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特許7595011光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の製造方法
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  • 特許-光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/06 20060101AFI20241128BHJP
   A61K 31/554 20060101ALN20241128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C07D417/06
A61K31/554
A61P9/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021534059
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028375
(87)【国際公開番号】W WO2021015221
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019134766
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504464667
【氏名又は名称】株式会社アエタスファルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】平野 沙悠梨
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017448(WO,A1)
【文献】特開2012-131710(JP,A)
【文献】特表2008-534497(JP,A)
【文献】特開2012-046430(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114563(WO,A1)
【文献】特開2010-195759(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098080(WO,A1)
【文献】特表2009-506034(JP,A)
【文献】Tetrahedron Letters,2017年,Vol.58,p.2885-2888
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/06
A61K 31/554
A61P 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(III)
【化3】
[式中、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される化合物又はその塩を、チタン化合物、キラルなジオール化合物、及び水を含む反応剤、並びに酸化剤と、溶媒中で反応させる工程を含む、下記の式(IV)
【化4】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物又はその塩の製造方法であって、
前記チタン化合物はチタンテトライソプロポキシドであり、
前記キラルなジオール化合物は、下記の式(V-a)で表される酒石酸ジエステル及び下記の式(V-b)で表される酒石酸ジエステルから選ばれるものである、
製造方法:
【化5】
[式中、R 1 は、置換されていてもよいC 2-6 アルキル基、又はベンジルを示す。];
【化6】
[式中の記号は前記と同意義を示す。]
【請求項2】
式(III)及び式(IV)において、Rは水素原子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(III)で表される化合物又はその塩が、式(III)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(III)で表される化合物又はその塩が、式(III)で表される化合物の塩酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩又はスルホン酸塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
式(V-a)又は式(V-b)で表される酒石酸ジエステルが、酒石酸ジエチル、酒石酸ジイソプロピル、及び酒石酸ジベンジルからなる群から選択される酒石酸ジエステルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
酸化剤が、t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液又はクメンヒドロペルオキシドである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
酸化剤がクメンヒドロペルオキシドである、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
溶媒が、トルエン、クロロホルム、及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
溶媒がトルエンである、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物であり、キラルなジオール化合物が式(V-a)で表される(S,S)-酒石酸ジエステルである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物であり、キラルなジオール化合物が式(V-b)で表される(R,R)-酒石酸ジエステルである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
下記の式(III)
【化3】
[式中、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される化合物の、フマル酸塩、マンデル酸塩、及びスルホン酸塩からなる群から選択される塩を、チタン化合物、キラルなジオール化合物、及び水を含む反応剤、並びに酸化剤と、溶媒中で反応させる工程、
前記工程の産物である、下記の式(IV)
【化4】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物の、フマル酸塩、マンデル酸塩及びスルホン酸塩からなる群から選択される塩を単離する工程、及び、
塩を交換する工程を含む、
下記の式(VIII)
【化9】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物の塩酸塩の製造方法であって、
前記チタン化合物はチタンテトライソプロポキシドであり、
前記キラルなジオール化合物は、下記の式(V-a)で表される酒石酸ジエステル及び下記の式(V-b)で表される酒石酸ジエステルから選ばれるものである、
製造方法:
【化5】
[式中、R 1 は、置換されていてもよいC 2-6 アルキル基、又はベンジルを示す。];
【化6】
[式中の記号は前記と同意義を示す。]
【請求項13】
フマル酸塩、マンデル酸塩及びスルホン酸塩からなる群から選択される塩が、マンデル酸塩である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
Rが水素原子である、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物であり、キラルなジオール化合物が下記の式(V-a)
【化5】
[式中、R1は、置換されていてもよいC2-6アルキル基、又はベンジルを示す。]
で表される(S,S)-酒石酸ジエステルである、請求項1214のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物であり、キラルなジオール化合物が下記の式(V-b)
【化6】
[式中、R1は、置換されていてもよいC2-6アルキル基、又はベンジルを示す。]
で表される(R,R)-酒石酸ジエステルである、請求項1214のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の光学活性体の製造方法、及びその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の光学異性体のうちの一方の異性体(光学異性体第1成分)が、心拍数、血圧を緩やかに増加させ、心房細動や心不全の治療薬又は予防薬としてとして有用であることが開示されている。また、その鏡像異性体(光学異性体第2成分)は、相反する薬理作用を持ち、心拍数、血圧を減少させることがあわせて開示されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、1,4-ベンゾチアゼピン誘導体のヘテロ環の硫黄原子に酸化剤としてメタクロロ過安息香酸(mCPBA)を作用させて、スルホキシド体である1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体のラセミ体をキラルカラムを用いて光学分割し、光学異性体の第1成分と第2成分をそれぞれ分取する方法が開示されている。しかし、キラルカラムによる光学分割では、必要としない鏡像異性体を廃棄する必要があり、全工程の総収率の向上が困難である。また、特定の光学異性体をスケールアップして製造する目的において、キラルカラムを使用する方法は設備面からみて工業的に満足できる方法ではなかった。
【0005】
さらに、特許文献1には、4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの塩として塩酸塩が開示されている。塩酸塩形態の化合物は吸湿性が高い傾向が一般に知られているが、特許文献1には4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの塩酸塩に関して、その結晶や吸湿性に関する開示がなされていない。
【0006】
特許文献3には、1,4-ベンゾチアゼピン誘導体であるJTV-519、及び、そのジオキシド(SO)体であるS23が記載されている。また、S23は、JTV-519を過酸化水素で酸化することにより得られることも記載されている。しかしながら、当該酸化反応に関する具体的な開示は特許文献3においてなされていない。そして、ジオキシド体でなくスルホキシド体の酸化物を製造することについての具体的な開示もなく、当然に、光学活性なスルホキシド体の不斉合成反応についての記載もない。
【0007】
スルフィドの不斉酸化には幾つかの方法が知られている。
その一つに、遷移金属含有化合物と光学活性配位子とを含む錯体を触媒として利用し、スルフィドから光学活性なスルホキシドを製造する方法がある。しかしながら、ベンゾチアゼピンの硫黄原子を酸化した例はなく、そもそもヘテロ環内に存在する硫黄原子を酸化した例も本発明者らは見いだすことができなかった。1,4-ベンゾチアゼピン誘導体の不斉酸化のために参考となる例がない上に、触媒となる遷移金属を含むキラルな錯体は比較的高価であるため、当該触媒を利用した1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の工業的な製法の確立は困難と考えられた。
【0008】
別異の方法として、チタン化合物とジオール配位子とを含む反応剤(Kagan’s Reagent)を用いた不斉酸化方法が知られているが、本方法についても、ヘテロ環内に存在する硫黄原子を酸化した例は極めて稀である。本発明者らは、1,5-ベンゾチアゼピン誘導体の不斉酸化を試みた報告(非特許文献1)を参照した。しかしながら、当該文献は、1,5-ベンゾチアゼピン環の9位に存在する置換基Rがスルフィドのエナンチオ選択的な酸化反応に貢献することを報告するものであった。一方、本発明者らが扱う1,4-ベンゾチアゼピン誘導体は、ベンゾチアゼピン環の9位に置換基を有しないものであるため、当該文献に記載の方法をそのまま適用することは適切でないことが理解された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2016/017448号
【文献】国際公開第2010/098080号
【文献】国際公開第2007/024717号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Makino K et al., Tetrahedron Lett., 2017, Vol.58, pp.2885-88
【文献】Song ZJ et al., PNAS, 2004, Vol.101, pp.5776-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体の効率的な不斉合成方法を提供すること目的とする。
また、本発明の別の目的は、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの物性に優れた塩(吸湿性の低い塩)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ヘテロ環式化合物である1,4-ベンゾキサチイン誘導体の硫黄原子を不斉酸化した文献(非特許文献2)を参照し、当該文献に記載されたKaganの反応系の適用を試みた。しかしながら、4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピンを基質とした場合には、所望のエナンチオ選択的な酸化反応を達成することができなかった。そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべくさらに鋭意検討した結果、1,4-ベンゾチアゼピン誘導体を、チタン化合物、キラルなジオール化合物、及び水を含む反応剤と酸化剤の存在下、適切な操作のもと溶媒中で反応させることにより、光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体を効率的に製造できることを見出した。また、あわせて吸湿性の低い(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの塩を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の具体的な態様として、以下の[1]から[37]を挙げることができる。
[1]下記の式(I)
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、Xは、水素原子又は置換基を表す。]
で表される化合物又ははその塩を、チタン化合物、キラルなジオール化合物、及び水を含む反応剤、並びに酸化剤と、溶媒中で反応させる工程を含む、下記の式(II)
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Xは、水素原子又は置換基を示す。]
で表される光学活性化合物又はその塩の製造方法。
【0018】
[2]式(I)で表される化合物又はその塩が、式(I)で表される化合物である、前記[1]の製造方法。
[3]式(I)で表される化合物又はその塩が、式(I)で表される化合物の塩酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩又はスルホン酸塩である、前記[1]の製造方法。
[4]式(I)で表される化合物又はその塩が、下記の式(III)
【0019】
【化3】
【0020】
[式中、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される化合物又はその塩であり、式(II)で表される化合物又はその塩が、下記の式(IV)
【0021】
【化4】
【0022】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物又ははその塩である、前記[1]の製造方法。
[5]式(III)及び式(IV)において、Rは水素原子である、前記[4]の製造方法。
[6]式(III)で表される化合物又はその塩が、式(III)で表される化合物である、前記[4]又は[5]の製造方法。
[7]式(III)で表される化合物又はその塩が、式(III)で表される化合物の塩酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩又はスルホン酸塩である、前記[4]又は[5]の製造方法。
[8]チタン化合物がチタンテトライソプロポキシドである、前記[1]から[7]のいずれか1の製造方法。
[9]ジオール化合物が、下記の式(V-a)
【0023】
【化5】
【0024】
[式中、R1は、置換されていてもよいC2-6アルキル基、又はベンジルを示す。]
で表される酒石酸ジエステル、又は、下記の式(V-b)
【0025】
【化6】
【0026】
[式中の記号は前記と同意義を示す。]
で表される酒石酸ジエステルである、前記[1]から[8]のいずれか1の製造方法。
[10]式(V-a)又は式(V-b)で表される酒石酸ジエステルが、酒石酸ジエチル、酒石酸ジイソプロピル、及び酒石酸ジベンジルからなる群から選択される酒石酸ジエステルである、前記[9]の製造方法。
[11]酸化剤が、t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液又はクメンヒドロペルオキシドである、前記[1]から[10]のいずれか1の製造方法。
[12]酸化剤がクメンヒドロペルオキシドである、前記[11]の製造方法。
[13]溶媒が、トルエン、トリクロロメタン、及び酢酸エチルからなる群から選択される溶媒である、前記[1]から[12]のいずれか1の製造方法。
[14]溶媒がトルエンである、前記[13]の製造方法。
【0027】
[15]下記の式(VI)
【0028】
【化7】
【0029】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される、式(IV)で表される光学活性化合物のマンデル酸塩。
[16]式(VI)において、Rは水素原子である、前記[15]の光学活性化合物のマンデル酸塩
【0030】
[17]下記の式(VII)
【0031】
【化8】
【0032】
[式中、Rは置換されていてもよい炭化水素基を示し、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を表す。]
で表される、式(IV)で表される光学活性化合物のスルホン酸塩。
[18]スルホン酸塩が、p-トルエンスルホン酸塩又はメタンスルホン酸塩である、前記[17]の光学活性化合物のスルホン酸塩。
[19]Rが水素原子である、前記[17]又は[18]の光学活性化合物のスルホン酸塩。
【0033】
[20]下記の式(IV)
【0034】
【化4】
【0035】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物の塩であって、フマル酸塩、マンデル酸塩、p-トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸塩からなる群から選択される当該光学活性化合物の塩を、溶媒中、塩化水素を含む溶液と混合する工程を含む、
下記の式(VIII)
【0036】
【化9】
【0037】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
で表される光学活性化合物の塩酸塩の製造方法。
[21]Rが水素原子である、前記[20]の製造方法。
[22]溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、又は前記3種のうち2種以上の混合物である、前記[20]又は[21]の製造方法。
[23]溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチルとアセトニトリルとの混合物、又はテトラヒドロフランとアセトニトリルの混合物である、前記[22]の製造方法。
[24]溶媒がテトラヒドロフランとアセトニトリルの混合物である、前記[23]の製造方法。
[25]塩化水素を含む溶液が、メタノール、エタノール、又は酢酸エチルである、前記[20]から[24]のいずれか1の製造方法。
[26]塩化水素を含む溶液が酢酸エチルである、前記[25]の製造方法。
[27]式(IV)で表される光学活性化合物と塩酸を含む溶液に含まれる塩化水素が、当量比で1:1.1~1:1.5で用いられるものである、前記[20]から[26]のいずれか1の製造方法。
[28]フマル酸塩、マンデル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びメタンスルホン酸塩からなる群から選択される塩が、マンデル酸塩である、前記[20]から[27]のいずれか1の製造方法。
[29]マンデル酸塩が(R)-マンデル酸塩、前記[28]の製造方法。
【0038】
[30]光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物である、前記[1]から[14]のいずれか1の製造方法。
[31]光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物である、前記[1]から[14]のいずれか1の製造方法。
【0039】
[32]光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物である、前記[15]又は[16]の光学活性化合物のマンデル酸塩。
[33]光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物である、前記[15]又は[16]の光学活性化合物のマンデル酸塩。
【0040】
[34]光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物である、前記[17]から[19]のいずれか1の光学活性化合物のスルホン酸塩。
[35]光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物である、前記[17]から[19]のいずれか1の光学活性化合物のスルホン酸塩。
【0041】
[36]光学活性化合物が(R)体の光学活性化合物である、前記[20]から[29]のいずれか1の製造方法。
[37]光学活性化合物が(S)体の光学活性化合物である、前記[20]から[28]のいずれか1の製造方法。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体を効率的に、また高純度、更に高収率で製造することができる。
硫黄原子の不斉酸化方法では、反応系にジイソプロピルエチルアミンを添加することでエナンチオマー過剰率が顕著に向上することが報告されている(例えば、非特許文献2)が、本発明の方法は、ジイソピルエチルアミンのような塩基を添加することなく、高エナンチオマー過剰率を示す(光学純度の高い)不斉酸化反応を達成することができる。皮膚刺激性や引火性を有し、慎重な取り扱いが求められるジイソプロピルエチルアミンを反応に必要としないことは、本発明の方法の有利な点である。また、反応系にジイソプロピルエチルアミンが存在する場合としない場合とを比較すると、酸化反応終了後の反応液から所望の製造物(例えば、式(IV'-a)に示される化合物又はその塩)を分離・精製する後工程は、後者の場合の方が迅速・簡便に実施できる。すなわち、ジイソプロピルエチルアミンを使用しない本発明の方法は、迅速性、簡便性、及び安全性に優れ、かつ、低コストの反応を実現するものである。
また、本発明によれば、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピンの物性に優れた塩(吸湿性の低い塩)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの塩酸塩の動的水蒸気吸着曲線(DVS)を示す。
図2図2は、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドのp-トルエンスルホン酸塩の動的水蒸気吸着曲線(DVS)を示す。
図3図3は、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの(R)-マンデル酸塩の動的水蒸気吸着曲線(DVS)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明を実施するための形態を以下に説明する。
【0045】
式(I)、(II)、(III)、(III')、(IV)、(IV')、(IV'-a)、及び(IV'-b)等で表される化合物、並びに式中の各記号の定義について以下に詳述する。
以下に示す式(I)で表される化合物は、本発明の光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体(以下の式(II)で表される化合物)の製造方法において基質として使用される、1,4-ベンゾチアゼピン誘導体である。
【0046】
【化1】
【0047】
【化2】
【0048】
式(I)及び式(II)中、Xは、水素原子又は置換基を表す。
Xで表される「置換基」としては、ホルミル基、カルボキシ基、C1-6アルキル-カルボニル基、C2-6アルケニル-カルボニル基(例、アクリロイル、クロトノイル)、C3-10シクロアルキル-カルボニル基(例、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、シクロヘプタンカルボニル)、C3-10シクロアルケニル-カルボニル基(例、2-シクロヘキセンカルボニル)、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基;以下の式(IX)
【0049】
【化10】
【0050】
[式中、Rは、水素原子又は水酸基を示す。];及び、以下の式(X)
【0051】
【化11】
【0052】
[式中、Yは脱離基を示す。]
で表されるものが挙げられる。
Yで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、トリクロロメタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどのハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基;フェニルスルホニルオキシ、m-ニトロフェニルスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシなどの置換基を有していてもよいC6-10アリールスルホニルオキシ基(例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びニトロ基から選ばれる置換基を1ないし3個有していてもよいC6-10アリールスルホニルオキシ基);トリクロロアセトキシ、トリフルオロアセトキシなどのハロゲン化されていてもよいアシルオキシ基などが挙げられる。
Yは、特に好ましくは、ハロゲン原子である。
Xは、特に好ましくは、式(IX)で表される置換基である。
Rは、好ましくは、水素原子である。
【0053】
式(I)の好ましい例は、以下の式(III)で表される化合物である。
【0054】
【化3】
【0055】
[式中、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
式(III)で表される化合物において、さらに好ましくは、下記式(III')で表される化合物、すなわち、4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピンが挙げられる。
【0056】
【化12】
【0057】
本発明の方法の製造産物である式(II)で表される化合物の好ましい例は、以下の式(IV)で表される化合物である。
【0058】
【化4】
【0059】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
式(II)で表される化合物のより好ましい例として、下記式(IV’)で表される化合物、すなわち、4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドが挙げられる。
【0060】
【化13】
【0061】
[式中、*は光学活性体であることを示す。]
式(IV')で表される化合物の例は、以下の式(IV'-a)で表される化合物、すなわち、(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドである。
【0062】
【化14】
【0063】
(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドは、特許文献1における『式[IV]で表される化合物の光学異性体第1成分』と同一の化合物であることが、本発明者らの解析により明らかにされている。当該化合物は、心拍数、血圧を緩やかに増加させ、血行動態を改善する性質を有し、心不全の改善等のための医薬として有用なものである。
【0064】
式(IV')で表される化合物のもう一つの例は、以下の式(IV'-b)で表される化合物、すなわち、(S)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドである。
【0065】
【化15】
【0066】
(S)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドは、特許文献1における『式[IV]で表される化合物の光学異性体第2成分』と同一の化合物であることが、本発明者らの解析により明らかにされている。
式(IV'-a)で表される化合物と、式(IV'-b)で表される化合物とは、例えば、特許文献1に記載された方法により分離でき、また、同定することができる。
【0067】
式(IV')で表される化合物の特に好ましい例は、式(IV'-a)で表される(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドである。
【0068】
式(I)、式(II)、式(III)、式(III')、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、及び式(IV'-b)で表される化合物は、塩であってもよい。
化合物の塩としては、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、重炭酸などとの塩が挙げられる。
有機酸との塩の好適な例としては、カルボン酸(即ち、1個以上のカルボキシ基を有する有機化合物;具体例としては、ギ酸、酢酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、マンデル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸など);スルホン酸(即ち、1個以上のスルホ基を有する有機化合物;具体例としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸など)との塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
上記の塩において、薬学的に許容し得る塩が好ましく、中でも塩酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、スルホン酸の塩が好ましい。さらに好ましくは、マンデル酸、又はスルホン酸塩である。該「スルホン酸」の中でも、下記式(XI):
【0069】
【化16】
【0070】
[式中、Rは置換されていてもよい炭化水素基を示す。]
で表されるスルホン酸との塩が好ましい。
上記式(XI)中、Rで表される「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」として好適なものは、C1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基等が挙げられ、中でもC1-6アルキル基及びC6-14アリール基が好ましく、C6-14アリール基がより好ましい。
上記式(XI)中、Rは、好ましくは、置換されていてもよいC6-14アリール基であり;より好ましくは、置換されていてもよいフェニル基であり;さらに好ましくは、C1-6アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;特に好ましくは、メチルで置換されていてもよいフェニル基である。
上記式(XI)で表されるスルホン酸は、具体的には、好ましくは、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸であり、より好ましくは、p-トルエンスルホン酸である。
式(III)及び式(III')で表される化合物は、フリー体であっても塩形態であってもよいが、フリー体がより好ましい。
式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)及び式(IV'-b)で表される化合物は、フリー体であっても塩形態であってもよいが、塩形態の方が好ましい。化合物の塩としては、塩酸、シュウ酸、フマル酸、マンデル酸、及びスルホン酸との塩が好ましく、さらに好ましくは、塩酸、マンデル酸、及びp-トルエンスルホン酸との塩であり、最も好ましくはマンデル酸との塩である。
マンデル酸との塩の好ましい例として、下記の式(VI)及び式(VI')の化合物を挙げることができる。
【0071】
【化7】
【0072】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
【0073】
【化17】
【0074】
[式中、*は光学活性体であることを示す。]
塩となるマンデル酸は光学活性体が好ましく、式(IV)及び式(IV')で表される化合物が(R)体の場合は、(R)-マンデル酸が好ましく、式(VII)及び式(VII')で表される化合物が(S)体の場合は、(S)-マンデル酸が好ましい。
【0075】
スルホン酸との塩の好ましい例として、下記の式(VII)及び式(VII')の化合物を挙げることができる。
【0076】
【化8】
【0077】
[式中、Rは置換されていてもよい炭化水素基を示し、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を表す。]
【0078】
【化18】
【0079】
[式中、*は光学活性体であること示し、Rは、水素原子又は水酸基を示し、Rは置換されていてもよい炭化水素を示す。]
【0080】
塩酸との塩の好ましい例として、下記の式(VIII)及び式(VIII')の化合物を挙げることができる。
【0081】
【化9】
【0082】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
【0083】
【化19】
【0084】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Rは、水素原子又は水酸基を示す。]
式(II)、式(IV')、式(IV'-a)、及び式(IV'-b)で表される化合物の塩、並びに、塩形態である化合物である式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)、及び式(VIII')で表される化合物は、いずれも、対応するスルフィド体化合物を酸化する反応によってフリー体の化合物として製造し、その後、塩形態の化合物に変換することにより調製しても良い。フリー体の化合物を上記に例示するいずれかの塩の形態へと変換し、塩形態の化合物を調製することは、当業者であれば適宜実施することができる。
【0085】
式(I)、式(II)、式(III)、、式(III')、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、及び式(IV'-b)で表される化合物又はその塩、並びに、式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)及び式(VIII')で表される塩形態の化合物は、それぞれ、溶媒和物(例、水和物、エタノール和物等)であっても、無溶媒和物(例、非水和物等)であってもよい。溶媒和物、非溶媒和物のいずれの形態の化合物も、式(I)、式(II)、式(III)、式(III')、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、式(IV'-b)、式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)又は式(VIII')で表される化合物に包含される。
【0086】
上記の化合物において同位元素等で標識された化合物も、式(I)、式(II)、式(III)、式(III')、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、式(IV'-b)、式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)又は式(VIII')で表される化合物に包含される。
上記の化合物においてHをH(D)に変換した重水素変換体も、式(I)、式(II)、式(III)、式(III')、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、式(IV'-b)、式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)又は式(VIII')で表される化合物に包含される。
【0087】
ジオール化合物である式(V-a)及び式(V-b)で表される化合物において、R1は、置換されていてもよいC2-6アルキル基、又はベンジルを表す。
「置換されていてもよいC2-6アルキル基」としては、例えば、下記の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよいC2-6アルキル基が挙げられる。
【0088】
[置換基群A]
(1)ハロゲン原子、
(2)ニトロ基、
(3)シアノ基、
(4)オキソ基、
(5)ヒドロキシ基、
(6)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、
(7)C6-14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフトキシ)、
(8)C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)、
(9)5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、
(10)3ないし14員非芳香族複素環オキシ基(例、モルホリニルオキシ、ピペリジニルオキシ)、
(11)C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、
(12)C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ)、
(13)C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、(14)モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、
(15)C6-14アリール-カルバモイルオキシ基(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)、
(16)5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、(17)3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、モルホリニルカルボニルオキシ、ピペリジニルカルボニルオキシ)、
(18)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、
(19)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)、
(20)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基、
(21)5ないし14員芳香族複素環基、
(22)3ないし14員非芳香族複素環基、
(23)ホルミル基、
(24)カルボキシ基、
(25)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、
(26)C6-14アリール-カルボニル基、
(27)5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、
(28)3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、
(29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、
(30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル)、
(31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、
(32)カルバモイル基、
(33)チオカルバモイル基、
(34)モノ-又はジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、
(35)C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、
(36)5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル、チエニルカルバモイル)、
(37)3ないし14員非芳香族複素環カルバモイル基(例、モルホリニルカルバモイル、ピペリジニルカルバモイル)、
(38)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、
(39)C6-14アリールスルホニル基、
(40)5ないし14員芳香族複素環スルホニル基(例、ピリジルスルホニル、チエニルスルホニル)、
(41)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基、
(42)C6-14アリールスルフィニル基(例、フェニルスルフィニル、1-ナフチルスルフィニル、2-ナフチルスルフィニル)、
(43)5ないし14員芳香族複素環スルフィニル基(例、ピリジルスルフィニル、チエニルスルフィニル)、
(44)アミノ基、
(45)モノ-又はジ-C1-6アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ)、
(46)モノ-又はジ-C6-14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、
(47)5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、
(48)C7-16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ)、
(49)ホルミルアミノ基、
(50)C1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、
(51)(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例、N-アセチル-N-メチルアミノ)、
(52)C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、
(53)C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、
(54)C7-16アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基(例、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、
(55)C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、
(56)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ、トルエンスルホニルアミノ)、
(57)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、
(58)C2-6アルケニル基、
(59)C2-6アルキニル基、
(60)C3-10シクロアルキル基、
(61)C3-10シクロアルケニル基、及び
(62)C6-14アリール基。
【0089】
「置換されていてもよいC2-6アルキル基」における上記置換基の数は、例えば、1ないし5個、好ましくは1ないし3個である。置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
1は、好ましくは置換されていないC2-6アルキル基及び及びベンジルであり、より好ましくは、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、及びベンジルであり、最も好ましくはイソプロピルである。
【0091】
式(V-a)で表される化合物の最も好ましい実施態様は、(R,R)-酒石酸ジイソプロピルである。
式(V-b)で表される化合物の最も好ましい実施態様は、(S,S)-酒石酸ジイソプロピルである。
【0092】
以下、光学活性な1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド誘導体(式(II)で表される化合物)の光学活性体又はその塩の製造法について詳述する。
式(II)で表される化合物の光学活性体又はその塩は、下記の反応式に示す製造方法によって製造することができる。
反応式:
【0093】
【化20】
【0094】
[式中、*は光学活性体であることを示し、Xは、水素原子又は置換基を示す。]
【0095】
上記製造方法に用いる試薬や条件について以下に詳述する。
上記製造方法は、式(I)で表される化合物又はその塩をチタン化合物、キラルなジオール化合物、及び水を含む反応剤、並びに酸化剤と、溶媒中で反応させることにより、式(II)で表される化合物の光学活性体又はその塩を製造する方法である。
【0096】
該キラルなジオール配位子は、本発明の酸化反応において反応剤として機能する限り、任意の構造のキラルなジオール化合物であって良い。該キラルなジオールとしては、下記に示す光学活性化合物が挙げられる。
【0097】
【化21】
【0098】
【化5】
【0099】
【化6】
【0100】
[式中、R1は、置換されていてもよいC2-6アルキル基、又はベンジルを示す。]
【0101】
該キラルなジオール化合物は、好ましくは、酒石酸ジオールである。より好ましくは、上記の式(V-a)及び式(V-b)で表されるキラルな酒石酸ジオールである。さらに好ましい例として、(R,R)-酒石酸ジエチル、(S,S)-酒石酸ジエチル、(R,R)-酒石酸ジイソプロピル、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル、(R,R)-酒石酸ジ-tert-ブチル、(S,S)-酒石酸ジ-tert-ブチル、(R,R)-酒石酸ジベンジル、及び(S,S)-酒石酸ジベンジルが挙げられる。最も好ましくは(R,R)-酒石酸ジイソプロピル、又は(S,S)-酒石酸ジイソプロピルであり、特には、(S,S)-酒石酸ジイソプロピルである。
【0102】
後述の実施例によって示されるように、(R,R)-酒石酸ジオール化合物を用いると、化合物(II)の(S)体が過剰に生成し、(S,S)-酒石酸ジオール化合物を用いると、化合物(II)の(R)体が過剰に生成する。
式(IV)、式(IV')、式(VI)、式(VI')、式(VII)、式(VII')、式(VIII)及び式(VIII')で表される化合物の製造する場合も同様であり、(R,R)-酒石酸ジオール化合物を含む反応剤を使用した場合には(S)体の反応産物が過剰に(優先的に)生成し、逆に(S,S)-酒石酸ジオール化合物を含む反応剤を使用した場合には(R)体の反応産物が過剰に(優先的に)生成するので、キラルな酒石酸ジオールの光学異性体を選択することにより、(S)体又は(R)体の製造を制御することができる。
【0103】
(R)体である式(IV'-a)で表される化合物を製造する場合、及び、(S)体である式(IV'-b)で表される化合物を製造する場合の制御も同様である。前者の場合は式(V-a)で表される化合物のような(S,S)-酒石酸ジオール化合物が好ましく利用される。
また、後者の場合は式(V-b)で表される化合物のような(R,R)-酒石酸ジオール化合物が好ましく利用される。
【0104】
該反応剤は、チタン化合物及び該キラルなジオール化合物を含む有機金属錯体と、水とによって構成されたもので良い。
該有機金属錯体は、配位子となるキラルなジオール化合物、及び金属源となるチタンを含むチタン化合物から、公知の手段(例、濃縮、溶媒抽出、分留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー)により単離又は精製したものを用いることができる。
該有機金属錯体は、「金属源となるチタン化合物を含む他の錯体」及び「キラルなジオール配位子」を容器に添加して調製してもよい。「金属源となるチタン化合物を含む他の錯体」及び「キラルなジオール配位子」を容器に添加して有機金属錯体を調製する場合には、有機金属錯体を構成するのに必要な理論量に対して1~100倍のモル比の「配位子」を添加する。好ましくは1~5倍、さらに好ましくは1.01~2.02倍用いる。
【0105】
該反応剤は、単離又は精製された有機金属錯体を使用しなくても良い。反応剤の一つの態様は、チタン化合物、キラルなジオール化合物及び水の組合せとして定義され、当該組合せが溶媒を含む反応系に添加されることにより反応剤としての作用が発揮され、本発明の酸化反応が達成される。
単離又は精製された有機金属錯体を使用しない場合でも、チタン化合物とキラルなジオール配位子との好ましいモル比は前記と同様であり、1:1~1:100の範囲である。
より好ましくは1:1~1:5であり、さらに好ましくは1:1.01~1:2.02である。一例として、チタン化合物とキラルなジオール配位子とを1:2のモル比で使用する態様を挙げることができる。
【0106】
該チタン化合物は、本発明の酸化反応において反応剤として機能する限り、任意の構造のチタン化合物であって良い。チタン化合物の好ましい例は、チタンテトライソプロポキシドである。
【0107】
該反応剤は、前記のとおり、該チタン化合物、及び該キラルなジオール化合物と共に水を含む。反応剤としての水は、本発明の反応が進行する限り任意の量が使用され得る。反応剤として利用する好ましい水の量は、該チタン化合物とのモル比で0.1:1~10:1の範囲である。水:該チタン化合物の好ましいモル比として、0.3:1~3:1、より好ましいモル比として、0.5:1~2:1が挙げられる。さらに好ましいモル比の範囲は、水:該チタン化合物=1:1~1.3:1である。
【0108】
該酸化剤の例としては、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸tert-ブチル、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ一硫酸カリウム(オキソン)、メタクロロ安息香酸、及びヨードシルベンゼンなどが挙げられる。tert-ブチルヒドロペルオキシドの水溶液、又はクメンヒドロペルオキシドがより好ましく、クメンヒドロペルオキシドが最も好ましい。
該酸化剤は、それ自体で反応系に添加されても良く、水溶液などの溶液の形で反応系に添加されても良い。
【0109】
反応の基質となる化合物、すなわち、式(I)、式(III)及び式(III')で表される化合物又はその塩については、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3など既存の文献に記載の方法で合成できる。
【0110】
上記に示される本発明の反応は、溶媒中で行われる。このような溶媒は、反応を阻害することなく、原料化合物、有機金属錯体及び添加物を可溶化するものであれば特に制限されない。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、アニソールなどのエーテル類;エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ペンタノール、ベンジルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタン、石油エーテルなどの飽和炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどのアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホン類;アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メチル、ギ酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン;水などが用いられる。これらの溶媒は、適宜の割合で混合して用いてもよい。溶媒の好ましい例は、トルエン、クロロホルム、及び酢酸エチルである。これらのうちトルエンが特に好ましい。
【0111】
該溶媒の使用量は、反応の基質となる化合物、すなわち、式(I)、式(III)及び式(III')で表される化合物又はその塩の溶解度などにより適宜決定される。例えば、溶媒としてトルエンを用いる場合、無溶媒に近い状態から、基質である化合物又はその塩の100重量倍以上の溶媒中で反応を行うことができる。通常基質である化合物又はその塩に対して約2~約100重量倍の溶媒を用いることが好ましい。
【0112】
本発明の方法の一実施態様は、酸化反応に先だって、溶媒を含む容器内にチタン化合物(チタンテトライソプロポキシド等)とキラルなジオール配位子(例えば、化合物(V-a)又は化合物(V-b))を添加する。反応剤として使用する水は、後述のように、通常、前記添加の後に添加される。しかしながら、水の添加は、同時又はそれに先だって行われても良い。
【0113】
チタン化合物(例えば、チタンイソプロポキシド)は基質(式(I)、式(III)及び式(III')で表される化合物又はその塩)に対して、0.01~10モル、好ましくは0.1~2モル、さらに好ましくは0.5~1.5モル使用する。
【0114】
反応系は、次のように構築することができる。
チタン化合物、キラルなジオール配位子、及び溶媒を含む溶液に、基質(式(I)、式(III)及び式(III')で表される化合物又はその塩)と水が添加される。当該添加は、酸化剤を添加する前に行うことが望ましい。酸化剤の添加に先だって混合溶液を加熱しても良い。混合溶液は、40~70℃、又は50~55℃に加熱される。加熱時間の例は0.1~3時間、及び0.5~1.2時間である。
【0115】
加熱操作を行うか否かにかかわらず、混合溶液の温度が所定の反応温度より高い場合、混合溶液は所望の反応温度まで冷却される。冷却後、酸化剤を添加することで酸化反応を開始させる。反応温度は-60℃以上20℃以下である。好ましくは、-30℃以上0℃未満である。より好ましくは、-30℃以上-10℃以下である。さらに好ましくは、-30℃以上-20℃以下である。反応時間は、反応の進行度合いにより適宜決定できるが、通常2時間以上80時間以下である。好ましくは10時間以上30時間以下である。
【0116】
酸化剤の使用量は、基質(式(I)、式(III)及び式(III')で表される化合物又はその塩)に対して、0.50~4.00モルであり、より好ましくは0.95~2.02モルである。
【0117】
反応は、常圧で、空気の雰囲気下で実施できる。また、ガス交換により、空気を不活性ガスに置換し、不活性ガス雰囲気下で反応を行っても良い。不活性ガスの例は、窒素ガス、アルゴンガスである。好ましくは、アルゴンガスが使用される。
【0118】
基質が酸性物質との塩である場合には、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン)を基質に対して1.0~1.3モル添加しても良い。しかしながら、本発明の方法は、一般に、ジイソピルエチルアミンのような塩基を添加することなく、高変換率、高選択性及び/又は高光学純度(高エナンチオ選択性)の不斉酸化反応を達成することができる。
【0119】
本発明の方法による変換率((全酸化物/(残留基質+全酸化物);%)は、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
本発明の方法による選択率((モノオキシド体の酸化物/全酸化物);%)は、70%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
本発明の方法による光学純度(エナンチオマー過剰率の絶対値;%ee)は、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
ここで、全酸化物とは、スルフィド体である基質に対応するモノオキシド体の酸化物、及びジオキシド体の酸化物の合計を意味する。残存基質、モノオキシド体の酸化物、及びジオキシド体の酸化物の量は、それぞれ、HPLCで分離した後、エリア面積を測定することにより決定する。エナンチオマー過剰率を測定するに当たり、(R)体及び(S)体のモノオキシド体の酸化物の量は、特許文献1に記載された方法、及びそれに準じた方法により、HPLCで分離、同定することができる。
なお、後述の実施例においては、(R)体が優先的に製造される場合に+値が、(S)体が優先的に製造される場合に-値が与えられるようにエナンチオマー過剰率を算出し、結果を表示している。
【0120】
本反応で得られる反応産物(式(II)、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)及び式(IV'-b)で表される光学活性化合物又はその塩)は、公知の手段(例、分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー塩法)により、精製してもよい。
光学純度の高い反応産物(式(II)、式(IV'-a)及び式(IV'-b)で表される光学活性化合物又はその塩)を得るために、酸化反応後、分別再結晶法又はジアステレオマー塩法で精製することができる。中でも光学活性なマンデル酸とのジアステレオマー塩の晶析が好適である。反応産物が(R)体の場合は(R)体のマンデル酸を用いた晶析が、反応産物が(S)体の場合は(S)体のマンデル酸を用いた晶析が、特に好適である。より具体的には、酸化反応終了後の反応液を酸塩基抽出した後、溶媒中で(R)-マンデル酸(又は(S)-マンデル酸)を加えることで、光学活性化合物のマンデル酸塩を晶析させることができる。酸塩基抽出に用いる酸の例としてクエン酸、及び塩酸を挙げることができる。また、塩基の例として炭酸カリウムを挙げることができる。酸添加、塩基添加を順次行った後、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、又はこれらの混合物)を添加することで酸化反応の反応産物が抽出される。晶析は、抽出後に溶媒交換後、実施することが好ましい。晶析時に用いる溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、エタノール、トルエンなどが使用できる。前記溶媒の好ましい例は、酢酸エチル、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びエタノールであり、特に好ましい例はアセトンである。
【0121】
式(IV'-a)で表される化合物の(R)-マンデル酸塩は、後述の実施例のように、空気中でも潮解することのない安定な結晶として調製することができる。
【0122】
式(II)、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、及び式(IV'-b)で表される化合物の塩については、フリー体の化合物を、溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、又はこれらの2者以上の任意の混合物)、酸(p-トルエンスルホン酸、(R)-マンデル酸等)と反応させることにより形成させることができる。
前記化合物の塩酸塩は、塩酸塩以外の塩形態の化合物を材料として、塩交換によって形成させることもできる。例えば、前記化合物の塩(フマル酸塩、マンデル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等)を含む溶液又はスラリーに、HClを含む溶液(例えば、塩酸酢酸エチル溶液、塩酸メタノール溶液、塩酸メタノール溶液)を添加することによって、式(II)、式(IV)、式(IV')、式(IV'-a)、及び式(IV'-b)で表される化合物の塩酸塩を得ることができる。材料となる前記化合物の塩の好ましい例は、(R)-マンデル酸塩である。前記化合物の塩を含む溶液又はスラリーは、溶媒としてテトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、又はこれらの2者以上の任意の混合物を含むものであることが好ましい。より好ましくは、酢酸エチル、酢酸エチルとアセトニトリルの混合物、又はテトラヒドロフランとアセトニトリルの混合物であり、特に好ましくはテトラヒドロフランとアセトニトリルの混合物である。HClを含む溶液の好ましい例は、塩酸酢酸エチル溶液(HCl/EtOAc)である。材料となる前記化合物の塩とHClを含む溶液におけるHClとは、任意の比率で使用されて良いが、好ましくは当量比で1:1.1~1:1.5の範囲で使用される。前記添加は任意の温度環境下で実施できるが、好ましくは室温環境下で実施される。添加し、一定時間混合することにより、前記化合物の塩酸塩を析出させることができる。室温で一定時間混合した後、冷却(例えば0℃)しても良い。
析出した沈殿物は、冷溶媒(例えば酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン)で洗浄し、次いで減圧下で乾燥させることにより前記化合物の塩酸塩の結晶として単離できる。
【実施例
【0123】
本発明は、更に以下の試験例及び実施例によって詳しく説明されるが、これらの例は単なる実施であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0124】
以下の試験例、実施例中の「室温」は通常約10 ℃ないし約35 ℃を示す。
化学収率は、単離収率(mol/mol%)又は高速液体クロマトグラフィーで得られた収率として示される。
光学活性体の光学純度(不斉収率)は、鏡像体過剰率(% e.e.)で評価した。該鏡像体過剰率は、次式により求めた。
鏡像体過剰率(% e.e.)=100 X [(R)-(S)]/[(R)+(S)](式中、(R)及び(S)は各鏡像体の高速液体クロマトグラフィーにおける面積を示す。)
また、クロマトグラフィーで用いられる溶媒量は体積%で表記される。その他の物質の使用量は重量%で表記される。
プロトンNMRスペクトルの解析結果において、OHやNHプロトンなどピーク値がブロードで確認できないものについては、データが記載されていない。
【0125】
その他の本文中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s : シングレット(singlet)
d : ダブレット(doublet)
t : トリプレット(triplet)
q : クァルテット(quartet)
m : マルチプレット(multiplet)
br : ブロード(broad)
J : カップリング定数(coupling constant)
Hz : ヘルツ(Hertz)
CDCl3 : 重クロロホルム
DMSO-d6: 重ジメチルスルホキシド
CD3OD : 重メタノール
1H-NMR : プロトン核磁気共鳴
13C-NMR : 13C核磁気共鳴
【0126】
以下の実施例において、核磁気共鳴スペクトル(NMR)は以下の条件により測定した。
1H核磁気共鳴スペクトル(1H NMR):ブルカー社製BRUKER AVANCE 500(500MHz)、内部標準物質:テトラメチルシラン
13C核磁気共鳴スペクトル(13C NMR):ブルカー社製BRUKER AVANCE 500(125MHz)、内部標準物質:CDCl3
【0127】
以下の試験例において、動的水蒸気吸着曲線(DVS)は、Surface Measurement Systems社製のDVS Adventure 1により試験した。
【0128】
(実施例1)
4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド(2)の合成
【0129】
【化22】
【0130】
試験管に、溶媒(トルエン又はジクロロメタン)(1.5 mL)、(R,R)-酒石酸ジエチル(0.0514 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0444 mL)を加えて、室温で3分以上撹拌した。次いで水(0.0027 mL)を加え、室温で3分以上撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン (1)(0.0637 g)又は(1)のフマル酸塩(0.0853 g)を加え、室温で20分撹拌した。反応液を冷却し、-20℃でクメンヒドロペルオキシド((1)に対して2当量)を加え、-20℃で21時間撹拌した。HPLCにより得られたエリア面積に基づき、(2)への変換率、選択率、及び((R)-2)のエナンチオマー過剰率を算出した。
変換率=((2)+(3))/((1)+(2)+(3))
選択率=((2))/((2)+(3))
ここで、上記2式において、(2)は(R)-2と(S)-2の合計値を示す。
((R)-2)の鏡像体過剰率(% e.e.)は、上記の通り、100 X [((R)-2)-((S)-2)]/[((R)-2)+((S)-2)]により算出した。
結果を表1に示す。表中でエナンチオマー過剰率がマイナスの値は、((S)-2)が主生成物であることを示す。
【0131】
高速液体クロマトグラフィー分析条件(面積百分率、光学純度)
カラム:CHIRALPAK IC (ダイセル化学工業株式会社製)、 4.6*250 mm
UV検出波長:245 nm
移動相:高速液体クロマトグラフィー用アセトニトリル/メタノール/ジエチルアミン=900/100/1
流速:1.0 mL/min
カラム温度:40 ℃
保持時間:5.0 min. (1), 5.6 min. (3), 9.8 min. ((R)-2), 12.5 min. ((S)-2)
なお、((R)-2)は特許文献1の光学異性体第1成分と同一化合物であり、((S)-2)は特許文献1の光学異性体第2成分と同一化合物であることが確認されている。
【0132】
【表1】
【0133】
基質(1)がフリー体、フマル酸塩のいずれの場合であっても、高選択率でモノオキシド体化合物である(2)が産生された。
キラルなジオール化合物として(R,R)-酒石酸ジエチルを用いた本実施例では、(S)体のモノオキシド体化合物である((S)-2)が主生成物として産生された。
トルエン、ジクロロメタンのいずれの溶媒でも不斉合成を行うことができたが、本実施例の条件ではトルエンの方が高い光学純度を与えた。
【0134】
(実施例2)
4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド(2)の合成
【0135】
【化23】
【0136】
試験管に、トルエン(1.5 mL)、(R,R)-酒石酸ジエチル(0.0514 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0444 mL)を加えて、室温で3分以上撹拌した。次いで水(0.0027 mL)を加え、室温で3分以上撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.0637 g)を加え、室温で20分撹拌した。反応液を規定の温度にしたのちに、酸化剤((1)に対して2当量)を加え、同温度で21時間撹拌した。HPLCにより(2)への変換率と((R)-2)のエナンチオマー過剰率を算出した。
【0137】
結果を表2に示す。表中でエナンチオマー過剰率がマイナスの値は、((S)-2)が主生成物であることを示す。
【0138】
高速液体クロマトグラフィー分析条件(面積百分率、光学純度)は実施例1と同様である。
【0139】
【表2】
【0140】
酸化剤として70%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を用いた場合には、((S)-2)を主生成物とする不斉合成反応が確認された。反応温度は-20℃の場合において、0℃や室温の場合よりも高い光学純度が認められた。
酸化剤として30%過酸化水素水溶液を用いた場合には、得られた酸化物はほぼ全量がジオキシド体化合物である(3)であった。
【0141】
(実施例3)
4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド(2)の合成
【0142】
【化24】
【0143】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、キラルなジオール化合物(リガンド)(Ti(Oi-Pr)4に対して2当量)、チタンテトライソプロポキシド((1)に対して規定量)を加えて、室温で3分以上撹拌した。次いで水(0.0027 mL)を加え、室温で3分以上撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.0637 g)を加え、室温で20分撹拌した。反応液を必要に応じて冷却したのち、規定の温度で酸化剤((1)に対して2当量)としてクメンヒドロペルオキシド又は70%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を加え、同温度で21時間撹拌した。HPLCにより(2)への変換率と((R)-2)のエナンチオマー過剰率を算出した。
【0144】
結果を表3に示す。表中でエナンチオマー過剰率がマイナスの値は、((S)-2)が主生成物であることを示す。また、用いたキラルなジオール化合物(リガンド)である(R,R)-酒石酸ジエチル、(S,S)-酒石酸ジメチル、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル、(R,R)-酒石酸ジt-ブチル、(R,R)-酒石酸ジベンジル、(R,R)-ヒドロキシベンゾイン、(R)-ビナフトール、及び(S)-ジブロモビナフトールの構造式も併せて以下に示す。
【0145】
高速液体クロマトグラフィー分析条件(面積百分率、光学純度)は実施例1と同様である。
【0146】
【表3】
【0147】
【化25】
【0148】
上記の条件において、キラルなジオール化合物(リガンド)として(S,S)-酒石酸ジメチル、(R,R)-ヒドロキシベンゾイン、(R)-ビナフトール、又は(S)-ジブロモビナフトールを用いた場合には、モノオキシド体化合物への十分な酸化反応が認められなかった。
一方、キラルなジオール化合物(リガンド)として(R,R)-酒石酸ジエチル又は(R,R)-酒石酸ジベンジルを用いた場合には、((S)-2)を主生成物とする不斉合成反応が、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル、を用いた場合には、((R)-2)を主生成物とする不斉合成反応が、それぞれ達成された。これらの条件では、変換率、選択率ともに十分に高い値が示された。
【0149】
(実施例4)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0150】
【化26】
【0151】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、溶媒(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加えて、室温で3分以上撹拌した。次いで水(0.0059 mL)を加え、室温で3分以上撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.1380 g)を加え、室温で20分撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で21時間撹拌した。HPLCにより(2)への変換率と((R)-2)のエナンチオマー過剰率を算出した。
【0152】
溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールのいずれかを用いた。
結果を表4に示す。
高速液体クロマトグラフィー分析条件(面積百分率、光学純度)は実施例1と同様である。
【0153】
【表4】
【0154】
メタノール以外の溶媒を使用した場合には十分に高い変換率が得られた。特に、トルエン、クロロホルム、及び酢酸エチルを使用した場合には、選択率及び光学純度でも高い値が得られ、収率よく((R)-2)の光学異性体が製造された。
【0155】
(実施例5)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0156】
【化27】
【0157】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加えて、室温で3分撹拌した。次いで水(0.0059 mL)を加え、室温で3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.1380 g)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で3時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:97%、(2)/(3)の選択性:93%、エナンチオマー過剰率:91.2% eeであった。キラルなジオール化合物として(S,S)-酒石酸ジイソプロピルを使用し、酸化剤としてクメンヒドロペルオキシドを使用し、溶媒としてトルエンを用いた本実施例では、変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
【0158】
(実施例6)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0159】
【化28】
【0160】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加えて、室温で3分撹拌した。次いで水(0.0059 mL)を加え、室温で3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4ベンゾチアゼピン(1) (0.1380 g)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で21時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:100%、(2)/(3)の選択性:66%、エナンチオマー過剰率:96.1% eeであった。
実施例5の結果と比較すると、これらの実施例の条件では、反応時間としては3時間で十分であることが明らかとなった。
【0161】
(実施例7)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0162】
【化27】
【0163】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.1380 g)を加え、室温にて3分撹拌した。次いでチタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0059 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で3時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:96%、(2)/(3)の選択性:95%、エナンチオマー過剰率:92.2% eeであった。
基質とチタン化合物の添加順が実施例5と本実施例とで異なっているが、いずれの実施例でも変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
【0164】
(実施例8)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0165】
【化27】
【0166】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.1380 g)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0059 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で3時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:95%、(2)/(3)の選択性:95%、エナンチオマー過剰率:91.8% eeであった。
基質と水の添加順が実施例5と本実施例とで異なっているが、いずれの実施例でも変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
【0167】
(実施例9)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0168】
【化29】
【0169】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)塩酸塩 (0.1500 g)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0059 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で3時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:70%、(2)/(3)の選択性:96%、エナンチオマー過剰率:57.0% eeであった。
基質として(1)の塩を利用した場合でも、十分な変換率、及び選択率が得られ、高い光学純度で((R)-2)の光学活性なモノオキシド化合物を製造することができた。
【0170】
(実施例10)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0171】
【化30】
【0172】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(1.5 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.1361 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.0962 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)塩酸塩 (0.150 g)ならびに塩基(1に対して1.0-1.3当量)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0059 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.1189 mL)を加え、同温度で3時間撹拌した。
HPLCにより(2)への変換率と(R)-2のエナンチオマー過剰率を算出した。
結果を表5に示す。
【0173】
【表5】
【0174】
塩基として、ジイソプロピルエチルアミン、及びトリエチルアミンを使用した場合にも、十分な変換率、及び選択率が得られ、高い光学純度で((R)-2)の光学活性なモノオキシド化合物を製造することができた。
塩基の添加量を1.0当量から1.3当量に増量しても、変換率が若干向上する程度であり、結果に大差は認められなかった。
実施例9の結果と比較すると、塩形態の基質を用いた場合には、塩基としてジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンを添加すると光学純度の向上が認められた。塩基により基質が脱塩され、基質がフリー体として反応に供されたことが示唆される。一方、塩基としてピリジンを添加した場合に光学純度への影響はほぼ認められなかった。
【0175】
(実施例11)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0176】
【化31】
【0177】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(10 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.908 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.642 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.921 g)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0390 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.397 mL)を加え、同温度で99時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:99%、(2)/(3)の選択性:93%、エナンチオマー過剰率:94.5% eeであった。
実施例5と同様、変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
実施例5の結果と比較すると、反応時間を延長したことにより、変換率や光学純度において若干の向上が認められた。また、酸化剤の使用当量を2.0当量から1.0当量(基質に対する当量)に減量したことによる顕著な影響は認められなかった。
【0178】
(実施例12)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0179】
【化32】
【0180】
300mLの4つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、トルエン(80 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(8.128 g)、チタンテトライソプロポキシド(5.136 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (7.367 g)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.312 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(3.301 mL)を加え、同温度で22時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:97%、(2)/(3)の選択性:95%、エナンチオマー過剰率:94.5% eeであった。
実施例11よりも更にスケールアップして反応を行ったが、実施例5と同様、変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
【0181】
(実施例13)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド((R)-2)の合成
【0182】
【化33】
【0183】
20mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、トルエン(10 mL)、(S,S)-酒石酸ジイソプロピル(0.908 mL)、チタンテトライソプロポキシド(0.642 mL)を加え、室温にて3分撹拌した。次いで4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1) (0.921 g)を加えて、室温にて3分撹拌した。水(0.0390 mL)を加えたのち、50℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を冷却したのち、‐20℃でクメンヒドロペルオキシド(0.377 mL)を加え、同温度で22時間撹拌した。
結果は、HPLC変換率:96%、(2)/(3)の選択性:96%、エナンチオマー過剰率:93.9% eeであった。
実施例12と同様、変換率、選択率ともに極めて高く、光学純度にも優れた反応が達成され、高収率で((R)-2)の光学異性体が得られた。
【0184】
(実施例14)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド・(R)-マンデル酸塩の合成
【0185】
【化34】
【0186】
4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)塩酸塩 (8.00 g)に対して水 (64 mL) とヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒 (64 mL)を加え、完全に溶解させた。炭酸ナトリウム (2.02 g)を加え、混合物を室温にて10分間撹拌した。有機層を分取し、水層をヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒 (20 mL) で二回抽出した。得られたすべての有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、トルエンとともに減圧濃縮して4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)を得た。
300 mLの4つ口フラスコ内を減圧したのち、アルゴンガスを充填する操作を3回行った。アルゴンガス雰囲気下、トルエン(70 mL)と(S,S)-酒石酸ジイソプロピル (8.128 g)を加えたのち、チタンテトライソプロポキシド (5.136 mL)を27-30℃にて加えた。
トルエン5 mLで希釈した4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン (1)と超純水 (0.312 mL)を30℃で加えた。生じた不均一な溶液を50℃に昇温し、50-55℃で1時間撹拌した。得られた単黄色の均一な反応液を-19℃に冷却し、トルエン5 mLで希釈したクメンヒドロペルオキシド (3.301 g)を-19℃から-17℃で滴下して加えた。得られた反応混合物を-21℃から-19℃で22時間撹拌した。反応はHPLCにて追跡した。20%チオ硫酸ナトリウム水溶液 40 mLを加えて、0℃以下で20分撹拌した。有機層を分取し、水層を酢酸エチル32 mLで再抽出した。合わせた有機層に対して、3 mol/L塩酸 32 mLとメタノール15 mLを加え、室温にて5分間撹拌した。水層を分取し、有機層を水/メタノール=3/1混合溶媒20 mLで再抽出した。水層を混合し、ここに3 mol/Lの炭酸カリウム水溶液とTHF/トルエン混合溶媒 30 mLを加え、室温にて5分間撹拌した。有機層を分取し、水層をTHF/トルエン混合溶媒 30 mL で二回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。
HPLC分析により、この反応液中には((R)-2)は定量収率81% 、94.5%eeで生成していた。溶媒をアセトンに置換したのち、(R)-マンデル酸 (2.61 g)を室温にて加えたのち、種晶を添加すると、速やかに結晶化が開始した。混合物を室温にて10分間撹拌したのち、0℃に冷却して2時間熟成した。結晶をろ取し、冷却したアセトンにて洗浄した。
得られた固体を60℃にて4時間減圧乾燥し、7.5377 gの(R)-2・マンデル酸塩を収率73%、98.1% eeで得た。
【0187】
高速液体クロマトグラフィー分析条件(面積百分率)
カラム:Atlantis T3 (Waters社製)、 4.6 mm i.d. * 100 mm, 5 m
UV検出波長:210 nm
移動相:0.1 v/v%りん酸/高速液体クロマトグラフィー用アセトニトリル=58/42
流速:1.0 mL/min
カラム温度:40 ℃
保持時間:1.6 min. (2), 2.1 min. (3), 3.7 min. (1)
【0188】
高速液体クロマトグラフィー分析条件(光学純度)
カラム:CHIRALPAK IC (ダイセル化学工業株式会社製)、 4.6 mm i.d. * 250 mm, 5 m
UV検出波長:245 nm
移動相:高速液体クロマトグラフィー用アセトニトリル/メタノール/ジエチルアミン=900/100/1
流速:1.0 mL/min
カラム温度:40 ℃
保持時間:5.0 min. (1), 5.6 min. (3), 9.8 min. ((R)-2), 12.5 min. ((S)-2)
【0189】
核磁気共鳴による分析結果は以下のとおりであった。
[化合物データ (R)-2・(R)-MA]
1H NMR (500 MHz, CDCl3, observed as two rotamers whose ratio is 50 to 50) ・・1.26-1.51 (m, 2 H), 1.51-1.76 (m, 3 H), 2.23-2.99 (m, 7 H), 3.00-3.49 (m, 6 H), 3.74-3.85 (m, 1H), 3.80 (s, 0.5×3 H), 3.87 (s, 0.5×3 H), 4.15-4.75 (m, 3 H), 4.86-5.15 (m, 1 H), 4.98 (s, 1 H), 6.80 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 0.5×1 H), 6.85 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 0.5×1 H), 6.99 (dd, J = 6.0, 2.5 Hz, 1 H), 7.02-7.11 (m, 2 H), 7.16-7.23 (m, 1 H), 7.23-7.31 (m, 3 H), 7.31-7.39 (m, 2 H), 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 0.5×1 H), 7.65 (d, J = 8.5 Hz, 0.5×1 H).
【0190】
(実施例15)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド塩酸塩の合成
【0191】
【化35】
【0192】
4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)塩酸塩 (5.00 g)に対して水 (40 mL) とヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒 (40 mL)を加え、完全に溶解させた。炭酸ナトリウム (1.26 g)を加え、混合物を室温にて10分間撹拌した。有機層を分取し、水層をヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒 (10 mL) で二回抽出した。得られたすべての有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、トルエンとともに減圧濃縮して4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(1)を得た。200 mL4つ口フラスコ内を減圧したのち、アルゴンガスを充填する操作を3回行った。アルゴンガス雰囲気下、トルエン(40 mL)と(S,S)-酒石酸ジイソプロピル (5.081 g)を加えたのち、チタンテトライソプロポキシド (3.082 mL)を23-27℃にて加えた。トルエン5 mLで希釈した4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン (1)と超純水 (0.195 mL)を26-28℃で加えた。生じた不均一な溶液を50℃に昇温し、50-53℃で30分間撹拌した。得られた単黄色の均一な反応液を-19℃に冷却し、トルエン5 mLで希釈したクメンヒドロペルオキシド (2.063 g)を-19℃から-18℃で滴下して加えた。得られた反応混合物を-20℃から-19℃で21時間撹拌した。反応はHPLCにて追跡した。20%チオ硫酸ナトリウム水溶液 25 mLを加えて、0℃以下で10分撹拌した。有機層を分取し、水層を酢酸エチル20 mLで再抽出した。合わせた有機層に対して、3 mol/L塩酸 20 mLとメタノール12.5 mLを加え、室温にて10分間撹拌した。水層を分取し、有機層を水/メタノール=3/1混合溶媒10 mLで再抽出した。水層を混合し、ここに3 mol/Lの炭酸カリウム水溶液とTHF/トルエン混合溶媒 22.5 mLを加え、室温にて5分間撹拌した。有機層を分取し、水層をTHF/トルエン混合溶媒 15 mL で二回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。
HPLC分析により、この反応液中には(R)-2は定量収率86% 、94.6%eeで生成していた。溶媒をアセトンに置換したのち、56℃に昇温し、(R)-マンデル酸 (1.65 g)を加えたのち、同温度で1分間撹拌した。室温に冷却し、生じた結晶をさらに3時間熟成した。
結晶をろ取し、冷却したアセトンにて洗浄した。得られた固体を60℃にて2時間減圧乾燥し、4.28 gの(R)-2・マンデル酸塩を収率72%、98.8% eeで得た。
【0193】
(R)-2・マンデル酸塩 (3.00 g) をTHF/アセトニトリル=3/1混合溶液 24 mLに懸濁させた。4 mol/L塩酸酢酸エチル溶液 1.52 mLを22-28℃で滴下し、混合物を室温にて1時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。生じた固体をろ取し、冷却したTHF 16 mLで洗浄し、50℃にて一晩減圧乾燥したところ、2.38 gの(R)-2・塩酸塩が収率98%、99.3%ee で得られた。
【0194】
(実施例16)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5--1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド・p-トルエンスルホン酸塩の合成
(R)-4-3-[(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2-3-4-5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド(0.700 g)に対してTHF (6.3 mL)を加え、完全に溶解させた。p-トルエンスルホン酸一水和物(0.333 g)を加え、種晶を加えたのち、室温にて19時間撹拌した。0℃に冷却し、さらに1時間撹拌した。生じた固体をろ取し、冷却したTHF 6 mLで洗浄し、50℃にて一晩減圧乾燥し、0.941 gの(R)-2・p-トルエンスルホン酸塩が収率93%で得られた。
【0195】
核磁気共鳴による分析結果は以下のとおりであった。
[化合物データ (R)-2・p-TsOH] 1H NMR (500 MHz, CDCl3, observed as two rotamers whose ratio is 56 to 44) ・ 1.65-1.82 (m, 4 H), 2.40 (s, 3 H), 2.47-2.71 (m, 4 H), 2.81-3.17 (m, 2 H), 3.18-3.47 (m, 6 H), 3.80 (s, 0.56×3 H), 3.89 (s, 0.44×3 H), 4.03-4.16 (m, 0.56×1 H), 4.24-4.78 (m, 0.56×2 H, 0.44×3 H), 4.97 (d, J = 14.0 Hz, 0.56×1 H), 5.21 (d, J = 16.0 Hz, 0.44×1 H), 6.70-6.92 (m, 1 H), 7.00 (m, 0.56×1 H), 7.04-7.13 (m, 2 H), 7.19-7.42 (m,0.56×6 H, 0.44×7 H), 7.57-7.67 (m, 1 H), 7.80 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 10.50 (bs, 0.56×1 H), 10.58 (bs, 0.44×1 H).
【0196】
(試験例1)
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド塩の吸湿特性試験
(R)-4-[3-(4-ベンジルピぺリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシドの塩酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及び(R)-マンデル酸塩について、動的水蒸気吸着曲線(DVSを測定し、その吸湿特性を検討した。
その結果、塩酸では吸湿による潮解が確認された(図1)。
また、p-トルエンスルホン酸塩は塩酸塩と比べて吸湿が少ないものの潮解が確認された(図2)。一方、マンデル酸塩では吸湿は確認されなかった(図3)。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明の方法で製造される(R)-4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン-1-オキシド又はその塩は、心拍数、血圧を緩やかに増加させ、心房細動や心不全の治療薬又は予防薬としてとして有用であることから、本発明は医薬分野において産業上の利用可能性を有している。
図1
図2
図3