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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】蒸気乾燥器
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/16 20060101AFI20241128BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G21C15/16
G21C13/00 100
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021123601
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019115
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】古市 肇
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 健一
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-079502(JP,A)
【文献】特開2004-205302(JP,A)
【文献】特開2010-038548(JP,A)
【文献】特開2012-125757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/16
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を介して屹立する少なくとも2枚の板の間に形成されたドレン流路と、
前記少なくとも2枚の板のいずれかに設けられ前記ドレン流路を蒸気流路と連通するスリットと、
前記少なくとも2枚の板の間に架け渡され、前記ドレン流路において前記スリットに近い領域を上下に分割する横板と、
前記横板において前記スリットの反対側に位置する端部から、当該端部を上端として下方に延びるとともに前記少なくとも2枚の板の間に架け渡され、前記ドレン流路を分割する縦板とを備えることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気乾燥器であって、
前記横板は、上下方向に間隔を介して設けられた複数の横板であり、
前記縦板は、前記複数の横板において前記スリットの反対側に位置する端部のそれぞれから、当該端部を上端として下方に延びる複数の縦板であることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸気乾燥器であって、
前記複数の横板は、上方に位置する横板ほど前記スリットから前記端部までの長さが長いことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気乾燥器であって、
前記少なくとも2枚の板には、横断面において凸部と凹部が交互に配列された第1の補助板が含まれ、
前記蒸気流路は、前記第1の補助板に対して所定の間隔を隔てて配列される第2の補助板と、前記第1の補助板との間に形成されていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸気乾燥器であって、
前記少なくとも2枚の板には、さらに、前記第1の補助板における前記凹部が接合する凹部と、前記第1の補助板における前記凸部が間隔を隔てて配置される凸部とを有する波板が含まれ、
前記ドレン流路は、前記第1の補助板における前記凸部と、前記波板における前記凸部との間に形成され、
前記スリットが、前記第1の補助板における前記凸部の前記蒸気流路の蒸気流通方向における上流側に形成されていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸気乾燥器であって、
前記スリットが、前記第1の補助板の上端から下端にわたって設けられていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項7】
請求項1に記載の蒸気乾燥器であって、
前記縦板により分割された複数のドレン流路の各々から降下する液体の流量が略均一となるように、前記縦板により分割された複数のドレン流路の各々の断面積が設計されていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項8】
請求項7に記載の蒸気乾燥器であって、
前記横板は、複数の横板であり、
前記縦板は、複数の縦板であり、
前記スリットと前記スリットに近い領域とは、前記複数の横板により上下に複数の開口部と領域とに分割され、
前記ドレン流路は、前記複数の縦板により複数のドレン流路に分離されていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項9】
請求項8に記載の蒸気乾燥器であって、
前記複数のドレン流路の各々を降下する液体の流量の平均値に対する前記複数のドレン流路のいずれか1つを降下する液体の流量の標準偏差が、前記複数のドレン流路のいずれか1つに連通するスリットの開口部に流れ込む蒸気の流量の誤差より小さくなるように前記複数のドレン流路の横断面積が設計されていることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項10】
請求項9に記載の蒸気乾燥器であって、
前記複数のドレン流路のいずれか1つに連通するスリットの開口部に流れ込む蒸気の流量の誤差が、前記複数のドレン流路のいずれか1つに連通するスリットの開口部の上端と下端を流れる湿り蒸気の流速により算出されることを特徴とする蒸気乾燥器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気乾燥器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、沸騰水型原子炉の気水分離システムは、炉心で発生した蒸気と液体の混合流から、蒸気と液体を分離する気液分離器と、気液分離器で分離された湿り蒸気から液滴を除去する蒸気乾燥器とを備える。蒸気乾燥器を通過し液滴を除去された蒸気は、原子炉内から管路を介して蒸気タービンに送られ、タービンブレードを回転させる。
【0003】
蒸気乾燥器は、気液分離器から放出され液滴を含む湿り蒸気をフードプレートにより誘導し多孔板で流量を配分した後、複数の波板の隣合う2枚の波板の間に形成された蒸気流路で湿り蒸気に含まれる液滴を分離する。
【0004】
蒸気流路では、湿り蒸気に含まれる液滴が、波板に取り付けられた補助板に張り付き液膜となった後、重力や蒸気流により発生するせん断力によって、補助板に形成されたスリットに流れ込む。スリットに流れ込んだ液滴は、補助板と波板により形成されたドレン流路(液膜排出流路)内を液体となって降下し、湿り蒸気から分離される(例えば、特許文献1)。
【0005】
この蒸気乾燥器は、横断面の形状が上下で大きく変わらず、短尺化しても基本構造への影響が小さい。そのため、蒸気乾燥器を短尺化して、圧力容器を小型化し、原子炉の製造コストを低減させることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-205302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蒸気乾燥器を短尺化すると蒸気流路やドレン流路も短尺化されるため、液滴を分離する性能が低下する懸念がある。即ち、気水分離器から放出される蒸気の質量流量が短尺化前と変わらない場合、蒸気乾燥器の蒸気流路を通過する単位高さあたりの蒸気の質量流量は短尺化前に比べて相対的に増加する。そのため、単位高さあたりのスリットに流入する液滴の量は相対的に増加し、単位高さあたりのドレン流路を降下する液体が相対的に増加する。
【0008】
一方、ドレン流路の短尺化により、一旦ドレン流路内に収容され降下した液体が、ドレン流路の下部でスリットから蒸気流路に溢れ、蒸気流によって液滴になって蒸気流路内に再飛散し、蒸気乾燥器から蒸気タービンへ送出される蒸気の湿分が増加する可能性がある。
【0009】
蒸気乾燥器から送出された蒸気が流入する蒸気タービンは、流入する蒸気の湿分が上限(要求値)より高いとタービンブレードにエロージョン(磨耗的腐食)が発生し、蒸気タービンの健全性を維持することが困難になる。
【0010】
本発明の目的は、短尺化された蒸気乾燥器において、蒸気流路内からスリットを介してドレン流路に流入し液体となって降下する液滴が、スリットから蒸気流路内に再飛散することを抑制できる蒸気乾燥器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、間隔を介して屹立する少なくとも2枚の板の間に形成されたドレン流路と、前記少なくとも2枚の板のいずれかに設けられ前記ドレン流路を蒸気流路と連通するスリットと、前記少なくとも2枚の板の間に架け渡され、前記ドレン流路において前記スリットに近い領域を上下に分割する横板と、前記横板において前記スリットの反対側に位置する端部から、当該端部を上端として下方に延びるとともに前記少なくとも2枚の板の間に架け渡され、前記ドレン流路を分割する縦板とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドレン流路内を横板と縦板で区切ることでドレン流路内を液体となって降下する液滴が、蒸気流路に再飛散することを抑制でき、蒸気乾燥器を短尺化しても蒸気乾燥器から放出される蒸気の湿分の増加を抑制できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気乾燥器が組み込まれた沸騰水型原子炉の原子炉内構造を示す縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る蒸気乾燥器の配置と構造を詳細に示すために一部を断面にした斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る蒸気乾燥器が有する複数の蒸気乾燥器ユニットの1列の構造を詳細に示すために一部を断面にした斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る蒸気乾燥器の蒸気乾燥器ユニットに備わる蒸気流路の一部分を示す拡大斜視図である。
図5図4のA-A矢視図である。
図6図4のB-B矢視図である。
図7図5のC-C矢視図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る蒸気乾燥器の蒸気乾燥器ユニットで湿り蒸気から液滴が分離される状態を模式的に示す拡大斜視図である。
図9】蒸気乾燥器において、出口における蒸気の湿分が蒸気タービンの要求値を満たすために必要な入口における蒸気の流速と湿分を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態に係る蒸気乾燥器の蒸気乾燥器ユニットに備わる蒸気流路の一部分を示す拡大斜視図である。
図11図10のA1-A1矢視図である。
図12図10のA2-A2矢視図である。
図13図10のA3-A3矢視図である。
図14図10のB-B矢視図である。
図15図11のC-C矢視図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る蒸気乾燥器の蒸気乾燥器ユニットの縦断面の模式図(A)と、蒸気流路の入口の高さと湿り蒸気の流速との関係を示すグラフ(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の第1、第2の実施形態による蒸気乾燥器の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る蒸気乾燥器が組み込まれた沸騰水型原子炉の原子炉内構造を示す縦断面図である。
【0016】
本実施形態に係る蒸気乾燥器10を有する沸騰水型原子炉100は、原子炉圧力容器110内の原子炉内の冷却水(炉水)を原子炉炉心120とダウンカマ130との間でインターナルポンプ140により循環させている。
【0017】
その循環の途中で、炉水が原子炉炉心120で加熱され、水と蒸気との混合流体となる。その混合流体は、原子炉炉心120の真上に配備されている気水分離器150に流入し、水と湿り蒸気とに遠心分離される。
【0018】
気水分離器150で分離された湿り蒸気は気水分離器150の上方に配備された蒸気乾燥器10へ放出される。また、気水分離器150で分離された水は気水分離器150から排出されダウンカマ130に降下し、再度、原子炉炉心120を循環する炉水となる。気水分離器150で水が分離された湿り蒸気は、蒸気乾燥器10で液滴が分離される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る蒸気乾燥器10の構造を詳細に示すために一部を断面にした斜視図である。
【0020】
蒸気乾燥器10は、気水分離器150の側面を覆う円筒状のスカート11と、スカート11に載置され気水分離器150の上方を覆う円板状の隔離壁12と、隔離壁12に載置され隔離壁12の開口を介してスカート11の内側に下端が連通する複数(本実施形態では6列)の蒸気乾燥器ユニット13とを有する。
【0021】
スカート11と隔離壁12とにより、気水分離器150から排出される湿り蒸気は効率よく蒸気乾燥器ユニット13に導かれる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る蒸気乾燥器10が有する複数の蒸気乾燥器ユニット13の1列の構造を詳細に示すために一部を断面にした斜視図である。
【0023】
蒸気乾燥器ユニット13は、気水分離器150から放出された液滴を含む湿り蒸気WSを導入するフードプレート1と、フードプレート1内に導入された湿り蒸気の流量を配分する多孔板2と、多孔板2に対して垂直方向に配列された複数の波板3とを有しており、複数の波板3の隣合う2枚の波板3の間の間隙が、蒸気流路4になっている。
【0024】
また、蒸気乾燥器ユニット13の下部には、蒸気乾燥器ユニット13から降下する液体を収集するドレン樋14と、ドレン樋14に収集された液体をダウンカマ130に導くドレンダクト15が設けられている。
【0025】
図4は、本実施形態に係る蒸気乾燥器10の蒸気乾燥器ユニット13に備わる蒸気流路4の一部分を示す拡大斜視図であり、図5は、図4のA-A矢視図であり、図6は、図4のB-B矢視図であり、図7は、図5のC-C矢視図である。なお、図7におけるスリット7は矢視とは反対側の補助板5に設けられているため、2点鎖線で示す。
【0026】
蒸気流路4を挟む2枚の波板3(第1波板3aと第2波板3b)の各々は、上下に延伸する屈曲部31と平面部32を複数有している。屈曲部31は、蒸気流路4に対して突出する凸部31aと、蒸気流路4に対してへこむ凹部31bとを有し、凸部31aと凹部31bは平面部32を挟んで交互に配列されている。
【0027】
また、蒸気流路4を挟む2枚の波板3の各々の間には、横断面において凸部51と凹部52が交互に配列された2枚の補助板5(第1補助板5aと第2補助板5b)が設けられている。そのため、蒸気流路4は、詳細には第1補助板5aに対して所定の間隔を隔てて配列される第2補助板5bと、第1補助板5aとの間に形成されている。
【0028】
また、第1補助板5aにおける凹部52は第1波板3aにおける凹部31bに接合し、第1補助板5aにおける凸部51は第1波板3aにおける凸部31aに間隔を隔てて配置される。そして、ドレン流路6は、第1補助板5aにおける凸部51と、第1波板3aにおける凸部31aとの間に形成される。
【0029】
また、蒸気流路4とドレン流路6を連通するスリット7が、例えば、第1補助板5aにおける凸部51の蒸気流路4の蒸気流通方向(湿り蒸気WSの矢印方向)における上流側に、第1補助板5aの上端から下端にわたって形成されている。そのため、第1補助板5aは複数のスリット7の各々により複数の板に分割されている。
【0030】
なお、スリット7は、図4に示すように、第1補助板5aの蒸気流路4の蒸気流通方向(湿り蒸気WSの矢印方向)における上流側の先端53と、第1波板3aの凸部31aとの間にも形成されている。
【0031】
また、第2補助板5bにおける凹部52は第2波板3bにおける凹部31bに接合し、第2補助板5bにおける凸部51は第2波板3bにおける凸部31aに間隔を隔てて配置される。そして、ドレン流路6は、第2補助板5bにおける凸部51と、第2波板3bにおける凸部31aとの間に形成される。
【0032】
また、第2補助板5bにおける凸部51の蒸気流路4の蒸気流通方向における上流側に、蒸気流路4とドレン流路6を連通するスリット7が第2補助板5bの上端から下端にわたって形成されている。そのため、第2補助板5bは複数のスリット7の各々により複数の板に分割されている。
【0033】
ドレン流路6は、図5,6に示すように、湿り蒸気WSに対して上流方向に備わる上流領域6aと下流方向に備わる下流領域6bとを有し、上流領域6aはスリット7に近い領域となる。上流領域6aには、図5,7に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、ドレン流路6においてスリット7に近い領域(上流領域6a)を上下(上側領域6aaと下側領域6ab)に分割する横板(止め板)8が設けられている。
【0034】
また、横板8より下側のドレン流路6には、図5,7に示すように、横板8においてスリット7の反対側(上流領域6aと下流領域6bの境目)に位置する端部81から、下方に延びるとともに少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され(図6参照)、ドレン流路6を分割する縦板(仕切り板)9が設けられている。
【0035】
縦板9は、図7に示すように、上流領域6aの下側領域6abと、下流領域6bの下側領域6bbとを分割する。これにより、下流領域6bの下側領域6bbは、波板3と補助板5と縦板9により前後左右を囲まれている。
【0036】
図8は、本実施形態に係る蒸気乾燥器10の蒸気乾燥器ユニット13で湿り蒸気WSから液滴Dが分離される状態を模式的に示す拡大斜視図である。蒸気流路4を通過する湿り蒸気WSに含まれる液滴Dは、遠心力により蒸気WSから分離し、補助板5の凹部52における蒸気流路4の蒸気流通方向(湿り蒸気WSの矢印方向)における下流側に張り付き液膜LFとなる。
【0037】
液膜LFは、蒸気WSの圧力による剪断力と重力とにより、補助板5の表面を流れ落ち、スリット7から液滴Dとなってドレン流路6に流入する。
【0038】
ドレン流路6は、上流領域6aが横板8により上下の領域(上側領域6aaと下側領域6ab)に分割され、上流領域6aの下側領域6abと下流領域6bの下側領域6bbとが縦板9により分割されている。
【0039】
スリット7から上流領域6aの上側領域6aaに流入した液滴Daは、横板8により上流領域6aの下側領域6abに降下できず、下流領域6bの上側領域6baに流入し、上側領域6baから液体Laとなって下側領域6bbに降下する。そして、液体Laはドレン樋14に降下する。また、スリット7から上流領域6aの下側領域6abに流入した液滴Dbは、縦板9により下流領域6bの下側領域6bbに流入できず液体Lbとなってドレン樋14に降下する。
【0040】
[効果]
本実施形態の蒸気乾燥器10は、上記のように下流領域6bの下側領域6bbが、波板3と補助板5と縦板9により周囲を囲まれている。そのため、下流領域6bの下側領域6bbを降下する液体L1は、スリット7から上流領域6aの下側領域6abに流入する湿り蒸気WSと接しない。したがって、下流領域6bの下側領域6bbを降下する液体L1は、湿り蒸気WSの圧力によって下流領域6bの下側領域6bb内から吹き飛ばされない。よって、液体L1がスリット7から蒸気流路4に液滴となって再飛散することを抑制し、蒸気乾燥器10から送出される蒸気の湿分の増加を抑制できる。
【0041】
また、蒸気乾燥器10を短尺化することにより、ドレン流路6を降下する液体Lの流量が増加し、ドレン流路6の下部で液体Lがオバーフローしてスリット7から溢れ、蒸気流によって液滴となって蒸気流路4に再飛散する可能性がある。しかし、本実施形態の蒸気乾燥器10は、下流領域6bの下側領域6bbが波板3と補助板5と縦板9により前後左右を囲まれているため、液体Lがスリット7から溢れること抑制し、蒸気流路4に液滴となって再飛散することを抑制できる。
【0042】
また、凸部51と凹部52を有する第1補助板5aと第2補助板5bとの間に蒸気流路4が形成されているため、湿り蒸気WSが蒸気流路4の凹部52から凸部51に向かって流れる際に遠心力が働き、質量の大きい液滴Dは湿り蒸気WSから分離される。したがって、湿り蒸気WSから液滴Dを容易に分離することができる。
【0043】
また、ドレン流路6が、第1補助板5aにおける凸部51と、波板3における凸部31aとの間に形成され、スリット7が、第1補助板5aにおける凸部51の蒸気流路4の蒸気流通方向における上流側に形成されている。そのため、湿り蒸気WSから遠心力により分離された液滴Dを上流側に形成されたスリット7により効率よくドレン流路6に誘導することができる。
【0044】
また、スリット7が、補助板5の上端から下端にわたって設けられているため、湿り蒸気WSから液滴Dを上下方向の広範囲に分離しドレン流路6に誘導することができる。
【0045】
図9は、蒸気乾燥器10において、出口における蒸気の湿分が蒸気タービンの要求値を満たすために必要な入口における蒸気の流速と湿分を示すグラフである。
【0046】
上述のとおり、本実施形態に係る蒸気乾燥器10は、出口における蒸気の湿分の増加を抑制できる。したがって、図9に示す運転可能領域の減少を抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る蒸気乾燥器10の蒸気乾燥器ユニット13に備わる蒸気流路4の一部分を示す拡大斜視図である。また、図11は、図10のA1-A1矢視図であり、図12は、図10のA2-A2矢視図であり、図13は、図10のA3-A3矢視図であり、図14は、図10のB-B矢視図であり、図15は、図11のC-C矢視図である。なお、図15におけるスリット7は矢視とは反対側の補助板5に設けられているため、2点鎖線で示す。
【0048】
本実施形態に係る蒸気乾燥器10が第1実施形態に係る蒸気乾燥器と異なる点は、図10に示すように、1つのドレン流路6に、複数の横板8(本実施形態では第1横板8aと第2横板8bと第3横板8c)と複数の縦板9(本実施形態では第1縦板9aと第2縦板9bと第3縦板9c)が設けられている点である。
【0049】
第1横板8aは、図10,15に示すように、複数の横板8のうち、最も上方に位置し蒸気流路4の蒸気流方向に最も長い横板8で、ドレン流路6(蒸気流路4)の下端から第1横板8aの上面までの距離はhbとなっている。第1横板8aは、図11に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、ドレン流路6のスリット7側の領域(第1領域6a1)を図15に示すように上下に分割する。また、スリット7は、図15に示すように第1横板8aにより分割され、第1横板8aの上方には第1開口部7aが形成される。
【0050】
第1横板8aのスリット7の反対側に位置する端部8a1から下方に、ドレン流路6の下端まで延びる第1縦板9aが設けられている(図15参照)。第1縦板9aは、図12~14に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、ドレン流路6から第1流路6b1を分割する。第1流路6b1は、波板3と補助板5と第1縦板9aにより前後左右を囲まれている。
【0051】
第2横板8bは、図10,15に示すように、複数の横板8のうち、第1横板8aと第3横板8cの間に位置し、蒸気流路4の蒸気流方向に第1横板8aより短く第3横板8cより長い横板8で、ドレン流路6の下端から第2横板8bの上面までの距離がhcとなっている。
【0052】
第2横板8bは、図12に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、第1縦板9aによって分割されたドレン流路6のスリット7側の領域(図12に示す第2領域6a2)を上下に分割する。また、スリット7は、図15に示すように、第2横板8bにより分割され、第1横板8aと第2横板8bの間には第2開口部7bが形成される。
【0053】
第2横板8bのスリット7の反対側に位置する端部8b1から、下方にドレン流路6の下端まで延びる第2縦板9bが設けられている(図15参照)。第2縦板9bは、図13,14に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、第1縦板9aによって第1流路6b1が分割されたドレン流路6から、第2流路6b2を分割する。第2流路6b2は、波板3と補助板5と第1縦板9aと第2縦板9bにより前後左右を囲まれる。
【0054】
第3横板8cは、図10,15に示すように、複数の横板8のうち最も下方に位置し蒸気流路4の蒸気流方向に最も短い横板8で、ドレン流路6の下端から第3横板8cの上面までの距離がhdとなっている。
【0055】
第3横板8cは、図13に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、第1縦板9aと第2縦板9bによって第1流路6b1と第2流路6b2とが分割されたドレン流路6のスリット7側の領域(図13に示す第3領域6a3)を上下に分割する。また、スリット7は、図15に示すように第3横板8cにより分割され、第2横板8bと第3横板8cの間には第3開口部7cが形成され、第3横板8cの下方には第4開口部7dが形成される。
【0056】
第3横板8cのスリット7の反対側に位置する端部8c1から、下方にドレン流路6(蒸気流路4)の下端まで延びる第3縦板9cが設けられている(図15参照)。
【0057】
第3縦板9cは、図14に示すように、少なくとも2枚の板(波板3と補助板5)の間に架け渡され、第1縦板9aと第2縦板9bによって第1流路6b1と第2流路6b2とが分割されたドレン流路6を、第3流路6b3と第4流路6b4に分割する。第3流路6b3は、波板3と補助板5と第2縦板9bと第3縦板9cにより前後左右を囲まれ、第4流路6b4は、第4開口部7dにより蒸気流路4と連通する。
【0058】
したがって、本実施形態に係る蒸気乾燥器10では、複数の横板8(第1横板8a~第3横板8c)は、上方に位置する横板8ほどスリット7から端部81(端部8a1~8c1)までの長さが長い。
【0059】
また、スリット7が上下方向に複数の開口部7i(第1開口部7a~第4開口部7d)に分割され、複数の開口部7iの各々に分割された複数のドレン流路6(第1流路6b1~第4流路6b4、以下、複数の分割流路6i)が連通する。
【0060】
即ち、図15に示すように、第1横板8aより上方を流れる湿り蒸気WSに含まれる液滴D1は、第1開口部7aに流入し第1流路6b1を液体L1となって降下する。第1横板8aと第2横板8bの間を流れる湿り蒸気WSに含まれる液滴D2は、第2開口部7bに流入し、第2流路6b2を液体L2となって降下する。第2横板8bと第3横板8cの間を流れる湿り蒸気WSに含まれる液滴D3は、第3開口部7cに流入し、第3流路6b3を液体L3となって降下する。第3横板8cより下方を流れる湿り蒸気WSに含まれる液滴D4は、第4開口部7dに流入し、第4流路6b4を液体L4となって降下する。
【0061】
また、本実施形態のドレン流路6は、第1流路6b1~第4流路6b4(の各々を降下する液体Lの流量QLが略均一となるように横断面積Aa~Adが設計されている。なお、横断面積Aa~Adは、第1横板8a~第3横板8cと第1縦板9a~第3縦板9cの大きさや幅によって変更可能である。
【0062】
具体的には、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流速をVLi(i=a,b,c,d)、第1流路6b1~第4流路6b4の各々の横断面積をAi(i=a,b,c,d)とすると、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量QLi(i=a,b,c,d)は、下記の式(1)で表すことができる。
【0063】
【数1】
【0064】
第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量QLiを均一にするためには、下記の式(2)を満たすように横断面積Aiを決定すればよい。
【0065】
【数2】
【0066】
一方、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流速VLiは、第1流路6b1~第4流路6b4の各々に連通する第1開口部7a~第4開口部7dを流れる湿り蒸気WSの流速Vsiと比例関係にあると考えられ、液体Lの流速VLiは下記の式(3)で表すことができる。
【0067】
【数3】
【0068】
図16は、本実施形態に係る蒸気乾燥器10の蒸気乾燥器ユニット13の縦断面の模式図(A)と、蒸気流路4の入口の高さHと湿り蒸気WSの流速Vsとの関係を示すグラフ(B)である。
【0069】
気水分離器150から放出された液滴を含む湿り蒸気WSは、図16(A)に示すように、縦断面が曲線となっているフードプレート1により進行方向が上向きから横向きに変えられる。そのため、湿り蒸気WSには遠心力が作用し、多孔板2を通過しても蒸気流路4の入口では、図16(B)に示すように、湿り蒸気WSの流速Vsは、蒸気流路4の入口の高さHが高いほど速くなっていると考えられる。したがって、第1開口部7a~第4開口部7dを流れる湿り蒸気WSの流速Vsiは、第1開口部7a~第4開口部7dの各々の上端と下端で異なると考えられる。
【0070】
そのため、湿り蒸気WSの流速Vsiにより算出した第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量QLiは、誤差ΔQLiを有する。例えば、第1開口部7aでは、上端の高さhaにおける流速はVsaであるのに対し、下端の高さhbにおける流速はVsbである。そのため、第1流路6b1を降下する液体L1の流量QLaの誤差ΔQLaは下記の式(4)で表せる。
【0071】
【数4】
【0072】
また、第1開口部7a~第4開口部7dの各々を降下する液体Lの流量QLiの標準偏差sは下記の式(5)で表せる。
【0073】
【数5】
【0074】
ここで,nは、分割流路6iの数(本実施形態ではn=4)、Qiは、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量、Qmは、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量Qiの平均値である。
【0075】
この標準偏差sが誤差ΔQLiより小さくなるように、第1流路6b1~第4流路6b4の各々の横断面積Aiを設計することにより、第1流路6b1~第4流路6b4の各々を降下する液体Lの流量QLは略均一となる。
【0076】
なお、湿り蒸気の流速Vsiが図16(B)のように蒸気流路4の高さと比例関係にあり、第1開口部7a~第4開口部7dの各々の上下方向の幅が同一である場合、第2開口部7b~第4開口部7dにおける誤差ΔQLiは、(4)式に示す第1流路6b1を降下する液体Lの流量QLaの誤差ΔQLaと略同一値となると考えられる。したがって、標準偏差sは次式で表すことができる。
【0077】
【数6】
【0078】
[効果]
本実施形態に係る蒸気乾燥器10では、複数の横板8(第1横板8a~第3横板8c)は、上方に位置する横板8ほど蒸気流路4の蒸気流方向に長く、スリット7から端部81(端部8a1~8c1)までの距離が長い。そのため、上方の開口部7iに連通する分割流路6iはスリット7から離れた位置に設けられ、蒸気流路4の上方で湿り蒸気WSの流速が早い場合でも、液滴Dはスリット7から離れた分割流路6iに流れ込み、湿り蒸気WSの圧力によってスリットから再飛散することが抑止される。
【0079】
本実施形態の蒸気乾燥器10は、縦板9により分割された複数の分割流路6i(第1流路6b1~第4流路6b4)の各々から降下する液体Lの流量QLが略均一となるように、複数の分割流路6iの各々の断面積Aiが設計されている。
【0080】
そのため、降下する液体Lの流量に対して分割流路6iの断面が広く、流路スペースに無駄ができることを抑制できる。また、降下する液体Lの流量に対して分割流路6iが狭く、分割流路6iから液体Lがオバーフローし、スリット7の開口部7iから蒸気流路4に溢れ、湿り蒸気流によって再飛散することを抑制できる。
【0081】
また、本実施形態の蒸気乾燥器10は、横板8は、複数の横板8(第1横板8aと第2横板8bと第3横板8c)であり、縦板9は、複数の縦板9(第1縦板9aと第2縦板9bと第3縦板9c)であり、スリット7に近い領域6aは、複数の横板8により上下に複数に分割され、ドレン流路6は、複数の縦板9により複数の分割流路6i(第1流路6b1~第4流路6b4)に分離されている。そのため、複数の分割流路6iのうち最もスリット側の分割流路6i以外の分割流路6iは、複数の縦板9の各々によってスリット7から分離されている。
【0082】
また、複数の分割流路6iの各々を降下する液体Lの流量QLが略均一である。そのため、スリット側の分割流路6iを降下する液体Lの流量を少なくすることができ、液体Lがスリット7から溢れ蒸気流路4に再飛散することを抑制し、蒸気乾燥器10から放出される蒸気の湿分の増加を抑制できる。
【0083】
また、本実施形態の蒸気乾燥器10は、複数の分割流路6iの各々を降下する液体Lの流量QLの平均値に対する複数の分割流路6iのいずれか1つの液体Lの流量QLiの標準偏差が、複数の分割流路6iのいずれか1つに連通するスリット7の開口部7iに流れ込む蒸気の流量Qsの誤差ΔQsより小さくなるように複数の分割流路6iの横断面積が設計されている。
【0084】
これにより、蒸気流路4を流れる湿り蒸気WSの流速が上下方向に異なる場合でも、複数の分割流路6iの各々から排出される液体Lの流量QLが略均一になるように複数の分割流路6iの横断面積を設計することができる。
【0085】
そのため、降下する液体Lの流量に対して分割流路6iの断面が広く、流路スペースに無駄ができることを抑制できる。また、降下する液体Lの流量に対して分割流路6iが狭く、分割流路6iから液体Lがオバーフローし、スリット7の開口部から蒸気流路に溢れ、湿り蒸気流によって液滴として再飛散することを抑制できる。
【0086】
また、本実施形態の蒸気乾燥器10は、複数の分割流路6iのいずれか1つに連通するスリット7の開口部7i(第1開口部7a~第4開口部7d)に流れ込む蒸気の流量Qsの誤差ΔQsが、スリット7の開口部7iの上端と下端を流れる湿り蒸気の流速により算出する。これは、湿り蒸気の流速Vsiが図15(B)のように蒸気流路4の高さと比例関係にある場合に、容易かつ正確に複数の分割流路6iの各々から降下する液体Lの流量QLが略均一になる断面積Aiを算出することができる。
【0087】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0088】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。スリット7が第1補助板5aに形成されている実施形態を示したが、第1補助板5aと波板3との間に形成させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
3,3a,3b…波板、31a…凸部、31b…凹部、4…蒸気流路、5,5a,5b…補助板、51…凸部、52…凹部、6…ドレン流路、6a…上流領域、6b1…第1流路、6b2…第2流路、6b3…第3流路、6a4…第4流路、6i…分割流路、7…スリット、7a…第1開口部、7b…第2開口部、7c…第3開口部、7d…第4開口部、7i…開口部、8…横板、8a…第1横板、8b…第2横板、8c…第3横板、81,8a1,8b1,8c1…端部、9…縦板、9a…第1縦板、9b…第2縦板、9c…第3縦板、10…蒸気乾燥器
図1
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