(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】弁輪形成術的特徴を備えた心臓弁修復器具、並びに、関連システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2021553330
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2020022471
(87)【国際公開番号】W WO2020186106
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520072187
【氏名又は名称】ハーフ ムーン メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ギフォード ザ サード ハンソン エス
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナマーシー ガウラヴ
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン ニール
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0029072(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0038297(US,A1)
【文献】特表2013-528407(JP,A)
【文献】特表2005-504585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
僧帽弁修復器具であって、
左心房内で生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成された心房固定部材を有し、前記心房固定部材は、
前記生まれつきの僧帽弁輪から間隔を置いた状態で前記心房内に位置決めされるよう構成され且つ上側縁部分直径を有する上側縁部分と、
前記生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置決めするよう構成され且つ下側縁部分直径を有する下側縁部分と
、を有し、
前記心房固定部材は、送達状態から配備状態に拡張するよう構成され、前記下側縁部分直径は、前記配備状態で前記上側縁
部分直径よりも小さくなるように構成され、
前記下側縁部分に結合されたばね機構体を有し、前記ばね機構体は、
第1の長さが前記配備状態において前記心房固定部材の寸法に一致する伸長状態及び前記第1の長さよりも短い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、前記ばね機構体は、前記心房固定部材が前記配備状態にあるときに前記伸長状態であり、前記ばね機構体の少なくとも一部分に設けられた生体適合性材料を有し、少なくとも部分的に前記伸長状態を維持し、
植え込み時、前記生体適合性材料は、溶解して前記ばね機構体を前記弛緩状態にさせ、前記心房固定部材の前記下側縁部分を縮めて前記心房固定部材に固着されている前記生まれつきの僧帽弁輪の
全体的寸法が減少するようになっている、僧帽弁修復器具。
【請求項2】
前記ばね機構体は、前記固定部材の前記下側縁部分の周囲を包囲している、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項3】
前記心房固定部材は、該心房固定部材を貫通して延びる中央ルーメンを備え、
前記ばね機構体は、前記中央ルーメンを横切る前記心房固定部材の互いに反対側の側部相互間に延びている、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項4】
前記ばね機構体は、
第1のばね力を発揮する第1の予備引き伸ばし状態に保持された第1のばね部分と、
前記第1のばね力とは異なる第2のばね力を発揮する第2の予備引き伸ばし状態に保持された第2のばね部分とを含む、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項5】
前記心房固定部材は、血液が該心房固定部材を通過することができるよう構成されている中央ルーメンを備えたメッシュフレームを有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項6】
前記メッシュフレームの少なくとも一部分を覆って延びる覆いをさらに有する、請求項5記載の僧帽弁修復器具。
【請求項7】
前記メッシュフレームから外方に突き出た複数のクリートをさらに有し、前記クリートは、組織固定を促進するよう構成されている、請求項5記載の僧帽弁修復器具。
【請求項8】
前記心房固定部材の前記下側縁部分に沿って設けられた複数の固着要素をさらに有し、前記固着要素は、前記固定部材を心房壁に当てて位置決めされた後、前記生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成されている、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項9】
前記心房固定部材は、前記下側縁部分に沿って設けられた複数のアイレットを有し、
前記固着要素は、前記アイレットを貫通するよう構成された螺旋コイル形アンカーである、請求項8記載の僧帽弁修復器具。
【請求項10】
前記心房固定部材は、前記下側縁部分に沿って設けられた複数のアイレットを有し、
前記固着要素は、前記アイレットを貫通するよう構成されたフック形アンカーである、請求項8記載の僧帽弁修復器具。
【請求項11】
前記心房固定部材は、組織内方成長を容易にするための窒化物を主成分とするナノマトリックス被膜を有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項12】
前記心房固定部材は、前記左心房の前壁と前記左心房の後壁との間に差し向けられるよう構成されている長軸を備えた卵形のメッシュフレームを有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項13】
前記心房固定部材の前記上側縁部分に沿って位置決めされるとともに送達器具への連結を容易にするよう構成された送達取り付け特徴部をさらに有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項14】
前記心房固定部材は、血液が該心房固定部材を通過することができるよう構成された中央ルーメンを備え、
前記僧帽弁修復器具は、生まれつきの弁輪の逸脱を制限するよう前記中央ルーメンの少なくとも一部分を横切って延びる複数のアームをさらに有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項15】
前記下側縁部分から前記中央ルーメンに向かって内方に延びるとともに前記アーム相互間に位置決めされたスカートをさらに有し、前記スカートは、前記生まれつきの弁輪と共に組織内方成長を促進するよう構成されている、請求項14記載の僧帽弁修復器具。
【請求項16】
前記複数のアームのうちの少なくとも1本は、前記中央ルーメンを完全に横切って延び、前記ばね機構体の縮みにより、前記複数のアームのうちの少なくとも1本は、前記上側縁部分から遠ざかる方向に前記心房固定部材から遠ざかるよう曲がる、請求項14記載の僧帽弁修復器具。
【請求項17】
前記心房固定部材は、血液が該心房固定部材を通過することができるように構成された中央ルーメンを備え、
前記僧帽弁修復器具は、弁輪の逸脱を制限する前記中央ルーメンを完全に横切って延びる少なくとも1本のアームをさらに有し、
前記アームは、弱体化領域を有し、前記弱体化領域は、所定の力が前記弱体化領域に与えられると千切れるよう構成されている、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項18】
前記心房固定部材の周囲に沿ってぐるりと延びるとともに、引き締められて前記心房固定部材の断面領域を減少させるよう構成された縫合糸リングをさらに有する、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項19】
前記心房固定部材から遠ざかってかつ前記心房固定部材から半径方向内方に延びる接合構造体をさらに有し、前記接合構造体は、
心収縮期中、第1の生まれつきの尖に接合するよう構成された前面と、
第2の生まれつきの尖の少なくとも一部分を変位させるよう構成された後面と
、を有し、
前記接合構造体は、心周期中、実質的に静止している、請求項1記載の僧帽弁修復器具。
【請求項20】
心臓弁修復器具であって、
心臓の室内で生まれつきの弁輪の近くに位置する心組織に係合するよう構成された固定部材を有し、前記固定部材は、
メッシュフレームを有し、前記メッシュフレームを貫通して中央ルーメンが形成され、
前記生まれつきの弁輪から間隔を置いて配置されるよう構成され且つ近位縁部分直径を有する近位縁部分を有し、
前記生まれつきの弁輪の近くに位置決めされるよう構成され且つ遠位縁部分直径を有する遠位縁部分を有し、前記遠
位縁部分直径は、配備状態で前記近位縁部分直径よりも小さくなるように構成され、
前記遠位縁部分に結合されたばね機構体を有し、
前記ばね機構体は、第1の長さを呈する予備引き伸ばし状態及び、前記第1の長さより短
い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
前記ばね機構体の少なくとも一部分に設けられた生体適合性材料を有し、前記生体適合性材料は、前記固定部材が配備されるときに、前記ばね機構体を少なくとも部分的に前記予備引き伸ばし状態に維持するように構成され、前記生体適合性材料は、さらに、前記ばね機構体の前記予備引き伸ばし状態から前記弛緩状態までの移動を遅延されるように時間の経過と共に溶解するように構成され、
前記ばね機構体が前記弛緩状態に動くと、前記ばね機構体は、前記遠位縁部分を半径方向内方に引き寄せて前記固定部材の寸法を減少させ、その結果、前記固定部材に固着されている前記生まれつきの弁輪の
全体的寸法が減少するようになっている、心臓弁修復器具。
【請求項21】
前記ばね機構体は、前記遠位縁部分の周囲に沿ってぐるりと延びている、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項22】
前記ばね機構体は、前記中央ルーメンの弦長を横切って延びる少なくとも1つのばね部品を含む、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項23】
前記ばね機構体は、
前記予備引き伸ばし状態において第1のばね力を発揮する第1のばね部分と、
前記予備引き伸ばし状態において第2のばね力を発揮する第2のばね部分と
、を有し、前記第1のばね力は、前記第2のばね力とは異なっている、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項24】
前記メッシュフレームの少なくとも一部分を覆って延びる覆いと、
前記メッシュフレームから外方に突き出た複数のクリートと
、をさらに有し、前記クリートは、組織固定を促進するよう構成されている、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項25】
前記固定部材の前記遠
位縁部分に沿って設けられた複数の固着要素をさらに有し、前記固着要素は、前記生まれつきの弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成されている、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項26】
前記複数の固着要素は、前記生まれつきの弁輪の三角部及びP2領域と整列するよう構成された3つの固着部材から成る、請求項25記載の心臓弁修復器具。
【請求項27】
弁輪の逸脱を制限するよう前記中央ルーメンの少なくとも一部分を横切って延びる複数のアームをさらに有する、請求項20記載の心臓弁修復器具。
【請求項28】
心臓弁修復器具であって、
心臓の室内で生まれつきの弁輪の近くに位置する心組織に係合するよう構成された固定部材を有し、前記固定部材は、
メッシュフレームを有し、前記メッシュフレームを貫通して中央ルーメンが形成され、
前記生まれつきの弁輪から間隔を置いて配置されるよう構成され且つ近位縁部分直径を有する近位縁部分を有し、
前記生まれつきの弁輪の近くに位置決めされるよう構成され且つ遠位縁部分直径を有する遠位縁部分を有し、前記遠
位縁部分直径は、配備状態で前記近位縁部分直径よりも小さくなるように構成され、
前記遠位縁部分に結合されたばね機構体を有し、
前記ばね機構体は、前記固定部材が配備される当初は第1の長さを呈する予備引き伸ばし状態を有し、前記第1の長さより短
い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
前記ばね機構体の少なくとも一部分に設けられた生体適合性材料を有し、前記生体適合性材料は、前記固定部材が配備された後に、前記ばね機構体を少なくとも部分的に前記予備引き伸ばし状態に維持するように構成され、前記生体適合性材料は、さらに、前記ばね機構体を前記弛緩状態まで遅延縮みさせるために溶解するように構成され、
前記ばね機構体が前記弛緩状態に動くと、前記ばね機構体は、前記遠位縁部分を半径方向内方に引き寄せて前記固定部材の前記遠位縁部分で前記中央ルーメンの寸法を減少させる、心臓弁修復器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、心臓弁修復器具、特に、弁輪形成術的特徴を備えた心臓弁修復器具並びに関連システム及び方法に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2019年3月12日に出願された米国特許仮出願第62/817,443号の優先権及び権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁の適正な機能発揮に悪影響を及ぼす病態としては、例えば、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱及び僧帽弁狭窄が挙げられる。僧帽弁逆流症は、僧帽弁の両尖がピーク収縮圧力で互いに接合してくっつくことがなく、その結果、左心室から左心房への血液の異常な漏れが生じる心臓の疾患である。僧帽弁尖の適正な閉鎖に悪影響を及ぼす場合のある幾つかの構造的要因が存在する。例えば、心臓疾患を患っている多くの患者は、心筋の拡張を生じており、その結果、僧帽弁輪が拡大している。僧帽弁輪の拡大により、弁尖が心収縮中に接合することが困難になる。腱索、乳頭筋を僧帽弁尖の下側に繋ぐ腱の伸展又は裂離もまた、僧帽弁輪の適正な閉鎖に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、腱索の断裂により、弁尖が弁尖に加わる不適当な張力に起因して左心房中に逸脱する場合がある。異常な逆流もまた、乳頭筋の機能発揮が、例えば虚血に起因して損なわれた場合にも起こることがある。左心室が心収縮期中に収縮すると、罹患した乳頭筋は、適正な閉鎖を行うほど十分には収縮しない。
【0004】
僧帽弁の逸脱、又は僧帽弁尖が異常に上方に膨らんで左心房中に入ると、それにより、僧帽弁の不規則な挙動が生じ、また、僧帽弁の逆流症が結果として生じる場合がある。僧帽弁の健常な機能発揮もまた、僧帽弁狭窄又は僧帽弁口が狭くなることによって悪影響を受ける場合があり、それにより心拡張の際に左心室の充満インピーダンスが生じる。
【0005】
僧帽弁逆流症は、利尿薬及び/又は血管拡張薬を用いて左心房中に逆流する血液の量を減少させて治療される場合が多い。他の治療法、例えば外科的方式(開放方式及び血管内方式)もまた、僧帽弁の修復か置換かのいずれかのために用いられている。例えば、修復手技では、拡張状態の弁輪の幾つかの部分を切除して弁尖を互いに部分並置状態になるよう縫合し又はクリップ留めすることが行われている。
【0006】
患者の中には、生まれつきの僧帽弁尖が依然として無傷であり健常であるが、弁輪が拡張することにより心収縮期における尖の接合が阻止され、その結果、逆流が生じる。このような患者は、弁輪形成術用器具及び方法から恩恵を受けることができ、かかる技術は、弁輪組織又は周りの組織に固定された環状又は周囲環状リングの植え込みを含み、弁輪のシンチングを行う。かかる弁輪形成術は、生まれつきの僧帽弁輪のサイズを効果的に減少させ、それにより生まれつきの尖を再び互いに密接させて生まれつきの尖(例えばその一部分)が心収縮中に互いに接合することができるようにする。
【0007】
1つには、弁輪拡張の他に種々の要因によって引き起こされる僧帽弁逆流症を患っている患者では、数々の手技を用いると、僧帽弁逆流症の相当多くの部分に取り組むことができる。例えば、クリップ(例えば、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Labs)社製のMitra-clip)を配置することにより、腱索の断裂に起因して尖が激しく揺れるのに取り組むことができる場合がある。加うるに、より侵襲的な手技としては、機械的な弁又は生物学的組織を僧帽弁に代えて心臓中に植え込む心臓弁それ自体まるごとの置換が行われた。これら侵襲的な手技は、従来、ラージオープン型開胸術(large open thoracotomy)により行われ、かくして、極めて高い有痛性であり、相当高い罹病率を呈し、そして長い回復期間を必要とする。これら技術を用いても、拡張した生まれつきの弁輪を矯正することができなければ、その結果として、弁の修復が不完全となり、それにより僧帽弁逆流症がなくならない。これらの場合、付随して行われる弁輪形成術のための器具及び方法は、僧帽弁修復具合を改善することが見込まれる。
【0008】
これら僧帽弁修復及び置換手技の多くにより、器具の耐久性又は弁輪形成術用リングもしくは置換用の弁の寸法決めの不適切さの結果として、患者にとって追加の問題が生じる場合がある。さらに、修復手技の多くは、心臓外科医の腕前に大きく依存し、この場合、縫合糸の配置具合が不具合であり又は不正確であると、手技の成功が脅かされる場合がある。
【0009】
僧帽弁修復及び置換手技をさらに複雑にすると、他の心臓弁(例えば、大動脈弁)と比較して、僧帽弁輪は、周りの組織からの半径方向支持作用が限定されており、僧帽弁は、不規則かつ予測不能な形状を有する。例えば、僧帽弁の内壁は、僧帽弁輪を大動脈流出路の下方部分から隔てる薄い血管壁によって境界づけられているに過ぎない。その結果、僧帽弁輪に加わる相当大きな半径方向力により、大動脈路の下方部分の潰れが生じ、潜在的に致命的な結果をもたらす。左心室の腱索は、僧帽弁修復器具を配備する際に障害物となる場合が多い。左心室内に迷路のようにはりめぐらされた腱索は、僧帽弁の修復にあたって、配備カテーテルをナビゲートして位置決めするのを極めて困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現行の手技と関連した問題点が存在すると仮定して、機能障害の心臓弁を治療するための簡単で効果的なかつ侵襲性のより低い器具及び方法が要望され続けている。
【0011】
本発明の一観点では、僧帽弁修復器具であって、
左心房内で生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成された心房固定部材を有し、心房固定部材は、
生まれつきの僧帽弁輪から間隔を置いた状態で心房内に位置決めされるよう構成された上側縁部分と、
生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置決めするよう構成された下側縁部分とを有し、
心房固定部材は、送達状態から配備状態に拡張するよう構成され、
下側縁部分に結合されたばね機構体を有し、ばね機構体は、
第1の長さが配備状態において心房固定部材の寸法に一致する伸長状態及び第1の長さよりも短い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
植え込み時、ばね機構体は、心房固定部材の下側縁部分を縮めて心房固定部材に固着されている生まれつきの僧帽弁輪の断面寸法が減少するようになっていることを特徴とする僧帽弁修復器具が提供される。
【0012】
本発明の別の観点では、心臓弁修復器具であって、
心臓の室内で生まれつきの弁輪の近くに位置する心組織に係合するよう構成された固定部材を有し、固定部材は、
メッシュフレームを有し、メッシュフレームを貫通して中央ルーメンが形成され、
生まれつきの弁輪から間隔を置いて配置されるよう構成された近位縁部分を有し、
生まれつきの弁輪の近くに位置決めされるよう構成された遠位縁部分を有し、
遠位縁部分に結合されたばね機構体を有し、
ばね機構体は、第1の長さを呈する予備引き伸ばし状態及び、第1の長さより短い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
ばね機構体が弛緩状態に動くと、ばね機構体は、遠位縁部分を内方に引き寄せて心房固定部材の生まれつきの弁輪の寸法を減少させ、その結果、心房固定部材に固着されている生まれつきの僧帽弁輪の断面寸法が減少するようになっていることを特徴とする心臓弁修復器具が提供される。
【0013】
本発明の別の観点では、弁修復器具を生まれつきの僧帽弁内に配備する方法であって、
僧帽弁修復器具の固定部材を左心房内の心房壁に当てた状態に位置決めして固定部材が生まれつきの僧帽弁輪を包囲するようにするステップを含み、固定部材は、血液を生まれつきの僧帽弁中に流入させる中央ルーメンを形成し、
固定部材の遠位縁部分を生まれつきの僧帽弁輪の組織に係合させて遠位縁部分に結合されているばね機構体が予備引き伸ばし状態において生まれつきの僧帽弁輪のところに位置決めされるようにするステップを含み、ばね機構体は、遠位縁部分及びこの遠位縁部分に係合した組織を内方に引き寄せて生まれつきの僧帽弁輪の寸法を減少させる弛緩状態に動くよう構成されていることを特徴とする方法が提供される。
【0014】
現行の手技と関連した問題点が存在すると仮定して、機能障害の心臓弁を治療するための簡単で効果的なかつ侵襲性の低い器具及び方法が要望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示内容の多くの観点は、以下の図面を参照すると良好に理解できる。図面に記載されたコンポーネントは、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本開示内容の原理を明確に説明することに強調がおかれている。参照しやすくするため、本開示内容全体を通じて、同一の参照符号及び/又は文字は、同一又は類似のコンポーネント又は特徴を示すために用いられているが、同一の参照符号を用いることは、当該部分が同一であるとみなされるべきであるということを意味しているわけではない。確かに、本明細書において説明する多くの実施例では、符号が同一のコンポーネントは、構造及び/又は機能において別々である互いに異なる実施形態を指している。本明細書に設けられている見出しは、便宜上のものであるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具の等角図である。
【
図1B】本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具の等角図である。
【
図1C】本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具の組織固着要素の拡大図である。
【
図2A】本技術の実施形態に従って当初の拡張状態にある
図1Aの僧帽弁修復器具の側面図である。
【
図2B】本技術の実施形態に従って縮んだ弛緩状態にある
図1Aの僧帽弁修復器具の側面図である。
【
図3】本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具の下側縁部分の拡大図である。
【
図4】本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具の等角図である。
【
図5A】本技術の実施形態に従って構成された送達状態にある僧帽弁修復器具の組織固着要素の拡大図である。
【
図5B】本技術の実施形態に従って構成された展開状態にある僧帽弁修復器具の組織固着要素の拡大図である。
【
図6A】本技術の追加の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具を示す図である。
【
図6B】本技術の追加の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具を示す図である。
【
図7】本技術の幾つかの実施形態に従って構成された心臓弁修復器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
弁輪形成術の特徴を備えた心臓弁修復器具並びに関連システム及び方法が本明細書において開示される。幾つかの実施形態では、例えば、心臓弁修復器具(「弁輪形成術用器具」、「僧帽弁修復器具」、又は「接合支援器具」ともいう)は、僧帽弁輪を包囲している左心房の心組織に固着する固定部材及び生まれつきの弁輪を内方に引き寄せて弁尖(又はこれらの幾つかの部分)が心収縮中にもう一度接合することができるようにするばね特徴部を有する。本技術の幾つかの実施形態の特定の細部について
図1A~
図7を参照して以下に説明する。実施形態のうちの多くを生まれつきの僧帽弁の修復のための植え込み器具、システム、及び方法と関連して以下において説明するが、本明細書において説明するこれら実施形態に加えて、他の用途及び他の実施形態は、本技術の範囲に含まれる。例えば、本技術は、三尖弁、肺動脈弁、及び/又は大動脈弁のような他の標的部位に使用できる。加うるに、本技術の他の幾つかの実施形態は、本明細書において説明する形態、コンポーネント、又は手技とは異なる形態、コンポーネント、又は手技を有することができ、図示の実施形態の特徴を互いに組み合わせることができる。したがって、当業者であれば、それに応じて、本技術が追加の要素を含む他の実施形態で実施でき又は本技術が
図1A~
図7に示されるとともにこれらの図を参照して以下に説明する特徴のうちの幾つかを備えていない他の実施形態で実施できることは理解されよう。
【0018】
本明細書において用いられる「遠位」及び「近位」という用語に関し、別段の指定がなければ、これらの用語は、オペレータ及び/又は血管系又は心臓内の場所に対する弁修復器具及び/又は関連送達器具の部分の相対位置を示すことができる。例えば、本明細書において説明する種々の弁修復器具を送達するとともに位置決めするのに適した送達カテーテルに関し、「近位」は、器具のオペレータ又は血管系への切開創の近くの位置を意味し、「遠位」は、器具のオペレータから遠くに位置し又は血管系に沿う切開創からさらに遠くに位置する位置(例えば、カテーテルの端)を意味する。心臓弁修復器具に関し、「近位」及び「遠位」という用語は、生まれつきの弁輪に対する器具の諸部分を指す場合がある。例えば、「近位」は、生まれつきの弁輪から間隔を置いて位置する器具の上流側部分を意味する場合があり、「遠位」は、弁輪のところ又はその近くに位置する下流側部分を意味する場合がある。
【0019】
概観
本技術は、房室弁の環状周囲を短くする低侵襲器具及び方法を含む。本明細書において開示する弁輪形成術の特徴を備えた僧帽弁修復器具の実施形態は、心臓の心房内で房室弁の真上に位置する心房壁に当てて配置される固着部材(「固定部材」又は「ブリム」ともいう)を含む。固着部材は、僧帽弁輪の真上に位置する左心房の壁に合致するような寸法形状になっているのが良い。種々の実施形態では、固着部材は、これを心房壁に当てて定位置に保持するためのクリート又は他の摩擦要素を有する。植え込み後のある期間(例えば、3日間、2週間、1か月間、2か月間)にわたり、固着部材又はその幾つかの部分は、組織の層で覆われた状態になり、この組織内方成長は、固着部材を心房壁に永続的にくっつける。この回復期間中、固着部材が心房の壁中に癒着し(例えば、4週間~12週間かけて)、その時点で、固着部材はそれ自体、周囲が収縮し始めることができ、それにより弁輪の周囲を短くすることができる。弁輪形成術用器具は、僧帽弁及び/又は三尖弁内に配置されるように設計されているのが良くかつ経中隔(静脈経由)方式により左心房中に運び込まれるのが良い。幾つかの実施形態では、弁輪形成術用器具は、他の生まれつきの弁、例えば大動脈弁の部位に配置されるよう構成されているのが良い。
【0020】
幾つかの実施形態では、器具は、弁輪のある特定の領域を差動的に収縮させるよう設計されている。例えば、器具は、交連の近くに位置する僧帽弁輪の外側及び内側部分並びに後尖のP1及びP3セグメント(すなわち、後尖の内側部分及び外側部分)をより激しく収縮させ、それにより後尖を引っ張って前尖に近づけるよう構成されているのが良い。三尖弁では、器具は、前尖及び後尖の領域中の自由壁をより激しく収縮させるよう構成されているのが良い。
【0021】
器具は、環状周囲を極めて特定の小さな寸法に短くするよう設計されているのが良い。他の実施形態では、器具は、弾性縮小力を様々な範囲にわたって弁輪に加え、それにより任意特定の時点において弁輪に加えられる最大力を減少させるよう構成されているのが良い。
【0022】
幾つかの実施形態では、器具は、器具を弁輪のところ又は弁輪の近くのところで生まれつきの組織に固定して伝統的な弁輪形成術によりシンチングを行う固着部材又は1つ以上の固定部材(例えば、ねじ)を有する。これら実施形態では、固着部材及び/又はこれに結合されている特徴部もまた、逆流症を引き起こす恐れのある弁尖に関する他の問題に取り組むことができる。固着部材は、2018年7月24日に出願された国際出願PCT/US2018/043566に開示された心房固定部材(「ブリム」ともいう)とほぼ同じであるのが良く、この国際出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。種々の実施形態では、固着部材が省かれ、その結果、器具が純粋な弁輪形成術そのものを提供するよう1つ以上の固定部材を含むようになっている。
【0023】
器具は、種々の互いに異なる断面形状を有することができる。幾つかの実施形態では、例えば、器具は、対称でありかつ/あるいは一様な断面形状を有し、その結果、器具を前尖及び後尖に対して方向づける必要はない。他の実施形態では、器具は、1つ以上の解剖学的ランドマーク、例えば後尖及び/又はその幾つかの部分と整列するよう特定の非対称又は非一様な形状を有する。一例として、非対称器具は、僧帽弁輪の全体として「D形」と整列する全体的形状を有するのが良くかつ/あるいは固定部材は、生まれつきの尖の接合幾何学的形状の実現を促進するよう生まれつきの僧帽弁輪とほぼ同じ鞍のような形を有するのが良い。ある特定の実施形態では、固定部材は、外科用鞍形リング、例えば、メドトロニック(Medtronic)社製のProfile 3D Annuloplasty Systemと同様に形作られるのが良い。
【0024】
幾つかの実施形態では、器具は、固定部材が典型的には弁周りの互いに異なる場所で弁軸線に対して互いに異なる勾配を有する心房の壁に当たって平らに又は実質的に平らに位置するよう構成されるのが良い。種々の実施形態では、例えば、固定部材は、僧帽弁を包囲する生まれつきの心房壁構造体と少なくとも全体として整列する特定の形状を有するのが良い。種々の実施形態では、固定部材は、心房壁の生まれつきの解剖学的形状のばらつきに適合するのに十分に可撓性があるのが良い。種々の実施形態では、固着部材は、副弁輪組織に圧接してこれに固着する部分を有するのが良い。
【0025】
幾つかの実施形態では、器具は、心房の追加の又は他の解剖学的特徴及び/又は他の周りの解剖学的構造にあうよう形作られるのが良い。例えば、僧帽弁の弁輪形成術を可能にするよう構成されている場合、器具は、肺静脈及び/又は左心耳を回避するよう形作られるのが良い。器具が心臓の右側部分に埋め込み可能に構成されている場合、器具は、冠状動脈洞及び/又は下大静脈(“IVC”)を回避するよう寸法決めされるとともに形作られるのが良い。幾つかの実施形態では、器具は、左心耳を部分的に又は完全に閉塞して心房細動がある患者の血栓塞栓症による発作の恐れを減少させ又は最小限に抑えるよう寸法決めされるとともに形作られるのが良い。
【0026】
幾つかの実施形態では、僧帽弁修復器具は、固着部材から弁輪を通って延びる接合構造体(「バッフル」ともいう)をさらに有するのが良く、接合構造体は、生まれつきの弁尖の一部分を覆って位置決めされる。接合構造体は、閉鎖状態の生まれつきの尖の占める空間の少なくとも一部分を埋めるとともにこの空間を越えて延び、それにより周りの尖との接合を再び確立する。例えば、接合構造体は、後尖の中央部分(すなわち、後尖P2)の前に延びるのが良く、それにより後尖を心室壁に向かって押し戻し、その結果、接合構造体が心収縮中、前尖に接合するよう位置決めされるようになっている。幾つかの実施形態では、器具は、固着部材及び/又は接合構造体から個々の僧帽弁尖の後ろの位置まで、そしてインプラントをさらに安定化するための副弁輪空間まで延びる1つ以上のクリップをさらに有する。例えば、器具は、後尖のP2又は他の部分の下で副弁輪空間に達し、そしてインプラントをさらに安定化させるクリップを有するのが良い。接合支援器具を備えたインプラント器具のそれ以上の説明はまた、2018年7月24日に出願された国際出願PCT/US2018/043566号明細書及び2018年11月14日に出願された国際出願PCT/US2018/061126号明細書に記載されており、これら国際出願の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0027】
弁輪形成術の特徴を備えた僧帽弁修復器具の選択された実施形態
図1A及び
図1Bは、本技術の実施形態に従って構成された心臓弁修復器具(「器具100」ともいう)の等角図であり、
図1Cは、本技術の実施形態に従って構成された器具100の組織アンカー部分の拡大図である。器具100は、房室弁(例えば、僧帽弁MV又は三尖弁)の真上に位置する患者の心房壁に係合してこの中に癒着するよう形作られた心房固定部材102(「固着部材102」又は「固定部材102」ともいう)及びこの固定部材に作用して固定部材102の寸法を小さくする1つ以上の引張ばね機構体120(「ばね要素」ともいう)を有する。固定部材102は、自然に拡張して既存の心房サイズよりもわずかに大きいサイズに拡張する自己拡張型フレーム構造体であるのが良い。固定部材102は、生まれつきの弁輪から間隔を置いて位置する心臓の心房領域内に位置決めするよう構成された上側縁部分104a(「近位縁部分104a」や「第1の縁部分104a」ともいう)及び生まれつきの弁輪のところに又はこれに隣接して位置決めするよう構成された下側縁部分104b(「遠位縁部分104b」や「第2の縁部分104b」ともいう)を有する。ばね機構体120は、下側縁部分104bのところに配置されるのが良い。
図1Aに示された実施形態では、例えば、ばね機構体120は、固定部材102の下側縁部分104bの周縁又は周囲を包囲している。ばね機構体120は、追加的に又は代替的に、下側縁部分104bに沿って異なる仕方で配置可能でありかつ/あるいは器具100は、固定部材102の追加の部分に沿って1つ以上のばね機構体120を有することができる。例えば、ばね機構体120は、上側縁部分104aと、下側縁部分104bとの間で固定部材102の壁に沿って1つ以上のばね部品を含むのが良い。器具の植え込み後、ばね機構体120は、固定部材102の隣接部分及びこれに取り付けられている環状組織を縮めてこれを引き寄せ、それにより弁輪の寸法を減少させるよう構成されているのが良い。このばね収縮は、固定部材が植え込まれた直後及び/又は固定部材102が隣接の心臓壁中に癒着し又は取り付けられた後に遅延して開始されるのが良い。
【0028】
固定部材102は、配備状態では卵形、円形、又はD状断面形状を呈するとともに血液を通すことができる開放中央ルーメン108(「開口部108」ともいう)を構成する拡張可能なメッシュフレーム106(例えば、ステント)を有するのが良い。メッシュフレーム106は、ニチノール又は他の適当なステント材料で作られた(例えば、管又は平たいシートから切断形成されて上述の形状に形作られた)ステントであるのが良い。固定部材102は、器具100を環状上組織に固定するよう僧帽弁輪の真上に位置する左心房の壁に適合するよう形作られているのが良い。植え込み後(例えば、3日、2週間、1か月、2か月)、固定部材102又はその幾つかの部分は、組織の層で覆われるようになり、この組織内方成長により、器具100は、心房壁に永続的にくっつけられる。幾つかの実施形態では、固定部材102は、内方成長及び心房壁との長期間一体化を促進するようメッシュフレーム106の少なくとも一部分を覆って延びるファブリック又は組織で作られている覆い110を有する。この実施形態及び他の実施形態では、固定部材102のメッシュフレーム106は、組織内方成長を促進する窒化物を主成分とするナノマトリックス(表面窒化)で被覆されるのが良く又は違ったやり方でこれを有するのが良い。幾つかの実施形態では、固定部材102は、生まれつきの弁の周囲に沿ってこれを完全にぐるりとは延びていない半円形又は他の形状を有する。幾つかの実施形態では、固定部材102は、追加的に又は代替的に、副弁輪器具固定を行うよう副弁輪組織に圧接する1つ以上の部分を有することができる。
【0029】
図1Aに示されているように、器具100は、即座固定、中期内方成長、及び心房壁の組織との長期一体化を促進するよう固定部材102に設けられた多数の棘部(バーブ)又はクリート112をさらに有するのが良く、それにより、環状寸法を減少させる力を効果的に加えることができるようにする組織固定を容易にする。これらクリート112は、1つ以上の方向に角度がつけられるのが良い。例えばクリート112は、生まれつきの弁輪に向かう遠位側の方向に外方に突き出るのが良く、その結果、生まれつきの弁輪を収縮させるよう固定部材102によって加えられた引張力がこれらクリートを引き出すのではなく組織中に深く食い込ませようとする。幾つかの実施形態では、クリート112は、生まれつきの弁輪から遠ざかる近位側の方向に延び、固定部材102上のこれらの取り付け箇所から半径方向外側の方向に向き、器具100の長手方向中心軸線に向かって内方に湾曲するとともに/あるいは違ったやり方で固定部材102から延びて生まれつきの組織に係合して組織固定を容易にするのが良い。
【0030】
さらに
図1Aに示されているように、固定部材102は、送達器具(図示せず)への連結を容易にするよう上側縁部分104aに沿って位置決めされた送達取り付け特徴部116を有するのが良い。この実施形態及び他の実施形態では、器具100は、固定部材102の下側縁部分104bに沿ってかつ/あるいは固定部材102の他の部分に沿って取り付け特徴部116を有するのが良い。取り付け特徴部116は、T字形バー、アイレット、フック、及び/又は他の構造体を有するのが良く、これらは、送達システムの凹部、突出部、把持機構体、縫合糸、及び/又は他の対応の部分に固定されるのが良い。
【0031】
幾つかの実施形態では、器具100は、固定部材102の周囲に沿って延びる1つ以上の縫合糸リング115(引張リングとしても知られる)を有するのが良い。縫合糸リング115は、送達システム(図示せず)を経て引っ張られるのが良い。例えば、縫合糸リング115は、縫合糸又は他の細長い部材を含むのが良く又はこれらに結合されるのが良く、これら縫合糸又は他の細長い部材は、送達カテーテルを通ってこれらを引っ張って縫合糸リング115を引き締めることができるようにする体の外部に位置している出口ポートまで延びる。縫合糸リング115をこのようにして引き締めることにより、固定部材102を固定部材102が完全拡張自由状態と比較して減少した直径を有する部分的縮み状態に位置決めすることができる。この縮み状態は、送達手技中、器具100の再位置決め又は回収を容易にすることができる。幾つかの実施形態では、縫合糸リング115は、送達手技後に引っ張られるのが良い。例えば、縫合糸リング115に結合された細長い部材は、送達手技後にも接近可能であるように、接近ポート(例えば、患者の頸静脈又は大腿静脈の近くに位置する)を貫通するのが良い。送達手技後の、例えば組織内方成長が生まれつきの弁輪を包囲している組織への固定部材102の固定を促進した後のある時点で、(例えば、手技後約3か月)、細長い部材を引いて縫合糸リング115を固定部材102周りに締めて器具100の全体的断面積を減少させる。固定部材102が弁輪のところで組織に取り付けられているので、縫合糸リング115を引っ張ると、生まれつきの弁輪を引き込むことができ、それにより生まれつきの弁輪の全体的サイズが減少する。
【0032】
幾つかの実施形態では、固定部材102は、固定部材102の特定の領域において形状、寸法、及び/又は厚さが異なるステントを有するのが良い。例えば、固定部材102は、線維三角部の近くに位置決めするよう構成された固定部材102の幾つかの領域に追加のクリート、棘部、又はステント構造体を有するのが良い。これら追加の構造体は、器具100が力を弁輪に加えて前‐後寸法を減少させる機能を促進することができる。
【0033】
図1B及び
図1Cの拡大図に示されているように、幾つかの実施形態では、器具100は、固定部材102を心房壁に当てて位置決めした後に作動される1つ以上の固着要素118をさらに有する。固着要素118は、房室弁の最も近くに位置する固定部材102の遠位縁部分104bに設け得られたアイレット124(
図1C)及び/又は他の係合構造体内に捕捉状態になるのが良い。これら固着要素118は、固定部材ステントのあらゆるノードのところに又はステント周囲に沿う特定の場所に位置決めされるのが良い。
図1Bに示された実施形態では、例えば、固着要素118は、固定要素102に設けられていて弁輪の三角部及びP2領域(中央領域)と整列するよう構成された3つの場所に位置決めされるのが良い。他の実施形態では、固着要素118は、固定部材102の遠位縁部分104bに沿うどこか他の場所に位置決めされるとともに/あるいは器具100は、4つ以上又は2つ以下の固着要素118を有することができる。
【0034】
図示の実施形態では、固着要素118は、固定部材102のアイレット124を貫通する螺旋コイルアンカー126(
図1C)である。器具配備中、螺旋コイルアンカー126は、トルク伝達可能シャフト122に解除可能に結合され、シャフト122の回転により、コイルアンカー126が生まれつきの弁輪のところ又はその近くで心組織中に食い込む。
図1Cに示されているように、トルク伝達可能シャフト122は、コイルアンカー126の一部分を受け入れる溝128を有するのが良く、それによりシャフト122は、回転及び/又は下向きの力をコイルアンカー126に加えることができ、その結果、コイルアンカーは、隣接の組織に係合するようになる。これらの実施形態及び他の実施形態では、トルク伝達可能シャフト122は、他の適当な結合機構体を用いて固着要素118に解除可能に取り付けられるのが良い。これらの実施形態及び他の実施形態では、固着要素118は、固定部材102を周囲の組織中に固着するのに適した他の構造体を有するのが良くかつ/あるいは自己配備を含む他の機構体を介して配備されるのが良い。幾つかの実施形態では、固着要素118は、周囲の組織中への組み込みの促進を容易にするようPLGA及び/又は他の被膜材料で被覆されるのが良い。
【0035】
図1Aに戻ってこれを参照すると、ばね機構体120は、部分又は完全ループの状態に形成される1つ以上のばねを含むのが良く、このループは、幾つかの個所で固定部材102の周囲に沿って取り付けられる。ばね機構体120が固定部材102の遠位縁部分の周りに取り付けられると(
図1A及び
図1Bに示されているように)、ばね機構体120は、器具100が植え込まれると、生まれつきの弁輪周りに延びる。ばね機構体120は、1つ以上のコイルばね、例えばガイドワイヤ又は神経血管塞栓コイルに用いられるばねを含むのが良い。幾つかの実施形態では、ばね機構体120は、クローズワインド状態であるのが良く、その結果、ばね機構体は、制御可能に特定の寸法に縮み、そして所定の力を受けてばね機構体120は、その寸法を超えて小刻みに引き延ばされる。他の実施形態では、ばね機構体120は、少なくとも僅かにオープンワインド状態であるのが良く、その結果、ばねの小刻みな引き伸ばしのためにほんの僅かの力しか生じないようになっている。これらの実施形態及び他の実施形態では、ばね機構体120は、縮むことができ又は違ったやり方で長さが減少することができ、しかも固定部材102及びこれに取り付けられた生まれつきの組織を縮ませるのに十分な強度を有する他の適当な構造体を含むのが良い。ある特定の実施形態では、ばね機構体120は、0.040インチ(1.016mm)~0.080インチ(2.032mm)の主直径を有するとともに、0.06インチ(1.524mm)~0.016インチ(0.406mm)のワイヤ直径を有する。
【0036】
ばね機構体120は、これが所望の最終的な環状直径の長さにほぼ一致した弛緩直径を有するよう寸法決めされるのが良い。例えば、ばね機構体120が
図1Aに示されているように固定部材102の下側周囲に延びる場合、ばね機構体120の弛緩直径は、弁輪の所望の周長に一致するのが良い。この寸法は、健常な弁輪の寸法及び/又は適当な尖逸脱をもたらすのに必要な寸法に基づいて選択されるのが良い。
【0037】
植え込み前、ばね機構体120が固定部材102に取り付けられ又は違ったやり方でこれと接合されると、ばね機構体120は、生体吸収性材料により予備引き伸ばし状態に保持されるのが良い。ばね機構体をその予備引き伸ばし状態に保持する生体吸収性材料としては、PLA、PLGA、及び/又は体内で経時的に分解する他の適当な生体吸収性材料が挙げられる。ばね機構体120がコイルばねであるとき、生体吸収性材料は、コイルばねの中央開口部中に導入されるとともにこれを貫通する太い糸又は縫合糸の形態をしているのが良い。この同軸縫合糸/ばね構成は、比較的小径、例えば直径が0.020インチ~0.050インチ(0.508mm~1.270mm)の縫合糸がばね機構体120を所望の期間、予備引き伸ばし状態で伸長距離のところに保持することができるようにすることが見込まれる。予備引き伸ばし状態にあるばね機構体120の全長は、拡張配備状態にある固定部材102の対応の寸法とほぼ同一であるのが良い。例えば、
図1Aに示されている実施形態では、予備引き伸ばし状態にあるばね機構体120の長さは、拡張状態にある固定部材102の遠位端部分104bの周長に一致するのが良い。
【0038】
器具100を植え込んで弁輪を包囲している生まれつきの組織に適切に固着した(例えば、構造的固着機構体118及び/又は組織内方成長により)生体吸収性材料は、溶解し、それにより予備引き伸ばしばね機構体120は、その自然な弛緩状態に縮む。固定部材102が隣接の心組織に固着されているので、ばね機構体120のこの縮みによっても生まれつきの弁輪が内方に引き寄せられて、生まれつきの弁輪の全体的寸法が減少し、それにより弁尖の適正な接合が再び確立される。ばね機構体120の初期予備引き伸ばし状態から縮み弛緩状態へのこの変化がそれぞれ、
図2A及び
図2Bに示されている。具体的に説明すると、
図2Aに示された実施形態では、ばね要素120は、伸長状態に対応しかつ生体吸収性材料130(例えば、被膜又は縫合糸)と共に定位置に保たれる第1の長さL
1を有する。
図2Bに示されているように、生体吸収性材料130が溶解しているときに、ばね要素120は、第1の長さL
1よりも短くかつ自然な弛緩状態に対応した第2の長さL
2に縮むようになっている。この縮みにより、固定部材102に固定されている弁輪がこの固定部材と一緒に引かれ、それにより弁輪が引き締められて所望の寸法になる。したがって、器具100は、拡張状態の心臓弁輪の寸法を減少させることができ、それにより生まれつきの又は人工尖を再び互いに密接させてこれらの尖(又はその一部分)が心収縮中に互いに接合することができる。さらに、患者によっては、僧帽弁輪が将来において拡張する恐れが極めて高いと信じるに足るほどの理由が存在する場合がある。これらの患者については、将来の拡張を阻止する予防的弁輪形成術用器具(例えば、上述の器具100)もまた、臨床上の益を提供することが見込まれる。
【0039】
注目されるべきこととして、生まれつきの僧帽弁は、非常に腰のある繊維質構造体であり、したがって、その寸法を急に変えるには相当大きな力が必要になる。したがって、弁輪の寸法を急に変化させる外科的弁輪形成術用手技では、力を弁輪に及ぼすリングは、非常に強固でなければならず、また、このリングは、代表的には環状組織に深く埋め込まれた複数の縫合糸によって環状組織に極めてしっかりと固着されなければならない。これとは対照的に、この環状縮みが数か月間にわたってかつ数百回の拍動にわたって起こる場合、弾性ばね部材(例えば、ばね機構体120)により、環状寸法を次第に減少させるのに必要な力は、極めて小さいであろう。必要な関連の組織固定力は、同様に、極めて小さい場合がある。したがって、固定部材102を幾つかの棘部112又はアンカー118と一緒に組織中に癒着させて組織中への内方成長度を高めることは、弁輪からの器具100の分離を阻止するのに十分であることが見込まれる。
【0040】
器具100はまた、他の器具、例えば尖の幾つかの部分を互いに接合するクリップ、接合をもたらす人工尖器具、人工弁器具(例えば、この着座パッド又はベースとしての役目を果たす)、及び/又は適正な心臓弁機能を提供する他の器具と関連して使用できる。
【0041】
図3は、本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具300(「器具300」)の下側縁部分104bの拡大図である。器具300は、上述の器具100の特徴と少なくとも全体として類似した種々の特徴を有する。例えば、器具300は、固定部材102の下側縁部分104bを縮めるよう構成されている少なくとも1つのばね機構体320を備えた固定部材102を有する。
図3に示された実施形態では、ばね機構体320は、その長さに沿って漸変する予備引き伸ばし伸長度を有し、その結果、ばね機構体320のある特定の領域が他よりもいっそう予備的に引き延ばされるようになる。例えば、
図3に示されているように、ばね機構体320は、第1の予備引き伸ばし状態に保持された(例えば、生体適合性材料130により)第1のばね部分321a及び第2の予備引き伸ばし状態に保持された第2のばね部分321bを有するのが良く、第1の予備引き伸ばし状態は、第1のばね部分321aが第2のばね部分321bよりも大きな変位(例えば、縮み)度を受けてその弛緩通常状態に戻らなければならないようなものである。第1及び第2のばね部分321a,321bは、別々のばね部品であっても良く、又は単一のばね部品であっても良く、各ばね部分は、同一のばね定数を有しても良く、あるいは個々の部分のばね定数が互いに異なっていても良い。ばね機構体320が固定部材102周りに円周方向に配置されるループである場合(
図1A~
図3)、ばね機構体320は、生まれつきの僧帽弁の前側部分及び後側部分と整列する部分のところよりも生まれつきの僧帽弁の交連並びに外側及び内側部分に近い方がより多く引き伸ばし可能である。この形態では、ばね機構体320の縮みは、器具300の内側及び外側部分のところに集中し、それにより、生まれつきの弁輪の前側部分と後側部分を互いに向かって引いて、生まれつきの弁輪の前‐後寸法を減少させる。幾つかの実施形態では、ばね機構体320は、生まれつきの弁の内側部と外側部を互いに引き寄せるよう生まれつきの僧帽弁の前側部分及び後側部分と整列する部分においてより大きな引き伸ばし度を有するのが良い。幾つかの実施形態では、ばね機構体320は、固定部材上のどこか他の場所に位置する様々な縮み度及び/又は生まれつきの弁輪の所望の引き締め度を与えるとともに/あるいは生まれつきの弁輪の所望の端部形状を提供するよう生まれつきの解剖学的構造に対する互いに異なる向きを有するのが良い。
図3は、2つの互いに異なるばね力を発揮する2つのばね部分321a,321bを含むばね機構体320を示しているが、本明細書において開示する弁修復器具は、3つ以上のばね部分及び/又は3つ以上のばね力を有することができる。
【0042】
図4は、本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具400(「器具400」)の等角図である。器具400は、
図1A~
図2Bを参照して上述した器具100の特徴部と全体として類似した多くの特徴部、例えば固定部材402及び固定部材402の下側縁部分104bに結合された少なくとも1つのばね機構体420を有する。しかしながら、
図4の固定部材402は、その主軸として前‐後(“AP”)を備えた状態で特異的に玉子型にされており、その結果、植え込み時に器具400の内側部と外側部に壁の接触がほとんどなく又は全くないということができる。加うるに、ばね機構体420は、固定部材402の中央開口部108の周囲にではなくこの中央開口部を横切って延びている(例えば、
図1A~
図3に示されているように)。
図4に示されているように、ばね機構体420は、第1のばね部品423aを有するのが良く、この第1のばね部品は、第2のばね部品423bから側方に間隔を置いて配置され(ひとまとめに「ばね部品423」という)、ばね部品423は、固定部材402の下側縁部分104bの互いに反対側の側部に取り付けられ、これらばね部品が固定部材402の下側縁部分104bの直径又は弦長にわたってまたぐようになっている。この形態では、予備引き伸ばし状態にあるばね部品423の長さは、配備状態にある(すなわち、送達システムによって拘束されていないとき)固定部材402の遠位端部分104bの直径又は対応の弦長に一致するのが良く、ばね機構体420の弛緩直径は、生まれつきの弁輪のところ又はその近くの所望の弦長又は直径に一致するのが良い。ばね機構体420がその予備引き伸ばし寸法から弛緩寸法に動くと(例えば、生体吸収性材料が溶解すると)、器具400は、生まれつきの弁輪をばね機構体420の向き及び弛緩寸法に基づいて次第に内方に引き寄せることができる。例えば、ばね部品423が生まれつきの弁輪の後側部分と前側部分との間で伸長するよう位置決めされている場合、器具400は、AP方向における生まれつきの弁輪の縮みを生じさせて前尖と後尖を結合し、しかも交連‐交連(“CC”)方向における心房の追加の又は過度の拡張が生じるのを回避する。
【0043】
幾つかの実施形態では、ばね機構体420は、固定部材402の直径又は他の弦長にわたってまたぐ単一のばね部品を有するのが良く、あるいは、器具400は、固定部材402の開口部108を横切って延びる3つ以上のばね部品を有するのが良い。幾つかの実施形態では、器具400は、固定部材402の互いに異なる部分にわたって(例えば、固定部材402の上側部分104aにわたって、固定部材402の内側壁にわたって、上側部分104aから下側部分104bまでの開口部108にわたって)またぐ1つ以上のばね部品を有するのが良く、ばね部品は、予備引き伸ばし状態において可変ばね力を有するのが良くかつ/あるいはばね部品は、固定部材402に取り付けられた生まれつきの弁輪及び/又は他の心組織を互いに異なる方向(例えば、CC方向)に引き入れるのが良い。
【0044】
図5A及び
図5Bは、本技術の実施形態に従って構成された僧帽弁修復器具500(「器具500」)の組織固着要素518をそれぞれ送達状態及び配備状態で示す拡大図である。器具500は、
図1A~
図4を参照して上述した器具100,300,400の特徴と全体として類似の特徴を有するのが良い。例えば、器具500は、固定部材102及び固定部材102の下側縁部分104bの近くのところで心組織に係合しそれにより器具固定具合を高める1つ以上の固着要素518を有する。
図1B及び
図1Cに示されている螺旋コイルアンカー126とは異なり、器具500の固着要素518は、固定部材102に沿って設けられたアイレット124及び/又は他の結合構造体に結合できるフック形アンカー532である。フック形アンカー532は、フック形アンカー532の一部分(例えば、フランジ536)に作用するシャフト522を用いて組織に食い込み可能であるのが良い。例えば、
図5Aに示されているように、シャフト522は、固定部材102に設けられていてアイレット124と整列する案内534を貫通するのが良く、シャフト522は、フック形アンカーを組織中に動かすために案内534内で回転可能であるとともに/あるいは長手方向に並進可能である。フック形アンカー532を、アイレット124を通って食い込ませると、アイレット124からの圧力は、フック形アンカー532の棘部538を内方に折り曲げることができる(
図5A)。いったんアイレットを通ると、棘部538は、半径方向外方にホップして下に位置する組織に係合することができ、他方、フランジ536は、アイレット124を覆った状態に延びて固定部材102との係合状態を維持する(
図5B)。幾つかの実施形態では、フック形アンカー532は、異なる特徴を有するのが良くかつ/あるいは自己配備を含む他の機構を介して配備されるのが良い。
【0045】
種々の実施形態では、本明細書において開示する僧帽弁修復器具は、生まれつきの弁の能力を回復することができるようにするこれら僧帽弁修復器具の能力を高めるための追加の要素を有するのが良い。
図6A及び
図6Bは、例えば、本技術の追加の実施形態に従って構成された弁輪形成術用器具600A,600B(ひとまとめに「器具600」という)をそれぞれ示している。器具600は、
図1A~
図5Bを参照して上述した器具100,300,400,500の特徴と少なくとも全体として類似した種々の特徴を有するのが良い。例えば、器具600は、固定部材602及び固定部材602の下側縁部分604bを縮めるよう構成された1つ以上のばね機構体(図示せず)を有する。
図6Aに示されているように、弁輪形成術用器具600Aは、弁尖の逸脱を制限するよう固定部材602の開口部608の少なくとも一部分を横切って延びる1本、2本、又は3本以上のワイヤ又はアーム(個々にそれぞれ第1から第5のアーム640a,640b,640c,640d,640eとして示されており、ひとまとめに「アーム640」という)をさらに有するのが良い。これらアーム640は、弁輪の近くに位置する固定部材602の遠位端部分604bから半径方向内方にかつ/あるいは遠位側に(例えば、左心室に向かって)延びるのが良い。アーム640は各々、互いに独立であっても良く、隣り合うアーム640は、互いに連結されても良い。幾つかの実施形態では、アーム640のうち1本以上(例えば、第5のアーム640e)は、器具600Aの中央開口部608を完全に横切って(すなわち、植え込み時に生まれつきの弁輪を横切って)延びても良く、あるいは、固定部材602の互いに反対側の側部から延びる2本のアーム640を互いに連結してこれらが開口部608を横切って延びるようにしても良い。これらの実施形態では、アーム640は、当初、器具の中央開口部608を完全に直接的に横切って延びても良く、次に、器具600の縮みが減少するにつれて、経時的に生まれつきの弁輪を直径方向にわたって延びても良く、アーム640は、固定部材602からさらに遠ざかって遠位側の方向に心室に向かって曲がっても良い。器具600の開口部608を横切って延びる互いに連結状態にあるアーム640は、所定の力がこれらアームに加えられたときに(例えば、後の時点で人工置換弁を配置するために)所望ならばアーム640が千切れて互いに分離することができるようにするための弱体化領域を作る特徴部(例えば、刻み目、ミシン目)をさらに有するのが良い。
【0046】
図6Bに示されているように、幾つかの実施形態では、アーム640の近位側区分は、生まれつきの尖の基部のところの内方成長を促進するとともに生まれつきの尖のための無外傷性表面を提供するようファブリック(例えばePTFE)のスカート又はヘム642又は組織によって互いに接合されるのが良い。このファブリックヘム642はまた、生まれつきの尖組織、例えば交連及び裂け目の少ない領域における封止具合を高める可能性がある。アーム640の遠位端部もまた、無外傷性表面(図示せず)を提供するようファブリック又は組織で覆われるのが良い。
【0047】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示する器具は、生まれつきの尖の接合を助ける構造的特徴を有するのが良い。
図7は、例えば、本技術の幾つかの実施形態に従って構成された心臓弁修復器具700(「器具700」)を示している。器具700は、
図1A~
図6Bを参照して上述した器具100,300,400,500,600の特徴と少なくとも全体として類似した種々の特徴を有する。例えば、器具700は、上側縁部分704a及び下側メッシュ部分704bを備えた心房固定部材702と、固定部材702の下側縁部分704bを縮めるよう構成された1つ以上のばね機構体720とを有する。固定部材702は、メッシュフレーム706を有するのが良く、オプションとしての縫合糸リング715が組織内方成長後における固定部材702の配備、再捕捉、及び/又はシンチングを容易にするようメッシュフレーム周りに延びている。
図7に示されているように、器具700は、固定部材702の下側縁部分704bから遠ざかる遠位側の方向にかつ固定部材702から中央ルーメン708中に半径方向内方に延びる接合構造体744(「バッフル」又は「接合部材」ともいう)をさらに有し、接合構造体744は、生まれつきの弁口の一部分を閉塞するよう構成されている。接合構造体744は、心収縮中、第1の生まれつきの尖の少なくとも一部分に接合するよう構成された前側表面746及び第2の生まれつきの尖の少なくとも一部分を変位するよう構成された後側表面748を有する。例えば、僧帽弁内に埋め込まれると、接合構造体744は、前尖のための前側接合表面746を提供するよう後尖のP2部分の前に位置決めされるのが良い。種々の実施形態では、接合構造体744は、心周期中、実質的に静止状態である(生まれつきの尖とは異なり、動きがほとんどない状態から全くない状態までである)。幾つかの実施形態では、接合構造体744は、生まれつきの尖と同様、心周期中に動く。
【0048】
適当なバッフル構造体が2018年7月24日に出願された国際出願PCT/US2018/043566号明細書(発明の名称:PROSTHETIC LEAFLET DEVICE )に開示されている。これらの実施形態及び他の実施形態では、本明細書に開示した器具は、生まれつきの尖によって閉塞されてはいない弁口の一部分を閉塞するよう固定部材から吊るされた1つ又は2つ以上の互いに異なる空間充填要素を有するのが良い。例えば、器具は、弁の交連のところで固定部材に連結された舌形インフレート可能要素を有するのが良い。他の実施形態では、器具は、接合を容易にするよう固定部材から延びる互いに異なる形式の空間充填要素を有するのが良い。
【0049】
種々の実施形態では、器具は、弁輪中への人工置換弁の将来における配置を可能にするためのリング又はベースとしての役目を果たすことができる。この器具は、この中に設けられる人工弁を適切に保持するのに適した最終サイズ(すなわち、ばね要素がその弛緩状態にあるとき)及びばね強度を有する。この器具はまた、僧帽弁逆流の持続性のある長期間減少を可能にするための縁と縁を突き合わせて接合する(edge-to-edge)低侵襲の修復法と組み合わせ可能である。
【0050】
本明細書において開示した弁形成術用器具は、生まれつきの僧帽弁に接近するために大腿静脈、大腿動脈からの種々のカテーテル利用方式により送達することができる。器具の三尖弁バージョンを頸静脈から送達することができる。器具はまた、低侵襲外科的経心尖又は経心房方式又は開放手術による配置法により送達しても良い。送達のため、ばね要素は、送達状態における器具の全体的直径を増大させないようにするために固定部材から遠位側に折り曲げられるのが良い。ばね要素又は生体吸収性材料はまた、固定部材の取り付け箇所相互間の区分が器具を押しつぶして送達及び/又は回収のための詰め込みを助ける場合、遠位側に(固定部材の内部から離れる方向に)自然にたためるよう形作られるのが良い。
【0051】
実施態様
〔実施態様項1〕
僧帽弁修復器具であって、
左心房内で生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成された心房固定部材を有し、上記心房固定部材は、
上記生まれつきの僧帽弁輪から間隔を置いた状態で上記心房内に位置決めされるよう構成された上側縁部分と、
上記生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置決めするよう構成された下側縁部分とを有し、
上記心房固定部材は、送達状態から配備状態に拡張するよう構成され、
上記下側縁部分に結合されたばね機構体を有し、上記ばね機構体は、
第1の長さが上記配備状態において上記心房固定部材の寸法に一致する伸長状態及び上記第1の長さよりも短い第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
植え込み時、上記ばね機構体は、上記心房固定部材の上記下側縁部分を縮めて上記心房固定部材に固着されている上記生まれつきの僧帽弁輪の断面寸法が減少するようになっている、僧帽弁修復器具。
〔実施態様項2〕
上記ばね機構体は、上記固定部材の上記下側縁部分の周囲を包囲している、実施態様項1記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項3〕
上記心房固定部材は、この心房固定部材を貫通して延びる中央ルーメンを備え、
上記ばね機構体は、上記中央ルーメンを横切る上記心房固定部材の互いに反対側の側部相互間に延びている、実施態様項1又は2記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項4〕
上記ばね機構体は、
第1のばね力を発揮する第1の予備引き伸ばし状態に保持された第1のばね部分と、
上記第1のばね力とは異なる第2のばね力を発揮する第2の予備引き伸ばし状態に保持された第2のばね部分とを含む、実施態様項1~3のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項5〕
上記ばね機構体の少なくとも一部分に設けられた生体適合性材料をさらに有し、上記生体適合性材料は、上記ばね機構体の遅延縮み状態をもたらすよう経時的に分解するよう構成されている、実施態様項1~4のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項6〕
上記心房固定部材は、血液がこの心房固定部材を通過することができるよう構成されている中央ルーメンを備えたメッシュフレームを有する、実施態様項1~5のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項7〕
上記メッシュフレームの少なくとも一部分を覆って延びる覆いをさらに有する、実施態様項6記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項8〕
上記メッシュフレームから外方に突き出た複数のクリートをさらに有し、上記クリートは、組織固定を促進するよう構成されている、実施態様項6記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項9〕
上記心房固定部材の上記下側縁部分に沿って設けられた複数の固着要素をさらに有し、上記固着要素は、上記固定部材を心房壁に当てて位置決めされた後、上記生まれつきの僧帽弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成されている、実施態様項1~8のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項10〕
上記心房固定部材は、上記下側縁部分に沿って設けられた複数のアイレットを有し、
上記固着要素は、上記アイレットを貫通するよう構成された螺旋コイル形アンカーである、実施態様項9記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項11〕
上記心房固定部材は、上記下側縁部分に沿って設けられた複数のアイレットを有し、
上記固着要素は、上記アイレットを貫通するよう構成されたフック形アンカーである、実施態様項9記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項12〕
上記心房固定部材は、組織内方成長を容易にするための窒化物を主成分とするナノマトリックス被膜を有する、実施態様項1~11のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項13〕
上記心房固定部材は、上記左心房の前壁と上記左心房の後壁との間に差し向けられるよう構成されている長軸を備えた卵形のメッシュフレームを有する、実施態様項1~12のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項14〕
上記心房固定部材の上記上側縁部分に沿って位置決めされるとともに送達器具への連結を容易にするよう構成された送達取り付け特徴部をさらに有する、実施態様項1~13のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項15〕
上記心房固定部材は、血液がこの心房固定部材を通過することができるよう構成された中央ルーメンを備え、
上記僧帽弁修復器具は、弁輪の逸脱を制限するよう上記中央ルーメンの少なくとも一部分を横切って延びる複数のアームをさらに有する、実施態様項1~14のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項16〕
上記下側縁部分から上記中央ルーメンに向かって内方に延びるとともに上記アーム相互間に位置決めされたスカートをさらに有し、上記スカートは、生まれつきの尖と共に組織内方成長を促進するよう構成されている、実施態様項15記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項17〕
上記アームのうちの少なくとも1本は、上記中央ルーメンを完全に横切って延び、上記ばね機構体の縮みにより、上記アームは、上記上側縁部分から遠ざかる方向に上記心房固定部材から遠ざかるよう曲がる、実施態様項15記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項18〕
上記心房固定部材は、血液がこの心房固定部材を通過することができるように構成された中央ルーメンを備え、
上記僧帽弁修復器具は、弁輪の逸脱を制限する上記中央ルーメンを完全に横切って延びる少なくとも1本のアームをさらに有し、
上記アームは、弱体化領域を有し、上記弱体化領域は、所定の力が上記弱体化領域に与えられると千切れるよう構成されている、実施態様項1~17のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項19〕
上記心房固定部材102の周囲に沿ってぐるりと延びるとともに、引き締められて上記心房固定部材の断面領域を減少させるよう構成された縫合糸リングをさらに有する、実施態様項1~18のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項20〕
上記心房固定部材から遠ざかってかつ上記心房固定部材から半径方向内方に延びる接合構造体をさらに有し、上記接合構造体は、
心収縮期中、第1の生まれつきの尖に接合するよう構成された前面と、
第2の生まれつきの尖の少なくとも一部分を変位させるよう構成された後面とを有し、
上記接合構造体は、心周期中、実質的に静止している、実施態様項1~19のうちいずれか一に記載の僧帽弁修復器具。
〔実施態様項21〕
心臓弁修復器具であって、
心臓の室内で生まれつきの弁輪の近くに位置する心組織に係合するよう構成された固定部材を有し、上記固定部材は、
メッシュフレームを有し、上記メッシュフレームを貫通して中央ルーメンが形成され、
上記生まれつきの弁輪から間隔を置いて配置されるよう構成された近位縁部分を有し、
上記生まれつきの弁輪の近くに位置決めされるよう構成された遠位縁部分を有し、
上記遠位縁部分に結合されたばね機構体を有し、
上記ばね機構体は、第1の長さを呈する予備引き伸ばし状態及び、上記第1の長さより短い上記第2の長さを呈する弛緩状態を有し、
上記ばね機構体が上記弛緩状態に動くと、上記ばね機構体は、上記遠位縁部分を内方に引き寄せて上記心房固定部材の上記生まれつきの弁輪の寸法を減少させ、その結果、上記心房固定部材に固着されている上記生まれつきの僧帽弁輪の断面寸法が減少するようになっている、心臓弁修復器具。
〔実施態様項22〕
上記ばね機構体は、上記遠位縁部分の周囲に沿ってぐるりと延びている、実施態様項21記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項23〕
上記ばね機構体は、上記中央ルーメンの弦長を横切って延びる少なくとも1つのばね部品を含む、実施態様項21又は22記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項24〕
上記ばね機構体は、
上記予備引き伸ばし状態において第1のばね力を発揮する第1のばね部分と、
上記予備引き伸ばし状態において第2のばね力を発揮する第2のばね部分とを有し、上記第1のばね力は、上記第2のばね力とは異なっている、実施態様項21~23のうちいずれか一に記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項25〕
上記ばね機構体を上記予備引き伸ばし状態に保持するよう構成された生体適合性材料をさらに有する、実施態様項21~24のうちいずれか一に記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項26〕
上記メッシュフレームの少なくとも一部分を覆って延びる覆いと、
上記メッシュフレームから外方に突き出た複数のクリートとをさらに有し、上記クリートは、組織固定を促進するよう構成されている、実施態様項21~25のうちいずれか一に記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項27〕
上記心房固定部材の上記下側縁部分に沿って設けられた複数の固着要素をさらに有し、上記固着要素は、上記生まれつきの弁輪の近くに位置する組織に係合するよう構成されている、実施態様項21~26のうちいずれか一に記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項28〕
上記複数の固着要素は、上記生まれつきの心臓弁の三角部及びP2領域と整列するよう構成された3つの固着部材から成る、実施態様項27記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項29〕
弁輪の逸脱を制限するよう上記中央ルーメンの少なくとも一部分を横切って延びる複数のアームをさらに有する、実施態様項21~28のうちいずれか一に記載の心臓弁修復器具。
〔実施態様項30〕
弁修復器具を生まれつきの僧帽弁内に配備する方法であって、上記方法は、
僧帽弁修復器具の固定部材を左心房内の心房壁に当てた状態に位置決めして上記固定部材が生まれつきの僧帽弁輪を包囲するようにするステップを含み、上記固定部材は、血液を上記生まれつきの僧帽弁中に流入させる中央ルーメンを形成し、
上記固定部材の遠位縁部分を上記生まれつきの僧帽弁輪の組織に係合させて上記遠位縁部分に結合されているばね機構体が予備引き伸ばし状態において上記生まれつきの僧帽弁輪のところに位置決めされるようにするステップを含み、上記ばね機構体は、上記遠位縁部分及びこの遠位縁部分に係合した上記組織を内方に引き寄せて上記生まれつきの僧帽弁輪の寸法を減少させる弛緩状態に動くよう構成されている、方法。
〔実施態様項31〕
上記遠位縁部分を係合させる上記ステップは、上記遠位縁部分に結合されている固着要素を上記生まれつきの僧帽弁輪の上記組織中に伸長させるステップを含む、実施態様項30記載の方法。
〔実施態様項32〕
前記固着要素を前記組織中に伸長させる前記ステップは、
第1及び第2の固着要素を三角部の近くのところに係合させるステップと、
第3の固着要素を前記生まれつきの僧帽弁のP2領域の近くのところに係合させるステップとを含む、実施態様項31記載の方法。
【0052】
結論
本技術の実施形態の上述の説明は、網羅的ではなく、あるいは本技術を上記において開示した形態そのものに限定するものではない。本技術の特定の実施形態及び実施態様を例示目的で上述したが、当業者であれば理解されるように、種々の均等な改造が本技術の範囲内で可能である。例えば、ステップが所与の順序で提供されているが、変形実施形態は、ステップを異なる順序で実施することができる。本明細書において説明した種々の実施形態はまた、別の実施形態を提供するよう組み合わせ可能である。
【0053】
上記のことから、本技術の特定の実施形態が例示目的で本明細書において説明されているが、周知の構造及び機能は、本技術の実施形態の説明を不必要に不明瞭にするのを避けるために細部が示されておらず又は説明されていない。文脈上許容される場合、単数形又は複数形の用語は、それぞれ、複数形又は単数形の用語を含むことができる。
【0054】
さらに、用語「又は」が2つ又は3つ以上のアイテムのリストを参照して他のアイテムから排除される単一のアイテムのみを意味しているものと明示的に限定されていない限り、かかるリストにおける「又は」の使用は、(a)リスト中の任意の単一のアイテム、(b)リスト中のアイテムの全て、又は(c)リスト中のアイテムの任意の組み合わせを含むものと解されるべきである。加うるに、原文明細書において用いられている“comprising”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)は、少なくとも列記された特徴を含むものとして意味するよう明細書全体を通じて用いられており、したがって、任意の多数の同一の特徴及び/又は追加の種類の他の特徴があらかじめ排除されない。また、理解されるように、特定の実施形態を例示目的で本明細書において説明したが、本技術から逸脱することなく種々の改造を行うことができる。さらに、本技術のある特定の実施形態と関連した利点をこれらの実施例の関連で説明したが、他の実施形態もまた、かかる利点を奏することができ、必ずしも全ての実施形態が本技術の範囲に属するかかる利点を奏する必要はない。したがって、開示内容及び関連の技術は、本明細書において明示的に図示されておらず又は説明されていない他の実施形態を含むことができる。