IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置 図1
  • 特許-情報処理装置 図2
  • 特許-情報処理装置 図3
  • 特許-情報処理装置 図4
  • 特許-情報処理装置 図5
  • 特許-情報処理装置 図6
  • 特許-情報処理装置 図7
  • 特許-情報処理装置 図8
  • 特許-情報処理装置 図9
  • 特許-情報処理装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20241128BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G01B11/00 Z
G01C15/00 104Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020202245
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089664
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 賢
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健資
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185228(JP,A)
【文献】特開2006-010312(JP,A)
【文献】特開2019-201268(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00 - 19/20
G01B 11/00
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する付加部と、
前記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にある前記点で構成される部材を同一部材として併合する併合部と、
前記併合部によって併合された前記同一部材を部材毎に識別できるように、前記点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行う制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する付加部と、
前記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している前記点で構成される部材を同一部材として併合する併合部と、
前記併合部によって併合された前記同一部材を部材毎に識別できるように、前記点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行う制御部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記部材の系統毎の設計上の温度範囲を前記予め定められた温度範囲として取得する取得部、を更に備え、
前記制御部は、前記併合部によって併合された同一系統の部材を系統毎に識別できるように、前記画像を前記表示部に表示する制御を行う、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記同一系統の部材は、給水配管、給湯配管、及び排水配管の少なくとも2つである、
請求項3に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元スキャナ(以下、「3Dスキャナ」ともいう。)を用いた3次元撮影により得られた点群データに関する技術として以下の技術があった。
【0003】
特許文献1には、3次元の点群データに、高精度に温度情報を付加することができ、かつ、高精度に色情報を付加することができる測量装置が開示されている。また、特許文献1には、この測量装置が、各測定点で取得された温度の差から、計測した建物の熱源箇所や水漏れ箇所の特定や補修にも活用できることが開示されている。更に、特許文献1には、この測量装置が、配管の測定に於いては、配管内に気体や液体が流れているかどうかの確認等にも活用できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、3次元座標データに関連付けられている情報のうち、測定対象物との距離情報、測定対象物の色情報、戻り光の受光感度情報の少なくとも1つの情報に基づく重み付き残差法によって、上記3次元座標データを補正する機能を有する3次元測量装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-52867号公報
【文献】特開2019-35685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、3Dスキャナを用いて既存の建物の配管、ダクト等の部材をBIM(Building Information Modeling)モデル化する際には、一例として図10(A)に示す点群データから当該部材に相当する「属性情報を持たない3次元図形」を抽出する。そして、抽出した3次元図形をCAD(Computer-Aided Design)に読み込み、一例として図10(B)に示す「属性情報を持った3次元図形」を経て、一例として図10(C)に示す「属性情報を持った3次元オブジェクトモデル」に書き換える必要があった。例えば、上記部材が設備配管の場合、円柱状の3次元図形から、給水配管、給湯配管、排水配管等の属性情報を持った3次元オブジェクトモデルに書き換えている。
【0007】
この書き換えの際には、CADのオペレータ等が、点群データや現地写真、既存の図面等を参考に、1系統ずつ属性情報を与えていく必要があるため、著しく手間がかかるものであった。
【0008】
これに対し、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、既存の建物に設けられている部材に対する属性の付与に関しては考慮されていないため、この問題に対しては無力である。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、より簡易に建物の部材に属性を付与することのできる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置は、3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する付加部と、前記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にある前記点で構成される部材を同一部材として併合する併合部と、前記併合部によって併合された前記同一部材を部材毎に識別できるように、前記点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行う制御部と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加し、当該温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にある上記点で構成される部材を同一部材として併合し、併合した当該同一部材を部材毎に識別できるように、点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行うことで、より簡易に建物の部材に属性を付与することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置は、3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する付加部と、前記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している前記点で構成される部材を同一部材として併合する併合部と、前記併合部によって併合された前記同一部材を部材毎に識別できるように、前記点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行う制御部と、を備えている。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加し、当該温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している上記点で構成される部材を同一部材として併合し、併合した当該同一部材を部材毎に識別できるように、点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行うことで、より簡易に建物の部材に属性を付与することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置であって、前記部材の系統毎の設計上の温度範囲を前記予め定められた温度範囲として取得する取得部、を更に備え、前記制御部が、前記併合部によって併合された同一系統の部材を系統毎に識別できるように、前記画像を前記表示部に表示する制御を行うものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、上記部材の系統毎の設計上の温度範囲を上記予め定められた温度範囲として取得し、併合した同一系統の部材を系統毎に識別できるように、上記画像を表示部に表示する制御を行うことで、より簡易に、建物の同一系統の部材毎に属性を付与することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項3に記載の情報処理装置であって、前記同一系統の部材が、給水配管、給湯配管、及び排水配管の少なくとも2つであるものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、上記同一系統の部材を、給水配管、給湯配管、及び排水配管の少なくとも2つとすることで、適用された配管の各系統別に、より簡易に属性を付与することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、より簡易に建物の部材に属性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る3Dスキャナの構成の一例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るスキャン情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図5】実施形態に係る温度情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図6】実施形態に係る属性情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図7】実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る初期情報入力画面の一例を示す正面図である。
図9】実施形態に係るBIMモデル表示画面の一例を示す正面図である。
図10】従来技術の説明に供する図であり、(A)は点群データが示す画像の一例を示す正面図であり、(B)は属性情報を持った3次元図形の一例を示す正面図であり、(C)は属性情報を持った3次元オブジェクトモデルの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、建物の水に関する設備配管について系統別に属性を付与する情報処理システムに適用した場合について説明する。
【0021】
まず、図1図3を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る3Dスキャナ50の構成の一例を示す斜視図である。更に、図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システム90は、情報処理装置10及び3Dスキャナ50を含んで構成されている。なお、情報処理装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0024】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、情報処理プログラム13Aが記憶されている。情報処理プログラム13Aは、情報処理プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの情報処理プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、情報処理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、情報処理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0025】
また、記憶部13には、スキャン情報データベース13B、温度情報データベース13C、及び属性情報データベース13Dが記憶される。スキャン情報データベース13B、温度情報データベース13C、及び属性情報データベース13Dについては、詳細を後述する。
【0026】
一方、図1に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52、赤外線カメラ56、及び記憶部58を含んで構成されている。なお、図示は省略するが、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52により3次元撮影を行う際に当該スキャナ本体52による撮影方向を変化させるためのモータや、当該モータ、スキャナ本体52等の各部の作動を制御する制御部等も含まれている。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、3脚とされた脚部60の上部にスキャナ本体52が設けられており、スキャナ本体52は、脚部60の上部において、上述したモータの駆動により撮影方向が変更可能とされている。なお、脚部60は3脚には限らないことは言うまでもない。
【0028】
本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52からレーザを射出し、対象物に反射して返ってくるまでの時間から距離を算出する一方、スキャナ本体52の移動方向からレーザの射出角度を算出し、これらの算出値を用いて3次元位置を特定する、所謂タイムオブフライト方式のものとされている。但し、3Dスキャナ50による3次元位置の特定方式は、これに限るものではない。例えば、スキャナ本体52から複数に変調させたレーザを射出し、対象物に当たって戻ってきた拡散反射成分の位相差により対象物との距離を求め、当該距離とレーザの射出角度から3次元位置を特定する、所謂フェイズシフト方式のものを、3Dスキャナ50として適用する形態としてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52による3次元撮影を行う際に、赤外線カメラ56による赤外線撮影も並行して行うものとされている。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52による3次元撮影によって得られた点群データに加えて、当該点群データの各点毎に温度を示す温度情報が記憶部58に記憶されるものとされている。
【0030】
更に、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、上記点群データとして、各点の3次元位置の座標を示す座標情報の他、対応する点の上記レーザの反射強度を示す反射強度情報、及び対応する点の色を示す色情報が取得される。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、取得した座標情報、反射強度情報、及び色情報が点群データにおける点毎に関連付けられて記憶される。但し、この形態に限るものではなく、例えば、点群データとして、上記座標情報のみを記憶する形態としてもよいし、当該座標情報と、上記反射強度情報及び色情報の何れか一方の組み合わせを点群データとして記憶する形態としてもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係る情報処理システム90では、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を有線通信によって情報処理装置10に送信する形態とされているが、これに限るものではない。例えば、無線通信によって、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に送信する形態としてもよい。また、記憶部58を3Dスキャナ50から着脱可能な可搬型の記憶媒体としておき、当該記憶媒体を介して、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に転送する形態としてもよい。
【0032】
また、上述したように、本実施形態では、3Dスキャナ50として、スキャナ本体52とは別構成として赤外線カメラ56を有する3Dスキャナを適用しているが、これに限るものではない。例えば、スキャナ本体52から射出されるレーザの波長帯域を赤外線の帯域も含むものとしておき、当該レーザを用いて対象点の温度を取得する3Dスキャナを3Dスキャナ50として適用する形態としてもよい。この場合、赤外線カメラ56が不要となるため、3Dスキャナ50の小型化及び低コスト化を行うことができる。
【0033】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、付加部11A、併合部11B、制御部11C、及び取得部11Dを含む。情報処理装置10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、付加部11A、併合部11B、制御部11C、及び取得部11Dとして機能する。
【0034】
本実施形態に係る付加部11Aは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する。なお、本実施形態では、当該温度情報として、3Dスキャナ50の赤外線カメラ56によって得られた、上述した温度情報を適用している。
【0035】
また、本実施形態に係る併合部11Bは、上記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している上記点で構成される部材を同一部材として併合する。なお、本実施形態では、当該同一部材として、給水配管、給湯配管、及び排水配管の3種類の設備配管を適用しているが、これに限るものではない。例えば、上記3種類の設備配管のうちの2種類の組み合わせを上記同一部材として適用する形態としてもよいし、設備配管ではなく、各種ダクトや電気配線を上記同一部材として適用する形態としてもよい。また、ここでいう「給水配管」は給水系配管に属する広義の配管を意味する。同様に、「給湯配管」は給湯系配管に属する広義の配管を意味し、「排水配管」は排水系配管に属する広義の配管を意味する。
【0036】
また、上述したように、本実施形態では、併合部11Bが、上記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している上記点で構成される部材を同一部材として併合するものとされているが、これに限るものではない。例えば、芯線が連続しているか否かの如何に関わらず、上記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にある上記点で構成される部材を同一部材として併合するものを併合部11Bとして適用する形態としてもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る制御部11Cは、併合部11Bによって併合された上記同一部材を部材毎に識別できるように、上記点群データに基づく画像を表示部15に表示する制御を行う。
【0038】
ここで、本実施形態に係る取得部11Dは、上記部材の系統毎の設計上の温度範囲を上記予め定められた温度範囲として取得する。そして、本実施形態に係る制御部11Cは、併合部11Bによって併合された同一系統の部材を系統毎に識別できるように、上記画像を表示部15に表示する制御を行う。
【0039】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bについて説明する。図4は、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0040】
図4に示すように、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、座標、反射強度、及び色の各情報が関連付けられて記憶される。
【0041】
上記座標は、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた各点の位置の座標を示す、上述した座標情報であり、上記反射強度は、対応する点における、上述した反射強度情報であり、上記色は、対応する点における、上述した色情報である。即ち、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた座標情報、反射強度情報、及び色情報の点群データが登録されるものである。
【0042】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る温度情報データベース13Cについて説明する。図5は、本実施形態に係る温度情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係る温度情報データベース13Cは、座標、及び温度の各情報が関連付けられて記憶される。
【0044】
上記座標は、スキャン情報データベース13Bの座標と同一の情報であり、上記温度は、対応する点における、上述した温度情報である。即ち、本実施形態に係る温度情報データベース13Cは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた温度情報が、対応する点の座標情報と共に登録されるものである。
【0045】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る属性情報データベース13Dについて説明する。図6は、本実施形態に係る属性情報データベース13Dの構成の一例を示す模式図である。
【0046】
図6に示すように、本実施形態に係る属性情報データベース13Dは、座標、及び属性の各情報が関連付けられて記憶される。
【0047】
上記座標は、スキャン情報データベース13Bの座標と同一の情報であり、上記属性は、後述する情報処理によって対応する点に付加された属性を示す情報である。なお、本実施形態では、上記属性として、上述した同一部材の種類(本実施形態では、給水配管、給湯配管、及び排水配管の3種類)を適用している。
【0048】
次に、図7図9を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の作用を説明する。図7は、本実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
3次元撮影を行う撮影者は、対象とする既存の建物(以下、「対象建物」という。)の内部における、対象とする領域(以下、「対象領域」という。)内の各種部材の3次元情報を得ることのできる複数の位置において3Dスキャナ50を用いた3次元撮影を行う。この3次元撮影によって、対象建物の対象領域に対応し、かつ、撮影位置毎の、上述した座標情報、反射強度情報、色情報、及び温度情報の各情報が得られ、一時的に記憶部58に記憶される。その後、撮影者は、3Dスキャナ50に記憶された撮影位置毎の座標情報、反射強度情報、色情報、及び温度情報の各情報を情報処理装置10に送信する操作を行う。
【0050】
撮影位置毎の各情報が3Dスキャナ50から受信されると、情報処理装置10では、当該各情報における座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報が、対象領域を示す点群データとして1つの情報に合成されて、スキャン情報データベース13Bに登録される。なお、このとき、受信した各情報における温度情報は、スキャン情報データベース13Bとは別に、情報処理装置10の記憶部13の所定領域に一時的に記憶される。
【0051】
この状態において、情報処理装置10のユーザは、情報処理プログラム13Aの実行を開始する指示入力を、入力部14を介して行う。この指示入力に応じて、情報処理装置10のCPU11が当該情報処理プログラム13Aを実行することにより、図7に示す情報処理が実行される。
【0052】
図7のステップ100で、CPU11は、予め定められた構成とされた初期情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ102で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0053】
図8には、本実施形態に係る初期情報入力画面の一例が示されている。図8に示すように、本実施形態に係る初期情報入力画面では、設備配管の系統別の温度範囲の設計値の入力を促すメッセージが表示されると共に、給水配管、給湯配管、及び排水配管の各配管の温度範囲を入力するための入力領域15Aが表示される。
【0054】
一例として図8に示す初期情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、入力部14を用いて、給水配管、給湯配管、及び排水配管の各設備配管の設計上の温度範囲を、対応する入力領域15Aに入力した後、終了ボタン15Eを指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。なお、初期情報入力画面においてユーザにより入力された各配管別の3種類の温度範囲を、以下では「指定温度範囲」という。また、以下では、錯綜を回避するために、当該3種類の指定温度範囲に重複する温度範囲は存在しない場合について説明する。
【0055】
ステップ104で、CPU11は、スキャン情報データベース13Bから全ての情報(以下、「スキャン情報」という。)を読み出し、ステップ106で、CPU11は、記憶部13の上記所定領域から温度情報を読み出す。
【0056】
ステップ108で、CPU11は、読み出したスキャン情報における座標情報と温度情報とを、対応する点同士で関連付けて温度情報データベース13Cに記憶することで、当該座標情報が示す各点に温度情報を付加する。このステップ108の処理により、一例として図5に示す温度情報データベース13Cが構築されることになる。
【0057】
ステップ110で、CPU11は、読み出したスキャン情報の座標情報が示す何れかの点(以下、「処理対象点」という。)に対応する温度情報が示す温度が、ユーザによって入力された3種類の指定温度範囲の何れかに含まれるか否かを判定する。この判定において、否定判定となった場合はステップ114に移行する一方、肯定判定となった場合はステップ112に移行する。
【0058】
ステップ112で、CPU11は、ステップ110の処理において含まれると判定された指定温度範囲に対応する設備配管を示す情報を属性情報として、処理対象点の座標情報と共に属性情報データベース13Dに記憶する。この処理により、属性情報データベース13Dには、処理対象点の座標情報と、給水配管、給湯配管、及び排水配管の何れかの情報(属性情報)と、が関連付けられて登録されることになる。
【0059】
ステップ114で、CPU11は、読み出したスキャン情報の座標情報が示す全ての点について、ステップ110~ステップ112の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ110に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ116に移行する。なお、ステップ110~ステップ114の処理を繰り返し実行する場合に、CPU11は、それまでに処理対象としなかった点を処理対象点として適用する。
【0060】
以上のステップ110~ステップ114の処理により、一例として図6に示す属性情報データベース13Dが構築されることになる。
【0061】
ステップ116で、CPU11は、属性情報データベース13Dから全ての座標情報及び属性情報を読み出し、読み出した情報を用いて、芯線が連続している点群で構成される部材を併合する併合処理を以下のように行う。
【0062】
即ち、まず、CPU11は、読み出した座標情報が示す位置が隣接しており、かつ、読み出した属性情報が同一の点を同一のグループとして纏めるグルーピングを行う。このグルーピングにより、属性毎(本実施形態では、給水配管、給湯配管、及び排水配管の各設備配管の種類毎)の複数のグループが構成される。
【0063】
次いで、CPU11は、上記複数のグループの各々における芯線を導出する。本実施形態では、属性を付与する部材として円柱状や角柱状の設備配管を適用しているため、上記芯線として、上記グループ毎の部材の中心軸を適用している。
【0064】
そして、CPU11は、同一の属性情報で、かつ、芯線が連続するグループを同一系統の部材として併合する。即ち、本実施形態に係る併合処理では、温度範囲が共通の部材であっても、芯線が連続していない部材については、同一系列の部材とは見なさず、併合しないものとしている。
【0065】
ステップ118で、CPU11は、以上の処理によって得られた各種情報を用いてBIMモデルを作成する。ステップ120で、CPU11は、作成したBIMモデルを示す、予め定められた構成とされたBIMモデル表示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ122で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0066】
図9には、本実施形態に係るBIMモデル表示画面の一例が示されている。図9に示すように、本実施形態に係るBIMモデル表示画面では、BIMモデルが、各設備配管が系統別に異なる濃度とされた状態で表示される。従って、ユーザは、当該BIMモデル表示画面を参照することで、系統別の設備配管の配置状態を確認することができる。
【0067】
一例として図9に示すBIMモデル表示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示されているBIMモデルを確認した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ122が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、3次元撮影によって得られた点群データを構成する点に温度情報を付加する付加部11Aと、上記温度情報が示す温度が予め定められた温度範囲内にあり、かつ、芯線が連続している上記点で構成される部材を同一部材として併合する併合部11Bと、併合部11Bによって併合された同一部材を部材毎に識別できるように、上記点群データに基づく画像を表示部に表示する制御を行う制御部11Cと、備えている。従って、より簡易に建物の部材に属性を付与することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、上記部材の系統毎の設計上の温度範囲を上記予め定められた温度範囲として取得し、併合した同一系統の部材を系統毎に識別できるように、上記画像を表示部に表示する制御を行っている。従って、より簡易に、建物の同一系統の部材毎に属性を付与することができる。
【0070】
更に、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、上記同一系統の部材を、給水配管、給湯配管、及び排水配管としている。従って、これらの設備配管の各系統別に、より簡易に属性を付与することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、複数の指定温度範囲に重複が存在しない場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の指定温度範囲に重複が存在する形態としてもよい。この場合、上記重複する温度範囲に処理対象点の温度が含まれる場合には、例えば、処理対象点の温度が指定温度範囲における中央値に近い方の指定温度範囲に対応する属性を付与する形態としてもよい。また、この場合、芯線が連続する他のグループに付与された属性を自身の属性として付与する形態としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、スキャン情報データベース13B、温度情報データベース13C、及び属性情報データベース13Dを別体構成とした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、これらのデータベースのうちの2組の組み合わせ、又は全てを単一のデータベースとして構成する形態としてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、BIMモデル表示画面において、各設備配管が系統別に異なる濃度とされた状態でBIMモデルを表示する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、各設備配管が系統別に異なる色とされた状態でBIMモデルを表示する形態としてもよく、各設備配管の近傍に当該設備配管の系統名を示す文字情報を表示する形態としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、情報処理装置10が、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、スマートフォン、携帯情報端末等のモバイル型のコンピュータを情報処理装置10として適用する形態としてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、情報処理装置10が3Dスキャナ50とは別体で構成されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、3Dスキャナ50に情報処理装置10が内蔵されている形態としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、3Dスキャナ50によって対象建物の内部を撮影する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、室外機置き場や、冷却塔の配管等を対象とした、対象建物の外部を3Dスキャナ50で撮影する形態としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、各種設備配管を3段階の温度範囲で区分する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、2段階や4段階以上の段階数で各種設備配管等を区分する形態としてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、対象建物に対する3Dスキャナ50による撮影が終了した後に一例として図7に示す情報処理を実行する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、3Dスキャナ50による撮影と並行して、上記情報処理を実行する形態としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、例えば、付加部11A、併合部11B、制御部11C、及び取得部11Dの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0080】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0081】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0082】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 付加部
11B 併合部
11C 制御部
11D 取得部
12 メモリ
13 記憶部
13A 情報処理プログラム
13B スキャン情報データベース
13C 温度情報データベース
13D 属性情報データベース
14 入力部
15 表示部
15A 入力領域
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 3Dスキャナ
52 スキャナ本体
56 赤外線カメラ
58 記憶部
60 脚部
90 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10