(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20241128BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241128BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/04
G08G1/16 D
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2020212980
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 真知子
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕史
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171022(WO,A1)
【文献】特開2005-301369(JP,A)
【文献】特開2011-113503(JP,A)
【文献】特開2007-219659(JP,A)
【文献】特開2019-028000(JP,A)
【文献】特開2010-236996(JP,A)
【文献】特開2017-198495(JP,A)
【文献】特開2012-003710(JP,A)
【文献】特開2020-060839(JP,A)
【文献】特開2008-299758(JP,A)
【文献】特開2007-133673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/16
B60W 40/04
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時において、自車両と前車との間の車間距離が所定距離になるように自車両を制御する運転支援方法であって、
自車両が走行する道路の混雑度合いを含む道路情報を取得し、
自車両が、
右折または左折する車両のみ通過が許容される専用レーンを走行する際、前記混雑度合いが所定値より大きい場合、前車との車間距離を、前記混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離よりも短い第2車間距離に制御
し、
前記混雑度合いが所定値より大きい場合であって、前記専用レーンにおける自車両の走行路上において自車両の前に他車両が存在しない場合、自車両の加速度を前記混雑度合いが所定値以下の場合の加速度より大きくなるように制御する、
運転支援方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の運転支援方法であって、
前記専用レーンに接続する交差点に、右折または左折のみを許可する専用信号が無い場合、前記交差点内における前車との車間距離は、前記第2車間距離よりも大きくする、
運転支援方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の運転支援方法であって、
前記混雑度合いの大きさは、単位時間当たりに前記
専用レーンを通過する車両台数または前記
専用レーンにおける単位距離当たりの車両台数から算出される前記
専用レーンの交通容量に基づき決定される、
運転支援方法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一つに記載の運転支援方法であって、
前記混雑度合いが所定値より大きい場合とは、交通量が所定値以上の場合である、
運転支援方法。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれか一つに記載の運転支援方法であって、
前記混雑度合いが所定値より大きい場合とは、路上を走行する車両の走行速度が所定値以下の場合である、
運転支援方法。
【請求項6】
自車両の速度、加速度及び前車との車間距離を制御する走行制御部、を備える運転支援装置であって、
自車両が走行する経路上における、
右折または左折する車両のみ通過が許容される専用レーンの情報と、自車両が走行する道路の混雑度合いとを含む道路情報を取得する道路情報検出部を備え、
前記走行制御部は、自車両が前記
専用レーンを走行する際、前記混雑度合いが所定値より大きい場合、前車との車間距離を、前記混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離よりも短い第2車間距離に制御
し、
前記混雑度合いが所定値より大きい場合であって、前記専用レーンにおける自車両の走行路上において自車両の前に他車両が存在しない場合、自車両の加速度を前記混雑度合いが所定値以下の場合の加速度より大きくなるように制御する、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両と先行車両(前車)との車間距離を制御する運転支援装置が開示されている。この運転支援装置では、自車両の交差点までの到達距離が所定以内のときは、前車との目標車間距離を交差点の入口から出口までの距離(交差点内道路長)よりも長い距離に設定する。これにより、前車が交差点内等で停止した場合には、自車両を交差点の手前で停止することができるため、自車両が交差点内に停止することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の運転支援装置では、前車との車間距離を交差点内道路長よりも長くとるため、例えば右折専用レーンからの右折時等のように車両が交差点を通過可能な時間が短い場合、1回の青信号期間内に通過できる車両の台数が制限されてしまう。即ち、交通効率を悪化させてしまう虞がある。
【0005】
一方、常に前車との車間距離を短くすると、例えば前車が交差点内で停止した場合、自車両が交差点内に停止することになり、対向車線の通行の妨げとなるとともに、自車両や対向車両(他車両)の乗員に違和感を与える。また、例えば、直進路等を走行中に、前車(他車両)との車間距離が短いと、前車の乗員に違和感を与える虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、自車両や他車両の乗員等に違和感を与えることなく交通効率の向上に貢献できる運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、車両走行時において、自車両と前車との間の車間距離が所定距離になるように自車両を制御する運転支援方法が提供される。この運転支援方法では、自車両が走行する道路の混雑度合いを含む道路情報を取得する。そして、自車両が、右折または左折する車両のみ通過が許容される専用レーンを走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車との車間距離を、混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離よりも短い第2車間距離に制御する。また、混雑度合いが所定値より大きい場合であって、専用レーンにおける自車両の走行路上において自車両の前に他車両が存在しない場合、自車両の加速度を混雑度合いが所定値以下の場合の加速度より大きくなるように制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両が特定道路区間を走行する際、混雑度合いが所定値よりも大きい場合には、前車との車間距離を混雑度合いが所定値以下の場合の第1車間距離よりも短い第2車間距離に制御する。このように混雑度合いが大きい場合に車間距離を詰めることで、例えば右折専用レーン(特定道路区間)に接続する交差点において、1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。一方、自車両が特定道路区間以外の区間を走行中の場合や混雑度合いが所定値以下の特定道路区間を走行中の場合には、自車両及び他車両の乗員等が違和感を覚えない十分な車間距離(第1車間距離)がとられる。また、混雑度合いが大きい場合には、車両走行速度が小さいため、混雑していない場合より車間距離を短くしても自車両及び他車両の乗員等に違和感を与えない。従って、自車両及び他車両の乗員等に違和感を与えることなく交通効率の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の各実施形態に共通する運転支援装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、通常車間距離制御を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、自車両が右折専用レーン及び交差点内右折区間を走行する際の車間距離制御及び加速度制御を説明する図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の各実施形態に共通する運転支援装置100の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、運転支援装置100は、カメラ110、GPS受信機120、センサ130、通信インターフェース140、地図データベース150、表示装置160、アクチュエータ170、コントローラ180等を備える。運転支援装置100は、例えば自動運転機能を有する車両(自車両1)に搭載される。
【0013】
カメラ110は、自車両1の外部状況を撮像する撮像機器であり、自車両1の外部状況に関する撮像情報を取得する。カメラ110は、例えば、自車両1のフロント、リア、左右ドアの車室外側または内側等に設けられる。カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報はコントローラ180へ出力される。
【0014】
GPS受信機120は、GPS衛星から送信される信号(GPSデータ)を周期的に受信し、自車両1の地球上における位置(位置情報)を検出する。検出された自車両1の位置情報は、コントローラ180に出力される。
【0015】
センサ130は、レーダー、ジャイロセンサ及び車速センサ等を含み、自車両1の走行状態を検出する。レーダーは電波を利用して自車両1の外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波であり、レーダーは、電波を自車両1の周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して他車両を含む物体を検出する。これにより、例えば周囲の物体までの距離または方向を物体情報として取得することができる。ジャイロセンサは、自車両1の方位を検出する。車速センサは、自車両1の車速を検出する。センサ130は、取得した物体情報、検出した自車両1の方位、車速をコントローラ180へ出力する。
【0016】
通信インターフェース140は、無線通信により外部から自車両1の周囲状況を取得する。通信インターフェース140は、例えば渋滞情報、交通規制情報等の交通情報や、天気情報等をリアルタイムに送信する高度道路交通システム(ITS)から種々の情報を受信する。ITSは、他車両との間の車車間通信、路側機との間の路車間通信、VICS((登録商標):Vehicle Information and Communication System)等を含む。通信インターフェース140は、例えば、車車間通信により、自車両1の周囲の他車両の加減速度、自車両1に対する相対位置情報等を取得する。通信インターフェース140は、取得した各種の情報をコントローラ180へ出力する。
【0017】
地図データベース150には、地図情報が記憶されている。地図情報には、道路の形状、勾配、幅員、制限速度、交差点、レーン数に関する情報の他、右折または左折等の専用レーンの情報、右折または左折専用信号機を含む信号機に関する情報等が含まれる。地図データベース150に記憶されている地図情報は、後述するコントローラ180により、いつでも参照可能な状態になっている。
【0018】
表示装置160は、後述するコントローラ180の制御に基づく各種の情報を表示してドライバに報知するための装置である。表示装置160は、例えば、自車両1のメータ部に組み込まれたメータディスプレイ及び各種の情報をフロントガラスに映し出すヘッドアップディスプレイ等を含み、これらは各種の制御情報を表示する。
【0019】
アクチュエータ170は、コントローラ180からの指令に基づいて自車両1の走行制御を実行する装置であり、アクチュエータ170は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及びステアリングアクチュエータ等を含む。駆動アクチュエータは、自車両1の駆動力を調節する。ブレーキアクチュエータは、コントローラ180からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両1の車輪へ付与する制動力を調節する。ステアリングアクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータ等で構成される。アクチュエータ170は、コントローラ180の指令により、例えば後述する特定道路区間における車間距離制御を実行する。
【0020】
コントローラ180は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インターフェース(I/Oインターフェース)を備えたコンピュータで構成される。コントローラ180は、一つのコンピュータで構成しても良いし、複数のコンピュータで構成しても良い。
【0021】
コントローラ180は、道路情報検出部181、前方車両検出部182、走行切替判定部183、走行制御部184等を含む。
【0022】
道路情報検出部181は、カメラ110、GPS受信機120、センサ130及び通信インターフェース140から受信した各種の情報、及び地図データベース150の地図情報を統合し、道路情報として検出する。
【0023】
道路情報検出部181は、GPS受信機120からの位置情報と、センサ130により検出された自車両1の方位、車速と、地図データベース150の地図情報とから、自車両1の正確な現在位置、車速及び進行方位を常時検出する。また、道路情報検出部181は、検出された自車両1の現在位置、車速、進行方位と、カメラ110により取得された外部状況に関する撮像情報と、センサ130により取得された物体情報と、通信インターフェース140により取得された各種の情報とを統合して、道路情報として検出する。道路情報として検出される情報には、自車両1が走行する道路及び自車両1の周囲の道路のレーン、信号機、混雑度合い、制限速度、自車両1の周囲の他車両の相対位置、加減速度等に関する情報が含まれる。例えば、道路情報検出部181は、自車両1が走行する道路における右折専用レーン、右折専用信号を検出する。なお、道路情報の検出方法は上記に限られず、既知の如何なる方法を用いてもよい。
【0024】
前方車両検出部182は、自車両1の走行路上において、自車両1の前方を走行する他車両のうち、自車両1に最も近い他車両2(
図2を参照。以下、前車2とする)の有無、位置、車種、速度及び加速度等を検出する。なお、自車両1の走行路上とは、自車両1が走行するレーンと同一のレーンまたは自車両1が交差点内を走行している場合は交差点内における自車両1が通行するエリアを言う。前車2の検出に用いられる情報は、特に限定されないが、例えば、通信インターフェース140により取得されたITSの車車間通信による情報等に基づき検出される。
【0025】
走行切替判定部183は、道路情報に基づき、自車両1と前車2との目標車間距離または自車両1の目標速度及び目標加速度の設定を切り替えるか否かの判断を行う。また、走行切替判定部183は、目標車間距離または自車両1の速度及び加速度の設定を切り替えた場合、切替内容を表示装置160に表示させ、乗員に報知する。なお、目標車間距離の初期設定は任意に決定することができるが、自車両及び他車両の乗員等に違和感を与えない十分な距離(第1車間距離L1)がとられる。例えば、自車両1が制限速度で走行している際に、前車2が急停車した場合であっても、自車両1が前車2の手前で余裕をもって停止できる程度の距離に設定される。このような車間距離であれば、自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない。なお、目標車間距離または速度及び加速度の切り替えについての詳細は後述する。
【0026】
走行制御部184は、自車両1と前車2との車間距離Lが、設定されている目標車間距離になるように、目標車間距離と前車2の位置、速度及び加速度とに基づき、アクチュエータ170を制御する。また、走行制御部184は、自車両1の目標速度及び目標加速度が設定されている場合、自車両1が設定されている目標速度及び目標加速度になるように、アクチュエータ170を制御する。
【0027】
このように構成されたコントローラ180は、特定のプログラムを実行することにより、運転支援装置100全体を制御するための処理を実行する。例えば、コントローラ180は、後述する特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を実行する。
【0028】
上記の構成による運転支援装置100では、自車両1と前車2との間で、自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない十分な車間距離がとられる。しかしながら、例えば、右折専用レーンや本線に合流するための合流レーン等のように、他車両の進入が予定されていない特定道路区間を走行する際、混雑度合いが大きい場合、車間距離Lを大きくとりすぎると、交通効率を悪化させてしまう虞がある。例えば右折専用レーンからの右折時には、車両が交差点を通過可能な時間が短い。従って、右折専用レーンを走行中に大きな車間距離をとると、混雑度合いが大きい場合、右折専用レーンに接続する交差点において1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数が制限されてしまう。また、合流レーンにおいては、合流レーンの先頭で合流レーンを走行する車両と本線を走行する車両とが交互に合流するジッパー合流が推奨されるが、混雑度合いが大きい場合に大きな車間距離を取ると、ジッパー合流をスムーズに行うことができなくなる虞がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、自車両1が、右折専用レーン等のような他車両の進入が予定されていない特定道路区間を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合には、前車2との車間距離Lを、混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に制御することとした。これにより、例えば右折専用レーンに接続する交差点において、1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる等、特定道路区間における交通効率を向上することができる。一方、混雑度合いが所定値以下の場合は十分な車間距離(第1車間距離L1)がとられる。また、混雑度合いが大きい場合には、車両走行速度が小さいため、混雑していない場合よりも車間距離Lを短くしても自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない。従って、自車両及び他車両の乗員等に違和感を与えず、且つ交通効率の悪化が防止される。
【0030】
なお、他車両の進入が予定されていない特定道路区間とは、法律上、他レーンからの車両の進入が禁止されている区間や、物理上、車両が進入してくることが不可能な区間だけでなく、レーンの種類や交差点までの距離等を考慮すると、他車両の進入が考えにくいような道路区間を含む。例えば、特定道路区間は、前述の右折専用レーンや合流レーンのほか、2つの交差点を結ぶ道路の距離が短い(所定値以下)場合における、当該2つの交差点の交差点と交差点との間の区間等を含む。
【0031】
また、混雑度合いを表す数値のパラメータには、例えば、単位時間当たりに対象となる道路を通過する車両台数、または対象となる道路における単位距離当たりの車両台数から算出される交通容量等が用いられる。例えば、自車両1が走行中の特定道路区間における交通容量の値が所定値より大きい場合、自車両1と前車2との車間距離Lが第2車間距離L2に制御される。
【0032】
図2は、通常車間距離制御を説明する模式図、
図3~
図6は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明する模式図である。第1実施形態は、自車両1が、右折する車両のみ通過が許容される右折専用レーンR
1を走行する場合における車間距離制御及び加速度制御である。
【0033】
自車両1が特定道路区間以外の道路を走行している場合、及び自車両1が特定道路区間を走行している場合であっても、混雑度合いが所定値以下の場合には、自車両1と前車2との間に、自車両1及び前車2の乗員等が違和感を覚えない十分な車間距離(第1車間距離L
1)をとる通常車間距離制御が実行される。
図2は、自車両1が直進レーンを走行している場合の図である。
【0034】
直進レーンは、他車の進入が許容されるレーンであり、特定道路区間以外の道路に該当する。
図2に示すように、自車両1が直進レーンを走行中は、自車両1と前車2との間に、自車両1及び前車2の乗員等が違和感を覚えない十分な車間距離(第1車間距離L
1)がとられる。ここでの第1車間距離L
1とは、固定された値ではなく、自車両1や前車2の車速等を考慮して決定される。例えば、まず、自車両1と前車2との車間距離Lを自車両1の走行速度で割った車間時間(THW)の目標値を自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない程度の値に定めて、目標THWになるような車間距離Lを第1車間距離L
1とするようにしてもよい。この場合、自車両1の車速によって、具体的な第1車間距離L
1の数値は異なってくる。また、自車両1が走行中の場合には目標THWに基づき第1車間距離L
1を決定し、赤信号や渋滞等により自車両1が停止している場合には、目標THWは定めずに、第1車間距離L
1(例えば、4m)を決定するようにしてもよい。さらに、交差点付近では、前車2が交差点内で停止した場合に自車両1を交差点の手前で停止することができるように、交差点の入口から出口までの距離(交差点内道路長)よりも長い距離を第1車間距離L
1とするようにしてもよい。これにより、自車両1が交差点内に停止することを防止できる。
【0035】
なお、
図2では、自車両1が直進レーンを走行中の場合を例に説明したが、直進レーンでなくても、自車両1が特定道路区間以外の道路を走行している場合は、第1車間距離L
1がとられる通常車間距離制御が行われる。また、自車両1が特定道路区間を走行している場合であっても、混雑度合いが小さい(所定値以下)の場合は、第1車間距離L
1がとられる。
【0036】
一方、
図3及び
図4は、自車両1が、右折専用レーンR
1を走行する場合における車間距離制御及び加速度制御を説明する図である。
【0037】
図3、
図4では、右折専用レーンR
1に接続する交差点の信号機には、右折する車両のみ通過が許可される右折専用信号が設けられている。信号機に右折専用信号が設けられた交差点については、当該交差点に接続する右折専用レーンR
1、及び交差点入口から右折後に進入するレーンの入口(交差点出口)までの間における右折車両が通行する区間(交差点内右折区間)R
2は、他車両の進入が予定されていない。即ち、右折専用レーン及び右折専用信号がある
図3、
図4においては、右折専用レーンR
1及び交差点内右折区間R
2が特定道路区間である。なお、
図3は自車両1が右折専用レーンR
1を走行中の図、
図4は自車両1が交差点内右折区間R
2を走行中の図である。
【0038】
図3、
図4において、自車両1が走行する右折専用レーンR
1を走行中の車両数が多く、右折専用レーンR
1の混雑度合いが大きい。このような混雑度合いが大きい右折専用レーンR
1を走行中の場合に、車間距離Lを大きくとりすぎると、右折専用レーンR
1に接続する交差点において1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数が制限され、交通効率を悪化させてしまう虞がある。従って、本実施形態においては、右折専用レーン及び右折専用信号がある道路では、
図3、
図4に示すように、自車両1が右折専用レーンR
1及び交差点内右折区間R
2(即ち、特定道路区間)を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くする。即ち、自車両1と前車2との車間距離Lを、混雑度合いが小さい(所定値以下)の場合における第1車間距離L
1よりも短い第2車間距離L
2に制御する。
【0039】
ここでの第2車間距離L2とは、第1車間距離L1と同様に、固定された値ではなく、自車両1や前車2の車速等を考慮して決定される。例えば、自車両1と前車2との車間距離Lを自車両1の走行速度で割った車間時間(THW)の目標値を、自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない範囲で、できるだけ小さい値に定めて、目標THWになるような車間距離Lを第2車間距離L2とする。この場合、自車両1の車速によって、具体的な第2車間距離L2の数値は異なってくる。また、自車両1が走行中の場合には目標THWに基づき第2車間距離L2を決定し、赤信号や渋滞等により自車両1が停止している場合には、目標THWは定めずに、自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えない範囲で、できるだけ短い車間距離Lに第2車間距離L2(例えば、3m)を決定してもよい。
【0040】
上記の通り、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くするため、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。従って、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0041】
なお、自車両1が、混雑度合いが所定値より大きい右折専用レーンR1及び右折車のみ通行を許可された交差点内右折区間R2を走行する場合でも、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与える等の懸念(以下、懸念事由とする)がある場合は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくしてもよい。懸念事由には、例えば前車2の推定加速度が小さい場合、視界不良の場合、右折先のレーンの混雑度合いが大きい場合、右折専用信号が赤信号に切り替わる直前である場合等がある。
【0042】
前車2が、加速が遅い大型車(トラック、バス等)の場合や、前車2のドライバが高齢者や初心者であり、速度や加速が遅い場合等には、車間距離Lを詰めても、交通効率の向上が期待できない。また、このような場合において、車間距離Lを詰めて前車2に追従して右折しようとすると、交差点の途中で右折専用信号が赤信号になり、自車両1が交差点内に取り残される虞がある。さらに、前車2のドライバが運転に慣れていない場合、想定外の行動をとる虞や、車間距離Lを詰めることで前車2のドライバに対し、煽られているという不安感を与えてしまう虞もある。従って、右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2(特定道路区間)における前車2の推定加速度が所定値以下の場合、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくする(例えば第1車間距離L1にする)。なお、ここでの所定値は任意に決定でき、例えば、自車両1が走行中の道路において、一般の乗用車が減速または停止状態から加速する際の加速度の平均値を大幅に下回る加速度の値とされる。前車2の加速度は、前車2の車種、前車2のこれまでの走行速度、加速度等から推定する。
【0043】
また、前車2が大型車であることや、道路形状、橋脚、天候等の要因により自車両1からの視界が不良の場合、車間距離Lを詰めて前車2を追従すると、自車両1及び前車2の乗員等に違和感や不安感等を与える虞がある。従って視界不良の場合にも、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくする(例えば第1車間距離L1にする)。
【0044】
また、右折先のレーンの混雑度合いが大きい場合、右折先のレーンに自車両1が進入するスペースが無い場合がある。このような場合に車間距離Lを詰めて前車2を追従すると、自車両1が右折先のレーンに進入できず、交差点内に取り残される虞がある。従って、右折先のレーンの混雑度合いが大きい場合にも、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくする(例えば第1車間距離L1にする)。なお、右折先の混雑度は、道路情報、特に通信インターフェース140により取得された各種の情報等から判断される。
【0045】
また、右折専用信号が赤信号に切り替わる直前である場合、車間距離を詰めて前車2を追従すると、交差点の途中で右折専用信号が赤信号になり、自車両1が交差点内に取り残される虞がある。従って、このような場合にも、自車両1と前車2との車間距離を第2車間距離L2よりも大きくする(例えば第1車間距離L1にする)。なお、右折専用信号の切り替わりは、道路情報、特に通信インターフェース140により取得される路車間通信の情報等から判断される。
【0046】
このように、懸念事由がある場合は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくすることで、自車両1及び前車2の乗員等に違和感を与えることを抑制できる。
【0047】
次に、
図5及び
図6は、
図3及び
図4と同様に、自車両1が、右折専用レーンR
1を走行する場合における車間距離制御を説明する図である。但し、
図5及び
図6では、
図3及び
図4と異なり、自車両1が走行する右折専用レーンR
1に接続する交差点の信号機に、右折専用信号が設けられていない。
【0048】
図5及び
図6のように、右折専用レーンR
1に接続する交差点の信号機に右折専用信号が設けられていない場合(以下、右折専用信号が無い場合、とする)、交差点の信号機が青信号期間であっても交差点内における右折車両が通る区間(交差点内右折区間R
2)に、対向車線から直進してくる他車両が当該区間R
2を通過(当該区間R
2に進入)する。このように、右折専用信号が無い
図5、
図6においては、交差点内右折区間R
2にも他車両が進入してくる場合があるため、右折専用レーンR
1のみが特定道路区間である。なお、
図5は自車両1が右折専用レーンR
1を走行中の図、
図6は自車両1が交差点内右折区間R
2を走行中の図である。
【0049】
前述のとおり、混雑度合いが大きい右折専用レーンR
1を走行中の場合に、車間距離Lを大きくとりすぎると、右折専用レーンR
1に接続する交差点において1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数が制限され、交通効率を悪化させてしまう虞がある。これは右折専用信号が無い場合においても同様である。
図5において、自車両1が走行する右折専用レーンR
1を走行中の車両数が多く、右折専用レーンR
1の混雑度合いが大きい。従って、本実施形態では、自車両1が右折専用レーンR
1を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、右折専用信号が無い場合においても自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くする。即ち、自車両1と前車2との車間距離Lを、混雑度合いが小さい(所定値以下)の場合における第1車間距離L
1よりも短い第2車間距離L
2に制御する。これにより、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができ、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0050】
一方、右折専用信号が無い場合、右折専用レーンR
1に接続する交差点内では、前述のように自車両1が走行する交差点の信号機が青信号であっても、交差点内右折区間R
2に、対向車線から直進してくる他車両が進入してくる。また、右折専用信号が無い場合、
図6に示すように、右折先レーン入口手前(交差点内右折区間R
2の範囲内)の横断歩道を歩行者が通行してくる場合がある。このように、右折専用信号が無い場合、他車両や歩行者が進入し得る交差点内右折区間R
2において自車両1と前車2との車間距離Lを短くして前車2を追従すると、自車両1が他車両や歩行者の妨げとなる虞がある。従って、本実施形態では、右折専用信号が無い場合、交差点内右折区間R
2において自車両1と前車2との間の車間距離Lを第2車間距離L
2よりも大きくする。例えば、
図6のように、交差点内右折区間R
2においては、自車両1と前車2との間の車間距離Lを第1車間距離L
1に制御する。
【0051】
このように、混雑度合いが所定値より大きい場合において、右折専用レーンR1に接続する交差点に右折専用信号が無い場合は、右折専用レーンR1を走行する際と交差点内右折区間R2を走行する際とで自車両1と前車2との車間距離Lを切り替える。即ち、右折専用レーンR1を走行中は、自車両1と前車2との車間距離Lを混雑度合いが所定値以下の場合の第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2にし、交差点内右折区間R2を走行中は、第2車間距離L2よりも大きい車間距離(例えば第1車間距離L1)にする。これにより、車両や歩行者の妨げとなることを防止しつつ、交通効率を向上させることができる。
【0052】
なお、右折専用信号が無い場合においても、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与える等の懸念(懸念事由)がある場合は、自車両1が、混雑度合いが所定値より大きい右折専用レーンR1を走行する際にも、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくしてもよい。即ち、前車2の推定加速度が小さい場合、視界不良の場合、右折先のレーンの混雑度合いが大きい場合、右折専用信号が赤信号に切り替わる直前である場合等においては、自車両1が、混雑度合いが所定値より大きい右折専用レーンR1を走行する際にも車間距離Lが大きくとられる。
【0053】
ところで、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、自車両1の走行路上において自車両1の前に他車両が存在しない場合、即ち、前車2が存在せず、自車両1が先頭車両である場合は、車間距離による制御を行うことはできない。そこで、特定道路区間走行中において、前車2が存在せず、自車両1が先頭車両である場合には、以下の速度及び加速度制御を行うこととしてもよい。
【0054】
自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、自車両1が先頭車両である場合、自車両1が走行する道路の制限速度、道幅、曲率等の道路情報に基づき目標速度が設定され、自車両1の加速度aは、自車両1の速度が目標速度に近づくように制御される。
【0055】
ここで、自車両1が走行する右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2の混雑度合いが所定値よりも大きく、且つ当該交差点に右折専用信号がある場合、自車両1の加速度aは、混雑度合いが所定値以下の場合における第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御される。これにより、混雑度合いが所定値より大きい場合、右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2において自車両1は、より速く加速される。このように混雑度合いが所定値より大きい場合に加速度aをより大きくすると、自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数は増加する。従って、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0056】
一方、右折専用信号が無い場合、交差点の信号機が青信号であっても、交差点内右折区間R2には対向車線からの他車両や横断歩道を渡る歩行者が進入してくる虞がある。このような他車両や歩行者が進入してくる可能性のある交差点内右折区間R2において、自車両1の加速度aを大きくすると、自車両1が他車両や歩行者の妨げとなる虞がある。従って、右折専用信号が無い場合は、混雑度合いが所定値より大きい場合でも、交差点内右折区間R2においては自車両1の加速度aが第1加速度a1に制御される。一方、右折専用信号が無い場合でも、右折専用レーンR1には他車両の進入が予定されていない。従って、混雑度合いが所定値より大きい場合、右折専用レーンR1においては、自車両1の加速度aは、混雑度合いが所定値以下の場合の第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御される。このように、右折専用信号が無い場合は、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1が右折専用レーンR1を走行中は自車両1の加速度aをより大きい第2加速度a2に制御し、交差点内右折区間R2を走行中は加速度aを混雑度合いが所定値以下の場合と同様の第1加速度a1に制御する。これにより、乗員等に違和感を与えることを抑制することと交通効率の向上を両立させることができる。
【0057】
図7は、自車両1が右折専用レーンR
1及び交差点内右折区間R
2を走行する際の車間距離制御及び加速度制御を説明する図であり、混雑度合い及び右折専用信号の有無による制御の違いを説明する図である。
【0058】
自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、混雑度合いが所定値以下の場合、自車両1の加速度aまたは自車両1と前車2との車間距離Lは以下の通り制御される。即ち、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、自車両1が先頭車両であれば自車両1の加速度aは第1加速度a1に制御される。自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、自車両1が先頭車両ではない場合、自車両1と前車2との車間距離Lは、第1車間距離L1に制御される。
【0059】
一方、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合は、自車両1の加速度aまたは自車両1と前車2との車間距離Lは以下の通り制御される。
【0060】
まず、右折専用レーンR1に接続する交差点に右折専用信号がある場合、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際に、自車両1が先頭車両であれば、自車両1の加速度aは第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御される。また、自車両1が右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2を走行する際、自車両1が先頭車両ではない場合、自車両1と前車2との車間距離Lが第1車間距離L1より短い第2車間距離L2に制御される。このように、右折専用信号がある場合、青信号期間において対向車線を走る他車両や横断歩道を渡る歩行者が進入してくる虞がないため、自車両1が先頭車両なら加速度aをより速い第2加速度a2に、前車2が存在するなら自車両1と前車2との車間距離Lをより短い第2車間距離L2に制御する。これにより、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数が増加し、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0061】
一方、右折専用信号が無い場合は、右折専用レーンR
1を走行する際と交差点内右折区間R
2を走行する際とで、自車両1の加速度aまたは自車両1と前車2との車間距離Lが切り替えられる。即ち、
図5に示すように、右折専用信号が無い場合、自車両1が先頭車両であれば、自車両1が右折専用レーンR
1を走行する際、自車両1の加速度aは第1加速度a
1よりも大きい第2加速度a
2に制御される。一方、自車両1が交差点内右折区間R
2を走行する際は、自車両1の加速度aは、混雑度合いが所定値以下の場合と同様の第1加速度a
1に制御される。また、右折専用信号が無い場合、自車両1が先頭車両でなければ、自車両1が右折専用レーンR
1を走行する際、自車両1と前車2との車間距離Lは第1車間距離L
1よりも短い第2車間距離L
2に制御される。一方、自車両1が交差点内右折区間R
2を走行する際は、車間距離Lは、混雑度合いが所定値以下の場合と同様の第1車間距離L
1に制御される。このように、右折専用信号が無い場合、青信号期間であっても交差点内右折区間R
2において対向車線を走る他車両や横断歩道を渡る歩行者が進入してくる可能性があるため、自車両1が交差点内右折区間R
2を走行中は、自車両1の加速度aや自車両1と前車2との車間距離Lを第2加速度a
2や第2車間距離L
2に切り替えない。これにより、自車両1が他車両や歩行者の妨げになるのを防止することと交通効率の向上を両立させることができる。
【0062】
図8は、第1実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御(以下、運転制御とする)を説明するフローチャートである。なお、以下の制御はいずれもコントローラ180により実行される。
【0063】
自車両1の走行中、道路情報検出部181により自車両1の前方に右折専用レーン等の特定道路区間が検出されると、コントローラ180は、特定道路区間における運転制御を開始する。
【0064】
ステップS101において、コントローラ180は、道路情報検出部181が検出した道路情報に基づき、検出された右折専用レーンR1を自車両1が走行するまたは走行しているか否かを判断する。自車両1が右折専用レーンR1を走行しない場合、即ち、自車両1が直進レーンを走行する場合、コントローラ180は、特定道路区間における運転制御を終了する。一方、自車両1が右折専用レーンR1を走行するまたは走行している場合、コントローラ180は、ステップS102の処理を実行する。
【0065】
ステップS102において、コントローラ180は、道路情報検出部181が検出した道路情報に基づき、自車両1が走行する道路の混雑度合いを算出する。混雑度合いを表す数値のパラメータには、前述の交通容量の他、交通量、走行速度等を用いることができる。コントローラ180は、道路情報に基づき、自車両1が走行する道路の交通容量、交通量、走行速度等を算出する。
【0066】
自車両1が走行する道路の混雑度合いを算出すると、コントローラ180は、ステップS103において、ステップS102で算出された混雑度合いが所定値より大きいか否かを判断する。ここでの所定値は任意に設定することができる。例えば混雑度合いの数値パラメータとして交通容量を用いる場合、自車両1が走行する道路を走行する車両の速度が、当該道路の法定速度を大幅に下回る場合の交通容量の値等に設定される。また、交通量を用いる場合、例えば、自車両1が走行する道路がVICS((登録商標):Vehicle Information and Communication System)において渋滞レベルと示されるような交通量の値に設定される。また、走行速度を用いる場合、例えば、自車両1が走行する道路を走行する車両の速度が当該道路の法定速度を大幅に下回るような値に設定される。ステップS103において、自車両1が走行する道路の混雑度合いが所定値以下の場合、コントローラ180はステップS116の処理を実行する。
【0067】
ステップS116において、コントローラ180は、自車両1が先頭車両であるか否か、即ち、前車2が存在するか否かを判断する。前車2の有無は、前方車両検出部182が前車2を検出したか否かで判断される。前方車両検出部182が前車2を検出すると、走行切替判定部183は、自車両1が先頭車両であると判断する。コントローラ180は、自車両1が先頭車両である場合、ステップS117の処理を実行し、自車両1が先頭車両ではない(前車2が存在する)場合は、ステップS118の処理を実行する。
【0068】
ステップS116において、自車両1が先頭車両であると判断された場合、コントローラ180は、ステップS117において、自車両1の加速度aを第1加速度a1に制御する。自車両1が先頭車両である場合、右折専用レーン進入時に、自車両1の目標加速度は通常、第1加速度a1に設定されている。従って、ステップS117において、走行切替判定部183は目標加速度を第1加速度a1のまま維持する。目標加速度が第1加速度a1に維持されると、走行制御部184は、自車両1の加速度aが第1加速度a1となるようにアクチュエータ170を制御する。
【0069】
ステップS116において、自車両1が先頭車両ではないと判断された場合、コントローラ180は、ステップS118において、自車両1と前車2との車間距離Lを第1車間距離L1に制御する。自車両1が先頭車両ではない場合、右折専用レーン進入時に、通常、自車両1と前車2との目標車間距離は第1車間距離L1に設定されている。従って、ステップS117において、走行切替判定部183は目標車間距離を第1車間距離L1のまま維持する。目標車間距離が第1車間距離L1に維持されると、走行制御部184は、自車両1と前車2との車間距離Lが第1車間距離L1となるようにアクチュエータ170を制御する。
【0070】
一方、ステップS103において、自車両1が走行する道路の混雑度合いが所定値より大きい場合、コントローラ180は、ステップS104の処理を実行する。
【0071】
ステップS104において、コントローラ180は、自車両1が走行する右折専用レーンR1に接続する交差点の信号機に、右折専用信号が設けられているか否かを判断する。右折専用信号の有無は、例えば、道路情報検出部181が右折専用信号を検出したか否かにより判断される。右折専用信号が設けられている場合、コントローラ180は、ステップS105の処理を実行する。
【0072】
ステップS105において、コントローラ180は、自車両1が先頭車両であるか(前車2が存在するか)否かを判断する。ステップS116と同様に、前車2の有無は、前方車両検出部182が前車2を検出したか否かで判断され、前車2が検出されると、走行切替判定部183は、自車両1が先頭車両であると判断する。自車両1が先頭車両である場合、コントローラ180は、ステップS106の処理を実行する。
【0073】
ステップS106において、コントローラ180は、自車両1の加速度aを第2加速度a2に制御する。具体的には、走行切替判定部183が目標加速度を第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に切り替える。目標加速度が第2加速度a2に切り替えられると、走行制御部184は、自車両1の加速度aが第2加速度a2となるようにアクチュエータ170を制御する。自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、自車両1の加速度aを第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御することで、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数が増加する。
【0074】
一方、ステップS105において、自車両1が先頭車両ではない場合、コントローラ180は、ステップS108の処理を実行する。
【0075】
ステップS108において、コントローラ180は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御する。具体的には、走行切替判定部183が目標車間距離を第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に切り替える。目標車間距離が第2車間距離L2に切り替えられると、走行制御部184は、自車両1と前車2との車間距離Lが第2車間距離L2となるようにアクチュエータ170を制御する。このように自車両1と前車2との車間距離Lをできるだけ短い第2車間距離L2に制御することで、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数が増加する。
【0076】
これに対し、ステップS104において、右折専用信号が設けられていない場合、コントローラ180は、ステップS109以下の処理を実行する。
【0077】
ステップS109において、コントローラ180は、自車両1が先頭車両であるか(前車2が存在するか)否かを判断する。判断方法はステップS105及びステップS116と同様であるため説明を省略する。自車両1が先頭車両である場合、コントローラ180は、ステップS110~S112の処理を実行する。
【0078】
ステップS110において、コントローラ180は、自車両1の加速度aを第2加速度a2に制御する。ステップS106と同様に、走行切替判定部183が目標加速度を第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に切り替え、走行制御部184は、自車両1の加速度aが第2加速度a2となるようにアクチュエータ170を制御する。右折専用信号が設けられている場合(ステップS106)と同様に、右折専用レーンR1を走行中において、自車両1の加速度aを第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御することで、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数が増加する。
【0079】
ステップS110において、自車両1の加速度aを第2加速度a2に制御すると、コントローラ180は、ステップS111の処理を実行する。
【0080】
ステップS111において、コントローラ180は、自車両1が右折専用レーンR1に接続する交差点に到達したか否かを判断する。交差点に到達したか否かは、道路情報検出部181により検出された道路情報に基づき判断される。自車両1が交差点に到達した場合、コントローラ180は、ステップS112の処理を実行する。一方、自車両1が交差点に到達していない場合、コントローラ180は、自車両1が交差点に到達するまで、継続して自車両1の加速度aを第2加速度a2に制御する。
【0081】
自車両1が交差点に到達すると、コントローラ180は、ステップS112において、自車両1の加速度aを第1加速度a1に制御する。即ち、走行切替判定部183は、目標加速度を第2加速度a2よりも小さい第1加速度a1に切り替え、走行制御部184は、自車両1の加速度aが第1加速度a1となるようにアクチュエータ170を制御する。右折専用信号が無い場合、自車両1が交差点内で対向車線からの他車両や横断歩道を渡る歩行者の妨げとなり得る。従って、交差点内においては、自車両1の加速度aを第2加速度a2よりも小さい第1加速度a1に制御することで、他車両や歩行者の妨げとなることを防止する。
【0082】
一方、ステップS109において、自車両1が先頭車両ではない場合、コントローラ180は、ステップS113~S115の処理を実行する。
【0083】
ステップS113において、コントローラ180は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御する。ステップS108と同様に、走行切替判定部183が目標車間距離を第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に切り替え、走行制御部184は、自車両1と前車2との車間距離Lが第2車間距離L2となるようにアクチュエータ170を制御する。右折専用信号が設けられている場合(ステップS108)と同様に、右折専用レーン走行中において、自車両1と前車2との車間距離Lをできるだけ短い第2車間距離L2に制御することで、1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数が増加する。
【0084】
ステップS113において、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御すると、コントローラ180は、ステップS114の処理を実行する。
【0085】
ステップS114において、コントローラ180は、自車両1が右折専用レーンR1に接続する交差点に到達したか否かを判断する。ステップS111と同様に、交差点に到達したか否かは、道路情報検出部181により検出された道路情報に基づき判断される。自車両1が交差点に到達した場合、コントローラ180は、ステップS115の処理を実行する。一方、自車両1が交差点に到達していない場合、コントローラ180は、自車両1が交差点に到達するまで、継続して自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御する。
【0086】
自車両1が交差点に到達すると、コントローラ180は、ステップS115において、自車両1と前車2との車間距離Lを第1車間距離L1に制御する。即ち、走行切替判定部183は、目標車間距離を第2車間距離L2よりも長い第1車間距離L1に切り替え、走行制御部184は、自車両1と前車2との車間距離Lが第1車間距離L1となるようにアクチュエータ170を制御する。右折専用信号が無い場合、自車両1が交差点内で対向車線からの他車両や横断歩道を渡る歩行者の妨げとなり得る。従って、交差点内においては、自車両1の車間距離Lを第2車間距離L2よりも長い第1車間距離L1に制御して、他車両や歩行者の妨げとなることを防止する。
【0087】
ステップS106、S112、S117で自車両1の加速度aを、ステップS108、S115、S118で自車両1と前車2との車間距離Lをそれぞれ制御すると、コントローラ180は、ステップS107の処理を実行する。
【0088】
ステップS107において、コントローラ180は、自車両1が右折専用レーンR1に接続する交差点の出口、即ち、右折先のレーンに到達したか否かを判断する。右折先のレーンに到達したか否かは、道路情報検出部181により検出された道路情報に基づき判断される。自車両1が右折先レーンに到達していない場合、コントローラ180は、自車両1が右折先レーンに到達するまで、各ステップ(S106、S108、S112、S115、S117、S118)における加速度aまたは車間距離Lの制御を継続する。
【0089】
一方、ステップS107において、自車両1が右折先レーンに到達すると、コントローラ180は、特定道路区間における運転制御を終了する。
【0090】
なお、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御するステップS108、S113の前に、懸念事由の有無を判断するステップを設けてもよい。この場合、前車2の推定加速度が小さい、視界不良、右折先のレーンの混雑度合いが大きい、右折専用信号が赤信号に切り替わる直前である等の懸念事由がある場合には、車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きい車間距離に制御し、ステップS108、S113の処理は実行しない。
【0091】
上記した第1実施形態の運転支援方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0092】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が、他車両の進入が予定されていない特定道路区間を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車2との車間距離Lを、混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に制御する。このように、特定道路区間を走行する際、混雑度合いが所定値よりも大きい場合に前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に詰めることで、例えば右折専用レーンR1に接続する交差点において、1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。従って、交通効率の悪化を防止できる。一方、自車両1が特定道路区間以外の区間を走行中の場合や混雑度合いが所定値以下の特定道路区間を走行中の場合には、自車両1や他車両の乗員等が違和感を覚えない十分な車間距離(第1車間距離L1)がとられる。また、混雑度合いが大きい場合には、車両走行速度が小さいため、混雑していない場合よりも車間距離Lを短くしても自車両1や他車両の乗員等に違和感を与えない。従って、自車両1や他車両の乗員等が違和感を与えることなく交通効率の向上に貢献できる。
【0093】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が、右折する車両のみ通過が許容される右折専用レーンR1を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車2との車間距離Lを、第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に制御する。このように、前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に詰めるため、右折専用レーンR1に接続する交差点において、1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。従って、交通効率の悪化を防止できる。一方、自車両1が直進レーン等を走行する場合には、十分な車間距離(第1車間距離L1)がとられるため、前車2が交差点内で停止した場合等には自車両1を交差点手前で停止することができ、自車両1が交差点内に取り残されることを防止できる。即ち、自車両1や他車両の乗員等に違和感や不安感を与えることなく交通効率の向上に貢献できる。
【0094】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が、右折専用レーンR1及び右折専用レーンR1に接続する交差点における右折専用信号によって通行を許可された区間を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御する。このように、右折専用レーンR1及び交差点内右折区間R2において車間距離Lを第2車間距離L2に詰めるため、右折専用レーンR1に接続する交差点において、1回の青信号期間内に当該交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。また、右折専用信号がある場合、右折専用レーンR1及び青信号期間中の交差点内右折区間R2は他車両や歩行者の進入が予定されていないため、車間距離Lを詰めても他車両や歩行者の妨げとなる虞はない。即ち、他車両や歩行者の妨げることなく交通効率の向上に貢献できる。
【0095】
本実施形態の運転支援方法においては、右折専用レーンR1に接続する交差点に右折専用信号が無い場合、当該交差点内では、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくする。交差点の信号機に右折専用信号が設けられていない場合、青信号期間であっても交差点内右折区間R2には対向車線からの他車両や横断歩道を渡る歩行者が進入してくる。従って、右折専用信号が無い場合にも、交差点内右折区間R2を走行する際に車間距離Lを詰めてしまうと、他車両や歩行者の妨げとなる虞がある。一方、本実施形態では、右折専用信号が無い場合には、自車両1が交差点内右折区間R2を走行する際に車間距離Lを大きくするため、他車両や歩行者の妨げとなることを防止できる。
【0096】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が特定道路区間を走行する際に、混雑度合いが所定値より大きい場合であっても、特定道路区間における前車2の推定加速度が所定値以下の場合、前車2との車間距離Lは、第2車間距離L2よりも大きくする。即ち、前車2の加速が遅い場合に車間距離Lを詰めると、例えば交差点で右折する場合等に交差点の途中で右折専用信号が赤信号になり、自車両1が交差点内に取り残される虞がある。また、前車2のドライバが運転に慣れていない場合、想定外の行動をとる虞や、車間距離Lを詰めることで前車2のドライバに対し、煽られているという不安感を与えてしまう虞もある。そのため、前車2の推定加速度が遅い場合に車間距離Lを詰めると、前車2の乗員等に違和感を与える虞がある。従って、本実施形態では、前車2の推定加速度が所定値以下の場合には、車間距離Lを大きくしている。これにより、他車両の乗員等に違和感を与えることをより防止することができる。
【0097】
本実施形態の運転支援方法においては、混雑度合いが所定値より大きい場合であって、特定道路区間における自車両1の走行路上において自車両1の前に他車両が存在しない場合、自車両1の加速度aを混雑度合いが所定値以下の場合の第1加速度a1より大きくする。即ち、特定道路区間において自車両1が先頭車両である場合、自車両1の加速度aを混雑度合いが所定値以下の場合よりも大きくする。これにより、例えば、右折専用レーンR1において、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1はより速く加速される。このように混雑度合いが所定値より大きい場合に加速度aをより大きくすると、自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、例えば1回の青信号期間内に交差点を通過できる右折車両の台数を増加させることができる。即ち、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。一方、右折専用信号が無い場合における交差点内右折区間R2のように、他車両や歩行者が進入してくる虞のある区間(特定道路区間以外の区間)を走行する際には、加速度aを大きくしないため、他車両や歩行者の妨げとなることをより防止することができる。即ち、他車両や歩行者の妨げることなく交通効率の向上に貢献できる。
【0098】
なお、本実施形態では、特定道路区間を右折専用レーンR1及び右折専用信号がある場合における交差点内右折区間R2としたが、これに限られず、特定道路区間は、左折専用レーン及び左折専用信号がある場合における交差点内左折区間であってもよい。
【0099】
また、本実施形態では、混雑度合いを表す数値のパラメータとして交通容量、交通量、走行速度を挙げたが、混雑度合いを表すパラメータはこれに限られず、既知の如何なるものを用いてもよい。
【0100】
また、自車両1が先頭車両である場合、速度及び加速度制御を行うことが好ましいが、特定道路区間における速度及び加速度制御は必須のものではない。即ち、特定道路区間走行中において自車両1が先頭車両である場合でも、特定道路区間以外の通常の道路を走行中の場合と同様の速度及び加速度制御を行ってもよい。
【0101】
(第2実施形態)
図9~
図10を参照して、第2実施形態の運転支援方法を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
図9は、第2実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明する模式図である。第2実施形態は、自車両1が、本線に合流するための合流レーンR
3を走行する場合における運転制御である。
【0103】
本線に合流するための合流レーンにおいては、合流レーン入口から合流レーンの出口(本線入口)までの区間は、他車両の進入が予定されていない。即ち、
図9において、合流レーンの区間R
3は特定道路区間である。
【0104】
図9において、自車両1が走行する合流レーンR
3を走行中の車両数が多く、合流レーンR
3の混雑度合いが大きい。このような混雑度合いが大きい合流レーンR
3を走行中の場合に、車間距離Lを大きくとりすぎると、合流レーンR
3の先頭で合流レーンR
3を走行する車両と本線を走行する車両とが交互に合流するジッパー合流をスムーズに行うことができなくなる虞がある。従って、本実施形態では、自車両1が合流レーンR
3を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くする。即ち、自車両1と前車2との車間距離Lを、混雑度合いが小さい(所定値以下)の場合における第1車間距離L
1よりも短い第2車間距離L
2に制御する。
【0105】
このように、自車両1が合流レーンR3を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くするため、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。また、自車両1が本線を走行している場合には、前車2との車間距離Lはより長い第1車間距離L1に制御されるため、合流レーンR3側から他車両が本線にスムーズに進入することができる。従って、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与えることなく、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。即ち、自車両1や他車両の乗員等に違和感や不安感を与えることなく交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0106】
なお、第1実施形態と同様に、自車両1が、混雑度合いが所定値より大きい合流レーンR3を走行する場合でも、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与える等の懸念(懸念事由)がある場合は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくしてもよい。ここでの懸念事由としては、例えば、前車2の推定加速度が小さい場合、視界不良の場合等がある。
【0107】
また、自車両1が合流レーンR3を走行する際、前車2が存在しない、つまり自車両1が先頭車両である場合は、以下の速度及び加速度制御が行われる。即ち、第1実施形態と同様に、自車両1が走行する道路の制限速度、道幅、曲率等の道路情報に基づき目標速度が設定され、自車両1の加速度aは、自車両1の速度が目標速度に近づくように制御される。但し、合流レーンR3における混雑度合いが所定値よりも大きい場合、加速度aは、混雑度合いが所定値以下の場合における第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御される。これにより、混雑度合いが所定値より大きい場合、合流レーンR3において自車両1は、より速く加速される。このように混雑度合いが所定値より大きい場合に加速度aをより大きくすると、自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、より早く合流レーンR3の先頭付近に各車両が並んだ状態を作ることができ、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。従って、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0108】
図10は、第2実施形態による特定道路区間における車間距離制御及び加速度制御を説明するフローチャートである。なお、以下の制御はいずれもコントローラ180により実行される。
【0109】
自車両1の走行中、道路情報検出部181により自車両1の前方に合流レーンが検出されると、コントローラ180は、特定道路区間(合流レーン)における運転制御を開始する。
【0110】
ステップS201において、コントローラ180は、道路情報検出部181が検出した道路情報に基づき、検出された合流レーンR3を自車両1が走行するまたは走行しているか否かを判断する。自車両1が合流レーンR3を走行しない場合、コントローラ180は、特定道路区間における運転制御を終了する。一方、自車両1が合流レーンR3を走行するまたは走行している場合、コントローラ180は、ステップS102及びステップS103の処理を実行する。
【0111】
コントローラ180は、ステップS102において、自車両1が走行する道路の混雑度合いを算出し、ステップS103において、ステップS102で算出された混雑度合いが所定値より大きいか否かを判断する。ステップS102における混雑度合いの算出方法、ステップS103における混雑度合いが所定値より大きいか否かの判断方法は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
ステップS103において、自車両1が走行する道路の混雑度合いが所定値以下の場合、コントローラ180はステップS116の処理を実行する。
【0113】
ステップS116における先頭車両か否かの判断、自車両1の加速度aを第1加速度a1に制御するステップS117の処理、及び自車両1と前車2との車間距離Lを第1車間距離L1に制御するステップS118の処理は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0114】
一方、ステップS103において、自車両1が走行する道路の混雑度合いが所定値より大きい場合、コントローラ180は、ステップS105の処理を実行する。
【0115】
ステップS105における先頭車両か否かの判断、自車両1の加速度aを第2加速度a2に制御するステップS106の処理、及び自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御するステップS108の処理は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。自車両1が先頭車両である場合、自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、自車両1の加速度aを第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御することで、より早く合流レーンR3の先頭付近に各車両が並んだ状態を作ることができ、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。また、自車両1が先頭車両ではない場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短い第2車間距離L2に制御するため、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。
【0116】
ステップS106、S117で自車両1の加速度aを、ステップS108、S118で自車両1と前車2との車間距離Lをそれぞれ制御すると、コントローラ180は、ステップS207の処理を実行する。
【0117】
ステップS207において、コントローラ180は、自車両1が合流レーンR3に接続する本線に合流したか否かを判断する。本線に合流したか否かは、道路情報検出部181により検出された道路情報に基づき判断される。自車両1が本線に合流していない場合、コントローラ180は、自車両1が本線に合流するまで、各ステップ(S106、S108、S117、S118)における加速度aまたは車間距離Lの制御を継続する。
【0118】
一方、ステップS207において、自車両1が本線に合流すると、コントローラ180は、特定道路区間における車間距離制御を終了する。
【0119】
なお、第1実施形態と同様に、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御するステップS108の前に、懸念事由の有無を判断するステップを設けてもよい。この場合、前車2の推定加速度が小さい、視界不良等の懸念事由がある場合には、車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きい車間距離に制御し、ステップS108の処理は実行しない。
【0120】
上記した第2実施形態の運転支援方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0121】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が、本線に合流するための合流レーンR3を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車2との車間距離Lを、混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に制御する。このように、自車両1が合流レーンR3を走行する際、前車2との間の車間距離Lを短くするため、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。また、自車両1が本線を走行している場合には、前車2との車間距離Lはより長い第1車間距離L1に制御されるため、合流レーン側から他車両が本線にスムーズに進入することができる。従って、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与えることなく、ジッパー合流をスムーズに行うことができる。即ち、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与えることなく交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0122】
(第3実施形態)
図11を参照して、第3実施形態の運転支援方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0123】
図11は、第3実施形態による特定道路区間における車間距離制御を説明する模式図である。第3実施形態は、2つの交差点を結ぶ道路の距離が所定値以下である場合における、当該2つの交差点の交差点と交差点との間の区間(以下、交差点間R
4とする)を自車両1が走行する場合における車間距離制御である。ここで言う距離の所定値は任意に決定することができるが、例えば、各自治体において定められている基準値(指針)とすることができる。
【0124】
交差点間距離が所定値以下の交差点間においては、交差点間の距離が短いため、他車両の進入が予定されていない。即ち、
図11において、交差点と交差点の区間R
4は特定道路区間である。なお、交差点内は、対向車線から右折してくる他車両等が進入してくる虞があり、特定道路区間ではない。
【0125】
図11において、自車両1が走行する交差点間R
4の道路は、走行中の車両数が多く、混雑度合いが大きい。このような混雑度合いが大きい交差点間R
4を走行中の場合に、車間距離Lを大きくとりすぎると、赤信号時において、交差点間R
4に並べる車両数が制限され、青信号になった際に交差点を通過できる車両数が少なくなり、交通効率が悪化する虞がある。従って、本実施形態では、自車両1が、交差点間距離が所定値以下の交差点間R
4を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短くする。即ち、自車両1と前車2との車間距離Lを、混雑度合いが小さい(所定値以下)の場合における第1車間距離L
1よりも短い第2車間距離L
2に制御する。
【0126】
このように、自車両1が、交差点間距離が所定値以下の交差点間R4を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lをできるだけ短い第2車間距離L2に制御するため、青信号期間に各交差点を通過できる車両数が増加する。一方、混雑度合いが所定値以下の場合、自車両1と前車2との間の車間距離Lは、第2車間距離L2よりも大きい第1車間距離L1に制御されるため、前車2が交差点内で停止した場合に自車両1を交差点の手前で停止することができる。即ち、自車両1が交差点内に停止することを防止できる。従って、自車両1の乗員等に違和感や不安感を与えることなく交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0127】
なお、他の実施形態と同様に、自車両1が、混雑度合いが所定値より大きい交差点間R4を走行する場合でも、自車両1や他車両の乗員等に違和感を与える等の懸念(懸念事由)がある場合は、自車両1と前車2との車間距離Lを第2車間距離L2よりも大きくしてもよい。ここでの懸念事由としては、例えば、前車2の推定加速度が小さい場合、視界不良の場合等がある。
【0128】
また、自車両1が、交差点間距離が所定値以下の交差点間R4を走行する際、自車両1が先頭車両である場合は、他の実施形態と同様に、自車両1が走行する道路の制限速度、道幅等の道路情報に基づき目標速度が設定され、自車両1の加速度aは、自車両1の速度が目標速度に近づくように制御される。但し、交差点間R4における混雑度合いが所定値よりも大きい場合、加速度aは、混雑度合いが所定値以下の場合における第1加速度a1よりも大きい第2加速度a2に制御される。これにより、混雑度合いが所定値より大きい場合、交差点間R4において自車両1は、より速く加速される。自車両1に後続する他車両は自車両1に追従してくるため、より早く交差点を通過することができ、青信号期間に交差点を通過できる車両数が増加する。従って、交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0129】
なお、第3実施形態における制御のフローは、第2実施形態のフロー(
図10)と同様であるため省略する。但し、第3実施形態では、
図10におけるステップS201が「自車両1が、交差点間距離が所定値以下の交差点間R
4を走行しているか否か」に、ステップS207が「交差点入口に到達しているか否か」に置き換えられる。
【0130】
上記した第3実施形態の運転支援方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0131】
本実施形態の運転支援方法においては、自車両1が、2つの交差点を結ぶ道路の距離が所定値以下である場合における、当該2つの交差点の交差点と交差点との間の区間R4を走行する際、混雑度合いが所定値より大きい場合、前車2との車間距離Lを第2車間距離L2に制御する。即ち、自車両1が、交差点間距離が短い交差点間R4を走行する際、混雑度合いが大きい場合、前車2との車間距離Lを、混雑度合いが所定値以下の場合における第1車間距離L1よりも短い第2車間距離L2に詰めるように制御する。これにより、青信号期間に各交差点を通過できる車両数が増加する。一方、混雑度合いが所定値以下の場合、自車両1と前車2との車間距離Lは、第2車間距離L2よりも大きい第1車間距離L1に制御されるため、前車2が交差点内で停止した場合には自車両1を交差点の手前で停止することができる。即ち、自車両1が交差点内に停止することを防止できる。従って、自車両1の乗員等に違和感や不安感を与えることなく交通効率の向上及び渋滞の解消に貢献することができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0133】
また、上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 自車両
2 前車
100 運転支援装置
110 カメラ
120 GPS受信機
130 センサ
140 通信インターフェース
150 地図データベース
160 表示装置
170 アクチュエータ
180 コントローラ