(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】デッキクレーンシステム、デッキクレーンの制御装置及びデッキクレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/48 20060101AFI20241128BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B66C13/48 G
B66C23/88 D
(21)【出願番号】P 2021030304
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】城山 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】大串 泰斗
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-031784(JP,A)
【文献】特開2008-030925(JP,A)
【文献】特開2016-182907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のデッキに支持され旋回軸を中心として旋回する旋回体と、前記旋回体に連結されて俯仰するジブと、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に配置されて昇降する保持具とを有し、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンと、
前記旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得し、取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出し、算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせる制御装置と
を備え
、
前記制御装置は、船舶において船体の上縁部の高さに対応する船体高さ位置と、前記船舶に積載される前記貨物の上端の高さに対応する船上高さ位置との少なくとも一方の高さ位置を記憶する記憶部を有し、前記記憶部に記憶された前記高さ位置に基づいて、前記保持具の昇降動作を行わせる
デッキクレーンシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ポスト座標が示す地点と前記フック座標が示す地点とを結ぶ仮想直線が平面座標系における第1基準軸となり、前記ポスト座標が示す地点を通り前記第1基準軸と直交する仮想直線が平面座標系における第2基準軸となるように平面座標系を設定し、設定した結果に基づいて前記旋回角度及び前記俯仰角度を算出する
請求項1に記載のデッキクレーンシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記保持具の目標点の高さ位置が前記船体高さ位置よりも高い場合には前記保持具が前記船上高さ位置に配置されるように昇降動作を行わせ、他の場合には前記保持具が前記船体高さ位置に配置されるように昇降動作を行わせる
請求項1
又は請求項2に記載のデッキクレーンシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記記憶部に前記高さ位置が記憶されない場合、予め設定される最大高さ位置に保持具が配置されるように昇降動作を行わせる
請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載のデッキクレーンシステム。
【請求項5】
前記デッキクレーンは、前記船舶に複数配置され、
前記制御装置は、複数の前記デッキクレーンのうち第1デッキクレーンにおいて前記旋回角度及び前記俯仰角度の算出結果に基づいて前記旋回体の旋回動作及び前記ジブの俯仰動作が行われた場合に前記第1デッキクレーンとは異なる第2デッキクレーンと干渉するか否かを判定し、干渉すると判定した場合には、第1デッキクレーンの前記旋回動作及び前記俯仰動作を行わないようにする
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のデッキクレーンシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、第1デッキクレーンの前記旋回動作及び前記俯仰動作を行わないようにする期間に、前記第1デッキクレーンと干渉しないように前記第2デッキクレーンを退避させる
請求項
5に記載のデッキクレーンシステム。
【請求項7】
船舶のデッキに配置されるデッキクレーンの旋回体を旋回軸の周りに旋回させ、前記旋回体に連結されるジブを俯仰させ、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に設けられる保持具を昇降させることにより、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンの制御装置であって、
前記デッキクレーンの旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得する座標取得部と、
取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出する演算部と、
前記演算部の算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせる駆動制御部と
、
船舶において船体の上縁部の高さに対応する船体高さ位置と、前記船舶に積載される前記貨物の上端の高さに対応する船上高さ位置との少なくとも一方の高さ位置を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記高さ位置に基づいて、前記保持具の昇降動作を行わせる昇降動作駆動部と
を備えるデッキクレーンの制御装置。
【請求項8】
船舶のデッキに配置されるデッキクレーンの旋回体を旋回軸の周りに旋回させ、前記旋回体に連結されるジブを俯仰させ、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に設けられる保持具を昇降させることにより、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンの制御方法であって、
前記デッキクレーンの旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得することと、
取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出することと、
前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度の算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせることと
、
船舶において船体の上縁部の高さに対応する船体高さ位置と、前記船舶に積載される前記貨物の上端の高さに対応する船上高さ位置との少なくとも一方の高さ位置が記憶部に記憶される場合に、前記記憶部に記憶された前記高さ位置に基づいて、前記保持具の昇降動作を行わせることと
を含むデッキクレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキクレーンシステム、デッキクレーンの制御装置及びデッキクレーンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶における荷役作業に使用されるデッキクレーンが知られている。デッキクレーンは、旋回軸を中心に旋回する旋回体と、俯仰軸を中心に回動するジブと、ジブの先端から下方に伸びて下端に保持具が取り付けられた昇降ワイヤとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなデッキクレーンにおける荷役作業では、運転者が合図者と連携して旋回体の旋回動作、ジブの俯仰動作及び保持具の昇降動作を操作し、目標地へ保持具を移動させている。このような荷役作業では、運転者による動作のばらつきを抑制しつつ、効率的に作業を行うことが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、運転者による動作のばらつきを抑制しつつ、効率的に荷役作業を行うことが可能なデッキクレーンシステム、デッキクレーンの制御装置及びデッキクレーンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るデッキクレーンシステムは、船舶のデッキに支持され旋回軸を中心として旋回する旋回体と、前記旋回体に連結されて俯仰するジブと、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に配置されて昇降する保持具とを有し、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンと、前記旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得し、取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出し、算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせる制御装置とを備える。
【0007】
本発明に係るデッキクレーンの制御装置は、船舶のデッキに配置されるデッキクレーンの旋回体を旋回軸の周りに旋回させ、前記旋回体に連結されるジブを俯仰させ、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に設けられる保持具を昇降させることにより、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンの制御装置であって、前記デッキクレーンの旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得する座標取得部と、取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出する演算部と、前記演算部の算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせる駆動制御部とを備える。
【0008】
本発明に係るデッキクレーンの制御方法は、船舶のデッキに配置されるデッキクレーンの旋回体を旋回軸の周りに旋回させ、前記旋回体に連結されるジブを俯仰させ、前記ジブの先端から下方に延びる昇降ワイヤの下端に設けられる保持具を昇降させることにより、前記船舶と港湾との間で貨物の荷役作業を行うデッキクレーンの制御方法であって、前記デッキクレーンの旋回軸の水平方向における位置を示すポスト座標と、前記保持具の水平方向における位置を示すフック座標と、前記保持具を移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得することと、取得された前記ポスト座標、前記フック座標及び前記目標点座標に基づいて、前記旋回体の旋回角度及び前記ジブの俯仰角度を算出することと、前記演算部の算出結果に基づいて、前記旋回体に旋回動作を行わせ、前記ジブに俯仰動作を行わせることとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者による動作のばらつきを抑制しつつ、効率的に荷役作業を行うことが可能なデッキクレーンシステム、デッキクレーンの制御装置及びデッキクレーンの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るデッキクレーンシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るデッキクレーンの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置20の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、座標演算部による演算内容を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、座標演算部による演算内容を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、俯仰動作制御部による演算内容を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、昇降動作の高さ位置を説明するための図である。
【
図8】
図8は、昇降動作の高さ位置を説明するための図である。
【
図9】
図9は、昇降動作において保持具の高さ位置を調整する例を示す図である。
【
図10】
図10は、昇降動作において保持具の高さ位置を調整する例を示す図である。
【
図11】
図11は、昇降動作において保持具の高さ位置を調整する例を示す図である。
【
図12】
図12は、昇降動作において保持具の高さ位置を調整する例を示す図である。
【
図13】
図13は、デッキクレーン同士の干渉を回避する動作の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、デッキクレーン同士の干渉を回避する動作の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、デッキクレーン同士の干渉を回避する動作の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係るデッキクレーンシステムによる荷役作業の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るデッキクレーンシステム、デッキクレーンの制御装置及びデッキクレーンの制御方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係るデッキクレーンシステム100の一例を示す図である。デッキクレーンシステム100は、船舶101における荷役作業に使用される作業機械である。デッキクレーンシステム100は、デッキクレーン10と、制御装置20と、リモートコントローラ30とを備える。
【0013】
デッキクレーンシステム100は、船舶101のデッキ102に設置される。複数のデッキクレーン10がデッキ102に設置されてもよいし、単数のデッキクレーン10がデッキ102に設置されてもよい。
図1は、4基のデッキクレーン10がデッキ102に設置されている例を示している。制御装置20は、コンピュータシステムを含む。制御装置20は、デッキクレーン10を制御する。制御装置20は、例えば複数のデッキクレーン10のそれぞれに配置される。各制御装置20の間は、例えば通信により情報の伝達が可能な状態となっている。なお、各制御装置20を統括する不図示の上位装置等が設けられてもよい。リモートコントローラ30は、デッキクレーン10を遠隔操作するための端末である。
【0014】
図2は、本実施形態に係るデッキクレーン10の一例を示す図である。
図2に示すように、デッキクレーンシステム100は、船舶101の貨物室103と港湾104との間で貨物Cの荷役作業を行う。デッキクレーン10は、旋回体11と、ジブ12と、旋回装置13と、俯仰装置14と、昇降装置15とを有する。
【0015】
船舶101のデッキ102には、架台16が配置される。旋回体11は、旋回軸AX1を中心に旋回可能に架台16の旋回軸受16Sに支持される。架台16には、ポスト座標検出部S1が設けられる。ポスト座標検出部S1は、ポスト座標を検出する。ポスト座標は、旋回軸AX1の水平方向における位置を示す平面座標である。
【0016】
ジブ12は、旋回体11に連結される。ジブ12は、棒状の部材である。ジブ12の基端部は、旋回体11に連結される。ジブ12は、俯仰軸AX2を中心に回動可能に旋回体11に連結される。
【0017】
ジブ12の先端部には、滑車17が設けられる。滑車17には、貨物Cを昇降するための昇降ワイヤ18が掛けられる。昇降ワイヤ18の基端部は、昇降装置15のドラム15Dに取り付けられる。昇降ワイヤ18の先端部には、貨物を保持するための保持具18Hが設けられる。保持具18Hとして、貨物を掴むグラブバケット又は貨物を引っ掛けるフックが例示される。
【0018】
ジブ12には、俯仰用昇降ワイヤ19が取り付けられる。俯仰用昇降ワイヤ19の一端部は、ジブ12の中間部に取り付けられ、俯仰用昇降ワイヤ19の他端部は、俯仰装置14のドラム14Dに取り付けられる。
【0019】
ジブ12の先端には、フック座標検出部S2が設けられる。フック座標検出部S2は、フック座標を検出する。フック座標は、保持具18Hの水平方向における位置を示す平面座標である。
【0020】
旋回装置13は、旋回軸AX1を中心に旋回体11を旋回させる。旋回装置13は、旋回体11を駆動する旋回モータ13Mと、旋回体11を制動する旋回ブレーキ13Bとを有する。旋回モータ13Mが発生する駆動力により、旋回体11が旋回軸AX1を中心に旋回する。旋回ブレーキ13Bが発生する制動力により、旋回体11が停止する。
【0021】
俯仰装置14は、俯仰軸AX2を中心にジブ12を回動させる。俯仰装置14は、ジブ12を駆動する俯仰モータ14Mと、ジブ12を制動する俯仰ブレーキ14Bとを有する。俯仰モータ14Mの駆動力により、ジブ12が俯仰軸AX2を中心に回動する。俯仰ブレーキ14Bの制動力により、ジブ12が停止する。
【0022】
昇降装置15は、昇降ワイヤ18を昇降させる。昇降装置15は、昇降ワイヤ18を駆動する昇降モータ15Mと、昇降ワイヤ18を制動する昇降ブレーキ15Bとを有する。昇降モータ15Mの駆動力により、昇降ワイヤ18は昇降する。昇降ブレーキ15Bの制動力により、昇降ワイヤ18は停止する。
【0023】
俯仰モータ14Mは、ドラム14Dを回転させる駆動力を発生する。ドラム14Dが回転して俯仰用昇降ワイヤ19がドラム14Dに巻き取られることにより、ジブ12が仰方向に回動する。仰方向とは、ジブ12の先端部が上方に移動する方向をいう。ドラム14Dが回転して俯仰用昇降ワイヤ19がドラム14Dから繰り出されることにより、ジブ12が俯方向に回動する。俯方向とは、ジブ12の先端部が下方に移動する方向をいう。
【0024】
昇降モータ15Mは、ドラム15Dを回転させる駆動力を発生する。ドラム15Dが回転して昇降ワイヤ18がドラム15Dに巻き取られることにより、保持具18Hが上昇する。ドラム15Dが回転して昇降ワイヤ18がドラム15Dから繰り出されることにより、保持具18Hが下降する。
【0025】
旋回モータ13Mは、回転体である旋回体11を駆動する電動モータである。俯仰モータ14Mは、回転体であるドラム14Dを駆動する電動モータである。昇降モータ15Mは、回転体であるドラム15Dを駆動する電動モータである。デッキクレーン10は、電動モータが発生する駆動力により作動する電動デッキクレーンである。旋回ブレーキ13Bは、旋回体11を制動するディスクブレーキである。俯仰ブレーキ14Bは、ドラム14Dを制動するディスクブレーキである。昇降ブレーキ15Bは、ドラム15Dを制動するディスクブレーキである。
【0026】
貨物室103及び港湾104には、貨物Cが配置又は積載される。デッキクレーン10による荷役作業では、当該荷役作業の対象となる貨物Cに対応する位置に保持具18Hを移動させ、保持具18Hに対して玉掛けを行う。つまり、荷役対象となる貨物Cは、保持具18Hを移動させる目標点となる。例えば作業者は、荷役対象となる貨物Cに対して、目標点座標検出部S3を設置することができる。目標点座標検出部S3は、目標点座標を検出する。目標点座標は、保持具18Hを移動させる目標点の水平方向における位置を示す平面座標である。作業者は、荷役対象となる貨物Cに玉掛けが行われた後、当該貨物Cから目標点座標検出部S3を撤去することができる。
【0027】
制御装置20は、デッキクレーン10を制御する。制御装置20は、旋回モータ13M、旋回ブレーキ13B、俯仰モータ14M、俯仰ブレーキ14B、昇降モータ15M、及び昇降ブレーキ15Bを制御する。架台16に運転室Dが設けられる。運転室Dには、運転者がデッキクレーン10の操作を行うための操作装置等が配置される。なお、リモートコントローラ30により、運転室Dにおけるデッキクレーン10の操作と同様の操作が可能である。例えば、制御装置20は、運転室Dに配置されてもよい。
【0028】
図3は、制御装置20の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置20は、座標データ取得部21と、座標演算部22と、旋回動作制御部23と、俯仰動作制御部24と、昇降動作制御部25と、記憶部26と、判定部27とを有する。
【0029】
座標データ取得部21は、ポスト座標検出部S1で検出されるポスト座標、フック座標検出部S2で検出されるフック座標及び目標点座標検出部S3で検出される目標値座標を取得する。
【0030】
座標演算部22は、座標データ取得部21で取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、平面座標系を設定する演算を行う。座標演算部22は、ポスト座標が示す地点とフック座標が示す地点とを結ぶ仮想直線が平面座標系における第1基準軸となり、ポスト座標が示す地点を通り第1基準軸と直交する仮想直線が平面座標系における第2基準軸となるように平面座標系を設定する。
【0031】
図4及び
図5は、座標演算部22による演算内容を模式的に示す図である。
図4では、互いに直交する基準軸X0と基準軸Y0とが設定された平面座標系において、ポスト座標、フック座標及び目標点座標の位置が示されている。
【0032】
座標演算部22は、この状態から、
図5に示すように、ポスト座標が示すポスト位置Pとフック座標が示すフック位置Hとを結ぶ仮想直線L1が平面座標系における第1基準軸Y1となり、ポスト位置Pを通り第1基準軸Y1と直交する仮想直線L2が平面座標系における第2基準軸X1となるように平面座標系を設定する。これにより、平面座標系において、旋回軸AX1が原点となり、ジブ12に沿った第1基準軸Y1が一方の基準軸として設定されることになる。このため、ポスト座標、フック座標及び目標点座標を取得した時点における旋回軸AX1、ジブ12、目標点Gの位置関係が単純化される。
【0033】
旋回動作制御部23は、座標データ取得部21で取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標と、座標演算部22の演算結果とに基づいて、旋回装置13による旋回動作の指令信号を生成する。
図5に示す例において、旋回動作制御部23は、例えば旋回体11を
図5における時計回りの方向に角度θ2だけ旋回させる旨の指令信号を生成することができる。
【0034】
俯仰動作制御部24は、座標データ取得部21で取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標と、座標演算部22の演算結果とに基づいて、俯仰装置14による俯仰動作の指令信号を生成する。
図6は、俯仰動作制御部24による演算内容を模式的に示す図である。
図6は、
図5において矢印A方向から見た構成を模式的に示す図である。
図6に示す例において、俯仰動作制御部24は、例えばジブ12を
図6における時計回りの方向に角度θ4だけ俯仰させる旨の指令信号を生成することができる。なお、ジブ12の俯仰角度θ4については、例えば座標取得時におけるジブ12のフック位置Hの座標と、保持具18Hの目標点Gの座標との差に基づいて算出することができる。
【0035】
昇降動作制御部25は、記憶部26に記憶された高さ位置に関する情報又はリモートコントローラ30による操作信号に基づいて、昇降装置15による昇降動作の指令信号を生成する。記憶部26に高さ位置が記憶されない場合、予め設定される最大高さ位置に保持具18Hが配置されるように昇降動作を行わせる。この場合、荷役処理を停滞させることなく円滑に行うことができる。高さ位置については、後述する。
【0036】
記憶部26は、各種情報を記憶する。記憶部26は、昇降動作における高さ位置に関する情報を記憶する。高さ位置は、船舶101のデッキ102を基準とした場合の鉛直方向の位置である。高さ位置は、船体高さ位置Mb及び船上高さ位置Msを含む。
図7及び
図8は、昇降動作の高さ位置を説明するための図である。
図7は船体高さ位置Mb、
図8は船体高さ位置Msに関する図である。
【0037】
図7に示すように、船体高さ位置Mbは、貨物Cが船体101Aに干渉しないように設定される高さ位置である。船体高さ位置Mbは、例えば船体101Aの上縁部の高さ位置に貨物Cの高さを加算した値よりも高い位置に設定することができる。
【0038】
図8に示すように、船上高さ位置Msは、貨物Cが、船体101Aの上縁部よりも高い位置に積み上げられた他の貨物C等に干渉しないために設定される高さ位置である。船上高さ位置Msは、船体101Aに積み上げられた貨物Cの上端の高さ位置よりも高い位置に設定することができる。船上高さ位置Msは、上記の船体高さ位置Mbよりも高い位置である。
【0039】
上記のデッキクレーンシステム100により、貨物室103に配置又は積載される貨物Cを港湾104の目標点Gに移動させる場合、まず、貨物室103側又は港湾104側に配置される保持具18Hを、貨物室103の貨物Cに対応する位置に移動させる。次に、貨物Cに保持具18Hを玉掛けし、昇降ワイヤ18を上方に引っ張ることで地切りを行い、保持具18H及び貨物Cを上昇させる。次に、旋回体11の旋回動作及びジブ12の俯仰動作を行うことで、保持具18Hを目標点Gに対応する位置(目標点Gの上方の位置)に移動させる。その後、保持具18Hを下降させて貨物Cを目標点Gに配置させる。
【0040】
また、上記のデッキクレーンシステム100により、港湾104に配置又は積載される貨物Cを貨物室103の目標点Gに移動させる場合、まず、貨物室103側又は港湾104側に配置される保持具18Hを、港湾104の貨物Cに対応する位置に移動させる。次に、貨物Cに保持具18Hを玉掛けし、昇降ワイヤ18を上方に引っ張ることで地切りを行い、保持具18H及び貨物Cを上昇させる。次に、旋回体11の旋回動作及びジブ12の俯仰動作を行うことで、保持具18Hを目標点Gに対応する位置(目標点Gの上方の位置)に移動させる。その後、保持具18Hを下降させて貨物Cを目標点Gに配置させる。
【0041】
図9から
図12は、昇降動作において保持具18Hの高さ位置を調整する例を示す図である。荷役作業では、
図9から
図12に示す4種類の態様で貨物Cを搬送する。以下、
図9に示す態様を第1態様、
図10に示す態様を第2態様、
図11に示す態様を第3態様、
図12に示す態様を第4態様と表記する。
【0042】
図9に示す第1態様では、貨物室103に積載される貨物Cのうち船体101Aの上縁部よりも高い位置に配置される貨物Cを港湾104の目標点Gに移動させる場合を示している。
図9に示す第1態様では、貨物Cを上昇させる際、保持具18Hを予め設定された最大高さまで上昇させるのでは、時間を要してしまう。そのため、保持具18Hを船上高さ位置Msまで上昇させることにより、最大高さまで上昇させる場合に比べて時間を短縮できる。なお、例えば船体101Aの上縁部よりも高い位置に配置されて貨物Cを保持していない保持具18Hを、港湾104の目標点Gに移動させる場合についても同様に第1態様とすることができる。
【0043】
図10に示す第2態様では、貨物室103に積載される貨物Cのうち船体101Aの上縁部よりも低い位置に配置される貨物Cを港湾104の目標点Gに移動させる場合を示している。
図10に示す第2態様では、貨物Cを上昇させる際、保持具18Hを船上高さ位置Ms又は予め設定された最大高さまで上昇させるのでは、時間を要してしまう。また、保持具18Hが港湾104側に配置される場合には、港湾104側に配置される保持具18Hを貨物Cに対応する位置に移動させる際、船体101Aの上縁部との干渉を避ける必要がある。そのため、保持具18Hを船体高さ位置Mbまで上昇させることにより、船上高さ位置Ms又は最大高さまで上昇させる場合に比べて時間を短縮でき、船体101Aの上縁部との干渉を回避できる。なお、例えば船体101Aの上縁部よりも低い位置に配置されて貨物Cを保持していない保持具18Hを、港湾104の目標点Gに移動させる場合についても同様に第2態様とすることができる。
【0044】
図11に示す第3態様では、港湾104に配置される貨物Cを、貨物室103に積載される貨物Cのうち船体101Aの上縁部よりも高い目標点Gに移動させる場合を示している。
図11に示す第3態様では、貨物Cを上昇させる際、船体101Aの上縁部よりも高い位置に積み上げられた貨物Cとの干渉を避ける必要がある。また、保持具18Hが貨物室103側に配置される場合には、保持具18Hを貨物Cに対応する位置に移動させる際、保持具18Hを予め設定された最大高さまで上昇させるのでは、時間を要してしまう。そのため、保持具18Hを船上高さ位置Msまで上昇させることにより、他の貨物Cとの干渉を回避でき、最大高さまで上昇させる場合に比べて時間を短縮できる。なお、例えば港湾104側に配置されて貨物Cを保持していない保持具18Hを、船体101Aの上縁部よりも高い目標点Gに移動させる場合についても同様に第3態様とすることができる。
【0045】
図12に示す第4態様では、港湾104の目標点Gに配置される貨物Cを貨物室103に積載される貨物Cのうち船体101Aの上縁部よりも低い位置に移動させる場合を示している。
図12に示す第4態様では、貨物Cを上昇させる際、船体101Aの上縁部との干渉を避ける必要がある。また、保持具18Hが港湾104側に配置される場合には、港湾104側に配置される保持具18Hを貨物Cに対応する位置に移動させる際、保持具18Hを船上高さ位置Ms又は予め設定された最大高さまで上昇させるのでは、時間を要してしまう。そのため、保持具18Hを船体高さ位置Mbまで上昇させることにより、船体101Aの上縁部との干渉を回避でき、船上高さ位置Ms又は最大高さまで上昇させる場合に比べて時間を短縮できる。なお、例えば港湾104側に配置されて貨物Cを保持していない保持具18Hを、船体101Aの上縁部よりも低い高さの目標点Gに移動させる場合についても同様に第4態様とすることができる。
【0046】
このように、保持具18Hの目標点Gの高さ位置が船体高さ位置Mbよりも高い場合には、保持具18Hが船上高さ位置Msに配置され、他の場合には、保持具18Hが船体高さ位置Mbに配置されるように昇降動作が行わせる。従って、積載された貨物Cとの干渉が回避され、保持具18Hを巻き上げる際の時間が短縮される。
【0047】
また、本実施形態のデッキクレーンシステム100のように、複数のデッキクレーン10が設けられる場合、デッキクレーン10同士の干渉を避ける必要がある。
図13から
図15は、デッキクレーン10同士の干渉を回避する動作の一例を示す図である。以下、複数のデッキクレーン10のうち一のデッキクレーン10を第1デッキクレーン10Aと表記し、他のデッキクレーン10を第2デッキクレーン10Bと表記する。
【0048】
第1デッキクレーン10Aの制御装置20(以下、制御装置20Aと表記する)において、判定部27(
図3参照)は、第1デッキクレーン10Aにおいて旋回体11の旋回動作及びジブ12の俯仰動作が行われた場合に第2デッキクレーン10Bと干渉するか否かを判定する。判定部27は、例えば
図13に示すように、平面視において第1デッキクレーン10Aの旋回体11、ジブ12、保持具18H等の移動する軌跡が、第2デッキクレーン10Bの旋回体11、ジブ12、保持具18H等の位置に重なる場合に、第2デッキクレーン10Bに干渉すると判定することができる。判定部27により第2デッキクレーン10Bに干渉すると判定された場合、制御装置20Aの旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24は、第1デッキクレーン10Aの旋回動作及び俯仰動作を行わないように制御する。
【0049】
また、第2デッキクレーン10Bの制御装置20(以下、制御装置20Bと表記する)において、旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24は、
図14に示すように、第1デッキクレーン10Aにおいて旋回動作及び俯仰動作を行わないように制御している期間に、第1デッキクレーン10Aと干渉しないように、当該第1デッキクレーン10Aの旋回体11、ジブ12、保持具18H等の軌跡上から第2デッキクレーン10Bを退避させる。なお、第2デッキクレーン10Bが貨物Cの搬送を行っている場合、制御装置20Bは、当該貨物Cの搬送動作を完了させた後、第2デッキクレーン10Bを退避させるようにする。
【0050】
制御装置20Aは、
図15に示すように、第2デッキクレーン10Bが退避した後、第1デッキクレーン10Aの旋回動作及び俯仰動作を開始させる。このような制御により、第1デッキクレーン10Aと第2デッキクレーン10Bとの干渉を回避しつつ、効率的に荷役作業を行うことができる。
【0051】
図16は、本実施形態に係るデッキクレーンシステム100による荷役作業の一例を示すフローチャートである。以下では、一のデッキクレーン10について、貨物Cを保持していない状態の保持具18Hを、荷役作業の対象となる貨物Cに対応する位置に移動させる場合を例に挙げて説明する。作業者は、荷役作業の対象となる貨物Cに目標点座標検出部S3を配置する。また、運転者は、荷役作業の態様が、
図9から
図12に示す第1態様から第4態様のいずれの態様かを入力する。この入力は、運転室Dの操作機器又はリモートコントローラ30により行うことができる。
【0052】
荷役作業の態様が入力された場合、
図16に示すように、座標データ取得部21は、ポスト座標検出部S1で検出されるポスト座標、フック座標検出部S2で検出されるフック座標及び目標点座標検出部S3で検出される目標値座標を取得する(ステップS10)。この場合、目標点座標は、貨物Cの平面座標である。昇降動作制御部25は、入力された態様に対応する高さ位置の情報が記憶部26に記憶されているか否かを判定する(ステップS20)。対応する高さ位置の情報が記憶されていると判定した場合(ステップS20のYes)、当該記憶されている高さ位置を指定する(ステップS30)。一方、対応する高さ位置の情報が記憶されていないと判定した場合(ステップS20のNo)、予め設定された最大高さ位置を指定する(ステップS40)。ステップS30又はステップS40により高さ位置が指定された場合、昇降動作制御部25は、指定された高さ位置に保持具18Hが位置するように昇降ワイヤ18を巻き上げて保持具18Hを上昇させる(ステップS50)。
【0053】
保持具18Hを上昇させた後、座標演算部22は、座標データ取得部21で取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、平面座標系を設定する演算を行う(ステップS60)。旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24は、座標データ取得部21で取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標と、座標演算部22の演算結果とに基づいて、旋回装置13による旋回角度及び俯仰装置14による俯仰角度を算出する(ステップS70)。
【0054】
旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24は、他のデッキクレーン10との間に干渉が発生するか否かを判定し(ステップS80)、干渉が発生しないと判定した場合には(ステップS80のYes)、算出した旋回角度及び俯仰角度に基づいて、デッキクレーン10の旋回動作及び俯仰動作を制御する(ステップS90)。旋回動作及び俯仰動作により、保持具18Hが目標点Gに対応する位置に配置される。一方、他のデッキクレーン10との間に干渉が発生すると判定した場合(ステップS80のNo)、ステップS80の判定処理を繰り返し行う。上記判定処理を繰り返し行う間、旋回動作及び俯仰動作は行われない。
【0055】
旋回動作及び俯仰動作が行われた後、制御装置20は、旋回及び俯仰後の保持具18Hの位置と目標点座標との差が旋回誤差及び俯仰誤差の設定値以下であるか否かを判定する(ステップS100)。ステップS100では、データ取得部21によりポスト座標、フック座標及び目標点座標を取得し、座標演算部22により平面座標系を設定する演算を行う。座標演算部22は、例えばポスト座標を原点とし、フック座標のX座標が0となるように平面座標系を変換することができる。この場合、目標点のX座標として算出される値が、保持具18Hと目標点GとのX座標の差である。また、目標点のY座標からフック座標のY座標を減算した差分が、保持具18Hと目標点GとのY座標の差である。旋回動作制御部23は、目標点のX座標が旋回誤差の設定値以下であるか否かを判定する。また、俯仰動作制御部24は、目標点のY座標からフック座標のY座標を減算した差分が俯仰誤差の設定値以下であるか否かを判定する。目標点のX座標が旋回誤差の設定値よりも大きい、又は目標点のY座標からフック座標のY座標を減算した差分が俯仰誤差の設定値よりも大きいと判定された場合(ステップS100のNo)、旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24は、ステップS60以降の動作を繰り返し行わせる。また、目標点のX座標が旋回誤差の設定値以下であり、かつ、目標点のY座標からフック座標のY座標を減算した差分が俯仰誤差の設定値以下であると判定された場合(ステップS100のYes)、昇降動作制御部25は、昇降ワイヤ18を巻き下げて保持具18Hを貨物Cに対応する高さ位置まで下降させる(ステップS110)。保持具18Hを下降させた後、昇降動作制御部25は、当該保持具18Hの位置が船上であり、かつ船体高さMbよりも高い位置か否かを判定する(ステップS120)。ステップS110における判定は、例えば運転者が運転室Dの操作機器又はリモートコントローラ30による入力に基づいて行うことができる。昇降動作制御部25は、保持具18Hの位置が船上かつ船体高さMbよりも高い位置であると判定した場合(ステップS120のYes)、当該保持具18Hの高さ位置を船上高さ位置Msとして記憶部26に記憶する(ステップS130)。一方、昇降動作制御部25は、保持具18Hの位置が船上ではない、又は、船体高さMbよりも高い位置ではないと判定した場合(ステップS120のNo)、ステップS130の処理をスキップする。ステップS130の後、又はステップS120でNoの判定が行われた場合、貨物Cを保持具18Hに保持させる玉掛けが行われる。玉掛けが行われた後、昇降動作制御部25は、昇降ワイヤ18を上方に引っ張ることで、貨物Cの地切りを行う(ステップS140)。
【0056】
なお、貨物Cを保持している状態の保持具18Hを、当該貨物Cの搬送先の位置に移動させる場合についても、上記ステップS10以降の処理を同様に行うことができる。この処理においては、貨物Cが船上かつ船体高さMbよりも高い位置である場合、保持具18Hを上昇させるステップS50の高さ位置として、直前の処理のステップS120で記憶された船上高さ位置Msの値を用いることができる。貨物Cの積み下ろしの際の振動又は潮の干満により、船体101Aの高さが港湾104に対して上下方向に変化する。これに対して、保持具18Hを上昇させるステップS50の高さ位置として、直前の処理のステップS110で記憶された船上高さ位置Msの値を用いることにより、船体101Aの高さが港湾104に対して上下方向に変化する場合であっても、保持具18Hの高さ位置を調整等することなく、積載された貨物Cとの干渉が回避され、保持具18Hを巻き上げる際の時間短縮を図ることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るデッキクレーンシステム100は、船舶101のデッキ102に支持され旋回軸AX1を中心として旋回する旋回体11と、旋回体11に連結されて俯仰するジブ12と、ジブ12の先端から下方に延びる昇降ワイヤ18の下端に配置されて昇降する保持具18Hとを有し、船舶101と港湾104との間で貨物Cの荷役作業を行うデッキクレーン10と、旋回軸AX1の水平方向における位置を示すポスト座標と、保持具18Hの水平方向における位置を示すフック座標と、保持具18Hを移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得し、取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、旋回体11の旋回角度及びジブ12の俯仰角度を算出し、算出結果に基づいて、旋回体11に旋回動作を行わせ、ジブ12に俯仰動作を行わせる制御装置20とを備える。
【0058】
また、本実施形態に係るデッキクレーンの制御装置20は、船舶101のデッキ102に配置されるデッキクレーン10の旋回体11を旋回軸AX1の周りに旋回させ、旋回体11に連結されるジブ12を俯仰させ、ジブ12の先端から下方に延びる昇降ワイヤ18の下端に設けられる保持具18Hを昇降させることにより、船舶101と港湾104との間で貨物Cの荷役作業を行うデッキクレーン10の制御装置20であって、デッキクレーン10の旋回軸AX1の水平方向における位置を示すポスト座標と、保持具18Hの水平方向における位置を示すフック座標と、保持具18Hを移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得する座標データ取得部21と、取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、旋回体11の旋回角度及びジブ12の俯仰角度を算出する座標演算部22と、演算部の算出結果に基づいて、旋回体11に旋回動作を行わせ、ジブ12に俯仰動作を行わせる旋回動作制御部23及び俯仰動作制御部24とを備える。
【0059】
また、本実施形態に係るデッキクレーンの制御方法は、船舶101のデッキ102に配置されるデッキクレーン10の旋回体11を旋回軸AX1の周りに旋回させ、旋回体11に連結されるジブ12を俯仰させ、ジブ12の先端から下方に延びる昇降ワイヤ18の下端に設けられる保持具18Hを昇降させることにより、船舶101と港湾104との間で貨物Cの荷役作業を行うデッキクレーン10の制御方法であって、デッキクレーン10の旋回軸AX1の水平方向における位置を示すポスト座標と、保持具18Hの水平方向における位置を示すフック座標と、保持具18Hを移動させる目標点の水平方向における位置を示す目標点座標とを取得することと、取得されたポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、旋回体11の旋回角度及びジブ12の俯仰角度を算出することと、演算部の算出結果に基づいて、旋回体11に旋回動作を行わせ、ジブ12に俯仰動作を行わせることとを含む。
【0060】
この構成によれば、ポスト座標、フック座標及び目標点座標を取得し、取得したポスト座標、フック座標及び目標点座標に基づいて、旋回体11の旋回角度及びジブ12の俯仰角度を算出し、算出結果に基づいて、旋回体11に旋回動作を行い、ジブ12に俯仰動作を行うことができる。このため、運転者による動作のばらつきを抑制しつつ、効率的に荷役作業を行うことが可能となる。
【0061】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、制御装置20は、ポスト座標が示すポスト位置Pとフック座標が示すフック位置Hとを結ぶ仮想直線L1が平面座標系における第1基準軸Y1となり、ポスト位置Pを通り第1基準軸Y1と直交する仮想直線L2が平面座標系における第2基準軸X1となるように平面座標系を設定し、設定した結果に基づいて旋回角度及び俯仰角度を算出する。従って、デッキクレーン10の旋回体11、ジブ12、保持具18Hの位置関係を容易に算出可能な座標系を設定することができる。
【0062】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、制御装置20は、船舶101において船体の上縁部の高さに対応する船体高さ位置Mbと、船舶101に積載される貨物Cの上端の高さに対応する船上高さ位置Msとの少なくとも一方の高さ位置を記憶する記憶部26を有し、記憶部26に記憶された高さ位置に基づいて、保持具18Hの昇降動作を行わせる。従って、船体101Aの上縁部及び積載された貨物Cとの干渉を回避でき、保持具18Hを巻き上げる際の時間を短縮できる。
【0063】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、制御装置20は、保持具18Hの目標点Gの高さ位置が船体高さ位置よりも高い場合には保持具18Hが船上高さ位置Msに配置されるように昇降動作を行わせ、他の場合には保持具18Hが船体高さ位置Mbに配置されるように昇降動作を行わせる。従って、積載された貨物Cとの干渉を回避でき、保持具18Hを巻き上げる際の時間を短縮できる。
【0064】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、制御装置20は、記憶部26に高さ位置が記憶されない場合、予め設定される最大高さ位置に保持具18Hが配置されるように昇降動作を行わせる。従って、荷役処理を停滞させることなく円滑に行うことができる。
【0065】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、デッキクレーン10は、船舶101に複数配置され、制御装置20は、複数のデッキクレーン10のうち第1デッキクレーン10Aにおいて旋回角度及び俯仰角度の算出結果に基づいて旋回体11の旋回動作及びジブ12の俯仰動作が行われた場合に第1デッキクレーン10Aとは異なる第2デッキクレーン10Bと干渉するか否かを判定し、干渉すると判定した場合には、第1デッキクレーン10Aの旋回動作及び俯仰動作を行わないようにする。従って、複数のデッキクレーン10の間の干渉を抑制できる。
【0066】
本実施形態に係るデッキクレーンシステム100において、制御装置20は、第1デッキクレーン10Aの旋回動作及び俯仰動作を行わないようにする期間に、第1デッキクレーン10Aと干渉しないように第2デッキクレーン10Bを退避させる。従って、第1デッキクレーン10Aの旋回動作及び俯仰動作を行わないようにする期間が長引くことを抑制できる。
【0067】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、巻き上げ及び巻き下げ時の高さ位置の設定、巻き上げ及び巻き下げ動作、旋回動作及び俯仰動作の少なくとも1つの動作について、リモートコントローラ30により行ってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 デッキクレーン
10A 第1デッキクレーン
10B 第2デッキクレーン
11 旋回体
12 ジブ
13 旋回装置
13B 旋回ブレーキ
13M 旋回モータ
14 俯仰装置
14B 俯仰ブレーキ
14D,15D ドラム
14M 俯仰モータ
15 昇降装置
15B 昇降ブレーキ
15M 昇降モータ
16 架台
16S 旋回軸受
17 滑車
18 昇降ワイヤ
18H 保持具
19 俯仰用昇降ワイヤ
20,20A,20B 制御装置
21 座標データ取得部
22 座標演算部
23 旋回動作制御部
24 俯仰動作制御部
25 昇降動作制御部
26 記憶部
27 判定部
30 リモートコントローラ
100 デッキクレーンシステム
101 船舶
101A 船体
102 デッキ
103 貨物室
104 港湾
AX1 旋回軸
AX2 俯仰軸
C 貨物
D 運転室
G 目標点
H フック位置
L1,L2 仮想直線
Mb 船体高さ位置
Ms 船上高さ位置
P ポスト位置
R 制御室
S1 ポスト座標検出部
S2 フック座標検出部
S3 目標点座標検出部
X0,Y0 基準軸
X1 第2基準軸
Y1 第1基準軸