(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】三元触媒分解における劣化に対して安定なランタン系ペロブスカイト型触媒組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 23/34 20060101AFI20241128BHJP
B01J 23/847 20060101ALI20241128BHJP
B01J 23/83 20060101ALI20241128BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241128BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241128BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01J23/34 A
B01J23/847 A
B01J23/83 A ZAB
B01D53/94 220
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
(21)【出願番号】P 2021550072
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2020052918
(87)【国際公開番号】W WO2020201954
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】パスキュイ、アンドレア エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】プライス、エミリー
(72)【発明者】
【氏名】シマンス、ケリー
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/224946(WO,A1)
【文献】特開2018-030100(JP,A)
【文献】特開平05-076762(JP,A)
【文献】米国特許第05182249(US,A)
【文献】特開2008-012382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/10,3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):La
zB
1-qB’
qO
3±δ
前記式(I)中、
Bが、Feであり、
qが、0であり、
δが、0~0.6の範囲であり、
zが、0.6~1.1であ
る、
ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含み、前記非レドックス活性成分は、NbでドープされたZrO
2
である、
又は式(II):[BO
x]
y:[La
zBO
3±δ]
100-y
前記式(II)中、
Bが、Mnであり、
δが、0~0.6の範囲であり、
xが、1~2.5であり、
yが、1~30wt%であり、
zが、0.6~1.1であ
る、
ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含
み、前記非レドックス活性成分は、アルミナ、ZrO
2、またはNb、YもしくはLaでドープされたZrO
2から選択される非レドックス活性酸化物である、三元触媒組成物。
【請求項2】
前記触媒組成物が触媒組成物の総重量に対して5重量%以下の白金族金属を含む、請求項1に記載の三元触媒組成物。
【請求項3】
前記触媒組成物が白金族金属を含まない、請求項1または2に記載の三元触媒組成物。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型化合物が前記触媒組成物の5wt%~75wt%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の三元触媒組成物。
【請求項5】
前記非レドックス活性成分が前記触媒組成物の25wt%~95wt%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の三元触媒組成物。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型化合物と前記非レドックス活性成分とが0.5:1~3:1の重量比で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三元触媒組成物。
【請求項7】
前記ペロブスカイト型化合物が少なくとも40m
2/gの高表面積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の三元触媒組成物。
【請求項8】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
a.基材と、
b.請求項1~7のいずれか一項に記載の三元触媒組成物とを含む、触媒物品。
【請求項9】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、基材と請求項1~7のいずれか一項に記載の三元触媒組成物とを含む触媒物品に接触させることを含む、方法。
【請求項10】
前記三元触媒組成物が、
(1)新鮮な時の500~600℃でのNO変換率、及び
(2)水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、前記触媒組成物を劣化させた後の劣化後の500~600℃でのNO変換率をもたらし、
前記新鮮な時のNO変換率と前記劣化後のNO変換率との間の差が20%未満の低下である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記新鮮な時のNO変換率と前記劣化後のNO変換率との差が15%未満の低下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記三元触媒組成物が、
(1)新鮮な時の500℃でのHC又はCO変換率、及び
(2)水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、前記触媒組成物を劣化させた後の劣化後の500℃でのHC又はCO変換率をもたらし、
前記新鮮な時のHC変換率と前記劣化後のHC変換率との間の差、又は前記新鮮な時のCO変換率と前記劣化後のCO変換率との間の差が50%未満の低下である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記新鮮な時のHC変換率と前記劣化後のHC変換率との差、又は前記新鮮な時のCO変換率と前記劣化後のCO変換率との差が40%未満の低下である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の組成物及び方法は、ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含む新規な触媒組成物、内燃機関の排気システムにおける三元触媒(TWC)としてのその使用、及び内燃機関の排気ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気中に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に通常使用される触媒は、TWCである。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)一酸化炭素(CO)の酸化、(2)未燃炭化水素の酸化、及び(3)NOxのN2への還元を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、高表面積アルミナ及びセリア-ジルコニアの担体上に分散された白金族金属(PGM)からなるTWCが、1980年代初めにガソリンエンジンの後処理用に最初に導入された。ますます厳しくなる排出制限を満たす必要があり、PGMをより少なくするか又はPGMを全く利用しない代替触媒組成物の発見は、依然として活発な研究トピックである。ペロブスカイト型酸化物(ABO3)は、TWCとして長い間提案されてきている。自動車用としてペロブスカイトの触媒特性を理解し改善するための継続的な取組みがなされてきたが、このような触媒は苛酷な劣化条件にさらされたときに多くの場合に失活を示す。したがって、高温劣化に対して安定である新規なTWC化合物を改善することが依然として必要とされている。
【0004】
本発明の態様によると、三元触媒組成物は、式(I):LazB1-qB’qO3±δ又は式(II):[BOx]y:[LazBO3±δ]1-yのペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分を含み、式中、B及びB’は、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、Ti、又はZrであり、zは、約0.6~約1.1の範囲であり、qは、約0~約0.5の範囲であり、δは、約0~約0.6の範囲であり、xは、約1~約2.5であり、yは、約1~約30wt%である。いくつかの態様において、非レドックス活性成分は、例えば、酸化物、アルミナ、ZrO2、又はそれらの組合せを含む。いくつかの態様において、ZrO2はドープされている。
【0005】
いくつかの態様において、触媒は、白金族金属を全く含まなくてもよく、又は白金族金属を実質的に含まなくてもよい。
【0006】
いくつかの態様において、ペロブスカイト型化合物は、触媒組成物の約5wt%~約75wt%の量で存在する。いくつかの態様において、非レドックス活性成分は、触媒組成物の約25wt%~約95wt%の量で存在する。いくつかの態様において、ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分は、約0.5:1~約3:1の重量比で存在する。
【0007】
いくつかの態様において、ペロブスカイト型化合物は、火炎噴霧熱分解によって調製される。ペロブスカイト型化合物は、高表面積を有する。
【0008】
本発明のいくつかの態様によると、排気ガスを処理するための触媒物品は、基材と、本明細書に記載の三元触媒組成物とを含む。
【0009】
本発明のいくつかの態様によると、内燃機関の排気ガスを処理する方法は、排気ガスを、基材と本明細書に記載の三元触媒組成物とを含む、触媒物品と接触させることを含む。いくつかの態様において、本発明の三元触媒組成物は、(1)新鮮な時の500~600℃でのNO変換率、及び(2)水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、触媒を劣化させた後の劣化後の500~600℃でのNO変換率をもたらし、新鮮な時のNO変換率と劣化後のNO変換率との間の差(デルタ)は20%未満の低下である。いくつかの態様において、新鮮な時のNO変換率と劣化後のNO変換率との間の差は15%未満の低下である。いくつかの態様において、本発明の三元触媒組成物は、(1)新鮮な時の500℃でのHC又はCO変換率、及び(2)水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、触媒を劣化させた後の500℃でのHC又はCO変換率をもたらし、新鮮な時のHC又はCO変換率と劣化後のHC又はCO変換率との間の差は50%未満の低下である。いくつかの態様において、新鮮な時のHC又はCO変換率と劣化後のHC又はCO変換率との間の差は40%未満の低下である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、新鮮な時及び劣化後の比較触媒4(1a及び1b)及び触媒5A(1c及び1d)のTEM画像をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、
図1のTEM画像の粒子サイズ分析を示し、(2a)は劣化後のMnO
x:La
0.9MnO
3(比較触媒4)、(2b)は新鮮な時のドープされたZrO
2を含むMnO
x:La
0.9MnO
3(触媒5A)、(2c)は劣化後のドープされたZrO
2を含むMnO
x:La
0.9MnO
3(触媒5A)であり、ここでx軸:粒子サイズ、y軸:粒子数である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物及び方法は、ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含む、新規な触媒組成物に関する。このような組成物は、内燃機関用の排気システムの三元触媒(TWC)として、また、内燃機関の排気ガスの処理方法の一部として使用することができる。本発明の触媒が高温安定性に関連する利点をもたらし得ることを見出した。
【0012】
ペロブスカイト型化合物
式(I):LazB1-qB’qO3±δ
本発明の触媒組成物は、ペロブスカイト型化合物を含有する。いくつかの実施形態において、ペロブスカイト型化合物は式(I):LazB1-qB’qO3±δを有する。
式中、B又はB’は、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、Ti、又はZrであり、好ましくは、B又はB’は、Fe又はMnである。いくつかの実施形態において、B又はB’はFeである。別の実施形態では、B又はB’はMnである。
qは、0~0.5、好ましくは、0~0.2の範囲であり、より好ましくは0である。
zは、約0.6~約1.1、好ましくは、約0.7~約1.0、より好ましくは、約0.7~約0.9の範囲である。
δは、約0~約0.6、好ましくは、約0~約0.5、より好ましくは、約0.15~約0.3の範囲である。
【0013】
式(I)の化合物は、共沈、火炎噴霧熱分解(FSP)、ボールミリングなどによって調製することができる。
【0014】
FSPは、有機溶媒中の可溶性の前駆体をCH4/O2の炎の中で燃焼させて、ナノ結晶性粒子を直接得る燃焼方法である。
【0015】
共沈は、必ずしもワンステップのプロセスではない。他の方法とは異なり、ここでは溶液中の前駆体を一緒に混合し、pHを制御して一緒にゆっくりと沈殿させて、十分に混合された非晶質沈殿物を形成させ、次いでそれを焼成して、ペロブスカイト相の結晶性粒子を得ることができる。
【0016】
式(I)のペロブスカイト型化合物は、火炎噴霧熱分解(FSP)によって調製ことができる。例えば、FSPは、有機溶媒中の可溶性の前駆体をCH4/O2の火炎の中で燃焼させて、ナノ結晶性粒子を直接得る燃焼方法であってもよい。式(I)のペロブスカイト型化合物は、60nm未満の平均一次晶サイズを有し得る。いくつかの態様において、式(I)の化合物は、30、25、20、15、10、又は5nm未満の平均一次晶サイズを有する。いくつかの態様において、式(I)の化合物は、5nm~60nm、5nm~50nm、5nm~40nm、5nm~30nm、又は5nm~20nmの平均一次晶サイズを有する。式(I)のペロブスカイト型化合物の相純度は、少なくとも90%であり得る。いくつかの態様において、ペロブスカイト型化合物の相純度は、少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%である。式(I)のペロブスカイト型化合物は、球状の一次粒子の形態を有し得る。式(I)の化合物は、TEMから明らかなように、不規則な表面を有し得る。
【0017】
本明細書で使用する場合、ペロブスカイト型材料に関連する用語「パーセント/%」は、
%純度=Iペロブスカイト相/(Iペロブスカイト相+I混入物相)を意味し、
式中、I=XRDによって同定される結晶性相の強度である。
【0018】
あるいは、式(I)の化合物は、六方、立方、ロッド、花状、又はファセット状の一次粒子の形態を有し得る。
【0019】
FSPによって調製されたペロブスカイト型化合物は、LaFeO3系ペロブスカイトのTEM画像で強調されていれるように、5~20nmの範囲の一次粒子の平均サイズを有し、球状の形状の一次粒子の形態を有する。XRDから計算される結晶子のサイズもまた、TEMで観察される一次粒子のサイズと一致する。ナノ結晶性材料は、TEMから明らかなように、いくらか無秩序な/非晶質様の表面を有し、これにより、表面でより多くの酸素空孔を形成することができ、及び/又は表面の活性Bサイトカチオンの濃度を高くすることができることから、TWCの活性が向上する。一次ナノ粒子は凝集して、粉末形態ではミクロンサイズになり得る、より大きな粒子を形成するが、高表面積(例えば、>40m2g-1)を依然として保持する。高表面積によって、XPSから明らかなように、より高い濃度の活性Bカチオンが表面に存在し、O2-TPDから明らかなように表面の酸素空孔の濃度がより高くなり、また、H2-TPRから明らかなように、500℃未満の温度におけるBカチオンの還元性が向上する。
【0020】
式(I)の化合物の相純度はまた、最適な活性にも重要であり、La(OH)3、La2O3、Fe2O3などの他の結晶性相の存在は活性を低下させる。FSPによって調製されたペロブスカイトは、5~60nm、好ましくは5~30nmの範囲のサイズの球状の一次粒子の形態を有し、それらは凝集するが、40m2g-1を超える高表面積を保持し、無秩序な表面を有する。
【0021】
あるいは、式(I)のペロブスカイト型化合物の比表面積は、少なくとも6m2/g、8m2/g、20m2/g、30m2/g、又は40m2/gであり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、プロモーターを更に含んでもよい。プロモーター金属は、触媒産業で使用される触媒活性を有すると認識されている金属のいずれか、特に、燃焼プロセスに由来する排気ガスを処理するための触媒活性を有することが知られている金属である。プロモーター金属は、広義に解釈されるべきであり、具体的には、銅、ニッケル、亜鉛、鉄、タングステン、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、並びにスズ、ビスマス、及びアンチモンが含まれる。好ましい遷移金属は卑金属であり、好ましい卑金属としては、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。いくつかの態様において、好適な卑金属として、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン及び銅、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。いくつかの態様において、プロモーター金属は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組合せである。いくつかの態様において、プロモーター金属は、マンガン、鉄、又はそれらの組合せである。いくつかの態様において、プロモーター金属は銅である。いくつかの態様において、プロモーター金属は鉄である。いくつかの態様において、プロモーター金属はマンガンである。
【0023】
上記のプロモーター金属含有ペロブスカイト化合物組成物は、含浸法などの任意の公知の手法によって得ることができる。
【0024】
プロモーター金属は、組成物の総重量に基づいて最大で20重量パーセント(wt%)、例えば、0.1wt%~20wt%、0.5wt%~10wt%、0.5~1wt%、1~5wt%、又は2wt%~4wt%の濃度で組成物中に存在し得る。銅、鉄、マンガン、又はこれらの組合せを使用する態様では、組成物中のこれらのプロモーター金属の濃度は、1~15wt%、1~10wt%、1~5wt%、又は1~3wt%であり得る。
【0025】
式(II):[BOx]y:[LazBO3±δ]1-y
いくつかの実施形態において、ペロブスカイト型化合物は、式(II):[BOx]y:[LazBO3±δ]1-yの化合物であり、の
式中、Bは、Fe、Mn、Co、又はNiであり、好ましくは、BはFe又はMnである。いくつかの実施形態において、BはFeである。他の実施形態では、BはMnである。
xは、約1~約2.5である。
yは、約1~約30wt%である。
zは、約0.7~約1.1である。
δは、約0~約0.6の範囲、好ましくは、約0~約0.5、より好ましくは、約0.1~約0.3である。
【0026】
式(IIa):[MnOx]y:[LazMnO3±δ]1-y
いくつかの実施形態において、BはMnである。更なる実施形態では、LazMnO3±δは、結晶性ペロブスカイト相である。また、独立した代替的又は追加的な実施形態において、(BがMnである実施形態において)引用した組成物又はMnOx又はLazMnO3±δそれ自体に関して、必要に応じて、
(a)xは、約1~約1.1、約1.1~約1.2、約1.2~約1.3、約1.3~約1.4、約1.4~約1.5、約1.5~約1.6、約1.6~約1.7、約1.7~約1.8、約1.8~約1.9、約1.9~約2.0、約2.0~約2.1、約2.1~約2.2、約2.2~約2.3、約2.3~約2.4、約2.4~約2.5の範囲の値、又はこれらの範囲の2つ以上を含む範囲によって定義される値、例えば、約1.6~約2.5であり得る。誤解を避けるために、ここで「MnOx」という表記は、O:Mnの原子数比がxであるマンガンの任意の2元酸化物を指す。例えば、表記にはMn3O4(x=1.33)、Mn5O8(x=1.6)などが含まれる。このように、値xによって、本明細書の他の箇所に記載されるように、マンガンの酸化物又はそれらの混合物の個々の式のいずれかの組成が定義される。特定の独立した実施形態では、MnOxは、主にMn3O4(x=1.33)、Mn5O8(x=1.6)、又はこれらの組合せであり、
(b)yは、前述の項の範囲よりも大きい又は小さい値であってもよい。特定の実施形態において、yは、約0~約1wt%の範囲の値(すなわち、LazMnO3それ自体のみとみなされる)、1~約2wt%、約2~約3wt%、約3~約4wt%、約4~約5wt%、約5~約6wt%、約6~約7wt%、約7~約8wt%、約8~約9wt%、約9~約10wt%、約10~約11wt%、約11~約12wt%、約12~約13wt%、約13~約14wt%、約14~約15wt%、約15~約16wt%、約16~約17wt%、約17~約18wt%、約18~約19wt%、約19~約20wt%、約20~約21wt%、約21~約22wt%、約22~約23wt%、約23~約24wt%、約24~約25wt%、約25~約26wt%、約26~約27wt%、約27~約28wt%、約28~約29wt%、約29~約30wt%の範囲の値であり得、又は、yは、これらの範囲のいずれか2つ以上で定義することができ、例えば、約2~約5wt%であり得、
(c)zは、約0.7~約0.75、約0.75~約0.8、約0.8~約0.85、約0.85~約0.9、約0.9~約0.95、約0.95~約0.98、約0.98~約0.99、約0.99~約1、約1~約1.05、約1.05~約1.1の範囲の値であり得、又は、zは、これらの範囲の任意の2つ以上で定義することができ、例えば、約0.75~約1.1、又は約0.8~約1、又は約0.8~約0.99、又は約0.8~約0.95であり得る。
【0027】
独立した代替的又は追加的な実施形態において、組成物中のMnOxは、非晶質、ナノ結晶性、若しくは結晶性であってもよく、又は、非晶質、ナノ結晶性、及び結晶性材料の混合物であってもよい。MnOx、又は任意の他の成分が非晶質と特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に帰属される識別可能なPXRDピークを示さない(ただし、その存在は、例えば、TEMの測定によって決定することができる)。MnOxがナノ結晶性と特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に帰属される広くて悪い形状のPXRDピークのみを示す。MnOxが結晶性と特徴付けられる場合、組成物は、マンガンの酸化物に帰属される鋭く明確に特定されるPXRDピークを示す。
【0028】
代替的又は追加的な実施形態において、複合体は、約25~約60m2/g、好ましくは約27~約45m2/gの範囲の平均表面積の粒子を含む。独立した代替的又は追加的な実施形態では、粒子は、約25~約27m2/g、約27~約29m2/g、約29~約31m2/g、約31~約33m2/g、約33~約35m2/g、約35~約37m2/g、約37~約39m2/g、約39~約41m2/g、約41~約43m2/g、約43~約45m2/g、約45~約47m2/g、約47~約49m2/g、約49~約51m2/g、約51~約53m2/g、約53~約55m2/g、約55~約57m2/g、約57~約60m2/gの範囲の平均表面積を有することを特徴とするものであり、又は、粒子は、これらの範囲の2つ以上に及ぶ平均表面積、例えば、約27~約45m2/gを有することを特徴とすることができる。これらの表面積は、最も簡便には不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)を用いたポロシメトリーによって測定され、BET式を用いて分析される。本明細書で引用される具体的な値は、N2を使用して77Kで、3Flex表面特性分析器(Micrometrics)で得ることができる。
【0029】
代替的又は追加的な実施形態において、粒子は、凝集及び/又は融合した一次粒子を含み、一次粒子は、別個にMnOx及びLazMnO3の組成である。各々のMnOx及びLazMnO3の一次粒子のサイズは、同じであっても、異なっていてもよい。本開示の文脈において、用語「凝集及び/又は融合した」は、個々の結晶子を含む一次粒子が、結合モードで(「融合して」)更に一緒に結合して、より大きな凝集粒子を形成するという事実を指す。
【0030】
いくつかの実施形態において、これらの一次粒子は、約10nm~約60nm、約10nm~約50nm、約12nm~約50nm、約14nm~約50nm、及び/又は約14nm~約25nmの範囲のサイズで存在する。代替的又は追加的な実施形態において、一次粒子は、約10nm~約12nm、約12nm~約14nm、約14nm~約16nm、約16nm~約18nm、約18nm~約20nm、約20nm~約25nm、約25nm~約30nm、約30nm~約35nm、約35nm~約40nm、約40nm~約45nm、約45nm~約50nm、約50nm~約55nm、約55nm~約60nmの範囲のサイズで存在するものであり、又は、一次粒子のサイズは、これらの範囲の2つ以上を含む範囲で定義することができ、例えば、約14nm~約25nmであり得る。特に指定されない限り、TEMの使用を一次測定アプローチとして用いることによって粒子の計数の統計に関連する誤差が生じることを認識した場合であっても一次粒子のサイズの範囲の定義はTEM測定によって決定される。
【0031】
粒子のサイズはまた、(リートベルト解析を用いて)XRDパターンの反射の線幅拡大を解析して決定することもできる。このアプローチでは、反射格子平面の特定の方向における単位セルの繰り返し距離を測定する。この場合、測定されるサイズは、これらの範囲の下端で特徴付けられ、より狭い分布を有する傾向があり、このことは、これらの一次粒子であっても、記載された組成物の1つ以上の結晶子として存在することを示唆している。例えば、一次粒子のサイズの約14~約25nmという範囲は、XRDによって測定される典型的な結晶子サイズのサイズと一致する。1つの例では、TEMによって約10nm~約60nmの範囲のサイズを有すると測定された一次粒子は、XRDによって(すなわち、線幅拡大に基づいて計算された平均値)、La0.9MnO3については約12~20nm、Mn3O4については約12~30nm、及びLa2O2CO3については約15nmのサイズを有すると決定された。
【0032】
MnOx及びLazMnO3、特にLazMnO3の一次粒子のサイズは、全般的に上記記載した組成物とは独立している実施形態の基礎、すなわち、yの制限が緩和されて0であってもよい実施形態の基礎を形成する。すなわち、独立した実施形態において、組成物は、LazMnO3の一次粒子に関して排他的に(すなわち、他のMn又はLa含有物質を除いて)、約10~約60nmの範囲のサイズ、又は一次粒子のサイズに関するサブ範囲の任意の並べ替えや組合せを有すると説明することができる。本明細書の他の箇所に記載されている粒子サイズと一貫して、一次粒子は、より大きな構造に凝集してもよい。
【0033】
あるいは、又はそれに加えて、結晶性LazMnO3は、組成物中の成分として、又はそれ自体で存在するかに関わらず、約0.7~約0.72、約0.72~約0.74、約0.74~約0.76、約0.76~約0.78、約0.78~約0.8、約0.8~約0.82、約0.82~約0.84、約0.84~約0.86、約0.86~約0.88、約0.88~約0.90、約0.90~約0.92、約0.92~約0.94、約0.94~約0.96,約0.96~約0.98、約0.98~約1.0、約1.0~約1.02、約1.02~約1.04、約1.04~約1.06、約1.06~約1.08、約1.08~約1.1の範囲でAサイトを占めるものであり、又は、これらの範囲の2つ以上に関して、例えば、約0.90~約1.0、又は約0.92~約0.98の範囲で定義することができる。
【0034】
更なる実施形態において、開示される組成物は、ランタンの酸化物、水酸化物、及び/又は炭酸塩、例えばLaOOH及び/又はLa2O2CO3をさらに含む。MnOxと同様に、ランタン成分は、非晶質、ナノ結晶性、及び/又は結晶性であってもよい。
【0035】
非レドックス活性成分
本発明の触媒組成物は、1つ以上の非レドックス活性酸化物などの非レドックス活性成分を含有する。好適な非レドックス活性酸化物としては、例えば、アルミナ、ZrO2、ドープされたZrO2、例えばNb、Nd、Y、又はLaでドープされたZrO2、又はそれらの組合せが挙げられる。好適な種類のアルミナとしては、例えば、γ-、δ-、θ-、及びα-アルミナが挙げられる。
【0036】
三元触媒組成物
本開示の別の態様は、ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含む、三元触媒組成物に関する。いくつかの態様において、三元触媒は白金族金属を全く含まない。いくつかの態様において、三元触媒は、白金族金属を実質的に含まない。いくつかの態様において、三元触媒は、白金族金属を本質的に含まない。
【0037】
いくつかの態様において、三元触媒組成物は、約0.5:1~約3:1、約0.7:1~約2.7:1、約1:1~約2.5:1、約1.3:1~約2.5:1、約1.5:1~約2.5:1、約1.7:1~約2.2:1、又は約2:1の重量比でペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを含む。
【0038】
いくつかの態様において、三元触媒組成物は、触媒組成物の約5wt%~約75wt%、約10wt%~約75wt%、約15wt%~約75wt%、約20wt%~約70wt%、約25wt%~約65wt%、約30wt%~約60wt%、約35wt%~約55wt%、約40wt%~約50wt%、約15wt%~約45wt%、約20wt%~約40wt%、約25wt%~約35wt%、約45wt%~約75wt%、約50wt%~約70wt%、又は約55wt%~約65wt%の量のペロブスカイト型化合物を含む。
【0039】
いくつかの態様において、三元触媒組成物は、触媒組成物の約25wt%~約95wt%、約25wt%~約90wt%、約25wt%~約85wt%、約25wt%~約80wt%、約25wt%~約75wt%、約30wt%~約70wt%、約35wt%~約65wt%、約40wt%~約60wt%、約45wt%~約55wt%、約25wt%~約50wt%、約30wt%~約45wt%、約35wt%~約40wt%、約50wt%~約75wt%、約55wt%~約70wt%、又は約60wt%~約65wt%の量の非レドックス活性成分を含む。
【0040】
いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型化合物とアルミナとを含む。いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型化合物とZrO2とを含む。いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型鉄化合物とアルミナとを含む。いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型マンガン化合物とアルミナとを含む。いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型鉄化合物とZrO2とを含む。いくつかの態様において、三元触媒組成物は、ペロブスカイト型マンガン化合物とZrO2とを含む。
【0041】
物品、システム、及び方法
本発明の触媒物品は、本明細書に記載の触媒組成物と基材とを含んでもよい。いくつかの態様において、触媒物品は、最大約2g/in3、例えば、約0.5g/in3~約2g/in3、約0.5g/in3~約1.5g/in3、又は約1g/in3の担持量でペロブスカイト型化合物を含む。いくつかの態様において、触媒物品は、最大約3g/in3、例えば、約0.5g/in3~約3g/in3、約1g/in3~約3g/in3、約1.5g/in3~約2.5g/in3、約1g/in3~約2g/in3、約2g/in3、又は約1g/in3の担持量で非レドックス活性成分を含む。
【0042】
触媒組成物は、ウォッシュコートの適用を含む任意の周知の手段によって基材に適用してもよい。好適な基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローガソリン微粒子フィルタを含んでもよい。好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0043】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し得、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0044】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0045】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0046】
好ましくは、モノリス基材は、長手方向と直交する平面内に1平方インチ当たり100~900のチャネル、好ましくは300~750のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1チャネル及び閉じた第2チャネルの密度は、1平方インチあたり300~750チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0047】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0048】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一の構成要素(すなわち、単一のれんが状の塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
【0049】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む態様では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、並びにメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、アルミノケイ酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0050】
本発明の触媒物品が金属基材を含む態様では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0051】
いくつかの態様では、触媒組成物は、基材上に直接担持/堆積されている。
【0052】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。排気システムにおいて、三元触媒成分は、密結合位置又は床下位置に配置されてもよい。
【0053】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【0054】
効果
驚くべきことに、ペロブスカイト型化合物と非レドックス活性成分とを混合することにより、高温劣化条件を含む劣化条件にさらされた後であっても活性である三元触媒組成物が得られることを見出した。この高温安定性は、従来のペロブスカイト型三元触媒組成物が劣化後に失活することが認められているため、有益である。
【0055】
いくつかの態様において、本発明の三元触媒組成物[例えば、式(I)のペロブスカイト型化合物を含む]は、新鮮な時の500~600℃でのNO変換率、及び水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、触媒を劣化させた後の劣化時の500~600℃でのNO変換率をもたらし得、新鮮な時変換率と劣化後変換率との間の差は、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満の低下である。
【0056】
他の態様において、本発明の三元触媒組成物[例えば、式(II)のペロブスカイト型化合物を含む]は、新鮮な時の500℃でのCO又はHC変換率、及び水蒸気の存在下で、少なくとも700℃の温度で20時間、触媒を劣化させた後の500℃でのCO又はHC変換率をもたらし得、新鮮な時のCO又はHC変換率と劣化後のCO又はHC変換率との間の差は、50%未満、40%未満、30%未満、又は20%未満の低下である。
【0057】
用語
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0058】
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0060】
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料がわずかな量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0061】
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0062】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0063】
本明細書で使用される用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft3の単位の測定値を指す。
【0064】
本開示では、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に明示しない限り、複数の参照含み、特定の数値への参照は、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、当業者に周知であるそのような材料及びその等価物などのうちの少なくとも1つへの言及である。
【0065】
値が記述子「約(about)」を使用することにより近似値として表現される場合、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。概して、用語「約」の使用は、開示された主題により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。当業者は、これを日常の問題として解釈できるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合、一連の値で使用される段階的な変化を使用して、各値について用語「約」に利用可能な意図された範囲を決定できる。存在する場合、全範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲内で述べられている値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0066】
明確にするために、別個の実施形態又は態様の文脈において本明細書に記載される本発明の特定の特色はまた、単一の実施形態又は態様において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。すなわち、明らかに互換性がないか又は具体的に除外されない限り、各個々の実施形態は任意の他の実施形態又は態様と組み合わせることが可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態又は態様の文脈で記載される本発明の様々な特色はまた、別個に、又は任意の部分的な組み合わせで提供されてもよい。最後に、実施形態又は態様は、一連の工程の一部、又はより全般的な構造の一部として記載され得るが、その各工程はまた、それ自体が独立した実施形態の態様であり、また他の工程と組み合わせることができるとみなされる。
【0067】
移行語(transitional term)「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting)」は、それらの特許専門用語において全般的に認められた意味を内包することを意図している。すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴づけられる(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであって、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。(ii)「からなる(consisting of)」は請求項で指定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、指定された材料又は工程、及び特許請求された発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないもの」に限定する。語句「含む(comprising)」(又はその等価物)という用語で記載された実施形態はまた、実施形態として、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で独立して記載される実施形態を提供する。「から本質的になる」という用語で示されるこれらの実施形態において、基本的で新規な特徴は、車両の排気システムにおいて、空燃比に対するロバスト性を有して、触媒組成物により、NOx、CO、及びHCを同時に効率的に処理できる能力である。このような動作性を損なわない材料又は工程は、このような実施形態の範囲内とみなされる。
【0068】
リストが提示される場合、別途記載のない限り、そのリストの各個別要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態又は態様のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」、又は「A、B、若しくはC」を含むものと解釈されたい。
【0069】
関連技術の当業者により理解されるように、本明細書全体を通して、単語は、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかし、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0070】
「任意による(optional)」又は「任意に(optionally)」は、その後に記載する状況が発生する場合としない場合があることを意味する。そのため、その記載には、その状況が発生する事例と発生しない事例が含まれる。同様に、成分又は工程を「任意に存在する(optionally present)」と称する実施形態は、それらの実施形態は、工程又は成分が存在する又は存在しない別個の独立した実施形態を含む。「任意による(optional)」という記載は、任意による条件の発生を可能とするが、必須ではない。
【0071】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【0072】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例】
【0073】
以下に記載の実施例で製造された物質を、以下の分析方法のうちの1つ以上によって特徴付けた。粉末X線回折(PXRD)パターンは、Bruker D8粉末回折装置で、CuKα線(40~45kV、40mA)を使用して、ステップサイズ0.04°、ステップあたり1sで、5°~100°(2θ)の間にて収集した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像は、電圧200kVのJEM2800(走査型)TEMで得た。微小孔容積及び表面積は、N2を使用して77Kで、3Frex表面特性分析器(Micrometrics)で測定した。
【0074】
材料
全ての試薬材料は市販されており、特に記載のない限り、既知の供給元から入手した。
【0075】
火炎噴霧熱分解(FSP):
FSPペロブスカイト材料は、典型的には、液体供給火炎熱分解によって合成する。前駆体を、特定の温度で好適な溶媒に溶解させる。次いで、溶液を酸素流と共に火炎に供給する。粒子を、エアフィルタバッグを備えたバッグハウスにステンレス鋼のダクトを通して搬送し、フィルタバッグを逆パルス洗浄して回収する。
【0076】
比較触媒1(La0.8FeO3):
ランタン(III)2-エチルヘキサノエート溶液(27.78g、0.02mole)及び鉄(III)アセチルアセトネート(8.84g、0.025mole)を150mLのキシレンに溶解させた。次いで、溶液(200mL、0.33mol/L)を、酸素流(分散、シース流量20L/分)と共に、10mL/minの速度でCH4/O2(1.5/3.2 L/min、混合)の火炎に供給した。粒子を、エアフィルタバッグ(Whatman GF/D濾紙)を備えたバッグハウスにステンレス鋼のダクトを通して搬送し、フィルタバッグを逆パルス洗浄して回収した。得られた比較触媒1は、XRDから明らかなように、12nmの平均結晶子サイズを有する純相であった。比較触媒1は、球状の粒子形態を有し、80m2g-1の比表面積、及びLa/Fe=1.1の表面組成を有した(XPS)。
【0077】
触媒2(比較触媒1+Al2O3):
触媒2は、比較触媒1の粉末をγアルミナ(Al2O3)と2:1の重量比で物理的に混合することによって調製した。
【0078】
触媒3(比較触媒1+ZrO2):
触媒3は、比較触媒1の粉末を単斜晶ジルコニア(ZrO2)と2:1の重量比で物理的に混合することによって調製した。
【0079】
実施例1
比較触媒1、触媒2、及び触媒3を、500℃~600℃の温度の標準的な摂動ガソリン条件下で試験した。次いで、触媒を、水蒸気の存在下、及びリッチ/リーン条件下、700℃以上の温度を伴い、20時間劣化させた。具体的な条件を以下に示す:
・試験条件:摂動ガス混合物(WHSV=750Lg-1h-1)、λ±0.05:0.73~2.2%CO+666ppmC3H6+333ppmC3H8+2200ppmNO+0.23~0.69%H2+*O2+14%CO2+4%H2O(N2を加えて100%)、3s/摂動、
・劣化条件:摂動ガス混合物、λ=0.93~1.06:0.5%CO+1000ppmC3H8+1000ppmNO+0.27~1.07%O2+10%H2O(N2を加えて100%)、5min/摂動。
【0080】
【0081】
【0082】
上の表1及び表2に示されるように、比較触媒1は、新鮮な時、500~600℃の標準的な摂動ガソリン条件下ではCO/HC/NO変換率が50%を超えるが、劣化条件にさらした場合、触媒は、深刻な失活を示し、500~600℃でのCO/NO変換率が15%以下になる。しかしながら、触媒2(アルミナを含む)及び触媒3(ジルコニアを含む)は、苛酷な劣化条件にさらした後も、著しくより高い活性を保持することができた。まとめると、高温で劣化させた後、触媒1では、CO、HC、及びNO変換能力の損失が最大90%になることを示しているが、触媒をアルミナ(触媒2)又はジルコニア(触媒3)と混合した場合、CO/HC/NO変換の触媒活性の損失ははるかに小さく、30%超の活性を保持する。
【0083】
比較触媒4(MnOx:La0.9MnO3)
KOH(85%、8.41g、0.127mol)を水(200mL)に溶解させ、マグネチックスターラーバーを用いて400rpmで溶液を撹拌し、60℃に加熱した。硝酸ランタン六水和物(7.58g、0.0175mol)及び硝酸マンガン(50wt/w%溶液、8.95g、0.025mol)を水に溶解させ、溶液の全容積を100mLにした。塩溶液を10mL/minで塩基に添加した。添加の終了後、沈殿物を60℃で30分間撹拌して熟成した。濾過して材料を回収し、洗浄して吸着したイオンを除去し、105℃で乾燥させた。試料を700℃で2時間、空気中で焼成して、ペロブスカイト相を形成させた。ペロブスカイトの結晶子のサイズは12.5nmであり、90.9%がペロブスカイト相であった。
【0084】
触媒5A~5C(比較触媒4+ドープされたZrO2)
混合物(MnOx:La0.9MnO3-ドープされたZrO2)を、MnOx:La0.9MnO3とドープされたZrO2[ドーパント:10.1wt%Nb2O5(5A)、13.05%Y2O3(5B)、又は14.7%Nd2O3(5C)]を別個に水に分散させ、続いて6~7μmのd90に湿式粉砕して調製した。次いで、MnOx:La0.9MnO3とドープされたZrO2のスラリーを2:1の比で3~4時間混合して、乾燥させ、粉砕して粉末にして、700℃で焼成した。
【0085】
実施例2 安定化効果(水熱レドックス劣化後)
図1及び2に示されるように、比較触媒4は、ドープされたZrO
2が存在する場合(10.1%Nb
2O
5;触媒5A)、劣化させた後、TEM画像から、一次粒子のサイズが安定化されることが示される。比較触媒4では、MnO
x:La
0.9MnO
3の粒子のサイズは、新鮮な時の初期の20~80nmから劣化後に200~1000nmに増加する。ドープされたZrO
2が存在する場合(例えば、触媒5A)、MnO
x:La
0.9MnO
3の一次粒子は200~500nmとより小さいままである。
【0086】
実施例3
比較触媒4、及び触媒5Aを、500℃の標準的な摂動ガソリン条件下で試験した。次いで、水蒸気の存在下、及びリッチ/リーン条件下、950℃以上の温度を伴い、16時間触媒を劣化させた。具体的な条件を以下に示す:
試験条件:摂動ガス混合物(WHSV=750Lg-1h-1)、λ±0.05:0.73~2.2%CO+666ppmC3H6+333ppmC3H8+2200ppmNO+0.23~0.69%H2+*O2+14%CO2+4%H2O(N2を加えて100%)、3s/摂動、
劣化条件:摂動ガス混合物、λ=0.93~1.06:0.5%CO+1000ppmC3H8+1000ppmNO+0.27~1.07%O2+10%H2O(N2を加えて100%)、5min/摂動。
【0087】
【0088】
上の表3に示されるように、比較触媒4は、新鮮な時、500℃の標準的な摂動ガソリン条件下でCO/HC変換率が50%を超え、またNO変換率が20%を超えるが、劣化条件にさらした場合、触媒は、深刻な失活を示し、500℃でのCO/NO変換率が30%以下になる。しかしながら、触媒5A(ドープされたZrO2を含む)は、苛酷な劣化条件にさらした後も、より高い活性を保持することができた。まとめると、高温で劣化させた後、比較触媒4では、そのCO及びHCを酸化する能力の>65~70%の損失が示されるが、触媒が、ドープされたZrO2と混合された場合(例えば、触媒5A)、500℃でのCO及びHC変換率の変化はわずか12~35%である。