(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/38 20100101AFI20241128BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241128BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L33/38
H01S5/042 612
H01L21/28 L
H01L21/28 301B
H01L21/88 T
H01L21/88 Z
H01L21/90 D
(21)【出願番号】P 2021085511
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】小野 研太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 晋
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-019201(JP,A)
【文献】特開2009-091601(JP,A)
【文献】特開2013-030634(JP,A)
【文献】特開平05-343410(JP,A)
【文献】特表2005-522587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/38
H01S 5/042
H01L 21/28
H01L 21/3205
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層を含む積層構造を有し、主面上に第1領域と該第1領域よりも低い第2領域とを有する基板と、
前記第1領域および前記第2領域を覆い、前記第1領域に設けられた第1貫通孔および前記第2領域に設けられた第2貫通孔を有する絶縁膜と、
前記第1領域に設けられ、前記第1貫通孔内を延びて前記基板まで達する第1導通部を含み、前記主面の法線方向に延びる第1厚膜電極と、
前記第2領域に設けられ、前記第2貫通孔内を延びて前記基板まで達する第2導通部を含み、前記主面の法線方向に延びる第2厚膜電極と
を備え、
前記第2領域における前記絶縁膜に前記第2貫通孔が複数設けられており、
前記第2厚膜電極が、前記複数の第2貫通孔のそれぞれの内部を延びて前記基板まで達する複数の前記第2導通部を含み、
前記基板の主面に直交する方向から見て、前記第2貫通孔の面積が前記第1貫通孔の面積より狭く、かつ、前記第2厚膜電極の高さが前記第1厚膜電極の高さより高い、半導体素子。
【請求項2】
前記基板の主面に直交する方向から見て、前記第2貫通孔の総面積が前記第1貫通孔の面積より狭い、請求項
1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記基板の主面に直交する方向における前記第2導通部の長さをdとし、前記基板の主面に対して平行な方向における前記第2導通部の長さをw2としたときに、2d>w2である、請求項1
または2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記基板の主面に対して平行な方向における前記第1貫通孔の長さをw1とし、前記基板の主面に直交する方向における前記第1厚膜電極の長さをT1としたときに、w1>2T1である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項5】
半導体層を含む積層構造を有し、主面上に第1領域と該第1領域よりも低い第2領域とを有する基板を準備する工程と、
前記第1領域および前記第2領域を覆い、前記第1領域に設けられた第1貫通孔および前記第2領域に設けられた第2貫通孔を有する絶縁膜を形成する工程と、
前記第1領域において前記主面の法線方向に延びるとともに前記第1貫通孔内を延びて前記基板まで達する第1導通部を含む第1厚膜電極と、前記第2領域において前記主面の法線方向に延びるとともに前記第2貫通孔内を延びて前記基板まで達する第2導通部を含む第2厚膜電極とを、同時に形成する工程と
を含み、
前記第2領域における前記絶縁膜に前記第2貫通孔が複数設けられており、
前記第2厚膜電極が、前記複数の第2貫通孔のそれぞれの内部を延びて前記基板まで達する複数の前記第2導通部を含み、
前記基板の主面に直交する方向から見て、前記第2貫通孔の面積が前記第1貫通孔の面積より狭く、かつ、前記第2厚膜電極の高さが前記第1厚膜電極の高さより高い、半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記基板の主面に直交する方向から見て、前記第2貫通孔の総面積が前記第1貫通孔の面積より狭い、請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GaN等の窒化物半導体を含む半導体素子を光源とするディスプレイの開発が進められている。半導体素子は、基板上に、窒化物半導体で構成されたn型層、活性層およびp型層を順次積層することで形成され得る。たとえば、半導体素子の一方の電極(p側電極)は最上層に位置するp型層の上に設けられ、他方の電極(n側電極)はエッチング除去によりp型層および活性層から部分的に露出させたn型層の上に設けられる。
【0003】
上記エッチング除去の結果として、基板上におけるp側電極が形成される領域とn側電極が形成される領域との間には段部が形成され、かつ、p側電極が形成される領域の高さ位置よりもn側電極が形成される領域の高さ位置が低くなる。
【0004】
下記特許文献1には、上記段部を有する半導体素子を平坦な実装基板上に搭載するために、p側電極上に設ける半田膜の厚さとn側電極上に設ける半田膜の厚さとを変える技術(すなわち、n側電極上に設ける半田膜の厚さをより厚くする技術)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術に係る半導体素子においては、半田膜を高い寸法精度で形成することが難しく、厚さの異なる半田膜を形成するのは容易ではなかった。
【0007】
そこで発明者らは、半田膜の厚さを異ならせる代わりに、p側電極およびn側電極を厚膜化して電極自体の高さを異ならせることについて研究を重ねた。ただし、厚膜電極であっても、別々に形成する場合には同じ製造プロセスを複数回繰り返す必要があるため、やはり容易には作製することができない。
【0008】
本発明の一側面は、高さの異なる厚膜電極を容易に形成することができる半導体素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る半導体素子は、半導体層を含む積層構造を有し、主面上に第1領域と該第1領域よりも低い第2領域とを有する基板と、第1領域および第2領域を覆い、第1領域に設けられた第1貫通孔および第2領域に設けられた第2貫通孔を有する絶縁膜と、第1領域に設けられ、第1貫通孔内を延びて基板まで達する第1導通部を含み、主面の法線方向に延びる第1厚膜電極と、第2領域に設けられ、第2貫通孔内を延びて基板まで達する第2導通部を含み、主面の法線方向に延びる第2厚膜電極とを備え、基板の主面に直交する方向から見て、第2貫通孔の面積が第1貫通孔の面積より狭く、かつ、第2厚膜電極の高さが第1厚膜電極の高さより高い。
【0010】
上記半導体素子においては、第1厚膜電極より高い第2厚膜電極を第1厚膜電極と同時に形成することができるため、第1厚膜電極および第2厚膜電極を少ないプロセスで形成することができる。
【0011】
他の側面に係る半導体素子は、基板の主面に直交する方向における第2導通部の長さをdとし、基板の主面に対して平行な方向における第2導通部の長さをw2としたときに、2d>w2である。
【0012】
他の側面に係る半導体素子は、基板の主面に対して平行な方向における第1貫通孔の長さをw1とし、基板の主面に直交する方向における第1厚膜電極の長さをT1としたときに、w1>2T1である。
【0013】
他の側面に係る半導体素子は、第2領域における絶縁膜に第2貫通孔が複数設けられており、第2厚膜電極が、複数の第2貫通孔のそれぞれの内部を延びて基板まで達する複数の第2導通部を含む。
【0014】
他の側面に係る半導体素子は、基板の主面に直交する方向から見て、第2貫通孔の総面積が第1貫通孔の面積より狭い。
【0015】
本発明の一側面に係る半導体素子の製造方法は、半導体層を含む積層構造を有し、主面上に第1領域と該第1領域よりも低い第2領域とを有する基板を準備する工程と、第1領域および第2領域を覆い、第1領域に設けられた第1貫通孔および第2領域に設けられた第2貫通孔を有する絶縁膜を形成する工程と、第1領域において主面の法線方向に延びるとともに第1貫通孔内を延びて基板まで達する第1導通部を含む第1厚膜電極と、第2領域において主面の法線方向に延びるとともに第2貫通孔内を延びて基板まで達する第2導通部を含む第2厚膜電極とを、同時に形成する工程とを含み、基板の主面に直交する方向から見て、第2貫通孔の面積が第1貫通孔の面積より狭く、かつ、第2厚膜電極の高さが第1厚膜電極の高さより高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の種々の側面によれば、高さの異なる厚膜電極を容易に形成することができる半導体素子およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る半導体素子を示す概略断面図である。
【
図3】
図1の半導体素子を製造する際の各工程を示した図である。
【
図4】
図1の半導体素子を製造する際の各工程を示した図である。
【
図5】
図1の半導体素子を製造する際の各工程を示した図である。
【
図6】
図1の半導体素子を製造する際の各工程を示した図である。
【
図7】従来技術に係る半導体素子を製造する際の各工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0019】
図1および
図2を参照して、実施形態に係る半導体素子の構成について説明する。
図1に示すように、実施形態に係る半導体素子1は、基板10、絶縁膜20および一対の電極30、40を備えて構成されている。半導体素子1は、たとえばGaN、AlGaN、GaAs、Si等の半導体を含む素子であり、たとえばLED素子または半導体レーザ素子である。
【0020】
基板10は、半導体層を含む積層構造を有する。基板10は、主面10aを有し、主面10aは第1領域11および第2領域12を有する。第1領域11と第2領域12とは、主面10aに対して直交する方向に関して異なる高さ位置を有する。具体的には、第2領域12の高さ位置H2が第1領域11の高さ位置H1より低くなっている。本実施形態では、第1領域11および第2領域12はいずれも平坦であり、隣り合う第1領域11と第2領域12との間には段部14が形成されている。段部14は、第2領域12の基板10を選択的にエッチング除去することにより形成することができる。基板10において、第1領域11における主面10aはp型半導体層15で構成されており、第1領域11における主面10aはn型半導体層16で構成されている。
【0021】
絶縁膜20は、基板10の主面10aを全体的に覆っており、第1領域11、第2領域12および段部14を一体的に覆っている。絶縁膜20は、基板10の主面10aを不活化する膜(いわゆるパッシベーション膜)である。絶縁膜20は、Si、Al、Zr、Mg、Ta、TiおよびYの少なくとも1種類の材料を含む酸化物もしくは窒化物、または、樹脂によって構成される。絶縁膜20は、主面10aの第1領域11および第2領域12において略均一な厚さtを有する。
【0022】
主面10aの第1領域11を覆う部分の絶縁膜20には貫通孔21(第1貫通孔)が設けられている。本実施形態において、貫通孔21は、主面10aに対して直交する方向から見て、直径D1の円形状を呈する。主面10aの第1領域11には、絶縁膜20の貫通孔21が設けられた位置に、主面10aに対して直交する方向から見て貫通孔21と同一の形状および寸法を有する凹部17が設けられている。凹部17は絶縁膜20の貫通孔21と連通されている。
【0023】
主面10aの第2領域12を覆う部分の絶縁膜20には複数の貫通孔22(第2貫通孔)が設けられている。本実施形態では、3行×3列に整列された9つの貫通孔22が設けられている。貫通孔22の数は、適宜増減することができ、たとえば1つであってもよい。本実施形態において、各貫通孔22は、主面10aに対して直交する方向から見て、直径D2の円形状を呈する。直径D2は、貫通孔21の直径D1より短くなるように設計されている(D2<D1)。主面10aの第2領域12には、絶縁膜20の各貫通孔22が設けられた位置に、主面10aに対して直交する方向から見て貫通孔22と同一の形状および寸法をそれぞれ有する複数の凹部18が設けられている。複数の凹部18はそれぞれ絶縁膜20の貫通孔22と連通されている。
【0024】
一対の電極30、40は、第1領域11に設けられた第1電極30(第1厚膜電極)と、第2領域12に設けられた第2電極40(第2厚膜電極)とによって構成されている。一対の電極30、40はいずれも金属材料で構成されており、本実施形態ではCuで構成されている。
【0025】
第1電極30は、基板10の主面10aの法線方向に延びる厚膜電極である。第1電極30は、本体部31と導通部32(第1導通部)とを含む。本体部31は、絶縁膜20の上側に位置する部分である。本実施形態において、本体部31は、
図2(a)に示すように、主面10aに対して直交する方向から見て正方形状を呈する。導通部32は、本体部31から基板10側に延びる部分であり、絶縁膜20の貫通孔21内を延びて基板10まで達している。本実施形態では、導通部32は、絶縁膜20の貫通孔21と基板10の凹部17とを完全に充たすように設けられている。そのため、本実施形態では、導通部32は直径D1の円柱状を呈する。本実施形態では、第1電極30の本体部31は隆起部33をさらに備える。隆起部33は、本体部31の上面30aから隆起する部分であり、絶縁膜20の貫通孔21の縁に対応する環状領域に形成されている。
【0026】
第2電極40は、第1電極30同様、基板10の主面10aの法線方向に延びる厚膜電極である。第2電極40は、本体部41と、複数の導通部42(第2導通部)とを含む。本体部41は、絶縁膜20の上側に位置する部分である。本実施形態において、本体部41は、
図2(b)に示すように、主面10aに対して直交する方向から見て正方形状を呈する。第2電極40の本体部41の平面寸法は、第1電極30の本体部31の平面寸法と同じになるように設計されている。複数の導通部42の数は、絶縁膜20の貫通孔22の数と同じであり、本実施形態では9つである。各導通部42は、本体部41から基板10側に延びる部分であり、絶縁膜20の各貫通孔22内を延びて基板10まで達している。本実施形態では、各導通部42は、絶縁膜20の各貫通孔22と基板10の各凹部18とを完全に充たすように設けられている。そのため、本実施形態では、各導通部32は直径D2の円柱状を呈する。また、9つの導通部42は、貫通孔22と同じように3行×3列に整列されている。
【0027】
第1電極30および第2電極40のそれぞれの高さは、本体部31、41の上面30a、40aから導通部32、42の下端までの長さとして規定することができる。半導体素子1においては、第2電極40の高さT2が第1電極30の高さT1より高くなっている。本実施形態において、第1電極30の高さT1と第2電極40の高さT2との高低差(T2-T1)は、基板10の段部14の段差sと略同じである。そのため、第1電極30の上面30aの高さ位置h1と、第2電極40の上面40aの高さ位置h2とは略一致している。第1電極30の上面30aの高さ位置h1と、第2電極40の上面40aの高さ位置h2との差は1μm以下であることが好ましい。
【0028】
続いて、
図3~6を参照しつつ、上述した半導体素子1を製造する手順について説明する。
【0029】
半導体素子1を製造する際には、まず、
図3(a)に示すように基板10を準備する。基板10の段部14は、第2領域12のみを選択的にエッチング除去することにより形成される。基板10の主面10aはパッシベーション処理されて、主面10aを全体的に覆う絶縁膜20が設けられる。
【0030】
次に、
図3(b)に示すように、絶縁膜20上に厚膜レジスト50を設ける。厚膜レジスト50は、貫通孔21、22が形成される領域が除かれるようにパターニングされている。厚膜レジスト50には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはアルキド樹脂等を用いることができる。
【0031】
続いて、
図3(c)に示すように、厚膜レジスト50を用いてエッチング処理をおこなう。エッチング処理により、絶縁膜20に貫通孔21、22が形成されるとともに基板10に凹部17、18が形成される。そして、
図4(a)に示すように、厚膜レジスト50を剥離する。
【0032】
次に、
図4(b)に示すように、電極膜51を形成する。本実施形態では電極膜51はCuで構成されている。電極膜51は、基板10および絶縁膜20を全体的に覆い、基板10と絶縁膜20とを一体的に覆う。より詳しくは、電極膜51は、絶縁膜20の上面、貫通孔21、22の側面、凹部17、18の底面および側面を一体的に覆う。
【0033】
続いて、
図4(c)に示すように、電極膜51で覆われた絶縁膜20上に、厚膜レジスト52を設ける。厚膜レジスト52には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはアルキド樹脂等を用いることができる。厚膜レジスト52は、第1電極30および第2電極40の本体部31、41が形成される領域が除かれるようにパターニングされている。
【0034】
そして、
図5(a)に示すように、厚膜レジスト52を用いてめっき処理をおこなう。具体的には、電極膜51をシードとするCuの電解めっきをおこなう。このとき、第1領域11においては、貫通孔21内や凹部17内からCuの析出が始まる。一方、第2領域12においては、主に絶縁膜20の上面である貫通孔22の縁からCuの析出が始まる。第1領域11においては、Cuめっきは下側から上側に向かって成長が進んでいき、導通部32、本体部31の順に形成される。第2領域12においては、Cuめっきは析出開始当初から貫通孔22の縁から下側および上側の両方に向かって成長が進んでいき、比較的早い段階で本体部41が形成される。
【0035】
めっき処理が進行していくと、
図5(b)に示すように、上面30a、40aの高さ位置h1、h2が略一致する第1電極30および第2電極40が同時に完成する。なお、第1電極30と第2電極40とは、めっき処理が終わった時点で高さ位置が揃っているため、高さ位置を揃えるための研磨処理をおこなう必要はない。
【0036】
その後、
図5(c)に示すように、厚膜レジスト52を剥離する。さらに、
図6(a)に示すように、第1領域11に設けられた第1電極30を全体的に覆う厚膜レジスト54、および、第2領域12に設けられた第2電極40を全体的に覆う厚膜レジスト55を設ける。厚膜レジスト54、55には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはアルキド樹脂等を用いることができる。このとき基板10の段部14は、厚膜レジスト54、55から露出する。そして、
図6(b)に示すように、厚膜レジスト54、44を用いてエッチング処理をおこなう。エッチング処理により、基板10の段部14上に設けられた電極膜51が除去されて、第1電極30と第2電極40とが電気的に分離される。最後に、厚膜レジスト54、55を剥離することで、上述した半導体素子1が完成する。
【0037】
上述したとおり、半導体素子1においては、第1電極30より高い第2電極40を第1電極30が形成されており、第1電極30および第2電極40の上面30a、40aの高さ位置h1、h2が略一致している。
【0038】
ここで、
図7(a)に示すように、第1領域11と第2領域とで同じ寸法の貫通孔が絶縁膜20に設けられている場合には、段部14の段差sの分だけ、第1電極30および第2電極40の上面30a、40aに高低差が生じるため、
図7(b)に示すように、上面30a、40aの高さ位置h1、h2が大幅に異なる。
【0039】
半導体素子1においては、上面30a、40aの高さ位置h1、h2が略一致する第1電極30と第2電極40とを同時に形成することができるため、第1電極30および第2電極40を備える半導体素子1をより少ないプロセスで形成することができる。
【0040】
また、半導体素子1においては、第2電極40の複数の導通部42により、第2電極40と絶縁膜20および基板10との間の接合面積の拡大が図られているため、絶縁膜20および基板10に対する第2電極40の密着性の向上が図られている。それにより、第2電極40が絶縁膜20および基板10から脱離しにくくなり、半導体素子1の信頼性向上が図られている。絶縁膜20に貫通孔22が複数設けられている場合、貫通孔22の総面積(本実施形態ではπD22/4×9)が貫通孔21の面積(本実施形態ではπD12/4)より狭くなるように設計され得る。複数の貫通孔22の総面積は、貫通孔21の面積と同じであってもよく、貫通孔21の面積より広くてもよい。
【0041】
さらに、半導体素子1は、基板10の主面10aに直交する方向における導通部42の長さ(すなわち、貫通孔22の深さと凹部18の深さの和)をdとし、基板10の主面10aに対して平行な方向における導通部42の長さ(すなわち、D2)をw2としたときに、2d>w2の関係が満たされるように設計され得る。この場合、貫通孔22の側面にCuめっきが析出しやすくなるため、上面30a、40aの高さ位置h1、h2が略一致する第1電極30および第2電極40が同時に完成されやすくなる。その上、導通部42が長尺状になり、絶縁膜20および基板10の深くまで入り込むため、絶縁膜20および基板10に対する第2電極40の密着性のさらなる向上が図られる。
【0042】
また、半導体素子1は、基板10の主面10aに対して平行な方向における貫通孔21の長さをw1とし、基板10の主面10aに直交する方向における第1電極30の長さ(すなわち、高さ)をT1としたときに、w1>2T1の関係が満たされるように設計され得る。この場合、第1電極30の高さ方向におけるめっき成長の速度が比較的遅くなり、上面30a、40aの高さ位置h1、h2が略一致する第1電極30および第2電極40が同時に完成されやすくなる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
たとえば、電極の形成は、電解めっきに限らず、無電解めっきであってもよく、その他の成膜方法(たとえば、スパッタ成膜)等であってもよい。また、絶縁膜に設けた貫通孔の断面形状は、円形に限らず、四角形等の多角形状や楕円形状であってもよい。電極の本体部の形状は、基板の主面に対して直交する方向から見て、正方形状に限らず、円形状や多角形状、楕円形状であってよい。さらに、導通部は、絶縁膜の貫通孔と基板の凹部とを完全に充たす態様に限らず、部分的に充たす態様であってもよい。この場合、絶縁膜の貫通孔および基板の凹部によって画成される空間内には、微小な空隙が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…半導体素子、10…基板、11…第1領域、12…第2領域、20…絶縁膜、21、22…貫通孔、30…第1電極、32…導通部、40…第2電極、42…導通部