(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ベンチレーションマット及び座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20241128BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20241128BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20241128BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/56
A47C7/74 C
A47C31/02 H
(21)【出願番号】P 2021002558
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】宮野 大助
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221422(WO,A1)
【文献】米国特許第07070231(US,B1)
【文献】特開2019-147513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B60N 2/56
A47C 7/74
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチレーションマット本体と、
前記ベンチレーションマット本体に接続される通風ガイドと、を有し、
前記ベンチレーションマット本体は、
通気性のある立体構造を備える第1の基材と、
前記第1の基材の外周を覆うサイドバリアと、を有し、
前記通風ガイドは、
通気性のある立体構造を備える第2の基材と、
前記第2の基材の周囲を覆うガイドチューブと、を有し、
前記第1の基材と前記第2の基材が空気循環可能なように連通されており、
前記サイドバリアと前記ガイドチューブの内の一方又は両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものであ
り、
前記第1の基材に対する側が前記非通気性フィルムとなるようにして前記サイドバリアが前記第1の基材の外周を覆っているか、又は、前記第2の基材に対する側が前記非通気性フィルムとなるようにして前記ガイドチューブが前記第2の基材の周囲を覆っているベンチレーションマット。
【請求項2】
前記布体が不織布である請求項1記載のベンチレーションマット。
【請求項3】
シートクッション材と、表皮カバーと、請求項1
又は2記載のベンチレーションマットを有し、
前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、
前記シートクッション材と前記表皮カバーの間に前記ベンチレーションマットが配置されている座席。
【請求項4】
シートクッション材と、表皮カバーと、請求項1
又は2記載のベンチレーションマットを有し、
前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、
前記シートクッション材に貫通孔が形成されており、
前記シートクッション材における前記表皮カバーが配置されていない側の面に前記ベンチレーションマットが配置されている座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に設置される座席とそれに使用されるベンチレーションマットに係り、特に、座席を通じて送風等を行う場合に適した構成とすることが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の座席に、特に周囲の温度や湿度が高い条件の下で長時間に渡って着座する場合、座席の表面と人体接触部に「蒸れ」や「べたつき感」が生じる。この「蒸れ」や「べたつき感」は着座者の快適感を損なう原因となることから、従来からこのような問題に対する対策が種々検討されている。
【0003】
このような検討の一つとして、例えば、当該特許出願人より特許文献1,2のような提案がなされている。特許文献1、2には、送風装置としてベンチレーションマットが組込まれた座席の概略断面図が示されている。ベンチレーションマットは、ベンチレーションマット本体と通風ガイドから構成されており、ベンチレーションマット本体は、通気性のある立体構造を備えた基材と、基材を覆う非通気性材料からなるサイドバリアとからなり、通風ガイドは、通気性のある立体構造を備えた基材と、基材を覆う非通気性材料からなるチューブとからなるものである。ファンなどの送風源より送られた風は、通風ガイド及びベンチションマット本体の基材を通過して、ベンチレーションマット本体における基材の一方の面を覆う通気性カバーより吹き出し、着座者に送風させる態様となっている。この送風により着座者の「蒸れ」や「べたつき感」が解消されることとなる。又、関連する技術として、例えば特許文献3~8も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2018/221422:クラベ
【文献】特開2020-32924公報:クラベ
【文献】特開2007-84039公報:ブリヂストン
【文献】特開2017-71368公報:ブリヂストン
【文献】特許第4107033号公報:松下電器産業
【文献】特許第4125721号公報:W.E.T.
【文献】特許第4999455号公報:クラベ
【文献】特許第5430085号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特に車両用座席には、着座者の着座・離座の動作、走行中の加減速や方向転換に伴う加速度変化、路面からの振動などにより、圧縮、せん断、捻じれなど様々応力が作用する。このような応力はベンチレーションマットにも作用し、特にベンチレーションマット本体の基材を覆うサイドバリアや通風ガイドの基材を覆うチューブには、強い摩擦力が加わることになる。より快適性と機能安定性を求められる昨今の自動車においては、このような摩擦が想定外の大きさで加わった場合においても、サイドバリアやチューブの摩耗、破断、割れを確実に防止し、更に、摩擦に起因する異音の発生も防止することが求められている。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、摩擦に起因した摩耗、破断及び割れ並びに異音の発生を防止することができるベンチレーションマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明によるベンチレーションマットは、ベンチレーションマット本体と、前記ベンチレーションマット本体に接続される通風ガイドと、を有し、前記ベンチレーションマット本体は、通気性のある立体構造を備える第1の基材と、前記第1の基材の外周を覆うサイドバリアと、を有し、前記通風ガイドは、通気性のある立体構造を備える第2の基材と、前記第2の基材の周囲を覆うガイドチューブと、を有し、前記第1の基材と前記第2の基材が空気循環可能なように連通されており、前記サイドバリアと前記ガイドチューブの内の一方又は両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものである。
また、前記布体が不織布であることが考えられる。
また、前記第1の基材に対する側が前記非通気性フィルムとなるようにして前記サイドバリアが前記第1の基材の外周を覆っているか、又は、前記第2の基材に対する側が前記非通気性フィルムとなるようにして前記ガイドチューブが前記第2の基材の周囲を覆っていることが考えられる。
また、本発明による座席は、シートクッション材と、表皮カバーと、前記のベンチレーションマットを有し、前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、前記シートクッション材と前記表皮カバーの間に前記ベンチレーションマットが配置されているものである。
また、本発明による他の形態の座席は、シートクッション材と、表皮カバーと、請求項1~3何れか記載のベンチレーションマットを有し、前記シートクッション材が前記表皮カバーに覆われており、前記シートクッション材に貫通孔が形成されており、前記シートクッション材における前記表皮カバーが配置されていない側の面に前記ベンチレーションマットが配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるベンチレーションマットによれば、ベンチレーションマット本体のサイドバリアと通風ガイドのガイドチューブの一方または両方が、非通気性フィルムと布体が積層されたものであるため、破断強度と耐摩耗性が向上し、摩擦に起因した摩耗、破断及び割れを防止することができる。また、布体の存在により、他の材料と擦れた際にも、異音を発生することがない。布体の中でも、不織布がこのような効果を最も良く得ることができる。なお、ベンチレーションマット本体のサイドバリアと通風ガイドのガイドチューブの内、より強く摩擦力を受ける方について、非通気性フィルムと布体が積層されたものとすればよいが、もちろん両方について非通気性フィルムと布体が積層されたものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のベンチレーションマットの概略図である。
【
図2】本発明のベンチレーションマットの基材形状を説明する図である。
【
図3】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略図である。
【
図4】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの吊込部の断面図である。
【
図5】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略図である。
【
図6】本発明のベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下で説明するベンチレーションマットは、自動車用シートの座面と背もたれとの少なくとも一方に設けられるものである。また、本発明にかかるベンチレーションマットは、自動車用シートのクッション材と、当該クッション材を覆う表皮カバーと、の間に挟み込むように設置される。また、ベンチレーションマットには、ファンが設けられ、このファンにより、ベンチレーションマットから空気を吸引する又はベンチレーションマットに空気が流し込まれる。
【0011】
以下の説明では、自動車用シートにベンチレーションマットを設置した状態で、表皮カバー側、つまり座面側に位置する面を表面、自動車用シートのクッション材側に位置する面を裏面と称す。
【0012】
図1に実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の概略図を示す。
図1では、ベンチレーションマット1の上面図及び下面図を示す。上面図は、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の表面側の構成を示すものであり、下面図は、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の裏面側の構成を示すものである。
【0013】
図1に示すように、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112を有している。また、本実施の形態1では、これら第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112を接続する接続マット131及び132を有している。本実施の形態1では、接続マットを2つ使用しているが、勿論、接続マットは1つでも良いし、3つ以上であっても良い。また、ベンチレーションマット本体を2つ使用しているが、勿論、ベンチレーションマット本体は2つ以上であっても良い。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、通風ガイド20を有している。このようなベンチレーションマット1は、通風ガイド20が、一端にファン取り付け孔24が設けられ、他端がベンチレーションマット本体111の側面に設けられた接続孔に接続されることで形成される。
【0015】
第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112は、例えば、第1の基材(例えば、スペーサ12)、サイドバリア11、通気性カバー13、連結ベルト14、開口面15を備えるものが考えられる。本実施の形態におけるスペーサ12は、通気性のある立体構造を備えるシートである。スペーサ12は、例えば、繊維を立体的に編んだ3Dメッシュシートである。この3Dメッシュシートを所定形状に切り出す際には、レーザ溶断により加工することが好ましい。これにより、端面のほつれにより繊維クズが発生することを防止することができる。
【0016】
サイドバリア11は、通気性カバー13よりも通気性が低く、接続マット131、接続マット132及び通風ガイド20が接続される接続部以外のスペーサ12の外周を覆う。サイドバリア11は、スペーサ12に、例えば、接着剤や粘着剤で接着される、或いは、スペーサ12に縫製される、溶着されるなどの形態でスペーサ12の外周を覆う。特に縫製であれば、熱的又は経時的な影響によって接着力が低下することがないため好ましい。
【0017】
通気性カバー13は、布で形成され、全体が通気性を備え、スペーサ12の表面を覆う。なお、通気性カバー13がスペーサ12を覆う面積は、スペーサ12の表面のうちサイドバリア11で覆われていない領域である。
【0018】
通気性カバー13は、例えば、不織布のような繊維素材であって、高い通気性を有するものが好ましい。一方、サイドバリア11は、通気性カバー13よりも通気性が低い素材を選択する。サイドバリア11は、例えば、不織布、スパンボンド不織布、織布、フィルム、ゴム引き布を用いることができる。ここで、不織布、スパンボンド不織布及び織布の素材は、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が考えられる。また、フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリビニル、ポリプロピレン、PET、塩化ビニル、ポリウレタン、各種熱可塑性エラストマー等が考えられる。また、種々の繊維で補強したフィルムを使用しても良い。ゴム引き布は、繊維に気密性を与える加工をしたものである。この中でも、サイドバリア11の材料として、非通気性フィルムと布体が積層されたものであることが好ましい。ここでの布体とは、例えば、織布、スパンボンド不織布、織布、ゴム引き布が挙げられ、特に難燃性の不織布が好ましい。本実施の形態においては、ポリエステル繊維で補強したポリウレタンフィルムを使用した。
【0019】
また、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112の裏面には、通気性カバー13が設けられておらず、サイドバリア11で囲まれる部分が開口面15となっていてもよい。つまり、本実施の形態において、開口面15においてはスペーサ12が露出する。また、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112の裏面には、開口面15を跨いで両側のサイドバリア11を接続する連結ベルト14が設けられることが考えられる。この連結ベルト14は、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112の形状を安定させるものである。勿論、開口面15や連結ベルト14を有していないものでも構わず、ベンチレーションマット本体112の裏面がサイドバリア11と同じ材料によって覆われているものも考えられる。
【0020】
接続マット131及び132は、通気性のある立体構造を備える第3の基材(例えば、スペーサ32、33)と、基材の周囲を覆うバリアチューブとを有しているものが考えられる。この第3の基材(例えば、スペーサ32、33)は、例えば、ダブルラッセルや3Dメッシュシートのような繊維を立体的に編んだ立体編物、繊維が三次元状に複雑に絡み合ってできた構造体、連続気泡を有するフォーム材(スポンジ)、ゴムチューブを並べたもの等を用いることができる。立体編物としては、例えば、旭化成社製のフュージョン(登録商標)、住江織物社製のスウィングネット(登録商標)、ミュラーテキスタイル社製の3mesh(登録商標)、ユニチカ社製のキュービックアイ(登録商標)等が挙げられる。繊維が三次元状に絡み合ってできた構造体としては、例えば、東洋紡社製のブレスエアー(登録商標)等が挙げられる。連続気泡を有するフォーム材やゴムチューブを構成する材料としては、例えば、ウレタン、EPDM、クロロプレン、イソプレン、シリコーン、各種熱可塑性エラストマー等の材料が使用される。これら第3の基材は、通気しやすい方向と通気しにくい方向のような方向性を持つものも考えられる。例えば、立体編物のようなものだと、断続的に断面当たりの繊維の密度が高くなる(本数が多くなる)部分が形成されるような方向や、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向が形成されるようなものがある。この場合、繊維の密度が低い(本数が少ない)方が通気しやすいことになる。このような方向性を持つ第3の基材を使用する場合は、実際に通気がなされる方向である空気流動方向が、第3の基材における通気しやすい方向、例えば、連続的に繊維の密度が低くなる(本数が少なくなる)部分を有するような方向と同じ方向であることが好ましい。また、バリアチューブは、サイドバリア11と同じ素材を用いることができ、例えば、不織布、スパンボンド不織布、織布、フィルム、ゴム引き布を用いることができる。バリアチューブの材料として、特に非通気性フィルムと布体が積層されたものであることが好ましい。ここでの布体とは、例えば、織布、スパンボンド不織布、織布、ゴム引き布が挙げられ、特に難燃性の不織布が好ましい。本実施の形態においては、ポリエステル繊維で補強したポリウレタンフィルムを使用した。この第3の基材は第1の基材と空気循環可能なように連通されており、これにより、第1のベンチレーションマット本体111、接続マット131、接続マット132及び第2のベンチレーションマット本体112の間で通気されるようになる。
【0021】
接続マット131及び132の両端は、サイドバリア11に設けられた接続孔に差し込まれる。
図1では、接続マット131及び132と第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112との接続する部分を接続部35~38とした。
【0022】
通風ガイド20は、非通気性材料からなるガイドチューブ23と、通気性のある立体構造を備える第2の基材(例えば、スペーサ22)により構成され、内部に通風路が形成される。このスペーサ22は、第1の基材と同じ素材、例えば、繊維を立体的に編んだ3Dメッシュシートを用いることができる。また、ガイドチューブ23については、サイドバリア11と同じ素材を用いることができ、例えば、不織布、スパンボンド不織布、織布、フィルム、ゴム引き布を用いることができる。ガイドチューブ23の材料として、特に非通気性フィルムと布体が積層されたものであることが好ましい。ここでの布体とは、例えば、織布、スパンボンド不織布、織布、ゴム引き布が挙げられ、特に難燃性の不織布が好ましい。本実施の形態においては、PETフィルムと難燃性ポリエステル繊維からなる不織布を積層したものを使用した。なお、第2の基材(スペーサ22)の側がPETフィルムとなるよう、ガイドチューブ23を配置した。
【0023】
通風ガイド20の一端には、スペーサ22が露出するように開口部が設けられる。この開口部は、プラスチック素材で形成された型が嵌め込まれ、ファン取り付け孔21となる。通風ガイド20の他端は、サイドバリア11に設けられた接続孔に差し込まれる。
図1では、通風ガイド20とベンチレーションマット本体10との接続する部分を接続部23とした。
【0024】
ここで、スペーサ12等の形状についてさらに詳細に説明する。
図2に実施の形態1にかかるベンチレーションマットの基材(例えば、スペーサ)の形状を説明する図を示す。
図2では、スペーサ12、22、32、33の形状について、第1の例と第2の例を示した。
図2に示すように、スペーサ12、22、32、33はそれぞれ別の部品として形成される。第1の例では、第1のベンチレーションマット本体111には、切り欠き部12a、12b、12cが設けられ、第2のベンチレーションマット本体112には、切り欠き部12d、12eが設けられる。一方、通風ガイド20のスペーサ22のうち第1のベンチレーションマット本体111に差し込まれる側の形状は、袋状のガイドチューブ21が被される部分と同じ幅であるが、ガイドチューブ23が被された状態で切り欠き部12aに差し込まれる部分が露出する。また、接続マット131及び132のスペーサ32、33のうち第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112に差し込まれる側の形状は、バリアチューブが被される部分と同じ幅であるが、バリアチューブが被された状態で切り欠き部12b~eに差し込まれる部分が露出する。第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマットの切り欠き部12a~eが、通風ガイド20、接続マット131及び接続マット132を接続する接続部となる。スペーサ22、32、33をこのような形状とすることで、スペーサ22、32、33を元の3Dメッシュシート材から切り出す際の部材利用効率を高めることができる。
【0025】
第2の例では、スペーサ22、23、32の接続孔側の端部には、通風ガイド20、接続マット131又は接続マット132から突出し、幅が通風ガイド20、接続マット131又は接続マット132よりも広い抜け防止部22a、32a、33aが形成される。また、スペーサ12の接続孔付近には、抜け防止部22a、32a、33aの形状に対応した形状の切り欠き部12a~eが設けられる。ベンチレーションマット1を組み立てる際には、抜け防止部22a、32a、33aを切り欠き部12a~eに嵌め込んだ状態で、スペーサ12の外周にサイドバリア11を設ける。これにより、抜け防止部22a、32a、33aがサイドバリア11により抑えられるため、通風ガイド20、接続マット131及び接続マット132が第1のベンチレーションマット本体111又は第2のベンチレーションマット本体112から抜け落ちることが防止され、ベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112、接続マット131、接続マット132及び通風ガイド20が一体の部品となる。ベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112、接続マット131、接続マット132及び通風ガイド20の接続は、接着、粘着、縫製、溶着等従来公知のいずれの方法を用いても良く特に限定されない。
【0026】
続いて、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の自動車用シートへの組み込み形態について説明する。そこで、
図3に実施の形態1にかかるベンチレーションマット1を搭載する自動車用シートの概略図を示す。実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、実際には表皮カバーの下に設置されるため、表皮カバーに隠れた状態で自動車用シート60に搭載される。そこで、
図3に示す概略図では、自動車用シート60において、ベンチレーションマット1が設置される部分を網掛け模様で示した。なお、通風ガイド30については、ファン取り付け孔31が自動車用シート60の裏面側に回り込むように取り回しがなされる。
【0027】
図3に示すように、自動車用シート60は、背もたれ61及び座面62を有する。そして、背もたれ61と座面62には、それぞれ吊込部63が設けられる。この吊込部63は、表皮カバーが吊込部材によりクッション材と連結される部分である。そこで、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112が吊込部63を挟むように、且つ、接続マット121及び接続マット122が吊込部63に位置するよう配置する。また、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、背もたれ61と座面62にそれぞれ設けられる。
【0028】
この吊込部63付近の構造について、さらに詳細に説明する。そこで、
図4に、
図3のIV-IV線に沿った実施の形態1にかかるベンチレーションマットを搭載する自動車用シートの吊込部の断面図を示す。
【0029】
図4に示すように、第1のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112は、クッション材64と表皮カバー65とに挟まれる位置に設けられる。また、第1のベンチレーションマット本体111と第2のベンチレーションマット本体112は、吊込部63を挟むように分離して配置される。また、接続マット121及び接続マット122が吊込部63に位置するよう配置される。吊込部63には、吊込部材66が設けられ、この吊込部材66により、表皮カバー65がクッション材64に引っ張られるようにクッション材64と連結される。具体的には、クッション材64には、上記した表皮カバー65に吊込部材66取り付けられた箇所に対応して溝が形成される。そして、その溝の底部に固定部材67として金属ワイヤが埋め込まれている。このようなクッション材64と表皮カバー65ついて、表皮カバー65の吊込部材66をクッション材64の溝の底部に引き込み、ホグリング等の止め具68によって吊込部材66と固定部材67を固定することによって連結される。止め具68は、接続マット121及び122を避けた箇所に配置される。この吊込部材66をクッション材64の溝の底部に引き込む張力により、表皮カバー65は張りのある状態となる。
【0030】
また、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、簡単な形状の部品を組み合わせることで形成されるため、ベンチレーションマット1の構成部品の材料利用効率が高い(例えば、1つの材料に占める廃棄材料に対する利用可能材料の比率が高い)。つまり、材料の利用効率が高まることで、実施の形態1にかかるベンチレーションマット1は、製造コストを低減することができる。
【0031】
本発明によるベンチレーションマット1~4を自動車用シート60に組み込む際、例えば、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等を、クッション材64上に粘着テープ等で固定することが考えられる。このような態様のみでなく、例えば、クッション材64を成形する際、予め第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等を成形型内に配置しておき、そこにクッション材の材料を流し込んだ後、クッション材の材料を発泡硬化させることも考えられる。この場合、第1のベンチレーションマット本体111、第2のベンチレーションマット本体112等とクッション材64が確実に固定されて位置ズレを防止することができる。このような工法は、カーシートヒータの技術分野で一般的なものであり、例えば、特許文献5等が参照できる。
【0032】
実施の形態1にかかるベンチレーションマット1の自動車用シートへの組み込み形態について、
図5及び
図6を参照して他の例を説明する。
図6は
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。自動車用シート60は、背もたれ61及
び座面62を有する。座面62におけるクッション材64の下部に第一のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112が取り付けられている。送風源となるファン41は、送風機取り付け具42によりシートフレーム71に取り付けられている。ファン41はまた、通風ガイド20にも接続されている。また、第一のベンチレーションマット本体111及び第2のベンチレーションマット本体112における通気性カバーが位置する箇所において、クッション材64には任意の個数形状で貫通孔69が形成されている。このように配置することで、ファン41からの風が、通風ガイド20、ベンチレーションマット本体111又はベンチレーションマット本体112、貫通孔69、表皮カバー65を経て、着座者に送られることになる。このような構造については、例えば、特許文献2が参照できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明によるベンチレーションマットを座面62側ではなく、背もたれ61側に配置することも可能であるし、座面62側と背もたれ61側の両方に配置することも可能である。
【0034】
また、サイドバリア11とガイドチューブ21について、非通気性フィルムと布体が積層されたものを使用する場合、基材(スペーサ12、スペーサ22)に対する側が非通気性フィルムとなっていることが好ましい。これにより、外面側が布体になるので、ベンチレーションマット本体や通風ガイドが他部材と擦れた際の摩擦に強くなり、また、異音の発生も防止できる。一方、基材(スペーサ12、スペーサ22)に対する側が布体となっていることも考えられる。この場合は、基材(スペーサ12、スペーサ22)と擦れた際の摩擦に強くなり、また、異音の発生も防止できる。サイドバリア11とガイドチューブ21について、非通気性フィルムが2枚の布体で挟持され積層されたものであれば、内外の部材との摩擦に対応できるため、最も好ましい。
【0035】
また、上記の通り、通風ガイド20にはファン40が取付けられる。この取付け部分には、取付け部分からの空気の漏れを防止するため、通常は、ゴム材料や発泡樹脂材料のようなクッション性のある接続部材(図示しない)が使用され、接続部材が圧縮された状態で
通風ガイド20とファン40が取付けられる。ここで、ガイドチューブ21について、外側が布体となるようにして、非通気性フィルムと布体が積層されたものを使用すると、この接続部材を省略することができる。即ち、布体は十分なクッション性があり、圧縮することで空気の漏れを遮断することができる。そのため、接続部材がなくても、通風ガイド20にはファン40の取付け部分からの空気の漏れを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上詳述したように本発明のベンチレーションマットによれば、吊込部の影響なく着座者に送風等をすることができる。その用途としては、自動車の座席以外にも、例えば、自動二輪車や鉄道車両等の車両座席でも良いし、チャイルドシート、土木建築用重機の座席、船舶や航空機などの座席、遊園地の観覧車の座席、各種競技場の観覧席、劇場や映画館等の鑑賞用座席、駅やテーマパーク、屋外公園等に設置されたベンチ、家庭内やオフィスで使用されるソファーや座椅子、理髪店の椅子、各種医療機関で使用されている医療用の椅子などへの適用も考えられる。また、座席のみならず、例えば、ベッド、ベビーカーなど、幅広く応用が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ベンチレーションマット
11 サイドバリア
12 スペーサ
12a~e 切り欠き部
13 通気性カバー
14 連結ベルト
15 開口面
20 通風ガイド
21 ガイドチューブ
22 スペーサ
22a 抜け防止部
23 接続部
24 ファン取り付け孔
32、33 スペーサ
35~38 接続部
40 ファン
60 自動車用シート
61 背もたれ
62 座面
63 吊込部
64 クッション材
65 表皮カバー
66 吊込部材
67 固定部材
68 止め具
69 貫通孔
111 第1のベンチレーションマット本体
112 第2のベンチレーションマット本体
131、132 接続マット