(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】パッド組付システム、複合パッドの製造ライン及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B68G 7/04 20060101AFI20241128BHJP
G06T 7/33 20170101ALI20241128BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20241128BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241128BHJP
B60N 2/90 20180101ALN20241128BHJP
【FI】
B68G7/04
G06T7/33
B68G7/05 C
B32B27/00 C
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2021093243
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】田島 智宣
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 拓也
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-250190(JP,A)
【文献】特開平10-045068(JP,A)
【文献】特開2000-318719(JP,A)
【文献】特開2001-282125(JP,A)
【文献】特開平10-233944(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118019(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0072666(KR,A)
【文献】特開2018-129030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0256397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/04
G06T 7/33
B68G 7/05
B32B 27/00
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド組付システムであって、
前記第1パッドが、一枚毎、配置される第1撮影部と、
前記第2パッドが、一枚毎、配置される第2撮影部と、
前記第1撮影部上の前記第1パッドの画像である第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの画像である第2画像とを撮像して、現実の空間の前記第1パッドと前記第2パッドに対応する仮想空間内の第1パッドモデルと第2パッドモデルとを生成するモデル生成部と、
前記仮想空間で、前記第1撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第1基準モデルと、前記仮想空間で前記第2撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第2基準モデルと、
前記第1基準モデルを1対の第1分割基準モデルに2等分する第1分割線と、前記第2基準モデルを1対の第2分割基準モデルに2等分する第2分割線と、を記憶している基準パッドデータ記憶部と、
前記仮想空間で、前記第1パッドモデルと前記第1基準モデルとの差分面積である第1全体差分面積と、前記第2パッドモデルと前記第2基準モデルとの差分面積である第2全体差分面積とを演算する全体差分面積演算部と、
前記第1全体差分面積を最小にするように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1全体調整データと、前記第2全体差分面積を最小にするように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2全体調整データとを生成する全体補正演算部と、
前記1対の第1分割基準モデルのそれぞれと前記第1パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積と、前記1対の第2分割基準モデルのそれぞれと前記第2パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第2分割差分面積とを演算する分割差分面積演算部と、
前記1対の第1分割差分面積を一致させるように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1分割調整データと、前記1対の第2分割差分面積を一致させるように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2分割調整データとを生成する分割補正演算部と、
前記第1全体調整データと前記第2全体調整データと前記第1分割調整データと前記第2分割調整データとに基づいて、前記現実の空間で、前記第1パッド及び前記第2パッドの各前記正規位置に対するずれがキャンセルされるように移動対象パッドを搬送して、前記第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる組付装置と、を備えるパッド重ね合わせシステム。
【請求項2】
第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド重ね合わせシステムであって、
前記第1パッドが、一枚毎、配置される第1撮影部と、
前記第2パッドが、一枚毎、配置される第2撮影部と、
前記第1撮影部上の前記第1パッドの画像である第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの画像である第2画像とを撮像する撮像装置と、
前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方である移動対象パッドを移動して前記第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる組付装置と、
前記第1パッドに含まれる第1特徴部の前記第1撮影部上における位置及び向きと、前記第2パッドに含まれる第2特徴部の前記第2撮影部上における位置及び向きとを、前記第1画像及び前記第2画像から演算する画像解析部と、
前記第1パッドと前記第2パッドとが重ね合わされて前記第1特徴部と前記第2特徴部とが予め定められた正規の位置関係となるように、前記画像解析部の演算結果に基づいて前記組付装置を制御する制御部と、を備えるパッド重ね合わせシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパッド重ね合わせシステムを有し、重ねて貼り合わされた前記第1パッドと前記第2パッドとを含んだ複合パッドを製造する製造ラインであって、
前記第1パッドが前記第1撮影部に配置される前に前記第1撮影部上で前記第1パッドの上面となる面に接着材を塗布する塗布装置を備え、
前記組付装置は、前記第2パッドのみを前記移動対象
パッドとして移動して前記第1パッドの上に重ね合わせる複合パッドの製造ライン。
【請求項4】
前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方を搬送するベルトコンベアを備えると共に、前記第1撮影部及び前記第2撮影部の少なくとも一方は、前記ベルトコンベアの一部として備えられ、
前記ベルトコンベアのうち前記第1撮影部又は前記第2撮影部となる部分は、透光性を有するベルトと、前記ベルトを下方から照射するバックライトとを有する請求項3に記載の複合パッドの製造ライン。
【請求項5】
前記第1パッドは、ウレタンフォームであり、
前記第2パッドは、表皮材である請求項3又は4に記載の複合パッドの製造ライン。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1の請求項に記載の複合パッドの製造ラインを使用して複合パッドを製造する複合パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド組付システム及び、パッド同士を重ね合わせて複合パッドを製造する複合パッドの製造ライン及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッド同士の重ね合わせ処理の一例として、例えば、車両用のシートの表皮を複数に分割してなる表皮用パッドの裏面にウレタンパッドを手作業で重ね合わせる処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-309048号公報(
図1~
図3,段落[0008])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッドは機械部品に比べて曲げ変形し易く、パッド同士の相互の位置合わせが困難であるため、パッド同士の相互の位置がばらつかないように両パッドを重ね合わせる作業には熟練を要する。そこで、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の第1の態様は、第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド組付システムであって、前記第1パッドが、一枚毎、配置される第1撮影部と、前記第2パッドが、一枚毎、配置される第2撮影部と、前記第1撮影部上の前記第1パッドの画像である第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの画像である第2画像とを撮像して、現実の空間の前記第1パッドと前記第2パッドに対応する仮想空間内の第1パッドモデルと第2パッドモデルとを生成するモデル生成部と、前記仮想空間で、前記第1撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第1基準モデルと、前記仮想空間で前記第2撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第2基準モデルと、前記第1基準モデルを1対の第1分割基準モデルに2等分する第1分割線と、前記第2基準モデルを1対の第2分割基準モデルに2等分する第2分割線と、を記憶している基準パッドデータ記憶部と、前記仮想空間で、前記第1パッドモデルと前記第1基準モデルとの差分面積である第1全体差分面積と、前記第2パッドモデルと前記第2基準モデルとの差分面積である第2全体差分面積とを演算する全体差分面積演算部と、前記第1全体差分面積を最小にするように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1全体調整データと、前記第2全体差分面積を最小にするように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2全体調整データとを生成する全体補正演算部と、前記1対の第1分割基準モデルのそれぞれと前記第1パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積と、前記1対の第2分割基準モデルのそれぞれと前記第2パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第2分割差分面積とを演算する分割差分面積演算部と、前記1対の第1分割差分面積を一致させるように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1分割調整データと、前記1対の第2分割差分面積を一致させるように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2分割調整データとを生成する分割補正演算部と、前記第1全体調整データと前記第2全体調整データと前記第1分割調整データと前記第2分割調整データとに基づいて、前記現実の空間で、前記第1パッド及び前記第2パッドの各前記正規位置に対するずれがキャンセルされるように移動対象パッドを搬送して、前記第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる組付装置と、を備えるパッド重ね合わせシステムである。
【発明の効果】
【0006】
本開示の第1の態様のパッド組付システムでは、第1撮影部上の第1パッドと、第2撮影部上の第2パッドとを撮像して仮想空間内の第1パッドモデルと第2パッドモデルとを生成する。そして、第1パッドモデルに対して第1撮影部上の正規位置に配置された第1基準モデルとの差分面積である第1全体差分面積と、第1基準モデルを2等分した1対の第1分割基準モデルのそれぞれと第1パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積とを演算し、第2パッドモデルに対しても同様に、第2全体差分面積と1対の第2分割差分面積とを演算する。そして、第1パッドモデルに関して、第1全体差分面積が最小となるように第1パッドモデルを第1基準モデルに対して移動するための第1全体調整データと、1対の第1分割差分面積を一致させるように第1パッドモデルを第1基準モデルに対して移動するための第1分割調整データとを演算し、第2パッドモデルに関して同様に、第2全体調整データと第2分割調整データとを演算する。そして、それら調整データに基づいて、現実の空間で、第1パッド及び第2パッドの各正規位置に対するずれがキャンセルされるように移動対象パッドを組付装置にて移動し、第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる。このように、本開示の第1の態様のパッド組付システムによれば、第1パッドと第2パッドとの重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る(A)複合パッド、(B)表皮パッド、(C)クッションパッドの各平面図
【
図6】パッド組付システムのデータ処理に係るブロック図
【
図7】第1基準モデル及び第2基準モデルと第1パッドモデル及び第2パッドモデルの概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図7を参照して複合パッド93の製造ライン10(
図3参照。以下、単に「製造ライン10」という)の一実施形態について説明する。
図1(A)には、本実施形態の製造ライン10にて製造される複合パッド93の一例が示されている。
【0009】
複合パッド93は、例えば、車両用シート99の表皮98を複数分割したものでありシート状の表皮材である第2パッド92の裏面に、シート状の発泡体(ウレタンフォーム)である第1パッド91を貼り合わせた構造をなしている。また、複合パッド93には、車両用シート99における配置によって形状が異なる複数種類がある。本実施形態の製造ライン10では、それら複数種類の複合パッド93が製造され、後工程で、それら複数種類の複合パッド93がパッチワークのように繋ぎ合わされて、
図2に示した車両用シート99の表皮98になる。
【0010】
図1(A)に例示された複合パッド93に含まれる第1パッド91は、
図1(C)に単体で示され、同じく複合パッド93に含まれる第2パッド92は、
図1(B)に単体で示されている。第1パッド91は、例えば、軟質ウレタンフォームシートから打ち抜かれて製造され、第2パッド92は、例えば、人工皮革、天然皮革、織布等のシートから打ち抜かれて製造される。また、
図1(B)に示すように、第2パッド92の外周の複数位置には、複数の切り込み92Aが形成されている。それら複数の切り込み92Aは、第2パッド92の輪郭から第1幅W1までの範囲に収まるように形成されている。また、
図1(A)に示すように、第1パッド91の輪郭は、第1幅W1より幅広の第2幅W2だけ第2パッド92の輪郭を全体的に小さくした形状をなしている。そして、第2パッド92の輪郭から第1幅W1だけ第2パッド92の輪郭を全体的に小さくした基準線94Lより内側を規定領域94として、第1パッド91の全体が規定領域94に収まった状態、換言すれば、第1パッド91が規定領域94からはみ出さない状態(これを以下、「正規貼り合わせ状態」という)に貼り合わされる。
【0011】
なお、第1パッド91及び第2パッド92の材質は上記のものに限定されない。また、複合パッド93は、第1パッド91と第2パッド92との2つのパッドのみで形成されていなくてもよく、3つ以上のパッドからなっていてもよい。
【0012】
図3に示すように、本実施形態の製造ライン10には、準備工程部100と、貼合工程部101と、仕上工程部102とがベルトコンベア12に沿って備えられている。準備工程部100では、第1パッド91と第2パッド92とがベルトコンベア12上に載置される。その際、例えば、第1パッド91は、貼り合わせ面に接着剤を塗布されかつその貼り合わせ面を上に向けた状態にしてベルトコンベア12の幅方向の一方寄り位置に載置される。一方、第2パッド92は、例えば、貼り合わせ面を下に向けた状態にしてベルトコンベア12の幅方向の他方寄り位置に載置される。そして、第1パッド91と第2パッド92とが横並びされた状態でベルトコンベア12によって搬送される。
【0013】
なお、例えば、接着剤を塗布された第1パッド91の貼り合わせ面を下に向けた状態にしてベルトコンベア12に載置してもよく、第2パッド92の貼り合わせ面を上に向けた状態にしてベルトコンベア12に載置してもよい(例えば、接着剤としてホットメルト接着剤等を採用し、塗布後べとつかない状態となっていれば、上下どちらに載置しても可能である。)。さらに、接着剤を塗布する側を第2パッド92とし、接着剤の未塗布のものを第1パッド91としてベルトコンベア12に載置してもよい。
【0014】
貼合工程部101には、ベルトコンベア12の近傍に、撮像装置16と組付装置20とを含んだパッド組付システム80が備えられている。組付装置20は、広く普及している産業用ロボットであって、その先端部には、例えば、図示しない吸引ツールが着脱可能に取り付けられている。吸引ツールは、例えば、支持フレームから複数の吸引パイプが垂下した構造をなしている。各吸引パイプは、蛇腹構造をなしかつ下端部がテーパー状に拡径した吸引部になっている。そして、組付装置20が、後に詳説するようにベルトコンベア12上の第2パッド92を吸引して持ち上げて移動し、ベルトコンベア12上の第1パッド91に対して貼り合わせる。
【0015】
なお、本実施形態では、第1パッド91と第2パッド92とが同一のベルトコンベア12にて搬送されるようになっているが、そうでなくてもよく、例えば、第1パッド91用のベルトコンベアの途中部分に第2パッド92用のベルトコンベアが直交し、第1パッド91用の撮像装置16と第2パッド92用の撮像装置16とが別々に設けられ、第2パッド92を90度回転させて第1パッド91に重ね合わせる構造になっていてもよい。
【0016】
撮像装置16は、ベルトコンベア12上の第1パッド91及び第2パッド92の画像を撮像する。具体的には、貼合工程部101に備えたベルトコンベア12のうち幅方向の一方寄りの第1パッド91が配置される部分が、第1パッド91用の撮影部15(以下、「第1撮影部15」という)をなし、ベルトコンベア12の幅方向の他方寄りの第2パッド92が配置される部分が、第2パッド92用の撮影部45(以下、「第2撮影部45」という)をなしている。そして、撮像装置16が、ベルトコンベア12が停止した状態で、第1撮影部15上の第1パッド91と第2撮影部45上の第2パッド92とが含まれる画像G(
図5参照)が撮像される。
【0017】
図4には、製造ライン10の制御部10Aの構成が概念的に示されている。制御部10Aは、製造ライン10全体を統括して制御する第1コントローラ81に、組付装置20を制御する第2コントローラ82と、ベルトコンベア12を駆動する駆動制御部84等を接続してなる。また、第2コントローラ82には、撮像装置16が接続された撮像制御部85が含まれている。そして、本実施形態のパッド組付システム80は、組付装置20と撮像装置16と第2コントローラ82とを含んでなる。
【0018】
第2コントローラ82には、演算処理部82Aと記憶部82Bとが備えられると共に、撮像制御部85にも演算処理部85Aと記憶部85Bとが備えられている。そして、各演算処理部82A,85Aが各記憶部82B,85Bに記憶された図示しない処理プログラムを実行することで、第2コントローラ82(撮像制御部85を含む)が
図6の各ブロックで示したモデル生成部85C、全体差分面積演算部85D、全体補正演算部85E,分割差分面積演算部85F、分割補正演算部85G、組付制御部85H等として機能する。そして、第2コントローラ82が、撮像装置16にて撮像された
図5に示すような画像Gに基づいて、第1パッド91及び第2パッド92の第1撮影部15及び第2撮影部45に対する配置のばらつきをキャンセルするように組付装置20を動作させるための移動制御データを生成する。以下、
図6の各制御ブロックについて説明する。
【0019】
撮像装置16にて撮像された画像Gの画像データは記憶部85Bに一次的に記憶される。モデル生成部85Cは、記憶部85Bから画像データを取得し、例えば
図5に示すように画像Gを、第1パッド91全体が含まれる第1画像G1と、第2パッド92の全体が含まれる第2画像G2とに分割する。そして、第1画像G1から第1パッド91の形状及び配置を特定するための第1パッドデータを生成すると共に、第2画像G2から第2パッド92の形状及び配置を特定するための第2パッドデータを生成する。
【0020】
具体的には、モデル生成部85Cは、第1画像G1において第1パッド91が映っている暗部領域88Aとその周囲の明部領域88Bとの明暗を利用して、第1画像G1を構成する複数のピクセルのうち暗部領域88Aの輪郭線GL1上に位置する全てのピクセルのアドレス(即ち、第1画像G1における縦方向及び横方向の位置)を読み込んで第1パッドデータを生成し、それを記憶部85Bに記憶する。また、それと同様に、第2パッドデータも生成して、それを記憶部85Bに記憶する。
【0021】
全体差分面積演算部85Dは、上述した第1パッドデータ及び第2パッドデータに基づいて、
図7に示すように、演算上の仮想空間に第1パッド91と第2パッド92とをそれぞれフレーム化した第1パッドモデル91Mと第2パッドモデル92Mとを取り込む。
【0022】
また、記憶部85Bには、
図7に示すように第1パッド91が、現実の空間で第1撮影部15上に予め設定された正規位置に配置された場合の第1基準モデル91Kと、第2パッド92が、現実の空間で第2撮影部45上に予め設定された正規位置に配置された場合の第2基準モデル92Kとが記憶されている。
【0023】
本実施形態では、第1パッドモデル91Mが第1基準モデル91Kに一致しかつ第2パッドモデル92Mが第2基準モデル92Kに一致していれば、組付装置20が予め定められた一定の基本移動を行って第1パッド91と第2パッド92とを組み付けたときに前述の正規貼り合わせ状態になるように、第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kの大きさが設定されている。
【0024】
ところで、ウレタンフォームシートから構成される第1パッド91及び人工皮革、天然皮革、織布等のシートから構成される第2パッド92は、時間経過や、温度及び湿度変化によって伸縮する。また、その伸縮は、例えば、伸縮する方向が一定でなかったり、縦方向と横方向で伸縮し易さに差がある等、不規則な変形となる。このため、第1パッドモデル91M及び第2パッドモデル92Mの両方が、第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kに収まっていたとしても、第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kの中央に第1パッドモデル91M及び第2パッドモデル92Mが収まってない場合には、第1パッド91と第2パッド92との組み付け精度が低くなる。そこで、本実施形態では、第1パッド91及び第2パッド92の変形に対応するために下記処理を以下のように行う。
【0025】
本実施形態では、まず、全体差分面積演算部85Dにて、第1パッドモデル91Mと第1基準モデル91Kとの差分面積である第1全体差分面積Xと、第2パッドモデル92Mと第2基準モデル92Kとの差分面積である第2全体差分面積Yとを演算する。ここで、本実施形態のパッド組付システム80では、
図7に強調して示すように、第1基準モデル91Kに第1パッドモデル91Mが必ず収まるように第1基準モデル91Kが第1パッドモデル91Mより大きく設定され、第2基準モデル92Kに関しても同様に第2基準モデル92Kに第2パッドモデル92Mが必ず収まるように第2基準モデル92Kが第2パッドモデル92Mより大きく設定されている。
【0026】
そして、全体補正演算部85Eは、第1全体差分面積Xを最小にするように第1パッドモデル91Mを第1基準モデル91Kに対して移動するための第1全体調整データと、第2全体差分面積Yを最小にするように第2パッドモデル92Mを第2基準モデル92Kに対して移動するための第2全体調整データとを生成する。ここで、第1全体調整データは、例えば、予め設定された複数の回転と複数の平行移動と組み合わせた複数の調整移動を第1パッドモデル91Mに対して行って、逐一、第1全体差分面積Xを演算し、その中から第1全体差分面積Xが最小になる調整移動から生成される。第2全体調整データに対しても同様である。
【0027】
具体的には、全体補正演算部85Eは、第1パッドモデル91Mを例えば、0°、+1°、-1°、+2°、-2°、+3°、-3°、・・・・のように複数種類の角度に回転させる調整用回転と、第1パッドモデル91Mを、その全周囲を複数分割(例えば、72等分)した複数方向のそれぞれに所定距離(例えば、3[mm])ずつ平行移動する調整用平行移動とを任意に組み合わせた調整移動を行う。そして、所謂、トライアンドエラー方式にて、第1全体差分面積Xが最小になる調整移動を選定し、その調整移動から第1全体調整データが生成される。第2全体調整データに対しても同様である。
【0028】
以上により、仮想空間において、第1基準モデル91Kの内側に第1パッドモデル91Mが収まった状態になると共に、第2基準モデル92Kの内側に第2パッドモデル92Mが収まった状態になる。
【0029】
次いで、分割差分面積演算部85Fにて第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kの中央に第1パッドモデル91M及び第2パッドモデル92Mが収まるように第1パッドモデル91M及び第2パッドモデル92Mの位置を調整する。具体的には、記憶部85Bには、第1基準モデル91Kを1対の第1分割基準モデル91K1,91K2に2等分する第1分割線91Cと、第2基準モデル92Kを1対の第2分割基準モデル92K1,92K2に2等分する第2分割線92Cとが記憶されていて、分割差分面積演算部85Fは、これらを用いて、1対の第1分割基準モデル91K1,91K2のそれぞれと第1パッドモデル91Mとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積X1,X2と、1対の第2分割基準モデル92K1,92K2のそれぞれと第2パッドモデル92Mとの重なっていない部分の面積である1対の第2分割差分面積Y1,Y2とを演算する。なお、第1分割線91C及び第2分割線92Cは、第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kの図心を通過する直線を任意に選んで設定することができる。
【0030】
そして、分割補正演算部85Gは、上述の1対の第1分割差分面積X1,X2を一致させるように第1パッドモデル91Mを第1基準モデル91Kに対して移動するための第1分割調整データと、上述の1対の第2分割差分面積Y1,Y2を一致させるように第2パッドモデル92Mを第2基準モデル92Kに対して移動するための第2分割調整データとを生成する。具体的には、分割補正演算部85Gは、全体補正演算部85Eが行った前述の調整移動より回転量及び移動量を細分化した調整移動を行って、1対の第1分割差分面積X1,X2を一致させることが可能な調整移動を第1分割調整データを生成し、1対の第2分割差分面積Y1,Y2を一致させることが可能な調整移動を第2分割調整データを生成する。
【0031】
なお、仮想空間での移動・回転は、仮想空間に現実の空間に対応させた座標を設けておき、前述のピクセルのアドレスに相当する第1パッドモデル91M等のフレーム上の点の座標を、公知な方法で、座標変換することで行うことができる。また、全体差分面積は、第1パッドモデル91Mと第1基準モデル91Kとの間に位置する点(ピクセル)の数で求めることができる。さらに、「差分面積の一致」とは、許容誤差範囲で上記点(ピクセル)の数が同じであることを意味する。
【0032】
本実施形態では、前述の取り、第1基準モデル91Kが第1パッドモデル91Mより大きく設定され、第2基準モデル92Kが第2パッドモデル92Mより大きく設定されている。しかし、例えば、第1基準モデル91Kが第1パッドモデル91Mに必ず収まるように第1基準モデル91Kが第1パッドモデル91Mより小さく設定され、第2基準モデル92Kに第2パッドモデル92Mが必ず収まるように第2基準モデル92Kが第2パッドモデル92Mより小さく設定されていてもよい。また、第1パッドモデル91M、第2パッドモデル92Mの伸縮により、第1基準モデル91Kが第1パッドモデル91Mより大きくも小さくもなり、第2基準モデル92Kが第2パッドモデル92Mより大きくも小さくもなり得るように第1基準モデル91K、第2基準モデル92Kを設定し、第1全体差分面積X及び第2全体差分面積Yの絶対値を最小にする第1全体調整データ及び第2全体調整データを演算するようにしてもよい。そして、第1全体差分面積X及び第2全体差分面積Yが正か又は負かに拘わらず、分割補正演算部85Gにて1対の第1分割差分面積X1,X2を一致させることが可能な調整移動を第1分割調整データと、1対の第2分割差分面積Y1,Y2を一致させることが可能な調整移動を第2分割調整データとを生成すればよい。
【0033】
組付制御部85Hは、上述の第1全体調整データ、第2全体調整データ、第2分割調整データ、第2分割調整データとに対応する調整移動と基本移動とに基づいて、現実の空間で、第1パッド91及び第2パッド92の各正規位置に対するずれがキャンセルされるように第2パッド92を組付装置20により移動させるための移動制御データを生成する。そして、その移動制御データに基づいて組付装置20を制御する。
【0034】
このようにして、本実施形態のパッド組付システム80では、第1パッド91と第2パッド92との重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能になる。
【0035】
さらに、例えば、本実施形態のように、複合パッド93は、第2パッド92が第1パッド91より大きく、第1パッド91が第2パッド92によって全体を上方から覆い隠された状態に貼り合わされる場合、人が貼り合わせ作業すると、両パッド91,92を貼り合わせる直前の目視確認を行えず、位置ずれが生じ得る。
【0036】
また、人が目視確認を行いながら貼り合わせ作業を行うには、パッド91,92のうち大きい方の第2パッド92を作業台に載置し、その上に小さい方の第1パッド91を載置することになる。しかしながら、この場合には、接着剤が塗布された第1パッド91をひっくり返す必要があり、作業者の手が汚れ、ひいてはパッド91,92や設備を汚す恐れがある。
【0037】
しかしながら、例えば、このような場合であったとしても、本実施形態の製造ライン10では、第1パッド91と第2パッド92との重ね合わせ処理の自動化により、パッド91,92同士の位置ずれや汚れが抑えられ、複合パッド93の品質が向上しかつ安定する。また、人件費が抑えられて、車両用シート99の製造コストを下げることもできる。
【0038】
なお、本実施形態では、説明のために第1パッドモデル91M等を
図5,
図6等に図示したが、第1パッドモデル91M等をモニタに表示する必要はない。また、仮想移動と現実の移動とは、実質的に同一であれば、第1パッド91と第2パッド92のどちらを移動するか等は仮想移動と現実の移動との間で相違していてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、第1パッドモデル91Mが第1基準モデル91Kから大きくずれていたり、第2パッドモデル92Mが第2基準モデル92Kから大きくずれていても対応できるように、全体差分面積演算部85D、全体補正演算部85Eによる第1及び第23の全体調整データを使用して大まかに調整してから、分割差分面積演算部85F及び分割補正演算部85Gによる第1及び第2の分割調整データを使用して精度を高める調整を行っていたが、全体差分面積演算部85D、全体補正演算部85Eを廃止し、分割差分面積演算部85F及び分割補正演算部85Gによる第1及び第2の分割調整データを使用した調整のみを行う構成としてもよい。
【0040】
さらには、本実施形態を変形し、第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kを使用せずに、第1パッドモデル91Mと第2パッドモデル92Mとの間で、全体差分面積と分割差分面積とを演算し、それらを最も小さくする全体調整データ及び分割調整データを求め、それら調整データに対応する調整移動と基本移動とに基づいて、現実の空間で、第1パッド91及び第2パッド92の各正規位置に対するずれがキャンセルされるように第2パッド92を組付装置20により移動させるための移動制御データを生成してもよい。また、この場合も、上記実施形態と同様に前述の如く、分割調整データを使用した調整のみを行う構成としてもよい。
【0041】
[第2実施形態]
第1実施形態では、第1パッド91及び第2パッド92の全体に対応した第1基準モデル91K及び第2基準モデル92Kが設定されていたが、
図8に示すように本実施形態では、
図8に概念的に示すように、第1パッド91の形状に部分的に含まれる特徴的な形状である第1特徴部91Tの第1撮影部15における正規の位置及び向きを特定する第1基準データが予め設定されると共に、第2パッド92の形状に部分的に含まれる特徴的な形状である第2特徴部92Tの第2撮影部45における正規の位置及び向きを特定する第2基準データが予め設定されている。
【0042】
図8に示した例では、例えば、第1パッド91の輪郭のうち下辺91Uと、その下辺91Uに対して交差する1対の側辺91V,91Wの下部とからなる凹形部分が第1特徴部91Tとして設定されている。そして、その第1特徴部91Tの第1基準データには、例えば、下辺91Uと1対の側辺91V,91Wとの交点P1,P2を結ぶ方向を向いた単位ベクトルV1が第1特徴部91Tの向きを特定する情報として含まれ、下辺91Uと一方の側辺91Vとの交点P1の第1撮影部15における座標が第1特徴部91Tの位置を特定する情報として含まれている。第2パッド92に関しても同様に、第2特徴部92T及び第2基準データが設定されている。
【0043】
そして、第1実施形態で説明した演算処理部82A,85Aが各記憶部82B,85Bに記憶された図示しない処理プログラムを実行することで画像解析部及び組付制御部として機能し、画像解析部が、第1パッドモデル91M(図示せず。
図8のQ91に相当する)に含まれる第1特徴部91Tの第1撮影部15における位置及び向きを演算する。そして、画像解析部は、第1パッドモデル91Mの第1特徴部91Tの位置及び向きと第1基準データで特定される第1特徴部91Tの位置及び向きとのずれを補正するための第1調整データを生成する。これと同様に、画像解析部は、第2パッドモデル92Mの第2特徴部92Tと第2基準データで特定される第2特徴部92Tとの位置及び向きのずれを補正するための第2調整データを生成する。
【0044】
組付制御部は、第1調整データ及び第2調整データに対応する調整移動と前述の基本移動とに基づいて、第1パッド91と第2パッド92とが重ね合わされて第1特徴部91Tと第2特徴部92Tとが予め定められた正規の位置関係となるように第2パッド92を組付装置20により移動させるための移動制御データを生成する。そして、その移動制御データに基づいて組付装置20を制御する。
【0045】
本実施形態の構成によっても、第1パッド91と第2パッド92との重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能になる。
【0046】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態では、1対の差分面積を一致させるための調整データをトライアンドエラーにて決定していたが、これに限定されるものではなく、調整データを演算にて求めてもよい。
【0047】
(2)前記実施形態の製造ライン10は、車両用シート99の複合パッド93を製造するためのものであったが、車両用シート99以外の自動車の内装部品やそれ以外の部品の製造に製造ライン10を使用してもよい。
【0048】
(3)前記実施形態の組付装置20及び載置装置46の機構は、上記したものに限定されるものではない。例えば、スカラータイプの産業ロボット(水平多関節ロボット)や直交軸タイプの産業ロボットを使用してもよい。
【0049】
(4)前記実施形態では、貼り付けられる前の第1パッド91と第2パッド92とを撮像装置16により一度に撮影していたが、撮像装置16を第1パッド91用と第2パッド92用とに分けて2台設けて、第1パッド91と第2パッド92とを別々に撮影してもよい。
【0050】
(5)前記実施形態では、ベルトコンベア12の上に第1パッド91と第2パッド92とが横並びに載置されていたが、第1パッド91と第2パッド92とを別々のベルトコンベアで搬送する構成としてもよい。具体的には、ベルトコンベア12には、第1パッド91のみが載置され、ベルトコンベア12とは別に設けたベルトコンベアにて第2パッド92を組付装置20の近傍まで搬送してもよい。
【0051】
(6)本実施形態の製造ライン10にいて、撮影部45となるベルトコンベア12のベルトを透光性として、ベルトがバックライトにて下方から照射される構成としてもよい、奏すれば、第1と第2の画像G1,G2において第1パッド91又は第2パッド92の外形が明確になる。これにより、現実の空間と仮想空間とにおける第1パッド91又は第2パッド92の形状の誤差が抑えられる。
【0052】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0053】
[特徴A1]
第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド組付システムであって、
前記第1パッドが、一枚毎、配置される第1撮影部と、前記第2パッドが、一枚毎、配置される第2撮影部と、前記第1撮影部上の前記第1パッドの画像である第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの画像である第2画像とを撮像して、現実の空間の前記第1パッドと前記第2パッドに対応する仮想空間内の第1パッドモデルと第2パッドモデルとを生成するモデル生成部と、前記仮想空間で、前記第1撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第1基準モデルと、前記仮想空間で前記第2撮影部上に予め設定された正規位置に配置された第2基準モデルと、前記第1基準モデルを1対の第1分割基準モデルに2等分する第1分割線と、前記第2基準モデルを1対の第2分割基準モデルに2等分する第2分割線と、を記憶している基準パッドデータ記憶部と、前記仮想空間で、前記第1パッドモデルと前記第1基準モデルとの差分面積である第1全体差分面積と、前記第2パッドモデルと前記第2基準モデルとの差分面積である第2全体差分面積とを演算する全体差分面積演算部と、前記第1全体差分面積を最小にするように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1全体調整データと、前記第2全体差分面積を最小にするように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2全体調整データとを生成する全体補正演算部と、前記1対の第1分割基準モデルのそれぞれと前記第1パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積と、前記1対の第2分割基準モデルのそれぞれと前記第2パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第2分割差分面積とを演算する分割差分面積演算部と、前記1対の第1分割差分面積を一致させるように前記第1パッドモデルを前記第1基準モデルに対して移動するための第1分割調整データと、前記1対の第2分割差分面積を一致させるように前記第2パッドモデルを前記第2基準モデルに対して移動するための第2分割調整データとを生成する分割補正演算部と、前記第1全体調整データと前記第2全体調整データと前記第1分割調整データと前記第2分割調整データとに基づいて、前記現実の空間で、前記第1パッド及び前記第2パッドの各前記正規位置に対するずれがキャンセルされるように移動対象パッドを搬送して、前記第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる組付装置と、を備えるパッド重ね合わせシステム。
【0054】
特徴A1のパッド組付システムでは、第1撮影部上の第1パッドと、第2撮影部上の第2パッドとを撮像して仮想空間内の第1パッドモデルと第2パッドモデルとを生成する。そして、第1パッドモデルに対して第1撮影部上の正規位置に配置された第1基準モデルとの差分面積である第1全体差分面積と、第1基準モデルを2等分した1対の第1分割基準モデルのそれぞれと第1パッドモデルとの重なっていない部分の面積である1対の第1分割差分面積とを演算し、第2パッドモデルに対しても同様に、第2全体差分面積と1対の第2分割差分面積とを演算する。そして、第1パッドモデルに関して、第1全体差分面積が最小となるように第1パッドモデルを第1基準モデルに対して移動するための第1全体調整データと、1対の第1分割差分面積を一致させるように第1パッドモデルを第1基準モデルに対して移動するための第1分割調整データとを演算し、第2パッドモデルに関して同様に、第2全体調整データと第2分割調整データとを演算する。そして、それら調整データに基づいて、現実の空間で、第1パッド及び第2パッドの各正規位置に対するずれがキャンセルされるように移動対象パッドを組付装置にて移動し、第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる。このように、本開示の特徴Aのパッド組付システムによれば、第1パッドと第2パッドとの重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能になる。
【0055】
[特徴A2]
第1パッドと第2パッドとを重ね合わせるパッド重ね合わせシステムであって、前記第1パッドが、一枚毎、配置される第1撮影部と、前記第2パッドが、一枚毎、配置される第2撮影部と、前記第1撮影部上の前記第1パッドの画像である第1画像と、前記第2撮影部上の前記第2パッドの画像である第2画像とを撮像する撮像装置と、前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方である移動対象パッドを移動して前記第1パッドと前記第2パッドとを重ね合わせる組付装置と、前記第1パッドに含まれる第1特徴部の前記第1撮影部上における位置及び向きと、前記第2パッドに含まれる第2特徴部の前記第2撮影部上における位置及び向きとを、前記第1画像及び前記第2画像から演算する画像解析部と、前記第1パッドと前記第2パッドとが重ね合わされて前記第1特徴部と前記第2特徴部とが予め定められた正規の位置関係となるように、前記画像解析部の演算結果に基づいて前記組付装置を制御する制御部と、を備えるパッド重ね合わせシステム。
【0056】
特徴A2のパッド組付システムでは、画像解析部が、第1撮影部上の第1パッドを撮像した第1画像から第1パッドに含まれる第1特徴部の位置及び向きを演算し、第1撮影部上の第1パッドを撮像した第1画像から第2パッドに含まれる第2特徴部の位置及び向きを演算する。そして、組付装置にて第1パッドと第2パッドとが重ね合わせたときに第1特徴部と第2特徴部とが予め定められた正規の位置関係となるように、画像解析部の演算結果に基づいて組付装置を制御する。これにより、第1パッドと第2パッドとの重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずにパッド同士の相互の位置のばらつきを抑えた重ね合わせを行うことが可能になる。
【0057】
[特徴A3]
特徴A1又は特徴A2に記載のパッド重ね合わせシステムを有し、重ねて貼り合わされた前記第1パッドと前記第2パッドとを含んだ複合パッドを製造する製造ラインであって、前記第1パッドが前記第1撮影部に配置される前に前記第1撮影部上で前記第1パッドの上面となる面に接着材を塗布する塗布装置を備え、前記組付装置は、前記第2パッドのみを前記移動対象パッドとして移動して前記第1パッドの上に重ね合わせる複合パッドの製造ライン。
【0058】
特徴A3の複合パッドの製造ラインでは、第1パッドと第2パッドとの重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずに第1パッドが第2パッドからはみ出ないように両パッドを重ね合わせることが可能となり、第1パッドと第2パッドとを含んだ複合パッドの製造を効率よく行うことができる。複合パッドの代表例としては、第1パッドが軟質ウレタンフォームで、第2パッドが表皮材であるものが挙げられる(特徴A5)。
【0059】
[特徴A4]
前記第1パッド及び前記第2パッドの少なくとも一方を搬送するベルトコンベアを備えると共に、前記第1撮影部及び前記第2撮影部の少なくとも一方は、前記ベルトコンベアの一部として備えられ、
前記ベルトコンベアのうち前記第1撮影部又は前記第2撮影部となる部分は、透光性を有するベルトと、前記ベルトを下方から照射するバックライトとを有する特徴A3に記載の複合パッドの製造ライン。
【0060】
特徴A4の複合パッドの製造ラインでは、第1撮影部又は第2撮影部となるベルトコンベアのベルトが透光性を有し、それらベルトがバックライトにて下方から照射されるので、第1と第2の画像において第1パッド又は第2パッドの外形が明確になる。これにより、現実の空間と仮想空間とにおける第1パッド又は第2パッドの形状の誤差が抑えられる。
【0061】
[特徴A5]
前記第1パッドは、ウレタンフォームであり、前記第2パッドは、表皮材である特徴A3又は特徴A4に記載の複合パッドの製造ライン。
【0062】
[特徴A6]
特徴A3から特徴A5の何れか1の特徴Aに記載の複合パッドの製造ラインを使用して複合パッドを製造する複合パッドの製造方法。
【0063】
特徴A6の複合パッドの製造方法によれば、第1パッドと第2パッドとの重ね合わせ処理の自動化が図られ、熟練を要さずに両パッドを重ね合わせることが可能になる。
【0064】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0065】
10 製造ライン
12 ベルトコンベア
15 第1撮影部
16 撮像装置
20 組付装置
45 第2撮影部
80 パッド組付システム
82B,85B 記憶部
84 駆動制御部
85 撮像制御部
85C モデル生成部
85D 全体差分面積演算部
85E 全体補正演算部
85E 分割差分面積演算部
85G 分割補正演算部
91 第1パッド
91K 第1基準モデル
91K1,91K2 第1分割基準モデル
91M 第1パッドモデル
91T 第1特徴部
92T 第2特徴部
92 第2パッド
92K 第2基準モデル
92K1,92K2 第2分割基準モデル
92M 第2パッドモデル
92T 第2特徴部
94 規定領域
G1 第1画像
G2 第2画像
X 第1全体差分面積
X1,X2 第1分割差分面積
Y 第2全体差分面積
Y1,Y2 第2分割差分面積