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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】補修塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20241128BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 127/16 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
B05D7/00 L
B05D7/14 P
B05D7/14 S
B05D7/24 302L
B05D7/24 302P
C09D127/16
C09D133/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021055031
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152313
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】石井 東
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301054(JP,A)
【文献】特開2017-148795(JP,A)
【文献】特開平10-305243(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088846(WO,A1)
【文献】特開平6-57196(JP,A)
【文献】特開平5-320563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05B 1/00-17/08
C09D 1/00-201/10
B65D 83/00-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が貯留された第1容器と液体が貯留された第2容器とを有するスプレー缶を用いた補修塗装方法であって、
前記第2容器には、塗料組成物が貯留され、
前記塗料組成物は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、熱可塑性アクリル系樹脂と、を含み、
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び前記熱可塑性アクリル系樹脂の合計質量に対する、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の質量比率は30質量%以上であり、
前記塗料組成物を、前記スプレー缶を用いて金属サイディング材に補修塗装する、補修塗装方法。
【請求項2】
前記塗料組成物の塗料粘度が8秒以上、15秒以下である、請求項1に記載の補修塗装方法。
【請求項3】
被補修部位と前記スプレー缶との距離が3cm以上、15cm以下である、請求項1又は2に記載の補修塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補修塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁に外装材として金属サイディングを取り付けることが行われている。金属サイディング材には、外的刺激によって傷が付く場合があり、補修が必要な場合がある。上記補修は、金属サイディング材の表面に補修用塗料を塗布することで行われる。上記補修は、例えば塗料を刷毛や筆等を用いて塗布することで行われている。
【0003】
金属サイディング材の表面には、遮熱性、耐久性の向上等を目的として、フッ素系塗料が塗装される場合がある。フッ素系塗料の塗装により形成された皮膜の補修用塗料として、ポリフッ化ビニリデン系塗膜の補修用塗料に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-238863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗料を刷毛や筆等を用いて塗布する方法は、補修痕が目立ち易く、補修後の自然な仕上り外観が得られない問題があった。そこで、気体が貯留された容器と液体が貯留された容器とを有するスプレー缶により、金属サイディングの被補修部位に補修用塗料を塗布することが考えられる。しかし、スプレー缶を用いた金属サイディング材の補修塗装方法については、従来検討されていなかった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、補修後の補修痕が目立ちにくい金属サイディング材の補修塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
気体が貯留された第1容器と液体が貯留された第2容器とを有するスプレー缶を用いた補修塗装方法であって、前記第2容器には、塗料組成物が貯留され、前記塗料組成物は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、熱可塑性アクリル系樹脂と、を含み、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び前記熱可塑性アクリル系樹脂の合計質量に対する、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の質量比率は30質量%以上であり、前記塗料組成物を、前記スプレー缶を用いて金属サイディング材に補修塗装する、補修塗装方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るスプレー缶を示す正面図である。
図2】本実施形態に係るスプレー缶を示す分解図である。
図3】本実施形態に係るスプレー缶の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<スプレー缶>
本実施形態に係るスプレー缶1は、金属サイディング材の補修に用いられる。上記金属サイディング材は、例えば建物の外壁用の外装材として用いられる。上記スプレー缶1は、図1に示すように、気体としての噴射剤が貯留された第1容器20と、液体としての金属サイディング材補修用の塗料組成物(C)が貯留された第2容器30と、を有する。第1容器20と第2容器30とは、例えば、接続部材10により接続される。以下の説明はスプレー缶1の構成の一例であり、第2容器30は、接続部材10を介さずに第1容器20と接続されてもよい。
【0010】
(第1容器)
第1容器20は、噴射剤が充填された、例えば金属製のボンベ21と、ボンベ21に装着されるホルダー22と、を有する。
【0011】
ボンベ21に貯留された噴射剤としては特に限定されず、エアゾール製品に利用されている公知の各種噴射剤が使用できる。噴射剤として、例えば、液化ガス、圧縮ガス等を用いることができる。上記液化ガスとしては、例えば、各種の液化石油ガス、ジメチルエーテル及びこれらを混合した液化ガスが挙げられる。上記圧縮ガスとしては、例えば、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガスが挙げられる。ボンベ21に貯留された噴射剤は、ボンベ21の頂部に設けられたステム(図示せず)を押下げる操作によってボンベ21の外部に噴出可能である。
【0012】
ホルダー22は、押込みボタン221と、ヘッド部222と、を有する。ホルダー22は、例えば合成樹脂等により一体に成形される。ホルダー22は、例えば篏合等の方式によって、ボンベ21の上部に装着される。
【0013】
押込みボタン221は、ボンベ21の頂部に設けられたステムに装着される。押込みボタン221の内部には、上記ステム及び後述する噴射口223に連通する流路が設けられる。押込みボタン221を押し込む操作を行うことでステムが押下げられる。これにより、ボンベ21に貯留された噴射剤が、押込みボタン221の内部に設けられた流路を介し噴射口223から噴射される。
【0014】
ヘッド部222は、図1及び図2に示すように、噴射口223と、ノズル224と、を有する。ヘッド部222は、図3に示すように、接続部材10の一部を挿入可能な、下方に向けて開口する円状の開口部を有する。上記開口部の内周面には、接続部材10と螺合可能な第1ネジ部としての雌ネジ部226が形成される。上記開口部は、図3に示すように、ノズル224と連通している。
【0015】
噴射口223から、ボンベ21に貯留された噴射剤が、図3で矢印で示す方向に噴射される。ノズル224から、第2容器30に貯留された塗料組成物が吐出される。ノズル224には、図2及び図3に示すように、チューブ225が接続される。チューブ225は、内部に塗料組成物が流通可能な流路を有する筒状部材である。チューブ225を介し、ノズル224に塗料組成物が供給される。チューブ225の先端部は、第2容器30に貯留された塗料組成物中に挿入される。チューブ225は、ノズル224に対して着脱可能であってもよい。
【0016】
(第2容器)
第2容器30は、金属サイディング補修用の塗料組成物(C)を貯留する容器である。第2容器30は、接続部材10を介して第1容器20と着脱可能に構成される。上記第2容器30としては、上記塗料組成物の貯留に用いられる既存の容器を転用することができる。第2容器30は、例えば円筒状の容器本体を有し、図2及び図3に示すように、容器本体の頂部に雄ネジ部31が形成されている。第2容器30の内部に上記塗料組成物を充填した後、上記雄ネジ部31に対し、蓋部Cの内部に形成された雌ネジ部(図示せず)を螺合させる。これにより、上記塗料組成物が第2容器30の内部に封入される。上記雄ネジ部31は、第3ネジ部として接続部材10との接続に利用される。
【0017】
(接続部材)
接続部材10は、第1容器20と、第2容器30とを接続する部材である。接続部材10は、図2及び図3に示すように、略円筒形状を有する。上記円筒形状は、第1容器20と第2容器30の径に応じて、両端部で径の大きさが異なっていてもよい。接続部材10は、図2及び図3に示すように、チューブ225を挿通可能な空間を内部に有している。
【0018】
接続部材10の一端側の外周面には、第2ネジ部としての雄ネジ部11が形成される。雄ネジ部11は、第1容器20のヘッド部222の内面に形成される雌ネジ部226と螺合可能である。接続部材10の他端側の内周面には、第4ネジ部としての雌ネジ部12が形成される。雌ネジ部12は、第2容器30の頂部に形成される雄ネジ部31と螺合可能である。これにより、接続部材10は、第2容器30の蓋部Cとの螺合に用いられる雄ネジ部31を利用して、第2容器30を接続できる。このため、例えば専用の容器に塗料組成物を移し替える等の手間を要しないため、施工時の作業性を向上できる。
【0019】
接続部材10は、例えば合成樹脂等によって一体に成形される。従って、第2容器30の頂部に形成される雄ネジ部の径の大きさに応じて、雌ネジ部12が形成される内周面の径の大きさを調整可能である。これにより、接続部材10は、径の大きさが異なる複数の第2容器30と接続可能である。例えば、既存の第2容器30の径の大きさに応じて、上記内周面の径の大きさが異なる複数の接続部材10を用意しておくことで、径の大きさが異なる複数の第2容器30を、第1容器20と接続できる。
【0020】
接続部材10を用いて、第1容器20と第2容器30とを接続する手順について、図2を用いて説明する。まず、第1容器20と接続部材10とを接続する手順について説明する。第1容器20のノズル224に対し、チューブ225を連結する。次に、接続部材10の一端側からチューブ225を接続部材10の内部に挿通させる。次に、ヘッド部222の開口部に接続部材10の一端側を挿入する。次に、接続部材10の雄ネジ部11と開口部の内面に形成された雌ネジ部226とを螺合させて固定する。この状態では、接続部材10の他端側からチューブ225が突出している。
【0021】
次に、接続部材10が接続された第1容器20に対して、第2容器30を接続する手順について説明する。まず、第2容器30の蓋部Cを取外す。次に、第2容器30の中に貯留された塗料組成物の中にチューブ225の先端部が没入するように、チューブ225を第2容器30の内部に挿入する。次に、接続部材10の雌ネジ部12と、第2容器30の雄ネジ部31とを螺合させて固定する。上記手順によって、図3に示すように、第1容器20と第2容器30とが、接続部材10によって接続される。このように、接続部材10を用いて第1容器20と第2容器30とを螺合によって接続することで、確実に第1容器20と第2容器30とを接続できる。従って、第2容器30の重量が重い場合や、塗料組成物の粘度が低い場合であっても、第2容器30の外れや塗料組成物の漏れを防止できる。
【0022】
<塗料組成物(C)>
塗料組成物(C)は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)と、熱可塑性アクリル系樹脂(B)と、を含む。塗料組成物(C)は、上記以外に、顔料と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)及び熱可塑性アクリル系樹脂(B)を溶解する溶剤と、を含んでいてもよい。
【0023】
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A))
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)は、特に限定されないが、ビニリデンフルオライド(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(以下、「VDF-HFP共重合体」と記載する)であることが好ましい。VDF-HFP共重合体としては、市販品を用いてもよい。VDF-HFP共重合体の市販品としては、いずれも商品名で、「KynarFlex 2751-00」(アルケマ社製)、「KynarFlex 2801-00」(アルケマ社製)、「KynarFlex 2821-00」(アルケマ社製)、「Kynar ADS2」(アルケマ社製)、「ソレフ11008」(日本ソルベイ株式会社製)、「ソレフ11010」(日本ソルベイ株式会社製)、「ソレフ21510」(日本ソルベイ株式会社製)等を挙げることができる。
【0024】
(熱可塑性アクリル系樹脂(B))
熱可塑性アクリル系樹脂(B)は、特に限定されないが、耐候性およびフッ化ビニリデン系樹脂(A)との相溶性の観点から、非重合性熱可塑アクリル樹脂であることが好ましい。非重合性熱可塑アクリル樹脂としては、市販品を用いてもよい。非重合性熱可塑アクリル樹脂の市販品としては、いずれも商品名で、「パラロイドA-11」、「パラロイドA-14」、「パラロイドA-21」、「パラロイドB-60」、「パラロイドB-64」、「パラロイドB-66」、「パラロイドB-72」、「パラロイドB-82」、(いずれもダウ・ケミカル社製)等を挙げることができる。
【0025】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)及び熱可塑性アクリル系樹脂(B)の合計質量に対する、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)の質量比率は30質量%以上である。上記(A)の質量比率が30%未満である場合、塗料組成物(C)により形成される皮膜の、金属サイディング材に対する密着性が低下する。
【0026】
(溶剤)
溶剤としては、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)及び熱可塑性アクリル系樹脂(B)を容易に溶解することができ、かつ得られる塗料組成物(C)や形成される皮膜の特性に悪影響を及ぼさない溶剤であれば、特に限定されるものではない。溶剤の例としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、フラン系溶剤、極性溶剤等が挙げられる。上記溶剤は、単独で使用してもよく、2種類以上の溶剤を任意に組み合わせて使用してもよい。なお、溶解性及び塗装作業性の観点から、溶剤としては、ケトン系溶剤及び極性溶剤が好ましい。
【0027】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン(ジメチルケトン)、MEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサノン、MIBK(メチルイソブチルケトン)等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。フラン系溶剤としては、例えば、THF(テロラヒドロフラン)等が挙げられる。極性溶剤としては、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等が挙げられる。
【0028】
(顔料)
顔料としては、特に限定されるものではなく、被補修対象の金属サイディング材の色彩等に応じて適宜選定した顔料を用いることができる。顔料の例としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができる。上記顔料は単独で使用してもよく、2種以上の顔料を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0029】
上記着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黄色酸化鉄、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系、コバルト・アルミニウム系、コバルト・アルミニウム・クロム系、ウルトラマリンブルー等)、酸化チタン等の無機顔料や、キナクリドン系、ジケトプロロピール系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アンスラピリミジン系、フタロシアニン系、スレン系、ジオキサジン系、アゾ系等の有機顔料が挙げられる。なお、耐候性の観点から、無機顔料を用いることが好ましい。
【0030】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0031】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び酸化鉄のうち少なくとも何れかで被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化鉄のうち少なくとも何れかで被覆された雲母、等が挙げられる。上記アルミニウム顔料としては、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料のうち、いずれも使用することができる。
【0032】
上記顔料は、直接塗料組成物(C)中に添加してもよく、顔料分散剤、顔料分散樹脂と混合して分散し、ペースト化してから塗料組成物(C)に配合してもよい。顔料分散剤、顔料分散樹脂、分散方法としては特に限定されず、公知の材料及び方法を使用することができる。
【0033】
(その他の成分)
塗料組成物(C)は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分としては、例えば、紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等)、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン類等)、増粘剤(非水ディスパージョン型アクリル増粘剤、重合体微粒子型増粘剤、ウレタン会合型増粘剤、ウレア型増粘剤、鉱物型増粘剤等)、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、防錆剤、キレート剤(アセチルアセトン等)、脱水剤、中和剤、可塑剤等の公知の塗料用添加剤が挙げられる。
【0034】
[塗料粘度]
塗料組成物(C)の塗料粘度は、8秒以上、15秒以下であることが好ましい。塗料粘度が8秒未満である場合、塗装面にタレが生じ均一な外観が仕上がらず、外観性が低下する。塗料粘度が15秒を超える場合、スプレーの噴霧状態が不良のため塗装面にダマが生じ、外観性が低下する。上記の観点から、10秒以上、12秒以下であることが好ましい。なお、塗料組成物(C)の塗料粘度は、フローカップ法によるものであり、イワタカップNK-2(アネスト岩田(株)製)を用いて測定される。具体的には、カップを塗料組成物(C)中に入れた後、カップを引き上げ、カップ下端の穴から塗料が流出し始めてから塗料の流出が切れるまでの流出時間として測定される。
【0035】
(金属サイディング材)
本実施形態に係る補修塗装方法の被補修対象である金属サイディング材は、特に限定されるものではなく、建物の外壁構造に用いられる公知の金属サイディング材を被補修対象とすることができる。
【0036】
<金属サイディング材の補修塗装方法>
本実施形態に係る金属サイディング材の補修塗装方法は、上記スプレー缶1を用いて、補修対象である金属サイディング材に対して塗料組成物をスプレー塗布するスプレー塗布工程を含む。これにより、従来行われていた筆塗りによる補修塗装方法と比較して、均一に金属サイディング材の補修箇所に塗料組成物を塗布することができるため、補修後の補修痕が目立ちにくく、好ましい仕上り外観を得ることができる。
【0037】
本実施形態に係るスプレー缶1を用いたスプレー塗布の方法について以下に説明する。スプレー缶1の使用者(以下、「使用者」と記載する)は、補修対象の金属サイディング材の色彩に応じた塗料組成物(C)を選定し、第2容器30に貯留し、第1容器20と第2容器30とを接続する。なお、第2容器30は、予め塗料組成物(C)が貯留された容器であってもよい。次に、使用者は、スプレー塗布工程において、スプレー缶1の噴射口223を補修箇所に向け、押込みボタン221を押し込む操作を行う。これにより、第2容器30に貯留された塗料組成物が、均一に補修箇所に対してスプレー塗布される。
【0038】
使用者が押込みボタン221を押し込む操作を行うと、噴射口223から、図3に矢印で示す方向に噴射剤が噴射される。これにより、噴射剤の噴射気流によって負圧が発生する。この負圧によって、チューブ225内に吸引力が発生し、第2容器30に貯留された塗料組成物がチューブ225を通して吸い上げられる。吸い上げられた塗料組成物は、ノズル224から吐出され、噴射口223から噴射される噴射剤に同伴して図3の矢印方向に向けて噴射される。これにより、塗料組成物は均一に金属サイディング材の補修箇所に対してスプレー塗布される。
【0039】
上記スプレー塗布工程における、金属サイディング材の被補修部位と、スプレー缶1の噴射口223との距離は、3cm以上、15cm以下であることが好ましく、5cm以上、10cm以下であることがより好ましい。これにより、補修塗装後の好ましい仕上り外観を得ることができる。
【0040】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。
【実施例
【0041】
以下、実施例に基づいて本開示の内容を更に詳細に説明する。本開示の内容は以下の実施例の記載に限定されない。
【0042】
(塗料組成物(C)の調製)
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)として、KynarFlex2801-00(アルケマ社製)を、熱可塑性アクリル系樹脂(B)として、パラロイドA-21(ダウ・ケミカル社製)をそれぞれ用いた。上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)と熱可塑性アクリル系樹脂(B)の合計質量に対する、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(A)の質量比率は55%とした。顔料としては白顔料(タイペーク CR-97、石原産業株式会社製)を用いた。添加剤として(フローレンAC-300、共栄社化学(株)製)を用いた。光沢調整剤として(テクポリマーEXM-8、積水化成品工業(株)製)を用いた。溶剤としてMEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサノン、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いて、塗料組成物の塗料粘度を、5秒、8秒、11秒、15秒、18秒にそれぞれ調整して、各実施例に係る塗料組成物(C)を調製した。塗料粘度は、イワタカップNK-2(アネスト岩田(株)製)を用いたフローカップ法にて測定した。詳細には、イワタカップNK-2を各塗料組成物中に入れた後、カップを引き上げ、カップ下端の穴から塗料組成物が流出し始めてから塗料組成物の流出が切れるまでの流出時間として塗料粘度を測定した。
【0043】
(塗料組成物(C)の補修塗装)
上記調製した塗料組成物(C)を第1容器及び第2容器を有するスプレー缶の第2容器にそれぞれ貯留し、スプレー缶のノズルと被補修対象である金属サイディング材の補修部位との距離をそれぞれ1cm、3cm、5cm、9cm、15cm、17cmとして、スプレー塗装による補修塗装を行った。
【0044】
[外観評価]
上記塗料組成物(C)により補修塗装が行われた金属サイディング材の外観を、以下の基準により目視で評価した。結果を表1及び表2に示す。
3:補修痕が目立ちにくく、非常に良好な外観が得られる
2:補修痕が目立ちにくく、良好な外観が得られる
1:補修痕が目立ちにくい
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2の結果から、各実施例に係る補修塗装方法で補修塗装を行った金属サイディング材は、補修塗装後の補修痕が目立ちにくい結果が確認された。また、塗料組成物の塗料粘度を8秒以上、15秒以下とし、被補修部位とスプレー缶のノズル間の距離を、3cm以上、15cm以下とすることで、補修塗装後の金属サイディング材の好ましい外観が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 スプレー缶、20 第1容器、30 第2容器
図1
図2
図3