(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】脳卒中、慢性外傷性脳症、及び外傷性脳損傷を含む脳性低酸素症の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/33 20150101AFI20241128BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241128BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K35/33
A61P9/10
A61P25/28
A61K45/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021524164
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019059683
(87)【国際公開番号】W WO2020093051
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2018-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516071686
【氏名又は名称】フィジーン、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FIGENE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
(72)【発明者】
【氏名】イチム、トーマス
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-502406(JP,A)
【文献】特表2018-511599(JP,A)
【文献】J. Physiol. Sci.,2015年,65, [Suppl.1],p.S76(S41-1)
【文献】iScience,2022年,25, [11],Article.105395
【文献】Cells,2021年,10, [4],Article.961
【文献】Ann. Neurol.,1996年,39, [1],p.123-127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/00-36/068
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の線維芽細胞を含む、個体の脳内での再生及び/又は治癒反応を誘導するための組成物であって、
前記線維芽細胞は、さらにCD73
及びCXCR-4を発現し、
前記個体は、脳卒中及び/又は一過性虚血発作を患っている、組成物。
【請求項2】
個体は、外傷性脳損傷を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記外傷性脳損傷は、慢性外傷性脳障害、1つ以上の脳震盪、爆風による外傷性脳損傷、バックラッシュ脳損傷(coup-contrecoup brain injury)、脳挫傷、揺さぶられっ子症候群、貫通型損傷、びまん性軸索損傷、セカンドインパクト損傷、ロックイン症候群、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項
2記載の組成物。
【請求項4】
前記脳卒中は、虚血性脳卒中又は出血性脳卒中である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
投与は、予防的に個体に与えられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記線維芽細胞は、再生活性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記再生活性は、VEGF、BDNF、NGF、PDGF-BB、及びそれらの組合せからなる群より選択される因子を産生する機能を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記再生活性は、神経幹細胞増殖を刺激する機能を含む、請求項6又は7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記線維芽細胞は、皮膚、包皮、脂肪、末梢血、脳脊髄液、骨髄、胎盤、臍帯血、ワートンゼリー、及びそれらの組合せからなる群より選択される組織に由来する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記線維芽細胞は、CD105を発現する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記線維芽細胞は、CXCR-4、CD90、及び/又はC73をさらに発現する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記線維芽細胞は、NANOG、OCT-4、SSEA-4、幹細胞因子受容体、及びそれらの組合せからなる群より選択されるマーカーの少なくとも1つを発現する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記線維芽細胞は、哺乳動物細胞集団を単離し、亜集団を濃縮する工程を含む方法によって単離され、亜集団がCD45
-表現型プロファイルを発現し、それによって再生特性を有する線維芽細胞を単離する、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記線維芽細胞は、鼻腔内、髄腔内、及び/又は静脈内に投与される、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記線維芽細胞は、脳内に局所的に、又は全身的に投与される、請求項1~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記個体は、脳損傷又は脳卒中及び/又は一過性虚血発作又は慢性又は急性のタウオパチーのための追加治療を提供される、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/755,553号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、及び医学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
脳卒中は、古典的には、血管性の原因による中枢神経系(CNS)の急性限局性損傷に起因する神経学的欠損として、出血性又は梗塞関連のいずれかで記述されている。脳卒中は、世界中で障害及び死亡の主要な原因であることが知られており[1]、脳卒中関連死の数は増加している[2]。1990~2010年の間、脳卒中の世界的な発症率は安定していると思われたが、一方で、初回脳卒中の発症率、脳卒中の有病率、脳卒中による障害調整生存年数、及び脳卒中関連死亡数のような他のパラメータはそれぞれ68、84、12、26%増加した。割合と数字の違いは、人口構造の変化、平均余命の増加、保健医療サービスの世界的な改善を反映している可能性がある。2030年には、最大1200万人の死亡が脳卒中から予想される[1]。さらに、それは長期障害の主要な原因である[3]。
【0004】
脳卒中には、主に虚血性脳卒中と出血性脳卒中の2種類が認められている。虚血性脳卒中は、脳卒中の総数の80%以上を占める。血栓溶解及び/又は血栓除去は、虚血性脳卒中の唯一検証された治療戦略である[4,5]。残念ながら、選択基準が制限されているため、このような治療を受けている患者は20%未満である。虚血及び再潅流に起因する直接的な脳損傷のほかに、急速に進行する無菌性炎症が脳卒中後の最初の1~3日間に梗塞サイズを悪化させ、そのため臨床転帰を悪化させるというエビデンスが増えている[6]。当該技術分野において、臨床転帰を改善し、脳卒中に罹患した患者に広く適応されるのであろう新しい治療法が必要とされている。
【0005】
外傷性脳損傷(TBI)は、頭蓋の衝撃又は貫通損傷に起因する、脳における機能の破壊である。TBIはその原因が不均一であり、2段階の事象として見ることができる:1)出血及び虚血、組織の断裂及び軸索損傷等の一次病理学的事象をもたらす、機械的衝撃によって引き起こされる、限局性又はびまん性の一次損傷;2)びまん性炎症、細胞死及びグリオーシス等の、一次損傷の結果の二次損傷。この二次傷害は、傷害直後に始まり、数週間続くことがあり得、神経幹細胞活性の能動的阻害が関与すると考えられている。まとめると、これらの事象は神経変性をもたらす[7]。
【0006】
頭部外傷は、開放又は閉鎖されていると記載されている。開放性頭部外傷は、弾丸、鋭利な物体、又は頭蓋骨骨折による頭皮及び頭蓋骨の貫通であり、脳組織の裂傷を生じる。閉鎖性損傷は、急速な脳の加速又は減速が、震え、衝突、転倒、又は他の突然の発作から生じる場合に生じる。この急速な加速又は減速は、接触点(クープ)又はその反対の点(カウンタクープ)で脳を損傷し得る[8]。側頭葉と前頭葉が最も損傷を受けやすく、これには軸索及び/又は血管の断裂が関与する可能性がある。ねじれた血管は漏出し、血腫、挫傷、又は脳内出血やクモ膜下出血に至ることがある[9]。
【0007】
TBIは急性であり、最近生じることもあれば、脳組織に対する炎症及び瘢痕の影響を含む、このような急性脳損傷の長期的結果から生じる慢性型であることもある。脳震盪は、短期間の健忘を伴う、即時性ではあるが一過性の意識消失と表現される。しかしながら、TBI被害者は、茫然自失か、失望しているか、又は混乱しているように見えることがある。脳震盪は、痙攣、低血圧、失神及び顔面蒼白を伴うことがある。これらの徴候及び症状は、通常、合併症を伴わない単発性脳震盪の症例では短期間である。
【0008】
サッカー選手及びボクサーは、他のスポーツの運動選手よりも著しく高い頻度の震盪を患っているようにみえる。ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のプロサッカー選手は、最近、競技日中に複数の打撃を受けた長期的な結果を一般の人々に注目させている。頻繁に報告される徴候として含まれるのは、認知の喪失、コミュニケーション技能の低下、情緒安定の低下、協調運動の低下、記憶喪失、認知症及び脳の微細構造の死後変化である[10-12]。興味深いことに、研究は、サッカー選手のポジションと脳損傷の増強マーカーの間の相関を示している[13]
【0009】
TBIのますます普及しているサブセットは、芽球誘発性又は芽球性TBI(bTBI)である。テロとの闘いにおける即席爆発装置(IED)を含む爆薬の使用の増加に伴い、bTBIも増加している。このような傷害はしばしば、イラク及びアフガニスタンにおける戦争の顕著な傷害と呼ばれ、戦闘ゾーンにおける軍事労働者及び文民労働者の両方に影響を及ぼす。爆発性損傷は戦闘中の米国兵士におけるTBIの最も一般的な原因であり、戦務員の間の障害の主要な原因である。TBIに関連するが、これに限定されないのは脳内の血腫である。血腫は、血管外への血液の貯留と広く定義され、脳内で発生した場合、ミクログリア細胞の活性化及び損傷部位への移動と関連している。
【0010】
米国では年間約150万人が外傷性脳損傷(TBI)を被っており、これは脳機能を一時的又は永久的に損なう脳への物理的損傷を反映している。そのように負傷した総数のうち、約5万人が死亡し、他の8万人がある程度の障害を有する。TBIの主な原因は、事故(自動車、自転車、歩行者)、暴行、スポーツ関連傷害である。
【0011】
TBIに罹患しているかなりの量の患者が軽度の傷害を有し、従って傷害の直後に診断されないことが知られている。未診断及び未治療のTBIは、一部の徴候及び症状が受傷後数日から数カ月遅れることがあり、未治療の場合は患者の身体的、情緒的、行動的、社会的、又は家族の状態に重大な影響を及ぼし、機能障害をもたらす可能性があるため、リスクを呈する。損傷からの二次損傷は、最初の衝撃の後も継続するので、早期治療(したがって迅速な診断)、特にポイントオブケア治療が望ましい。
【0012】
少なくともTBIを含む、損傷梗塞サイズを減少させ、ならびに二次炎症応答を制限する脳損傷又は疾患のための治療が、当該分野で必要とされる。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、それを必要とする個体における脳損傷又は医学的状態の処置又は予防を対象とするシステム、方法、及び組成物を対象とする。特定の実施形態では、この処置は、個体の脳における再生を誘導する。特定の実施形態は、脳損傷又は医学的状態の処置又は予防のために、個体への線維芽細胞の投与を利用する。特定の局面において、線維芽細胞は、再生線維芽細胞である。再生活性は、線維芽細胞に固有であり得るか、又は再生活性を増加させるように操作され得る
【0014】
本開示のいくつかの実施形態では、個体は、脳損傷を有するか、又は脳損傷を有する危険性がある。線維芽細胞の投与は、個体が脳損傷と診断された後に与えられ得るか、又は、例えば、当業者が、個体が脳損傷を有することを合理的に予測するか、又は将来のある時点で脳損傷を有するかもしれない場合、脳損傷と診断される前に個体に与えられ得る。後者の例では、個体に線維芽細胞を予防的に投与することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、脳損傷は、例えば、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中又は虚血性発作を含んでもよく、又はタウオパシーを含んでもよい。外傷性脳損傷の例には、慢性外傷性脳障害、1つ以上の脳震盪、爆風誘発性外傷性脳損傷、バックラッシュ脳損傷(coup-contrecoup brain injury)、脳挫傷、揺さぶられっ子症候群、貫通性損傷、びまん性軸索損傷、セカンドインパクト損傷、ロックイン症候群、又はそれらの組み合わせが含まれる。個人は、自分の仕事(例えば、建設、採掘、解体)に関連する活動;爆発物(例えば、軍隊又は解体の個人)への暴露;レクリエーションのためのスポーツ又は、例えば、フットボール又はボクシングのような仕事としての競技;又は、例えば、車両事故のような個人の頭部に機械的な力を(直接的又は間接的に)生じさせる外傷事象から脳損傷を受けている可能性がある。脳損傷は、例えば、TBIを誘発するために頭部に外傷を引き起こす任意の事象から生じ得る。脳の病状は、先天性の場合とそわない場合がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、個体は、脳卒中又は一過性虚血発作を患っている等の医学的状態からの脳損傷を有する。脳卒中は、虚血性のことも出血性のこともある。脳卒中又は一過性脳虚血発作に罹患した個人は、脳の特定の領域における機能の喪失を有し得る。機能の喪失は、一次事象からのものであってもよく、及び/又は一次事象によって誘発される炎症からのものであってもよい。
【0017】
特定の実施形態では、個体は、急性タウオパシー又は慢性タウオパシーのいずれかであり得るタウオパチー(tauopathies)等の医学的状態を有する。急性タウオパチーの例には、外傷性脳損傷、脳卒中、又は一過性脳虚血発作がある。慢性タウオパチーの例には、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、アルギロフィリック・グレイン認知症、英国型アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、皮質脳筋変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、ダウン症候群、17番染色体に連鎖するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ゲルストマン-ストラウスラー-シェインカー(Gerstmann-Straussler-Scheinker)病、ホールバーデン-スパッツ(Hallervorden-Spatz)病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン-ピック病C型、神経原線維変化を伴う非グアマン運動ニューロン(non-Guamanian motor neuron)病、ピック病、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク性脳アミロイド血管症、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症、及び多発梗塞性認知症等が含まれる。タウのレベルは急性又は慢性タウオパチーを有する個体の診断を補助するために、個体において測定されてもされなくてもよい。
【0018】
本開示の特定の実施形態では、個体が脳における再生を誘導することを含む、有効量の線維芽細胞を投与される。線維芽細胞は、非限定的な例として、皮膚、包皮、脂肪、末梢血、脳脊髄液、骨髄、胎盤、臍帯血、Whartonゼリー等の組織、又はそれらの組合せを含む任意の供給源由来であってよい。線維芽細胞は成長因子を産生する能力、神経幹細胞増殖を誘導する能力、治癒応答を誘導する能力、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない再生活性を有し得る。成長因子を産生する能力は、例えば、VEGF、VDNF、NGF、PDGF-BB、又はそれらの組み合わせを含む成長因子を産生する能力を含み得る。線維芽細胞は、CD105、CD73、CXCR-4、CD90、CD34、NANOG、OCT-4、SSEA-4、幹細胞因子受容体、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む1つ以上の特異的マーカー又はタンパク質を発現し得る。いくつかの実施形態では、線維芽細胞がCD45細胞マーカーを欠いていてもよい。
【0019】
線維芽細胞は、任意の適切な方法又は投与経路を使用して個体に投与され得る。線維芽細胞は、注射器等による注射によって投与することができる。投与は、全身性であってもよく、又は脳内の特定の部位に局所的であってもよい。線維芽細胞はまた、鼻腔内、髄腔内、及び/又は静脈内に投与され得る。当業者は、線維芽細胞の量及び投与回数を含む、最適な投与経路及び投与用量を決定することができる。
【0020】
本開示の治療又は予防を受ける任意の個体は、任意の年齢、性別、人種等であり得る。個体は、成人、小児、乳児、又は子宮内であり得る。
【0021】
本開示の実施形態は、個体の脳において再生及び/又は治癒応答を誘導する方法を包含し、この方法は、治療有効量の線維芽細胞を個体に投与することを包含する。個体は、外傷性脳損傷、例えば、慢性外傷性脳障害、1つ以上の脳震盪、爆風誘発性外傷性脳損傷、バックラッシュ脳損傷(coup-contrecoup brain injury)、脳挫傷、揺さぶられっ子症候群、貫通性損傷、びまん性軸索損傷、セカンドインパクト損傷、ロックイン症候群、及びこれらの組合せからなる群より選択される1つを有し得、有していなくてもよい。個体は、脳卒中(虚血性脳卒中又は出血性脳卒中)及び/又は一過性脳虚血発作に罹患していても、罹患していなくてもよい。患者は、慢性又は急性のタウオパチーを有することがある。特定の実施形態において、総タウ、切断された微小管関連タウ、リン酸化タウ、及び/又はタウ-Aの循環レベルが、個体において測定される。
【0022】
線維芽細胞は、再生活性を有し得、そして投与は個体に予防的に与えられ得る。特定の実施形態において、再生活性は、VEGF、BDNF、NGF、PDGF-BB、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される因子を産生する能力を含む。再生活性は、神経幹細胞増殖を刺激する能力を含み得る。特定の実施形態において、線維芽細胞は、皮膚、包皮、脂肪、末梢血、脳脊髄液、骨髄、胎盤、臍帯血、Whartonゼリー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される組織に由来する。線維芽細胞は、CD105、CD73、CXCR-4、CD90、及び/又はC73を発現し得る。線維芽細胞は、NANOG、OCT-4、SSEA-4、幹細胞因子受容体、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーのうちの少なくとも1つを発現し得る。線維芽細胞は、哺乳動物細胞集団を単離し、亜集団を濃縮する工程を含む一方法によって単離され得、ここで、亜集団はCD45-表現型プロファイルを発現し、それによって再生特性を有する線維芽細胞を単離する。線維芽細胞は、鼻腔内、髄腔内、及び/又は静脈内に投与され得る。これらは、脳に局所的に、又は全身的に投与することができる。個体は、脳損傷又は脳卒中及び/又は一過性脳虚血発作又は慢性もしくは急性タウオパチーに対する追加治療を提供され得る。追加の治療は、少なくとも1つの医療処置、少なくとも1つの薬剤、少なくとも1つの支持療法、又はそれらの組合せを含むことができる。特定の実施形態では、医療処置が凝固した血液を除去するための手術、頭蓋骨骨折を修復するための手術、脳内の出血を低減するための手術、頭蓋内の圧力を緩和するための手術、又はそれらの組み合わせを含む。薬剤は、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、利尿薬、筋弛緩薬、刺激薬、昏睡を医学的に誘発する薬剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤であり得る。薬剤は、タウ病理のためのワクチン、タウ又はタウ関連タンパク質に対する抗体、微小管安定化剤、タウ凝集阻害剤、タウの翻訳後修飾を阻害する薬剤、Hsp90阻害剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤であり得る。特定の実施形態では、支持療法が少なくとも1つの理学療法、作業療法、レクリエーション療法、言語又はコミュニケーション療法、心理カウンセリング、職業カウンセリング、認知療法、脳刺激療法、又はそれらの組み合わせを含む。
【0023】
上記は以下の詳細な説明がより良く理解され得るように、本開示の特徴及び技術的利点をかなり広く概説した。本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴及び利点を以下に説明する。開示された概念及び特定の実施形態は本設計の同じ目的を実行するために他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。また、そのような同等の構成は、添付の特許請求の範囲に記載される精神及び範囲から逸脱しないことが当業者によって理解されるべきである。本明細書に開示される設計の特徴であると考えられる新規な特徴はさらなる目的及び利点とともに、動作の構成及び方法の両方に関して、添付の図面と関連して考慮される場合、以下の説明からより良く理解される。しかしながら、各図は、例示及び説明の目的のためだけに提供され、本開示の限定の定義として意図されないことが明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【0025】
【
図1】
図1は、間葉幹細胞(MSC)の代わりに線維芽細胞を利用した場合の神経学的欠損スコアの改善を示す。4つのバーのグループ分けにおいて、左から右に、バーは、以下の通りである:対照;脳卒中;脳卒中+MSC;及び脳卒中+線維芽細胞。
【発明の詳細な説明】
【0026】
本発明の実施を理解し、説明するために、本発明は説明された特定の実施形態に限定されず、当然ながら、変更することができることを理解されたい。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。
【0027】
I.定義
【0028】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は1つ又は複数を意味することができ、本明細書で使用される場合、「含む」という語と併せて使用される場合、「a」又は「an」という語は1つ又は複数を意味することができ、本明細書で使用される場合、「別の」は少なくとも2つ又は複数を意味することができ、特定の実施形態では、開示の態様が例えば、開示の1つ又は複数の要素から「本質的になる」又は「からなる」ことが。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成されてもよく、又は本質的にそれらから構成されてもよい。本明細書中に記載されるいずれの方法又は組成物も、本明細書中に記載される任意の他の方法又は組成物に関して使用され得ることが意図される。本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。本明細書で使用されるように、「又は」及び/又は「及び」又は「及び/又は」という用語は複数の構成要素を互いに組み合わせ又は排他的に説明するために使用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「(x又は(y及びz)」又は「x又はy又はz」を意味することができる。x、y、又はzは、実施形態から具体的に除外されてもよいことが特に意図されている。
【0029】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の機能、構成、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを手段する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特別な特徴、構造又は特質は1以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせられ得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は基準量、レベル、値、数、周波数、パーセント、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%だけ変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量又は長さを指し、特定の実施形態では、数値の前に15%、10%、5%、又は1%の範囲をプラス又はマイナスする値。生物学的系又はプロセスに関して、この用語は、値のオーダー内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特に明記しない限り、「約」という語は、特定の数値に対する許容誤差範囲内に手段する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「投与する」又は「投与」は、治療有効量の組成物を、必要な部位で個体に提供することをいう。投与の方法は、注射器によるような注射、又は必要な部位での組成物の移植のような送達を含んでも含まなくてもよい。他の送達経路は、本開示に包含され、本明細書の他の箇所で詳述される。
【0032】
本明細書中で使用される、「線維芽細胞」は(1)プラスティックに接着し、(2)CD73、CD90、CD105、及びCXCR-4抗原を発現し、一方CD14、CD34、CD45、及びHLA-DR陰性であり、(3)以下の3つの系統:骨形成性、軟骨形成性及び脂肪形成性系統の少なくとも1つに分化する能力を有する1つ以上の細胞の集団を意味する。線維芽細胞様特性を有する他の細胞は、線維芽細胞の定義の中に含まれ、前記細胞は、a)再生活性、b)成長因子の産生、c)直接的に、又は内因性宿主修復機構の誘発を介して、治癒反応を誘導する能力の少なくとも1つを有するという条件を有する。線維芽細胞は、骨髄、脂肪組織、羊水、子宮内膜、栄養膜由来組織、臍帯血、Whartonゼリー、胎盤、羊膜組織、多能性幹細胞由来、及び歯を含むが、これらに限定されない任意の組織に由来することができる。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、組織からの最初の単離の際にCD34陽性であるが、表現型及び機能について記載される細胞に類似する細胞を含む。線維芽細胞は、NGF-R、PDGF-R、EGF-R、IGF-R、CD29、CD49a、CD56、CD63、CD73、CD105、CD106、CD140b、CD146、CD271、MSCA-1、SSEA4、STRO-1及びSTRO-3、又はそれらの組合せからなる群より選択される細胞表面マーカーを用いて組織から単離される細胞を含み得る。線維芽細胞は、膨張の前、最中、及び/又は後にマーカーを発現し得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「治癒応答」は、再生組成物(例えば、少なくとも1つの再生線維芽細胞)の投与に対する、個体における分子応答、細胞応答、又は組織応答をいう。治癒応答は、本明細書に包含される脳損傷を含む、脳損傷から生じる損傷部位で起こり得る。この反応により、損傷した脳組織が元に戻ることもあれば、損傷した脳組織の機能が部分的又は完全に回復することもある。応答は、再生組成物によって直接作動され得、そして/又は再生組成物は個体の内因性修復機構(例えば、免疫系)を誘導し得、損傷を回復し得、そして/又は損傷した脳組織における機能を部分的にもしくは完全に回復し得る。
【0034】
本明細書中で使用される用語「薬学的に」又は「薬理学的に許容される」は、動物又はヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物をいう。
【0035】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、ならびに植物油、コーティング、等張性及び吸収遅延剤、リポソーム、商業的に入手可能な洗浄剤等を含むが、これらに限定されない、任意の及び全ての溶媒、又は分散媒体を含む。補助的な生物活性成分もまた、このようなキャリアに組み込まれ得る。
【0036】
本明細書中で使用される用語「脳卒中」又は「脳血管発作」とは、CNSの血管を含む疾患に起因する、通常は局所性及び急性の、神経学的症状及び徴候を指す。一般に、脳卒中は、診断された脳卒中患者の約80%を構成し、血栓症又は塞栓症に起因する虚血性脳卒中、又は診断された脳卒中患者の約20%を構成し、脳内の血管破裂に起因する出血性脳卒中のいずれかである。脳卒中は、脳の前方循環(内頸動脈の分枝)又は後方循環(椎骨動脈と脳底動脈の分枝)のいずれかを侵す。中大脳動脈領域に発生する梗塞は、最も頻繁に遭遇する脳卒中症候群を引き起こし、対側の筋力低下、感覚消失、及び視野障害を伴い、関与する半球によっては、言語障害又は空間知覚障害のいずれかが認められる。前大脳動脈領域の梗塞は、脱力、感覚消失、尿失禁を引き起こす。補足運動野の損傷は言語障害を引き起こすことがある。両側前大脳動脈領域梗塞は例えば、両動脈が単一の体幹から異常に発生した場合に起こり、深刻な感情鈍麻、運動慣性及び無言症から成る虐待として知られる重度の行動障害を引き起こすことがある。これらの症状は、眼窩前頭皮質の下前頭葉の破壊に起因する。後大脳動脈領域の梗塞は、カリン皮質を破壊することによって対側の同名半盲を引き起こす。前脈絡叢動脈閉塞は、対側片麻痺及び感覚消失を引き起こしうる。前大脳動脈の深部穿通枝によって供給される構造に限定された梗塞は、精神運動遅滞、構音障害、激越、対側無視、及び左半球の場合、言語障害の様々な組み合わせをもたらす。アテローム血栓性血管閉塞は、頭蓋内血管よりもむしろ内頸動脈にも起こりうる。梗塞は中大脳動脈と前大脳動脈の両方の領域を含み、腕と脚の筋力低下と感覚消失を伴うことがある。あるいは、梗塞が遠位共有領域(これらの血管の境界ゾーン)に限定され得、運動皮質の破壊によって、腕又は脚に限定された衰弱を生じる。
【0037】
本明細書中で使用される、用語「タウオパチー」は、脳における神経原線維変化又はグリア原線維変化を含む、脳におけるタウの蓄積から生じる多くの神経変性疾患を意味する。タウオパチーは、タウの過剰な蓄積、タウタンパク質のミスフォールディング、タウ封入体の形成、タウ上の翻訳後修飾、又は他のタウタンパク質関連病理によって形成され得る。タウオパチーは、外傷性脳損傷、脳卒中、又は脳内のタウタンパク質の急性蓄積を伴う他の疾患等の疾患を含む、急性タウオパチーのいずれかであり得る。本明細書中で使用される場合、慢性タウオパチーは一般に、比較的長い期間にわたる、CSF、ISF、血液、及び/又は血液画分(例えば、血漿)を含む細胞外液中のタウの蓄積のような、対象の細胞外液中の上昇したタウの漸進的な開始に関連する状態をいう。比較的長い期間は、数年、さらには数十年のオーダーであり得る。慢性タウオパチーにはアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、アルギロフィリック・グレイン認知症、英国型アミロイド血管症、皮質脳筋変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化、ダウン症候群、17番染色体に連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、、ゲルストマン-ストラウスラー-シェインカー病、ホールバーデン-スパッツ病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン-ピック病C型、神経原線維変化を伴う非グアマン運動ニューロン病、ピック病、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク性脳アミロイド血管症、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症、及び多発梗塞性認知症が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
「外傷性脳損傷」という用語は「TBI」としても知られており、後天性脳損傷の一形態であり、これは、脳に対する外傷誘発性損傷から生じる。TBIは外力による脳の損傷と表現されることがある。例えば、TBIは落下、自動車事故、スポーツイベント、又は任意の数の異なる方法等の間に、頭部が物体に突然かつ激しく当たったときに生じることがある。また、TBIは、対象が頭蓋骨を穿刺し、脳組織に入ることに起因し得る。どちらのタイプのTBIも、挫傷した脳組織、脳内の出血、脳内の大きな又は小さな裂傷、及び/又は剪断力による神経損傷をもたらすことがある。また、脳には、腫れ、発熱、けいれん、神経化学物質のアンバランス等、多くの二次的な障害が起こる。TBIの症状は、脳への損傷の程度によって、軽度、中等度、重度に分けられる。軽度のTBIを患っている人は意識が残ることもあれば、数秒又は数分間意識喪失を経験することもある。軽度の外傷性脳損傷のその他の症状としては、頭痛、錯乱、ふらつき、めまい、目のかすみや疲れ、耳の鳴り、口の中の味覚の悪さ、疲れや嗜眠、睡眠パターンの変化、集中力、注意力、思考力の変化、中等度又は重度の外傷性脳損傷を受けた人はこれらと同じ症状を示すことがあるが、頭痛が悪化するか治まらない、嘔吐や吐き気、けいれんやけいれんを繰り返す、睡眠から覚めることができない、片眼又は両眼の瞳孔が散大する、話し方が不明瞭になる、四肢の筋力低下やしびれ、協調運動の低下、錯乱、落ち着きのなさ、激越等がみられる。TBIの例には、びまん性軸索損傷、脳震盪、挫傷、バックラッシュ脳損傷、第二衝撃症候群、貫通損傷、揺さぶられっ子症候群、慢性外傷性脳症(CTE)、芽球誘発外傷性脳損傷、及びロックイン症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中で使用される用語「一過性脳虚血発作」(TIA)は、突然の神経学的欠損を引き起こし、永続性脳梗塞とは関連しない局所性脳虚血を指す(例、拡散強調MRIでの陰性結果)。TIAの診断は臨床診断である可能性がある。頸動脈内膜切除術、抗血小板薬、ワルファリンは、ある種のTIA後の脳卒中リスクを低下させる可能性がある。TIAは、症状が1時間未満続くこと;ほとんどのTIAが5分未満続くことを除いて、虚血性脳卒中と類似している。もし障害が1時間以内に解消するなら梗塞の可能性は非常に低い。1~24時間以内に自然に消失する欠損は、拡散強調MRI及び他の検査で、しばしば梗塞を伴うことが示されているため、もはやTIAとはみなされない。TIAは中年から高齢者で最も多くみられる。TIAは脳卒中のリスクを著しく増加させ、最初の24時間以内に始まる。
【0040】
「治療」、「治療」、又は「治療」は疾患又は状態の効果を減少させる方法を手段することもできる。治療が単なる症状ではなく、疾患又は状態そのものを減少させる方法を指すことができる。治療は、治療前のレベルからの任意の減少であり得、疾患、状態、又は疾患又は状態の症状の完全なアブレーションに限定することはできない。したがって、開示された方法では、疾患の少なくとも1つの症状の重症度の減少を含む、確立された疾患又は疾患進行の重症度における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の減少を指す。例えば、細胞の免疫原性を減少させるための開示された方法は、同じ被験者又は対照被験者における治療前レベルと比較した場合に、細胞の免疫原性の検出可能な減少が存在する場合の治療であると考えられる。したがって、減少は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の減少であり得る。「治療」は、必ずしも疾患又は状態の治癒を指すものではなく、疾患又は状態の見通しの改善を指すことが理解され、本明細書で企図される。特定の実施形態では、治療が少なくとも1つの症状の重症度又は程度の減少を指し、代替的に又は追加的に、少なくとも1つの症状の発症の遅延を指すことができる。
【0041】
II.線維芽細胞
【0042】
本開示の実施形態は、自己、同種、同系、及び/又は異種供給源に由来し得る線維芽細胞の使用のためのシステム及び方法を対象とする。本開示の方法及び組成物は、個体の脳におけるものを含む、炎症性変性状態の処置のための特定の操作された細胞を包含する。特に、細胞は、少なくとも任意の種類の線維芽細胞を含む。線維芽細胞の操作の手段、ならびに脳内の変性プロセスを能動的に阻害する種々の組織起源の線維芽細胞が開示される。本開示の1つの実施形態において、線維芽細胞は、免疫応答を阻害するそれらの能力のために利用され、そしてまた、変性脳状態(TBI、脳卒中、一過性虚血発作、及び/又は急性もしくは慢性のタウオパチーを含む)の予防及び/又は処置のための細胞療法として利用される。少なくとも1つの実施形態において、線維芽細胞は脳損傷を直接的又は間接的に処置及び/又は予防することができるように、1つ以上の特定の薬剤及び/又は状態で処置される。特定の実施形態では、薬剤はインターフェロンγ及び/又は血小板リッチ血漿を含み、場合によっては少なくともインターフェロンγ及び/又は血小板リッチ血漿(及び/又は血小板リッチ溶解物)が線維芽細胞が免疫応答を直接的又は間接的に能動的に抑制する能力を与えることができる。投与経路、投与量及び頻度は、疾患過程、ならびに疾患の病期の関数として決定され、医学における日常診療ごとに最適化することができる。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、個体に投与される線維芽細胞が任意の起源であり得、そして任意の組織型(例えば、皮膚、包皮、脂肪、末梢血、脳脊髄液、骨髄、胎盤、臍帯血、Whartonゼリー、又はこれらの組み合わせを含む)に由来し得る。線維芽細胞を単離するための方法は、当該分野で周知であり、そして任意のこのような方法は、線維芽細胞を得るために使用され得る。特定の実施態様において、線維芽細胞は、例えば、NANOG、OCT-4、SSEA-4、幹細胞因子受容体、NGF-R、EGF-R、CD29、CD49a、CD73、CD105、CD140b、CD146、MSCA-1、SSEA4、STRO-3、テロメラーゼ、NANOG、ベータ-III-チューブリン、NF-M、APP、GLUT、NCAM、Nurr1、GFAP、NG2、オリゴ1、アルカリホスファターゼ、ビメンチン、オステオプロテグリン、オステリックス、アディプシン、エリスロポエチン、SM22-α、c-1-アントリプシン、セルロプラスミン、AFP、BDNF、NT-4/5、TrkA、BMP2、FGF2、FGF4、PDGF、TGFalpha、TGFbeta、VEGF又はそれらの組み合わせであってもよい。線維芽細胞は、本開示の方法における使用の前に培養され得る。線維芽細胞を培養するための任意の適切な方法及び培養培地が使用され得る。
【0044】
特定の実施形態において、同種異系又は自己由来の線維芽細胞は操作されない様式で(例えば、1つ以上の特定の因子(例えば、インターフェロンガンマ、及び/又は状態)の前曝露なしに)個体に投与されるが、例えば、胎盤線維芽細胞又は脂肪組織関連線維芽細胞のような、免疫調節活性によって天然に特徴付けられる供給源から選択される。開示の他の実施形態において、任意の線維芽細胞は線維芽細胞に対して未熟な表現型を与えるように後分化を誘導することができる条件下で培養され、ここで、未熟な表現型は再生及び/又は治癒応答を誘導するための増強された抗炎症及び/又は免疫調節能力と相関する。例えば、線維芽細胞はバルプロ酸のような1つ以上のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養され得る(Moonら、2008;Huangら、2011)。HDAC阻害剤に加えて、8-Br-cAMP(Wangら、2011);M-CSF処理(Liら、2016);レベレシンへの暴露(Liら、2016);及び/又は幹細胞抽出物への暴露(Xiongら、2014)のような、線維芽細胞の脱分化を誘導する他の手段もまた、本発明の文脈において利用され得る。線維芽細胞脱分化の特徴付けは、CXCR4、VEGFR-2、CD34、及び/又はCD133等の細胞外マーカー、ならびにSOX-2、NANOG、及び/又はOCT-4等の細胞内マーカーの評価によって行うことができる。すなわち、再生特性を有する線維芽細胞はSOX、NANOG OCT4を有するがレベルは低く、脱分化するとそれらは高いレベルを有する。
【0045】
開示のいくつかの実施形態において、脱分化された線維芽細胞は、NANOG、OCT-4、SSEA-R、EGF-R、CD29、CD49a、CD73、CD105、CD140b、CD146、MSCA-1、SSEA4、STRO-3、テロメラーゼ、NANOG、β-III-チューブリン、NF-M、APP、GLUT、NCAM、Nurr1、GFAP、NG2、オリゴ1、アルカリホスファターゼ、ビメンチン、オステオプロテグリン、オステリックス、アディプシン、エリスロポイエチン、SM22-α、HGF、c-MET、α-1-アントリプトリプシン、セルロプラスミン、AFP、PEPCK 1、BDNF、NT-4/5、TrkA、BMP2、BMP4、FGF2、FGF4、PDGF、PGF、TGFalpha、TGFbeta、VEGF、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上のマーカーを発現する方法に利用され得る。
【0046】
本開示の特定の実施形態において、再生及び/又は治癒応答を誘導するために使用される線維芽細胞は、例えば、a)1つ以上の自己抗原;及び/又はb)1つ以上の免疫調節タンパク質を発現するように遺伝子操作される。個体と病気の特徴から、線維芽細胞の工学に用いる遺伝子は、少なくともある場合にはどれかが決まる。これらの場合、自己抗原をポリヌクレオチド形態で線維芽細胞にトランスフェクトし、線維芽細胞を培養して免疫調節を可能にするか、又は免疫調節を可能にする遺伝子をトランスフェクトする。免疫調節を誘導し、脳における再生及び/又は治癒応答を誘導するためのトランスフェクションに特に興味深い遺伝子としては、少なくとも以下があげられる:Fasリガンド、TGF-β、IL-4、IL-10、HLA-G、インドールアミン2,3デオキシゲナーゼ、ガレクチンファミリーメンバー、ガレクチン3、アルギナーゼ、及び/又はIL-20(de Jesusら、2016;Wangら、2011;Zhaoら、2010;Minら、2001;Canceddaら、2001)。本明細書中に記載される遺伝子のいずれか又はその活性部分は、CMVプロモーターのような線維芽細胞における発現を可能にするプロモーター配列を含む哺乳動物発現構築物中にクローニングされ得る(Artucら、Exp.Dermatol.1995,4:317-21)。適切な構築物の例としてはpcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pGL3、PzeoSV2(+/-)、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto(それぞれ、例えば、Invitrogen等のベンダーから市販されている)、又はヒト包皮細胞における調節されたポリヌクレオチド発現を可能にするpSH発現ベクター(Ventura及びVilla、1993、Biochem.Biophys.Commun.192:867-9)があげられるが、これらに限定されない。レトロウイルスベクター及びパッケージング系の例はClontech、San Diego、CA、USAから市販されているものであり、Retro-XベクターpLNCX及びpLXSNを含み、これらは複数のクローニング部位へのクローニングを可能にし、導入遺伝子はCMVプロモーターから転写される。Mo-MuLVに由来するベクターには、pBabe等も含まれ、ここで、転写遺伝子は5’LTRプロモーターから転写されるのであろう。プラスミドトランスフェクションを完了した後、線維芽細胞を、組織培養プレートからの分離を可能にする手段によって、例えば、トリプシン処理によって収集し、そして増殖のために好適な容器又は容器に移す。トランスフェクションの約3日後、細胞培地を、改変された線維芽細胞の増殖及び増殖に適切な培地に交換する。一例は、Neurobasal-A(Invitrogen)、1% D-グルコース(Sigma Aldrich)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(Invitrogen)、2% B27レチノイン酸(Invitrogen)、0.2% EGF(Peprotech,USA)、0.08% FGF-2(Peprotech)、0.2%ヘパリン(Sigma Aldrich,USA)及びバルプロ酸(Sigma Aldrich)を1μMの濃度まで含むNeurobasal A(NBA)増殖培地である。次いで、この培地を、例えば週3回交換し、そして細胞を規則的に再播種し(例えば、最大週1回の再播種まで2~8回、コロニーが発達し始めるにつれてより規則的になる)、広範なコロニー形成が達成されるまで、再プログラムされていない細胞を除去する。本発明の実施者が細胞の臨床投与を行うための様々な質管理手段が当技術分野で知られている。細胞の適格性確認のための例示的な基準には、フローサイトメトリー、生存率、エンドトキシン含量等の手段を用いたマーカ同定、ならびに微生物及びマイコプラズマ汚染の評価が含まれる。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、線維芽細胞は、線維芽細胞の生存能力及び増殖能力を保存するために、当該分野で公知の手段を使用して、エクスビボで培養される。本開示は、レシピエント免疫系による線維芽細胞の認識を減少させるための公知の培養技術の改変を提供する。1つの実施形態において、線維芽細胞は、異種成分を欠く条件(例えば、ウシ胎仔血清)において培養される。異種成分は抗体及びT細胞反応の誘発を含む免疫学的反応を誘発することが知られている(Selvaggiら、1997;Mackensenら、2000;Kadriら、2007;Forniら、1976;Lauerら、1983)。多くの個体において、IgMアイソタイプの天然抗体はウシ胎仔血清関連成分に対して存在し(Irieら、1974)、ウシ胎仔血清の存在下で増殖した細胞の投与後に拒絶、炎症又はアナフィラキシーを引き起こす(Macyら、1989)。特定の実施形態では、本開示が線維芽細胞の免疫原性を減少させるためのさらなる特徴として、ウシ胎仔血清を、ヒト多血小板血漿、血小板溶解物、臍帯血清、自己血清、及び/又は規定されたサイトカイン混合物で置換することを包含する。異種非含有培地中で組織を培養する手段は他の細胞型について当該分野で公知であり、そして参考として援用される(Riordanら、2015)。
【0048】
本開示の1つの実施形態において、線維芽細胞は、低酸素領域を含む、注射(筋肉内注射等)によることを含む任意の適切な経路によって被験体に投与される。適切な経路には、静脈内、皮下、髄腔内、経口、直腸内、髄腔内、網内、脳室内、肝内、及び腎内がある。
【0049】
ある実施態様では、線維芽細胞が皮膚、心臓、血管、骨髄、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、脳脊髄液、脂肪組織、包皮、胎盤、Whartonゼリー、及び/又は臍帯を含む組織に由来することができる。特定の実施形態では、線維芽細胞が胎盤、胎児、新生児、又は成人、又はそれらの混合物である。
【0050】
個体への細胞の投与の数は、少なくとも部分的に、損傷の型及び重篤度のような本明細書中に記載される因子に依存し、そして当該分野で慣用的な方法を使用して最適化され得る。特定の実施形態では、単回投与が必要である。他の実施形態では、細胞の複数回の投与が必要とされる。当然のことながら、この系は、時間及び状況によって変化し得る個体の特定の必要性、細胞の喪失又は個々の細胞の活性の結果としての細胞活性の喪失速度等のような変数に従属する。従って、各個体は適切な投薬量についてモニターされ得、そして個体をモニターするこのような実施は当該分野で日常的であることが予想される。
【0051】
本開示の実施形態は、特定のタイプの線維芽細胞の免疫原性を低下させる方法を提供する。線維芽細胞は、皮膚、心臓、血管、骨髄、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、脳液、脂肪、末梢血、胎盤、臍帯血、Whartonゼリー、及び/又は包皮等の様々な組織又は器官に由来し得るが、これらは生検(適宜)又は剖検によって得ることができる。いくつかの態様では、細胞が胎児、新生児、成人起源、又はそれらの組み合わせに由来し得る線維芽細胞を含む。
【0052】
特定の実施形態において、単離手順は、酵素消化プロセスを利用する。酵素を用いて組織を解離させ、細胞集団を抽出し、その後、線維芽細胞の単離のために採取し、増殖させる。多くの酵素が培養物中での増殖を容易にするために、複雑な組織マトリックスから個々の細胞を単離するために有用であることが、当該分野で公知である。組織からの細胞単離に使用するための広範な消化酵素は当業者に利用可能であり、弱消化性(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ及び中性プロテアーゼ、ディスパーゼ)から強消化性(例えば、パパイン及びトリプシン)までの範囲であり、このような酵素は、商業的に利用可能である。本明細書に適合する酵素の非網羅的なリストには、粘液溶解酵素活性、メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、又はエラスターゼ等)、及びデオキシリボヌクレアーゼが含まれる。例えば、コラゲナーゼは、組織から種々の細胞を単離するために有用であることが知られている。デオキシリボヌクレアーゼは一本鎖DNAを消化することができ、単離中の細胞凝集を最小限にすることができる。酵素は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。セリンプロテアーゼは、使用される他の酵素を分解し得るので、他の酵素の使用に続く配列において使用され得る。セリンプロテアーゼとの接触の温度及び時間をモニターすることができる。セリンプロテアーゼは血清中のα2ミクログロブリンで阻害されることがあるので、消化に用いられる培地は無血清であることが多い。EDTA及びDNaseが一般に使用され、収率又は効率を改善することができる。いくつかの方法は、例えば、コラゲナーゼ及びディスパーゼ、又はコラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼによる酵素処理を含み、このような方法が提供され、特定の好ましい実施形態において、コラゲナーゼ及び中性プロテアーゼディスパーゼの混合物が、解離工程において使用される。いくつかの方法は、Clostridium histolyticum由来の少なくとも1つのコラゲナーゼ、ならびにプロテアーゼ活性、ディスパーゼ及びサーモリシンのいずれかの存在下での消化を使用する。本開示のための特定の方法は、コラゲナーゼ及びディスパーゼ酵素活性の両方による消化を使用する。また、コラゲナーゼ及びディスパーゼ活性に加えて、ヒアルロニダーゼ活性による消化を含む方法もある。当業者は、種々の組織供給源から細胞を単離するための多くのこのような酵素処理が当該分野で公知であることを理解する。例えば、LIBERASE BLENDZYME(Roche)シリーズのコラゲナーゼ及び中性プロテアーゼの酵素組み合わせが有用であり、本発明の方法において使用され得る。他の酵素源が知られており、当業者はまた、そのような酵素をその天然源から直接得ることができる。当業者はまた、本発明の細胞を単離する際のそれらの有用性について、新規の、又は追加の酵素又は酵素の組み合わせを評価するために十分に装備されている。酵素処理は、0.5、1、1.5、又は2時間以上の長さであり得る。他の実施形態において、組織は、解離工程の酵素処理中に約37℃でインキュベートされる。消化物を希釈することはまた、細胞が粘性消化物内に捕捉され得るので、細胞の収率を改善し得る。
【0053】
酵素活性物質の使用が開示されているが、本明細書に提供される単離方法には必要ではない。機械的分離のみに基づく方法は、開示された組織から本細胞を単離するのに成功し得る。
【0054】
単離された細胞は、組織が本明細書中で上記したような任意の培養培地に解離された後に再懸濁され得る。細胞は、組織又は他の破片から細胞を分離するために、遠心分離工程に続いて再懸濁され得る。再懸濁は、再懸濁の機械的方法、又は単に細胞への培養培地の添加を含み得る。本明細書中に提供される増殖条件は、培養培地、サプリメント、大気条件、及び細胞の相対湿度に関する広範囲の選択肢を可能にする。適切な培養温度は約37℃であるが、温度は他の培養条件及び細胞又は培養物の所望の使用に応じて、約35℃~39℃の範囲であり得る。また、細胞は、それらの雰囲気中で約5%~約20%の酸素の存在下で拡張し得る方法も提供される。L-バリンを必要とする細胞を得るための方法は、細胞をL-バリンの存在下で培養することを必要とする。細胞が得られた後、L-バリンの必要性を試験し、L-異性体を欠くD-バリン含有培地上で増殖させることによって確認することができる。
【0055】
老化状態に達する前に、細胞が少なくとも25、30、35、又は40回の倍加を受けることができる方法が提供される。1×1014細胞以上に達するように倍加することができる細胞を誘導するための方法が提供される。好ましくは、少なくとも約1x1014、1x1015、1x1016、又は1x1017以上のセルを、培養において約1x103から約1x106セル/cm2までシードしたときに生成するのに十分に倍増できるセルを導出する方法である。好ましくは、これらの細胞数が80、70、又は60日以内に産生される。
【0056】
特定の実施形態では、組織線維芽細胞を単離し、増殖させ、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、CD105、CDXC-4、HLA-A、HLA-B、又はHLA-Cを含む群から選択される1つ以上のマーカーを有する。さらに、細胞は、CD31、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、又はHLA-DQの1つ以上を産生しない。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態において、線維芽細胞の遺伝子改変は、線維芽細胞の免疫原性の減少を引き起こすために行われる。1つの方法は、未成熟樹状細胞のような免疫原性の低下した細胞を伴う細胞質導入を含む遺伝子改変を提供する。別の実施形態では、遺伝子エディティングを利用して、HLA又はCD40、CD80、CD86、TNF-α、HMGB-1、IFN-γ、IL-1β、IL-17、FAP、IL-18、IL-33等の共刺激分子、又はそれらの組み合わせ等の炎症誘発遺伝子を選択的に切除する。
【0058】
本開示の特定の実施形態において、1つ以上の免疫調節剤は真核細胞において作動可能な組換え発現ベクターを介して、汎用ドナー線維芽細胞において発現され、そして免疫調節剤の発現は構成的プロモーター、又は誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節され得る。特定の実施形態ではベクターがレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又は単純ヘルペスウイルス等のウイルスベクターであり、又はベクターは裸のDNA又はプラスミドDNA又はミニサークルDNA等の非ウイルスベクターである。線維芽細胞へのトランスフェクションに特に関心のあるポリヌクレオチドは、少なくとも以下のものを含む:Fasリガンド、TGF-β、IL-4、IL-10、HLA-G、インドラミン2,3デオキシゲナーゼ(IDO)、ガレクチンファミリーメンバー、ガレクチン3、アルギナーゼ、IL-20、HGF、PDGF-BB、EGF、IGF、GDF-5、GDF-11、アンギオポイエチン、FGF-1、FGF-2、FGF-5、FGF-15、又はそれらの組み合わせ。特定の場合には、組換え発現血管新生剤がFASリガンド、IL-2、IL-4、IL-10、IL-20、IL-35、HLA-G、I-309、IDO、iNOS、CD200、ガレクチン3、アルギナーゼ、PGE-2、TGF-β、CTLA-4、PD-L1、IFN-γ、又はそれらの組合せを含み得る。
【0059】
特定の実施形態では、治療有効量の改変細胞が1つ以上の免疫調節剤と一緒に個体に同時投与される。例示的な免疫調節剤は、FASリガンド、IL-2R、IL-2、IL-10、IL-20、HLA-G、PD-L1、IDO、iNOS、CD200、ガレクチン3、アルギナーゼ、PGE-2、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、アセチルシステイン、ラパマイシン、IVIGF-β、TGF、PDGF、CTLA-4、抗CD45RB抗体、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ダイシアノゴールド、スルファサラジン、メトトレキサート、エタネルセプト、アダリムマブを含み得る アバタセプト、アナキンラ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、トシリズマブ、シクロスポリン、IFN-γ、エベロリムス、ラパマイシン、又はこれらの併用。
【0060】
特定の実施形態において、少なくともいくつかの場合において、増殖因子が、増殖培地と共に提供される補充血清において利用可能であることを除いて、細胞が外因性増殖因子を必要としない方法が使用される。特定の増殖因子の非存在下で増殖することができる細胞を誘導する方法もまた、本明細書中に提供される。これらの方法は上記の方法と同様であるが、これらは細胞が最終的に再懸濁され、そして増殖される培養培地中に、特定の増殖因子(このために、細胞は必要とされない)が存在しないことを必要とし得る。この意味で、この方法は、特定の増殖因子の非存在下で分裂することができる細胞に対して選択的である。特定の細胞は、いくつかの実施形態では血清を添加しない化学的に規定された増殖培地中で増殖及び増殖することができる。このような場合、細胞は、細胞を支持及び維持するために培地に添加され得る特定の増殖因子を必要とし得る。無血清培地上での増殖のために添加され得る因子は、FGF、EGF、IGF、及びPDGFのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、又は4つ全ての因子が無血清培地又は化学的に規定された培地に添加される。特定の実施形態において、白血病阻害因子、LIFは、細胞の増殖を支持又は改善するために無血清培地に添加される。
【0061】
特定の実施形態によれば、本開示は脳損傷を治療するための線維芽細胞を含む医薬組成物の製造を教示し、ここで、線維芽細胞は、CD105の発現のために濃縮されている。線維芽細胞はまた、CD73及び/又はCXCR-4発現について濃縮され得る。いくつかの実施形態によれば、CD105発現細胞は、CXCR-4媒介化学走性活性を有する強力なSDF-1可動性CD105/CXCR-4+細胞の亜集団をさらに含む。
【0062】
特定の実施形態では、走化性線維芽細胞が対象から採取された骨髄、臍帯血、臍帯組織、胎盤、又は皮膚から単離された線維芽細胞の集団からCD105+線維芽細胞を単離又は精製することによって調製される。いくつかの実施形態によれば、走化性線維芽細胞は、個体の皮膚生検から単離された単核細胞の集団からCD105発現細胞を単離又は精製することによって調製される。
【0063】
特定の実施形態によれば、走化性線維芽細胞は造血幹細胞動員剤での処理後に、対象から収集された末梢血から単離された細胞の集団からCD105発現線維芽細胞を単離又は精製することによって調製される。いくつかのそのような実施形態によれば、造血幹細胞動員剤は、G-CSF、GM-CSF、又はその薬学的に許容されるアナログもしくは誘導体を含む。いくつかの実施形態によれば、造血幹細胞動員剤は、コロニー刺激因子の組換えアナログ又は誘導体である。いくつかの実施形態によれば、造血幹細胞動員剤は、フィルグラスチム及び/又はモビルジルである。いくつかの実施形態によれば、CD105+/CXCR-4+細胞の走化性活性は、SDF-1、VEGF、及び/又はCXCR-4によって媒介される。さらに、別の実施形態によれば、CD105+細胞の少なくとも約1%~少なくとも約95%は、獲得後少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間生存可能である。
【0064】
III.線維芽細胞の投与
【0065】
本開示の特定の実施形態は、個体への線維芽細胞の投与に関する。細胞は薬学的に許容される担体、例えば、滅菌生理食塩水等張溶液中での投与のために調製され得る。特定の実施形態では、個体が外傷性脳損傷、脳卒中、一過性虚血発作、及び/又はタウオパチーのうちの1つ以上を含み得る脳損傷を有する。脳損傷は、線維芽細胞の投与により改善される神経変性作用を誘発する可能性がある。特定の実施形態において、線維芽細胞は全身的に投与されるが、任意の適切な送達方法を使用して、損傷部位に局所的に投与され得、再生を促進し、そして拡散性損傷後の軸索の機能不全を阻害する。
【0066】
特定の実施形態では、線維芽細胞が髄腔内注射及び静脈内注射を含む注射によって個体に投与される。線維芽細胞を鼻腔内に投与することもある。細胞は、エアロゾル化された形態で投与され得る。線維芽細胞はまた、損傷部位に局所投与してもよい。例えば、脳への直接投与のためのアクセスは、TBIを患っている個体に対する手術の間に生じ得る。このような例における投与は、細胞を脳組織に直接送達することによって行われ得る。
【0067】
本開示の種々の実施形態に従って使用するのに適切な線維芽細胞の用量は、多数の因子に依存し得る。それは、異なる状況に対してかなり変化し得る。一次及び補助療法のために投与される胎盤線維芽細胞の最適用量を決定するパラメータは、一般的に、以下のいくつか又は全てを含もう:治療される疾患及びその病期;被験体の種、その健康、性別、年齢、体重、及び代謝速度;被験体の免疫能;投与される他の治療法;被験体の病歴又は遺伝子型から予想される合併症。パラメータはまた、線維芽細胞が同系、自家、同種、又は異種のいずれであるか;それらの効力(比活性);線維芽細胞が有効であるために標的化されなければならない部位及び/又は分布;及び線維芽細胞へのアクセス及び/又は線維芽細胞の生着のような部位のそのような特徴を含み得る。その他のパラメータには、他の因子(成長因子及びサイトカイン等)の線維芽細胞との同時投与が含まれる。所与の状況における最適用量はまた、細胞が処方される様式、それらが投与される様式、及び細胞が投与後に標的部位に局在化される程度を考慮する。最後に、至適用量の決定は必然的に、最大有益効果の閾値を下回ることもなく、線維芽細胞の用量に関連する有害作用が増量した用量の利点を上回る閾値を上回る有効用量を提供するのであろう。
【0068】
いくつかの実施形態のための線維芽細胞の最適用量は、自己単核骨髄移植のために使用される用量の範囲内である。胎盤線維芽細胞のかなり純粋な調製物について、種々の実施形態における最適用量は、投与当たりのレシピエント塊1kg当たり1×104~1×108線維芽細胞/kgである。特にケースでは、1x104~1x108、1x104~1x107、1x104~1x106、1x104~1x105、1x105~1x108、1x105~1x108、1x106~1x108、or1x107~1x108、セル/kg等である。いくつかの実施形態において、投与当たりの有効量は、1×105~1×107線維芽細胞/kgである。多くの実施形態において、投与当たりの有効量は、5×105~5×106線維芽細胞/kgである。参考にすると、上記のより高い線量は、自家単核骨髄移植に用いられる有核細胞の線量と類似している。低用量のいくつかは、自家単核骨髄移植で使用されるCD34+細胞数/kgに類似している。
【0069】
単一用量は、一度に全て、部分的に、又はある期間にわたって連続的に送達され得ることが理解されるべきである。用量全体はまた、単一の位置に送達され得るか、又はいくつかの位置にわたって部分的に広がり得る。種々の実施形態において、線維芽細胞は、初期用量で投与され得、その後、線維芽細胞の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上のさらなる投与によって維持され得る。線維芽細胞は、最初に1つの方法によって投与され得、その後、同じ方法又は1つ以上の異なる方法によって投与され得る。被験体の線維芽細胞レベルは、細胞の継続的な投与によって維持することができる。種々の実施形態は、例えば、最初に、又は対象における線維芽細胞のレベルを維持するために、又はその両方のために、静脈内注射によって、線維芽細胞を投与する。様々な実施形態において、本明細書の他の箇所で議論される、患者の状態及び他の因子に依存して、他の投与形態が使用される。
【0070】
ヒトの被験者は一般に実験動物よりも長い治療を受けるが、治療は、一般に疾患過程の長さと治療の有効性に比例する長さを有することが注目される。当業者は、ヒト及び/又はラット、マウス、非ヒト霊長類等の動物において実施される他の手順の結果を使用して、ヒトのための適切な用量を決定する際に、これを考慮する。このような決定は、これらの考察に基づき、そして本開示及び先行技術によって提供されるガイダンスを考慮に入れて、当業者が過度の実験なしにそうすることを可能にする。最初の投与及びさらなる用量のための、又は連続投与のための適切なレジメンは、全て同じであり得るか、又は可変であり得る。適切なレジメンは、当業者によって、この開示、本明細書中に引用される文献、及び当技術分野における知識から確認され得る。
【0071】
治療の用量、頻度、及び期間は、疾患の性質、対象、及び投与される可能性のある他の治療法を含む多くの因子に依存するのであろう。従って、線維芽細胞を投与するために、多種多様なレジメンが使用され得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、1回の用量で対象に投与される。他の線維芽細胞は、連続して2回又はそれ以上の用量で被験体に投与される。線維芽細胞は、単回用量、2回用量、及び/又は3回以上用量で投与されるいくつかの他の実施形態において、用量は同じであっても異なっていてもよく、それらはそれらの間で等しいか又は等しくない間隔で投与される。
【0072】
線維芽細胞は、広範囲の時間にわたって多くの頻度で投与され得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、1日未満の期間にわたって投与される。他の実施形態において、それらは、2、3、4、5、又は6日間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、1週間に1回以上、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間、又はそれ以上の期間にわたって投与される。他の実施形態において、それらは、1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12ヶ月間、数週間にわたって投与される。種々の実施形態において、それらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12ヶ月の期間にわたって投与され得る。他では、それらは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年、又はそれ以上の期間にわたって投与され得る。一般に、治療の長さは、疾患プロセスの長さ、適用される治療の有効性、ならびに治療される対象の状態及び応答に比例する。
【0073】
本開示の特定の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーの循環レベルは、脳損傷の処置のために投与される線維芽細胞の量を決定するために使用される。使用され得る1つのこのようなバイオマーカーは、タウタンパク質である。タウは、ヒトでは6種類のアイソフォームをもつ構造タンパク質であり、軸索の正常な構成成分である。タウの4つの異なるアイソフォームがバイオマーカー測定に適用される可能性がある;総タウ(t‐タウ)、切断された微小管関連タウ(c‐タウ)、リン酸化タウ(p‐タウ)、及びタウ‐A。タウは、TBI後の軸索損傷に関連している。具体的には、CSF中のc-tauの存在は軸索損傷の高感度な指標である[14,15]。タウの濃度が慢性又は急性に変化することも、タウオパチーの存在を示すことが示されている。個体中のタウのレベル又は量は、例えば、ELISA、質量分析、HPLC、LC/MS、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、免疫染色、免疫電気泳動を含む、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定され得る。タウは、血液、血漿、CSF、ISF、又はそれらの組み合わせを含む、個体由来の任意の生物学的サンプル中で測定され得る。
【0074】
特定の実施形態において、線維芽細胞は、脳卒中又は急性虚血発作等の医学的状態を処置するために、別の治療と組み合わせて投与され得る。線維芽細胞は、そのような理学療法、認知療法、コミュニケーション療法、脳刺激療法、又はそれらの組み合わせのような支持療法の間に投与され得る。
【0075】
特定の実施形態において、線維芽細胞は、脳損傷を処置又は予防するために、1つ以上の他の治療と組み合わせて投与され得る。線維芽細胞は、少なくとも1つの医学的処置、例えば、凝固した血液の除去、頭蓋骨骨折の修復、脳内の出血の減少、頭蓋内の圧力の緩和、又はそれらの組み合わせを目的とする手術の間に投与され得る。昏睡を誘発するために少なくとも1つの治療法とともに線維芽細胞を投与することがあり、回復期の脳のストレス及び/又は腫脹を軽減するために投与することがある。線維芽細胞は、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、利尿薬、筋弛緩薬、刺激薬、又はそれらの組合せを含む、脳損傷から回復するのに有用な1つ以上の他の薬物とともに投与され得る。線維芽細胞は、少なくとも1つの支持療法、例えば理学療法、作業療法、レクリエーション療法、言語又はコミュニケーション療法、心理カウンセリング、職業カウンセリング、認知療法、又はそれらの組み合わせと組み合わせて投与され得る。
【0076】
特定の実施形態では、線維芽細胞は、タウオパチー等の医学的状態を治療するために、別の療法と組み合わせて投与されてもよい。線維芽細胞は、タウ、タウの蓄積、タウのミスフォールディング、及び/又はタウ含有物の形成を阻害する薬剤と組み合わせて投与され得る。薬剤は、タウ病理学のためのワクチン(例としては、AADvac-1、ACI-35があげられる)、タウ又はタウ関連タンパク質に対する抗体(例としては、BMS-986168、ABBV-8E12があげられる)、微小管安定剤(例としては、TPI-287があげられる)、タウ凝集阻害剤(例としては、TRx0237があげられる)、タウの翻訳後修飾を阻害する薬剤(例としては、タウリン酸化を阻害する薬剤(塩化リチウム、チデグルシブ等)、タウ連結グリコシル化を阻害する薬剤(チアメット-G等)、タウアセチル化を阻害する薬剤(サレート等)、Hsp90阻害剤、又はそれらの組み合わせがあげられる。タウ又はタウ関連メカニズムを調節する薬剤の提供される例は、非タウ関連活性を有し得、したがって、それらの分類及び作用メカニズムは単独で、又は本明細書中に開示される線維芽細胞の投与と組み合わせてのいずれかで、それらの意図される使用において限定されない例としてのみ提供される。
【0077】
IV.脳の損傷
【0078】
本開示の特定の実施形態は、脳損傷を有する個体(例えば、脳損傷が外傷性脳損傷(TBI)である)に線維芽細胞を投与する方法に関する。TBIの例としては、慢性外傷性脳症、1つ以上の脳震盪、爆風誘発性外傷性脳損傷、バックラッシュ脳損傷、脳挫傷、揺さぶられっ子症候群、貫通性損傷、びまん性軸索損傷、セカンドインパクト損傷、ロックイン症候群、又はそれらの組み合わせがあげられる。TBIは、重症度の範囲であり得、様々な症状を呈し得る。いくつかの実施形態では、個体が重症度の範囲であってもなくてもよい、2つ以上のTBIを有していてもよいし、有していなくてもよい。少なくとも1つの損傷は、未診断であってもなくてもよい。TBIを引き起こす有害事象は、個体の身体への直接的又は間接的な衝撃からであり得る。個人は、例えば、1つ以上の鈍い衝撃及び/又は1つ以上の突き刺し衝撃を含む、頭部への少なくとも1つの衝撃から1つ以上のTBIを受け取っていても、受け取っていなくてもよい。個体はまた、自動車事故から、又は揺さぶられた乳児症候群から生じるような、むちうちから1つ以上のTBIを受けたかもしれない。
【0079】
特定の実施形態は、脳損傷を有する個体への線維芽細胞の投与に関し、ここで、脳損傷は、脳卒中又は一過性虚血発作(TIA)である。脳卒中は、虚血性脳卒中のこともあれば、出血性脳卒中のこともある。線維芽細胞の投与は、脳卒中又はTIAの診断時、又はその後の診断時に起こり得る。線維芽細胞のその後の投与時間は、脳卒中(又はTIA)又は初期診断後数分、数時間、数日、数週間、又は数年であり得る。線維芽細胞が他の治療又は治療と相加的又は相乗的に作用するために、線維芽細胞を少なくとも1つの他の脳卒中又はTIA治療と同時に投与してもよい。いくつかの実施形態では、個体が診断前に線維芽細胞を投与され、ここで、個体は脳卒中又はTIAを有する危険性があると決定されてもされなくてもよい。脳卒中が疑われる個人は、有効量の線維芽細胞を提供され得る。
【0080】
本開示のいくつかの実施形態において、線維芽細胞は、個体に投与され、ここで、個体はタウオパチーを有する。タウオパチーは、急性タウオパチーの場合もあれば、慢性タウオパチーの場合もある。急性タウオパチーは、TBIであり得、びまん性軸索損傷、脳震盪、挫傷、バックラッシュ脳損傷、セカンドインパクト損傷、穿通性損傷、揺さぶられっ子症候群、ロックイン症候群等がある。上記又は本明細書中に記載される実施形態のいずれかにおいて、急性タウオパチーは、脳卒中であり得る。上記又は本明細書中に記載される実施形態のいずれかにおいて、急性タウオパチーは、慢性外傷性脳症であり得る。タウオパチーは、本明細書でさらに定義される慢性タウオパチーであってもよい。タウオパチーは、個体がタオプシーを有することが疑われ、個人歴又は家族歴を有していても有していなくてもよいので、診断されてもよく、又は診断されなくてもよい。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本開示の特定の非限定的な局面を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、開示される主題の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術を表すことが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、開示された主題の精神及び範囲から逸脱することなく、同様の又は類似の結果を依然として得ることができることを理解すべきである。
実施例1
線維芽細胞は脳卒中誘発性神経障害の減少においてMSCよりも優れている
【0082】
研究のために、体重260~310gの雌Sprague-Dawleyラット(Charles River Laboratories社、Wilmington、MA)を使用した。実験群の動物は無作為に割り付けた。治験責任医師は、手術中及びアウトカム評価中に用量及び治療群の割り付けについて盲検化した。動物は一晩絶食後に可逆性中大脳動脈閉塞(rMCAo)を受けた。麻酔は、3%イソフルオラン及び70%亜酸化窒素で誘導した。ラットを気管内挿管し、1~0.5%イソフルオラン、70%亜酸化窒素及び残りの酸素の混合物で機械的に換気した。右大腿動静脈にカテーテルを挿入し、血圧をモニタリングし、血液ガス及びグルコース評価のために動脈サンプルを採取した。Arterial PCO2とPO2は、換気装置の調整により正常域内に維持された。固定化のために、ラットに0.75mg/kgの臭化パンクロミウムを静脈内投与した。直腸温度を連続的に測定し、ラットの体下で加熱パットにより37~37.5℃に維持した。右側頭筋に埋め込んだ29ゲージ熱電対によって頭部温度を別々にモニターし、実験を通してラットの頭部の上に置いた加温ランプによって36~36.5℃に維持した。
【0083】
総頚動脈(CCA)を腹側頚部の正中切開を通して露出し、顕微手術を用いた鈍的解剖により隣接する迷走神経を含む周囲組織から注意深く分離した。手術顕微鏡下に、外頚動脈(ECA)、上甲状腺及び上行咽頭動脈の分枝、さらに末端舌動脈及び上顎動脈の分枝を切開し、凝固した。2本の長い5-0絹縫合糸が、ECAを頸動脈分岐部に対して可能な限り遠位に結んだ。2本の短い(3cm)5-0絹縫合糸を、分岐部に閉じたECAのセグメントの周りに緩く結んだ。ICAを露出させ、翼口蓋動脈(PPA)の起源を可視化した。管腔内3.0ナイロン縫合糸は球形で拡大した先端を有し、炎の近くで加熱することによって生成され、血管上の小さな切開を介してECAの遠位セグメントに導入され、ECA管腔内に進められて分岐部に到達する。続いて、2本の短い絹縫合糸を結んで出血を防止した。ECAは、2つの長縫合糸ノートの間の遠位セグメントで切断された。ECAの断端は外科医に向けて保持され、したがって断端及びICAは直線上にあった。次に、PPAに入らないように特別な注意を払って、縫合糸をICAにした。縫合糸は、局所脳血流の急激な低下がLDFによって確認されるまで、ICAにおいて前進した。分岐部からICA内部に挿入された縫合糸の長さは19~25mmであった。LDFシグナルの突然の急激な減少は、成功したMCA閉塞を示すと解釈された。縫合糸を90分の閉塞期間後に穏やかに引き抜いた。術中と2時間の再循環中、血圧と血液ガスは正常範囲に維持され、頭蓋と直腸の温度は正常レベルに維持された。
【0084】
標準化された神経行動学的試験バッテリーが以前に記載されたように実施され(Ley JJ、Vigdorchik A、Belayev L、Zhao W、Busto R他(2005)第二世代アズレニルニトロン抗酸化剤、スチルバズレニルニトロンは、ラットの実験的局所脳虚血において持続的な神経保護を付与する:神経行動学、組織病理学、及び薬物動態学。J Pharmacol Exp Ther 313:1090-1100)、姿勢反射、感覚運動統合及び固有感覚の検査を含む。総神経学的スコアは、正常スコア0から最大可能スコア12までの範囲であった。
【0085】
フォーレスキン線維芽細胞はAllCellsから入手し、CD73発現線維芽細胞の精製を動物への投与前に行ったことを除いて、製造業者の説明書に従って培養した。CD73発現細胞の選択は、磁気活性化ソーティング(MACS)(Milteny)を使用して、製造者の指示に従って行った。間葉幹細胞をAllCellsから入手し、製造業者の説明書に従って培養した。MSCと線維芽細胞の両方を、動物あたり100万細胞の濃度で、静脈内、中大脳動脈結紮の24時間後に投与した。
【0086】
図1に見られるように、線維芽細胞投与は、MSCと比較して、優れた神経学的回復と関連していた。
(参考文献)
【0087】
以下の参考文献は、本明細書中に記載したものを補足する例示的な手順上又はその他の詳細を提供する範囲で、参照として明確に本明細書に組み入れられる。
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【0103】
本開示及びその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される設計の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び変更を本明細書で行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば、本開示から容易に理解するように、本明細書で説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又は工程を、本開示に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲はその範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程を含むことが意図される。