測データに1つ以上設定可能な時間区間の調整のための動作モードを有し、波形編集機能を用いてユーザが実行すべき、時間区間の調整を行う工程を含む複数の工程に対応した複数のタスク項目を有するタスクリストに従って波形編集動作を制御する制御手段を有し、複数のタスク項目のそれぞれには、タスク項目を実行する際の計測データの表示に関する設定を含む波形編集機能の設定を指定可能であり、制御手段は、タスクリストに含まれる複数のタスク項目のうち、実行するタスク項目に指定された設定を波形編集機能に自動設定する、ことを特徴とする生体信号処理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者による波形編集内容のばらつきを抑制することが可能な生体情報処理装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る生体信号処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る生体信号処理装置が提供する波形編集画面の例を示す図である。
図3図2のリスト領域201の拡大図である。
図4】実施形態に係る生体信号処理装置が提供するタスク編集画面の例を示す図である。
図5図2の波形領域203の拡大図である。
図6】実施形態に係る波形編集動作に関するフローチャートである。
図7】実施形態に係る波形編集動作に関する模式図である。
図8】実施形態に係る波形編集動作に関する模式図である。
図9】実施形態に係るタスクリストに従った波形編集の制御動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明をいかなる意味においても限定しない。また、実施形態で説明される構成の全てが本発明に必須とは限らない。また、明らかに不可能である場合や、それが否定されている場合を除き、異なる実施形態に含まれる構成を組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。また、重複した説明を省略するために、添付図面においては全体を通じて同一もしくは同様の構成要素には同一の参照番号を付してある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る生体信号処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。生体信号処理装置100は、例えばプログラマブルプロセッサにより、後述する動作を実現するアプリケーションプログラムを実行することによって実現することができる。したがって、生体信号処理装置は、パーソナルコンピュータなど、プログラマブルプロセッサを有する電子機器一般で実施することができる。
【0011】
なお、以下では生体信号処理装置100が簡易PSG検査で計測された生体信号を取り扱うものとするが、本発明は編集対象の生体信号の種類には依存しない。したがって、(簡易検査でない)PSG検査や、ホルタ心電計で計測された生体信号など、他の任意の計測で得られた生体信号を取り扱う場合にも同様に適用可能である。
【0012】
制御部110は、プログラマブルプロセッサ、ROM、RAMを有し、ROMや記録部130に記憶されているプログラムをRAMに読み込んで実行することにより、後述する波形編集処理を含む、生体信号処理装置100の処理を実現する。また、制御部110は操作部160の操作に応じた処理を実行することにより、ユーザによる生体信号処理装置100の対話的な操作を可能にする。
【0013】
外部I/F120は生体信号処理装置100が外部装置と有線および/または無線通信するためのインタフェースである。生体信号処理装置100は、外部I/F120を通じて外部機器から処理対象の計測データを取得することができる。外部I/F120は例えば、USB、無線LAN、有線LAN、bluetooth(登録商標)など、機器間の通信に関する規格の1つ以上に準じた構成を有することができる。
【0014】
記録部130は処理対象の計測データなどを保持するための装置であり、SSD、HDDなどの内蔵記憶装置、および/またはUSBメモリ、メモリカードなどの着脱可能な記憶装置であってよい。制御部110は、記録部130にデータを記録したり、記録部130に記録されたデータを読み出したりする。
【0015】
表示部150は液晶表示装置(LCD)などの表示装置であり、生体信号処理装置100のユーザインタフェース(GUI)、計測データや被検者情報などを表示する。表示部150は外部表示装置であってもよい。
【0016】
操作部160はキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、スイッチ、ボタンなど、ユーザが生体信号処理装置100に指示を入力するための入力デバイスの総称である。表示部150がタッチディスプレイの場合、表示部150に表示されたソフトウェアキーは操作部160の一部を構成する。
【0017】
本明細書において、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)画面に含まれるボタン、スイッチ、メニュー、テキストボックスなどに対する操作は、各入力デバイスの操作と予め対応付けられている。この対応付けは、特段の限定が無い限り、一般的なオペレーティングシステムにおいて採用されている対応付けと同様なものであってよい。
【0018】
図2は、生体信号処理装置100が波形編集機能を提供する画面(波形編集画面200)の一例を示す図である。波形編集画面200は、生体信号処理装置100が所定のアプリケーションプログラムを実行することにより、表示部150に表示される。なお、アプリケーションの起動や、起動後に波形編集画面200を呼び出すための操作はパーソナルコンピュータなどにおいて一般的に行われる操作と同様であるため、詳細については省略する。
【0019】
波形編集画面200は、リスト領域201、補助情報領域202、波形領域203を有する。なお、各領域の大きさ並びに表示・非表示は変更可能であってよい。また、ある領域の大きさの変更に連動して他の領域の大きさが変化してもよいし、ある領域の大きさは他の領域の大きさとは独立して変更可能であってもよい。後者の場合には、複数の領域が重畳表示されうる。
【0020】
リスト領域201はタブ220(図3)で表示内容を切り替え可能に構成されており、本実施形態では一例としてイベントリスト、登録波形リスト、およびタスクリストの表示が切り替え可能である。イベントリストは、被検者または計測機器で付与されたイベントを検索したり、新たなイベントを登録するためのリストである。登録波形リストは、イベントなどに対応して登録された波形のリストである。タスクリストは、波形編集で実行すべき工程に対応したタスク項目を一覧表示するリストである。
【0021】
補助情報領域202は、計測データから得られる、診断に有用な様々な情報を表示する補助情報画面、波形領域203の表示に関する設定画面、データを計測した装置に関する情報を表示する画面などを表示する領域である。補助情報領域202に表示する画面はタブ操作によって切り替えることができる。
【0022】
波形領域203は、計測データを時間軸に沿って表示するとともに、計測データに対する波形編集操作を受け付ける領域である。波形領域203には計測データとともに、計測中に被検者が登録したイベント、自動解析によって付与されたイベントおよびアーチファクト区間、生体信号処理装置100のユーザが波形編集機能によって設定したイベントやアーチファクト区間などが表示される。波形領域203が提供する波形編集機能の具体例については後でさらに説明する。
【0023】
リスト領域201に表示可能なリストのうち、本実施形態の特徴の1つであるタスクリストについてさらに詳細に説明する。図3は、タスクリストを表示したリスト領域201の図である。図3では7つのタスク項目210からなるタスクリストを例示しているが、タスクリストに含めることのできるタスク項目210の数は予め定められた上限数(例えば20)以下の範囲で任意に増減可能である。タスク項目210が一度に表示可能な最大項目数よりも大きい場合、タスクリストはスクロール表示される。
【0024】
タスク項目210は、タスク名211、タスク実行時の動作設定212、チェックボックス213を含み、タスクリストの先頭(一番上)のタスク項目210から順に通し番号1~7が付与されている。波形編集において行うべき一連の工程を、一連のタスク項目からなるタスクリストとして登録しておき、タスク項目に従った作業の実行と完了のチェックとを順次行うことにより、工程の実施忘れや、実施する工程がユーザ間でばらつくことを抑制できる。また、タスク項目ごとに、そのタスク項目を実施するのに適切な動作モードや表示方法を設定しておくことで、タスク項目の遷移時に適切な設定に自動で切り替わるため、タスクリストを用いることにより波形編集の作業効率を高めることができる。また、タスクリストは波形編集の習熟度が低いユーザに対する作業ガイドとしても有用である。
【0025】
タスク名211は、予め登録された、一般的に波形編集において行われうる工程の名称である。動作設定212は、そのタスクの実行時に自動設定する、波形編集の動作モードと波形領域203の表示設定を示す。タスク名211と動作設定212は、タスク項目ごとに適切と思われる内容が予め登録されているが、ユーザが編集することもできる。
【0026】
チェックボックス213は、ユーザがON、OFF可能であり、ユーザが制御部110に対してタスク項目の実行を完了したこと(あるいは未完了の状態に戻すこと)を通知するための構成である。制御部110は、ユーザから完了の通知を受けた(チェックボックスがONされた)タスク項目と、ユーザから完了の通知を受けていない(チェックボックスがOFFの)タスク項目とを視覚的に区別できるように表示する。ここでは、チェックボックスがONされたタスク項目はグレーアウト表示しているが、他の表示方法を採用してもよい。なお、グレーアウト表示されたタスク項目のチェックボックス213をOFFに戻す操作は可能である。
【0027】
チェックボックス213をONにする(チェックする)操作(例えばマウスクリック操作)を検出すると、制御部110は対応するタスク項目210の実行をユーザが完了したものと見なす。チェックボックス213をOFFにする(チェックを解除する)操作(例えばマウスクリック操作)を検出すると、制御部110は対応するタスク項目210についてユーザが未完了の状態に戻すものと見なす。
【0028】
制御部110は、チェックボックスをONにする操作を検出すると、対応するタスク項目210をグレーアウト表示とする。また、制御部110は、チェックボックスがOFFのタスク項目210のうち、例えば通し番号が最も小さなタスク項目210を次に実行するタスク項目として決定する。そして、制御部110は、次に実行するタスク項目の動作設定に応じて、波形編集機能の動作モードおよび表示設定を切り替える。また、制御部110は、現在実行しているタスク項目210を示すための表示を、次に実行するタスク項目に移動させる。現在実行しているタスク項目210を示すための表示は、表示方法を異ならせるものであってもよいし、マークなどを付加するものであってもよい。
【0029】
図3の例では、通し番号1~4のタスク項目210が完了し、現在は通し番号5のタスク項目が実行されている。通し番号1~4のタスク項目210はチェックボックス213がONされているためグレーアウト表示されており、通し番号5のタスク項目210には現在実行中であることを示す枠状のマーク216が表示されている。
【0030】
なお、チェックボックス213をONからOFFに切り替える操作が行われた場合、制御部110は対応するタスク項目210を再び行うものと認識する。この場合、制御部110は、対応するタスク項目210のグレーアウト表示を解除するとともに、対応するタスクの動作設定に応じた動作モード並びに表示設定に切り替える。
【0031】
なお、本実施形態では、タスクリストに含まれるタスク項目210を通し番号順に実行することを強制しない。しかしながら、タスク項目210を通し番号順にしか実行できないように設定可能にしてもよい。
【0032】
リスト領域201にタスクリストが表示される場合、領域の最下段にはタスク編集ボタン214が表示される。タスクリストは、リスト領域201のうち、タスク編集ボタン214が表示される部分を除いた領域に表示される。タスク編集ボタン214の表示位置はタスクリストがスクロール表示されるか否かにかかわらず固定である。
【0033】
タスク編集ボタン214を押下する操作(例えばマウスクリック操作)を検出すると、制御部110はタスク編集画面を例えばモーダルダイアログとして表示部150に表示する。図4はタスク編集画面300の例を示す。
【0034】
タスク編集画面300は項目選択領域310と、動作設定領域320とを有する。項目選択領域310は、選択可能なタスク項目の一覧を表示する一覧表示領域311と、一覧表示領域から選択したタスク項目でタスクリストを作成するリスト作成領域315とを有する。ユーザは、一覧表示領域311に一覧表示されている所望のタスク項目を選択し、「追加→」ボタン312を押下することで、選択したタスク項目をリスト作成領域315に追加することができる。一覧表示領域311からリスト作成領域315へのタスク項目のドラッグアンドドロップ操作によってもリスト作成領域315へタスク項目を追加できる。図4では、図3に示したタスクリストに対応した7種類のタスク項目がリスト作成領域に追加されている状態を示している。
【0035】
「←削除」ボタン313は、リスト作成領域315に追加されているタスク項目のうち、選択状態にあるものをリスト作成領域315から削除するためのボタンである。リスト作成領域315からリスト作成領域315の外へのタスク項目のドラッグアンドドロップ操作によってもリスト作成領域315からタスク項目を削除できる。
【0036】
また、「上へ」ボタン316および「下へ」ボタン317は、リスト作成領域315において選択状態にあるタスク項目の順序をそれぞれ1つ上/下に変更するためのボタンである。タスクリストにおけるタスク項目の通し番号は、リスト作成領域315における表示順序にしたがって付与される。そのため、ユーザは「上へ」ボタン316および「下へ」ボタン317を操作することにより、タスクリストにおけるタスク項目の順序を所望の順序に設定することができる。リスト作成領域315内におけるタスク項目のドラッグアンドドロップ操作によってもタスク項目の順序を変更することができる。ドラッグアンドドロップ操作の場合、タスク項目はドロップ位置に応じた順序に変更され、一回の操作で順序を2つ以上変更することが可能である。
【0037】
動作設定領域320は、リスト作成領域315で選択状態にある1つのタスク項目に対する動作設定を行うための領域である。ここでは、リスト作成領域315でタスク項目「波形概要確認」が選択されている状態の動作設定領域320の例を示している。なお、動作設定領域320には、選択されているリスト項目に応じた内容の設定項目が表示される。設定可能な項目がすべてのリスト項目に共通であれば、動作設定領域320の表示もリスト項目に依存しなくてよい。
【0038】
図4の例において動作設定領域320は、設定可能な項目として、モード設定321、表示設定322、遷移設定323を含んでいる。モード設定321は、タスク項目を実行する際に自動設定する波形編集の動作モードを設定する項目である。ここでは動作モードとして、動作なし、データ削除区間調整モード、アーチファクト区間調整モード、オートスクロールのいずれかを設定可能であるものとする。アーチファクト区間は、センサ外れなどにより計測項目の少なくとも一部が正しく計測できておらず、有効な計測時間として見なすべきでない時間区間である(アーチファクト区間の計測データは削除されない)。データ削除区間は、アーチファクト区間のうち、その時間区間の計測データ全体を削除する時間区間である。例えば、簡易PSG検査であれば、被検者の入眠前や起床後に計測データがデータ削除区間の典型例である。
【0039】
データ削除区間調整モード、アーチファクト区間調整モードは、波形編集の対象をそれぞれデータ削除区間とアーチファクト区間に限定する動作モードである。動作なしが設定された場合には、動作モードを特定のモードに設定しない(直前のタスク項目での動作モードが維持される)。オートスクロールモードは、波形領域203に表示する時系列データの波形を自動的にスクロール表示するモードである。
【0040】
表示設定322は、波形領域203に表示する時系列データの時間範囲の設定である。全時間、有効計測時間、指定範囲、表示開始位置指定、表示終了位置指定、自動検出結果を中心とした位置、の中から選択可能である。ただし、モード設定321で選択されている動作モードによって、選択肢が制限される場合がある。例えば、自動検出結果を中心とした位置は、モード設定321でデータ削除区間調整モードもしくはアーチファクト区間調整モードが設定されている場合のみ選択可能である。モード設定321で動作なし、もしくはオートスクロールが設定されている場合、自動検出結果を中心とした位置は選択できない(グレーアウト表示もしくは表示しない)。また、モード設定321でオートスクロールが設定されている場合は、表示開始位置指定のみが選択可能である。
【0041】
全時間は、全計測時間を表示範囲とする。また、有効計測時間は、全時間のうち、データ削除区間以外を表示範囲とする。範囲指定は、範囲指定機能で指定された時間の範囲を表示範囲とする。表示開始位置指定は、表示範囲の開始時刻を、記録開始時刻、有効計測時間開始時刻、指定範囲開始時刻のいずれかに設定する。
【0042】
表示終了位置指定は、表示範囲の終了時刻を、記録終了時刻、有効計測時間終了時刻、指定範囲終了時刻のいずれかに設定する。表示開始位置指定、表示終了位置指定では、コンボボックスで提示される選択肢から1つを選択することにより、波形領域203のタイムスケールを選択することができる。タイムスケールは、波形領域203に一度に表示する計測波形の計測時間の幅である。例えばタイムスケールとして6分が選択された場合、波形領域203全体で6分間の計測波形が表示される。
【0043】
自動検出結果を中心とした位置は、コンボボックスで指定されたタイムスケールで、設定されている動作モードに応じて、時刻順で最初のデータ削除区間もしくはアーチファクト区間の開始時刻を波形領域203の水平方向の中心とした表示範囲を設定する。
【0044】
遷移設定323は、チェックボックス213がONされるという明示的なユーザ指示によらずに制御部110がタスク項目の実行が完了したと判定した場合に、チェックボックス213を自動的にONして次のタスク項目へ遷移させるか否かを設定する。遷移設定323は、タスク項目の完了をユーザ入力なしに制御部110が判定できるタスク項目に対してのみ設定可能であってよい。タスク項目の完了をユーザ入力なしに制御部110が判定できないタスク項目について遷移設定323がONに設定されていても、自動遷移は行われない。
【0045】
初期化ボタン324の操作を検出すると、制御部110は動作設定領域320の設定内容を予め定められた初期状態に戻す。OKボタン325の操作を検出すると、制御部110はタスク編集画面300が表示されてからなされた設定の変更を反映してタスク編集画面300の表示を終了する。キャンセルボタン326の操作を検出すると、制御部110はタスク編集画面300が表示されてからなされた設定の変更を反映せずにタスク編集画面300の表示を終了する。
【0046】
動作設定の初期値は、タスク項目に適切と思われる値としておくことで、タスク編集の手間を少なくすることができる。例えば、動作モードに関して、タスク項目「アーチファクト区間編集」についてはアーチファクト区間調整モードを、タスク項目「睡眠時間の終了/開始時間の特定」についてはデータ削除区間調整モードを初期値としておく。表示方法については、編集領域の解像度などに応じて初期値を定めることができる。
【0047】
波形編集操作について説明する前に、波形領域203についてさらに説明する。図5は、図2の波形領域203の拡大図である。なお、波形領域203に表示する項目や表示方法に関しては変更可能であり、図5は単なる一例を示すものである。
【0048】
ここでは波形領域203に表示する計測データ2033として、フローセンサで計測した呼吸波形(口鼻(圧力))、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)[%]、脈拍数[bpm]、気管音(いびき)、体動センサ出力が選択されている。計測データ2033は時系列に沿って波形または数値として表示され、その種類に応じて表示感度(分解能)や表示する値の範囲などを変更するためのUIを有する。なお、図中に示した水平方向に延びる4本の点線は計測データごとの表示領域の境界を分かりやすくするために付したものであり、画面には表示されない。また、点線の矩形は後述する編集操作を受け付ける編集領域2038の範囲を示すためのものであり、これもまた画面には表示されない。
【0049】
タイムスケール2031は波形領域203内に表示されている計測データの長さ(時間)を示す。タイムスケール2031は例えばコンボボックスもしくはドロップダウンリストであり、ユーザが動的に設定値を変更可能である。図5の例ではタイムスケール2031が30分間に設定されており、6:45~7:15の計測データが表示されている。
【0050】
動作モード表示2032は波形編集機能の現在の動作モードを表示する。また、動作モード表示2032はコンボボックスもしくはドロップダウンリストであり、ユーザが動的に設定値を変更可能である。本実施形態では動作モードとして上述したデータ削除区間調整モード、アーチファクト区間調整モード、オートスクロールモードに加え、通常編集モードが選択可能である。通常編集モードは、波形編集の対象を限定しない、従来と同様の動作モードである。通常編集モードでは、区間を指定したのち、指定した区間に対する編集内容を指定することにより、データ削除区間調整モードおよびアーチファクト区間調整モードで可能な編集を含む、すべての編集機能を利用することができる。
【0051】
マウス位置情報2034は、マウスカーソルが編集領域2038内に存在する場合に、マウスカーソル座標に対応する時刻を表示する。
カーソル位置情報2035は、カーソルバー2036の位置(時刻)における代表的な計測値を表示する。ここでは、一例としてSpO2、脈拍数、心拍数、およびマスク圧を表示している。カーソルバー2036は編集領域2038を縦断する線で表され、初期状態では編集領域の水平方向中央に位置する。カーソルバー2036は、編集領域2038や補助情報領域202内においてクリック操作が行われた際のマウスカーソルの座標(以下、クリック位置という)に応じて移動する。基本的にはクリック位置の水平座標に移動するが、クリック位置がイベント区間内の場合にはイベント区間の開始時刻に対応する水平座標に移動するなど、クリック位置の表示内容に応じた位置に移動させてもよい。
【0052】
ここで、イベント区間とは、計測中に被検者がイベント付与操作を行った区間、生体信号処理装置100が自動解析処理によって特定の条件に当てはまると判定した区間、生体信号処理装置100のユーザがイベント区間として設定した区間である。イベント区間はイベント指標2039により表示される。
【0053】
区間種別2037は、表示されている計測データ区間に設定されているデータ削除区間およびアーチファクト区間を示すための表示属性であり、本実施形態ではデータ削除区間およびアーチファクト区間について、区間の種類に応じた背景色が付与されている。
【0054】
次に、生体信号処理装置100の波形編集機能、特には区間調整機能について説明する。区間調整機能はデータ削除区間またはアーチファクト区間を新たに設定したり、設定済みの区間の長さを調整したり、削除したりするための機能である。本実施形態でデータ削除区間についてデータ削除区間調整モードで、アーチファクト区間についてはアーチファクト区間調整モードで、それぞれ調整を行うことができる。
【0055】
図6はデータ削除区間調整モードの動作に関するフローチャートである。なお、アーチファクト区間調整モードの動作は、以下の説明におけるデータ削除区間をアーチファクト区間と読み替えたものである。図6のフローチャートに係る動作は、例えば、タスク項目の遷移によって、あるいは動作モード表示2032の操作によって、データ削除区間調整モードが設定された際に開始される。
【0056】
S601で制御部110は、操作部160により、編集領域2038内でのドラッグ操作を検出したか否かを判定する。データ削除区間調整モードおよびアーチファクト区間調整モードが設定されている場合、制御部110は編集領域2038内でのドラッグ操作を、区間を調整するための操作として認識する。また、制御部110は、ドラッグ操作の開始位置および終了位置が、データ削除区間に対応する領域とデータ削除区間に対応しない領域とのいずれに属するかに応じて、異なる動作を行う。
【0057】
なお、操作部160が有する入力デバイスのどのような操作をドラッグ操作として検出するかは、入力デバイスごとに予め定められており、制御部110は操作された入力デバイスに応じてドラッグ操作の判定を行う。なお、ドラッグ操作は一般的にはマウスやトラックパッドなどのポインティングデバイスの操作であるが、キーボートの特定のキー操作をドラッグ操作として割り当てるなどして、ポインティングデバイス以外の入力デバイスでのドラッグ操作を可能としてもよい。制御部110は、ドラッグ操作を検出したと判定されればS611を実行し、判定されなければS603を実行する。
【0058】
S611で制御部110は、ドラッグ操作の終了が検出されるまで待機した後、ドラッグ区間と少なくとも一部が重複するデータ削除区間があるか否かを判定する。この判定は、ドラッグ操作の開始位置と終了位置との間に削除区間が存在するか否かの判定であってもよい。制御部110は、ドラッグ区間と少なくとも一部が重複するデータ削除区間がある(ドラッグ操作の開始位置と終了位置との間に削除区間が存在する)と判定されればS615を実行し、判定されなければS613を実行する。
【0059】
S613で制御部110は、ドラッグ区間を新規のデータ削除区間として設定する。また、制御部110は、設定したデータ削除区間に対応する区間種別を編集領域2038に表示させる。図7(a)は、ドラッグ操作による新たなデータ削除区間の設定を模式的に示している。その後、制御部110はS601を再度実行する。
【0060】
S615で制御部110は、データ削除区間外からデータ削除区間内へのドラッグ操作であるか否かを判定する。制御部110は、データ削除区間外からデータ削除区間内へのドラッグ操作である(ドラッグ操作の開始位置および終了位置の一方が削除区間外であり、他方が削除区間内である)と判定されればS617を実行し、判定されなければS619を実行する。ここでは説明および理解を簡単にするため、ドラッグ区間と重複する削除区間が1つであるものとする。
【0061】
S617で制御部110は、ドラッグ区間と重複する削除区間の左端部(開始時刻)と右端部(終了時刻)とのうち、ドラッグ区間が跨いだ端部の位置を、ドラッグ終点位置に移動する。すなわち、制御部110は、削除区間の開始時刻または終了時刻をドラッグ終点位置の水平座標に対応する時刻に変更する。このように、制御部110は、データ削除区間外からデータ削除区間内へのドラッグ操作を、ドラッグ終点位置に存在するデータ削除区間の短縮操作として認識する。制御部110は、変更結果を区間種別の表示に反映させ、その後、S601を再度実行する。図7(c)は、ドラッグ操作によるデータ削除区間の短縮を模式的に示している。
【0062】
S619で制御部110は、データ削除区間内からデータ削除区間外へのドラッグ操作であるか否かを判定する。制御部110は、ドラッグ操作が、データ削除区間内からデータ削除区間外へのドラッグ操作であると判定されればS621を実行し、判定されなければS623を実行する。
【0063】
S621で制御部110は、ドラッグ区間と重複する削除区間の左端部(開始時刻)と右端部(終了時刻)とのうち、ドラッグ区間が跨いだ端部の位置を、ドラッグ終点位置に移動する。すなわち、制御部110は、削除区間の開始時刻または終了時刻をドラッグ終点位置の水平座標に対応する時刻に変更する。このように、制御部110は、データ削除区間内からデータ削除区間外へのドラッグ操作を、ドラッグ開始位置に存在するデータ削除区間の拡大操作として認識する。制御部110は、変更結果を区間種別の表示に反映させ、その後、S601を再度実行する。図7(b)は、ドラッグ操作によるデータ削除区間の拡大を模式的に示している。
【0064】
なお、S615、S617、S619、S621で行う動作は、ドラッグ操作の開始位置および終了位置の一方が削除区間外であり、他方が削除区間内であるか否かを判定する動作と、ドラッグ操作の開始位置および終了位置の一方が削除区間外であり、他方が削除区間内であると判定された場合に、他方が位置する削除区間の開始時刻もしくは終了時刻のうち、開始位置と終了位置との間に存在する時刻を、終了位置に対応する時刻に変更する動作とに置き換えることもできる。
【0065】
S623が実行されるのは、1つのデータ削除区間全体を跨いだドラッグ操作が行われた場合である。開始位置と終了位置がいずれも削除区間外であり、開始位置と終了位置との間に削除区間が1つ存在するようなドラッグ操作が行われた場合とも言える。S623で制御部110は、ドラッグ区間と重複するデータ削除区間が、ドラッグ区間と一致するように、左右の端部をドラッグ開始位置とドラッグ終点位置に移動する。すなわち、制御部110は、データ削除区間の開始時刻および終了時刻をドラッグ区間の開始位置および終了位置の水平座標とに対応する時刻に変更する。このように、制御部110は、データ削除区間を跨いだデータ削除区間外からデータ削除区間外へのドラッグ操作を、データ削除区間の拡大操作として認識する。制御部110は、変更結果を区間種別の表示に反映させ、その後、S601を再度実行する。図7(d)は、データ削除区間の全体を跨いだドラッグ操作によるデータ削除区間の拡大を模式的に示している。
【0066】
図7(a)~(d)は、マウスカーソル位置の水平座標が編集領域2038内で左から右へ移動する向かうドラッグ操作が行われた場合について示している。しかし、逆方向のドラッグ操作についても同様である。例えば、図7(b)は終了時刻を遅らせてデータ削除区間を拡大する操作に相当するが、逆向きのドラッグ操作をデータ削除区間の左端部を跨ぐように行えば、開始時刻を早めてデータ削除区間を拡大する操作になる。また、図7(c)は開始時刻を遅らせてデータ削除区間を短縮する操作に相当するが、逆向きのドラッグ操作をデータ削除区間の右端部を跨ぐように行えば、終了時刻を早めてデータ削除区間を短縮する操作になる。図7(a)および(d)の操作についてはドラッグ操作の方向に依存しない。
【0067】
なお、例えば図7(b)~(d)の操作と同様のデータ削除区間の調整を、データ削除区間の左端部および/または右端部のドラッグ操作によって行うことを可能にしてもよい。しかし、マウスカーソルを端部に合わせて直接ドラッグ操作するよりも、端部を跨ぐドラッグ操作の方が容易である。また、図7(d)に示すように、開始時刻を早めるとともに終了時刻を遅らせてデータ削除区間を拡大する場合、端部のドラッグ操作では2回の操作が必要になるのに対し、データ削除区間全体を跨ぐドラッグ操作では1回の操作で済むため、より効率的である。
【0068】
図6の説明に戻り、S603で制御部110は、操作部160により、左または右矢印キーの操作(左または右矢印キーの操作に相当する他の操作を含む)を検出したか否かを判定する。制御部110は、左または右矢印キーの操作(左または右矢印キーの操作に相当する他の操作を含む)を検出したと判定されればS605を実行し、判定されなければS607を実行する。
【0069】
S605で制御部110は、編集領域2038の水平方向の中心位置に対応する時刻を、時間軸上で1つ前/後のデータ削除区間の中心時刻となるように、計測データ2033の表示を更新する。なお、1つ前/後の基準となる時刻は、カーソルバー2036位置の時刻、もしくは編集領域2038の水平方向の中心位置に対応する時刻である。その後、制御部110はS607を実行する。
【0070】
S607で制御部110は、操作部160により、ダブルクリック操作(ダブルクリック操作に相当する他の操作を含む)を検出したか否かを判定する。なお、ダブルクリック操作は、位置の変化を伴わないユーザ操作の一例であり、例えばトリプルクリック操作など、他のユーザ操作を区間削除に対応付けてもよい。制御部110は、ダブルクリック操作(ダブルクリック操作に相当する他の操作を含む)を検出したと判定されればS609を実行し、判定されなければS625を実行する。
【0071】
S609で制御部110は、ダブルクリック操作検出時のカーソル座標(ダブルクリック位置)がデータ削除区間内にあれば、その削除区間を削除(削除区間の設定を解除)する。図7(e)は、データ削除区間のダブルクリック操作によるデータ削除区間の削除を模式的に示している。一方、制御部110は、ダブルクリック位置がデータ削除区間外であれば何もせずにS625を実行する。
【0072】
S625で制御部110は、操作部160により、動作モード表示2032の操作(動作モード変更操作)を検出したか否かを判定する。制御部110は、動作モード変更操作を検出したと判定されればS627を実行し、判定されなければS601を実行する。
【0073】
S627で制御部110は、データ削除区間調整モードを終了し、以降は変更後の動作モードでの動作を実行する。
【0074】
上述の説明では、ドラッグ区間と重複するデータ削除区間が1つであるものとしたが、複数のデータ削除区間と重複するドラッグ操作を許容してもよい。図8(a)~(c)は、2つのデータ削除区間と重複するドラッグ操作と、それに応じたデータ削除区間の調整動作の例を模式的に示している。
【0075】
図8(a)は、データ削除区間1内から、隣接するデータ削除区間2内へのドラッグ操作を示している。この場合、制御部110は、データ削除区間1および2を1つのデータ削除区間に合成する。具体的には、制御部110は、2つのデータ削除区間の間に存在する非データ削除区間をデータ削除区間に変更する。これにより、2つのデータ削除区間は、2つのデータ削除区間の開始時刻のうち早い方を開始時刻とし、2つのデータ削除区間の終了時刻のうち遅い方を終了時刻とする1つのデータ削除区間に合成される。
【0076】
図8(b)は、データ削除区間1内から、隣接するデータ削除区間2を通って非データ削除区間へのドラッグ操作を示している。この場合、制御部110は、データ削除区間1および2を1つのデータ削除区間に合成するとともに、合成後のデータ削除区間の終了時刻をドラッグ終了位置に対応する時刻に変更する。図8(b)のドラッグ操作は、図8(a)のドラッグ操作と、図7(b)のドラッグ操作とを合成したものに相当するため、制御部110は、それぞれのドラッグ操作に相当する調整動作を実行する。このように、制御部110は、複数のドラッグ操作を合成した操作に相当する1つのドラッグ操作については、当該複数のドラッグ操作のそれぞれに対する調整動作を実行することができる。
【0077】
図8(c)は、データ削除区間1および隣接するデータ削除区間2の全体を跨ぐ、非データ削除区間から非データ削除区間へのドラッグ操作を示している。この場合、制御部110は、データ削除区間1および2を1つのデータ削除区間に合成するとともに、合成後のデータ削除区間の開始時刻および終了時刻をドラッグ開始位置および終了位置に対応する時刻に変更する。図8(c)のドラッグ操作は、データ削除区間1および2のそれぞれに対する図7(d)のドラッグ操作と、図8(a)のドラッグ操作とを合成したものに相当するため、制御部110は、それぞれのドラッグ操作に相当する調整動作を実行する。
【0078】
ドラッグ区間と重複するデータ削除区間が3つ以上の場合も同様に対応可能である。また、ドラッグ方向が逆の場合も先に説明したようにして対応可能である。
【0079】
図6図8を用いて説明したように、本実施形態に係る生体信号処理装置100は、1回のドラッグ操作により、データ削除区間やアーチファクト区間のさまざまの調整が可能であるため、時間のかかる波形編集作業の効率化に有用である。また、調整対象となる区間の種類を動作モードによって限定するため、データ削除区間の調整とアーチファクト区間の調整とを別個のタスク項目として実行することができる。これにより、データ削除区間とアーチファクト区間の両方について確実に調整が行われるようにできる。あるいは、一方についてだけ調整を行うようにタスクリストを構成することも可能になる。
【0080】
図9は、設定されたタスクリストにしたがった波形編集の制御動作に関するフローチャートである。
S901で制御部110は、波形編集機能が呼び出されたか否かを判定する。波形編集機能の呼び出しは、例えば実行中の生体信号処理アプリケーションのメニュー画面の操作など、ユーザ操作に応じて実行されてもよいし、生体信号処理アプリケーション内部で発生したイベントによって実行されてもよい。制御部110は、波形編集機能が呼び出されたと判定されればS903を実行し、判定されなければS901の実行を繰り返す。
【0081】
S903で制御部110は、制御部110内のROMもしくは記録部130からタスクリストをRAMに読み込む。なお、タスクリストは生体信号処理装置100に1つだけ保存可能であってもよいし、複数保存可能であってもよい。後者の場合、制御部110は例えば生体信号処理装置100を現在使用しているユーザ(例えばログインユーザ)に関連付けられているタスクリストを読み込む。あるいは制御部110はタスクリストの一覧を選択可能にユーザに提示し、選択されたタスクリストを読み込んでもよい。制御部110は、読み込んだタスクリストをリストをに含まれる複数のリスト項目のうち、先頭のタスク項目(通し番号が1のタスク項目)を取得する。
【0082】
S905で制御部110は、取得したリスト項目の動作設定を参照し、波形編集機能の動作モードおよび波形領域の表示方法を設定する。そして、S903で取得したタスクリストを表示したリスト領域201と、動作設定にしたがった波形領域203とを含んだ波形編集画面200を表示部150に表示させる。なお、補助情報領域202について制御部110は、予め定められた、リスト項目の動作設定とは異なる設定に応じた表示を行う。図2の例では補助情報領域202にトレンド表示を行った場合を示している。また、制御部110は、リスト領域に、現在実行中のタスク項目を示すマーク(図3の216)を表示させる。
【0083】
S907で制御部110は、操作部160を通じたユーザ操作を検出したか否かを判定する。制御部110は、ユーザ操作を検出したと判定されればS909を実行し、判定されなければS907を繰り返し実行する。
【0084】
S909で制御部110は、検出されたユーザ操作が、リスト領域201に表示されたタスクリストの現在実行中のタスク項目の「済み」チェック操作(チェックボックス213へのチェック操作)か否かを判定する。制御部110は、検出されたユーザ操作が、リスト領域201に表示されたタスクリストの現在実行中のタスク項目の「済み」チェック操作であると判定されればS911を実行し、判定されなければS917を実行する。
【0085】
S911で制御部110は、リスト領域201に表示されたタスクリストの現在実行中のタスク項目の表示をグレーアウトし、チェックボックス213にチェックマークを付したのち、S913を実行する。
【0086】
S913で制御部110は、タスクリストに未完了のタスク項目があるか否かを判定氏、未完了のタスク項目があると判定されればS915を実行し、判定されなければ波形編集が完了したものとして波形編集画面200を閉じる。なお、波形編集画面200を閉じる前にユーザに確認を求めてもよいし、ユーザから波形編集の完了を明示的に指示されるまで待機してもよい。
【0087】
S915で制御部110は、タスクリストに含まれる未完了のタスク項目の中から、次に実行するタスク項目を取得する。未完了のタスク項目が複数ある場合、制御部110は、例えば、通し番号が最も小さいタスク項目を次に実行するタスク項目として決定し、取得する。その後、制御部110はS905を実行する。
【0088】
S917で制御部110は、操作に応じた動作を実行したのち、S907で操作の検出を待機する。図6図8を用いて説明した区間調整動作は、S907、S909、S917、S907、...という処理ループの中で実行される。なお、S907で検出した操作が完了済みのタスク項目のチェックボックスのチェック解除操作であった場合、S917で制御部110は、チェックが解除されたタスク項目のグレーアウト表示を解除し、チェックマークを除去する。そして、チェックが解除されたタスク項目の実行に移行する。この場合、チェック解除動作を検出した時点で実行していたタスク項目については、未完了のままとする。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、計測ならびに記録された生体信号に対する波形編集機能を提供する生体信号処理装置において、波形編集で行うべき複数の工程をリスト化したタスクリストを提供するようにした。タスクリストをチェックしながら波形編集を行うことで、異なるユーザが波形編集を行う場合であっても、同様の工程が実行されることが担保される。そのため、生体信号処理装置を複数のユーザで共用する場合における、波形編集において実行される工程がユーザ間でばらつくことを抑制することができる。
【0090】
さらに、タスクリストの各工程を示すタスク項目に、当該タスク項目を実行する際における生体信号処理装置の設定を指定できるようにした。そのため、実行に適した設定をタスク項目に指定しておくことにより、ユーザが工程に応じて都度設定を変更する必要がなく、作業効率を高めることができる。また、工程で編集(調整)を行う対象を限定する動作モードを設けたので、工程で編集する対象に応じた動作モードをタスク項目に指定しておくことで、ユーザは行うべき作業を迷わずに実行することができる。加えて、1回のドラッグ操作によって多様な区間調整を行うことを可能としたので、必要な操作回数を削減することが可能になり、作業効率を向上させることができる。
【0091】
上述の実施形態では、簡易PSG検査で計測、記録される生体信号に対する波形編集に関して主に説明したが、本発明はホルタ心電図など、他の計測で記録される生体信号に対する波形編集についても同様に適用可能である。
【0092】
なお、本発明に係る生体信号処理装置は、一般的に入手可能な、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末のようなプログラムを実行可能な電子機器で、図6図9を用いて説明した動作を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)を実行することによっても実現できる。従って、コンピュータを実施形態に係る生体信号処理装置として機能させるプログラムおよび、プログラムを格納した記憶媒体(CD-ROM、DVD-ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。
【符号の説明】
【0093】
100...生体信号処理装置、110...制御部、120...外部I/F、130...記録部、150...表示部、160...操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9