(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】バッテリーモジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20241128BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/526 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/548 301
H01M50/503
H01M50/526
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/567
H01M50/566
(21)【出願番号】P 2021005203
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】井澤 貴美
(72)【発明者】
【氏名】柳原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 昌之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 唯
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 英生
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/130399(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0032996(KR,A)
【文献】特開2011-060623(JP,A)
【文献】特開2011-216398(JP,A)
【文献】特開2014-022239(JP,A)
【文献】特開2016-001561(JP,A)
【文献】特表2020-536353(JP,A)
【文献】特表2020-522096(JP,A)
【文献】特開2018-006217(JP,A)
【文献】特開2013-105699(JP,A)
【文献】特表2020-518968(JP,A)
【文献】国際公開第2020/197208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極タブおよび負極タブを有する複数のバッテリーセルと、
前記バッテリーセル同士を電気的に接続する複数のバスバーと、
前記複数のバスバーを保持し、前記バスバーを互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバー保持部材とを有し、
前記バスバー保持部材は、前記バスバーに隣接する領域に、前記タブが引き出される開口を有し、
前記バスバーは、前記バスバー保持部材の外周面に対して立設して、前記タブに接合されている板状のタブ接続部を備
え、
前記バスバーのタブ接続部は、複数の前記バッテリーセルの正極タブが接続される第1のタブ接続部と、前記第1のタブ接続部と異なる材料で形成され、複数の前記バッテリーセルの負極タブが接続される第2のタブ接続部とを表裏方向に積層結合することにより構成され、
前記バスバー保持部材の前記開口は、前記第1のタブ接続部に隣接する領域に前記正極タブが引き出される第1の開口と、前記第2のタブ接続部に隣接する領域に前記負極タブが引き出される第2の開口とを含む、バッテリーモジュール。
【請求項2】
正極タブおよび負極タブを有する複数のバッテリーセルと、
前記バッテリーセル同士を電気的に接続する複数のバスバーと、
前記複数のバスバーを保持し、前記バスバーを互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバー保持部材とを有し、
前記バスバー保持部材は、前記バスバーに隣接する領域に、前記タブが引き出される開口を有し、
前記バスバーは、前記バスバー保持部材の外周面に対して立設して、前記タブに接合されている板状のタブ接続部を備え、
前記バスバーのタブ接続部は、
複数の前記バッテリーセルの正極タブが接続される第1のタブ接続部と、
前記第1のタブ接続部と異なる材料で形成され、複数の前記バッテリーセルの負極タブが接続される第2のタブ接続部と、
立設された前記第1および第2のタブ接続部の各バスバー保持部材側端部を連結する連結部と、を備えるバッテリーモジュール。
【請求項3】
正極タブおよび負極タブを有する複数のバッテリーセルと、
前記バッテリーセル同士を電気的に接続する複数のバスバーと、
前記複数のバスバーを保持し、前記バスバーを互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバー保持部材とを有し、
前記バスバー保持部材は、前記バスバーに隣接する領域に、前記タブが引き出される開口を有し、
前記バスバーは、前記バスバー保持部材の外周面に対して立設して、前記タブに接合されている板状のタブ接続部を備え、
前記バスバー保持部材は、バスバー保持部材内周面から突出して前記正極タブと前記負極タブとの間に配置される仕切部を備える、バッテリーモジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のバッテリーモジュールにおいて、
前記タブ接続部に接続される複数の前記タブは、仮止め部機構により一体に積層されている、バッテリーモジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載のバッテリーモジュールにおいて、
前記タブは、レーザー溶接により前記タブ接続部に接続され、
前記バスバー保持部材は、レーザー光の筐体内への入射を防止する遮光部を備えている、バッテリーモジュール。
【請求項6】
請求項
5に記載のバッテリーモジュールにおいて、
前記タブ接続部に接続される複数の前記タブは、前記タブ接続部の立設方向に互いにずらして積層され、
積層方向に隣接するタブ同士および前記タブ接続部とそれに隣接するタブとが溶接されている、バッテリーモジュール。
【請求項7】
正極タブおよび負極タブを有する複数のバッテリーセルと、
前記バッテリーセル同士を電気的に接続する複数のバスバーと、
前記複数のバスバーを保持し、前記バスバーを互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバー保持部材とを有し、
前記バスバー保持部材は、前記バスバーに隣接する領域に、前記タブが引き出される開口を有し、
前記バスバーは、前記バスバー保持部材の外周面に対して立設して、前記タブに接合されている板状のタブ接続部を備え、
前記バスバーは、板状の前記タブ接続部の一端に設けられた第1の被保持部と、前記タブ接続部の他端に設けられた第2の被保持部とを備え、
前記バスバー保持部材には、前記第1の被保持部を隙間を介して保持するリング状の第1の保持器と、前記第2の被保持部を隙間を介して保持するリング状の第2の保持器とを備える、バッテリーモジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか一項に記載のバッテリーモジュールを製造するための、バッテリーモジュール製造方法であって、
前記タブ接続部と複数の前記タブとを挟持治具で挟持し、
前記挟持治具で挟持した状態で前記タブ接続部と複数の前記タブとを溶接する、バッテリーモジュール製造方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のバッテリーモジュール製造方法において、
前記タブ接続部に接続される複数のタブを一体に束ねる仮止めを行い、
前記仮止め後に、前記複数のタブの仮止めされた部分を前記バスバー保持部材の前記開口に挿通して、前記バスバーに隣接する領域に引き出し、
前記タブ接続部と前記仮止めされた部分とを挟持治具で挟持して溶接する、バッテリーモジュール製造方法。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載のバッテリーモジュール製造方法において、
前記タブ接続部と前記タブとの溶接はレーザー溶接で行われ、
溶接部から前記バスバー保持部材の方向への反射光が、前記挟持治具に設けられている遮光壁により阻止される、バッテリーモジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーモジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のバスバーモジュールでは、板状のバスバーがバスバーフレームの外周面に沿って設けられている。バスバーモジュールに設けられたバッテリーセルの電極タブは、先端部分がバスバーフレームのリードスロットからセル長手方向に引き出され、バスバーと重なるようにバスバーフレームの外周面に沿って、すなわち、セル積層方向に折り曲げられる。そして、折り曲げられた先端部とバスバーとは、重ねられた状態でレーザー溶接等により溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バスバーに複数の電極タブを重ねて溶接をする場合に、重ねられた電極タブ間やバスバーと電極タブとの間に隙間が生じると、溶接不良が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の第1の態様によるバッテリーモジュールは、正極タブおよび負極タブを有する複数のバッテリーセルと、前記バッテリーセル同士を電気的に接続する複数のバスバーと、前記複数のバスバーを保持し、前記バスバーを互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバー保持部材とを有し、前記バスバー保持部材は、前記バスバーに隣接する領域に、前記タブが引き出される開口を有し、前記バスバーは、前記バスバー保持部材の外周面に対して立設して、前記タブに接合されている板状のタブ接続部を備える。
(2)本発明の第2の態様によるバッテリーモジュール製造方法は、前記第1の態様によるバッテリーモジュールを製造するための製造方法であって、前記タブ接続部と複数の前記タブとを挟持治具で挟持し、前記挟持治具で挟持した状態で前記タブ接続部と複数の前記タブとを溶接する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重ねられたタブとバスバーとの接続を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態のバッテリーモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリーモジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリーセルの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、フロントバスバーモジュールの斜視図である。
【
図5】
図5は、フロントバスバーモジュールの正面図およびA-A断面、B-B断面を示す図である。
【
図6】
図6は、リアバスバーモジュールの詳細を示す図である。
【
図7】
図7は、複数のバッテリーセルの接続形態を説明する図である。
【
図9】
図9は、前加工後の並列接続積層体の一部を示す図である。
【
図10】
図10は、バッテリーモジュールの組立手順の概略を示す図である。
【
図11】
図11は、取り付け前後のフロントバスバーモジュールと正極タブおよび負極タブとの位置関係を示す図である。
【
図16】
図16は、レーザー溶接する際の反射光を説明する図である。
【
図18】
図18は、レーザー溶接した場合の溶接部の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態のバッテリーモジュール1の斜視図である。
図2は、
図1に示したバッテリーモジュール1の分解斜視図である。
図1に示すバッテリーモジュール1を、例えば、電気自動車等の車両に搭載する場合には、車両に応じた個数のバッテリーモジュール1と、各バッテリーモジュール1を監視し制御するためのセンサおよびコントローラ等とを、車両に応じたケースに収納した電源装置(バッテリーパックとも呼ばれる)として、車両に搭載される。以下では、XYZ軸を
図1のように設定したとき、X軸のマイナス方向をバッテリーモジュール1のフロント側と呼び、X軸のプラス方向をリア側と呼ぶことにする。また、X軸方向をセル長手方向、Y軸方向をセル積層方向、Z軸方向をセル短手方向とも呼ぶ。
【0009】
図2に示すように、バッテリーモジュール1は積層された複数のバッテリーセル(単電池とも呼ばれる)10を備える。複数のバッテリーセル10は図のY方向に積層され、一体のセル積層体BSSを形成している。
図2に示す例では、24個のバッテリーセル10がY方向に積層されているが、バッテリーセル10の数はこれに限定されない。
図2では見えていないが、バッテリーセル10間にはフォームシートが配設されている。フォームシートはバッテリーセル10の膨張・収縮を吸収するための弾性変形可能な部材であり、例えば、粘着力のあるスポンジ状のものが用いられる。また、フォームシートは、振動によるバッテリーセル10のずれも防止する。
【0010】
複数のバッテリーセル10から成るセル積層体BSSのY方向の両側面、底面側および上面側には、バッテリーモジュール1の筐体を構成する側面パネル13、底面パネル14aおよび上面パネル14bが設けられている。セル積層体BSSのフロント側にはフロントバスバーモジュール15が設けられ、リア側にはリアバスバーモジュール16が設けられている。フロントバスバーモジュール15は、セル積層体BSSのフロント側に引き出された複数のタブ(後述する正極タブ101および負極タブ102)が接合されるバスバー151~155と、バスバー151~155が保持されるバスバーホルダ150とを備えている。バスバー151の上端には負極ターミナル151aが設けられ、バスバー155の上端には正極ターミナル155aが設けられている。
【0011】
リアバスバーモジュール16は、セル積層体BSSのリア側に引き出された複数のタブが接合されるバスバー161~164と、バスバー161~164が保持されるバスバーホルダ160とを備えている。フロントバスバーモジュール15およびリアバスバーモジュール16の詳細は後述する。フロントバスバーモジュール15のさらにフロント側にはフロントエンドプレート17が設けられている。同様に、リアバスバーモジュール16のさらにリア側にはリアエンドプレート18が設けられている。
【0012】
図3は、バッテリーセル10の外観を示す斜視図である。バッテリーセル10は、セル本体100、正極タブ101および負極タブ102を備えている。セル本体100は、発電要素をラミネートフィルム袋内に封止した扁平なリチウムイオン二次電池である。薄板状の正極タブ101および負極タブ102はセル本体100内の発電要素に電気的に接続され、セル本体100のラミネートフィルム容器の両端に設けられたタブ引き出し部100aから外部に導出されている。
【0013】
図4,5はフロントバスバーモジュール15の詳細を示す図である。
図4(a)、(b)はフロントバスバーモジュール15の斜視図であり、
図4(a)はフロント側から見た斜視図で、
図4(b)はリア側から見た斜視図である。また、
図5(a)はフロントバスバーモジュール15をフロント側正面から見た図であり、
図5(b)はA-A断面図およびB-B断面図である。
【0014】
フロントバスバーモジュール15のバスバーホルダ150は電気絶縁性の樹脂で形成されており、
図4(a)および
図5(a)に示すように、バスバーホルダ150のフロント側の面(外周面)には5対のバスバー保持部150a,150bが設けられている。上述したバスバー151~155は、それぞれ上下一対のバスバー保持部150a,150bにより保持されている。負極ターミナル151aが設けられたバスバー151は銅材で形成され、正極ターミナル155aが設けられたバスバー155はアルミ材で形成されている。バスバー152~154は、銅材Mcとアルミ材Maとを接合したクラッド材で形成されている。
【0015】
図5(b)のA-A断面図に示すように、バスバー153の上端部分153aは、タブが接合されるタブ接続部153cよりもX軸方向(セル長手方向)の幅寸法(バスバー幅寸法)が小さく設定されている。上端部分153aの4つの側面の内の3面がリング状のバスバー保持部150aに接触し、バスバー保持部150aの爪1501によってバスバー保持部150a内に係止されている。同様に、
図5(b)のB-B断面図に示すように、バスバー153の下端部分153bは、タブ接続部153cよりもX軸方向の幅寸法が小さく設定されている。下端部分153bの4つの側面の内の3面がリング状のバスバー保持部150bに接触し、バスバー保持部150bの爪1502によってバスバー保持部150b内に係止されている。他のバスバー151、152、154、155についても同様のバスバー保持部150a,150bが設けられている。
【0016】
例えば、バスバー153をバスバー保持部150a,150bに装着する場合、バスバー保持部150aにバスバー153の上端部分153aを下側から挿入し、次いで、バスバー153の下端部分153bを、
図5(b)の矢印で示すようにフロント側からバスバー保持部150bに押し込む。バスバー保持部150bの爪1502は、バスバー153を押し込むことで外側に拡がるように変形し、バスバー153がバスバー保持部150b内に挿入される。
【0017】
図5(a)に示すように、バスバーホルダ150には8つのスリット開口156a~156hが形成されている。スリット開口156a~156hは、セル積層体BSSの正極タブ101および負極タブ102を、バスバーホルダ150のフロント側に引き出すための開口である。バスバー151の図示右側にはスリット開口156aが配置され、バスバー155の図示左側にはスリット開口156hが配置されている。同様に、バスバー152の両側にはスリット開口156b,156cが配置され、バスバー153の両側にはスリット開口156d,156eが配置され、バスバー154の両側にはスリット開口156f,156gが配置されている。
【0018】
バスバー151とスリット開口156bとの間、スリット開口156cとスリット開口156dとの間、スリット開口156eとスリット開口156fとの間、および、スリット開口156gとバスバー155との間には、レーザー溶接を行う際にレーザー光およびその反射光が筐体内に入射するのを防止するための遮光部159が形成されている。さらに、バスバーホルダ150のリア側の面(バッテリーセル側の内周面)には、隣り合う正極タブ101と負極タブ102との接触を防止するための仕切部158が、突出するように形成されている。なお、
図5(a)に示す楕円形状の破線で示す領域は、遮光部159が不要なレーザー光を遮光する機能を有する領域であり、便宜的に楕円形状として示した。
【0019】
図6はリアバスバーモジュール16の詳細を示す図であり、
図6(a)はリア側(Xプラス方向)から見た斜視図で、
図6(b)はフロント側(Xマイナス方向)から見た斜視図である。リアバスバーモジュール16のバスバーホルダ160は電気絶縁性の樹脂で形成されており、
図6(a)に示すように、バスバーホルダ160のリア側の面(バッテリーセル10と反対側の外周面)には、バスバー161~164を保持するための4対のバスバー保持部160a,160bが設けられている。リング状のバスバー保持部160a,160bにも、バスバー保持部150a,150bの場合と同様のバスバー161~164を係止する爪が設けられている。バスバー161~164は、銅材Mcとアルミ材Maとを接合したクラッド材で形成されている。
【0020】
リアバスバーモジュール16の場合も、バスバーホルダ160の両側にスリット開口166a~166hが形成されている。スリット開口166bとバスバー162との間、スリット開口166dとスリット開口166eとの間、および、スリット開口166fとスリット開口166gとの間には、遮光部169が形成されている。さらに、バスバーホルダ160のフロント側の面(バッテリーセル側の内周面)には、隣り合う正極タブ101と負極タブ102との接触を防止するための仕切部168が、突出するように形成されている。
【0021】
図7は、バッテリーモジュール1に設けられた複数のバッテリーセル10の接続形態を説明する図である。
図7に示す例では、バッテリーセル10は24個設けられており、24個のバッテリーセル10はバスバー151~155および161~164によって、3並列8直列となるように接続されている。ここでは、図示上下方向(Y方向)に並んだバッテリーセル10を図示下側から順に、1番目、2番目、・・・、24番目のバッテリーセル10と呼ぶことにする。1~3番目、7~9番目、13~15番目および19~21番目のバッテリーセル10は、正極タブ101がリア側で、負極タブ102がフロント側となるように配置されている。4~6番目、10~12番目、16~18番目および22~24番目のバッテリーセル10は、正極タブ101がフロント側で、負極タブ102がリア側となるように配置されている。
【0022】
1~3番目のバッテリーセル10は、負極タブ102がバスバー151(銅材Mc)に接続され、正極タブ101がバスバー161のアルミ材Maに接続されることで、互いに並列接続されている。4~6番目のバッテリーセル10は、負極タブ102がバスバー161の銅材Mcに接続され、正極タブ101がバスバー152のアルミ材Maに接続されることで互いに並列接続され、かつ、並列接続されている1~3番目のバッテリーセル10に対して直列接続される。同様に、7~9番目、10~12番目、13~15番目、16~18番目、19~21番目および22~24番目のバッテリーセル10についても、それぞれの3つのバッテリーセル10が並列接続され、並列接続されたバッテリーセル群が順に直列接続される。以下では、3つのバッテリーセル10が並列接続されたものを並列接続積層体と呼び、並列接続積層体を複数直列接続した積層体のことをセル積層体BSSと呼ぶことにする。3並列8直列のセル積層体BSSは、セル積層体BSSの一端に接続されたバスバー151に負極ターミナル151aが設けられ、セル積層体BSSの他端に接続されたバスバー155に正極ターミナル155aが設けられている。なお、バッテリーセル10の個数は24に限定されず、また、3並列8直列接続もそれらの並列数、直列数に限定されない。
【0023】
並列接続積層体の3つのバッテリーセル10において、各正極タブ101はバスバーの片面(アルミ材Maの面)に積層されるように接続され、各負極タブ102は反対側のバスバーの片面(銅材Mcの面)に積層されるように接続される。例えば、1~3番目のバッテリーセル10の各負極タブ102はバスバー151の図示下側の面に接続され、各正極タブ101はバスバー161のアルミ材Ma側の面に接続される。そのため、各正極タブ101および各負極タブ102は、接続されるバスバーの方向に折り曲げられることになる。
【0024】
本実施の形態では、正極タブ101および負極タブ102を、積層する前の段階で予め折り曲げておき、並列接続される複数のバッテリーセル10の正極タブ101同士および負極タブ102同士を仮止めして一体化しておく。そのような前加工を施すことによって、積層工程からタブをバスバーモジュールのバスバーへ接続するまでの工程における作業性および安全性の向上を図ることができる。
【0025】
図8、
図9は前加工を説明する図である。セル積層体BSSを形成する際には、最初に、並列接続される3つのバッテリーセル10を積層して並列接続積層体を形成するが、その積層の前に各バッテリーセル10の正極タブ101および負極タブ102を所定の形状に曲げ加工する。
【0026】
図8(a)は、
図7に示した第1番目のバッテリーセル10の正極タブ側を示す図である。正極タブ101の先端部分は、破線で示す状態から図示のように上方に折り曲げられる。
図8(b)は、タブ折り曲げ加工後に積層された3つのバッテリーセル10の正極タブ側を示す図である。図示上側から順に、1番目、2番目、3番目のバッテリーセル10となっている。バッテリーセル10とバッテリーセル10との間には、弾性変形可能なフォームシート19が配置される。フォームシート19は、バッテリー使用時にバッテリーセル10が膨張・収縮した際にその膨張・収縮を吸収するための部材である。また、フォームシート19は、バッテリーセル10の位置ずれを防止する機能も有する。接続されるバスバーに対する各バッテリーセル10の位置関係はそれぞれ異なるので、各正極タブ101は、それぞれの位置関係に応じた形状に曲げ加工される。その結果、各タブ先端部の折れ曲げ角度は、バスバーから遠いセルほど折れ曲げ角度が大きく設定されるが、バスバーに接合されるタブ先端の面はセル延在方向に広がる。
【0027】
図8(c)に示す工程では、3つの正極タブ101の先端部分を積層状態にして、符号1011で示す部分(以下では、仮止め部1011と呼ぶ)を仮止めする。仮止めの方法としては、クリップ止め、カシメ、仮溶接などを用いることができる。仮止め後、仮止めされた各正極タブ101の先端を揃える目的で、例えば、符号Lで示す位置で先端部分をカットする。
図9(a)は先端カット後の状態を示す
図8(c)と同様の図であり、
図9(b)は斜視図である。
【0028】
図10は、バッテリーモジュール1の組立手順の概略を示す図である。まず、ステップS1では、
図8(a)に示したバッテリーセル10の正極タブ101および負極タブ102の曲げ加工を行う。ステップS2では、
図8(b)に示すように、並列接続される複数のバッテリーセル10を積層する。ステップS3では、
図8(c)に示すように、正極タブ101同士および負極タブ102同士の仮止めを行い、それぞれの先端をカットする。なお、この先端カットについては、ステップS1の曲げ加工の際に行っても良い。ステップS4では、並列接続積層体を直列接続の数だけ積層して、
図2に示すようなセル積層体BSSを形成する。並列接続積層体と並列接続積層体との間には、弾性変形可能なフォームシート19が配置される。
【0029】
ステップS5では、筐体を構成するパネルの組み立ておよびバスバーモジュールの取り付けを行う。具体的には、セル積層体BSSの両側面に側面パネル13を配置すると共に、底面側に底面パネル14aおよび上面側に上面パネル14bを配置し(
図2参照)、それらのパネル同士を溶接する。その後、パネル13のフロント側にフロントバスバーモジュール15を、リア側にリアバスバーモジュール16を取り付ける。ステップS6では、フロントバスバーモジュール15およびリアバスバーモジュール16に、仮止めされた正極タブ101および負極タブ102を溶接する。
【0030】
ステップS7では、フロントバスバーモジュール15およびリアバスバーモジュール16をパネル13に嵌め込む。ステップS8では、フロントエンドプレート17およびリアエンドプレート18を、底面パネル14aおよび上面パネル14bに溶接する。ステップS9では、正極ターミナル155aおよび負極ターミナル151aを保護するターミナルカバーを装着する。なお、
図2ではターミナルカバーの図示を省略した。
【0031】
以下では、ステップS5におけるバスバーモジュールの取り付けと、ステップS6のタブの溶接に関する説明を、フロントバスバーモジュール15を例に詳細に説明する。なお、リアバスバーモジュール16に関する説明はフロントバスバーモジュール15の場合と同様なので、説明を省略する。
図11は、筐体フロント側にフロントバスバーモジュール15を取り付ける際の、フロントバスバーモジュール15とセル積層体BSSの正極タブ101および負極タブ102との位置関係を示す図であり、フロントバスバーモジュール15およびセル積層体BSSの一部をXY平面に平行な面における断面図である。
図11(a)は、フロントバスバーモジュール15を取り付ける前の状態を示し、
図11(b)は、フロントバスバーモジュール15を取り付けた後の状態を示す。
【0032】
図11(a)に示すように、アルミ材Maと銅材Mcとのクラッド材で形成されるバスバー152,153のそれぞれには、並列接続された3つのバッテリーセル10から成る並列接続積層体が2つ接続される。一方の並列接続積層体の正極タブ101がバスバーのアルミ材Ma側に接続され、他方の並列接続積層体の負極タブ102がバスバーの銅材Mc側に接続される。上述したように3つの正極タブ101は予め所定形状に折り曲げられ、先端部分が仮止めされている。負極タブ102についても同様である。
図11(a)に示すように、仮止めされた正極タブ101と負極タブ102との間には隙間が形成されていている。この隙間G1の寸法は、バスバーの厚さとほぼ同じかやや大きめに設定される。
【0033】
フロントバスバーモジュール15を筐体のフロント側に取り付ける際には、
図11(a)の矢印で示す方向(セル積層体BSSの方向)にフロントバスバーモジュール15を移動させる。その結果、
図11(b)に示すように、バスバー152,153は、接続される正極タブ101と負極タブ102との隙間に挿入され、バスバー152,153のアルミ材Maの面に正極タブ101が対向し、銅材Mcの面に負極タブ102が対向する。バスバー152,153のリア側に接するように設けられた仕切部158は、仕切部158のリア側の厚さ寸法Tがバスバー152,153の厚さ寸法よりも小さく設定されている。そのため、タブの隙間の位置がY方向に若干ずれていても、バスバー152,153のリア側の仕切部158がタブの隙間に入り込み、正極タブ101および負極タブ102の側面に導くためのガイドの役目をする。
【0034】
図9に示したように同極のタブ同士を仮止めすることにより、並列接続積層体を積層する際や、
図11のようにフロントバスバーモジュール15およびリアバスバーモジュール16をパネル13に取り付ける際に、隣り合う異極のタブ同士が接触したり、正極および負極タブが周辺部品と干渉したりするのを回避することができる。また、フロントバスバーモジュール15およびリアバスバーモジュール16をパネル13に取り付ける際に、同極のタブ同士を仮止めしているので、バスバーホルダ150,160のスリット開口156a~156h,166a~166gに対する正極タブ101および負極タブ102の挿入がしやすくなり、スリット開口156a~156h,166a~166gからフロント側およびリア側へスムーズに引き出すことができる。
【0035】
(挟持治具による挟持動作)
本実施の形態では、
図10のステップS6における溶接作業において、バスバーとタブとを挟持する挟持治具を使用する。
図12(a),(b)は、挟持治具の動作を説明する図である。
図12(a),(b)では、フロントバスバーモジュール15のバスバー152、153の部分を拡大して示した。フロントバスバーモジュール15をパネル13に取り付けると、バスバー152のアルミ材Ma(図示右側)の近傍には、接続される3つバッテリーセル10の仮止めされた正極タブ101が配置される。一方、バスバー152の銅材Mc(図示左側)の近傍には、接続される3つバッテリーセル10の仮止めされた負極タブ102が配置される。バスバー153についても同様である。また、銅材Mcで形成されるバスバー151の近傍には、接続される3つバッテリーセル10の仮止めされた負極タブ102のみが配置され、アルミ材Maで形成されるバスバー155の近傍には、接続される3つバッテリーセル10の仮止めされた正極タブ101のみが配置される。
【0036】
重なり合った複数のタブをバスバーにレーザー溶接する場合、適切な接合状態を得るためには、タブ間やタブとバスバーとの間に隙間ができないようにすることが重要である。本実施の形態では、仮止めされた複数のタブとバスバーとを挟持治具30A,30Bで挟持するようにしたので、バスバーホルダ150によるバスバー151~155の保持強度に影響されることなく、十分大きな力で挟持することができる。その結果、溶接時にタブ間やタブとバスバーとの間に隙間が発生するのを防止することができ、適切な溶接状態を得ることができる。
【0037】
挟持治具30A,30Bは、バスバー152,153のフロント側前方にセッティングされる。図示はしていないが、他のバスバーに関しても、それぞれ挟持治具がセッティングされている。挟持治具30A、30Bは一対のアーム300を備えており、各アーム300の先端には挟持部301が設けられている。アーム300の詳細は後述するが、挟持部301は、バスバー151、152の溶接領域全体を挟持可能なように、Z方向(紙面表裏方向)に細長く延在している。
【0038】
次いで、
図12(b)に示すように、挟持治具30A、30BをXプラス方向に駆動して、アーム300の挟持部301をバスバー152、153の側方に移動させる。その結果、正極タブ101、バスバー152および負極タブ102を挟むような位置に、挟持治具30Aの一対の挟持部301が位置決めされる。同様に、正極タブ101、バスバー153および負極タブ102を挟むような位置に、挟持治具30Bの一対の挟持部301が位置決めされる。
【0039】
その後、各挟持治具30A、30Bの図示右側のアーム300をYプラス方向に、図示左側のアームをYマイナス方向にそれぞれ駆動して、一対のアーム300を閉じる動作を行う。その結果、バスバー152と、その両側に配置された正極タブ101および負極タブ102とは、挟持治具30Aの挟持部301により積層方向(Y方向)に挟持され、互いに密着する。すなわち、正極タブ101はバスバー152の一方の面に密着し、負極タブ102はバスバー152の他方の面に密着する。バスバー153とその両側に配置された正極タブ101および負極タブ102についても、挟持治具30Bの挟持部301により積層方向(Y方向)に挟持され、互いに密着する。
【0040】
バスバー151、152は樹脂製のバスバーホルダ150のバスバー保持部150a,150bに保持されているので、バスバー保持部150a,150bの保持強度は樹脂材の強度に依存する。本実施の形態では、バスバーとタブとを挟持部301で挟持する構造なので、バスバー保持部150a,150bの材料強度に影響されることなく、複数のタブをバスバーの面に強く押し付けることができる。その結果、重ねられたタブ間およびタブとバスバーとの間に隙間が生じるのを、防止することができる。
【0041】
図13~15は挟持治具30Aの詳細を示す図であり、
図13は
図12(a)のC0矢視図、
図14は
図13のC1矢視図、
図15は
図13のC2-C2断面図である。挟持治具30Aに設けられている各アーム300はベース302上に固定されている。ベース302は、Y方向に延在するレール303(
図15参照)上をY方向にスライド移動可能に構成されている。アーム300を閉動作させる場合には、図示左側のアーム300のベース302をYマイナス方向に移動させ、図示右側のアーム300のベース302をYプラス方向に移動させる。それにより、正極タブ101、バスバー152および負極タブ102が一対の挟持部301により挟持される。
【0042】
図14に示すように、アーム300は、X方向に延在する一対の水平部300a,300bと、水平部300a,300bの先端を連結するようにZ方向に延在する挟持部301とを備えている。後述する
図16に示すようにレーザー光を用いて溶接を行う際には、ハッチングを施した領域BAをレーザー光が通過する。レール303をXプラス方向に移動することによって、
図12(b)に示すように挟持治具30Aのアーム300をバスバー152の両サイドに移動させる。
【0043】
図16は、レーザー溶接する際の反射光を説明する図である。レーザー光で溶接する場合、正極タブ101および負極タブ102に対してビームLBを垂直(入射角=0度)に入射、すなわちY軸に沿って入射させるのが好ましい。しかし、フロントバスバーモジュール15には、複数のバスバー151~155がY軸方向に並列に配置されているため、ビームLBをY軸に沿って入射させるのは難しい。そのため、
図16に示すように、バスバー152に対して斜めに入射角>0でビームLBを照射することになる。
【0044】
このようにビームLBを斜め入射させた場合、一点鎖線で示すようにビーム方向がずれた場合にビームLBがバッテリーセル10の収納領域に入ったり、反射光RLがバッテリーセル10の収納領域に入ったりして、バッテリーセル10にレーザー光が照射されるおそれがある。そこで、本実施の形態では、ビームLBや反射光RLがバッテリーセル10の収納領域へ入り込むのを防止する構造として、バスバーホルダ150に遮光部159(
図5も参照)を形成するとともに、挟持治具30A,30Bのアーム300に遮光壁3011を設けた。遮光壁3011は挟持部301のフロント側の面であり、遮光壁3011の幅寸法である挟持部301の厚さ(すなわち、アーム300の厚さ)D1,D2は、遮光壁3011がスリット開口156b,156cのフロント側全面を覆えるように設定されている。このような構造は、リア側のバスバーホルダ160やリア側に配置される挟持治具についても同様である。
【0045】
(変形例1)
図17は、挟持治具に関する変形例を示す図である。
図16に示す例では、アーム300を厚く設定して、遮光壁3011がスリット開口156b,156cのフロント側全面を覆うようにしたが、
図17に示すような遮光構造としても良い。変形例1では、アーム300の厚さを小さく設定して軽量化を図り、遮光壁311を挟持部301とは別に設けるようにした。
図17に示す例では、遮光壁311は挟持部301にボルト締結されている。この場合も、遮光壁3011,311がスリット開口156b,156cのフロント側全面を覆うように構成されている。このような構造は、リア側に配置される挟持治具についても同様である。
【0046】
図18は、レーザー溶接した場合の溶接部の状態を示す模式図であり、
図18(a)はYマイナス方向からみた平面図、
図18(b)はE1-E1断面図である。
図18(a)に示すように、負極タブ102の表面には、仮止めに用いられる仮止め部1021とレーザビーム溶接の痕を示す溶接部1022とが形成されている。また、
図18(b)に示すように、反対側の正極タブ101に関しても、同様の仮止め部1011(
図9(b)参照)および溶接部1012が形成されている。
【0047】
図18(b)に示すように、正極タブ101、バスバー152および負極タブ102を挟持部301で一括して挟持することにより、正極タブ101、バスバー152および負極タブ102は隙間なく重なり合うことになる。正極タブ101側の溶接部1012の溶け込み深さはバスバー152のアルミ材Maまで達しており、負極タブ102側の溶接部1022の溶け込み深さもバスバー152の銅材Mcまで達している。このように、正極タブ101、バスバー152および負極タブ102を挟持治具で挟持した状態で溶接を行うことにより、正極タブ101および負極タブ102はバスバー152に隙間なく溶接され、強固に接合されることになる。
【0048】
図19は本実施の形態のタブ接続構造と、前述した特許文献1に記載発明と同様のタブ接続構造である比較例とを示す図である。本実施の形態では、バスバー152のタブ接続面が、バッテリーセル10の面(X-Z平面と平行な平面)に対して平行に設定されているので、バスバー152のアルミ材Maの面に接続される複数の正極タブ101は、Y軸方向に積層されることになる。そのため、正極タブ101の積層枚数、すなわち、バッテリーセル10の並列数に関係なく、バッテリーモジュール1のX軸方向寸法を同一に設定することができる。
【0049】
一方、比較例の場合、バスバー(アルミ材Ma)のタブ接続面はY-Z平面と平行であるため、タブ接続面から最上段の正極タブ101までの高さHが、正極タブ101の積層枚数、すなわち、バッテリーセル10の並列数に応じて変化する。バッテリーセル10の並列数が多い場合ほど、バッテリーモジュール1のX軸方向寸法が大きくなってしまうことになる。
【0050】
(変形例2)
図20は、挟持治具に関する他の変形例を説明する図である。上述した実施の形態では、例えば
図7に示すように、バスバー152~154は、板状のアルミ材Maと銅材Mcとを積層するように接合したクラッド材を用いた。一方、変形例2では、L字形状のアルミ材Maおよび銅材Mcを互いに接合して成るクラッド材とすることで、バスバー152とするようにした。
図20において、バスバー152は、L字形状のアルミバスバー152aと銅バスバー152cとで構成されている。アルミバスバー152aは、正極タブ101が溶接されるタブ接続部1521と、銅バスバー152cと接合される接合部1523とを備えている。同様に、銅バスバー152cは、負極タブ102が溶接されるタブ接続部1522と、アルミバスバー152aと接合される接合部1524とを備えている。
【0051】
上述した実施の形態の場合と同様に、タブが接続されるタブ接続部1521,1522の表面(接続面)は、バッテリーセル10の面(X軸とZ軸とが成す平面と平行な平面)に対して平行に設定されている。
図20に示すような形状の断面形状とすることで、構造上、板状のアルミ材Maと銅材Mcとを積層する場合に比べて強度を保ちつつ軽量化をはかることができ、アルミ材および銅材の厚さをより薄くできる。
【0052】
正極タブ101および負極タブ102を溶接する際には、アルミバスバー152aと正極タブ101、および、銅バスバー152cと負極タブ102を、別々の挟持治具30A1,30A2により挟持する。挟持治具30A1は一対のアーム310a,310bを備え、アーム310a,310bの先端には挟持部3101がそれぞれ設けられている。挟持部3101のフロント側の面は遮光壁3111を構成している。挟持治具30A2は一対のアーム320a,320bを備え、アーム320a,320bの先端には挟持部3201がそれぞれ設けられている。挟持部3201のフロント側の面は遮光壁3211を構成している。
【0053】
(変形例3)
図21は、タブ接続構造に関する変形例を示す図である。バスバーの片面に接続されるタブの数は、バッテリーセル10の並列数の数だけある。例えば、
図7に示す3並列8直列の場合、タブの片面には3枚のタブが積層状態で接続される。そのため、上述した実施の形態では、
図18(b)に示すように、溶接部1012,1022において、重ねられた3枚のタブがバスバー152に溶接され、溶接部1012,1022の溶け込み深さは最上部のタブからバスバー152に達している。
【0054】
一方、変形例3では、
図21(a)、(b)に示すように、バスバー152の銅材Mcの上に重ねられた3枚の負極タブ102の先端をX軸方向にずらして配置する。この場合も、挟持部301により正極タブ101、バスバー152および負極タブ102を挟持部301で挟むようにクランプしているのでクランプ強度が高く、タブ間およびタブとバスバーとの間に隙間が生じるのを防止することができる。このようにタブ先端をずらし、
図12(b)に示すように、溶接部1022aにより最下段の負極タブ102と銅材Mcとを溶接し、溶接部1022bにより中段の負極タブ102と最下段の負極タブ102とを溶接し、溶接部1022cにより最上段の負極タブ102と中段の負極タブ102とを溶接する。同様に、正極タブ101の場合も、溶接部1012a,1012b,1012cにより正極タブ101を1枚ずつ溶接している。
【0055】
変形例3では、タブ先端をX軸方向にずらしてタブを1枚ずつ溶接しているので、
図18のように3枚同時に溶接する場合に比べて、溶接部の溶け込み深さを小さくすることができる。そのため、溶け込み深さ不足による溶接不良の発生を防止することができる。
【0056】
(変形例4)
図22は、バスバー保持部に関する変形例を説明する図である。
図5に示したように、フロントバスバーモジュール15に設けられたバスバー151~155は、それぞれ上端部分および下端部分がバスバーホルダ150に設けられたバスバー保持部150a,150bにより保持される。リアバスバーモジュール16についても同様で、バスバー161~164は、バスバーホルダ160に設けられたバスバー保持部160a,160bにより保持される。変形例4では、
図22(a),(b)に示すように、バスバー保持部150aとバスバー153の上端部分153aとの間に隙間G2が形成されるようにした。なお、図示は省略したが、バスバー153の下端部分153bを保持するバスバー保持部150bについても、バスバー保持部150aと同様の隙間G2が形成されている。
【0057】
変形例4では、このような隙間G2を設けたことにより、
図12(b)のようにバスバー153を挟持治具30Bのアーム300で挟持した際に、バスバー保持部150a,150bに対するバスバー153の位置ずれが許容される。バスバー153の上端部分153aおよび下端部分153bのバスバー保持部150a,150bとの間に隙間が全くないと、アーム300を閉じた時のアーム位置とバスバー153の位置とにずれがあった場合にバスバー保持部150a,150bに力が加わり、樹脂製のバスバー保持部150a,150bを損傷するおそれがある。変形例4では、隙間G2によってアーム位置とバスバー位置とのずれを吸収することができ、バスバー保持部150a,150bの損傷を防止することができる。
【0058】
また、変形例4の場合、レーザー溶接を行う際に、ビームLBの入射角がより小さくなるようにバスバー153の姿勢を調整することができる。上述した実施の形態では、
図16に示すように、正極タブ101および負極タブ102をバスバー153にレーザー溶接する場合、複数のバスバーがY方向に並列配置されているため、正極タブ101および負極タブ102に対してビームLBを斜めに照射する必要があった。一方、変形例4では、
図22(b)に示すように、挟持治具30Bのアーム300の角度を変えてバスバー153の角度θを調整することで、負極タブ102に対するビームLBの入射角度を可能な限りゼロに近づけることができる。角度θは
図22(a)に示す状態からの角度変化であって、例えば、約1度程度の調整が可能なように隙間G2が設定される。正極タブ101を溶接する場合には、
図22(b)とは逆の方向にバスバー153を傾けて溶接を行う。
【0059】
以上説明した実施の形態の作用効果を説明する。
(1)バッテリーモジュールは、正極タブ101および負極タブ102を有する複数のバッテリーセル10と、バッテリーセル10同士を電気的に接続する複数のバスバー151~155と、複数のバスバー151~155を保持し、バスバー151~155を互いに離間して並設する電気絶縁性のバスバーホルダ150とを有し、バスバーホルダ150は、
図5に示すように、バスバー151~155に隣接する領域に、正極タブ101および負極タブ102が引き出されるスリット開口156a~156hを有し、バスバー151~155は、バスバーホルダ150の外周面であるバッテリーセル10と反対側の面に対して立設して、正極タブ101、負極タブ102に接合されている板状のタブ接続部153cを備える。
【0060】
正極タブ101および負極タブ102が接続されるバスバー153は、バスバーホルダ150の外周面に対して立設されているので、
図12(b)に示すように、挟持治具30Bに設けられた一対の挟持部301によって、積層状態のバスバー153、正極タブ101および負極タブ102を一括して挟持することができる。挟持部301で挟持することで複数のタブ(正極タブ101、負極タブ102)をバスバー153の面に強く押し付けることができ、重ねられたタブ間およびタブとバスバー153との間に隙間が生じるのを防止することができる。その結果、溶接品質の向上を図ることができる。
【0061】
一方、上述した特許文献1のバッテリーモジュールでは、バスバーのタブ接合面の裏面側がバスバーホルダの面に近接して設けられている。そのため、バスバーとタブとを治具で挟持することができず、溶接時に隙間が生じないようにするためには、例えば、タブを治具等でバスバー方向に押し付けながら溶接を行う必要がある。しかし、樹脂材等で形成されているバスバーホルダの強度や、押圧によるビームLBに対するタブの面の角度変化などを考慮すると、タブをバスバーに強く押圧するのは難しく、溶接不良を引き起こす虞がある。
【0062】
(2)
図11に示すように、バスバー153は、複数のバッテリーセル10の正極タブ101が接続されるアルミ材Maのタブ接続部と、バッテリーセル10の負極タブ102が接続される銅材Mcのタブ接続部とを表裏方向に積層接合することにより構成され、バスバーホルダ150は、アルミ材Maのタブ接続部に隣接する領域に正極タブ101が引き出されるスリット開口156dと、銅材Mcのタブ接続部に隣接する領域に負極タブ102が引き出されるスリット開口156eとを有する。そのため、バスバーホルダ150を筐体のパネルに取り付ける際に、正極タブ101および負極タブ102を、バスバーホルダ150の壁部と干渉することなく筐体外側に引き出すことができる。
【0063】
(3)また、
図20に示すように、バスバー152をL字形状のアルミバスバー152aと銅バスバー152cとで構成し、アルミバスバー152aは複数のバッテリーセル10の正極タブ101が接続されるタブ接続部1521を備え、銅バスバー152cは複数のバッテリーセル10の負極タブ102が接続されるタブ接続部1522を備え、立設されたタブ接続部1521,1522の各バスバーホルダ側端部を、アルミバスバー152aの接合部1523と銅バスバー152cの接合部1524とを接合することで連結するようにしても良い。バスバー152を
図20に示すような形状とすることで、板状のアルミ材Maと銅材Mcとを積層する場合に比べて強度を保ちつつ軽量化をはかることができ、アルミ材および銅材の厚さをより薄くできる。
【0064】
(4)また、
図11に示すように、バスバーホルダ150に、バスバーホルダ150の内周面であるバッテリーセル10側の面から突出して正極タブ101と負極タブ102との間に配置される仕切部158を備えるようにしても良い。仕切部158により、隣り合う正極タブ101と負極タブ102との接触が防止される。また、バスバー152のリア側に仕切部158を設けることで、バスバーホルダ150を筐体のパネルに取り付ける際に、仕切部158が正極タブ101と負極タブ102との間に入り込んで、正極タブ101および負極タブ102の側面に導くためのガイドの役目をする。
【0065】
(5)また、
図9に示すように、バスバーの同一のタブ接続部(例えば、バスバー152のアルミ材Ma)に接続される複数のタブ(正極タブ101)を、カシメ等の仮止め部機構(仮止め部1011)により一体に積層するようにしても良い。このような加工を予め施しておくことにより、組立作業中に隣り合う異極のタブ同士が接触したり、タブが周辺部品と干渉したりするのを回避することができる。
【0066】
(6)また、
図16に示すように、タブ(正極タブ101、負極タブ102)をバスバー152にレーザー溶接する際のレーザー光の筐体内への入射を防止する遮光部159を、バスバーホルダ150に設けるようにしても良い。遮光部159により、溶接用のビームLBや反射光RLの筐体内への入射が防止される。
【0067】
(7)また、
図21に示すように、バスバー152の銅材Mcの上に重ねられた3枚の負極タブ102の先端を、バスバー152の立設方向であるX軸方向に互いにずらして積層配置し、積層方向に隣接するタブ同士およびバスバー152とそれに隣接するタブとを溶接するようにしても良い。この場合、タブは1枚ずつ溶接されることになり、
図18のように3枚同時に溶接する場合に比べて、溶接部の溶け込み深さを小さくすることができる。
【0068】
(8)また、
図22に示すように、バスバー153の両端に、バスバー保持部150a,150bにより保持される被保持部としての上端部分153aおよび下端部分153bを設け、リング状のバスバー保持部150aにより上端部分153aを隙間G2を介して保持し、リング状のバスバー保持部150bにより下端部分153bを隙間G2を介して保持するようにしても良い。このように隙間G2を介して上端部分153aおよび下端部分153bを保持することで、バスバー153を挟持治具30Bで挟持した際にバスバー保持部150a,150bに力が加わるのを防止することができる。また、挟持治具30Bによりバスバー153の角度を隙間G2の許す範囲で調節することができるので、レーザー溶接する際のビームLBの入射角をより小さくすることができる。
【0069】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述した実施の形態ではレーザー溶接でタブをバスバーに接合したが、接合方法としてはレーザー溶接に限らず、シーム接合、スポット接合、メカニカルクリンチ等を使用する場合にも本発明は適用できる。また、
図2に示すように、バッテリーモジュール1のフロント側およびリア側の両方にバスバーモジュールを設ける構成を例に説明したが、バスバーモジュールがフロント側およびリア側の一方にのみ設けられたバッテリーモジュールに関しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…バッテリーモジュール、10…バッテリーセル、13…側面パネル、14a…底面パネル、14b…上面パネル、15…フロントバスバーモジュール、16…リアバスバーモジュール、100…セル本体、101…正極タブ、102…負極タブ、150,160…バスバーホルダ、150a,150b,160a,160b…バスバー保持部、151~155、161~164…バスバー、153c,1521,1522…タブ接続部、158,168…仕切部、159,169…遮光部、300,310a,310b,320a,320b…アーム、301,3101,3201…挟持部、311、3011,3111,3211…遮光壁、1011,1021…仮止め部、156a~156h,166a~166h…スリット開口、30A,30B,30A1,30A2…挟持治具、BSS…セル積層体、