(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04298 20160101AFI20241128BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241128BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241128BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241128BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20241128BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M8/04298
H01M8/00 A
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04492
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2021180962
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】垣見 洋輔
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/096801(WO,A1)
【文献】特開2021-048096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04298
H01M 8/00
H01M 8/04537
H01M 8/04858
H01M 8/04492
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと、酸化剤ガスと、により電力を生成する燃料電池スタックと、
蓄電装置と、
前記燃料電池スタック及び、前記蓄電装置と電気的に接続されるとともに、前記燃料電池スタックの電圧を所定の電圧に変換する昇圧コンバータと、
前記昇圧コンバータ及び、前記燃料電池スタックを制御する制御部と、
を備える燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記燃料電池スタックの発電量が負荷が要求する電力量よりも低い状態において、所定条件を満たした場合に、前記燃料電池スタックへ供給する前記酸化剤ガスの供給量を増加させ、
前記所定条件は、
前記燃料電池スタックの電圧が、前記蓄電装置の電圧より大きく、
前記昇圧コンバータを流れる電流が0
より大きく、
前記昇圧コンバータのデューティ比が0である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記燃料電池システムを構成する部品温度が閾値以上となった場合には、前記燃料電池スタックは供給される前記酸化剤ガスの供給量を増加前の元の状態に戻す、または供給量を減少させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの状態を判定するために、燃料電池の電圧閾値により異常を判定する燃料電池システムが存在する。燃料電池システムは、所定の電圧閾値に対する判定結果に基づいて、起動するか否かを判定することができる。
【0003】
燃料電池に燃料ガスと酸化剤ガスが供給された直後から燃料電池の電圧が所定の電圧閾値以上に到達したか否かの判定結果に基づいて、燃料電池システムの起動を継続することが可能か否かを診断する燃料電池システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、燃料電池の電圧を所定電圧に変換する昇圧コンバータ(DCDCコンバータ)と、昇圧コンバータと負荷との間に接続される蓄電装置とを備える燃料電池システムが存在する。燃料電池システムは、燃料電池による発電を停止した際に、燃料電池の電圧が蓄電装置の電圧よりも高くなるように燃料電池セルの枚数を設定し、発電を停止した際に燃料電池で発生する電力を昇圧コンバータに設けられたダイオードによる経路等によって蓄電装置に充電可能な状態とすることで、昇圧コンバータを動かさずに受動的な降圧動作(以下、「パッシブ降圧」とも呼ぶ)によって燃料電池の高電位回避を行うことができつつ、必要十分な燃料電池セルの枚数を確保し、燃料電池の出力を最適とした状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昇圧コンバータを適用した燃料電池システムにおいてパッシブ降圧が行われる場合、昇圧コンバータの2次側に接続された蓄電装置の電圧が低いほど燃料電池と蓄電装置との電位差が大きくなるため、受動的な降圧動作で大きな電流が流れることとなる。燃料電池へ供給される酸化剤ガスは、目標発電量に対して水素と不足なく反応するように供給されるよう、供給量が制御されるが、燃料電池と蓄電装置との電位差が大きくなることで、目標発電量に対して酸化剤ガスが不足してしまう(以下、「エア欠状態」とも呼ぶ)。すなわち、パッシブ降圧により、燃料電池の目標発電量以上の電力が意図せず燃料電池から持ち出される現象が生じ、その結果、エア欠状態となり燃料電池の電力-電流特性が悪化する。例えば、燃料電池システムがフォークリフト等の産業車両で利用されている場合において、坂道を継続して上り続けているときなど、通常よりも大きな出力が要求された場合、蓄電装置からの持ち出しが大きくなるため、蓄電装置のSOC(State Of Charge)が下がって蓄電装置の電圧が低下する。このため、燃料電池の電力-電圧特性(PV特性)が悪化するとともに、蓄電装置が過放電状態となり、燃料電池システムが停止してしまう場合もある。本発明の一側面に係る目的は、蓄電装置の電力不足に対する燃料電池システムの稼働時間の延長を行うことが可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの態様の燃料電池システムは、燃料ガスと、酸化剤ガスと、により電力を生成する燃料電池スタックと、蓄電装置と、前記燃料電池スタック及び、前記蓄電装置と電気的に接続されるとともに、前記燃料電池スタックの電圧を所定の電圧に変換する昇圧コンバータと、前記昇圧コンバータ及び、前記燃料電池スタックを制御する制御部と、を備える燃料電池システムであって、前記制御部は、前記燃料電池スタックの発電量が負荷が要求する電力量よりも低い状態において、所定条件を満たした場合に、前記燃料電池スタックへ供給する前記酸化剤ガスの供給量を増加させる。
【0008】
これにより、燃料電池スタックの発電量が負荷が要求する電力量よりも低い状態において、所定条件を満たした場合には、パッシブ降圧が行われているとして、燃料電池スタックへ供給する酸化剤ガスの供給量を増加させエア欠状態を解消することで燃料電池スタックのPV特性を改善する。燃料電池スタックのPV特性が改善されることにより、燃料電池スタックの発電量が増加し、蓄電装置の電力の持ち出しを抑えることで、蓄電装置の電力不足に対する燃料電池システムの稼働時間の延長(延命)を行うことができる。
【0009】
また、所定条件は、前記燃料電池スタックの電圧が、前記蓄電装置の電圧より大きく、前記昇圧コンバータを流れる電流が0以上であり、前記昇圧コンバータのデューティ比が0である。これにより、DCDCコンバータの動作が行われていないにもかかわらず、受動的にDCDCコンバータに電流が流れている状態をいうパッシブ降圧が行われている場合には、燃料電池スタックへ供給する酸化剤ガスの供給量を増加させることにより、燃料電池スタックの発電量を増加させ、蓄電装置の電力の持ち出しを抑えて、蓄電装置の電力不足に対する燃料電池システムの稼働時間の延長(延命)を行うことができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記燃料電池システムを構成する部品温度が閾値以上となった場合には、前記燃料電池スタックは供給される前記酸化剤ガスの供給量を増加前の元の状態に戻す、または供給量を減少させる。これにより、燃料電池システムを稼働する各部品の稼働状態を通常状態に戻して温度上昇を防ぐことができ、過熱による燃料電池システムの故障を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓄電装置の電力不足に対する燃料電池システムの稼働時間の延長を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】燃料電池と蓄電装置の電圧と電力との関係を示す図である。
【
図3】燃料電池システムの制御状態の遷移の一例を示す図である。
【
図4】燃料電池システムの制御部が実行する燃料電池制御処理の一例を示す図である。
【
図5】別実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係わる燃料電池システムの一例を示す図である。
【0015】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や電気自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loに電力を供給する。なお、負荷Loは、走行用モータ、電装部品、コンピュータやメモリなどに電力を供給するためのシステム電源などである。なお、燃料電池システム1は車両以外にも、定置型の非常用発電機などにも適用可能である。
【0016】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素タンクHtと、コンプレッサCpと、電流検出部Si0、Si4と、電圧検出部V1、V2、V3と、DCDCコンバータCnvと、蓄電装置Sと、制御部Cntと、温度センサTsとを備える。
【0017】
DCDCコンバータCnvは、昇圧コンバータの一例である。DCDCコンバータCnvは、燃料電池FCと、蓄電装置Sとの間に接続される。DCDCコンバータCnvは、リアクトルRe1、Re2、Re3と、電流検出部Si1、Si2、Si3と、6つのスイッチング素子Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6と、コンデンサCoとを備えている。
【0018】
水素タンクHtは、制御部Cntの制御に基づいて燃料電池FCのアノードに対して、発電のための燃料ガスとなる水素(アノードガス)を供給する。コンプレッサCpは、制御部Cntの制御に基づいて燃料電池FCのカソードに対して、酸化剤ガスとなる酸素(カソードガス)を含む空気を供給する。
【0019】
燃料電池FCは、水素タンクHtからインジェクタを通して燃料電池FCに供給される水素と、大気中からコンプレッサCpを通じて燃料電池FCに供給される空気中の酸素との化学反応により、電気エネルギーを生成する。すなわち、燃料電池FCは、水素と酸素の化学反応により発電する。
【0020】
燃料電池FCは、リアクトルRe1、Re2、Re3および電流検出部Si1、Si2、Si3を介して6つのスイッチング素子Q1~Q6および6つのダイオードD1~D6と接続される。電流検出部Si0は、燃料電池FCと、リアクトルRe1、Re2、Re3との間に接続される。
【0021】
スイッチング素子Q1~Q6として、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を用いている。但し、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いてもよい。6つのダイオードD1~D6はそれぞれ、6つのスイッチング素子(MOSFET)Q1~Q6の寄生ダイオードである。
【0022】
正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、u相下アームを構成するスイッチング素子Q2が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6が直列接続されている。
【0023】
正極母線Lp、負極母線LnにはコンデンサCoを介して蓄電装置Sが接続されている。
【0024】
DCDCコンバータCnvをMOSFETと、MOSFETの寄生ダイオードで構成することにより、DCDCコンバータCnvの構成をメカニカルスイッチ等で構成するよりも簡単な構成で作成することができ、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0025】
燃料電池FCから供給された電力がダイオードD1、D3、D5、または、D2、D4、D6を通る経路を、以下「第1経路」と呼ぶ。また、燃料電池FCから供給された電力がスイッチング素子Q1、Q3、Q5、または、Q2、Q4、Q6を通る経路を、以下「第2経路」と呼ぶ。
【0026】
u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5とが正極母線Lpを介して負荷Loに接続されている。u相下アームを構成するスイッチング素子Q2と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6とが負極母線Lnを介して負荷Loに接続されている。
【0027】
上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作に伴い、蓄電装置Sの電圧である直流電圧を負荷Loに供給できるようになっている。負荷Loは、例えば車両駆動用モータや荷役用モータである。
【0028】
各スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子には、制御部Cntが接続されている。制御部Cntは、制御信号であるパルスパターンに基づいてDCDCコンバータCnvのスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング動作させる。
【0029】
DCDCコンバータCnvは、入力される制御信号によりスイッチング素子Q1~Q6をオン、オフすることで、燃料電池FCの電圧を一定電圧に変換し、負荷Loや蓄電装置Sに出力する。
【0030】
リアクトルRe1は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q1-スイッチング素子Q2間との間に接続される。リアクトルRe2は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q3-スイッチング素子Q4間との間に接続される。リアクトルRe3は、電流検出部Si0と、スイッチング素子Q5-スイッチング素子Q6間との間に接続される。
【0031】
電流検出部Si1は、リアクトルRe1と、スイッチング素子Q1-スイッチング素子Q2間との間に接続される。電流検出部Si2は、リアクトルRe2と、スイッチング素子Q3-スイッチング素子Q4間との間に接続される。電流検出部Si3は、リアクトルRe3と、スイッチング素子Q5-スイッチング素子Q6間との間に接続される。
【0032】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、制御部Cntの制御に基づき供給される水素と酸素(酸化剤ガス)との電気化学反応を利用して発電を行う。蓄電装置Sは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCnvと負荷Loとの間に接続される。
【0033】
DCDCコンバータCnvから出力される電力が、負荷Loが要求する電力より大きい場合、余剰分の電力が蓄電装置Sに供給され、蓄電装置Sが充電される。また、DCDCコンバータCnvから出力される電力が、負荷Loが要求する電力より小さい場合、不足分の電力が蓄電装置Sから負荷Loに供給される。また、負荷Loから蓄電装置Sに回生電力が供給されると、蓄電装置Sが充電される。なお、蓄電装置Sは、充電及び放電することが可能な蓄電装置(リチウムイオン電池など)であれば、リチウムイオンキャパシタに限定されない。
【0034】
電流検出部Si0は、燃料電池FCからDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0035】
電流検出部(電流検出手段)Si1は、スイッチング素子Q1またはスイッチング素子Q2を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0036】
電流検出部(電流検出手段)Si2は、スイッチング素子Q3またはスイッチング素子Q4間を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0037】
電流検出部(電流検出手段)Si3は、スイッチング素子Q5またはスイッチング素子Q6間を介してDCDCコンバータCnvに流れる電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0038】
電流検出部Si4は、燃料電池FCまたは蓄電装置Sから負荷へ流れる電流、すなわち、負荷が要求する電流を検出し、その検出した電流を制御部Cntに出力する。
【0039】
電圧検出部V1は、燃料電池FCの電圧を検出し、その検出した電圧を制御部Cntに出力する。電圧検出部V2は、蓄電装置Sの電圧を検出し、その検出した電圧を制御部Cntに出力する。電圧検出部V3は、負荷Loが燃料電池システム1へ要求する電圧(以下、「システム電圧」とも呼ぶ)を検出し、その検出した電圧を制御部Cntに出力する。なお、燃料電池FCの電圧の検出方法は、燃料電池FCの両端電圧を直接測定してもよいし、燃料電池FCを構成する燃料電池セルのうち、代表の1つのセル電圧を測定し積層した燃料電池セルの枚数を乗算した電圧としてもよい。あるいは、代表の1つのセル電圧自体を用いてもよい。すなわち、燃料電池の電圧が必要十分な精度で測定できればその手法は問わない。蓄電装置S又は負荷Loの電圧の検出に関しても同様である。
【0040】
温度センサTsは、燃料電池システム1を構成する部品の温度(以下、「部品温度」とも呼ぶ)を測定する。例えば、温度センサTsは、燃料電池Fcを冷却する液体(冷却水)の水温により燃料電池Fcの部品の温度を測定する。
【0041】
温度センサTsは、燃料電池Fcの近傍に配置して、燃料電池Fcの部品温度を測定してもよい。また、温度センサTsは、燃料電池Fcを冷却する気体の温度により燃料電池Fcの部品温度を測定してもよい。また、温度センサTsは、蓄電装置S、DCDCコンバータCnv、制御部Cntなど、燃料電池システム1を構成する構成部品の部品温度を測定してもよい。
【0042】
制御部Cntは、CPU(Central Processing Unit)またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、制御信号を出力する。制御部Cntは、コンプレッサCpおよびDCDCコンバータCnvの動作を制御することで燃料電池FCの発電量(電力)を制御する。すなわち、水素タンクHtから燃料電池FCに供給される燃料(水素)やコンプレッサCpから供給される空気(酸素)の量が増加するほど、燃料電池FCの発電量が増加する。また、水素タンクHtから燃料電池FCに供給される燃料(水素)やコンプレッサCpから供給される空気(酸素)の量が減少するほど、燃料電池FCの発電量が減少する。
【0043】
なお、制御部Cntは、燃料電池FCに供給される燃料や空気の量を段階的に増加または減少させてもよい。また、制御部Cntは、燃料電池FCに供給される燃料や空気の量をゼロにすると、所定時間経過後に、燃料電池FCの発電が停止して燃料電池FCの発電量がゼロになるものとする。また、燃料電池FCから出力される電流が増加するほど、燃料電池FC(燃料電池セル)の電圧が減少し、燃料電池FCから出力される電流が減少するほど、燃料電池FC(燃料電池セル)の電圧が増加するものとする。
【0044】
また、制御部Cntは、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力に応じた電流が燃料電池FCから出力されるように、かつ、燃料電池FCの電圧が閾値を超えないように、DCDCコンバータCnvの動作を制御する。なお、燃料電池FCの電圧が閾値を超えて燃料電池FCが劣化しないように、DCDCコンバータCnvに流れる電流を調整する処理を高電位回避処理という。また、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力が増加するほど、制御信号のデューティ比が増加し、負荷Loや蓄電装置Sから要求される電力が減少するほど、制御信号のデューティ比が減少するものとする。また、閾値は、燃料電池FCが劣化するおそれがあるときの燃料電池FCの電圧とし、燃料電池FCの電圧が閾値を超えそうなとき、制御信号のデューティ比の減少が制限される。燃料電池システム1では、高電位回避を行うために燃料電池FCのセル当たりの電圧が第1の閾値以上とならないように設定している。この第1の閾値の電圧を、以下「高電位回避電圧」という。
【0045】
本実施形態においては、低コストの燃料電池システム1を作るために、燃料電池FCを構成するセルの枚数を減らして、昇圧式のDCDCコンバータCnvで燃料電池FCの電圧を昇圧させる構成としている。燃料電池FCの電圧は、下記式1を満たすよう設定される。下記式1における“燃料電池FCの電圧”とは、燃料電池FCの両端電圧である。
【0046】
燃料電池FCの電圧≦高電位回避電圧×セル枚数・・・式1
DCDCコンバータCnvは、昇圧式なので、通常の運転時、即ち、負荷Loにより電流が引かれている場合には、燃料電池FCの電圧が、蓄電装置Sの電圧とオーバーラップしないよう、燃料電池FCの電圧が、蓄電装置Sの電圧よりも小さくなるようにセルの枚数を調整される。但し、燃料電池FCの電圧が小さくなるようにし過ぎると、セルの枚数が少なくなり過ぎる。その結果、燃料電池FCの出力が不足するため、燃料電池システムとして成立しなくなる。
【0047】
したがって、本実施形態においては、高電位回避を行うとともに、燃料電池システム1の出力を向上するために、燃料電池システム1は、燃料電池FCによる発電を停止した際に、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなるように設定する。具体的には、負荷Loや蓄電装置Sからの要求電力がなくなった際に燃料電池FCによる発電を停止し、高電位回避電圧×セル枚数の値が蓄電装置Sの電圧よりも高くなるようにセル枚数が定められている。なお、燃料電池システム1は、燃料電池FCによる発電中は燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも低く設定する。これにより、DCDCコンバータCnvの動作すべきタイミングが明確になるため、DCDCコンバータCnvの制御が容易となる。
【0048】
制御部Cntは、発電を停止した際に燃料電池FCで発生する電力を第1経路(ダイオードD1、D3、D5)または第2経路(スイッチング素子Q1、Q3、Q5)のうち少なくとも一方によって蓄電装置に充電可能な状態とする。
【0049】
本実施形態において、発電を停止した際に燃料電池FCで発生する電力とは、制御部Cntの制御に基づき供給がゼロにされた水素や酸素のうち、燃料電池システム1内に残留する水素や酸素の反応により生じる電力をいう。また、燃料電池FCによる発電を停止とは、燃料電池FCの発電量が完全にゼロになる場合だけでなく、燃料電池FCによる発電を抑制し、燃料電池FCの発電量が限りなくゼロに近くなる場合も含まれる。したがって、発電を停止した際には、第1経路(ダイオードD1、D3、D5)の方へ電流を流すことにより、燃料電池FCの電流を蓄電装置Sで充電することができる。
【0050】
また、燃料電池システム1では、蓄電装置Sが過充電とならないように、燃料電池FCの電圧が第2の閾値以上とならないように設定している。この第2の閾値の電圧を、以下「発電停止電圧」という。発電停止電圧は、燃料電池システム1の固有の値である。例えば、蓄電装置SのSOC(State Of Charge)の所定の割合(蓄電残量)における電圧を発電停止電圧として使用する。蓄電装置Sの電圧が発電停止電圧を越えた(下回った)際に、燃料電池FCによる発電を停止し、燃料電池システム1全体のシステムを停止する。燃料電池FCのセルの枚数は、下記式2により決定する。下記式2における“高電位回避電圧”とは、燃料電池FCの両端電圧である。
【0051】
セル枚数×高電位回避電圧=発電停止電圧+Vf・・・式2
Vfは、ダイオードD1、D3、D5による損失分の閾値電圧(立ち上がり電圧)である。
【0052】
燃料電池FCのセル枚数を式2が成立するよう設定すると、燃料電池FCのセルの枚数を多く設定し、結果として燃料電池FCの出力をあげることができる。また、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも小さくなる電圧(領域)においては昇圧コンバータを動かさずに電流を流しておくだけで、受動的な降圧動作(以下、「パッシブ降圧」とも呼ぶ)で高電位回避を行い燃料電池FCの電圧を下げることができる。すなわち、u相を構成するスイッチング素子Q1、Q2、v相を構成するスイッチング素子Q3、Q4及び、w相を構成するスイッチング素子Q5、Q6のそれぞれの制御信号のデューティ比を0にすることによりパッシブ降圧が行われる。
【0053】
負荷Loにより電流が引かれている場合には、燃料電池FCの電圧は下がるので、DCDCコンバータCnvは燃料電池FCの電圧を昇圧して所望の電圧を出力する。昇圧する場合には、DCDCコンバータCnvは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5を全てOFFにし、下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6の位相をずらしてON-OFFする。
【0054】
負荷Loにより電流が引かれていない場合には、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電を停止する。但し、燃料電池FCによる発電が停止された場合であっても、負荷Loにより電力が引かれない場合には、残留する燃料(水素)や空気(酸素)の反応で生じる電力により燃料電池FCの電圧が上がる。そして、下記式3を満たし、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなると、DCDCコンバータCnvにより昇圧することはできなくなる。下記式3における“燃料電池FCの電圧”とは、燃料電池FCの両端電圧である。
【0055】
燃料電池FCの電圧>蓄電装置Sの電圧・・・式3
発電を停止した際に、式3の状態となった場合であっても、式2で設定したセル枚数とすることにより、パッシブ降圧により第1経路の方へ電流を流れるように、燃料電池FCの電流を蓄電装置Sで充電させることができ、燃料電池FCのセルが高電位回避電圧以下となる状態を維持できる。パッシブ降圧により受動的に電流を流す場合には、DCDCコンバータCnvは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5、下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6を全てOFFにする。式3の関係が成立している場合には、燃料電池FCで発生した電流は、上アームのダイオードD1、D3、D5を通って蓄電装置Sへ流れる。
【0056】
したがって、寄生ダイオードである上アームのダイオードD1、D3、D5の特性を活用して、パッシブ降圧により高電位回避を行うことができる。また、燃料電池FCの電圧と蓄電装置Sの電圧とのオーバーラップを許容することができるため、燃料電池FCのセルの枚数を増加させて、燃料電池FCの出力をあげることができる。
【0057】
また、式2を満たすセル枚数とすると、昇圧式のDCDCコンバータCnvを動かさずに(即ち制御せずに)パッシブ降圧により高電位回避を行うことができつつ、燃料電池FCの出力を最適とした状態が決まる。よって、燃料電池システム1の制御が複雑にならずに、セル枚数の最適化を図ることができる。
【0058】
このように、実施形態の燃料電池システム1では、燃料電池FCによる発電を停止した際に、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも高くなるようにする。そして、燃料電池システム1は、燃料電池FCによる発電を停止した際に燃料電池FCで発生する電力をダイオードD1、D3、D5(第1の経路)またはスイッチング素子Q1、Q3、Q5(第2経路)のうち少なくとも一方によって蓄電装置Sに充電可能な状態とする構成である。
【0059】
これにより、負荷Loにより電流が引かれていない場合には、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電を停止した場合であっても、パッシブ降圧により第1経路の方へ電流を流れるようセル枚数を決定することで、燃料電池FCの電流を蓄電装置Sで充電させることができる。これにより、高電位回避を行うことができるとともに、燃料電池システムの出力を向上することができる。
【0060】
また、制御部Cntは、燃料電池FCによる発電中は燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも低くなるようにDCDCコンバータCnvを制御する。具体的には、制御部Cntは、発電制御として、蓄電装置Sの充電量(SOC)に応じて、段階的に、目標発電電力を切り替える。蓄電装置Sの充電量が低下したときに燃料電池FCによる発電を開始し、制御部Cntは要求電力に応じた目標の電流となるようDCDCコンバータCnvを制御する。これにより、DCDCコンバータCnvを動作すべきタイミングを明確にすることができるため、DCDCコンバータCnvの制御が容易となる。
【0061】
また、制御部Cntは、燃料電池FCの発電電圧範囲(燃料電池FCの制御における下限電圧及び上限電圧の範囲)のうち最も低い電圧を、蓄電装置Sの利用電圧範囲(蓄電装置Sの下限SOC及び上限SOCから設定した電圧の範囲)のうち最も低い電圧よりも低い電圧に設定する。これにより、蓄電装置Sの性能を可能な限り多く活用することができる。
【0062】
また、DCDCコンバータCnvのスイッチング素子をMOSFETで構成し、ダイオードをMOSFETの寄生ダイオードで構成する。これにより、DCDCコンバータCnvの構成をメカニカルスイッチ等で構成するよりも簡単な構成で作成することができ、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0063】
次に、
図2を参照して、燃料電池FCと蓄電装置Sの電圧と電力との関係について説明する。
図2は、燃料電池FCと蓄電装置Sの電圧と電力との関係を示す図である。
図2において、点線Vfは燃料電池FCの電圧と発電電力との関係を示し、一点鎖線Vsは蓄電装置Sの電圧と放電電力との関係を示す。なお、一点鎖線Vsは、蓄電装置Sが放電する(放電した電力が増加する)ほど、電圧が低下することを示している。また、白丸は、制御部Cntが目標とする、目標発電電力である。閾値電圧Vtは、燃料電池システム1全体のシステムが停止に至る電圧を示す。
【0064】
図2(1)のうち領域A1、A2は、パッシブ降圧が行われる領域を示し、領域A3は、昇圧が行われる領域を示す。領域A1は、低負荷側のパッシブ降圧が行われる領域を示し、領域A2は、高負荷側のパッシブ降圧が行われる領域を示す。
【0065】
燃料電池FCの発電量Winが負荷Loが要求する電力量Woutよりも低い場合、すなわち、高負荷がかかると蓄電装置Sからの電力の持ち出しが行われて蓄電装置SのSOCが低下し、その蓄電装置Sの電圧が低下することとなる。蓄電装置Sの電圧が低下して燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きくなる領域A2になると、パッシブ降圧が行われる。
【0066】
高負荷側のパッシブ降圧が行われる領域A2が発生する場合には、燃料電池FCへ供給される酸化剤ガスの供給量に対して、燃料電池FCが発電する発電電力が大きくなる。これは、パッシブ降圧が行われることで、燃料電池FCから放出される電流(電荷量)が大きくなるためである。制御部Cntは供給される水素の量に対して空気の量が不足しないようにコンプレッサCpが制御しているが、パッシブ降圧現象の発生によって、燃料電池FCの発電電力が増大し、電力に対して酸化剤ガスが不足となる、いわゆるエア欠状態となり、燃料電池FCのPV特性が急激に低下することとなる。
【0067】
より具体的に説明すると、
図2(2)のCの目標発電電力に必要な酸化剤ガスの分しか供給されていない状態が継続すると、パッシブ降圧現象の発生によって、酸化剤ガスが不足状態となるエア欠状態が発生する。二点鎖線Vf1はCの段階においてエア欠状態が発生した場合の燃料電池FCの電圧と電力との関係を示す。エア欠状態が発生すると、二点鎖線Vf1に示すように、燃料電池FCのPV特性が低下し、発電量Winがこれ以上あがらなくなる。一方で、蓄電装置Sからの持ち出しは継続し、最終的に蓄電装置Sが過放電となり、閾値電圧Vt以下となる結果、燃料電池システム1全体のシステムが停止する事態が発生する。
【0068】
そこで、本実施形態においては、高負荷側でパッシブ降圧を実施しているときは、
図2(3)のCの段階において燃料電池FCへ供給する酸化剤ガスの供給量を増加させエア欠状態を解消することで燃料電池FCのPV特性を改善する。鎖線Vf2はCの段階において酸化剤ガスの供給量を増加させた場合の燃料電池FCの電圧と電力との関係を示す。燃料電池FCのPV特性が改善されることにより、鎖線Vf2に示すように、燃料電池FCの発電量Winが増加し、蓄電装置Sの電力の持ち出しを抑えることで、蓄電装置Sが閾値電圧Vt以下となるまでの時間を延長し、蓄電装置の電力不足に対する燃料電池システムの稼働時間の延長(延命)を行うことができる。
【0069】
図3は、燃料電池システム1の制御状態の遷移の一例を示す図である。燃料電池システム1の制御部Cntは、燃料電池システム1の制御状態を制御する。
【0070】
図3(1)は、従来の燃料電池システムの制御状態を示す。燃料電池システム1が搭載されているフォークリフトが坂道を登っているときなどは、燃料電池システム1は負荷Loから通常よりも大きな高出力が要求される(ステップS11)。高出力が要求された結果、燃料電池Fcの出力電力よりも大きい出力電力が要求された場合には、燃料電池システム1は、燃料電池Fcからの出力電力に加えて、蓄電装置Sから電力を持ち出して負荷Loへ供給する(ステップS12)。
【0071】
但し、蓄電装置Sの蓄電容量には限界があるため、蓄電装置Sからの電力の持ち出しが継続して行われると、蓄電装置Sの電圧が低下して、蓄電装置Sが過放電となる。その結果、蓄電装置Sの電力不足により燃料電池システム1全体が停止することとなる(ステップS13)。
【0072】
そこで、本実施形態では、燃料電池Fcの発電電力量が負荷Loの要求電力量よりも低い場合には、燃料電池Fcへ供給する酸化剤ガスの供給量を増加させることにより、蓄電装置Sの電力不足に対する燃料電池システム1の稼働時間の延長を行うこととした。
【0073】
図3(2)は、本実施形態の燃料電池システム1の制御状態を示す。
【0074】
例えば、燃料電池システム1が搭載されているフォークリフトが坂道を継続して上り続けているときなどは、燃料電池システム1は負荷Loから通常よりも大きな高出力が要求される(ステップS21)。高出力が要求された結果、燃料電池Fcの出力電力よりも大きい出力電力が要求された場合には、燃料電池システム1は、燃料電池Fcからの出力電力に加えて、蓄電装置Sから電力を持ち出して負荷Loへ供給する(ステップS22)。
【0075】
ここで、制御部Cntは、所定条件を満たすことにより、パッシブ降圧が検知されたか否かを判定する。パッシブ降圧の検知は、以下の4つの所定条件を満たすか否かに基づいて判定される。
【0076】
第1条件:燃料電池Fcの電圧>蓄電装置Sの電圧
第2条件:DCDCコンバータCnvの電流>0
第3条件:DCDCコンバータCnvのデューティ比=0
第4条件:負荷Loが要求する電力量>燃料電池Fcの発電量
第1条件における、燃料電池Fcの電圧は、電圧検出部V1により検出された電圧であり、蓄電装置Sの電圧は、電圧検出部V2により検出された電圧である。
【0077】
第2条件における、DCDCコンバータCnvの電流が0以上という条件は、u相、v相の電流が0以上という条件により判定してもよい。また、DCDCコンバータCnvの電流が0以上という条件は、u相、v相、w相の電流が0以上という条件により判定してもよい。
【0078】
第3条件におけるDCDCコンバータCnvのデューティ比=0という条件は、スイッチング素子Q1~Q6によるスイッチング動作が行われていない状態であり、u相、v相のデューティ比=0という条件により判定してもよい。また、DCDCコンバータのデューティ比=0という条件は、u相、v相、w相のデューティ比=0という条件により判定してもよい。u相、v相、w相の電流は、それぞれ電流検出部Si1、Si2、Si3により検出された電流である。
【0079】
第2条件かつ第3条件である場合とは、DCDCコンバータCnvのスイッチング素子Q1~Q6によるスイッチング動作が行われていないにもかかわらず、ダイオードD1~D6を通じて受動的にDCDCコンバータCnvに電流が流れている状態をいう。
【0080】
第4条件における負荷Loの電圧は、電圧検出部V3により検出されるシステム電圧であり、燃料電池Fcの電圧は、電圧検出部V1により検出された電圧である。
【0081】
パッシブ降圧が検知された場合(ステップS23)には、制御部Cntは、コンプレッサCpを制御して、燃料電池Fcへ供給される酸化剤ガスの供給量を増加させる(ステップS24)。コンプレッサCpから燃料電池Fcへ供給する酸化剤ガス(酸素)の量を増加させると、燃料電池FCの発電量が増加する。すなわち、酸化剤ガスの量を増加させた場合には、水素タンクHtから供給される未反応部分の燃料(水素)と反応し、その結果燃料電池Fcの発電量を増加させることができる。すなわち、燃料電池Fcの発電量を増加させることにより、蓄電装置Sから持ち出される電力量を抑制することにより、燃料電池システム1全体としての稼働時間を延長することができる。
【0082】
酸化剤ガスの供給量を増加させて、燃料電池Fcの発電量を増加させた結果、燃料電池システム1を構成する部品温度が上昇してしまう(ステップS31)。制御部Cntは部品温度が閾値以上となったか否かを判定する。部品温度の閾値としては、例えば、燃料電池システム1を構成する各部品の使用可能な温度帯が設定される。
【0083】
部品温度が閾値以上となった場合(ステップS32)には、コンプレッサCpを制御して、燃料電池Fcへ供給される酸化剤ガスの供給量を増加前の元の状態に戻す(ステップS25)。コンプレッサCpから燃料電池Fcへ供給する酸化剤ガス(酸素)の量を元に戻す(減少させる)と、燃料電池システム1を稼働する各部品の稼働状態を通常状態に戻して温度上昇を防ぐことができ、過熱による燃料電池システム1の故障を抑制することができる。
【0084】
また、燃料電池Fcへ供給される酸化剤ガスの供給量を増加前の元の状態に戻すと、燃料電池FCの発電量が減少し、燃料電池システム1全体としての電力の供給量が不足するため、燃料電池Fcからの出力電力に加えて、蓄電装置Sから電力を持ち出して負荷Loへ供給する(ステップS33)。
【0085】
その後、蓄電装置Sからの電力の持ち出しが継続して行われると、蓄電装置Sの電圧が低下して、蓄電装置Sが過放電となる。その結果、蓄電装置Sの電力不足により燃料電池システム1全体を停止する(ステップS34)。
【0086】
以上に示すように、パッシブ降圧を検知したら、燃料電池FCへ供給される酸化剤ガスを増加することにより、燃料電池Fcの発電量を増加させる。これにより、蓄電装置Sから持ち出される電力量を減少させ、燃料電池システム1全体としての稼働時間を延長することができる。
【0087】
次に、
図4を参照して燃料電池システム1が実行する燃料電池制御処理について説明する。
図4は、燃料電池システム1の制御部Cntが実行する燃料電池制御処理の一例を示す図である。
【0088】
初めに、制御部Cntは、負荷Loから高出力の要求がされると(ステップS41)、蓄電装置Sから電力の持ち出しを行う(ステップS42)。
【0089】
制御部Cntは、蓄電装置Sから電力の持ち出しが行われたのち、パッシブ降圧を検知したか否かを判定する(ステップS43)。
【0090】
パッシブ降圧が検知されなかった場合(ステップS43:NO)には、蓄電装置Sからの電力の持ち出しが継続して行われる。パッシブ降圧が検知された場合(ステップS43:YES)には、制御部CntはコンプレッサCpを制御して、燃料電池FCへ供給される酸化剤ガスの供給量を増加させる(ステップS44)。
【0091】
酸化剤ガスの供給量を増加させ燃料電池FCの発電量を増加させた結果、燃料電池システム1を構成する部品温度が閾値以上となったか否かを判定する(ステップS45)。部品温度が閾値未満である場合(ステップS45:NO)には、制御部Cntは酸化剤ガスの供給量の増加を継続して行う。部品温度が閾値以上である場合(ステップS45:YES)には、制御部CntはコンプレッサCpを制御して酸化剤ガスの供給量をステップS44の増加前の元の状態に戻す(ステップS46)。
【0092】
燃料電池Fcへ供給される酸化剤ガスの供給量を増加前の元の状態に戻すと、燃料電池FCの発電量が減少し、燃料電池システム1全体としての電力の供給量が不足する。このため、制御部Cntは、燃料電池Fcからの出力電力に加えて、蓄電装置Sから電力を持ち出して負荷Loへ供給する(ステップS47)。
【0093】
制御部Cntは、蓄電装置Sからの電力の持ち出しの結果蓄電装置のSOCが閾値以下となったか否かを判定する(ステップS48)。蓄電装置SのSOCとは、燃料電池システム1を稼働させるのに必要十分な値が設定される。蓄電装置SのSOCが閾値より大きい場合(ステップS48:NO)には、制御部Cntは、蓄電装置Sからの電力の持ち出しを継続して行う。蓄電装置SのSOCが閾値以下である場合(ステップS48:YES)には、燃料電池システム1の安全のために燃料電池システム1の稼働を停止する(ステップS49)。これにより、燃料電池システム1が実行する燃料電池制御処理は終了となる。
【0094】
<その他の実施形態>
燃料電池システム1は、
図5に示すようなDCDCコンバータであってもよい。この場合、スイッチング素子を有する第2経路は有さないが、DCDCコンバータによる昇圧動作を停止した際はダイオードを有する第1経路によって電流が流れ、燃料電池FCの高電位回避が行われる。
【0095】
また、所定条件は、上記実施形態に記載した所定条件に限られない。例えば第3条件の、DCDCコンバータCnvのデューティ比が0か否かの判定を割愛してもよい。また第4条件の、負荷Loが要求する電力量>燃料電池Fcの発電量か否かの判定を割愛してもよい。 また、上述の実施形態においては、パッシブ降圧により電流を流す場合には、上アームのダイオードD1、D3、D5へ電流を流しているがこの限りではない。
【0096】
制御部Cntは、電圧検出部V1で検出した燃料電池FCの電圧が電圧検出部V2で検出した蓄電装置Sの電圧よりも高いことを検出したときに、スイッチング素子Q1、Q3、Q5をON(閉じ状態)にしてもよい。これにより、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きい状態(上記式3の状態)となった場合であっても、燃料電池FCで発生した電流は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5を通って蓄電装置Sへ流れる。これにより、ダイオードによる電力の損失がなくなり、燃料電池FCで出力した電力を蓄電装置Sに効率よく充電することができる。
【0097】
また、制御部Cntは、スイッチング素子Q1~Q6のON-OFF状態(開閉状態)を検知可能にしてもよい。制御部Cntは、スイッチング素子Q1~Q6のON-OFF動作が行われていない場合に、第1経路または第2経路に電流が流れていることを検出した場合には、スイッチング素子Q1~Q6をOFF状態(閉じ状態)とする。これにより、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Sの電圧よりも大きい状態(上記式3の状態)となった場合であっても、燃料電池FCで発生した電流は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5を通って蓄電装置Sへ流れる。これにより、ダイオードによる電力の損失がなくなり、燃料電池FCで出力した電力を蓄電装置Sに効率よく充電することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 燃料電池システム
Ve 車両
Lo 負荷
FC 燃料電池
Si0 電流検出部
V1、V2 電圧検出部
Co コンデンサ
Re1、Re2、Re3 リアクトル
Si1、Si2、Si3 電流検出部
Cnv DCDCコンバータ
S 蓄電装置
Cnt 制御部
Q1~Q6 スイッチング素子
D1~D6 ダイオード
Cp コンプレッサ
Ht 水素タンク