(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光学積層フィルムの検査方法及びフィルム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2021002359
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 修也
(72)【発明者】
【氏名】田壷 宏和
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146580(JP,A)
【文献】特開2001-165865(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163261(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0162865(US,A1)
【文献】特開2007-057278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G02B 5/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムと前記光学フィルムの表面に貼り付けられた表面保護フィルムと前記光学フィルムの裏面に貼り付けられたセパレーターフィルムとを有する光学積層フィルムを製造する過程で、前記光学フィルムの欠陥を検査する検査工程と、
前記検査により検出された欠陥に対応するマークを前記光学積層フィルムに付けるマーキング工程と、
前記マーキング工程の後、前記光学積層フィルムから複数のフィルム製品を切り出す工程と、
得られた前記複数のフィルム製品をグループ分けする工程と、を有し、
前記検査工程において、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥と、を区別し、
前記マーキング工程において、前記剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを前記光学積層フィルムに付け、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応するマークであって前記第1マークとはパターンの異なる第2マークを前記光学積層フィルムに付
け、
前記グループ分け工程において、前記第1マークが付いたフィルム製品を第1グループとし、前記第2マークが付いたフィルム製品を第2グループとし、前記第1マーク及び第2マークのいずれも付いていないフィルム製品を第3グループとしてグループ分けを行い、前記第1グループのフィルム製品を、不良品として扱い、前記第2グループのフィルム製品に対して再検査を行い、その再検査に合格したフィルム製品を正常品として扱う、
フィルム製品の製造方法。
【請求項2】
前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、
前記第1マークは、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含み、
前記第2マークは、前記1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まない、請求項1に記載の
フィルム製品の製造方法。
【請求項3】
前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、
前記第1マークを構成するドットと第2マークを構成するドットが異なる形状である、請求項1または2に記載の
フィルム製品の製造方法。
【請求項4】
前記剥離顕在化欠陥が、前記表面保護フィルム及び前記セパレーターフィルムを貼り付ける前から前記光学フィルムに生じていた欠陥である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
フィルム製品の製造方法。
【請求項5】
前記剥離顕在化欠陥が、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記光学積層フィルムから前記セパレーターフィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
フィルム製品の製造方法。
【請求項6】
前記表面保護フィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥に対応する第1マークのパターンと前記セパレーターフィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥に対応する第1マークのパターンが異なる、請求項5に記載の
フィルム製品の製造方法。
【請求項7】
光学フィルムと前記光学フィルムの表面に貼り付けられた表面保護フィルムと前記光学フィルムの裏面に貼り付けられたセパレーターフィルムとを有する光学積層フィルムを製造する過程で、前記光学フィルムの欠陥を検査する検査工程と、
前記検査により検出された欠陥に対応するマークを前記光学積層フィルムに付けるマーキング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥と、を区別し、
前記マーキング工程において、前記剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを前記光学積層フィルムに付け、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応するマークであって前記第1マークとはパターンの異なる第2マークを前記光学積層フィルムに付け、
前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、
前記第1マークは、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含み、
前記第2マークは、前記1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まない、光学積層フィルムの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムを含む光学積層フィルムの検査方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画像表示装置、偏光サングラスや調光窓などのような画像表示装置以外の用途など、様々な用途で用いられている。
このような光学フィルムは、前記画像表示装置の画面などの仕様に適合するように、所定の平面視形状のフィルム製品に加工される。また、光学フィルムを前記画像表示装置の画面などに貼り付けるために、光学フィルムの裏面には粘着剤層が設けられている場合がある。この場合、その粘着剤層を隠蔽するため、セパレーターフィルムが貼り付けられている。また、一般に、光学フィルムの表面には、製品を保護するため表面保護フィルムが貼り付けられている。
工業的生産過程では、長尺帯状の光学積層フィルム(表面保護フィルム/光学フィルム/セパレーターフィルム)を製造し、その光学積層フィルムから複数の枚葉状のフィルム製品を切り出すことによって、前記フィルム製品が得られる。
【0003】
前記光学積層フィルムを製造する過程で、フィルムの欠陥検査が行われている。
例えば、特許文献1には、長尺帯状のフィルムを搬送する過程で、そのフィルムの欠陥箇所を光学的検査にて検出し、その欠陥部分に対し、幅方向両側の予め定める範囲にマーキングを施すことが開示されている。そして、前記検査済みのフィルムをカットして複数の製品を形成する。得られた複数の製品のうち、マークが付いている製品は、不良品として廃棄し、マークが付いていない製品は、正常品として出荷される。このようにして、不良な製品が出荷されないように品質管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、前記マークが付いた製品の中には、正常品が含まれていることがある。例えば、前述の光学積層フィルムの製造過程で機械的に検査を行う際に、不良品を確実に排除するため、欠陥検出の基準(閾値)を高く設定することが多い。そうすると、本来欠陥を有さないと評価されるべき製品についても、前記高い基準によって欠陥を有するとしてマーキングされてしまうことがある。そのため、前記マークが付いた製品を一律に廃棄するよりも、その製品を再検査し、正常品と不良品に分けることが生産効率向上(いわゆる歩留まり向上)のため望ましい。
しかしながら、本発明者の研究によれば、前記光学積層フィルムからなる製品を外部から再検査する際、例えば光学フィルムに存する欠陥を検出できないことがある。前記再検査によって、本来不良品であったものが間違って正常品として出荷されることは回避しなければならない。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、不良品を除きつつ、生産効率を向上できる光学積層フィルムの検査方法及びフィルム製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルム製品の製造方法は、光学フィルムと前記光学フィルムの表面に貼り付けられた表面保護フィルムと前記光学フィルムの裏面に貼り付けられたセパレーターフィルムとを有する光学積層フィルムを製造する過程で、前記光学フィルムの欠陥を検査する検査工程と、前記検査により検出された欠陥に対応するマークを前記光学積層フィルムに付けるマーキング工程と、前記マーキング工程の後、前記光学積層フィルムから複数のフィルム製品を切り出す工程と、得られた前記複数のフィルム製品をグループ分けする工程と、を有し、前記検査工程において、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥と、を区別し、前記マーキング工程において、前記剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを前記光学積層フィルムに付け、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応するマークであって前記第1マークとはパターンの異なる第2マークを前記光学積層フィルムに付け、前記グループ分け工程において、前記第1マークが付いたフィルム製品を第1グループとし、前記第2マークが付いたフィルム製品を第2グループとし、前記第1マーク及び第2マークのいずれも付いていないフィルム製品を第3グループとしてグループ分けを行い、前記第1グループのフィルム製品を、不良品として扱い、前記第2グループのフィルム製品に対して再検査を行い、その再検査に合格したフィルム製品を正常品として扱う。
【0008】
本発明の好ましい製造方法は、前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、前記第1マークは、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含み、前記第2マークは、前記1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まない。
本発明の好ましい製造方法は、前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、前記第1マークを構成するドットと第2マークを構成するドットが異なる形状である。
本発明の好ましい製造方法は、前記剥離顕在化欠陥が、前記表面保護フィルム及び前記セパレーターフィルムを貼り付ける前から前記光学フィルムに生じていた欠陥である。
本発明の好ましい検査方法は、前記剥離顕在化欠陥が、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記光学積層フィルムから前記セパレーターフィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、を含む。
本発明の好ましい製造方法は、前記表面保護フィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥に対応する第1マークのパターンと前記セパレーターフィルムを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥に対応する第1マークのパターンが異なる。
【0009】
本発明の別の局面によれば、光学積層フィルムの検査方法を提供する。
本発明の光学積層フィルムの検査方法は、光学フィルムと前記光学フィルムの表面に貼り付けられた表面保護フィルムと前記光学フィルムの裏面に貼り付けられたセパレーターフィルムとを有する光学積層フィルムを製造する過程で、前記光学フィルムの欠陥を検査する検査工程と、前記検査により検出された欠陥に対応するマークを前記光学積層フィルムに付けるマーキング工程と、を有し、前記検査工程において、前記光学積層フィルムから前記表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥と、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥と、を区別し、前記マーキング工程において、前記剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを前記光学積層フィルムに付け、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応するマークであって前記第1マークとはパターンの異なる第2マークを前記光学積層フィルムに付け、前記第1マーク及び前記第2マークが、それぞれ、前記光学積層フィルムの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されており、前記第1マークは、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含み、前記第2マークは、前記1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法は、剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを付け、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応する第2マークであって第1マークとはパターンの異なる第2マークを付ける。前記第2マークの付いたフィルム製品は、フィルムを剥離しなくても欠陥を検査できるため、そのフィルム製品を再検査し、それらを正常品と不良品に分けることができる。本発明によれば、不良品が市場に提供されることを防止しつつ、フィルム製品の生産効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】光学積層フィルムの層構成の1つの例を示す側面図。
【
図2】光学積層フィルムの層構成のもう1つの例を示す側面図。
【
図3】本発明の検査方向及び製造方法を実施するシステムの概略側面図。
【
図5】前工程での欠陥の検出及び欠陥箇所の特定の手順を説明するための参考斜視図。
【
図6】表面保護フィルムを剥離することによって検出できる欠陥に対応する第1マークの1つの例を示す平面図。
【
図7】セパレーターフィルムを剥離することによって検出できる欠陥に対応する第1マークの1つの例を示す平面図。
【
図8】剥離顕在化欠陥以外の欠陥に対応する第2マークの1つの例を示す平面図。
【
図9】表面保護フィルムを剥離することによって検出できる欠陥に対応する第1マークの他の例を示す平面図。
【
図10】第1マークに跨がって切断されたときの状態を示す参考平面図。
【
図11】マークのパターンの設定方法を概念的に説明するための参考平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、用語の接頭に、第1、第2、第1-A、第1-Bなどを付ける場合があるが、この第1などは、2種以上の用語を識別するためだけに付加したものであり、それらの用語の順序、優劣、形状などの特別な意味を持たない。また、本明細書において、「略」という表現は、本発明の技術分野で許容される範囲を含むことを意味する。
【0014】
[光学積層フィルム]
光学積層フィルムは、光学フィルムと、前記光学フィルムの表面に貼り付けられた表面保護フィルムと、前記光学フィルムの裏面に貼り付けられたセパレーターフィルムとを有する。前記表面保護フィルムは、光学フィルムの表面に人力で剥離可能な状態で貼り付けられている。すなわち、前記表面保護フィルムを指先などで摘んで引き剥がすことにより、表面保護フィルムを光学フィルムから剥離することができる。前記表面保護フィルムは、通常、粘着剤層を介して光学フィルムに貼り付けられている。前記粘着剤層を有する場合には、光学フィルムと粘着剤層の層間で剥離し、表面保護フィルムは粘着剤層を伴って剥離される。なお、表面保護フィルムと光学フィルムが互いに接合し得る材質からなる場合には、前記表面保護フィルムは光学フィルムの表面に直接的に貼り付けられていてもよい。前記セパレーターフィルムは、粘着剤層を介して光学フィルムの裏面に人力で剥離可能な状態で貼り付けられている。すなわち、セパレーターフィルムを指先などで摘んで引き剥がすことにより、セパレーターフィルムを光学フィルムから剥離することができる。この場合、セパレーターフィルムと粘着剤層の層間で剥離し、粘着剤層が光学フィルムの裏面に積層されたままで、セパレーターフィルムのみが剥離される。
【0015】
図1は、光学積層フィルムの1つの層構成例であり、
図2は、光学積層フィルムのもう1つの層構成例である。
図1を参照して、光学積層フィルム1は、表面側から順に、表面保護フィルム12と、粘着剤層14と、光学フィルム11と、粘着剤層15と、セパレーターフィルム13と、を有する。粘着剤層14は、表面保護フィルム12に対して強固に接着され、且つ、光学フィルム11に対しては剥離可能に接着されている。粘着剤層15は、光学フィルム11に対して強固に接着され、且つ、セパレーターフィルム13に対しては剥離可能に接着されている。光学フィルム11は、光学機能フィルムを含んでいる。光学フィルム11は、2層以上の光学機能フィルムを含んでいてもよく、或いは、1層の光学機能フィルムのみから構成されていてもよい。また、光学フィルム11の表面又は/及び裏面に、反射防止処理などの任意の処理が施されていてもよい。例えば、光学フィルム11の表面に、反射防止コーティングを施すことによって、反射防止層が形成されていてもよい。
【0016】
図2を参照して、もう1つの光学積層フィルム1は、光学フィルム11が2種以上の光学機能フィルムを有する。例えば、光学フィルム11が、第1乃至第3の光学機能フィルム111,112,113を有する。第1の光学機能フィルム111としては、例えば、反射防止フィルムなどが挙げられ、第2の光学機能フィルム112としては、例えば、偏光フィルムなどが挙げられ、第3の光学機能フィルム113としては、例えば、位相差フィルムなどが挙げられる。前記光学フィルム11(図示例では、第1の光学機能フィルム111)の表面には、上述と同様に、粘着剤層14を介して表面保護フィルム12が剥離可能に貼り付けられている。また、前記光学フィルム11(図示例では、第3の光学機能フィルム113)の裏面には、上述と同様に、粘着剤層15を介してセパレーターフィルム13が剥離可能に貼り付けられている。
図2では、第1乃至第3の光学機能フィルム111,112,113は、直接的に接着されているが、これらの層間に接着剤層(図示せず)を介在させて接着されていてもよい。
なお、光学積層フィルム1は、
図1及び
図2の層構成に限られず、様々に変更できる。
【0017】
<光学フィルム>
上述のように、光学フィルム11は、光学機能フィルムを含んでいる。前記光学機能フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、光反射フィルム、保護フィルムなどが挙げられる。前記偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。前記保護フィルムとしては、好ましくは略等方性の無色透明なフィルムが用いられる。
例えば、
図1に例示する光学積層フィルム1の光学フィルム11は、表面側から順に、第1の保護フィルム114と、偏光フィルム115と、第2保護フィルム116と、を有する。
【0018】
<表面保護フィルム>
前記表面保護フィルム12は、光学フィルム11の表面を保護するために貼り付けられている。表面保護フィルムは、通常、フィルム製品を使用する際などの適宜に剥離される。表面保護フィルムは、好ましくは、略等方性の無色透明なフィルムが用いられる。このような表面保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリエチレン、環状若しくはノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン6などのアミド系樹脂;イミド系樹脂;スルホン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;などを主たる樹脂成分とする樹脂フィルムを用いることができる。前記樹脂フィルムは、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。中でも、光学特性や寸法安定性に優れていることから、前記表面保護フィルムは、ポリエステル系フィルムを用いることが好ましい。前記ポリエステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのエステル結合を有する樹脂材料を主たる樹脂成分とするフィルムである。なお、前記表面保護フィルムには、帯電防止処理が施されていてもよい。
前記表面保護フィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、10μm~200μmであり、好ましくは20μm~150μmであり、より好ましくは30μm~100μmである。
【0019】
<セパレーターフィルム>
前記セパレーターフィルム13は、粘着剤層15の粘着力を隠蔽するために貼り付けられている。セパレーターフィルムは、通常、フィルム製品を使用する際などの適宜に剥離される。セパレーターフィルムは、特に限定されないが、通常、光学機能フィルム以外のフィルムが用いられる。セパレーターフィルムとしては、例えば、樹脂フィルム;紙;織布、不織布、網布などの多孔質フィルム;発泡樹脂フィルム;などが挙げられる。表面平滑性に優れていることから、セパレーターフィルムとしては、好ましくは樹脂フィルムが用いられ、より好ましくは略等方性の無色透明な樹脂フィルムが用いられる。前記樹脂フィルムは、上述のような樹脂を主たる樹脂成分とするフィルムなどが挙げられる。前記セパレーターフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどを用いることができる。前記セパレーターフィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、10μm~200μmであり、好ましくは15μm~100μmである。
【0020】
<粘着剤層>
前記粘着剤層14,15は、常温で粘着性を有し、その粘着性が長期間持続するものである。粘着剤層は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤は、無色透明であり、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5μm~50μmであり、好ましくは1μm~30μmである。
【0021】
[光学積層フィルムの検査方法及びフィルム製品の製造方法、並びにそれらを実施するシステム]
本発明の光学積層フィルムの検査方法は、光学積層フィルムを製造する過程で光学フィルムの欠陥を検査する検査工程と、前記検査により検出された欠陥に対応するマークを前記光学積層フィルムに付けるマーキング工程と、を有する。前記検査工程においては、前記光学積層フィルムから表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる欠陥と、その欠陥以外の欠陥と、を検出し且つそれらを区別する。本明細書では、それらの欠陥を用語上で簡易に識別できるように、前記光学積層フィルムから表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離することによって検出できる欠陥を「剥離顕在化欠陥」と称し、前記剥離顕在化欠陥以外の欠陥を「不剥離欠陥」と称する。前記不剥離欠陥は、表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの双方を剥離しないで光学積層フィルムの状態で検出できる欠陥である。
前記マーキング工程においては、前記剥離顕在化欠陥に対応する第1マークを前記光学積層フィルムに付け、前記不剥離欠陥に対応するマークであって前記第1マークとはパターンの異なる第2マークを前記光学積層フィルムに付ける。
【0022】
さらに、本発明のフィルム製品の製造方法は、前記検査方法に従いマーキング工程を行なった後の光学積層フィルム(各欠陥に対応して第1マーク及び第2マークが付けられた光学積層フィルム)を用い、その光学積層フィルムから複数の枚葉状のフィルム製品を切り出す工程と、得られた前記複数のフィルム製品をグループ分けする工程と、を有する。前記グループ分け工程においては、前記第1マークが付いたフィルム製品を第1グループとし、前記第2マークが付いたフィルム製品を第2グループとし、前記第1マーク及び第2マークのいずれも付いていないフィルム製品を第3グループとする。
【0023】
図3及び
図4は、本発明の方法を実施するシステム9の概略図である。ただし、
図4では、表面保護フィルムは不図示である。
前記システム9は、光学フィルム11aを検査しつつその光学フィルム11aに表面保護フィルム12aなどを積層する工程及びマーキング工程を含む光学積層フィルム1aの製造ゾーンと、前記光学積層フィルム1aから複数のフィルム製品Fを取り出すフィルム製品Fの製造ゾーンと、マークの有無及び種別に応じて前記複数のフィルム製品Fをグループ分けするゾーンと、を有する。なお、前記システム9では、光学積層フィルム1aの製造、フィルム製品Fの製造及びフィルム製品Fのグループ分けを1つのラインで一連に行う場合を例示しているが、これらを個別に行ってもよい。例えば、光学積層フィルム1aの製造工程とフィルム製品Fの製造工程を、別工程(別のライン)で行ってもよい。或いは、フィルム製品Fの製造工程とフィルム製品Fのグループ分け工程を、別工程で行ってもよい。
【0024】
具体的には、
図3及び
図4を参照して、前記システム9の光学積層フィルム1aの製造ゾーンは、ガイドロールを有する搬送装置21と、光学フィルム11aに表面保護フィルム12a及びセパレーターフィルム13aを貼り合わせるニップロールを有する貼り合わせ部22と、測長器23と、読取り装置24と、2つ以上の検査装置31,…と、演算部及び記憶部を含む制御装置25と、マーキング装置4と、を有する。
前記システム9のフィルム製品Fの製造ゾーンは、光学積層フィルム1a及びフィルム製品Fを搬送するコンベア51,52(搬送装置)と、光学積層フィルム1aをカッティングする切断装置6と、切断残余部Rを回収する回収装置(図示せず)と、を有する。
なお、図示例では、1つの工程にて、検査後(検査装置の後)に光学フィルム11aに表面保護フィルム12a及びセパレーターフィルム13aを連続して貼り合せているが、これに限定されない。例えば、1つの工程にて検査し、表面保護フィルム12aを光学フィルム11aに貼り合わせ、これとは別の工程にて検査し、セパレーターフィルム13aを光学フィルム11aに貼り合わせてもよい(図示せず)。
【0025】
<光学積層フィルムの製造ゾーン>
光学積層フィルム1aの製造ゾーンには、光学フィルム11a、表面保護フィルム12a及びセパレーターフィルム13aを搬送する搬送装置21が設けられている。例えば、光学フィルム11a、表面保護フィルム12a及びセパレーターフィルム13aは、それぞれ、ロール状に巻かれた状態でセットされ、搬送装置21にてライン上に搬送される。なお、光学フィルム11aは、通常、前工程において製造される。前工程は、図示しない。例えば、上述のように、光学フィルムが第1の保護フィルム114/偏光フィルム115/第2保護フィルム116を有する場合(
図1参照)、前工程において、これらのフィルム114,115,116を製造し且つ積層することにより、光学フィルムが製造される。また、例えば、光学フィルムが第1の光学機能フィルム111/第2の光学機能フィルム112/第3の光学機能フィルム113を有する場合(
図2参照)、前工程において、これらのフィルム111,112,113を製造し且つ積層することにより、光学フィルムが製造される。なお、図示例では、前工程で得られた光学フィルム11aをロール状に巻き取り、それをシステム9にセットしているが、前工程を前記システム9に組み込み、前工程で得られた光学フィルム11aを巻き取らずにシステム9に搬送してもよい。
【0026】
前記搬送装置21は、フィルムを搬送方向(長手方向)に搬送する。前記搬送装置21は、光学フィルム11a、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aに対応してそれぞれ設けられている。セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aは、光学フィルム11aの搬送に同期して搬送される。搬送されるセパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aは、貼り合わせ部22にて光学フィルム11aの表裏面に貼り付けられる。
【0027】
前記光学フィルム11aには、識別子18が具備されている。前記識別子18は、光学フィルム11aの長手方向の位置を特定する情報を含んでいる。必要に応じて、前記識別子18に、光学フィルムの製造番号、識別子の付加日時などの任意の適切な情報を含ませてもよい。前記識別子18は、例えば、二次元コードなどの機械的読み取り記号が用いられる。前記機械的読み取り記号などの識別子18は、通常、光学フィルム11aの幅方向端部に印刷によって表される。前記印刷の方式は、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷、レーザー印刷などのオンデマンド印刷が用いられる。
【0028】
前記測長器23は、ロータリーエンコーダーを有し、光学フィルム11aの移動量を測定する。測定される光学フィルム11aの移動量は、制御装置25に送られて記憶され、演算に供される。
前記読取り装置24は、前記識別子18を読み込み、それに含まれる情報を取得する。その識別子18の情報(光学フィルム11aの長手方向の位置)は、制御装置25に送られて記憶され、演算に供される。
【0029】
前記検査装置31,…は、光学フィルム11aに生じていた欠陥又は搬送途中で生じた欠陥を検出する装置である。前記検査装置31,…は、それぞれ、撮像手段と、前記撮像手段に電気的に接続され且つ前記撮像手段で取得したフィルムの撮像画像に適宜の画像処理を施す画像処理手段(図示せず)と、光源(図示せず)と、を有する。検査装置31,…は、後述する処理方式に従い、必要に応じて、偏光フィルタなどの他の部材又は機器をさらに有する。撮像手段としては、光学フィルムの幅方向に沿って撮像素子が直線状に配置されたラインセンサ、撮像素子がマトリックス状に配置されたエリアセンサなどを用いることができる。撮像手段の視野は、光学フィルムの有効幅(製品に使用される幅)以上とされている。画像処理手段は、撮像画像に2値化などの公知の画像処理を施すことにより、フィルムの欠陥に相当する画素領域を抽出する。そして、前記画像処理手段は、撮像画像における欠陥の位置(欠陥に相当する画素領域の座標)を特定する。
【0030】
前記検査装置31,…は、前記セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aの少なくとも一方が貼り付けられる前の光学フィルム11aに存在する欠陥を、少なくとも検出する。
前記検査装置により、例えば、光学フィルム11aなどに生じた異物混入、ピンホールなどの表面凹凸、輝点、塗工不良、気泡などの各種の欠陥を検出できる。これらの欠陥は、通常、前記表面保護フィルム12a及び前記セパレーターフィルム13aを貼り付ける前から光学フィルム11aに生じていた欠陥である。前記検査装置31,…の処理方式としては、例えば、反射検査、クロスニコル透過検査、透過検査、斜め透過検査などが挙げられる。
【0031】
前記反射検査は、光源からの光をフィルム面に対して照射し、反射した光を撮像手段に受光させることによって、前記フィルムの表面の欠陥を検出する。前記クロスニコル透過検査は、光源からの可視光をフィルム面に対して垂直(又は斜め)に照射し、光学フィルム中の偏光フィルムの吸収軸に対して偏光フィルタの吸収軸が90°付近になるようにして、撮像手段の直前に前記偏光フィルタを設置した状態で、前記偏光フィルムを透過した光を前記撮像手段に受光させることによって、光学フィルムに内在する欠陥を輝点として検出する。前記透過検査は、光源からの可視光をフィルムに対して垂直に照射し、フィルムを透過した光を撮像手段に受光させることによって、光学フィルムに内在する欠陥を影として検出する。前記斜め透過検査は、光源からの可視光をフィルム面に対して斜めに照射し、前記フィルムを透過した光を撮像手段に受光させることによって、光学フィルムに内在する欠陥を影として検出する。
【0032】
図3及び
図4では、例えば、4つの検査装置31乃至34(第1乃至第4検査装置31乃至34)が設けられている場合を例示している。
第1検査装置31は、表面保護フィルム12aを貼り付ける前に配置されている。第1検査装置31は、前記表面保護フィルム12aを貼り付ける前の、光学フィルム11aの表面のピンホールや塗工不良の有無を検査する。前記塗工不良は、白斑とも呼ばれる。第1検査装置31の処理方式としては、例えば、反射検査が用いられる。前記ピンホールや塗工不良のような欠陥は、表面保護フィルム12aを光学フィルム11aの表面に付けた後には検出することが困難である。一方、前記ピンホールなどの欠陥は、光学積層フィルム1a(表面保護フィルム12aが光学フィルム11aに貼り付けられている状態)から表面保護フィルム12aを剥離して光学フィルム11aの表面を露出させると検出できるが、光学積層フィルム1aからセパレーターフィルム13aのみを剥離しても検出できない。
かかるピンホールや塗工不良は、剥離顕在化欠陥に相当する。特に、表面に反射防止層又は反射防止フィルムが設けられている光学フィルム11aにあっては、表面保護フィルム12aを貼り付けた後には、その反射防止層又は反射防止フィルムの表面(すなわち光学フィルム11aの表面)に存在するピンホールを検出することがより困難である。
【0033】
第2検査装置32は、セパレーターフィルム13aを貼り付ける前に配置されている。第2検査装置32は、前記セパレーターフィルム13aを貼り付ける前の、光学フィルム11aの輝点の有無を検査する。第2検査装置32としては、例えば、クロスニコル透過検査が用いられる。前記輝点は、セパレーターフィルム13aを光学フィルム11aの裏面に貼り付けた後には検出することが困難であり、特に、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aを光学フィルム11aに貼り付けた後には検出することがより困難である。セパレーターフィルム13aなどが介在すると位相差がずれるので、光学フィルム11aの偏光フィルムに対する正確なクロスニコル検査ができないからである。一方、前記輝点による欠陥は、光学積層フィルム1a(表面保護フィルム12aが光学フィルム11aに貼り付けられている状態)から少なくともセパレーターフィルム13aを剥離すると検出できる。かかる輝点もまた、剥離顕在化欠陥に相当する。
以下、説明上、剥離顕在化欠陥の種類を識別する必要がある場合、(表面保護フィルム12aを貼り付けた状態では検出できず)表面保護フィルム12aを貼り付けた後、その表面保護フィルム12aを剥離することによって検出できる上述の剥離顕在化欠陥を「保護-剥離顕在化欠陥」と称し、(セパレーターフィルム13aを貼り付けた状態では検出できず)少なくともセパレーターフィルム13aを貼り付けた後、そのセパレーターフィルム13aを剥離することによって検出できる剥離顕在化欠陥を「セパレーター-剥離顕在化欠陥」と称する。
図4において、便宜上、保護-剥離顕在化欠陥をプラス印で表し、セパレーター-剥離顕在化欠陥を星印で表し、不剥離欠陥をダイヤ印で表している(他の図も同様)。
【0034】
第3検査装置33は、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aを貼り付ける前に配置されている。第3検査装置33は、光学フィルム11aの内部に入り込んでいる異物などの有無を検査する。第3検査装置33の処理方式としては、例えば、透過検査が用いられる。
第4検査装置34は、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aを貼り付ける前に配置されている。第4検査装置34は、光学フィルム11aの内部に入り込んでいる異物などの有無を検査する。第4検査装置34の処理方式としては、例えば、斜め透過検査が用いられる。
前記セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aを光学フィルム11aに貼り付けた後のフィルム(すなわち、光学積層フィルム1a)に対して前記透過検査及び斜め透過検査を行った場合、並びに、前記セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aのうち少なくとも一方を貼り付ける前の光学フィルム11aに対して前記透過検査及び斜め透過検査を行った場合のいずれでも、前記異物の有無は検出できる。かかる異物混入は、光学積層フィルム1aの状態で検出できる欠陥であり、不剥離欠陥に相当する。
なお、このような不剥離欠陥を検出する検査装置(例えば、第3及び第4検査装置33,34)は、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aを貼り付けた後に配置されていてもよい。
なお、
図3及び
図4では、第1乃至第4検査装置31乃至34として、(光源などを図示せず)撮像手段のみを図示している。また、前記撮像手段などは、処理方式及び検査対象に応じて、光学フィルム11aの表面側に設けられる場合(例えば、第1検査装置31など)もあれば、光学フィルム11aの裏面側に設けられる場合(例えば、第2検査装置32)もある。
【0035】
また、図示しない前工程においても、光学フィルム11a又はその光学フィルム11aを構成する各フィルム(例えば、偏光フィルム、光学機能フィルムなど)を、適切な検査装置を用いて検査している。例えば、上述の反射検査、クロスニコル透過検査、透過検査、斜め透過検査などを前工程で適宜行なうことによって、光学フィルム11aの欠陥(剥離顕在化欠陥及び不剥離欠陥)が検出される。前工程で検出された欠陥は、その欠陥の種類(剥離顕在化欠陥及び不剥離欠陥)とその位置情報とが関連付けられた状態で、記憶部を有する演算装置に記憶される。なお、前工程における検査などについては後述する。
【0036】
前記マーキング装置4は、各検査装置31,…によって検出された欠陥の位置を視認するために、光学積層フィルム1aにマークを付ける装置である。なお、前工程によって検出された欠陥についても、前記マーキング装置4によってマーク付けされる。本発明では、欠陥の位置だけでなく、欠陥の種類も視認できるように、パターンの異なるマークを光学積層フィルム1aに付与する。前記視認は、人間の視覚で識別できることをいう。なお、マークの詳細は、後述する。
マーキング装置4は、セパレーターフィルム13a及び表面保護フィルム12aの貼り合わせ部22の下流側に配置されている。下流側は、光学積層フィルム1aの搬送方向先頭側をいう。前記マーキング装置4は、例えば、フィルムの幅方向(幅方向は、搬送方向と直交する方向)の全体に亘って印字手段が設けられている。
図4では、インクジェット印刷方式のマーキング装置を例示しており、この装置は、フィルムの幅方向に密に且つ等間隔に並んだ複数の印字ヘッド41を有する。前記マーキング装置4によって、例えば、複数のドットを光学積層フィルム1aに印刷できる。
図示例では、マーキング装置4は、光学積層フィルム1aの表面側に配置されており、従って、表面保護フィルム12aの表面にマークを付けるようになっている。なお、マーキング装置4を光学積層フィルム1aの裏面側に配置し、セパレーターフィルム13aの裏面にマークを付けるようにしてもよい。
【0037】
図示例の前記検査装置31,…の欠陥の検出及びその位置の特定、さらに、マーキング装置4によるマークの付与は、例えば、次のようにして行なわれる。検査装置31,…は、欠陥を検出し、その欠陥の種類(剥離顕在化欠陥であるか、又は、不剥離欠陥であるか)と、その欠陥の位置(光学フィルム11aの幅方向のエッジから欠陥までの距離)と、を特定する。前記欠陥の位置は、撮像画像における欠陥に相当する画素領域の座標によって特定できる。例えば、第1検査装置31は、保護-剥離顕在化欠陥の検出とその欠陥の位置とを特定し、第2検査装置32は、セパレーター-剥離顕在化欠陥の検出とその欠陥の位置とを特定し、第3検査装置33は、不剥離欠陥の検出とその欠陥の位置とを特定する。制御装置25には、測長器23から光学フィルム11aの搬送方向への移動量が入力されている。前記制御装置25は、各検査装置31,…によって特定された欠陥の位置と前記測長器23で測定される光学フィルム11aの移動量とに基づいて、前記欠陥がマーキング装置4に到達するタイミングを算出する。制御装置25は、その算出したタイミングでマーキング装置4を作動させる。マーキング装置4は、欠陥の種類に対応して、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)にマークを印刷する。例えば、第1検査装置31で検出した欠陥である保護-剥離顕在化欠陥に対応して、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)に第1マークを印刷する。
図4では、プラス印の近傍に表されている複数のドットの集合が第1マーク71(保護-剥離顕在化欠陥に対応するマーク)である。
【0038】
第2検査装置32についても、上記と同様な手順で、欠陥(セパレーター-剥離顕在化欠陥)の検出及びその位置が特定される。そして、マーキング装置4は、前記セパレーター-剥離顕在化欠陥に対応して、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)に第1マーク71を印刷する。
図4では、星印の近傍に表されている複数のドットの集合が第1マーク71(セパレーター-剥離顕在化欠陥に対応するマーク)である。
以下、説明上、保護-剥離顕在化欠陥に対応した第1マーク71とセパレーター-剥離顕在化欠陥に対応した第1マーク71を用語上で識別する必要があるときには、前者を「第1-Aマーク71A」と称し、後者を「第1-Bマーク71B」と称する。
【0039】
第3検査装置33及び第4検査装置34についても、それぞれ上記と同様な手順で、欠陥(不剥離欠陥)の検出及びその位置が特定される。そして、マーキング装置4は、前記不剥離欠陥に対応して、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)に第2マークを印刷する。
図4では、ダイヤ印の近傍に表されている複数のドットの集合が第2マーク72(不剥離欠陥に対応するマーク)である。
【0040】
また、前工程で検出された欠陥についても、上記マーキング装置4にて光学積層フィルム1aにマークが付与される。具体的には、
図5は、前工程における欠陥の検出及びその位置の特定の方法を概略的に示した参考図である。
図5の参考図を参照して、前工程のフィルム検査を行なう検査装置P1は、光学フィルム11F(又は光学フィルムを構成する各フィルム)の欠陥Dを検出して、撮像画像における欠陥Dの位置(欠陥Dに相当する画素領域の座標)を特定する。この情報は演算装置P2に入力される。他方、演算装置P2には、測長器P3から光学フィルム11Fの搬送方向への移動量が入力されていると共に、読取り装置P4が読み取った識別子18の情報(光学フィルム11Fの長手方向の位置)が順次入力されている。このため、演算装置P2は、識別子18を読み取った時点と、欠陥Dを検出した時点(撮像画像における欠陥に相当する画素領域の座標を特定した時点)との間に、光学フィルム11Fがどれだけ搬送方向に移動しているかを把握することができる。この両時点間の光学フィルム11Fの移動量と、撮像画像における欠陥に相当する画素領域の座標とに基づき、演算装置P2は、所定の識別子(
図5の符号18-Zで示す識別子)から欠陥Dまでの距離(光学フィルムの長手方向に沿った距離)X1を算出できる。また、演算装置P2は、撮像画像における欠陥に相当する画素領域の座標に基づき、光学フィルム11Fの幅方向のエッジから欠陥までの距離(光学フィルムの幅方向に沿った距離)Y1を算出できる。演算装置P2は、少なくとも、前記所定の識別子18-Zの情報と、この識別子18-Zを基準とした欠陥の位置情報(X1,Y1)と、欠陥の種類と、を紐付けて記憶する。記憶された欠陥情報(以下、前工程の欠陥情報という)は、データーベース化されて演算装置P2の記憶部に記憶されていく。
上記システム9の制御装置25は、読み取り装置24によって識別子18の情報を取得し、この情報に基づいて前記前工程の欠陥情報を取り出す。前記制御装置25は、前工程の欠陥情報(前工程で得られた欠陥の位置情報及び欠陥の種類)と測長器23で測定される光学フィルム11aの移動量とに基づいて、前記前工程での欠陥がマーキング装置4に到達するタイミングを算出する。制御装置25は、その算出したタイミングでマーキング装置4を作動させる。マーキング装置4は、前工程で検出された欠陥の種類に対応して、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)にマークを印刷する。例えば、その前工程の欠陥情報が剥離顕在化欠陥である場合には、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)に第1マークを印刷し、不剥離欠陥である場合には、光学積層フィルム1aの表面(又は裏面)に第2マークを印刷する。
【0041】
<各マークの詳細>
図3、4、6乃至8を参照して、前記第1マーク71と第2マーク72は、パターンが異なっている。前記第1-Aマーク71Aと第1-Bマーク71Bは、パターンが同じでもよく(同じマーク)、或いは、パターンが異なっていてもよい。好ましくは、前記第1-Aマーク71Aと第1-Bマーク71Bは、パターンが異なっている。前記パターンは、模様を含む。パターンが異なるマークとは、例えば、対比するマークが平面視の図柄が異なる場合、対比するマークがそれぞれ複数の図柄から構成され、前記各図柄が同じであるが各図柄の配置が異なる場合;対比するマークがそれぞれ複数の図柄から構成され、前記各図柄から選ばれる少なくとも1つの図柄が異なり且つ各図柄の配置が同じ又は各図柄の配置が異なる場合;などが挙げられる。
【0042】
前記マーク(第1マーク71及び第2マーク72)は、光学積層フィルム1aの搬送方向に沿って略直線状に並んだ2個以上のドットから構成されていることが好ましい。このようなドットからなるマークは、インクジェット印刷機やレーザー印刷機などを有するマーキング装置4によって、光学積層フィルム1aに容易に印刷できる。
前記2個以上のドットからなる第1マーク71と第2マーク72は、それらのドットの配置を異ならせることによって、互いにパターンが異なっている。前記2個以上のドットは、前述の複数の図柄に相当する。詳しくは、図示例では、第1マーク71を構成するドットと第2マーク72を構成するドットは、いずれも平面視で略円形状(同じ図柄)であるが、それらの配置が異なっている。従って、第1マーク71と第2マーク72は、互いにパターンが異なる。
なお、特に図示しないが、前記2個以上のドットからなる第1マーク71と第2マーク72は、それらのドットの形状を異ならせることによって、互いにパターンが異なっていてもよい。例えば、第1マーク71を構成するドットを平面視略三角形状とし、第2マーク72を構成するドットを平面視略X字状とする。このように異なる形状のドット(異なる図柄)からなる第1マーク71と第2マーク72は、互いにパターンが異なる。
また、2個以上のドットから構成されている第1-Aマーク71Aと第1-Bマーク71Bは、それらのドットの配置を異ならせることによって、互いにパターンが異なっている。図示例では、それらのドットは、いずれも平面視で略円形状であるが、その配置が異なっている。
なお、図示例では、いずれも平面視略円形状のドットを例示しているが、ドットの形状はこれに限定されない。例えば、略楕円状、略矩形状、略三角形状、略X字状などであってもよい。
第1マーク71を構成するドットの数及び第2マーク72を構成するドットの数は、2個以上であれば特に限定されない。ただし、それらの数が、余りに少ないと、両マークのパターンの相違を視認し難くなるおそれがあり、余りに多いと、光学積層フィルム1aからフィルム製品Fを切り出す際に、欠陥のないフィルム製品Fに前記ドットが残存する蓋然性が高くなる。かかる観点から、第1マーク71を構成するドットの数及び第2マーク72を構成するドットの数は、それぞれ独立して、好ましくは3個以上12個以下であり、より好ましくは4個以上10個以下である。
【0043】
また、前記ドット(マーク)は、例えば、黒色インキや赤色などの任意の着色インキなどを用いて表される。また、マーキング装置4がレーザー印刷方式の場合には、前記ドット(マーク)は、黒色トナーや赤色などの任意の着色トナーなどを用いて表される。マークを表すインキ又はトナーなどは、再検査後に、フィルムに損傷を加えることなく除去できるものが用いられる。
【0044】
上述のように、第1マーク71と第2マーク72は、パターンが異なっている。例えば、複数のドットからなる前記第1マーク71は、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して前記搬送方向に並んだ2個以上のドットを含む。例えば、複数のドットからなる前記第2マーク72は、1個のドットの径以上の間隔を有して前記搬送方向に並んだ2個以上のドットを含み、且つ、1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まない。1個のドットの径よりも小さい間隔を有して並んだ2個以上のドットを含むか、或いは、含まないかによって、第1マーク71と第2マーク72は、そのパターンの相違によって視認できる。つまり、第1マーク71と第2マーク72は、見分けることができる。
以下、1個のドットの径よりも小さい間隔を「小間隔」と称し、1個のドットの径以上の間隔を「大間隔」と称する。
【0045】
図6は、保護-剥離顕在化欠陥に対応して表された第1-Aマーク71A(第1マーク71の1つ)の一例を示す平面図である。
図7は、セパレーター-剥離顕在化欠陥に対応して表された第1-Bマーク71B(第1マーク71のもう1つ)の一例を示す平面図である。
図8は、不剥離欠陥に対応して表された第2マーク72の一例を示す平面図である。
図6に示すように、第1-Aマーク71Aは、1つの保護-剥離顕在化欠陥に対して1箇所に付けられている。第1-Bマーク71Bも同様に、1つのセパレーター-剥離顕在化欠陥に対して1箇所に付けられている(
図7参照)。第2マーク72も同様に、1つの不剥離欠陥に対して1箇所に付けられている(
図8参照)。
図6乃至
図8において、各マーク71A,71B,72は、対応する欠陥を基準にして、幅方向一方側に配置されている。なお、各マーク71A,71B,72は、幅方向他方側(幅方向他方側は、前記幅方向一方側とは反対の側)に配置されていてもよい。例えば、
図9に示すように、第1-Aマーク71Aが、1つの保護-剥離顕在化欠陥の、幅方向他方側に付けられていてもよい。特に図示しないが、第1-Bマーク71B及び第2マーク72についても、
図9と同様に、幅方向他方側に付けられていてもよい。
なお、
図6乃至
図9では、各マーク71A,71B,72は、紙面最上段のドット(最上段のドットに符号d-1を示している)と紙面最下段のドット(最下段のドットに符号d-2を示している)の略中間に欠陥が位置するように付けられているが、欠陥が前記最上段のドット寄り又は前記最下段のドット寄りに位置するように付けられていてもよい。また、
図6乃至
図9では、各マーク71A,71B,72は、対応する欠陥の近傍に付けられているが、各マーク71A,71B,72の一部分が、欠陥に重なっていてもよい。各マーク71A,71B,72は、欠陥の厳密な位置を指標するわけではなく、概ねマークの付近に欠陥が存在することが判る程度で、欠陥に対応して付けられるものである。
【0046】
図6及び
図7を参照して、第1-Aマーク71A及び第1-Bマーク71Bは、いずれも、小間隔SWを有して搬送方向に並んだ2個以上のドットdを含んでいる点で共通している。一方、第1-Aマーク71Aは、大間隔を有して並んだ2個以上のドットdを含まないが、第1-Bマーク71Bは、大間隔LWを有して並んだ2個以上のドットdを含んでいる点で相違している。従って、第1-Aマーク71Aと第1-Bマーク71Bは、そのパターンの相違を視認できる。
図示例では、第1-Aマーク71Aは、小間隔SWを有して搬送方向に並んだ8個のドットdから構成されている。第1-Bマーク71Bは、小間隔SWを有して搬送方向に並んだ2個のドットdを1つのユニットとし、大間隔LWを有して並んだ2つ以上(図示例では3つ)の前記ユニットから構成されている。
【0047】
図8を参照して、第2マーク72は、大間隔LWを有して搬送方向に並んだ2個以上のドットdから構成されている。第2マーク72は、小間隔を有して搬送方向に並んだ2個のドットを含まない。図示例では、第2マーク72は、大間隔LWを有して搬送方向に並んだ4個のドットdから構成されている。
【0048】
前記1個のドットdの径は、ドットdの直径である。ドットdが平面視略円形状でない場合には、前記ドットdの径は、円相当径とする。
第1マーク71及び第2マーク72を構成するそれぞれのドットdの径は、同じであることが好ましい。
前記ドットdの径の具体的寸法は、特に限定されないが、例えば、2mm~5mmであり、好ましくは、2.5mm~4mmである。
【0049】
前記小間隔SWは、ドットdの径よりも小さい寸法である。前記小間隔SWの具体的寸法は、例えば、2mm未満であり、好ましくは、1mm以下であり、より好ましくは、0.5mm以下である。前記小間隔SWの下限は、零である。小間隔SWが零の場合には、幅方向において隣り合うドットdが実質的に接している状態である。
小間隔SWを有するマークに関して、全ての小間隔SWは、同じであることが好ましい。
前記大間隔LWは、ドットdの径と同じ寸法又はドットdの径よりも大きい寸法である。前記大間隔LWの具体的寸法は、例えば、2mm以上であり、好ましくは、2.5mm以上であり、より好ましくは、3mm以上である。前記大間隔LWの上限は、特にないが、余りに大きいと、隣り合うドットdが離れすぎるので、大間隔LWは、現実的には8mm以下であり、好ましくは6mm以下である。
大間隔LWを有するマークに関して、全ての大間隔LWは、同じであることが好ましい。
【0050】
第1マーク71及び第2マーク72が、上記好ましい小間隔SW及び大間隔LWを有するドットdの配置であることにより、次のような関係となる。
概念上、前記第2マーク72の上に第1マーク71を重ねると(つまり、複数のドットdからなる第2マーク72の上に、第1マーク71の複数のドットdを重ね印刷すると)、第2マーク72が消失する。第2マーク72上に第1マーク71を重ねることによって表される概念上のマークは、小間隔SWを有して搬送方向に並んだ2個以上のドットdを含むようになる。このため、前記重ねることによって表される概念上のマークは、第2マーク72にならず、第1マーク71となる。よって、前記第1マーク71と第2マーク72は、第2マーク72の上に第1マーク71を重ねると、第2マーク72が消失する関係にある。
このような関係にあるため、仮に剥離顕在化欠陥と不剥離欠陥が同じ位置に存在し、それぞれの欠陥に対応して第1マーク71と第2マーク72を印刷したとしても、光学積層フィルム1aに第1マーク71が明確に表されるようになる。後述するように、剥離顕在化欠陥を有するフィルム製品(第1マーク71が付いたフィルム製品F)は、再検査対象とせず、一律に不良品として扱う。前述のように、第1マーク71(第1マーク71は剥離顕在化欠陥の存在を指標するマークである)が明確に表されることにより、剥離顕在化欠陥を有するフィルム製品を再検査対象から確実に除外できるようになる。
【0051】
また、第1マーク71を、小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdを含むものから構成し、第2マーク72を、小間隔を有して並んだ2個以上のドットを含まないのものから構成することにより、次のような利点がある。
後述するように、フィルム製品は、光学積層フィルムから切り出される。この際、マークを跨いで切断されることが稀に生じ得る。マークを跨いで切断されると、その切断されたマークの一部が、切断線を境界として隣接する2つのフィルム製品の一方に付いたままとなり、且つ、その切断されたマークの残部が、前記製品のもう一方に付いたままとなる。マークは、欠陥の厳密な位置を指標するものではないので、前記一方の製品ともう一方の製品のどちらの方に、そのマークに対応する欠陥が存在しているのかを断定できない。それ故、前記一方の製品ともう一方の製品は、いずれもマークが付いた製品として扱う必要がある。また、マークに跨がって切断された場合、隣接する2つのフィルム製品の一方が第1マークの付いた製品で且つもう一方が第2マークの付いた製品であると、混同してグループ分けされることは避けなければならない。それ故、前記隣接する2つのフィルム製品は、同じマークが付いた製品であることを視認できるようにすることが望ましい。
【0052】
図10は、第1マーク71に跨がって切断された場合の参考図である。第1マーク71は、小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdを含んでいるので、その第1マーク71に跨がって切断された場合には、前記切断線Cで隣接する2つのフィルム製品F-a,F-bのそれぞれに、小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdが付いた状態となる。また、
図10の破線で示す箇所で切断されたとしても、一方のフィルム製品F-aには、小間隔SWを有して並んだ1個のドットdと1個未満のドットdが付いた状態となる。このため、前記第1マーク71を挟んで切断された場合、少なくとも小間隔SWを目印として、隣接するフィルム製品F-a,F-bがいずれも第1マーク71が付いた製品であると視認できる。
特に、小間隔SWが非常に小さい場合、例えば、小間隔SWが2mm未満、好ましくは1mm以下である場合には、切断線が小間隔SWに重なることは非常に稀となる。このため、隣接するフィルム製品F-a,F-bのそれぞれで小間隔SWが残存し、それを視認できる。
【0053】
一方、第2マーク72は、小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdを含まない。そのため、その第2マーク72に跨がって切断された場合には、前記切断線で隣接する2つのフィルム製品Fのそれぞれには、小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdが存在しない。このため、前記第2マーク72を挟んで切断された場合、少なくとも小間隔SWが存在しないこと目印として、隣接するフィルム製品Fがいずれも第2マーク72が付いた製品であると視認できる。
よって、マークを跨いで切断された場合でも、剥離顕在化欠陥を有する可能性があるフィルム製品Fを正常品として扱われることを確実に防止できる。
【0054】
なお、第1マーク71(第1-Aマーク71A、第1-Bマーク71B)及び第2マーク72は、
図6乃至
図8に示すドットパターンに限定されず、適宜変更できる。前記ドットdの数や配置を設定することにより、上記小間隔SWを有して並んだ2個以上のドットdを含む第1マーク71、及び、上記大間隔LWを有して並んだ2個以上のドットdを含む第2マーク72を様々なパターンに設定できる。
例えば、
図11に示すように、光学積層フィルム1aの搬送方向に沿って略直線状に且つ等間隔に並んだ複数のドット形成仮想部78を想定したとする。複数のドット形成仮想部78は略同形同大である。
図11の一点鎖線は、ドット形成仮想部78を表している。ドット形成仮想部78は、その形成仮想部78を印刷するとドットdを表示できる部位(つまり、インキなどで着色するとドットdとなる部位)であって、あくまで概念上の部位である。隣接するドット形成仮想部78の間隔は、上記小間隔SWに相当する。なお、
図11では、ドット形成仮想部78が等間隔で8個並んでいる場合を例示しているが、この数に限定されるわけではない。
前記複数のドット形成仮想部78のうち互いに隣接する少なくとも2個のドット形成仮想部78を選び、それらの形成仮想部78を印刷することによって、第1マーク71を構成できる。一方、前記複数のドット形成仮想部78の中から互いに隣接しない少なくとも2個のドット形成仮想部78のみを選び、それらの形成仮想部78を印刷することによって、第2マーク72を構成できる。例えば、
図11のドット形成仮想部78のうち、紙面上側から第1番目、第2番目、第4番目、第5番目、第7番目及び第8番目のドット形成仮想部78を印刷することにより、
図7に示す第1-Bマーク71Bとなる。また、
図11のドット形成仮想部78のうち、紙面上側から第1番目、第3番目、第5番目及び第7番目のドット形成仮想部78を印刷することにより、
図8に示す第2マーク72となる。
【0055】
図4に戻って、欠陥を含む長尺帯状の光学積層フィルム1aがマーキング装置4を通過すると、光学積層フィルム1aに各欠陥に対応する各マーク71,72が付けられていく。
【0056】
<フィルム製品の製造ゾーン>
前記システム9のフィルム製品の製造ゾーンにおいて、前記検査及び各マークが付いた光学積層フィルム1aから複数のフィルム製品Fが切り出される。
図3及び
図4を参照して、前記フィルム製品の製造ゾーンにおいて、コンベア51,52は、マーキング後の光学積層フィルム1aを下流側へと搬送する。図示例では、エンドレス状のベルトを有するコンベア51,52を図示しているが、コンベア51,52はこれに限定されるわけではない。
切断装置6は、マーキング装置4の下流側に配置されている。前記切断装置6は、光学積層フィルム1aからフィルム製品Fを切り出すための切断刃61と、切断刃61の刃先を受ける刃受けシート62と、刃受けシート62の裏面に配置された台座63と、を有する(
図3参照)。なお、図示例では、前記コンベア51のベルトが刃受けシート62を兼用しているが、前記刃受けシート62と前記コンベア51ベルトを別々に設けてもよい。搬送される長尺帯状の光学積層フィルム1aに切断刃61を押し当て、光学積層フィルム1aを切断することにより、複数のフィルム製品Fを連続的に形成できる。通常、切断後、少なくとも光学積層フィルム1aの幅方向両端部は、切断残余部R(いわゆる抜き滓)として回収される。切断残余部Rの回収方向を
図3の白抜き矢印で示し、各フィルムの搬送方向を矢印で示している。なお、図示例では、切断残余部Rが両端部のみに生じる切断形式を例示している。この形式の場合、隣接するフィルム製品Fの隙間は切断刃61の刃厚に略等しい。また、隣接するフィルム製品Fの間に切断残余部Rが生じる切断形式にて光学積層フィルム1aを切断してもよい。この形式の場合には、隣接するフィルム製品Fの隙間が刃厚よりも十分に大きくなる。
【0057】
得られるフィルム製品Fの層構成は、光学積層フィルム1aの層構成と同様である。図示例では、平面視略矩形状(略長方形状又は略正方形状)のフィルム製品Fが切断装置6にて形成される場合を例示している。ただし、形成されるフィルム製品Fは、略矩形状(略長方形状)に限定されず、略三角形状、略六角形状などの略多角形状、略円形状、略楕円形状、これらの形状が組み合わされた異形状などであってもよい。本明細書において、略矩形状、略三角形状及び略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
さらに、図示例では、略矩形状のフィルム製品Fの1辺が搬送方向と略平行となるように、フィルム製品Fを切り出す場合を表しているが、略矩形状のフィルム製品Fの1辺が搬送方向に対して傾斜するように、フィルム製品Fを切り出してもよい。
図4に示すように、切断装置6の下流側に、第1マーク71が付いたフィルム製品F、第2マーク72が付いたフィルム製品F及びマークが付いていないフィルム製品Fが搬送されていく。なお、中には、第1マーク71と第2マーク72の双方が付いたフィルム製品Fもあるかもしれない。
【0058】
<フィルム製品のグループ分けするゾーン>
グループ分けゾーンは、前記第1マーク71が付いたフィルム製品Fを第1グループG1、前記第2マーク72が付いたフィルム製品Fを第2グループG2、前記第1マーク71及び第2マーク72のいずれも付いていないフィルム製品Fを第3グループG3、にグループ分けする。グループ分けした各フィルム製品Fは集積してグループ毎に一纏めにする。なお、第1マーク71及び第2マーク72のいずれもが付いているフィルム製品Fは、第1グループG1とする。
グループ分けは、機械が行なってもよく、人が行なってもよく、或いは、人及び機械で行なってもよい。
例えば、
図3及び
図4に示すように、各フィルム製品Fが切断装置6の下流側へと搬送される過程に、撮像手段(カメラなど)、画像処理手段及び除去手段を有する選別装置8を配置する。選別装置8の撮像手段によってフィルム製品Fを撮像し、画像処理手段で前記撮像画像に適宜の画像処理を施すことにより、第1マーク71が付いた製品F、第2マーク72が付いた製品F、マークが付いていない製品Fを選別する。図示しない除去手段により、第1マーク71が付いた製品F及び第2マーク72が付いた製品Fを製造ラインから抜き出し、それぞれを第1グループG1と第2グループG2に分けて集積する。マークが付いていない製品Fは、そのまま製造ラインに残し、集積して第3グループG3とする。
【0059】
なお、上述のように、第1マーク71を、第1-Aマーク71A及び第1-Bマーク71Bの2種類に細分した場合には、前記第1グループG1をさらに2つのグループ(第1-Aグループと第1-Bグループ)に分けることも可能である。
すなわち、前記第1-Aマーク71Aが付いたフィルム製品Fを第1-Aグループとし、前記第1-Bマーク71Bが付いたフィルム製品Fを第1-Bグループとしてグループ分けしてもよい。
このように第1グループG1をさらに細分することにより、保護-剥離顕在化欠陥の発生割合とセパレーター-剥離顕在化欠陥の発生割合とをそれぞれ把握できる。このように前記2つの欠陥の発生割合を個別に把握することは、将来的に、生産効率の向上に寄与できる。
【0060】
[正常品と不良品の判別及び取り扱い]
前記第3グループG3のフィルム製品Fは、正常品として扱う。
前記第1グループG1のフィルム製品Fは、不良品として扱う。
前記第2グループG2のフィルム製品Fは、再検査を行なう。再検査の結果、欠陥を有さないと判断されたフィルム製品Fは、正常品として扱い、欠陥を有すると判断されたフィルム製品Fは、不良品として扱う。
前記正常品は、必要に応じて適宜な処理を施した後に市場に提供される。前記不良品は、廃棄される、又は、材料リサイクルに供される。
【0061】
本発明によれば、不良品が市場に提供されることなく、フィルム製品の生産効率を向上できる。
具体的には、マークが付いたフィルム製品のグループの中には、正常品(実際には欠陥無し)と不良品(実際に欠陥有り)が混在している可能性がある。特に、不良品を出荷対象から確実に除くため、欠陥検出の基準(閾値)を高く設定することが望ましいが、そうすると、前記マーク付きグループの中に正常品と不良品が混在する可能性が高くなる。よって、マークが付いたフィルム製品を一律に廃棄すると、正常品まで廃棄される可能性が高くなる。このため、マークが付いたフィルム製品を再検査し、その中から正常品を選別することにより、生産効率(歩留まり率)を向上できる。
しかし、上述のように、欠陥には剥離顕在化欠陥と不剥離欠陥が存在している。剥離顕在化欠陥は、表面保護フィルム及びセパレーターフィルムの少なくとも一方を剥離しなければ検出できない。不剥離欠陥は、フィルム製品の状態(光学積層フィルムの状態)でも検出できる。本発明者らは、このような欠陥の種類に着目し、フィルム製品を欠陥の種類に応じてグループ分けして再検査の適否を判断することにした。
【0062】
前記第1グループG1のフィルム製品Fは、表面保護フィルム12a及び/又はセパレーターフィルム13aを剥離しなければ再検査できない。仮に、表面保護フィルム12aなどを剥離して再検査した後には、その表面保護フィルム12aなどを元のように綺麗に貼り付けなければならないが、そのような作業は極めて困難である。このため、第1グループG1のフィルム製品Fは、一律に不良品として扱う。第1グループG1のフィルム製品Fを一律に不良品とすることにより、不良品が市場に提供されることを防止できる。他方、前記第2グループG2のフィルム製品Fは、フィルムを剥離せず、製品のままで欠陥の有無を再検査できる。再検査の結果、実際に欠陥を有さないフィルム製品Fを正常品として扱うことにより、生産効率を高めることができる。なお、第2グループG2のフィルム製品Fの再検査によって正常品となる製品には、第2マーク72が表されている。それ故、その第2マーク72を綺麗に消去した上で正常品として出荷する。このように本発明によれば、不良品を確実に除いてそれが市場に提供される可能性をほぼ零にすることができる上、フィルム製品の生産効率を高めることができる。
なお、再検査は、機械的に自動で行なってもよく、各種機器を用いて人が行なってもよく、或いは、機械と人の双方で行なってもよい。より正確な結果を期待できることから、少なくとも人が再検査を行なうことが好ましい。再検査対象となる第2グループG2のフィルム製品Fは、比較的少量であるため、人が精密に検査したとしても製品コストに殆ど影響しない。このため、再検査を少なくとも人が行なうことにより、欠陥を有する製品を確実に不良品として除くことができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1a 光学積層フィルム
11,11a 光学フィルム
12,12a 表面保護フィルム
13,13a セパレーターフィルム
71 第1マーク
72 第2マーク
G1 第1グループ
G2 第2グループ
G3 第3グループ
d,d-1,d-2 ドット
SW ドットの径よりも小さい間隔
LW ドットの径以上の間隔