(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】遮断弁用のキャップ部材、遮断弁用の弁体、遮断弁の製造方法、および遮断弁の弁体の交換方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/06 20060101AFI20241128BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20241128BHJP
B22D 18/04 20060101ALI20241128BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B22C9/06 P
B22D17/22 G
B22D18/04 R
F16K1/32 C
(21)【出願番号】P 2021051383
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】結城 研二
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
(72)【発明者】
【氏名】川内 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】進藤 優
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-149422(JP,U)
【文献】実開昭59-085658(JP,U)
【文献】特開平09-239511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0252222(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00- 9/30
B22D 15/00-17/32
F16K 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造金型のキャビティ部からガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁用のキャップ部材であって、
前記遮断弁は、貫通孔が形成されるバルブヘッドを有し、
前記キャップ部材は、
前記バルブヘッドの前記貫通孔に螺合されるキャップ部材本体と、
前記キャップ部材本体の軸方向の一端面から突出し、前記バルブヘッドに前記キャップ部材本体を螺合するため
に用いられる取り付け用工具である第1工具と係合させるための
多角形状の凸部からなる第1係合部と、
前記キャップ部材本体の内部に形成され、
前記キャップ部材本体の前記軸方向の他端面にて開口し、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材本体の螺合を解除するため
に用いられる取り外し用工具である第2工具と係合させるための
多角形状の凹部からなる第2係合部と、
前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部と、
を備え
、
前記バルブヘッドの前記貫通孔に前記キャップ部材が取り付けられた後に前記第1係合部を除去することができる、遮断弁用のキャップ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の遮断弁用のキャップ部材であって、
前記壁部と前記第1係合部の間に形成され、前記第1係合部を除去するために切断可能な切断可能部を備える、遮断弁用のキャップ部材。
【請求項3】
請求項2に記載の遮断弁用のキャップ部材であって、
前記切断可能部は、前記第1係合部の径よりも小さい径を有する、遮断弁用のキャップ部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の遮断弁用のキャップ部材であって、
前記切断可能部は、切欠き部を有する、遮断弁用のキャップ部材。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の遮断弁用のキャップ部材であって
、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記キャップ部材本体の中心軸線上に設けられている、遮断弁用のキャップ部材。
【請求項6】
鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁用の弁体であって、
貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられるバルブヘッドと、
前記バルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合される
キャップ部材本体を有するキャップ部材と、
を備え、
前記キャップ部材本体の軸方向の一端面は、工具と係合するための形状が設けられていない平坦面であり、
前記キャップ部材の内部には、
前記キャップ部材本体の前記軸方向の他端面にて開口し、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材の螺合を解除するため
に用いられる取り外し用工具と係合するための
多角形状の凹部からなる係合部が設けられ、
前記キャップ部材には、前記キャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ
ている、遮断弁用の弁体。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の遮断弁用のキャップ部材を用いて、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の製造方法であって、
前記バルブヘッドの貫通孔内に締結部材を挿入して、前記遮断弁を駆動するための駆動軸に前記バルブヘッドを取り付ける工程と、
前記第1係合部に前記第1工具を係合させて、前記バルブヘッドの前記貫通孔に前記キャップ部材を螺合させる工程と、
前記第1係合部を除去する工程と、
を有する、遮断弁の製造方法。
【請求項8】
鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の弁体の交換方法であって、
交換前の弁体は、
貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記交換前の弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられた第1のバルブヘッドと、
前記第1のバルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合された
第1キャップ部材本体を有する第1のキャップ部材と、
を備え、
前記第1キャップ部材本体の軸方向の一端面は、工具と係合するための形状が設けられていない平坦面であり、
前記第1のキャップ部材の内部には、
前記第1キャップ部材本体の軸方向の他端面にて開口した多角形状の凹部からなる係合部が設けられ、
前記第1のキャップ部材には、前記第1のキャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ、
交換用の弁体は、第2のバルブヘッドと、第2のキャップ部材とを備え、
前記第2のバルブヘッドは、貫通孔を有し、
前記第2のキャップ部材は、
前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔に螺合可能な第2キャップ部材本体と、
前記第2キャップ部材本体の軸方向の一端面から突出した多角形状の凸部からなる第1係合部と、
前記第2のキャップ部材の内部に形成され
、前記第2キャップ部材本体の軸方向の他端面にて開口した多角形状の凹部からなる第2係合部と、
前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部と、
を有し、
前記交換方法は、
前記第1のキャップ部材の前記壁部を削って前記係合部を露出させる工程と、
工具を前記係合部に係合させて、前記第1のバルブヘッドの前記貫通孔への前記第1のキャップ部材の螺合を解除することによって、前記第1のキャップ部材を前記第1のバルブヘッドから取り外す工程と、
前記第1のバルブヘッドを前記駆動軸から取り外す工程と、
前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔内に締結部材を挿入して、前記駆動軸に前記第2のバルブヘッドを取り付ける工程と、
前記第2のキャップ部材の前記第1係合部に、工具を係合させて、前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔に前記第2のキャップ部材を螺合させる工程と、
前記貫通孔に螺合した前記第2のキャップ部材の前記第1係合部を除去する工程と、
を有する、遮断弁の弁体の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧鋳造システムに用いる遮断弁用のキャップ部材、遮断弁用の弁体、遮断弁の製造方法、および遮断弁の弁体の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビティ内のガスを吸引した後に、キャビティ内に溶湯を注入して鋳造を行う減圧鋳造システムが知られている(例えば、特許文献1)。これにより、溶湯内へのガスの混入を防止して、ガスに起因する鋳造品の欠陥(例えば、巣)の発生を低減できる。減圧鋳造システムは、溶湯の注入時において、キャビティと、キャビティからガスを吸引する吸引路とを切り離すための遮断弁を有する。
【0003】
この遮断弁の弁体は、使用に伴う偏摩耗等により、シール性が低下して、交換が必要になることがある。弁体は、遮断弁を駆動させる駆動機構に取り付けられているため、弁体を交換するには、工具等を用いて、駆動機構から取り外す必要がある。しかし、遮断弁の弁体は、鋳造金型のキャビティの近傍に設置されるため、工具と係合する係合部を設けることは困難である。すなわち、弁体が係合部を有すると、キャビティから弁体に達して固化した溶湯(鋳造品)が、係合部の凹部に固着して、鋳造品の離型を妨げる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、弁体の交換の容易性と鋳造品の離型の容易性との両立を図った遮断弁用のキャップ部材、遮断弁用の弁体、遮断弁の製造方法、および遮断弁の弁体の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る遮断弁用のキャップ部材は、鋳造金型のキャビティ部からガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁用のキャップ部材であって、前記遮断弁は、貫通孔が形成されるバルブヘッドを有し、前記キャップ部材は、前記バルブヘッドの前記貫通孔に螺合されるキャップ部材本体と、前記バルブヘッドに前記キャップ部材本体を螺合するための第1工具と係合させるための第1係合部と、前記キャップ部材本体の内部に形成され、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材本体の螺合を解除するための第2工具と係合させるための第2係合部と、前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る遮断弁用の弁体は、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁用の弁体であって、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられるバルブヘッドと、前記バルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合されるキャップ部材と、を備え、前記キャップ部材の内部には、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材の螺合を解除するための工具と係合するための係合部が設けられ、前記キャップ部材には、前記キャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ、前記キャップ部材の先端面は、工具と係合するための形状が設けられていない平坦面である。
【0008】
本発明の一態様に係る遮断弁の製造方法は、本発明の一態様に係る遮断弁用のキャップ部材を用いて、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の製造方法であって、前記バルブヘッドの貫通孔内に締結部材を挿入して、前記遮断弁を駆動するための駆動軸に前記バルブヘッドを取り付ける工程と、前記第1係合部に前記第1工具を係合させて、前記バルブヘッドの前記貫通孔に前記キャップ部材を螺合させる工程と、前記第1係合部を除去する工程と、を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る遮断弁の弁体の交換方法は、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の弁体の交換方法であって、交換前の弁体は、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記交換前の弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられた第1のバルブヘッドと、前記第1のバルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合された第1のキャップ部材と、を備え、前記第1のキャップ部材の内部には、係合部が設けられ、前記第1のキャップ部材には、前記第1のキャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ、交換用の弁体は、第2のバルブヘッドと、第2のキャップ部材とを備え、前記第2のバルブヘッドは、貫通孔を有し、前記第2のキャップ部材は、第1係合部と、前記第2のキャップ部材の内部に形成される第2係合部と、前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部と、を有し、前記交換方法は、前記第1のキャップ部材の前記壁部を削って前記係合部を露出させる工程と、工具を前記係合部に係合させて、前記第1のバルブヘッドの前記貫通孔への前記第1のキャップ部材の螺合を解除することによって、前記第1のキャップ部材を前記第1のバルブヘッドから取り外す工程と、前記第1のバルブヘッドを前記駆動軸から取り外す工程と、前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔内に締結部材を挿入して、前記駆動軸に前記第2のバルブヘッドを取り付ける工程と、前記第2のキャップ部材の前記第1係合部に、工具を係合させて、前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔に前記第2のキャップ部材を螺合させる工程と、前記第2のキャップ部材の前記第1係合部を除去する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体の交換の容易性と鋳造品の離型の容易性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る減圧鋳造システムを表す図である。
【
図3】遮断弁の弁体を分解した状態を表す図である。
【
図4】取り付け前の弁体のキャップ部材を表す図である。
【
図7】遮断弁の弁体の交換手順を表すフロー図である。
【
図9】変形例に係る弁体のキャップ部材を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る遮断弁用のキャップ部材、遮断弁用の弁体、遮断弁の製造方法、および遮断弁の弁体の交換方法を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る減圧鋳造システム10を表す図である。
【0013】
減圧鋳造システム10は、鋳造金型12を備える。鋳造金型12は、固定金型12aと可動金型12bとから構成される。可動金型12bは固定金型12aの図中右側に配設され、固定金型12aに対して図中横方向に進退自在である。固定金型12aと可動金型12bの互いに対向する合わせ面12a1、12b1には、キャビティ部14を構成する凹部14aおよび凹部14bがそれぞれ形成される。固定金型12a側に向けて可動金型12bを前進させ、両者の合わせ面12a1、12b1を当接させることで、鋳造金型12は、閉じられ、その内部にキャビティ部14が形成される。
【0014】
減圧鋳造システム10は、溶湯供給部16を有する。溶湯供給部16は、固定金型12a側に設けられ、キャビティ部14内に溶湯を供給する。可動金型12bには、キャビティ部14の下流にオーバーフロー部18が形成される。キャビティ部14に供給された溶湯はオーバーフロー部18に達して、キャビティ部14およびオーバーフロー部18の内部で固化する。固化した溶湯は、鋳造品として、鋳造金型12から取り出される。
【0015】
鋳造金型12は、遮断弁20、吸引路22、および吸引路24を有する。遮断弁20は、オーバーフロー部18と吸引路22の間に設けられ、駆動軸26を有する弁駆動部28によって開閉されて、オーバーフロー部18から吸引路22への溶湯の侵入を防止する。
【0016】
吸引路24は、鋳造金型12外の吸引路30、バルブ32を介して、ガス吸引部34に接続される。ガス吸引部34は、吸引路30、吸引路24、吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、キャビティ部14内のガスを吸引する。ガス吸引部34は、タンク34aおよびタンク34aを減圧する真空ポンプ34bを有する。ガス吸引部34は、真空ポンプ34bによって減圧されたタンク34aによって、キャビティ部14内のガスを吸引する。キャビティ部14への溶湯の供給の前に、キャビティ部14内のガスを吸引しておくことで、溶湯へのガスの混入による鋳造品の欠陥(例えば、巣)の発生を低減することができる。
【0017】
吸引路30には、ガス吸引部34と共に、エア供給部36が接続される。エア供給部36は、吸引路30、吸引路24、吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、開かれた状態の鋳造金型12内にエアを流すことで(エアブロー)、吸引路22等をクリーニングする。バルブ32は、吸引路30、ガス吸引部34、およびエア供給部36の間に配置され、吸引路30に対するガス吸引部34およびエア供給部36の接続を切り替える。
【0018】
図2は、遮断弁20の近傍を拡大して表す図である。
図2に示されるように、遮断弁20は、弁体40と、弁体40によって開閉(離間、当接)される弁座42とを有する。
図3は、遮断弁20の弁体40を分解した状態を表す図である。弁体40は、バルブヘッド44、キャップ部材46を有し、締結部材F(例えば、ボルト)によって、弁駆動部28の駆動軸26に取り付けられる。
【0019】
バルブヘッド44は、貫通孔50を有し、本体部52、および軸部54に区分され、貫通孔50に挿通された締結部材Fによって、駆動軸26に取り付けられる。本体部52は、弁体40の本体であり、弁座42に当接、離間する。軸部54は、本体部52と一体に形成され、駆動軸26と略同一の径を有し、バルブヘッド44の取り付け時に駆動軸26の端部と当接する。貫通孔50は、本体部52内に形成された孔50a、孔50bと、軸部54内に形成された孔50cとを有する。孔50aおよび孔50bは、内径が略同一である。孔50cは、内径が孔50a、孔50bより小さい。バルブヘッド44の取り付け時において、孔50bには、締結部材Fの頭部Faが配置され、孔50cには、締結部材Fの軸部Fbが配置される。孔50cから突出した軸部Fbは、駆動軸26の孔26a(雌ねじ27)と螺合して、バルブヘッド44を駆動軸26に固定する。締結部材Fの頭部Faには、係合凹部Fcが形成され、バルブヘッド44の取り付け、取り外し時において、駆動軸26への締結部材Fの螺合および螺合の解除のための着脱用工具T0(例えば、六角レンチ)と係合する。孔50aの内周には、キャップ部材46の外周と螺合するための雌ねじ51が形成される。キャップ部材46が挿入、螺合され、締結部材Fの頭部Faを覆う。
【0020】
図4は、取り付け前の弁体40のキャップ部材46を表す図である。バルブヘッド44への取り付け前のキャップ部材46は、柱状のキャップ部材本体60、柱状の係合凸部62(第1係合部)、柱状の係合凹部64(第2係合部)、および係合凸部62と係合凹部64とを隔てる壁部66を有する。なお、壁部66は、鋳造時の溶湯の圧力と高温に耐えうる強度を備える厚みを有する。
【0021】
キャップ部材本体60は、中心軸線Cに沿う方向(軸方向)一方側の端面60aと、軸方向他方側の端面60bと、バルブヘッド44の貫通孔50(より具体的には、孔50a)に螺合する雄ねじ61が形成された外周面60cと、を有する。
【0022】
係合凸部62は、弁体40の取り付け時において、バルブヘッド44にキャップ部材本体60を螺合するための取り付け用工具T1(第1工具、例えば、スパナまたはレンチ)と係合させるための係合部である。係合凸部62は、取り付け用工具T1によるキャップ部材本体60の螺合を容易とするために、キャップ部材本体60の中心軸線C上に設けられている。
【0023】
図3に示すように、取り付け後のキャップ部材46は、係合凸部62が取り除かれ、その先端面(キャップ部材本体60の端面60a)は、工具と係合するための形状が設けられていない平坦面となる。後述のように、バルブヘッド44へのキャップ部材本体60の取り付け後において、係合凸部62が除去され、鋳造時におけるキャップ部材46への鋳造品の固着が防止される。
【0024】
係合凹部64は、弁体40の取り外し時において、バルブヘッド44へのキャップ部材本体60の螺合を解除するための取り外し用工具T2(第2工具、例えば、六角レンチ)と係合させるための係合部である。係合凹部64は、取り外し用工具T2によるキャップ部材本体60の螺合の解除を容易とするために、キャップ部材本体60の中心軸線C上に設けられている。
【0025】
係合凹部64は、キャップ部材本体60の内部に形成され、係合凸部62側から見て露出しないように、壁部66によって覆われている。すなわち、弁体40(より具体的には、キャップ部材46)の取り外し時を除いて、係合凸部62は、壁部66によって覆われ、露出していない。これにより、鋳造時における係合凸部62への鋳造品の固着が防止される。キャップ部材46の取り外し時には、壁部66を削って係合凹部64を露出させ、係合凹部64への取り外し用工具T2の係合を可能とする。これにより、取り外し用工具T2を用いて、バルブヘッド44へのキャップ部材46の螺合を解除し、キャップ部材46を取り外すことができる。
【0026】
なお、中心軸線Cに垂直な平面上における係合凹部64の形状を締結部材Fの係合凹部Fcの形状と一致させることで、キャップ部材46の取り外し、およびバルブヘッド44の取り付け、取り外しに同一の工具(取り外し用工具T2、着脱用工具T0)を用いることが可能となる。
【0027】
ここで、係合凸部62をキャップ部材本体60の端面60aから突出した多角形状とし、係合凹部64をキャップ部材本体60の端面60bにて開口した多角形状とすることができる。これにより、係合凸部62および係合凹部64を有するキャップ部材46を部材の整形(切削等)、鋳造等により容易に作成可能となる。すなわち、キャップ部材46の作成に複数の部材を組み合わせること(接合、溶接等)を要しない。なお、多角形状は、例えば、3角形~10角形、一例として、6角形であり、係合凸部62と係合凹部64の多角形の辺の数は、同一でも、異なっていてもよい。
【0028】
(遮断弁20の製造)
以下、遮断弁20の製造方法を説明する。
図5は、遮断弁20の製造手順を表すフロー図である。
図6A~
図6Cは、製造中の遮断弁20の状態を表す図である。以下、
図5および
図6A~
図6Cに基づいて、遮断弁20の製造方法を説明する。
【0029】
駆動軸26にバルブヘッド44を取り付ける(ステップS1、
図6A)。バルブヘッド44の貫通孔50内に締結部材Fを挿入して、着脱用工具T0を用いて締結部材Fを駆動軸26の雌ねじ27と螺合させることで、バルブヘッド44を駆動軸26に取り付ける。さらに、駆動軸26に取り付けられたバルブヘッド44にキャップ部材46を取り付ける(ステップS2、
図6B)。すなわち、取り付け用工具T1を係合凸部62に係合させて、バルブヘッド44の雌ねじ51にキャップ部材46を螺合させる。
【0030】
キャップ部材46の取り付け後に、キャップ部材46から係合凸部62を除去し、キャップ部材46(キャップ部材本体60)の端面60aを平滑化する(ステップS3、
図6C、
図2、および
図3)。切断、切削、研削、および研磨等によって、係合凸部62を除去し、端面60aを平滑化できる。これにより、製造時にキャップ部材46の取り付け(螺合)を容易としつつ、鋳造時における係合凸部62への鋳造品の固着を防止できる。
【0031】
(遮断弁20の弁体40の交換)
以下、使用済み(交換前)の弁体40を未使用(交換用)の弁体40と交換する交換方法を説明する。
図7は、遮断弁20の弁体40の交換手順を表すフロー図である。
図8A~
図8Cは、弁体40を交換中の遮断弁20の状態を表す図である。但し、
図8A~
図8Cは、交換手順の前半(弁体40の取り外し)に対応する。交換手順の後半(弁体40の取り付け)は、遮断弁20の製造手順と実質的に同様なので、
図6A~
図6Cによって表すことができる。以下、
図7、
図8A~
図8C、および
図6A~
図6Cに基づいて、遮断弁20の交換方法を説明する。ここでは、判り易さのために、使用済みの弁体40、キャップ部材46、バルブヘッド44を旧弁体40等とし、未使用の弁体40等を新キャップ部材46等と称する。
【0032】
旧キャップ部材46の壁部66を削って、係合凹部64を露出させる(ステップS11、
図8A)。その後、旧キャップ部材46を取り外す(ステップS12、
図8B)。すなわち、取り外し用工具T2を係合凹部64に係合させて、旧バルブヘッド44の貫通孔50(具体的には、雌ねじ51)への旧キャップ部材46の螺合を解除することによって、旧キャップ部材46を旧バルブヘッド44から取り外す。これにより、鋳造時における係合凹部64への鋳造品の固着を防止しつつ、取り外し用工具T2を用いて、キャップ部材46を容易に取り外すことができる。
【0033】
さらに、旧バルブヘッド44を駆動軸26から取り外す(ステップS13、
図8C)。すなわち、旧キャップ部材46が取り外された旧バルブヘッド44の孔50aを介して着脱用工具T0を締結部材Fの頭部Faに挿入、係合させて、駆動軸26の雌ねじ27への締結部材Fの螺合を解除して、旧バルブヘッド44を駆動軸26から取り外す。その後は、駆動軸26への新バルブヘッド44の取り付け(ステップS14、
図6A)、新バルブヘッド44への新キャップ部材46の取り付け(ステップS15、
図6B)、新キャップ部材46からの係合凸部62の除去(ステップS16、
図6C)が行われる。この手順は、遮断弁20の製造手順と実質的に同様なので、詳細な説明を省略する。
【0034】
(変形例)
図9は、変形例に係る遮断弁20の弁体40のキャップ部材46を表す図である。変形例に係るキャップ部材46は、壁部66と係合凸部62の間に切断可能部68が形成されている。切断可能部68は、係合凸部62を除去するために切断可能である。これにより、係合凸部62の除去を容易とすることができる。すなわち、遮断弁20の製造時または弁体40の交換時において、例えば、係合凸部62に応力を印加することによって、切断可能部68を切断して、係合凸部62が除去される(
図5のステップS3、
図7のステップS16)。この切断後、必要に応じて、切断面が切削、研削、研磨等され、端面60aのさらなる平滑化が図られる。
【0035】
ここでは、切断可能部68は、係合凸部62の径よりも小さい径(小径)を有し、係合凸部62よりも切断が容易としている。但し、切断可能部68は、係合凸部62に係合した取り付け用工具T1により、キャップ部材46をバルブヘッド44に螺合させるためのトルクには耐え得るものとする。
【0036】
切断可能部68は、係合凸部62より小径とするのと併せて、
図9に仮想線で示すように、切欠き部68aを有し、切欠き部68aから切断容易としてもよい。この場合でも、切断可能部68は、取り付け用工具T1によるトルクには耐えるものとする。なお、切断可能部68は、その全体を係合凸部62より小径とすることなく、切欠き部68aを形成してもよい。
【0037】
〔実施形態から得られる発明〕
上記各実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0038】
〔1〕遮断弁(20)用のキャップ部材(46)は、鋳造金型(12)のキャビティ部(14)からガスを吸引するための吸引路(22)を遮断可能な遮断弁用のキャップ部材であって、前記遮断弁は、貫通孔(50)が形成されるバルブヘッド(44)を有し、前記キャップ部材は、前記バルブヘッドの前記貫通孔に螺合されるキャップ部材本体(60)と、前記バルブヘッドに前記キャップ部材本体を螺合するための第1工具(取り付け用工具T1)と係合させるための第1係合部(係合凸部62)と、前記キャップ部材本体の内部に形成され、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材本体の螺合を解除するための第2工具(取り外し用工具T2)と係合させるための第2係合部(係合凹部64)と、前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部(66)と、を備える。
【0039】
これにより、弁体の取り付け時には、第1工具を第1係合部に係合させて、キャップ部材をバルブヘッドに螺合させ、その後、第1係合部を除去することで、第1係合部が鋳造品の離型を妨げることを防止できる。弁体の取り外し時には、壁部を削って第2係合部を露出させ、第2工具を第2係合部に係合可能とする。これにより、第2工具を用いて、バルブヘッドへのキャップ部材の螺合を解除し、キャップ部材を取り外すことができる。
【0040】
〔2〕遮断弁用のキャップ部材は、前記壁部と前記第1係合部の間に形成され、前記第1係合部を除去するために切断可能な切断可能部(68)を備える。これにより、切断可能部を切断することで、第1係合部を容易に除去することができる。
【0041】
〔3〕前記切断可能部は、前記第1係合部の径よりも小さい径を有する。これにより、切断可能部の切断が容易となる。
【0042】
〔4〕前記切断可能部は、切欠き部(68a)を有する。これにより、切断可能部を切欠き部から容易に切断することができる。
【0043】
〔5〕前記第1係合部は、前記第1工具と係合する係合凸部(62)である。これにより、係合凸部に係合する第1工具を用いて、キャップ部材をバルブヘッドに螺合させることができる。
【0044】
〔6〕前記第2係合部は、前記第2工具と係合する係合凹部(64)である。これにより、係合凹部に係合する第2工具を用いて、バルブヘッドへのキャップ部材の螺合を解除することができる。
【0045】
〔7〕前記第1係合部は、前記キャップ部材本体の軸方向の一端面(端面60a)から突出した多角形状の係合凸部であり、前記第2係合部は、前記キャップ部材本体の前記軸方向の他端面(端面60b)にて開口した多角形状の係合凹部であり、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記キャップ部材本体の中心軸線(C)上に設けられている。これにより、第1係合部および第2係合部は、キャップ部材本体の中心軸線上に設けられていることから、第1工具および第2工具による螺合およびその解除が容易となる。また、第1係合部は、前記キャップ部材本体の軸方向の一端面から突出した多角形状であり、第2係合部は、キャップ部材本体の軸方向の他端面にて開口した多角形状であることから、第1係合部および第2係合部を有するキャップ部材を部材の整形等により容易に作成可能となり、複数の部材を組み合わせることを要しない。
【0046】
〔8〕遮断弁用の弁体は、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁用の弁体であって、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられるバルブヘッドと、前記バルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合されるキャップ部材と、を備え、前記キャップ部材の内部には、前記バルブヘッドへの前記キャップ部材の螺合を解除するための工具(取り外し用工具T2)と係合するための係合部(係合凹部64)が設けられ、前記キャップ部材には、前記キャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ、前記キャップ部材の先端面(端面60a)は、工具と係合するための形状が設けられていない平坦面である。これにより、キャップ部材の先端面は、平坦面であることから、鋳造品の離型を妨げることが防止される。また、弁体の取り外し時には、壁部を削って、係合部を露出させ、係合部に工具を係合させて、バルブヘッドへのキャップ部材の螺合を解除することができる。
【0047】
〔9〕遮断弁の製造方法は、〔1〕~〔7〕に記載のキャップ部材を用いて、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の製造方法であって、前記バルブヘッドの貫通孔内に締結部材を挿入して、前記遮断弁を駆動するための駆動軸に前記バルブヘッドを取り付ける工程(ステップS1)と、前記第1係合部に前記第1工具を係合させて、前記バルブヘッドの前記貫通孔に前記キャップ部材を螺合させる工程(ステップS2)と、前記第1係合部を除去する工程(ステップS3)と、を有する。これにより、第1工具を用いて、バルブヘッドにキャップ部材を容易に螺合させ、しかも、その後に第1係合部を除去することによって、第1係合部が鋳造品の離型を妨げることを防止できる。
【0048】
〔10〕遮断弁の弁体の交換方法は、鋳造金型のキャビティ部内のガスを吸引するための吸引路を遮断可能な遮断弁の弁体の交換方法であって、交換前の弁体は、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して、前記交換前の弁体を駆動させるための駆動軸に取り付けられた第1のバルブヘッドと、前記第1のバルブヘッドの先端部で前記貫通孔に螺合された第1のキャップ部材と、を備え、前記第1のキャップ部材の内部には、係合部が設けられ、前記第1のキャップ部材には、前記第1のキャップ部材の先端側から前記係合部を覆う壁部が設けられ、交換用の弁体は、第2のバルブヘッドと、第2のキャップ部材とを備え、前記第2のバルブヘッドは、貫通孔を有し、前記第2のキャップ部材は、第1係合部と、前記第2のキャップ部材の内部に形成される第2係合部と、前記第1係合部と前記第2係合部との間に形成され、前記第1係合部側から見て前記第2係合部が露出しないように前記第2係合部を覆う壁部と、を有し、前記交換方法は、前記第1のキャップ部材の前記壁部を削って前記係合部を露出させる工程(ステップS11)と、工具(取り外し用工具T2)を前記係合部に係合させて、前記第1のバルブヘッドの前記貫通孔への前記第1のキャップ部材の螺合を解除することによって、前記第1のキャップ部材を前記第1のバルブヘッドから取り外す工程(ステップS12)と、前記第1のバルブヘッドを前記駆動軸から取り外す工程(ステップS13)と、前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔内に締結部材を挿入して、前記駆動軸に前記第2のバルブヘッドを取り付ける工程(ステップS14)と、前記第2のキャップ部材の前記第1係合部に、工具(取り付け用工具T1)を係合させて、前記第2のバルブヘッドの前記貫通孔に前記第2のキャップ部材を螺合させる工程(ステップS15)と、前記第2のキャップ部材の前記第1係合部を除去する工程(ステップS16)と、を有する。これにより、第1工具、第2工具を用いた、キャップ部材の取り付け、取り外しの容易化を図りつつ、第1係合部、第2係合部が鋳造品の離型を妨げることが防止される。
【符号の説明】
【0049】
10…減圧鋳造システム 12…鋳造金型
14…キャビティ部 16…溶湯供給部
18…オーバーフロー部 20…遮断弁
22、24、30…吸引路 26…駆動軸
28…弁駆動部 40…弁体
42…弁座 44…バルブヘッド
46…キャップ部材 50…貫通孔
52…本体部 54…軸部
60…キャップ部材本体 62…係合凸部
64…係合凹部 66…壁部
F…締結部材