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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241128BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 3/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/30 569C
B05D3/00 D
B05D1/26 Z
B05D1/40 A
B05D3/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021038715
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138694
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】門間 徹
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-155990(JP,A)
【文献】特開2018-041928(JP,A)
【文献】特開2019-036594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路部と、
基板を処理するための処理空間内に前記流路部を流れる前記流体を吐出可能に構成された吐出部と、
前記流路部の内部の電磁波の磁界成分を起電力に変換することにより、前記流路部の内部で発生する放電を前記流体と接触することなく検出する検出部とを備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記流路部は、配管と、前記配管に介挿された介挿部材とを含み、
前記検出部は、前記配管および前記介挿部材のいずれかに取り付けられる、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記配管に介挿されたバルブと、
前記検出部により放電が検出された場合に、前記吐出部から前記流体が前記処理空間内に吐出されないように前記バルブの動作を制御する処理制御部とをさらに備える、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
流体が流れる流路部と、
基板を処理するための処理空間内に前記流路部を流れる前記流体を吐出可能に構成された吐出部と、
前記流路部の内部で発生する放電を検出する検出部と、
バルブと、
処理制御部とを備え、
前記流路部は、配管と、前記配管に介挿された介挿部材とを含み、
前記検出部は、前記配管および前記介挿部材のいずれかに取り付けられ、
前記バルブは、前記配管に介挿され
前記処理制御部は、前記検出部により放電が検出された場合に、前記処理空間内に処理対象の基板が存在しないタイミングで、前記吐出部から前記流体が前記処理空間内に吐出されるように前記バルブの動作を制御する基板処理装置。
【請求項5】
前記検出部により放電が検出された場合に報知を行う報知部をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理するための処理空間内に流路部を流れる流体を吐出部により吐出するステップと、
検出部により前記流路部の内部の電磁波の磁界成分を起電力に変換することにより、前記検出部を前記流体と接触させることなく前記流路部の内部で発生する放電検出するステップとを含む、基板処理方法。
【請求項7】
基板を処理するための処理空間内に、バルブが介挿された配管と前記配管に介挿された介挿部材とを含む流路部を流れる流体を吐出部により吐出するステップと、
前記流路部の内部で発生する放電を前記配管および前記介挿部材のいずれかに取り付けられた検出部により検出するステップと、
前記検出部により放電が検出された場合に、前記バルブを制御することにより、前記処理空間内に処理対象の基板が存在しないタイミングで、前記吐出部から前記流体を前記処理空間内に吐出するステップとを含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。基板処理装置においては、液体または気体等の流体を供給するための配管が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、処理液供給装置とともに用いられる基板処理装置が記載されている。処理液供給装置は、複数の処理液供給系統を含む。各処理液供給系統において、タンクに貯留された処理液が、圧送により配管を通して基板処理装置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-93506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理装置において、流体を供給するための配管の破損または流体への異物の混入が発生することがある。この場合、流体の正常な供給を行うことができなくなる。
【0006】
本発明の目的は、流体の供給の異常が発生することを防止可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、配管の破損または流体への異物の混入が発生する原因を特定するために、種々の実験および考察を繰り返した結果、以下の知見を得た。配管の内部においては、内壁と流体との間の摩擦により静電気が発生し、内壁または流体が帯電する。内壁または流体が過剰に帯電した場合、放電現象が発生する。このような放電現象が多発することにより、配管の内壁が破損するとともに、配管の内壁の破損により生じたパーティクルが流体に混入する。これらの知見に基づいて、本発明者は以下の本発明に想到した。
【0008】
(1)第1の発明に係る基板処理装置は、流体が流れる流路部と、基板を処理するための処理空間内に流路部を流れる流体を吐出可能に構成された吐出部と、流路部の内部の電磁波の磁界成分を起電力に変換することにより、流路部の内部で発生する放電を流体と接触することなく検出する検出部とを備える。
【0009】
この基板処理装置においては、基板を処理するための処理空間内に流路部を流れる流体が吐出部により吐出される。流路部の内壁と流体との間の摩擦による静電気に起因して流路部の内部で放電が発生した場合でも、当該放電が検出部により検出される。これにより、流体の供給の異常が発生することを防止することが可能となる。
【0010】
(2)流路部は、配管と、配管に介挿された介挿部材とを含み、検出部は、配管および介挿部材のいずれかに取り付けられてもよい。この場合、検出部を容易に配置することができる。これにより、流路部の内部で発生する放電を容易に検出することができる。
【0011】
(3)基板処理装置は、配管に介挿されたバルブと、検出部により放電が検出された場合に、吐出部から流体が処理空間内に吐出されないようにバルブの動作を制御する処理制御部とをさらに備えてもよい。この場合、異常な流体が処理空間に供給されることが防止される。
【0012】
(4)第2の発明に係る基板処理装置は、流体が流れる流路部と、基板を処理するための処理空間内に流路部を流れる流体を吐出可能に構成された吐出部と、流路部の内部で発生する放電を検出する検出部と、バルブと、処理制御部とを備え、流路部は、配管と、配管に介挿された介挿部材とを含み、検出部は、配管および介挿部材のいずれかに取り付けられ、バルブは、配管に介挿され、処理制御部は、検出部により放電が検出された場合に、処理空間内に処理対象の基板が存在しないタイミングで、吐出部から流体が処理空間内に吐出されるようにバルブの動作を制御するこの場合、異常な流体が処理対象の基板に供給されることが防止される。
【0013】
(5)基板処理装置は、検出部により放電が検出された場合に報知を行う報知部をさらに備えてもよい。これにより、正常な流体の供給を行うための対処を使用者に促すことができる。
【0014】
(6)第の発明に係る基板処理方法は、基板を処理するための処理空間内に流路部を流れる流体を吐出部により吐出するステップと、検出部により流路部の内部の電磁波の磁界成分を起電力に変換することにより、検出部を流体と接触させることなく流路部の内部で発生する放電検出するステップとを含む。
【0015】
この基板処理方法によれば、流路部の内壁と流体との間の摩擦による静電気に起因して流路部の内部で放電が発生した場合でも、当該放電が検出部により検出される。これにより、流体の供給の異常が発生することを防止することが可能となる。
(7)第4の発明に係る基板処理方法は、基板を処理するための処理空間内に、バルブが介挿された配管と配管に介挿された介挿部材とを含む流路部を流れる流体を吐出部により吐出するステップと、流路部の内部で発生する放電を配管および介挿部材のいずれかに取り付けられた検出部により検出するステップと、検出部により放電が検出された場合に、バルブを制御することにより、処理空間内に処理対象の基板が存在しないタイミングで、吐出部から流体を処理空間内に吐出するステップとを含む。この場合、異常な流体が処理対象の基板に供給されることが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体の供給の異常が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図2図1の処理室の内部の構成を示す側面図である。
図3】流路システムの構成を示す図である。
図4】制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】表示装置による表示画面の一例を示す図である。
図6図4の制御装置による制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7】他の実施の形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置について図面を用いて説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0019】
(1)基板処理装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。図1および後述する図2には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。図1に示すように、基板処理装置500は、基板処理部100、流路システム200、制御装置300および表示装置400を備える。図1には、主として基板処理部100の模式的平面図が図示されている。
【0020】
本実施の形態においては、基板処理装置500は、処理対象の基板Wに洗浄処理を行う基板洗浄装置であり、例えば工場に設置される。基板処理装置500が設置される工場には、工場設備(工場用力)として処理液供給源510、気体供給源520および廃液部530が設けられる。処理液供給源510は、IPA(イソプロピルアルコール)またはシンナー等の洗浄液を処理液として供給する。気体供給源520は、N(窒素)ガスまたはCDA(クリーンドライエア)等の気体を供給する。廃液部530には、使用済みの処理液が廃棄される。
【0021】
流路システム200は、処理液供給源510により供給された処理液を流路を通して基板処理部100に導く。制御装置300は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含み、基板処理部100および流路システム200の動作を制御する。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。ROMは、システムプログラムを記憶する。記憶装置は、制御プログラムを記憶する。表示装置400は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルを含み、制御装置300による処理結果を表示する。
【0022】
基板処理部100は、インデクサブロック110、第1の処理ブロック120、搬送ブロック130、第2の処理ブロック140および第3の処理ブロック150を備える。インデクサブロック110、第1の処理ブロック120、搬送ブロック130、第2の処理ブロック140および第3の処理ブロック150は、X方向にこの順で並ぶように配置される。
【0023】
インデクサブロック110は、複数のキャリア載置部111および搬送室112を含む。各キャリア載置部111には、複数の基板Wを多段に収納するキャリア113が載置される。搬送室112には、基板Wを保持しつつその基板Wを搬送する搬送機構(搬送ロボット)114が設けられる。
【0024】
第1の処理ブロック120は、処理室121,122および受渡部123を含む。処理室121と処理室122とは、Y方向において受渡部123を挟んで対向するように設けられる。各処理室121,122には、基板Wに処理を行う複数の処理ユニット10および複数の待機ポット20が設けられる。受渡部123には、搬送機構114と後述する搬送機構132との間で受け渡される基板Wが一時的に載置される。受渡部123には、複数の基板Wが載置されてもよい。搬送ブロック130は、搬送室131を含む。搬送室131には、基板Wを保持しつつその基板Wを搬送する搬送機構132が設けられる。
【0025】
第2の処理ブロック140は、処理室141,142および受渡部143を含む。処理室141と処理室142とは、Y方向において受渡部143を挟んで対向するように設けられる。各処理室141,142には、複数の処理ユニット10および複数の待機ポット20が設けられる。受渡部143には、搬送機構132と後述する搬送機構154との間で受け渡される基板Wが一時的に載置される。受渡部143には、複数の基板Wが載置されてもよい。本例では、受渡部143は、基板Wを保持しつつ、X方向に所定の距離だけ搬送(シャトル搬送)することが可能である。
【0026】
第3の処理ブロック150は、処理室151,152および搬送室153を含む。処理室151と処理室152とは、Y方向において搬送室153を挟んで対向するように設けられる。各処理室151,152には、複数の処理ユニット10および複数の待機ポット20が設けられる。搬送室153には、基板Wを保持しつつその基板Wを搬送する搬送機構154が設けられる。
【0027】
図2は、図1の処理室121,141,151の内部の構成を示す側面図である。図2に示すように、各処理室121,141,151には、複数(本例では4個)の処理ユニット10がZ方向に積層されるように配置されるとともに、複数の待機ポット20が複数の処理ユニット10にそれぞれ対応するように配置される。同様に、図1の各処理室122,142,152にも、複数(本例では4個)の処理ユニット10がZ方向に積層されるように配置されるとともに、複数の待機ポット20が複数の処理ユニット10にそれぞれ対応するように配置される。
【0028】
各処理ユニット10は、スピンチャック11、吐出ノズル12およびカップ13を含む。処理ユニット10は、ブラシをさらに含んでもよい。スピンチャック11の上方近傍には、基板Wを洗浄処理するための処理空間Vが設けられる。吐出ノズル12は、処理空間Vと待機ポット20との間で移動可能に設けられ、基板Wの洗浄処理時以外には待機ポット20に位置する。
【0029】
基板Wの洗浄処理時には、スピンチャック11は、処理空間V内で基板Wを保持した状態で、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ)により回転駆動される。また、吐出ノズル12は、処理空間Vに移動し、処理空間V内に図1の流路システム200により導かれた処理液を吐出する。この場合、スピンチャック11により回転される基板Wに処理液が供給される。これにより、基板Wに洗浄処理が行われる。カップ13は、スピンチャック11を取り囲むように設けられ、洗浄処理時に基板Wから振り切られる処理液を受け止める。
【0030】
図1および図2を参照しながら基板処理部100の動作を説明する。インデクサブロック110のキャリア載置部111に、未処理の基板Wが収容されたキャリア113が載置される。搬送機構114は、キャリア113から第1の処理ブロック120の受渡部123に未処理の基板Wを搬送する。また、搬送機構114は、受渡部123に載置された洗浄処理後の基板Wをキャリア113に搬送する。
【0031】
搬送ブロック130の搬送機構132は、受渡部123に載置された未処理の基板Wを第1の処理ブロック120の処理室121,122におけるいずれかの処理ユニット10または第2の処理ブロック140の受渡部143に搬送する。処理室121,122のいずれかの処理ユニット10に搬送された基板Wには、洗浄処理が行われる。また、搬送機構132は、処理室121,122におけるいずれかの処理ユニット10または受渡部143に載置された洗浄処理後の基板Wを受渡部123に搬送する。
【0032】
第3の処理ブロック150の搬送機構154は、受渡部143に載置された未処理の基板Wを第2または第3の処理ブロック140,150の処理室141,142,151,152におけるいずれかの処理ユニット10に搬送する。処理室141,142,151,152のいずれかの処理ユニット10に搬送された基板Wには、洗浄処理が行われる。また、搬送機構154は、処理室141,142,151,152におけるいずれかの処理ユニット10に載置された洗浄処理後の基板Wを受渡部143に搬送する。
【0033】
(2)流路システムの構成
図1の流路システム200は、基板処理部100の複数の処理ユニット10にそれぞれ対応するように複数設けられる。図3は、流路システム200の構成を示す図である。図3に示すように、流路システム200は、配管210、1つ以上の介挿部材220および検出部230を含む。介挿部材220は、配管210に介挿された部材である。配管210および1つ以上の介挿部材220により流路部201が形成される。流路部201は、処理空間Vの外側に位置する。
【0034】
配管210は、樹脂により形成され、主管211および枝管212を含む。配管210は、複数の管が継手で接続されることにより構成されてもよい。この場合、複数の管を接続するための継手は介挿部材220の1つである。以下の説明では、主管211において処理液が流れる方向を下流方向と定義し、その反対方向を上流方向と定義する。主管211の下流端部は、対応する処理ユニット10の吐出ノズル12に接続される。
【0035】
本例では、介挿部材220は複数設けられる。各介挿部材220は、例えば処理液タンク221、流路切替バルブ222、フィルタ223、調整部224、圧力センサ225、ポンプ226、流量センサ227または吐出バルブ228を含む。図3の例では、上記の複数の介挿部材220が上流から下流に向かってこの順で主管211に介挿される。介挿部材220は、上記の部材に限定されず、配管210の流路を開閉する開閉バルブであってもよい。また、同一種類の介挿部材220が複数設けられてもよい。
【0036】
処理液タンク221は、主管211の上流端部に介挿され、処理液供給源510により供給された処理液を貯留する。気体供給源520から処理液タンク221に気体が供給されることにより、処理液タンク221に貯留された処理液が主管211を通して下流に圧送される。
【0037】
流路切替バルブ222は、第1の流路状態と第2の流路状態との間で切り替わり可能である。第1の流路状態においては、処理液タンク221とフィルタ223との間の流路が開放され、処理液タンク221と廃液部530との間の流路が閉止される。第2の流路状態においては、処理液タンク221と廃液部530との間の流路が開放され、処理液タンク221とフィルタ223との間の流路が閉止される。
【0038】
フィルタ223は、例えばUPE(超高分子量ポリエチレン)フィルタであり、自己を通過する処理液中の異物を除去する。また、フィルタ223は、除去した異物を処理液とともに廃液部530に排出可能に構成される。主管211におけるフィルタ223と調整部224との間の部分と、処理液タンク221との間が枝管212により接続される。これにより、フィルタ223を通過した処理液を処理液タンク221に循環させることができる。枝管212にも開閉バルブまたは継手等の介挿部材220が介挿されてもよい。
【0039】
調整部224は、例えば電動調圧レギュレータであり、制御装置300による制御に基づいて主管211を流れる処理液の流量を調整する。圧力センサ225は、主管211を流れる処理液の圧力を計測する。圧力センサ225による計測結果は、制御装置300に与えられる。ポンプ226は、主管211を流れる処理液を下流に圧送する。流量センサ227は、主管211を流れる処理液の流量を計測する。流量センサ227による計測結果は、制御装置300に与えられる。
【0040】
吐出バルブ228は、例えば開閉バルブである。基板Wがスピンチャック11により保持および回転されかつ吐出ノズル12の吐出口が処理空間Vにある状態で、吐出バルブ228が開放される。この場合、処理空間V内に吐出ノズル12から処理液が吐出され、吐出された処理液が基板Wに供給される。これにより、基板Wに洗浄処理が行われる。
【0041】
流路部201の内部においては、流路部201の内壁と処理液との間の摩擦により静電気が発生することがある。そこで、検出部230が流路部201に取り付けられる。検出部230は、粘着テープ等の粘着部材により流路部201の外面に貼り付けられてもよい。この場合、検出部230を容易に配置することができる。
【0042】
検出部230は、例えば巻回された電線により形成されるアンテナであり、流路部201の内部における電磁波の磁界成分を起電力に変換する。これにより、静電気に起因して流路部201の内部で発生する放電が起電力として検出される。検出部230による検出結果は、制御装置300に与えられる。
【0043】
図3の例では、検出部230は1つの介挿部材220に取り付けられるが、実施の形態はこれに限定されない。検出部230は、配管210に取り付けられてもよい。この場合において、検出部230は、粘着部材により配管210の外面に貼り付けられてもよいし、検出部230は、配管210を取り囲むように巻回されてもよい。これらの場合でも、検出部230を容易に配置することができる。
【0044】
流路システム200は、2つ以上の検出部230を含んでもよい。具体的には、2つ以上の検出部230が、配管210の2つ以上の部分にそれぞれ取り付けられてもよいし、2つ以上の介挿部材220にそれぞれ取り付けられてもよい。あるいは、2つ以上の検出部230が、配管210および1つ以上の介挿部材220の一部または全部に取り付けられてもよい。
【0045】
(3)制御装置
図4は、制御装置300の構成を示すブロック図である。図5は、表示装置400による表示画面の一例を示す図である。図4に示すように、制御装置300は、機能部として、計測部310、ログ記憶部320、表示制御部330、判定部340および処理制御部350を含む。CPUが記憶装置に記憶された制御プログラムをRAM上で実行することにより制御装置300の機能部が実現される。制御装置300の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0046】
計測部310は、検出部230により変換された起電力を計測する。ここで、使用者は、流路部201の内部で放電が発生しないときに計測部310により計測された起電力をグラウンドレベル(0mV)として計測部310に設定することができる。これにより、検出部230の取り付け部近傍のグラウンドレベルが安定しない場合でも、放電に起因する起電力と放電に起因しない起電力とを容易に識別することが可能になる。
【0047】
ログ記憶部320は、データロガーとして動作し、計測部310により計測された起電力を計測時刻と対応付けて記憶する。表示制御部330は、ログ記憶部320に記憶された情報に基づいて、起電力の時間変化をトレンドグラフとして表示装置400に表示させる。放電が発生した場合には、図5に示すように、トレンドグラフに起電力のピークが1つ以上現れる。図5の吹き出し内には、ピークの形状を視認しやすくするために、トレンドグラフにおいて最大の起電力のピークが拡大して示されている。
【0048】
判定部340は、計測部310により計測された起電力が所定のしきい値を超えたか否かを判定する。使用者は、判定部340に任意のしきい値を設定することができる。本例では、しきい値は起電力の大きさであるが、実施の形態はこれに限定されない。しきい値は、起電力のピークの幅(例えば半値幅)であってもよい。
【0049】
ログ記憶部320は、上記のしきい値を超えた起電力のみを計測時刻と対応付けて記憶してもよい。この場合、表示制御部330は、しきい値を超えた起電力のみを表示装置400に表示させる。あるいは、ログ記憶部320は、起電力がしきい値を超えた回数を記憶してもよい。この場合、表示制御部330は、起電力がしきい値を超えた回数を表示装置400に表示させる。
【0050】
処理制御部350は、基板処理が実行されるように基板処理部100および流路システム200の動作を制御する。また、判定部340により起電力がしきい値を超えたと判定された場合、処理制御部350は、基板処理が停止されるように基板処理部100および流路システム200の動作を制御する。
【0051】
本例では、判定部340により起電力がしきい値を超えたと判定された場合、処理制御部350は、所定時間だけ吐出バルブ228を閉止する。これにより、流路部201の内部における帯電量が緩和される。この場合、流路部201の内部で放電が連続して発生することが防止される。使用者は、吐出バルブ228の任意の閉止時間を処理制御部350に設定することができる。所定時間の経過後、処理制御部350は、基板処理が再開されるように基板処理部100および流路システム200の動作を制御する。
【0052】
(4)制御処理
図6は、図4の制御装置300による制御処理の一例を示すフローチャートである。図6の制御処理は、制御装置300のCPUが記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することにより行われる。まず、処理制御部350は、基板処理部100および流路システム200の動作を制御することにより、基板処理(本例では洗浄処理)を開始する(ステップS1)。計測部310は、検出部230により変換された起電力を計測する(ステップS2)。ステップS2は、ステップS1と略同時に実行されてもよい。
【0053】
次に、ログ記憶部320は、ステップS2で計測された起電力を計測時刻と対応付けて記憶する(ステップS3)。表示制御部330は、ステップS3で記憶された起電力の時間変化を表示装置400に表示させる(ステップS4)。ステップS4は、ステップS3と略同時に実行されてもよい。
【0054】
続いて、判定部340は、ステップS2で計測された起電力がしきい値を超えたか否かを判定する(ステップS5)。起電力がしきい値を超えない場合、処理制御部350は、ステップS2に戻る。ステップS2~S5が繰り返されることにより、基板処理が継続される。
【0055】
起電力がしきい値を超えた場合、処理制御部350は、吐出バルブ228を閉止することにより基板処理を停止する(ステップS6)。ステップS6は、処理中の基板Wの当該処理が終了された後に実行されてもよい。その後、ステップS2~S4とそれぞれ同様のステップS7~S9が実行される。これにより、基板処理の停止中にも、起電力の計測、記憶および表示が行われる。
【0056】
次に、処理制御部350は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS10)。所定時間が経過していない場合、処理制御部350はステップS7に戻る。所定時間が経過するまでステップS7~S10が繰り返される。所定時間が経過した場合、処理制御部350は、基板搬送のスケジュールを変更し(ステップS11)、ステップS1に戻る。これにより、基板処理が再開される。所定回数の基板処理が終了するか、使用者により終了指示が行われた場合等に、制御処理が終了する。
【0057】
(5)効果
本実施の形態に係る基板処理装置500においては、基板Wを処理するための処理空間V内に流路部201を流れる流体が吐出ノズル12により吐出される。流路部201の内壁と流体との間の摩擦による静電気に起因して流路部201の内部で放電が発生した場合でも、当該放電が検出部230により検出される。
【0058】
放電が検出部230により検出された場合、所定時間だけ処理液の供給が停止される。この場合、流路部201の内部における帯電量が緩和されることにより、流路部201の内部で放電が連続して発生することが防止される。その結果、処理液の供給の異常が発生することを防止することができる。
【0059】
(6)変形例
本実施の形態において、放電が検出された場合、所定時間だけ吐出バルブ228が閉止されることにより基板処理が停止されるが、実施の形態はこれに限定されない。第1の変形例においては、放電が検出された場合、吐出ノズル12が待機ポット20で待機することにより基板処理が停止されるとともに、所定時間だけ吐出バルブ228が開放される。
【0060】
第2の変形例においては、放電が検出された場合、所定時間だけ流路切替バルブ222が第2の流路状態に切り替えられることにより基板処理が停止される。第3の変形例においては、放電が検出された場合、所定時間だけフィルタ223と廃液部530との間の図示しない開閉バルブが開放されるとともに、フィルタ223よりも下流にある開閉バルブ(吐出バルブ228を含む。)が閉止される。第2または第3の変形例においては、吐出ノズル12は処理空間Vに位置してもよいし、待機ポット20に位置してもよい。
【0061】
第1~第3の変形例によれば、帯電した処理液が廃液部530に廃棄される。そのため、流路部201の内部で放電が連続して発生することをより効率よく防止することができる。また、液体に気体が混合している状態においては静電気が発生しやすいと考えられる。したがって、放電が検出された場合には、気泡センサでは検出できないような微小な気泡が処理液中に混合している可能性がある。この場合でも、第1~第3の変形例によれば、処理液が廃液部530に廃棄されるので、微小な気泡が混合する処理液を用いて基板処理を行うことが防止される。これにより、基板処理をより適切に行うことが可能になる。
【0062】
第2の変形例においては、検出部230が流路切替バルブ222よりも上流の位置に取り付けられてもよい。この場合、流路切替バルブ222がフィルタ223よりも上流に設けられるので、帯電した処理液はフィルタ223を通過しない。これにより、フィルタ223が汚染することを防止することができる。しかしながら、実施の形態はこれに限定されない。例えば、検出部230は流路切替バルブ222に取り付けられてもよいし、流路切替バルブ222よりも下流の位置に取り付けられてもよい。また、流路切替バルブ222は、フィルタ223よりも下流に設けられてもよい。
【0063】
第4の変形例においては、放電が検出された場合、処理空間V内に処理対象の基板Wが存在しないタイミングで吐出ノズル12から処理液が処理空間V内に吐出されるように吐出バルブ228が開放される。具体的には、処理空間V内に処理対象の基板Wとは異なるダミー基板が存在するタイミングで吐出ノズル12から処理液が処理空間V内に吐出されるように吐出バルブ228が開放されてもよい。この場合、異常な流体が処理対象の基板Wに供給されることが防止される。また、帯電した処理液を廃液部530に廃棄することができるので、流路部201の内部で放電が連続して発生することをより効率よく防止することができる。
【0064】
(7)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、放電が検出された場合、処理液が処理空間V内に吐出されないか、または処理空間V内に処理対象の基板Wが存在しないタイミングで処理液が処理空間V内に吐出されるように制御が行われるが、実施の形態はこれに限定されない。図7は、他の実施の形態における制御装置300の構成を示すブロック図である。図7に示すように、制御装置300は、機能部として報知部360をさらに含む。
【0065】
報知部360は、放電が検出された場合、その旨を示す文章等を表示装置400に表示させることにより報知を行う。これにより、正常な流体の供給を行うための対処を使用者に促すことができる。また、報知が行われる場合でも、処理液が処理空間V内に吐出されないか、または処理空間V内に処理対象の基板Wが存在しないタイミングで処理液が処理空間V内に吐出されるような制御が実行されてもよい。
【0066】
本実施の形態において、報知は表示装置400を用いて行われるが、実施の形態はこれに限定されない。報知は、表示装置400を用いずに行われてもよい。例えば、基板処理装置500が音声出力装置を含む場合には、放電が発生した旨の内容を示す音声、またはブザー等の警告音が出力されることにより報知が行われてもよい。あるいは、基板処理装置500がランプ等の表示灯を含む場合には、表示灯が点灯、消灯または点滅されることにより報知が行われてもよい。
【0067】
(b)上記実施の形態において、基板処理装置500は基板洗浄装置であるが、実施の形態はこれに限定されない。基板処理装置500は、処理対象の基板Wに塗布処理を行う塗布装置であってもよい。この場合、基板処理部100は、例えば塗布処理ユニット(スピンコータ)を含み、処理液は塗布液を含む。あるいは、基板処理装置500は、処理対象の基板Wに現像処理を行う現像装置であってもよい。この場合、基板処理部100は、例えば現像処理ユニット(スピンデベロッパ)を含み、処理液は現像液を含む。
【0068】
(c)上記実施の形態において、流体は洗浄液、塗布液または現像液等の液体であるが、実施の形態はこれに限定されない。流体は気体であってもよい。例えば、流体は、酸素等の処理ガスであってもよいし、窒素等の不活性ガスであってもよい。
【0069】
(d)上記実施の形態において、検出部230、制御装置300および表示装置400は別体として設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。検出部230、制御装置300および表示装置400の一部または全部が一体的に設けられてもよい。例えば、制御装置300の機能部の少なくとも一部が検出部230に設けられてもよい。あるいは、検出部230にモニタ等の表示部が設けられてもよい。
【0070】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0071】
上記実施の形態においては、流路部201が流路部の例であり、処理空間Vが処理空間の例であり、基板Wが基板の例であり、吐出ノズル12が吐出部の例であり、検出部230が検出部の例であり、基板処理部100が基板処理装置の例である。配管210が配管の例であり、介挿部材220が介挿部材の例であり、流路切替バルブ222または吐出バルブ228がバルブの例であり、処理制御部350が処理制御部の例であり、報知部360が報知部の例である。
【符号の説明】
【0072】
10…処理ユニット,11…スピンチャック,12…吐出ノズル,13…カップ,20…待機ポット,100…基板処理部,110…インデクサブロック,111…キャリア載置部,112,131,153…搬送室,113…キャリア,114,132,154…搬送機構,120…第1の処理ブロック,121,122,141,142,151,152…処理室,123,143…受渡部,130…搬送ブロック,140…第2の処理ブロック,150…第3の処理ブロック,200…流路システム,201…流路部,210…配管,211…主管,212…枝管,220…介挿部材,221…処理液タンク,222…流路切替バルブ,223…フィルタ,224…調整部,225…圧力センサ,226…ポンプ,227…流量センサ,228…吐出バルブ,230…検出部,300…制御装置,310…計測部,320…ログ記憶部,330…表示制御部,340…判定部,350…処理制御部,360…報知部,400…表示装置,500…基板処理装置,510…処理液供給源,520…気体供給源,530…廃液部,V…処理空間,W…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7