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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】耐震壁およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20241128BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20241128BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20241128BHJP
   E04C 2/42 20060101ALI20241128BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04B2/56 643A
E04C2/26 T
E04C2/42 G
E04G23/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021170584
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060785
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】永田 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143502(JP,A)
【文献】特開2008-000760(JP,A)
【文献】特開2006-057352(JP,A)
【文献】特開2012-245566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 2/56
E04C 2/26,2/42
E04G 23/02
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状の鋼製のフレームと、前記フレームに取り付けられた木製の補剛材と、を備える耐震壁であって、
前記格子状のフレームは、互いに交差して配置された複数の鋼板同士が溶接されて形成され、
正面視で、前記補剛材の奥行き寸法は、前記鋼板の奥行き寸法より大きく、
前記補剛材は、前記鋼製のフレームの側面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする耐震壁。
【請求項2】
前記木製の補剛材の奥行き方向の中間部には、凹部が形成されており、
前記鋼板同士の溶接部は、前記凹部に収容されることを特徴とする請求項1に記載の耐震壁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐震壁の構築方法であって、
柱梁架構の構面内に、互いに交差して配置された複数の鋼板同士を溶接することで、格子状のフレームを構築する第1の工程と、
奥行き方向の中間部に凹部を設けた木製の補剛材を用意し、前記補剛材を前記鋼板に取り付ける第2の工程と、を含み、
前記第2の工程では、前記鋼板同士の溶接部を前記補剛材の凹部に収容することを特徴とする耐震壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製のフレームと木製の補剛材とを備える耐震壁、および、その耐震壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板が組み合わされて複数の開口部が形成されたフレームと、この複数の開口部のうちの少なくとも1つに取り付けられた補剛材と、を備える耐震壁が知られている。
特許文献1には、交差する第一斜材と第二斜材とによって複数の開口部が形成された格子と、格子の周囲を囲う枠材と、複数の開口部の少なくとも一部に配設された補剛材とを備える耐力壁が示されている。
【0003】
特許文献2には、木造制振筋交が示されている。すなわち、木造筋交の木口に雌ネジラグが埋め込まれ、この雌ネジラグにはボルトがねじ込まれている。ボルトの基端部は木造筋交の木口から突き出され、このボルトには、コネクタの端板がナットで固定されている。建物の柱と梁又は土台が形成する軸組み架構面内の内隅には、接合金物が固定され、この接合金物とコネクタとは、ピンボルトにより接合されている。
特許文献3には、耐震補強構造が示されている。すなわち、既存柱の柱脚部には、耐震補強材である火打ち部が設けられており、この火打ち部および既存柱の柱脚部には、繊維シートが巻かれている。既存柱の柱脚部は、既存基礎に後施工アンカーで固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-143502号公報
【文献】特開2008-150893号公報
【文献】特開2015-86685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、鋼材同士の溶接部を保護し、鋼材と補剛材とを密着させることが可能な、耐震壁およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の耐震壁(例えば、後述の耐震壁1)は、格子状の鋼製のフレーム(例えば、後述の格子フレーム22)と、前記フレームに取り付けられた木製の補剛材(例えば、後述の補剛材30)と、を備える耐震壁であって、前記格子状のフレームは、互いに交差して配置された複数の鋼板(例えば、後述の斜材23)同士が溶接されて形成され、正面視で、前記補剛材の奥行き寸法は、前記鋼板の奥行き寸法より大きく、前記補剛材は、前記鋼製のフレームの側面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、格子状のフレームと、このフレームに取り付けられた木製の補剛材とを備える耐震壁であって、フレームを構成する鋼板の正面側から視て、鋼製のフレームの少なくとも一部を木製の補剛材で覆った。格子状のフレームの鋼板が交差する交差部では、後半同士が溶接されているため、その鋼板の溶接部を隠蔽することができる。よって、耐震壁の意匠性を向上できるうえに、溶接部を保護できる。また、鋼製のフレームと補剛材との間に隙間が生じず、密着させることができる。
【0008】
第2の発明の耐震壁は、前記木製の補剛材の奥行き方向の中間部には、凹部(例えば、後述の凹部31)が形成されており、前記鋼板同士の溶接部(例えば、後述のビード24)は、前記凹部に収容されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、木製の補剛材の凹部に鋼板同士の溶接部を収容したので、鋼板同士の溶接部と補剛材との干渉を低減して、鋼板に補剛材を容易に取り付けることができる。
【0010】
第3の発明の耐震壁の構築方法は、上述の耐震壁の構築方法であって、柱梁架構(例えば、後述の柱梁架構10)の構面内に、互いに交差して配置された複数の鋼板(例えば、後述の斜材23)同士を溶接することで、格子状のフレーム(例えば、後述の格子フレーム22)を構築する第1の工程(例えば、後述のステップS1)と、奥行き方向の中間部に凹部(例えば、後述の凹部31)を設けた木製の補剛材(例えば、後述の補剛材30)を用意し、前記補剛材を前記鋼板に取り付ける第2の工程(例えば、後述のステップS2)と、を含み、前記第2の工程では、前記鋼板同士の溶接部(例えば、後述のビード24)を前記補剛材の凹部に収容することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、木製の補剛材の凹部に鋼板同士の溶接部を収容したので、正面側から鋼板同士を溶接した部分である溶接部を隠蔽することができる。よって、耐震壁を構成する鋼製のフレームと補剛材との間に隙間が生じず、密着性を高められるうえに、溶接部を保護できる。また、耐震壁の意匠性を向上できる。
また、鋼板同士の溶接部と補剛材との干渉を低減して、鋼板に補剛材を容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋼材同士の溶接部を保護し、鋼材と補剛材とを密着させることが可能な、耐震壁およびその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る耐震壁の正面図である。
図2図1の耐震壁の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
図3図2の耐震壁のI-I断面図である。
図4図2の耐震壁のII-II断面図である。
図5図1の耐震壁の破線Bで囲んだ部分の拡大図である。
図6】第1実施形態に係る耐震壁の一部の分解斜視図である。
図7】第1実施形態に係る耐震壁の構築手順のフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る耐震壁について4番目の補剛材の取り付け手順を説明するための正面図である。
図9図8の耐震壁のIII-III断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る耐震壁の部分拡大図である。
図11図10の耐震壁のIV-IV断面図である。
図12】本発明の変形例に係る耐震壁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、格子状の鋼製のフレームとこのフレームに取り付けられた木製の補剛材とを備える耐震壁、およびその耐震壁の構築方法である。本発明の特徴の1つは、補剛材の奥行き方向の中間部に凹部に設け、凹部にフレームを構成する鋼板同士の溶接部を収容し、これにより、鋼製のフレームと補剛材との間に隙間が生じることなく、密着させることができる点である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐震壁1の正面図である。図2は、図1の耐震壁1の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。図3は、図2の耐震壁1のI-I断面図である。図4は、図2の耐震壁1のII-II断面図である。図5は、図1の耐震壁1の破線Bで囲んだ部分の拡大図である。
耐震壁1は、既存の鉄筋コンクリート造の柱梁架構10の構面内に構築されている。柱梁架構10は、一対の鉄筋コンクリート造の既存柱11と、この既存柱11同士を連結する上下一対の鉄筋コンクリート造の既存梁12と、を備える。
耐震壁1は、鋼板を組み合わせて形成されたフレーム20と、フレーム20に取り付けられた木製の補剛材30と、フレーム20と柱梁架構10とを接合する接合部40と、を備える。
【0015】
フレーム20は、矩形枠状の外周フレーム21と、この外周フレーム21の内側に設けられた正面視で格子状の格子フレーム22と、を備える。
格子フレーム22は、複数の互いに交差する複数の鋼板としての斜材23同士を溶接することで形成されている。斜材23は、正面側に端面が向いた状態で、水平に対して斜め方向に延びており、斜材23同士が交差する交差部では、斜材23同士が溶接されて、溶接部としてのビード24が形成されている。
外周フレーム21および格子フレーム22により、略三角形状または略四角形状の開口部25が形成される。
【0016】
補剛材30は、格子フレーム22を構成する斜材23の上下面(表裏面)に取り付けられている。具体的には、略四角形状の開口部25には、補剛材30が4つ取り付けられ、略三角形状の開口部25には、補剛材30が2つ取り付けられている。
この補剛材30は、並べたひき板を繊維方向が直交するように積層して接着したCLT(Cross Laminated Timber)である。補剛材30は、斜材23の正面側および背面側の端面の一部を覆っており、耐震壁1の正面視では、斜材23が幅dの隙間で視認可能となっている。言い換えると、補剛材30は、鋼製の格子フレーム22の側面の少なくとも一部を覆っている。
また、正面視で、補剛材30の奥行き寸法Lは、斜材23の奥行き寸法Lより大きくなっている。補剛材30の奥行き方向の中間部には、凹部31が形成されており、斜材23同士の溶接部であるビード24は、凹部31に収容されている。
【0017】
図6は、耐震壁1の一部の分解斜視図である。
補剛材30には、ボルトを挿通するボルト挿通孔32が形成されており、格子フレーム22の斜材23には、ボルトを挿通する貫通孔26が形成されている。斜材23の上下に補剛材30を配置し、ボルト50を上下の補剛材30のボルト挿通孔32および斜材23の貫通孔26に挿通して、ナット51を締め付けることで、補剛材30は、格子フレーム22に取り付けられるとともに、斜材23同士の溶接部であるビード24が凹部31に収容される。
【0018】
図5に示すように、接合部40は、セメント系結合材であるコンクリートを打設して形成されている。この接合部40には、外周フレーム21に設けられたスタッドボルト27と、柱梁架構10にあと施工で設けられたあと施工アンカー13とが、埋設されている。
【0019】
以下、耐震壁1を構築する手順について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、フレーム20を構築し、フレーム20と柱梁架構10との隙間にコンクリートを打設して接合部40を形成して、接合部40を介してフレーム20と柱梁架構10とを接合する。
ステップS2では、補剛材30をボルト50およびナット51で格子フレーム22の斜材23に取り付ける。このとき、斜材23同士の溶接部であるビード24を補剛材30の凹部31に収容する。なお、図8および図9に示すように、四角形状の開口部25に4つの補剛材30を取り付ける際、4番目に取り付ける補剛材30Aについては、正面側あるいは背面側から嵌め込んで取り付けようとしても、補剛材30Aの凹部31を形成する突部33がビード24に引っ掛かる。そこで、図8に示すように、補剛材30Aを凹部31で二分割して補剛材ピース60、61とし、例えば、補剛材ピース60を正面側から差し込み、補剛材ピース61を背面側から差し込んで、補剛材ピース60、61でビード24を挟み込むように取り付ける。これにより、4番目の補剛材30Aを格子フレーム22に円滑に取り付けることができる。
耐震壁1の具体的な寸法は、例えば、図8および図9に示すような開口部25が400mm×400mm、補剛材30の正面視の見付け幅が70mm、補剛材30Aの突部33の奥行き方向の長さが30mm、凹部31の深さが30mm程度である。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)格子状の格子フレーム22とこの格子フレーム22に取り付けられた木製の補剛材30とを備える耐震壁1において、格子フレーム22を構成する斜材23の正面側の端面の少なくとも一部を木製の補剛材30で覆ったので、正面側から斜材23同士を溶接した溶接部のビード24を隠蔽することができる。よって、耐震壁1の意匠性を向上できるうえに、溶接部であるビード24を保護できる。また、図4に示すように、鋼製の格子フレーム22の斜材23と補剛材30との間には隙間が生じず、密着させることができる。
【0021】
(2)木製の補剛材30の凹部31に斜材23同士の溶接部であるビード24を収容したので、斜材23同士の溶接部と補剛材30との干渉を解消して、斜材23からなる格子フレーム22に補剛材30を容易に取り付けることができる。
【0022】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明の第2実施形態に係る耐震壁1Aの部分拡大図である。図11は、図10の耐震壁1AのIV-IV断面図である。
本実施形態では、補剛材30が斜材23の正面側および背面側の端面を全面に亘って覆っている点が、第1実施形態と異なる。すなわち、耐震壁1Aの正面視では、斜材23が視認できないようになっている。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、四角形状の開口部25に取り付ける4番目の補剛材30Aについて、補剛材30Aを二分割することで格子フレーム22に取り付けたが、これに限らず、図11に示すように、補剛材30Aの一端側のみに突部33を設け、補剛材30Aを正面側あるいは背面側から差し込むことで、格子フレーム22に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1、1A…耐震壁 10…柱梁架構 11…既存柱 12…既存梁
13…あと施工アンカー
20…フレーム 21…外周フレーム 22…格子フレーム
23…斜材(鋼板) 24…ビード 25…開口部 26…貫通孔
27…スタッドボルト
30、30A…補剛材 31…凹部 32…ボルト挿通孔 33…突部
40…接合部
50…ボルト 51…ナット 60、61…補剛材ピース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12