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特許7594985稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B69/00 303M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021129579
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023767
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-083343(JP,A)
【文献】特開2019-088227(JP,A)
【文献】特開2019-097504(JP,A)
【文献】特許第6697955(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の内側を移動しながら作業を行う作業車両の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点における測位情報を用意することと、
前記測位情報に基づいて、前記作業車両が移動した稼働軌跡を表す稼働軌跡情報を生成することと、
前記測位情報に基づいて、前記複数の測位点のそれぞれにおける前記作業車両の状態を表す所定のパラメータを算出することと、
前記パラメータに基づいて、前記稼働軌跡のうち、前記作業車両が前記作業を行った第1部分を作業軌跡として分類し、前記作業車両が前記作業を行わなかった第2部分を非作業軌跡として分類することと、
前記作業軌跡を表す作業軌跡情報を出力することと
を含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項2】
請求項1に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記算出することは、
前記複数の測位点のうち、測定の順序が隣接する2つの測位点の間の車速を前記パラメータとして算出すること
を含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項3】
請求項2に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記分類することは、
前記作業車両が所定の第1速度より高速に移動する第1軌跡を、前記作業車両が前記作業を行う前記作業軌跡として分類することと、
前記作業車両が前記第1速度より低速に移動する第2軌跡を、前記作業車両が前記作業を行わない旋回軌跡として分類することと
をさらに含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項4】
請求項3に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記分類することは、
前記作業車両が、前記第1速度より高速な所定の第2速度より高速に移動する第3軌跡を、前記作業車両が前記作業を行わない移動軌跡として分類すること
をさらに含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項5】
請求項1に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記算出することは、
前記複数の測位点のうち、測定の順序が隣接する2つの測位点を結ぶ線分の方角を前記パラメータとして算出すること
を含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記測位情報が表す前記作業車両の位置と前記位置の測定が行われた時刻とに基づいて、前記第1部分における走行距離および走行時間を算出することと、
前記走行距離および前記走行時間を表す情報を、前記作業軌跡における前記作業車両の作業状態を表す作業状態情報として出力することと
をさらに含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の稼働軌跡分類方法において、
前記位置を測定するときに前記作業車両の稼働状態を表す稼働情報を取得することと、
前記稼働情報に基づいて、前記作業軌跡における前記作業車両の前記稼働状態を評価する指標を表す稼働評価情報を作成することと、
前記稼働評価情報を出力することと
をさらに含む
稼働軌跡分類方法。
【請求項8】
圃場の内側を移動しながら作業を行う作業車両の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点における測位情報を用意する入力部と、
前記測位情報に基づいて、前記作業車両が移動した稼働軌跡を表す稼働軌跡情報を生成する生成部と、
前記測位情報に基づいて、前記複数の測位点のそれぞれにおける前記作業車両の状態を表す所定のパラメータを算出する算出部と、
前記パラメータに基づいて、前記稼働軌跡のうち、前記作業車両が前記作業を行った部分を作業軌跡として分類する分類部と、
前記作業軌跡を表す作業軌跡情報を出力する出力部と
を備える
稼働軌跡分類システム。
【請求項9】
実行することによって所定の処理を実現するための稼働軌跡分類プログラムであって、
前記処理は、
圃場の内側を移動しながら作業を行う作業車両の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点における測位情報を用意することと、
前記測位情報に基づいて、前記作業車両が移動した稼働軌跡を表す稼働軌跡情報を生成することと、
前記測位情報に基づいて、前記複数の測位点のそれぞれにおける前記作業車両の状態を表す所定のパラメータを算出することと、
前記パラメータに基づいて、前記稼働軌跡のうち、前記作業車両が前記作業を行った部分を作業軌跡として分類することと、
前記作業軌跡を表す作業軌跡情報を出力することと
を含む
稼働軌跡分類プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラムに関し、例えば、圃場で農作業を行う作業車両が稼働するときに発生する軌跡を分類する稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両が圃場で行う農作業の作業KPI(Key Performance Index:重要業績評価指標)を求める需要がある。作業KPIには、例えば、植え付け作業における植え付け量や、施肥作業における施肥量や、収穫作業における収穫量などが含まれる。作業KPIを求めるためには、作業車両が圃場で移動した稼働軌跡のうち、実際の農作業を行いながら移動した作業軌跡を分離してその長さを求め、この長さと単位長さあたりの作業量とを掛け算してもよい。しかし、稼働軌跡を表示したタッチパネルを利用者が操作するなどして作業軌跡を手動的に選択することはできても、稼働軌跡から作業軌跡を自動的に分離することは簡単ではない。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特許第6697955号公報)には、作業地に対する対地作業を行う作業装置を装備した車体が走行した時間を、対地作業を実行する直進走行に要した時間と、対地作業を実行しない旋回走行に要した時間とに区分する技術が開示されている。この区分は、車体が装備する走行機構の状態が直進走行と旋回走行とで大きく異なることを利用して行われる。また、所定の距離を走行する適正な時間である目標走行時間と、この距離を車体が実際に走行した実距離走行時間とに基づいて、地面と走行機構の車輪などとの間でスリップが生じたスリップ率を、直進走行および旋回走行のそれぞれについて算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6697955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、直進走行と旋回走行との区分を行うために、車体の走行中に走行機構の状態を監視し続ける必要がある。この区分を、車体の走行中に行う場合でも、車体の走行の後に行う場合でも、車体の走行が開始してから終了するまでの全走行工程において走行機構の状態を監視する必要がある。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、作業車両が移動した稼働軌跡のうち、作業車両が作業を行った作業軌跡を、容易に求めることのできる稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
一実施の形態によれば、稼働軌跡分類方法は、圃場(9)の内側を移動しながら作業を行う作業車両(2)の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点(70)における測位情報を用意すること(S2)と、測位情報に基づいて、作業車両(2)が移動した稼働軌跡(80)を表す稼働軌跡情報を生成すること(S3)と、測位情報に基づいて、複数の測位点(70)のそれぞれにおける作業車両(2)の状態を表す所定のパラメータを算出すること(S4)と、パラメータに基づいて、稼働軌跡(80)のうち、作業車両(2)が作業を行った第1部分を作業軌跡(83)として分類し、作業車両(2)が作業を行わなかった第2部分を非作業軌跡(81、82、85)として分類する(S5)ことと、作業軌跡(83)を表す作業軌跡情報を出力すること(S6)とを含む。
【0009】
一実施の形態によれば、稼働軌跡分類システム(1)は、入力部(511)と、生成部(512)と、算出部(513)と、分類部(514)と、出力部(515)とを備える。入力部(511)は、圃場(9)の内側を移動しながら作業を行う作業車両(2)の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点(70)における測位情報を用意する。生成部(512)は、測位情報に基づいて、作業車両(2)が移動した稼働軌跡(80)を表す稼働軌跡情報を生成する。算出部(513)は、測位情報に基づいて、複数の測位点(70)のそれぞれにおける作業車両(2)の状態を表す所定のパラメータを算出する。分類部(514)は、パラメータに基づいて、稼働軌跡(80)のうち、作業車両(2)が作業を行った部分を作業軌跡(83)として分類する。出力部(515)は、作業軌跡(83)を表す作業軌跡情報を出力する。
【0010】
一実施の形態によれば、稼働軌跡分類プログラム(521)は、実行することによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、圃場(9)の内側を移動しながら作業を行う作業車両(2)の位置を複数の時刻において測定して得られる、複数の測位点(70)における測位情報を用意すること(S2)と、測位情報に基づいて、作業車両(2)が移動した稼働軌跡(80)を表す稼働軌跡情報を生成すること(S3)と、測位情報に基づいて、複数の測位点(70)のそれぞれにおける作業車両(2)の状態を表す所定のパラメータを算出すること(S4)と、パラメータに基づいて、稼働軌跡(80)のうち、作業車両(2)が作業を行った第1部分を作業軌跡(83)として分類し、作業車両(2)が作業を行わなかった第2部分を非作業軌跡(81、82、85)として分類する(S5)ことと、作業軌跡(83)を表す作業軌跡情報を出力すること(S6)とを含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、作業車両が移動した稼働軌跡のうち、作業車両が作業を行った作業軌跡を、容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施の形態による稼働軌跡分類システムの一構成例を示す図である。
図2図2は、一実施の形態による稼働軌跡分類装置の一構成例を示すブロック回路図である。
図3図3は、一実施の形態による稼働軌跡分類プログラムの一構成例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、一実施の形態による稼働軌跡の一例を示す図である。
図4B図4Bは、図4Aの部分拡大図である。
図5図5は、一実施の形態によるパラメータの一例を示す図である。
図6図6は、一実施の形態による車速の分布の一例を示すグラフである。
図7図7は、一実施の形態による分類済み稼働軌跡の一例を示す図である。
図8図8は、一実施の形態による移動方向の分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明による稼働軌跡分類方法、稼働軌跡分類システムおよび稼働軌跡分類プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による稼働軌跡分類システム1は、稼働軌跡分類装置5を備える。稼働軌跡分類装置5は、圃場9の内側を移動しながら作業を行う作業車両2に搭載された車載端末3から、車載端末3の位置を測定した測位情報を、ネットワーク4を介して受信する。さらに、稼働軌跡分類装置5は、圃場9のうち、作業車両2が作業を行うために移動した稼働軌跡を分類した結果を表す情報を、ネットワーク4を介して外部端末6に向けて出力する。作業車両2は、例えば、圃場9で農作業を行う作業機械を装着したトラクタであってもよいし、作業機械が一体化されているコンバインであってもよい。以降、作業車両2が施肥を行う場合について説明するが、一実施の形態はこの例に限定されない。
【0015】
図2に示すように、一実施の形態による稼働軌跡分類装置5は、いわゆるコンピュータとしての構成を有していてもよい。すなわち、一実施の形態による稼働軌跡分類装置5は、バス50と、演算装置51と、記憶装置52と、入出力装置53と、通信装置54とを備えている。演算装置51、記憶装置52、入出力装置53および通信装置54は、バス50を介して互いに通信可能に接続されている。
【0016】
演算装置51は、記憶装置52に格納されている稼働軌跡分類プログラム521を実行することによって所定の処理を実現する。稼働軌跡分類プログラム521は、記録媒体520から読み出されて記憶装置52に格納されたものであってもよい。記録媒体520は、非一時的かつ有形(non-transitory and tangible)であってもよい。
【0017】
演算装置51は、入力部511と、生成部512と、算出部513と、分類部514と、出力部515とを備えている。ここで、入力部511、生成部512、算出部513、分類部514および出力部515は、演算装置51が稼働軌跡分類プログラム521を実行することによって実現する処理を行う仮想的な機能部である。入力部511、生成部512、算出部513、分類部514および出力部515が行う処理の詳細については、後述する。
【0018】
図3は、一実施の形態による稼働軌跡分類プログラム521の一構成例を示すフローチャートである。図3のフローチャートを参照して、一実施の形態による稼働軌跡分類装置5の一動作例、すなわち一実施の形態による稼働軌跡分類方法の一構成例について説明する。
【0019】
図3のフローチャートは、例えば、稼働軌跡分類装置5が起動するときに開始する。図3のフローチャートが開始すると、ステップS1が実行される。
【0020】
ステップS1において、稼働軌跡分類装置5の演算装置51の入力部511は、圃場情報を用意する。ここで、入力部511の機能は、演算装置51が稼働軌跡分類プログラム521を実行することによって実現する。圃場情報は、圃場9の位置と形状とを表す。図4Aでは、圃場9の形状は長方形であるが、これは一例にすぎず、一実施の形態は圃場9の形状を限定しない。
【0021】
一例として、圃場情報は、圃場9を上方から撮影した撮影データに所定の画像処理を施すことによって取得されてもよい。圃場情報は、図3のフローチャートが開始する前に取得されていてもよい。この場合、圃場情報は記憶装置52に格納されていて、ステップS1において入力部511は記憶装置52から圃場情報を読み出すことによって圃場情報を用意してもよい。一例として、圃場情報は、圃場9の複数の頂点のそれぞれの緯度と経度とを含んでいてもよい。
【0022】
図3のステップS1の後、ステップS2が実行される。ステップS2において、入力部511は、測位情報を用意する。ステップS1同様に、入力部511の機能は、演算装置51が稼働軌跡分類プログラム521を実行することによって実現する。測位情報は、複数の測位点の位置を表す情報の集合である。測位情報は、測位を行った位置の緯度および経度と、測位を行った時刻とを含んでいてもよい。それぞれの測位点は、作業車両2が圃場9の内側を移動しながら作業を行ったときに車載端末3がGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などを用いて位置を測定した場所である。また、複数の測位点の位置情報は、複数の時刻において順番に測定される。この位置情報は、厳密には車載端末3の位置を表すが、実質的にはこの車載端末3を搭載した作業車両2の位置を表し、また、この作業車両2に装着された作業機械の位置を表す。
【0023】
車載端末3によって測定された測位情報は、測定されるたびに稼働軌跡分類装置5に順次送信されてもよいし、圃場9における作業が完了したときに稼働軌跡分類装置5にまとめて送信されてもよい。稼働軌跡分類装置5は、測位情報を受信して記憶装置52に格納する。測位情報は、図3のフローチャートが開始される前に取得されていてもよい。この場合、測位情報は記憶装置52に格納されていて、ステップS2において入力部511は記憶装置52から測位情報を読み出すことによって測位情報を用意してもよい。
【0024】
図3のステップS2の後、ステップS3が実行される。ステップS3において、生成部512は、測位情報に基づいて、作業車両2が移動した稼働軌跡を表す稼働軌跡情報を生成する。まず、稼働軌跡について説明し、その次に稼働軌跡情報について説明する。
【0025】
稼働軌跡は、大きく分けて、作業車両2が圃場9に対する作業を行いながら移動する作業軌跡と、作業車両2が作業を行わずに移動する非作業軌跡とに分類できる。非作業軌跡は、さらに、旋回軌跡や、離脱合流軌跡や、移動軌跡などに分類できる。旋回軌跡は、平行に配置された直線状の作業領域の1つから別の作業領域に移動するときなどに作業車両2が旋回する軌跡である。離脱合流軌跡は、作業車両2が、作業の途中で作業軌跡から離脱して肥料などの資材を補給するために補給所まで移動したり、反対に補給所から作業軌跡へ合流するために移動したりする軌跡である。移動軌跡は、その他の目的で作業車両2が移動する軌跡である。以降、作業車両2が施肥作業を行う場合について説明する。
【0026】
図4Aは、一実施の形態による稼働軌跡80の一例を示す図である。一例として、稼働軌跡80は、移動軌跡81と、旋回軌跡82と、作業軌跡83と、離脱合流軌跡85A、85Bとに分類できる。移動軌跡81は、作業車両2が作業を行わずに移動した軌跡である。図4Aの例では、移動軌跡81は直線の形状を有している。旋回軌跡82は、作業車両2が作業を行わずに移動方向を変更する目的で移動した軌跡である。図4Aの例では、旋回軌跡82は半円の形状を有している。作業軌跡83は、作業車両2が作業を行いながら移動した軌跡である。図4Aの例では、作業軌跡83は直線の形状を有している。離脱合流軌跡85Aは、作業車両2が作業軌跡83の離脱合流地点84Aから離脱して補給地点86まで移動し、補給地点86から離脱合流地点84Aに戻るために移動した軌跡である。同様に、離脱合流軌跡85Bは、作業車両2が作業軌跡83の離脱合流地点84Bから離脱して補給地点86まで移動し、補給地点86から離脱合流地点84Bに戻るために移動した軌跡である。図4Aの例では、離脱合流軌跡85A、85Bは一点鎖線で示されている。以降、離脱合流地点84A、84Bを区別しない場合はこれらを単に離脱合流地点84と総称する。また、離脱合流軌跡85A、85Bを区別しない場合はこれらを単に離脱合流軌跡85と総称する。
【0027】
図4Aの例では、作業車両2は図面に向かって左下の位置から圃場9に進入し、移動軌跡81に沿って直進し、旋回軌跡82に沿って旋回した後、作業軌跡83に沿って直進しながら施肥作業を行う。作業車両2は、旋回して隣の作業軌跡83に移動して施肥作業を行う動作を続け、必要に応じて肥料を補給するために離脱合流地点84で作業軌跡83から離脱して補給地点86へ移動し、肥料を補給した後は補給地点86から離脱合流地点84に戻って作業軌跡83に合流して施肥作業を再開する。
【0028】
図4Bは、図4Aの部分拡大図である。より具体的には、図4Bは、図4Aのうち、主に旋回軌跡82の部分を含む領域90の部分拡大図である。図4Bに示すように、作業車両2が実際に移動する稼働軌跡80は、測位点70A、70B、70C、70D、70E、70F、70Gを接続する軌跡71A、71B、71C、71D、71E、71Fを含む。図4Bの例では、軌跡71B、71C、71D、71Eは曲線である。以降、測位点70A~70Gを区別しない場合はこれらを単に測位点70と総称する。また、軌跡71A~71Fを区別しない場合はこれらを単に軌跡71と総称する。
【0029】
稼働軌跡情報は、測位情報に含まれる測位点70を測定の順序に接続することで得られる。このとき、測定の順序が隣接する2つの測位点70の間の軌跡71は、図5に示すように、直線の推定軌跡72A、72B、72C、72D、72E、72Fに近似される。以降、軌跡72A~72Fを区別しない場合はこれらを単に推定軌跡72と総称する。
【0030】
図3のステップS3の後、ステップS4が実行される。ステップS4において、算出部513は、測位情報に基づいて、稼働軌跡80を分類するために使用するパラメータを算出する。以降、このパラメータが作業車両2の車速である場合について説明するが、これはあくまでも一例にすぎず、一実施形態を限定しない。
【0031】
発明者は、稼働軌跡80のうち、移動軌跡81と、旋回軌跡82と、作業軌跡83と、離脱合流軌跡85とでは、作業車両2の車速が異なり、したがって稼働軌跡80を作業車両2の車速に基づいて分類することが可能であることを確認した。このことは、特に、作業車両2が作業を行う領域が、例えば直線状であり、かつ、それぞれの作業領域が互いに平行である場合に顕著であった。そこで、一実施の形態では、ステップS4において測位点70のそれぞれにおけるパラメータとして車速を算出し、その後のステップS5においてそれぞれの測位点70に対応する車速に基づいて稼働軌跡80を分類する。
【0032】
ステップS4において、算出部513は、それぞれの測位点70について、作業車両2の車速を算出する。一例として、注目している第1の測位点70から、その次に位置を測定した第2の測位点70までの距離を、第1の測位点70の位置を測定した第1の時刻から、第2の測位点70の位置を測定した第2の時刻までの時間で割り算することによって、車速を算出する。算出部513は、それぞれの測位点70について算出した車速をそれぞれの測位点70に対応付けて記憶装置52に格納する。
【0033】
図3のステップS4の後、ステップS5が実行される。ステップS5において、分類部514は、ステップS4で算出したパラメータに基づいて稼働軌跡80を分類する。具体的には、分類部514は、稼働軌跡80のうち、作業車両2が作業を行った部分を作業軌跡83として分類する。分類部514は、さらに、稼働軌跡80のうち、作業車両2が作業を行わなかった部分を非作業軌跡として分類してもよい。より具体的には、分類部514は、非作業軌跡を、移動軌跡81と、旋回軌跡82と、離脱合流軌跡85との一部または全てに分類してもよい。
【0034】
発明者は、作業軌跡83における車速が、旋回軌跡82における車速より高速であり、かつ、移動軌跡81および離脱合流軌跡85における車速より低速であり、したがって、これら3種類の車速の範囲を分類するための2つの閾値を適宜に設定することで作業軌跡83に含まれる測位点70を抽出することができることを確認した。例えば、分類部514は、それぞれの測位点70における車速の分布を算出し、対応する車速が第1の閾値と第2の閾値の間に含まれる測位点70を測定の順序で接続した推定軌跡72を作業軌跡83として分類する。
【0035】
図6は、一実施の形態による車速の分布の一例を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は車速を所定の範囲ごとに表し、縦軸はデータ数を表す。ここで、データ数は、測位情報に含まれる測位点70のうち、対応する車速が横軸の各範囲に含まれる測位点70の総数である。
【0036】
圃場9の内側に平行に配置された直線状の作業領域が存在し、作業車両2がこれらの作業領域の間を旋回しながら移動し、必要に応じて補給地点86との往復を行う場合、速度ゼロ以外の3つの速度において極大値が存在する。これら3つの極大値は、作業車両2が旋回軌跡82に沿って旋回するときの旋回時速度と、作業車両2が作業軌跡83に沿って作業を行いながら移動するときの作業時速度と、作業車両2が移動軌跡81または離脱合流軌跡85に沿って移動するときの移動時速度とである。上述のとおり、作業時速度は、旋回時速度より高速であり、かつ、移動時速度より低速であると推測される。これは、旋回時にはなるべく短い半径で旋回するために低速で移動し、その他の非作業時には作業に最適な速度とは関係なく高速で移動できるからである。以上のことから、分類部514は、3つの極大値のうち、最も低速な極大値(以下、速度V1と呼ぶ)が旋回時速度の代表値であると推定し、最も高速な極大値(以下、速度V3と呼ぶ)が移動時速度の代表値であると推定し、残る中間的な極大値(以下、速度V2と呼ぶ)が作業時速度の代表値であると推定する。なお、速度V0はゼロであり、作業車両2の離脱合流地点84や補給地点86などにおける停止状態に対応する。
【0037】
閾値T1は、速度V0と速度V1の間に適宜に設定される。閾値T1は、例えば、速度V0と速度V1との間に形成された極小値における速度である。閾値T2は、速度V1と速度V2の間に適宜に設定される。閾値T2は、例えば、速度V1と速度V2との間に形成された極小値における速度である。閾値T3は、速度V2と速度V3の間に適宜に設定される。閾値T3は、例えば、速度V2と速度V3との間に形成された極小値における速度である。旋回時速度の範囲は閾値T1から閾値T2までの範囲として定義され、作業時速度の範囲は閾値T2から閾値T3までの範囲として定義され、移動速度の範囲は閾値T3以上の範囲として定義される。
【0038】
分類部514は、測位情報に含まれるそれぞれの測位点70を、それぞれの測位点70に対応する車速がどの範囲に含まれるかに応じて、旋回時測位点、作業時測位点または移動時測位点に分類する。ここで、旋回時測位点は旋回軌跡82に含まれると推測される測位点70であり、作業時測位点は作業軌跡83に含まれると推測される測位点70であり、移動時測位点は移動軌跡81または離脱合流軌跡85に含まれると推測される測位点70である。
【0039】
分類部514は、測位点70を分類した結果に基づいて、稼働軌跡80を作業軌跡83または非作業軌跡に分類する。ここで、非作業軌跡は、移動軌跡81、旋回軌跡82および離脱合流軌跡85を含む。言い換えれば、測位情報に含まれる測位点70のうち、対応する車速が閾値T2より高速であり、かつ、閾値T3より低速である測位点70の集合を、作業軌跡83として分類する。また、その他の測位点70を、非作業軌跡として分類する。この分類の結果は、記憶装置52に格納される。
【0040】
分類部514は、作業軌跡83として分類された測位点70に含まれるノイズデータを除去する処理を行ってもよい。ここで行われる処理は、例えば、測定の順序で並べた測位点70の中から、作業軌跡83の一部として分類された2つの測位点70の間に存在する、非作業軌跡の一部として分類された少数の連続した測位点70を検出したときに、検出された測位点70を作業軌跡83の一部として分類する修正処理を含む。ここで、少数の連続した測位点70の総数は所定の閾値以下であり、この閾値は、移動軌跡81、旋回軌跡82、離脱合流軌跡85などを誤って作業軌跡83に修正しないように、例えば、測位点70の位置を測定するサンプリング周期に基づいて適宜に設定される。一例として、サンプリング周期は5秒であり、この閾値は、3である。
【0041】
また、ここで行われる処理は、例えば、測定の順序で並べた測位点70の中から、非作業軌跡の一部として分類された2つの測位点70の間に存在する、作業軌跡83の一部として分類された所定の閾値以下の連続した測位点70を検出したときに、検出された測位点70を非作業軌跡の一部として分類する修正処理を含む。この閾値は、作業軌跡83を誤って移動軌跡81、旋回軌跡82、離脱合流軌跡85などに修正しないように、例えば、測位点70の位置を測定するサンプリング周期に基づいて適宜に設定される。
【0042】
分類部514は、さらに、非作業軌跡を移動軌跡81、旋回軌跡82または離脱合流軌跡85に分類してもよい。非作業軌跡として分類された測位点70のうち、対応する車速が閾値T1より高速であり、かつ、閾値T2より低速である測位点70の集合を、旋回軌跡82として分類する。移動軌跡81または離脱合流軌跡85については、まず、非作業軌跡として分類された測位点70のうち、対応する車速が閾値T3より高速である測位点70の、測定の順序が連続する集合を抽出する。次に、抽出された集合のうち、最初に測定された測位点70の直前に測定された測位点70と、最後に測定された測位点70の直後に測定された測位点70とが両方とも作業軌跡83の一部として分類されており、かつ、補給地点86からの距離が所定の閾値より短い測位点70を含む集合を、離脱合流軌跡85として分類する。抽出された集合の残りについては、移動軌跡81として分類する。
【0043】
図3のステップS5の後、ステップS6が実行される。ステップS6において、出力部515は、作業軌跡83を表す作業軌跡情報を出力する。出力部515は、通信装置54を制御して作業軌跡跡情報を外部端末6に送信する。外部端末6は、作業軌跡情報を受信したことを利用者に報知し、利用者の操作に応じて作業軌跡情報が表す作業軌跡83を画面上に表示することによって光学的に出力する。
【0044】
出力部515は、作業軌跡情報に加えて、非作業軌跡を表す非作業軌跡情報をさらに出力してもよい。このとき、外部端末6は、その一部が作業軌跡83として分類された分類済み稼働軌跡87を画面上に表示してもよい。
【0045】
さらに、出力部515は、作業軌跡情報に加えて、移動軌跡81を表す移動軌跡情報と、旋回軌跡82を表す旋回軌跡情報と、離脱合流軌跡85を表す離脱合流軌跡情報とを出力してもよい。このとき、外部端末6は、その全体が移動軌跡81、旋回軌跡82、作業軌跡83および離脱合流軌跡85として分類された分類済み稼働軌跡87を画面上に表示してもよい。図7は、一実施の形態による分類済み稼働軌跡87の一例を示す図である。図7の例では、分類済み稼働軌跡87のうち、移動軌跡81を細い実線で示し、旋回軌跡82を細い破線で示し、作業軌跡83を太い実線で示し、離脱合流軌跡85A、85Bを一点鎖線で示している。
【0046】
(変形例、その1)
出力部515は、さらに、作業軌跡83で作業を行った作業車両2の作業状態を表す作業状態情報を出力してもよい。この場合、ステップS6において、出力部515は、作業軌跡83における作業車両2の走行距離および走行時間を、作業軌跡83における作業状態情報として出力する。さらに、出力部515は、非作業軌跡における作業車両2の走行距離および走行時間を非作業軌跡における作業状態情報として出力してもよい。
【0047】
また、この場合、ステップS5において、算出部513は、作業軌跡83として分類されたそれぞれの測位点70において測定された作業車両2の位置と測定が行われた時刻とに基づいて、作業軌跡83における作業車両2の走行距離および走行時間を、作業軌跡83の作業状態情報として算出する。さらに、算出部513は、非作業軌跡として分類されたそれぞれの測位点70において測定された位置と測定が行われた時刻とに基づいて、作業車両2による非作業軌跡の走行距離および走行時間を、非作業軌跡における作業状態情報として算出する。なお、非作業軌跡の作業状態情報は、移動軌跡81、旋回軌跡82および離脱合流軌跡85のそれぞれについて算出され出力されてもよい。
【0048】
(変形例、その2)
出力部515は、さらに、作業軌跡83で作業を行った作業車両2の稼働状態を評価する指標を表す稼働評価情報を出力してもよい。稼働情報は、例えば、測位点70のそれぞれにおける植え付け量、施肥量、収穫量などを含む。ここで、植え付け量とは、作業車両が植え付け機またはトラクタに牽引された植え付け作業機で実行される植え付け作業で苗を植え付けた量である。施肥量とは、作業車両が施肥機またはトラクタに牽引された施肥作業機で実行される施肥作業で肥料を散布した量である。収穫量とは、作業車両が収穫機またはトラクタに牽引された収穫作業機で実行される収穫作業中に収量センサで取得される収穫量である。この場合、ステップS6において、出力部515は、作業車両2による作業軌跡83における稼働情報を、作業軌跡83における作業車両2の稼働評価情報として出力する。さらに、出力部515は、非作業軌跡における稼働情報を、非作業軌跡における作業車両2の稼働評価情報として出力してもよい。
【0049】
また、この場合、ステップS1またはその前において、作業車両2の車載端末3は、各測位点の位置を測定して測位情報を取得するときに、作業車両2の稼働情報をさらに取得する。そして、稼働軌跡分類装置5の入力部511は、車載端末3から、測位情報に加えて稼働情報を取得する。
【0050】
さらに、この場合、ステップS5において、算出部513は、作業軌跡83として分類されたそれぞれの測位点70において取得された稼働情報が表す値の合計を、作業軌跡83の稼働評価情報として算出する。さらに、算出部513は、非作業軌跡として分類されたそれぞれの測位点70において取得された稼働情報が表す値の合計を、非作業軌跡の稼働評価情報として算出してもよい。なお、非作業軌跡の稼働評価情報は、移動軌跡81、旋回軌跡82および離脱合流軌跡85のそれぞれについて算出され出力されてもよい。
【0051】
以上に説明したように、一実施の形態によれば、作業車両2が移動した稼働軌跡80のうち、作業車両2が作業を行った作業軌跡83を、容易に求めることができる。さらに、上記の変形例によれば、作業軌跡83における稼働評価情報を求めることができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
上記の第1の実施の形態では、稼働軌跡80を分類するために使用するパラメータとして作業車両2の車速を用いた。本実施の形態では、このパラメータとして作業車両2の移動方向を用いることができることを説明する。
【0053】
言い換えれば、発明者は、稼働軌跡80のうち、作業軌跡83における作業車両2の移動方向の分布が特定の方角に集中し、旋回軌跡82や離脱合流軌跡85などにおける作業車両2の移動方向の分布と区別できる傾向があることを確認した。この傾向は、特に、作業車両2が作業を行う領域が、例えば直線状であり、かつ、それぞれの作業領域が互いに平行である場合に顕著であった。そこで、本実施の形態では、ステップS4において測位点70のそれぞれにおける移動方向を算出し、その後のステップS5において移動方向の分布に基づいて稼働軌跡80を分類する。
【0054】
なお、本実施の形態による稼働軌跡分類システム1の構成は、図1に示した第1の実施の形態における構成と同様である。また、本実施の形態による稼働軌跡分類プログラム521の構成は、図3に示した第1の実施の形態における構成に、ステップS4とステップS5とに以下の変更を加えることで得られる。以降、ステップS4とステップS5との変更点について説明する。
【0055】
ステップS4において、算出部513は、測位点70のそれぞれにおける移動方向を、例えば、注目している測位点70から、注目している測位点70の次に位置を測定した測位点70に至る直線の方向として近似的に算出する。それぞれの測位点70について算出された作業車両2の移動方向は、記憶装置52に格納される。
【0056】
ステップS5において、移動方向の分布に基づく稼働軌跡80の分類は、例えば、以下のように行われる。まず、算出部513が、それぞれの測位点70における作業車両2の移動方向を算出し、算出した移動方向が、方位を所定の角度で等分した複数の範囲のうち、どの範囲に含まれるかを算出する。方位は、注目している方向を、所定の方角(例えば北など)を基準とした角度で表した値である。ここで、作業軌跡83における作業領域の移動方向が第1方位と、第1方向とは逆の第2方位とに集中している場合は、対応する移動方向が第1方位を含む第1範囲に含まれる測位点70のデータ数と、対応する移動方向が第2方位を含む第2範囲に含まれる測位点70のデータ数とは、各範囲におけるデータ数の分布で2つの極大値を形成する。そこで、分類部514は、各範囲におけるデータ数に基づいて2つの極大値を検出し、対応する移動方向の方位がこれら2つの極大値をそれぞれ有する2つの範囲に含まれる測位点70の集合を、作業軌跡83として分類する。分類部514は、さらに、対応する移動方向がその他の範囲に含まれる測位点70の集合を、非作業軌跡として分類してもよい。
【0057】
図8は、一実施の形態による移動方向の分布の一例を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は移動方向の方位を所定の範囲ごとに並べて示しており、縦軸はデータ数を示している。ここで、データ数は、測位情報に含まれる測位点70のうち、対応する移動方向の方位が横軸の各範囲に含まれる測位点70の総数である。図8の例では、第1の方位D1を含む第1範囲と、第2の方位D2を含む第2範囲において、2つの極大値が形成されている。このとき、分類部514は、対応する移動方向が第1範囲または第2範囲に含まれる測位点70の集合を、作業軌跡83として分類する。
【0058】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、稼働軌跡80のうち、作業車両2が作業を行った作業軌跡83を、作業車両2の移動方向に基づいて分類することができる。
【0059】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0060】
上記の各実施の形態では、作業車両2が施肥作業を行う場合について説明したが、各実施の形態はこの例に限定されない。一変形例として、作業車両2が植え付け作業や収穫作業を行う場合にも、各実施の形態は適用可能である。作業車両2が植え付け作業を行う場合は、作業車両2は必要に応じて離脱合流地点84から離脱合流軌跡85に沿って補給地点86へ移動して苗を補給した後、同じ離脱合流軌跡85に沿って後退して離脱合流地点84へ戻って植え付け作業を再開してもよい。ここで、離脱合流軌跡85は既に植え付け作業が完了した領域を避けるように配置されることが好ましい。また、作業車両2が収穫作業を行う場合は、作業車両2は必要に応じて離脱合流地点84から離脱合流軌跡85に沿って補給地点86へ移動して収穫物を排出した後、続く離脱合流軌跡85に沿って前進して離脱合流地点84に戻って収穫作業を再開してもよい。
【0061】
上記の第1の実施の形態では、車速の閾値T1、T2、T3を、車速の極小値に基づいて決定したが、本実施の形態はこの例に限定されない。一変形例として、車速の閾値T1、T2、T3は、予め利用者が手動で決めてもよい。
【0062】
上記の第2の実施の形態では、それぞれの測位点70における作業車両2の移動方向を、注目している測位点70から、注目している測位点70の次に位置を測定した測位点70に至る直線の方向として近似的に算出した。この算出方法はあくまで一例であって、本実施の形態を限定しない。別の算出方法の一例として、それぞれの測位点70における作業車両2の移動方向を、注目している測位点70の1つ前に位置を測定した測位点70から、注目している測位点70の次に位置を測定した測位点70に至る直線(厳密には線分)の方向として近似的に算出してもよい。
【0063】
上記の第1の実施の形態では、作業車両2の車速に注目して稼働軌跡80の分類を行った。また、上記の第2の実施の形態では、作業車両2の移動方向に注目して稼働軌跡80の分類を行った。これら第1および第2の実施の形態を組み合わせて、作業車両2の車速および移動方向の両方を使って稼働軌跡80の分類を行ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 稼働軌跡分類システム
2 作業車両
3 車載端末
4 ネットワーク
5 稼働軌跡分類装置
50 バス
51 演算装置
511 入力部
512 生成部
513 算出部
514 分類部
515 出力部
52 記憶装置
520 記録媒体
521 稼働軌跡分類プログラム
53 入出力装置
54 通信装置
6 外部端末
70A、70B、70C、70D、70E、70F、70G 測位点
71A、71B、71C、71D、71E、71F 軌跡
72A、72B、72C、72D、72E、72F 推定軌跡
80 稼働軌跡
81 移動軌跡(第3軌跡)
82 旋回軌跡(第2軌跡)
83 作業軌跡(第1軌跡)
84A、84B 離脱合流地点
85A、85B 離脱合流軌跡(第3軌跡)
86 補給地点
87 分類済み稼働軌跡
9 圃場
90 領域
D1、D2 方位
T1 閾値
T2 閾値(第1速度)
T3 閾値(第2速度)
V0、V1、V2、V3 速度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8