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特許7594955ピボットヒンジ、ピボットヒンジの取り付け座、及び、扉システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ピボットヒンジ、ピボットヒンジの取り付け座、及び、扉システム
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/081 20060101AFI20241128BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E05D7/081
E06B3/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021053114
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150488
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】森田 奈々
(72)【発明者】
【氏名】山根 元治
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第5013625(JP,B2)
【文献】実開平05-030379(JP,U)
【文献】特開平09-060395(JP,A)
【文献】実公昭47-042941(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277074(US,A1)
【文献】実公昭33-012254(JP,Y1)
【文献】実公昭45-033183(JP,Y1)
【文献】特開2015-090014(JP,A)
【文献】特開2007-332821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/081
E06B 3/36
F16C 11/04 - 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉又は扉枠の一方に取り付けられる軸部材と、扉又は扉枠の他方に取り付けられる軸受け部材と、を備えたピボットヒンジであって、
軸部材は、環状溝を有するピボット軸と、扉又は扉枠の一方に取り付けられ、ピボット軸が螺入される主孔及び主孔に連通する横孔を有する取り付け座と、横孔に螺入され、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジと、を備え、
軸受け部材は、ピボット軸を支持する軸受け孔を有し、
横孔の中心線は、主孔の中心線に対してオフセットされており、
横孔は、主孔から離れて設けられた雌ネジ部と、雌ネジ部と主孔とをつなぐ丸孔部と、を有する、ピボットヒンジ。
【請求項2】
止めネジの外周面が環状溝の底に対峙する、請求項1記載のピボットヒンジ。
【請求項3】
扉又は扉枠に取り付けられ、環状溝を有するピボット軸が螺入される主孔と、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジが螺入される横孔と、を有する、ピボットヒンジの取り付け座であって、
横孔の中心線は、主孔の中心線に対してオフセットされており、
横孔は、主孔から離れて設けられた雌ネジ部と、雌ネジ部と主孔とをつなぐ丸孔部と、を有する、ピボットヒンジの取り付け座。
【請求項4】
扉と、扉枠と、扉と扉枠との間に位置して扉を支持するピボットヒンジと、を備えた扉システムであって、
ピボットヒンジは、扉又は扉枠の一方に取り付けられた軸部材と、扉又は扉枠の他方に取り付けられた軸受け部材と、を備え、
軸部材は、環状溝を有するピボット軸と、扉又は扉枠の一方に取り付けられ、ピボット軸が螺入される主孔及び主孔に連通する横孔を有する取り付け座と、横孔に螺入され、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジと、を備え、
軸受け部材は、ピボット軸を支持する軸受け孔を有し、
閉扉状態において、止めネジが横孔から出て行くときに、止めネジと環状溝との係合が解除されるよりも前に、止めネジが扉枠に当たる、扉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボットヒンジと、ピボットヒンジの取り付け座と、扉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2では、ピボット軸に環状溝が設けられ、その環状溝に対応したピボット軸の小径部に止めネジの先端が当接している。これにより、ピボット軸の抜け止めがなされている。しかしながら、仮に、止めネジが緩んだり、あるいは、止めネジが意図的に緩められたりすると、環状溝と止めネジとの間の係合が解除され、ピボット軸は取り外し可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5013625号公報
【文献】特許第2726020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ピボット軸の環状溝と止めネジとの間の係合状態が容易に解除されないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るピボットヒンジは、扉又は扉枠の一方に取り付けられる軸部材と、扉又は扉枠の他方に取り付けられる軸受け部材と、を備えたピボットヒンジであって、軸部材は、環状溝を有するピボット軸と、扉又は扉枠の一方に取り付けられ、ピボット軸が螺入される主孔及び主孔に連通する横孔を有する取り付け座と、横孔に螺入され、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジと、を備え、軸受け部材は、ピボット軸を支持する軸受け孔を有し、横孔の中心線は、主孔の中心線に対してオフセットされている。
【0006】
この構成によれば、横孔の中心線は、主孔の中心線に対してオフセットされている。即ち、止めネジの中心線がピボット軸の中心線に対してオフセットされている。そのため、止めネジが横孔から出て行く際に、止めネジが長い区間において環状溝に係合し続ける。つまり、止めネジの中心線がピボット軸の中心線に対してオフセットされていない構成に比して、止めネジと環状溝との間の係合状態が解除されるまでの止めネジの移動量が大きい。そのため、止めネジと環状溝との間の係合状態が解除されにくくなり、ピボット軸が外れにくく、扉が外れにくい。
【0007】
特に、止めネジの外周面が環状溝の底に対峙することが好ましい。この構成によれば、止めネジと環状溝との間の係合状態が解除されるまでの止めネジの移動量がより一層大きくなる。そのため、止めネジと環状溝との間の係合状態がより一層解除されにくい。また、仮にピボット軸が回転したとしても止めネジは回転しにくく、止めネジが緩みにくい。
【0008】
また、横孔は、主孔から離れて設けられた雌ネジ部と、雌ネジ部と主孔とをつなぐ丸孔部と、を有することが好ましい。この構成によれば、丸孔部が主孔に開口しているので、横孔の開口部にバリ等の微少突起が生じにくい。そのため、ピボット軸を主孔にスムーズに螺入することができ、扉の取り付け作業が容易になる。
【0009】
また、本発明に係るピボットヒンジの取り付け座は、扉又は扉枠に取り付けられ、環状溝を有するピボット軸が螺入される主孔と、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジが螺入される横孔と、を有する、ピボットヒンジの取り付け座であって、横孔の中心線は、主孔の中心線に対してオフセットされている。
【0010】
また、また、本発明に係る扉システムは、扉と、扉枠と、扉と扉枠との間に位置して扉を支持するピボットヒンジと、を備えた扉システムであって、ピボットヒンジは、扉又は扉枠の一方に取り付けられた軸部材と、扉又は扉枠の他方に取り付けられた軸受け部材と、を備え、軸部材は、環状溝を有するピボット軸と、扉又は扉枠の一方に取り付けられ、ピボット軸が螺入される主孔及び主孔に連通する横孔を有する取り付け座と、横孔に螺入され、環状溝に係合してピボット軸の上下方向の移動を規制する止めネジと、を備え、軸受け部材は、ピボット軸を支持する軸受け孔を有し、閉扉状態において、止めネジが横孔から出て行くときに、止めネジと環状溝との係合が解除されるよりも前に、止めネジが扉枠に当たる。
【0011】
この構成によれば、仮に止めネジが緩んで横孔から所定量外側に出ると、閉扉状態において止めネジが扉枠に当たる。そのため、止めネジは、それ以上横孔から出ることができない。止めネジが扉枠に当たっている状態において、止めネジは環状溝に係合している。そのため、ピボット軸は外されることはなく、扉は外されない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明におけるピボットヒンジ、取り付け座、及び、扉システムにおいては、ピボット軸の環状溝と止めネジとの間の係合状態が解除されにくい。そのため、ピボット軸が意図せずに外れたり、扉が意図せずに外れたりしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における扉システムの正面図。
図2】同扉システムの要部側面図。
図3】(a)は同扉システムの要部平面図、(b)は(a)の拡大図。
図4図3(a)のA-A断面図。
図5】同扉システムにおいて止めネジが外側に突出した状態を示す要部平面図。
図6】(a)は本発明の一実施形態におけるピボットヒンジの取り付け座を示す平面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は同ピボットヒンジの止めネジを示す正面図。
図7】同ピボットヒンジのピボット軸を示す図であって、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は(b)のC-C断面図。
図8】(a)及び(b)は同ピボットヒンジの要部拡大図。
図9】同扉システムの使用状態を示す正面図。
図10】同扉システムの使用状態を示す要部平面図。
図11】(a)は本発明の他の実施形態におけるピボットヒンジの取り付け座の要部平面図、(b)は同ピボットヒンジの止めネジを示す正面図。
図12】(a)及び(b)は同ピボットヒンジの要部拡大図。
図13】本発明の他の実施形態におけるピボットヒンジを示す要部平面図。
図14】(a)及び(b)はピボットヒンジの参考例を示す要部平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる扉システム及びそれに使用されるピボットヒンジについて図1図13を参酌しつつ説明する。図1のように、扉システムは、扉1と、扉枠2と、ピボットヒンジを備えている。扉1は、上下方向の軸線まわりに回動する。扉枠2は、扉1の周囲に位置する。ピボットヒンジは、扉1と扉枠2の間に配置されて扉1を回動可能に支持する。尚、扉1の回動中心と扉先とを結ぶ方向を左右方向とし、扉1の正面と背面を結ぶ方向を前後方向とする。
【0015】
<ピボットヒンジ>
ピボットヒンジは、上ピボット3aと、下ピボット3bを備えている。下ピボット3bは、扉枠2の縦枠2bの下端部に取り付けられる下軸部材10と、扉1の下端部に取り付けられる下軸受け部材11とを備えている。下軸部材10は、上側に突出する図示しない軸部を有する。軸部は、上下方向の軸線を有し、扉1の下側の回動軸となる。下軸受け部材11は、下軸部材10の軸部を受け入れる図示しない軸受け孔を有する。下軸受け部材11は、下軸部材10の軸部に対して回転する。下軸受け部材11は、下軸部材10の軸部を支持する。
【0016】
図2のように、上ピボット3aは、扉1の上端部に取り付けられる上軸部材20と、扉枠2の上枠2aに取り付けられる上軸受け部材21を備えている。上軸部材20は、扉1の上端部にネジ止めされる取り付け座30と、取り付け座30に取り付けられて扉1の回動軸となるピボット軸31と、ピボット軸31を抜け止めする止めネジ32(図3参照)を備えている。
【0017】
<取り付け座30>
図3及び図4のように、取り付け座30は、ベース部40と支持部41とを有している。ベース部40は、扉1の上側に位置する。取り付け座30はベース部40において扉1にネジ止めされる。ベース部40は、左右方向に沿って長い形状である。支持部41は、ベース部40の左右方向両端部のうち縦枠2bに近い側の端部(回動中心側の端部)から前後方向に突出している。支持部41は、扉1の例えば正面から前方に突出する。
【0018】
図6のように、支持部41は、主孔42を有している。主孔42にピボット軸31が螺入される。主孔42の中心線42aは、上下方向に沿っている。主孔42の中心線42aは、扉1の回動中心となる。主孔42は、支持部41を上下方向に貫通している。主孔42は、支持部41の上面と下面にそれぞれ開口している。主孔42には、その全長のうちの大部分に、ピボット軸31が螺合する雌ネジ部42bが設けられている。
【0019】
支持部41には、横孔43が設けられている。横孔43に止めネジ32が螺入される。横孔43の中心線43aは、水平方向に沿っている。止めネジ32の中心線32aは、横孔43の中心線43aと一致する。横孔43は、支持部41の側面に開口している。詳細には、横孔43は、支持部41の左右両側面41a,41bのうち縦枠2b側に位置する左側面41aに開口している。また、横孔43は主孔42に開口していて、横孔43は主孔42と連通している。詳細には、図6(b)のように、横孔43は、主孔42の雌ネジ部42bに開口している。横孔43は、支持部41の左側面41aに開口した外側開口部43bと、主孔42に開口した内側開口部43cとを有している。
【0020】
図6(a)のように、平面視において、横孔43は、主孔42に対してベース部40側、即ち、扉1に近い側に位置している。従って、横孔43の外側開口部43b及び内側開口部43cは、主孔42の中心線42aよりもベース部40側に位置している。平面視において、横孔43は、左右方向に対して傾斜している。即ち、横孔43は、扉1に対して平行ではなく、扉1に対して前後方向に傾斜している。横孔43の外側開口部43bは、内側開口部43cよりも後側、即ちベース部40側であって扉1に近い側に位置している。横孔43は、主孔42に向かうにつれて徐々に扉1から前側に離れるように傾斜している。
【0021】
更に、平面視において、横孔43の中心線43aは、主孔42の中心線42aに対して後側にオフセットされている。横孔43の主孔42に対するオフセット量D(図8参照)は種々であってよい。オフセット量Dが0、つまり、横孔43の中心線43aが主孔42の中心線42aに対してオフセットしていないということは、横孔43の中心線43aが主孔42の径方向に沿って延びて主孔42の中心線42aと交差することを意味する。従って、横孔43の中心線43aが主孔42の中心線42aに対してオフセットされているということは、横孔43の中心線43aは主孔42の中心線42aと交差しないことを意味する。尚、オフセット量Dに関しては更に後述する。
【0022】
横孔43は、止めネジ32が螺合する雌ネジ部44と、雌ネジ部44が形成されていない非ネジ部である有底の丸孔部45とを有している。雌ネジ部44は主孔42から離れて位置する。雌ネジ部44は、主孔42に達していない。丸孔部45は雌ネジ部44と主孔42とをつなぎ、主孔42に開口している。換言すれば、雌ネジ部44は外側開口部43b側に設けられ、丸孔部45は内側開口部43c側に設けられている。丸孔部45は、雌ネジ部44の奧側に隣接する径一定のストレート孔部45aと、ストレート孔部45aの奧側に隣接すると共に横孔43の最奧部である円錐孔部45bとを有している。
【0023】
<ピボット軸31>
ピボット軸31は、扉1の回動軸である。ピボット軸31は、取り付け座30に取り付けられ、上軸受け部材21に支持される。ピボット軸31は、上下方向の軸線を有している。図7にピボット軸31を示している。ピボット軸31は、下端から順に、フランジ部50、第1小径部51、雄ネジ部52、及び、第2小径部53を有している。フランジ部50が最も大径である。雄ネジ部52は、第1小径部51及び第2小径部53よりも大径である。第1小径部51の上下に雄ネジ部52とフランジ部50が設けられていることにより、雄ネジ部52とフランジ部50との間には環状溝54が設けられている。環状溝54は第1小径部51に対応し、第1小径部51は環状溝54の底である。環状溝54の深さは、雄ネジ部52と第1小径部51との間の半径差である。第2小径部53は、ピボット軸31の先部である。第2小径部53は、外周面が上下方向(軸線方向)に沿って径方向外側に湾曲している太鼓状部53aを有している。太鼓状部53aの外周面は湾曲面である。太鼓状部53aは第2小径部53の全長のうち大部分を占めている。
【0024】
図4のように、ピボット軸31は、主孔42に下側から螺入される。フランジ部50が支持部41に当接することによりピボット軸31はそれ以上上側には移動することができない。ピボット軸31の中心線31aは主孔42の中心線42aと一致する。ピボット軸31の雄ネジ部52が主孔42の雌ネジ部44に螺合する。第1小径部51が横孔43の内側開口部43cに対向し、横孔43は環状溝54の高さに位置する。雄ネジ部52は横孔43の内側開口部43cよりも上側に位置する。第2小径部53は、支持部41から上側に突出する。
【0025】
<止めネジ32>
止めネジ32は、ピボット軸31の抜け止めとして機能する。図6(c)のように、止めネジ32は、雄ネジ部60と、外周面にネジ部を有しない非ネジ部61とを有している。雄ネジ部60は基端面63側に位置し、非ネジ部61は先端面62側に位置する。非ネジ部61は、雄ネジ部60の先端側に隣接して設けられている。本実施形態において非ネジ部61は、雄ネジ部60の先端側に隣接して設けられ、非ネジ部61の大部分を占める径一定のストレート軸部61aと、ストレート軸部61aの先端側に隣接して設けられた面取り部61bとを有している。尚、面取り部61bは、傾斜面であってもよいし、曲面であってもよい。止めネジ32の基端面63には、ドライバー等の工具100(図10参照)が係合する図示しない溝が設けられている。
【0026】
図3図4及び図8のように、止めネジ32は横孔43に螺入される。止めネジ32は非ネジ部61を先頭にして横孔43に螺入され、止めネジ32の雄ネジ部60が横孔43の雌ネジ部44に螺合し、止めネジ32の非ネジ部61は横孔43の丸孔部45に位置する。止めネジ32の先端部はピボット軸31の環状溝54に入り込む。環状溝54には止めネジ32の非ネジ部61が入り込み、第1小径部51には止めネジ32の非ネジ部61の外周面が対峙する。詳細には、ストレート軸部61aの外周面が第1小径部51に対峙する。止めネジ32の非ネジ部61の外周面は第1小径部51に接する、あるいは、僅かな隙間を介して対向することが好ましい。上述のように、横孔43の中心線43aが主孔42の中心線42aに対してオフセットされており、止めネジ32の中心線32aは、ピボット軸31の中心線31aに対してオフセットされている。そのオフセット量Dは、本実施形態では、環状溝54の深さと略等しい。止めネジ32の先端面62は、第1小径部51に対向せず、第1小径部とは異なる方向を向いている。
【0027】
図8(a)は、止めネジ32を横孔43の例えば最奥まで螺入したときの正規の螺入状態であって、この状態がピボットヒンジの正規の取付状態となる。止めネジ32が環状溝54に係合しているため、ピボット軸31は下側にほとんど移動することができない。ピボット軸31が下側に移動しようとすると、ピボット軸31の雄ネジ部52の下端面が止めネジ32の非ネジ部61に当接するため、ピボット軸31は下側には移動できない。ピボット軸31は、止めネジ32によって抜け止めされる。
【0028】
一方、図8(b)は、図8(a)の状態から止めネジ32を緩めていったときの状態であって、止めネジ32の先端部が環状溝54から抜け出す時の状態である。つまり、止めネジ32と環状溝54との係合がちょうど解除される瞬間の状態である。図8(a)から図8(b)までの止めネジ32の軸線方向の移動量(螺出量)を図8(b)に符号L1で示している。移動量L1は、最奥の状態の止めネジ32が環状溝54から抜け出すまでの移動量である。図8(b)の状態においても、止めネジ32の雄ネジ部60は横孔43の雌ネジ部44に螺合している。
【0029】
図14に参考例を示している。参考例において横孔43の中心線43aは主孔42の中心線42aに対してオフセットされておらず、止めネジ32の中心線32aは、ピボット軸31の中心線31aに対してオフセットされていない。横孔43は主孔42の径方向に沿って延びていて、止めネジ32はピボット軸31の中心に向かっている。図14(a)の正規の取付状態において、止めネジ32の先端面62が第1小径部51に当接している。この閉扉状態から仮に止めネジ32を螺出させていくと、図14(b)のように、止めネジ32の先端面62は第1小径部51から径方向外側に離れ、止めネジ32は環状溝54から抜け出した状態となる。この状態において、止めネジ32は縦枠2bには当接しない。止めネジ32と環状溝54との間の係合状態が解除されるので、ピボット軸31を下側に螺出させることができ、扉1を取り外すことができる。図14(b)に、止めネジ32が環状溝54から抜け出すまでの止めネジ32の移動量を符号L2で示している。図8(b)と図14(b)を比較すれば明らかなように、参考例の移動量L2に比べて本実施形態の移動量L1の方が大きい。即ち、L1>L2という関係にある。
【0030】
図5のように、扉1が閉じた閉扉状態において、仮に止めネジ32が緩んだり意図的に緩められたりして止めネジ32が横孔43から抜け出ようすると、止めネジ32の例えば基端面63が縦枠2bに当接する。そのため、それ以上止めネジ32は横孔43から螺出することができない。その状態においてもなお、止めネジ32の先端部は環状溝54に入り込んでいて、止めネジ32と環状溝54との間の係合状態は維持されている。従って、ピボット軸31を下側に向けて取り外すことができず、扉1を取り外すことはできない。図5に、止めネジ32が縦枠2bに当接した状態における止めネジ32の移動量(螺出量)を符号L3で示している。移動量L3は、上述の移動量L1よりも小さい。即ち、L3<L1という関係にある。
【0031】
<上軸受け部材21>
上軸受け部材21は、図2のように、ベース部70と、ベース部70から前側に突出した支持部71を有している。ベース部70が上枠2aにネジ止めされ、支持部71は上枠2aから前側に突出する。支持部71は、ピボット軸31を支持するための軸受け孔72を有する。軸受け孔72は支持部71の下面に開口するが上面には開口していない。即ち、軸受け孔72は支持部71を貫通せず、非貫通の孔である。軸受け孔72にピボット軸31の第2小径部53が入れられる。上軸受け部材21の支持部71と取り付け座30の支持部41は互いに上下に対向し、軸受け孔72と主孔42及びピボット軸31は上下に同軸上に並ぶ。軸受け孔72には軸受けとしてブッシュ73が嵌め込まれている。ピボット軸31の太鼓状部53aが軸受け孔72に入り込み、太鼓状部53aはブッシュ73に回転可能に支持される。
【0032】
次に、扉1の取付作業及び取り外し作業について概説する。扉1を取り付ける際には、まず、上枠2aに上軸受け部材21を取り付け、縦枠2bに下軸部材10を取り付ける。また、扉1の上端部には取り付け座30を取り付け、下端部には下軸受け部材11を取り付ける。そして、下軸部材10の軸部を扉1の下軸受け部材11の軸受け孔に入れ、取り付け座30の支持部41を上軸受け部材21の支持部71の下側に位置させる。その状態で、ピボット軸31を下側から主孔42に螺入する。ピボット軸31が止まるまでピボット軸31が主孔42にねじ込まれ、ピボット軸31の太鼓状部53aが上軸受け部材21の軸受け孔72に嵌め入れられる。そして、図10のように、扉1を開いた状態でドライバー等の工具100を用いて止めネジ32を横孔43に螺入する。
【0033】
図9のように、扉1には、その自重WによってモーメントMが生じている。そのモーメントMによって、扉1は右側に傾こうとし、取り付け座30は上軸受け部材21に対して右側即ち戸先側に位置ずれしようとする。従って、ピボット軸31を螺入していって上軸受け部材21の軸受け孔72にピボット軸31の第2小径部53を入れる際には、ピボット軸31の第2小径部53が上軸受け部材21の軸受け孔72に対して斜めに進入しやすい。しかしながら、ピボット軸31の第2小径部53には太鼓状部53aが設けられているので、ピボット軸31の第2小径部53を上軸受け部材21の軸受け孔72に容易に入れていくことができる。特に、軸受け孔72に配置された軸受けがベアリングではなくブッシュ73である場合に効果的であって、軸受け孔72に対してピボット軸31が斜めに進入する場合であっても、太鼓状部53aが設けられていることにより、その斜めの進入がある程度許容されることになる。そのため、扉1を楽に取り付けることができる。尚、扉1を取り外す際には、図10のように、扉1を開いた状態で、ドライバー等の工具100を用いて止めネジ32を取り外し、その後、ピボット軸31を下側に抜き出す。
【0034】
以上のように、本実施形態におけるピボットヒンジにおいては、横孔43の中心線43aが主孔42の中心線42aに対してオフセットされており、止めネジ32の中心線32aがピボット軸31の中心線31aに対してオフセットされている。そのため、環状溝54から止めネジ32が抜け出るまでの移動量L1が、オフセットされていない構成の移動量L2よりも大きい。従って、万一止めネジ32が緩んだとしても、環状溝54と止めネジ32との間の係合状態は容易には解除されず、係合状態が維持されやすい。また、万一止めネジ32が意図的に緩められた場合であっても、同様に、環状溝54と止めネジ32との間の係合状態が容易には解除されず、係合状態が維持されやすい。そのため、ピボット軸31が支持部40から下側に不用意に抜けず、扉1が不用意に外れにくい。また、移動量L1が大きいことによって防犯上の利点もある。特に、止めネジ32の外周面が第1小径部51に対峙しているので、移動量L1が大きい。止めネジ32の外周面が第1小径部51に対峙していると、扉1の開閉動作によって仮にピボット軸31が緩む方向に回転しようとしても止めネジ32に回転させる力が作用しにくい。ピボット軸31が回転して雄ネジ部52の下端面が止めネジ32の外周面に当接し且つ摺動したとしても、雄ネジ部52の下端面から止めネジ32の外周面に作用する摩擦力は止めネジ32の中心線32aに沿った方向となる。摩擦力は、止めネジ32を回転させようとする力にはなりにくく、ピボット軸31の回転に伴って止めネジ32が回転しにくく、止めネジ32が緩みにくい。
【0035】
また、閉扉状態において止めネジ32が螺出した際には止めネジ32が扉枠2に当接してそれ以上の螺出が阻止される。そのため、止めネジ32が万一緩んだり、意図的に緩められたとしても、止めネジ32の脱落が防止され、ピボット軸31や扉1の脱落が防止される。また、防犯上の利点にもなる。
【0036】
更に、横孔43の中心線43aが主孔42の中心線42aに対してオフセットされていると、支持部41において主孔42と支持部41の側面(例えば左側面41a)との間の肉厚を薄くしても、止めネジ32の移動量L1を確保しやすい。そのため、支持部41を薄肉化でき、小型化できる。支持部41が薄肉化されたり小型化されたりすると、支持部41が目立ちにくくなり、美観が向上する。
【0037】
尚、本実施形態においては止めネジ32と横孔43がストレート形状であったが、一部にテーパ形状の部分を有していてもよい。例えば、横孔43は、図11(a)のように、丸孔部45にテーパ部を有するものであってよい。丸孔部45は、雌ネジ部44の奧側に隣接する径一定のストレート孔部45aと、ストレート孔部45aの奧側に隣接し、奧側に向けて縮径するテーパ孔部45cと、テーパ孔部45cの奧側に隣接すると共に横孔43の最奧部である円錐孔部45bとを有している。テーパ孔部45cのテーパ率(縮径率)は、円錐孔部45bのテーパ率よりも小さい。テーパ孔部45cの長さは円錐孔部45bの長さよりも長い。尚、ストレート孔部45aが省略されてもよい。
【0038】
図11(b)のように、止めネジ32の非ネジ部61は、雄ネジ部60の先側に隣接して設けられた径一定のストレート軸部61aと、ストレート軸部61aの先端側に隣接して設けられ、先端側に向けて縮径するテーパ軸部61cと、テーパ軸部61cの先端側に隣接して設けられた面取り部61bとを有している。ストレート軸部61a及びテーパ軸部61cは、非ネジ部61の大部分を占めている。テーパ軸部61cは、面取り部61bよりも長く、面取り部61bよりもテーパ率が小さい。尚、面取り部61bは、傾斜面であってもよいし、曲面であってもよい。尚、ストレート軸部61aが省略されてもよい。また、止めネジ32にテーパ軸部61cが設けられた場合であっても、横孔43の丸孔部45にはテーパ孔部45cが設けられなくてもよい。
【0039】
図12(a)のように横孔43に止めネジ32を螺入すると、止めネジ32の非ネジ部61のうちテーパ軸部61cが第1小径部51(環状溝54の底)に対峙する。止めネジ32を螺入していくことにより、止めネジ32のテーパ軸部61cが第1小径部51に当接する。止めネジ32のテーパ軸部61cがピボット軸31を押すことになるため、ピボット軸31が緩みにくくなり、また、止めネジ32も緩みにくくなる。尚、図12(b)は、止めネジ32を緩めていったときの状態であって、止めネジ32が環状溝54から抜け出す時の状態である。つまり、止めネジ32と環状溝54との係合がちょうど解除される瞬間の状態である。このように止めネジ32にテーパ軸部61cが設けられた場合であっても、止めネジ32と環状溝54との間の係合状態は容易に解除されず、止めネジ32と環状溝54との係合状態が解除されるまでの止めネジ32の移動量L1は大きい。
【0040】
尚、上記実施形態においては、横孔43が扉1に対して前後方向に傾斜していたが、図13のように、横孔43が扉1に対して傾斜しておらずに扉1と平行であってもよい。
【0041】
また、横孔43の中心線43aのオフセット量Dは任意であって、上記実施形態では、止めネジ32の外周面が第1小径部51に対峙する程度のオフセット量Dであったが、オフセット量Dはそれより小さくてもよく、必ずしも止めネジ32の外周面が第1小径部51に対峙しなくてもよい。逆に、オフセット量Dは、止めネジ32が環状溝54に係合する範囲において更に大きくてもよい。また、止めネジ32の非ネジ部61の外周面の断面形状は円形でなくてもよい。
【0042】
止めネジ32についても種々変更可能であって、非ネジ部61が設けられずに全長に亘って雄ネジ部60が設けられていてもよい。横孔43についても丸孔部45が設けられずに雌ネジ部44が主孔42に開口していてもよい。
【0043】
尚、上軸部材20が扉1に取り付けられ、上軸受け部材21が上枠2aに取り付けられたが、逆に上軸部材20が上枠2aに取り付けられ、上軸受け部材21が扉1に取り付けられてもよい。また、上ピボット3aがピボット軸31を備えていたが、下ピボット3bがピボット軸31を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 扉
2 扉枠
2a 上枠
2b 縦枠
3a 上ピボット
3b 下ピボット
10 下軸部材
11 下軸受け部材
20 上軸部材
21 上軸受け部材
30 取り付け座
31 ピボット軸
31a ピボット軸の中心線
32 止めネジ
32a 止めネジの中心線
40 ベース部
41 支持部
41a 左側面
41b 右側面
42 主孔
42a 主孔の中心線
42b 雌ネジ部
43 横孔
43a 横孔の中心線
43b 外側開口部
43c 内側開口部
44 雌ネジ部
45 丸孔部
45a ストレート孔部
45b 円錐孔部
45c テーパ孔部
50 フランジ部
51 第1小径部(環状溝の底)
52 雄ネジ部
53 第2小径部
53a 太鼓状部
54 環状溝
60 雄ネジ部
61 非ネジ部
61a ストレート軸部
61b 面取り部
61c テーパ軸部
62 先端面
63 基端面
70 ベース部
71 支持部
72 軸受け孔
73 ブッシュ
100 工具
D オフセット量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14