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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】制御方法、プログラム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20241128BHJP
【FI】
G16H80/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021567241
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046287
(87)【国際公開番号】W WO2021131794
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】62/954,225
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】三谷 綾香
(72)【発明者】
【氏名】海上 勇二
(72)【発明者】
【氏名】渕上 哲司
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0035492(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0392162(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0361917(US,A1)
【文献】特表2018-533103(JP,A)
【文献】星野 一正,いのちは誰のもの-自然死と尊厳死と安楽死と慈悲殺と,臨床外科,Vol.55 No.9,日本,金原 優 株式会社医学書院,2000年09月20日,pp.1083-1088,ISSN 0386-9857
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおける制御方法であって、
患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトが分散台帳に格納されており、
前記制御方法は、
センサから得られる前記患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、
前記生体情報に対する前記医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、
取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記スマートコントラクトを実行させ、
前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する、
制御方法。
【請求項2】
前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータを取得する前において、
前記患者と前記医師とが合議した結果得た前記医療処置判断に基づき生成した前記スマートコントラクトを含む第3トランザクションデータを取得し、
前記第3トランザクションデータを含むブロックを前記分散台帳に格納する、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第3トランザクションデータには、前記第3トランザクションデータの真贋性を証明するための署名が含まれている、
請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記スマートコントラクトは、前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータを入力値として、前記医療処置判断を実行するための条件式を含む記述を有するプログラムである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1トランザクションデータと前記第2トランザクションデータとは、
前記スマートコントラクトのアドレスを示すコントラクトアドレスを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
さらに、
前記医師が前記患者に対して実施した医療処置に関する情報である医療処置結果情報を含む第4トランザクションデータを取得し、
前記医療処置結果情報を前記医療提案情報と紐づけて前記分散台帳に格納する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記生体情報は、心肺停止を示す情報であり、
前記診断結果は外傷なしを示す情報であり、
前記医療提案情報は、前記患者に施されるべき医療処置が心肺蘇生術の実施である旨を示す情報である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記分散台帳は、ブロックチェーン基盤上に構築される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
センサから得られる患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、
前記生体情報に対する医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、
取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記患者と前記医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトであって分散台帳に格納されているスマートコントラクトを実行させ、
前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する、ことを、
コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
プロセッサとメモリと分散台帳とを有する制御装置であって、
前記分散台帳には、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトが格納されており、
前記プロセッサは、センサから得られる前記患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、
前記プロセッサは、前記生体情報に対する前記医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、
前記プロセッサは、前記メモリを用いて、取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記スマートコントラクトを実行させ、
前記プロセッサは、前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブロックチェーン技術を用いた制御方法、プログラム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、サーバに集積した既知の医学的ファクトに評価を与えて、当該評価に基づいて最も効果的な医療提案を選択する医療判断支援システムが提案されている。
【0003】
ここで、医学的ファクトは、例えば医療診断、医学的所見、薬物治療、既往歴、補助的提案、検査値の評価、医学的妥当性、医学的結論、医療処置、医療上の指示、医療報告書、医療上の質問、症状、症状の群、テキストブロック、または、栄養上の勧告である。また、医学的ファクトは、例えば運動提案、ケアの提案、リハビリ提案、遺伝面、組織学所見、生理的過程、病理生理的過程の発見、質指標、治療勧告、療法勧告、プロセス提案、医療調査提案、患者アンケート、または、専門的なアンケート調査であってもよい。なお、医学的ファクトは、これらの任意の組合せから構成されてもよい。
【0004】
また、例えば特許文献2には、事前の患者の意思表明を含む医療情報を、信頼度及びプライバシーを考慮した上でインターネットを介して共有及び管理する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2で提案される手法では、患者本人による意思表明が可能な状況下において医療処置を決定することができるに過ぎない。つまり、患者が意思表示できない状況下においては、患者の意思を考慮して医療処置を決定することができない。
【0006】
それに対して、患者らの事前の意思表明が反映されたリビングウィルまたはPOLSTを用いて、患者本人による意思表明が不可能な状況下で患者の意思を考慮した医療処置を決定する方法がある(例えば非特許文献1)。ここで、POLSTは、Physician Orders for Life-Sustaining Treatmentの略である。POLSTは、患者の人生の最終段階における蘇生処置を含む医療処理に関する医師による指示文書であり、蘇生不要指示書であるDNAR(Do Not Attempt Resuscitate)が含まれる。そして、医師は、「生命を脅かす疾患」に直面している患者に対して、心肺蘇生処置を行うか否かなど実施する医療処置の判断をPOLSTのもとに行うことができる。なお、DNARにおいて癌の末期などで心停止ないし呼吸停止した際に心肺蘇生を行わないという特別な指示がある場合、医師は、DNARに従って心肺蘇生を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-516231号公報
【文献】特表2015-507282号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】”生命維持治療に関する医師による指示書(Physician Orders for Life-sustaining Treatment, POLST)とDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示”https://www.jsicm.org/pdf/DNAR20161216_kangae_02.pdf(2020/03/13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示されるPOLSTを用いたとしても、患者本人による意思表明が不可能な状況下では患者の意思を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できない。つまり、実際に患者が意思表示できない状況になった時において、POLSTなどに予め反映された患者の意思が実際の医療処置に考慮されたことを検証できない。
【0010】
このため、このような状況下において、患者の意思を無視した医療処置が行われた場合、その妥当性を検証することもできないし、その処置の責任の所在もわからない。
【0011】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる制御方法、プログラム及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の制御方法は、システムにおける制御方法であって、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトが分散台帳に格納されており、前記制御方法は、センサから得られる前記患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、前記生体情報に対する前記医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記スマートコントラクトを実行させ、前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する。
【0013】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の制御方法等によれば、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる制御方法、プログラム及び制御装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態に係る医療処置管理システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る患者端末の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、ブロックチェーンのデータ構造を示す説明図である。
図4図4は、実施の形態に係る医師端末の構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る分散台帳に保持されるブロックチェーンネットワーク内のアドレス構成を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る第3トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る容体トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。
図8図8は、実施の形態に係る見解トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。
図9図9は、実施の形態に係る医療判断支援スマートのアルゴリズムを概念的に示す図である。
図10図10は、実施例1に係る医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムを概念的に示す図である。
図11図11は、実施例2に係る医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムを概念的に示す図である。
図12図12は、実施の形態に係るサーバ装置の構成の一例を示すブロック図である。
図13A図13Aは、実施の形態に係る医療処置管理システムの患者の意思表明を分散台帳に格納するまでの動作の概要を示す図である。
図13B図13Bは、本実施の形態に係る医療処置管理システムの分散台帳に格納された患者の意思に沿った医療措置を決定して実施したかを検証可能に記録するまでの動作の概要を示す図である。
図14図14は、実施の形態に係る医療処置管理システムにより医療判断支援スマートコントラクトが生成されて稼働するまでのシーケンスを示す図である。
図15図15は、実施の形態に係る医療判断支援スマートコントラクトが実行され、医療処置の実施結果が記録されるまでのシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の一実施態様の制御方法は、システムにおける制御方法であって、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトが分散台帳に格納されており、前記制御方法は、センサから得られる前記患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、前記生体情報に対する前記医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記スマートコントラクトを実行させ、前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する。
【0017】
このように、患者の事前の意思表明を考慮して患者の容体等から医療処置の提案を、一意に決定するスマートコントラクトに、患者本人による意思表明が不可能な状況下での医療処置の提案をさせることができる。これにより、実際に行った医療処置とスマートコントラクトに提案させた医療処置とを後日比較することができる。よって、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる。
【0018】
また、例えば、前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータを取得する前において、前記患者と前記医師とが合議した結果得た前記医療処置判断に基づき生成した前記スマートコントラクトを含む第3トランザクションデータを取得し、前記第3トランザクションデータを含むブロックを前記分散台帳に格納してもよい。
【0019】
これにより、患者の事前の意思表明を考慮して当該スマートコントラクトを生成して分散台帳に格納することができる。
【0020】
ここで、例えば、前記第3トランザクションデータには、前記第3トランザクションデータの真贋性を証明するための署名が含まれていてもよい。
【0021】
また、例えば、前記スマートコントラクトは、前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータを入力値として、前記医療処置判断を実行するための条件式を含む記述を有するプログラムであってもよい。
【0022】
また、例えば、前記第1トランザクションデータと前記第2トランザクションデータとは、前記スマートコントラクトのアドレスを示すコントラクトアドレスを含む。
【0023】
また、例えば、さらに、前記医師が前記患者に対して実施した医療処置に関する情報である医療処置結果情報を含む第4トランザクションデータを取得し、前記医療処置結果情報を前記医療提案情報と紐づけて前記分散台帳に格納してもよい。
【0024】
これにより、実際に行った医療処置を分散台帳に格納することで、実際に行った医療処置とスマートコントラクトに提案させた医療処置との比較を、より信頼性を伴って行うことができる。よって、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる。
【0025】
ここで、例えば、前記生体情報は、心肺停止を示す情報であり、前記診断結果は外傷なしを示す情報であり、前記医療提案情報は、前記患者に施されるべき医療処置が心肺蘇生術の実施である旨を示す情報であってもよい。
【0026】
また、前記分散台帳は、ブロックチェーン基盤上に構築されてもよい。
【0027】
また、本開示の一態様に係る制御装置は、プロセッサとメモリと分散台帳とを有する制御装置であって、前記分散台帳には、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトが格納されており、前記プロセッサは、センサから得られる前記患者の生体情報を含む第1トランザクションデータを取得し、前記プロセッサは、前記生体情報に対する前記医師の診断結果に関する情報を含む第2トランザクションデータを取得し、前記プロセッサは、前記メモリを用いて、取得した前記第1トランザクションデータ及び前記第2トランザクションデータに含まれる前記生体情報及び前記診断結果に基づき、前記スマートコントラクトを実行させ、前記プロセッサは、前記スマートコントラクトを実行させることで得られた、前記患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する。
【0028】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。つまり、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本開示は、請求の範囲の記載に基づいて特定される。したがって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、本開示の課題を達成するために必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成する構成要素として説明される。
【0029】
(実施の形態)
まず、本開示のシステム構成について説明する。
【0030】
[1. システム構成]
本開示の医療処置管理システムは、ブロックチェーン基盤上に構築される信頼性及び透明性の高い分散台帳に、患者の意思表明を記録し、患者の事前の意思表明を汲み取った医療処置をブロックチェーン上のスマートコントラクトに自律的に判定させて医療提案情報として出力させる。また、本開示の医療処置管理システムは、判定した医療処置と医師が実施した医療措置とを紐づけて分散台帳に記録する。これにより、医師が、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを高い信頼性をもって検証できる。
【0031】
以下、図面を参照しながら実施の形態に係る医療処置管理システム等の説明を行う。
【0032】
[1.1 医療処置管理システム1の全体構成]
図1は、本実施の形態に係る医療処置管理システム1の全体構成を示す図である。
【0033】
医療処置管理システム1は、図1に示すように、1以上の患者端末10と、1以上の医師端末20と、1以上のサーバ装置30とを備える。これらは、通信ネットワーク40で接続されている。
【0034】
1以上の患者端末10と1以上の医師端末20と1以上のサーバ装置30とは、ブロックチェーンのトランザクションデータ及びブロックが電子的に記録される分散台帳を有する記憶装置と接続する。1以上の患者端末10と1以上の医師端末20と1以上のサーバ装置30とは、それぞれ記憶装置と通信ネットワーク40を介して接続されていてもよいし、内部に記憶部として備えてもよい。
【0035】
このようにして、1以上の患者端末10と1以上の医師端末20と1以上のサーバ装置30とは、ブロックチェーンネットワークを構成する。
【0036】
[1.2 患者端末10の構成]
患者端末10は、例えば患者が使用するPC(Personal Computer)等の端末であるが、これに限られない。患者端末10は、分散台帳を有し、ブロックチェーンネットワークを構成することができ、かつ、患者が使用するまたは患者と直接通信を行うことができれば、端末に限らずサーバであってもよい。
【0037】
図2は、本実施の形態に係る患者端末10の構成の一例を示すブロック図である。
【0038】
患者端末10は、図2に示すように、通信部101と、センサ情報取得部102と、スマートコントラクト生成部103と、ブロックチェーン制御部104と、表示部105と、記憶部106とを備える。
【0039】
<通信部101>
通信部101は、通信ネットワーク40を介して、医師端末20及びサーバ装置30と通信を行う。また、通信部101は、患者が使用するキーボード、マイクなどの入力装置と通信する。
【0040】
通信部101は、例えば、患者の操作等により入力されるテキストデータ、音声データを取得したり、表示部105とインタラクティブに患者により入力されるデータを取得したりする。
【0041】
<センサ情報取得部102>
センサ情報取得部102は、通信部101を介して、患者端末10と接続したセンサ群からの情報であるセンサ情報を取得する。ここで、センサ情報は、患者の容体を示すために用いられる情報であり、医学的ファクトを示す情報である。センサ情報は、センサ群から得られる患者の生体情報であってもよい。生体情報は、患者の心拍数、血糖値、認知機能評価、呼吸数といった患者のバイタルデータを示す。
【0042】
センサ情報取得部102は、取得したセンサ情報を、その内容に応じて、スマートコントラクト生成部103、ブロックチェーン制御部104、表示部105、または記憶部106へ送信する。
【0043】
<スマートコントラクト生成部103>
スマートコントラクト生成部103は、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断に基づき、医療判断支援スマートコントラクトを生成する。ここで、スマートコントラクトは、ブロックチェーン上で実行可能なプログラムであり、一意の入力値に対して一意の出力を返すプログラムである。そして、医療判断支援スマートコントラクトは、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトである。医療判断支援スマートコントラクトは、実行されることで患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力することができる。
【0044】
本実施の形態では、スマートコントラクト生成部103は、通信部101を介して取得した医療提案サブセットなどのデータを用いて、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムをプログラム化することで、医療判断支援スマートコントラクトを生成する。そして、スマートコントラクト生成部103は、生成した医療判断支援スマートコントラクトをブロックチェーン制御部104へ送信する。なお、医療提案サブセットは、提案可能な医療処置の組み合わせを示すデータである。
【0045】
ここで、医療判断支援スマートコントラクトを生成する方法の一例について説明する。
【0046】
まず、スマートコントラクト生成部103は、通信部101を介して、サーバ装置30から医療提案サブセットなどのデータを取得する。次いで、スマートコントラクト生成部103は、患者と医師とが合議しながら、表示部105とインタラクティブに患者により入力される医療判断支援スマートコントラクトの内容を示すデータを取得し、医療提案サブセットに基づいて、医療判断支援スマートコントラクトを生成する。より詳細には、スマートコントラクト生成部103は、患者端末10から取得したセンサ情報と医師端末20から取得した医学的ファクトとを入力値として、入力値に対する判断を行う条件式と、その条件式を構成する定数と、条件式の入力及び出力結果に対応する変数及び定数とを導出する。そして、スマートコントラクト生成部103は、導出した条件式、変数及び定数を用いて、ブロックチェーン上で実行可能な、一意の入力値に対して一意の出力を返すプログラムに編集することで、医療判断支援スマートコントラクトを生成する。
【0047】
なお、本実施の形態では、スマートコントラクト生成部103は、Ethereumベースのブロックチェーン上で実行可能なスクリプト言語であるSolidityで記述した条件式と、導出した定数及び変数へのアクセス方法とを、バイナリ化されたプログラムとして生成する。そして、スマートコントラクト生成部103は、生成したバイナリ化されたプログラムを、医療判断支援スマートコントラクトとして、ブロックチェーン制御部104に送信する。
【0048】
<ブロックチェーン制御部104>
ブロックチェーン制御部104は、ブロックチェーンネットワークの形成、トランザクションデータの生成、分散台帳の同期またはコンセンサスアルゴリズムの実行を制御する。また、ブロックチェーン制御部104は、それぞれの制御結果を記憶部106に記憶する制御も行う。
【0049】
本実施の形態では、ブロックチェーン制御部104は、センサ情報取得部102から受信した例えばセンサから得られる患者の生体情報などのセンサ情報を含むトランザクションデータを生成する。また、例えば、ブロックチェーン制御部104は、スマートコントラクト生成部103が生成した医療判断支援スマートコントラクトを含むトランザクションデータを生成する。なお、以下では、センサから得られる患者の生体情報などのセンサ情報を含むトランザクションデータを、患者の容体を示すトランザクションデータまたは容体トランザクションデータと称する。また、医療判断支援スマートコントラクトを含むトランザクションデータを第3トランザクションデータとも称する。ブロックチェーン制御部104は、容体トランザクションデータを生成する際、宛先アドレスに、医療判断支援スマートコントラクトのアドレスを示すコントラクトアドレスを含める。詳細は後述する。
【0050】
ここで、ブロックチェーンのデータ構造について説明する。
【0051】
図3は、ブロックチェーンのデータ構造を示す説明図である。
【0052】
ブロックチェーンは、その記録単位であるブロックがチェーン(鎖)状に接続されたものである。それぞれのブロックは、複数のトランザクションデータと、直前のブロックのハッシュ値とを有している。具体的には、ブロックB2には、その前のブロックB1のハッシュ値が含まれている。そして、ブロックB2に含まれる複数のトランザクションデータと、ブロックB1のハッシュ値とから演算されたハッシュ値が、ブロックB2のハッシュ値として、ブロックB3に含められる。このように、前のブロックの内容をハッシュ値として含めながら、ブロックをチェーン状に接続することで、接続されたトランザクションデータの改ざんを有効に防止する。
【0053】
仮に過去のトランザクションデータが変更されると、ブロックのハッシュ値が変更前と異なる値になり、改ざんしたブロックを正しいものとみせかけるには、それ以降のブロックすべてを作り直さなければならず、この作業は現実的には非常に困難である。
【0054】
続いて、ブロックチェーンプラットフォームにスマートコントラクトの実装を前提としたEthereumを選択した場合を例にあげて説明する。
【0055】
ブロックチェーン制御部104は、規定のブロックチェーンプロトコルに即してPeer-to-Peerの通信を確立することで、ブロックチェーンネットワークの形成を制御する。
【0056】
また、ブロックチェーン制御部104は、スマートコントラクト生成部103が生成した医療判断支援スマートコントラクトのバイナリデータを受信し、これを内容データとして含むトランザクションデータを生成する。また、ブロックチェーン制御部104は、スマートコントラクト生成部103が生成したセンサ情報を受信し、これを含むトランザクションデータを生成する。なお、詳細は後述するが、ブロックチェーン制御部104は、トランザクションデータを生成する際、患者端末10に紐づくブロックチェーンアドレスを、宛先アドレスを送り先アドレスとして含める。そして、ブロックチェーン制御部104は、生成したトランザクションデータを患者端末10の分散台帳に格納(記録)する。
【0057】
このようにして、ブロックチェーン制御部104は、トランザクションデータの生成を制御する。生成されたトランザクションデータは、ブロックチェーンネットワーク内のアドレス間で送受信される。なお、生成したトランザクションデータは、ブロックチェーン制御部104または患者端末10固有の署名をさらに含む。
【0058】
また、ブロックチェーン制御部104は、生成したトランザクションデータの正当性について合意するためのコンセンサスアルゴリズムを実行し、正当性について合意された場合、当該トランザクションデータを含むブロックを分散台帳に記録する。本実施の形態では、ブロックチェーン制御部104は、コンセンサスアルゴリズムを実行することでブロックへの取り込みを確定させ、分散台帳に記録する。
【0059】
ところで、Ethereumなどでは、スマートコントラクトは、ブロックチェーン上に展開されるコードである。このため、スマートコントラクトのバイナリデータを含むトランザクションデータは、nullアドレスに送信されることで、スマートコントラクトをデプロイすることができる。なお、スマートコントラクトをデプロイするとは、スマートコントラクトの実態であるスマートコントラクトのプログラムをブロックチェーンネットワーク上に展開させることである。一方、スマートコントラクトを実行するための情報または履歴として残すための情報を含むトランザクションデータは、ブロードキャストされることで、コンセンサスアルゴリズムを経て、分散台帳に格納される。
【0060】
本実施の形態では、ブロックチェーン制御部104は、新たに生成したトランザクションデータを、ブロックチェーンネットワークを構成する他のノードである医師端末20とサーバ装置30に、当該トランザクションデータをブロードキャストする。そして、ブロックチェーン制御部104は、ブロックチェーンネットワークを構成するすべてのノードと同期して、新たに生成したトランザクションデータを分散台帳に格納する。また、ブロックチェーン制御部104は、ブロックチェーンネットワークを構成するすべてのノード間でコンセンサスアルゴリズムを実行することで新たに生成したトランザクションデータをブロックに取り込んで確定させるかどうかを判定する。
【0061】
このようにして、ブロックチェーン制御部104は、第3トランザクションデータを含むブロックを前記分散台帳に格納し、第3トランザクションデータには、第3トランザクションデータの真贋性を証明するための署名が含まれている。
【0062】
<表示部105>
表示部105は、患者の操作等により入力されるテキストデータ、音声データを取得したり、患者により入力されるデータをインタラクティブに表示する。表示部105は、さらに入力装置(不図示)を備えたインタフェースとして機能してもよい。
【0063】
また、表示部105は、通信部101を介して取得した医療提案サブセットなどのデータを用いて、医師と合議しながら、患者が意思表示できない状況における医療処置に対する事前の患者の意思表明を決めるための質問などを表示する。
【0064】
また、表示部105は、患者と医師とが合議した結果得た医療処置を表示したり、スマートコントラクト生成部103が生成した医療判断支援スマートコントラクトの内容を患者等のユーザが理解できる形で表示したりする。なお、表示部105は、視覚的な表示を行う場合に限らず、表示内容を聴覚的、触覚的にユーザへ伝えてもよい。
【0065】
<記憶部106>
記憶部106は、センサ情報取得部102が取得したセンサ情報、スマートコントラクト生成部103が生成した医療判断支援スマートコントラクト、患者の操作等により入力されるテキストデータ、音声データ、及び、患者により入力されるデータを記憶する。
【0066】
また、記憶部106は、分散台帳を有する図1に示す記憶装置であってもよい。この場合、記憶部106には、分散台帳領域が区画され、当該分散台帳領域に分散台帳を有すればよい。
【0067】
[1.3 医師端末20の構成]
医師端末20は、例えば医師が使用するPC等の端末であるが、これに限られない。医師端末20は、分散台帳を有し、ブロックチェーンネットワークを構成することができ、かつ、医師が使用するまたは医師と直接通信を行うことができれば、端末に限らずサーバであってもよい。
【0068】
図4は、本実施の形態に係る医師端末20の構成の一例を示すブロック図である。
【0069】
医師端末20は、図4に示すように、通信部201と、医師見解生成部202と、ブロックチェーン制御部203と、表示部204と、記憶部205とを備える。
【0070】
<通信部201>
通信部201は、通信ネットワーク40を介して、患者端末10及びサーバ装置30と通信を行う。また、通信部201は、医師が使用するキーボード、マイクなどの入力装置と通信する。
【0071】
通信部201は、例えば、医師の操作等により入力されるテキストデータ、音声データを取得したり、表示部204とインタラクティブに医師により入力されるデータを取得したりする。
【0072】
<医師見解生成部202>
医師見解生成部202は、医師の操作等により入力されるデータに基づき医師による診断結果を、医師による見解として生成する。医師による診断結果には、上述した医学的ファクトが示されている。
【0073】
本実施の形態では、医師見解生成部202は、センサから得られる前記患者の生体情報に対する医師の診断結果に関する情報を生成する。より詳細には、医師見解生成部202は、患者端末10から取得した生体情報に対する医師の診断結果を生成する。医師見解生成部202は、生成した医師の診断結果を、医療判断支援スマートコントラクトに即した数値または等号で記述される様式に変換する。医師見解生成部202は、変換した医師の診断結果を、医師の診断結果に関する情報としてブロックチェーン制御部203に送信する。
【0074】
また、医師見解生成部202は、医師の操作等により入力されるデータに基づき、医師が患者に対して実施した医療処置に関する情報である医療処置結果情報を、医師による見解として生成する。
【0075】
<ブロックチェーン制御部203>
ブロックチェーン制御部203は、ブロックチェーンネットワークの形成、トランザクションデータの生成、分散台帳の同期またはコンセンサスアルゴリズムの実行を制御する。また、ブロックチェーン制御部203は、それぞれの制御結果を記憶部205に記憶する制御も行う。
【0076】
本実施の形態では、ブロックチェーン制御部203は、医師見解生成部202が生成した医師の診断結果に関する情報を含むトランザクションデータを生成する。また、例えば、ブロックチェーン制御部203は、スマートコントラクト生成部103が生成した医療処置結果情報を含むトランザクションデータを生成する。なお、以下では、医師の診断結果に関する情報を含むトランザクションデータを、医師の見解を示すトランザクションデータまたは見解トランザクションデータと称する。また、医療処置結果情報を含むトランザクションデータを、医療処置実施結果トランザクションデータと称する。ブロックチェーン制御部203は、見解トランザクションデータを生成する際、宛先アドレスに、医療判断支援スマートコントラクトのアドレスを示すコントラクトアドレスを含める。詳細は後述する。
【0077】
なお、ブロックチェーン制御部203のその他の制御については、患者端末10におけるブロックチェーン制御部104と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
【0078】
<表示部204>
表示部204は、医師の操作等により入力されるテキストデータ、音声データを取得したり、医師により入力されるデータをインタラクティブに表示する。表示部204は、さらに入力装置(不図示)を備えたインタフェースとして機能してもよい。
【0079】
また、表示部204は、通信部101を介して取得した医療提案サブセットなどのデータを用いて、患者端末10に同期して、患者端末10が表示する質問を表示してもよい。患者端末10が表示する質問は、上述したように、患者が意思表示できない状況における医療処置に対する事前の患者の意思表明を決めるための患者への質問などである。
【0080】
<記憶部205>
記憶部205は、医師見解生成部202が生成した医師による見解、医師の操作等により入力されるテキストデータ、音声データ、及び、患者により入力されるデータを記憶する。
【0081】
また、記憶部205は、分散台帳を有する図1に示す記憶装置であってもよい。この場合、記憶部205には、分散台帳領域が区画され、当該分散台帳領域に分散台帳を有すればよい。
【0082】
[1.4 ブロックチェーンネットワーク内のアドレス構成]
図5は、本実施の形態に係る分散台帳に保持されるブロックチェーンネットワーク内のアドレス構成を示す図である。
【0083】
ブロックチェーンアドレスは、ブロックチェーンネットワークを構成するノードそれぞれに付与された情報であり、当該ノードを一意に特定できる情報である。図5に示される患者アドレス11は、患者端末10に付与されたブロックチェーンアドレスである。同様に、図5に示される医師アドレス21は、医師端末20に付与されたブロックチェーンアドレスであり、サーバアドレス31は、サーバ装置30に付与されたブロックチェーンアドレスである。
【0084】
一方、図5に示される医療判断支援コントラクトアドレス32は、ブロックチェーンネットワークにデプロイされた医療判断支援スマートコントラクトに与えれた固有のアドレスである。当該固有のアドレスを参照することができれば、医療判断支援スマートコントラクトを実行することができる。
【0085】
なお、図5に示すアドレス構成では、患者アドレス11、医師アドレス21、サーバアドレス31及び医療判断支援コントラクトアドレス32が、分散台帳に保持されることで、トランザクションデータを生成する際に利用可能であることを示している。
【0086】
[1.5 トランザクションデータのデータ構造]
本実施の形態では、トランザクションデータは、宛先アドレス、送信元アドレス、内容データを含んで構成されるが、これらの情報を含めば別の形態をとってもよい。
【0087】
図6は、本実施の形態に係る第3トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。第3トランザクションデータは、医療判断支援スマートコントラクトを含むトランザクションデータであり、患者端末10のブロックチェーン制御部104により生成される。医療判断支援スマートコントラクトは、上述したように、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを入力値として、医療処置判断を実行するための条件式を含む記述を有するプログラムである。
【0088】
図6に示すように、第3トランザクションデータは、宛先アドレス、内容データ及び送信元アドレスを含んで構成される。宛先アドレス及び送信元アドレスには、共に患者アドレス11が含まれる。Ethereumなどではスマートコントラクトをデプロイするためにトランザクションデータがnullアドレスに送信される必要があるためである。また、内容データには、医療判断支援スマートコントラクトバイナリプログラムすなわちバイナリ化されたプログラムとして生成された医療判断支援スマートコントラクトが含まれる。なお、内容データには、プログラム化された医療判断支援スマートコントラクトであればバイナリプログラムでなくてもよい。
【0089】
患者端末10は、このようなデータ構造の第3トランザクションデータを生成し、自分自身に送信することで、医療判断支援スマートコントラクトを、ブロックチェーンネットワークにデプロイする。なお、第3トランザクションデータの内容データには、さらに、第1トランザクションデータの真贋性を証明するための署名(不図示)が含まれる。
【0090】
続いて、医療判断支援スマートコントラクトへの入力となるトランザクションデータすなわち患者の容体を示すトランザクションデータと医師の見解を示すトランザクションデータとのデータ構造について説明する。以下、患者の容体を示すトランザクションデータと医師の見解を示すトランザクションデータとを容体トランザクションデータと見解トランザクションデータと称して説明する。
【0091】
図7は、本実施の形態に係る容体トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。
【0092】
図7に示すように、容体トランザクションデータは、宛先アドレス、内容データ及び送信元アドレスを含んで構成される。宛先アドレスには、医療判断支援コントラクトアドレス32が含まれ、送信元アドレスには、患者アドレス11が含まれる。また、内容データには、患者の容体を示す情報と、送信元である患者端末10の署名とが含まれる。患者の容体を示す情報は、例えば患者のバイタルデータなど患者の容体を示す医学的ファクトである。署名は、容体トランザクションデータの真贋性を証明するために用いられる。署名は、例えば患者の容体を示す値のダイジェスト値を秘密鍵で暗号化されたものであってもよい。この場合、公開鍵は別途分散台帳に格納され公開されていればよい。
【0093】
患者端末10は、このようなデータ構造の容体トランザクションデータを生成し、医療判断支援コントラクトアドレス32に送信する。
【0094】
図8は、本実施の形態に係る見解トランザクションデータのデータ構造を概念的に示す図である。
【0095】
図8に示すように、見解トランザクションデータは、宛先アドレス、内容データ及び送信元アドレスを含んで構成される。宛先アドレスには、医療判断支援コントラクトアドレス32が含まれ、送信元アドレスには、医師アドレス21が含まれる。内容データには、医師の見解を示す情報と、送信元である医師端末20の署名とが含まれる。医師の見解を示す情報は、例えば患者の容体に対する医師の診断結果であり、患者の容体を示す医学的ファクトに対して医療判断支援スマートコントラクトを実行させるための見解をさらに含んでいてもよい。署名は、見解トランザクションデータの真贋性を証明するために用いられる。署名は、例えば医師の見解を示す値のダイジェスト値を秘密鍵で暗号化されたものであってもよい。この場合、公開鍵は別途分散台帳に格納され公開されていればよい。
【0096】
医師端末20は、このようなデータ構造の見解トランザクションデータを生成し、医療判断支援コントラクトアドレス32に送信する。
【0097】
このような容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータが医療判断支援コントラクトアドレス32に送信されることで、医療判断支援スマートコントラクトを実行させることができる。これにより、医療判断支援スマートコントラクトに患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を含む医療提案トランザクションデータを出力させることができる。
【0098】
なお、医療提案トランザクションデータは、図示しないが、宛先アドレス、内容データ及び送信元アドレスを含んで構成される。内容データには、医療提案情報が含まれ、宛先アドレスには、医師アドレス21が含まれる。送信元アドレスには、医療判断支援コントラクトアドレス32または医療判断支援スマートコントラクトを実行させたノードのブロックチェーンアドレスが含まれる。
【0099】
続いて、本実施の形態に係る医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムの概要について説明する。
【0100】
[1.6 医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズム]
図9は、本実施の形態に係る医療判断支援スマートのアルゴリズムを概念的に示す図である。
【0101】
医療判断支援スマートコントラクトは、上述したように、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化されたスマートコントラクトである。実行させることで患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を出力する。ここで、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行することは、患者本人による意思表明が不可能な状況下において事前の患者の意思を考慮した患者に施されるべき医療処置を決定して出力することである。つまり、医療判断支援スマートコントラクトは、実行させることで、患者本人による意思表明が不可能な状況下において事前の患者の意思を考慮した患者に施されるべき医療処置を決定して医療提案情報として出力するようにプログラムされたスマートコントラクトである。
【0102】
より具体的には、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムは、図9に示すように、条件0~2で示されるような条件分岐と、条件により選択される医療提案サブセット1-1~2-2で示されるような医療処置の組み合わせを示す変数/定数とを含めて構成される。また、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムには、患者本人による意思表明が不可能な状況下における患者の容体を示す容体トランザクションデータとそれに対する医師の見解を示す見解トランザクションデータとが入力となる条件式を含む。さらに、これらのトランザクションデータに含まれる署名の正当性等を確認したことを条件として上記の条件0~2に進む条件式を含んでいる。また、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムには、これらのトランザクションデータが入力された場合に、患者に施されるべき医療処置に関する医療提案情報を一つの出力として導出される条件式も含まれている。
【0103】
換言すると、図9に示されるように、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムには、上記2つのトランザクションデータの入力ステップと、上記2つのトランザクションデータそれぞれに含まれる署名を確認する署名確認ステップとを含んでいる。また、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムは、条件0~2で示される3つの条件分岐による医療提案サブセットの選定ステップと、医療提案情報の出力ステップとを含んでいる。
【0104】
続いて、医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムの処理フローについて説明する。
【0105】
まず、患者の容体トランザクションデータと医師の見解トランザクションデータが医療判断支援コントラクトアドレス32に送信されると、医療判断支援スマートコントラクトの入力ステップが実行される。入力ステップでは、容体トランザクションデータに含まれる患者の容体を示す情報と見解トランザクションデータに含まれる医師の見解を示す情報とが、変数に代入される形式で保持される。
【0106】
次に、医療判断支援スマートコントラクトは、署名確認ステップを実行する。署名確認ステップでは、医療判断支援スマートコントラクトに定数として登録されているトランザクションデータの真贋性を証明するための署名と、容体トランザクションデータ、見解トランザクションデータそれぞれの内容データに含まれる署名とが一致するかの検証を行う。なお、トランザクションデータの真贋性を証明するための署名である登録済み署名は、医療判断支援スマートコントラクトがデプロイされる際に定数として登録される。
【0107】
署名確認ステップでは、検証の結果、登録済み署名と容体トランザクションデータ、見解トランザクションデータそれぞれの内容データに含まれる署名すなわち入力署名とが一致している場合のみ、次の選定ステップを実行する。一方、検証の結果、登録済み署名と入力署名とが一致しない場合には、処理を中断し、医療判断支援スマートコントラクトの変数を初期化する。つまり、医療判断支援スマートコントラクトの実行を中止する。なお、医療判断支援スマートコントラクトの実行を中止したことを、患者端末10及び医師端末20に通知してもよい。この場合、医療判断支援スマートコントラクトは、患者アドレス11及び医師アドレス21を含み、実行を中止したことを示すアラートトランザクションデータを生成すればよい。
【0108】
医療提案サブセットの選定ステップでは、医療判断支援スマートコントラクトに予め登録されている条件式に従って、予め登録されている複数の医療提案サブセットのうちから1つの医療提案サブセットを選択する。医療判断支援スマートコントラクトに予め登録されている条件式は、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行するための条件式である。この条件式に容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータに含まれる内容データを代入すると、1つの医療提案サブセットを選択する。
【0109】
図9に示す例では、条件0~2で示される3つの条件分岐それぞれにより2つのケースを選択している。このため、医療判断支援スマートコントラクトに予め登録されている条件式は3つであり、予め登録されている複数の医療提案サブセットは4つである。
【0110】
医療提案情報の出力ステップでは、選定ステップで選定した1つの医療提案サブセットを示す医療提案情報を内容データに含む医療提案トランザクションデータを生成して出力する。ここで、医療判断支援スマートコントラクトは、宛先アドレスには医師アドレス21、送信元アドレスには医療判断支援コントラクトアドレス32を含む医療提案トランザクションデータを生成する。
【0111】
医療提案トランザクションデータの内容データに含まれる医療提案サブセットは、医師端末20を介して医師に共有され、医師はこの医療提案サブセットに即した医療処置を実施する。
【0112】
なお、医療判断支援スマートコントラクトに、医療実施結果を記録ステップをさらに含めてもよい。また、医療判断支援スマートコントラクトと異なるスマートコントラクトに医療実施結果を記録ステップが記述されているとしてもよい。いずれのスマートコントラクトを用いる場合でも、上記の署名確認ステップと同様に、まず、医療提案トランザクションデータと医療提案サブセットに基づき医師により実施された医療処置を示すトランザクションデータとの署名を確認すればよい。そして、医療提案トランザクションデータに示される医療提案サブセットと医師により実施された医療処置とを紐づけて分散台帳に記録(格納)すればよい。
【0113】
(実施例1)
続いて、患者と医師とが合議した結果得た医療処置として現行POLST書式に即した医療処置サブセットが、医療判断支援スマートコントラクトに予め登録されている場合について説明する。
【0114】
図10は、実施例1に係る医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムを概念的に示す図である。図10には、医療判断支援スマートコントラクトが実行されることで、現行POLST書式に即した医療処置サブセットが選定されるアルゴリズムが概念的に示されている。
【0115】
まず、患者の容体トランザクションデータと医師の見解トランザクションデータが医療判断支援コントラクトアドレス32に送信されると、医療判断支援スマートコントラクトの入力ステップが実行される。入力ステップでは、患者本人による意思表明が不可能な状況下における患者の容体を示す情報と、その状況下での患者についての医師の見解を示す情報を入力値として保持する。
【0116】
次に、医療判断支援スマートコントラクトは、署名確認ステップを実行し、登録済み署名と、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータそれぞれの内容データに含まれる入力署名と一致しているかを確認することで、入力値の信頼性を検証する。
【0117】
次に、医療判断支援スマートコントラクトは、選定ステップを実行する。患者の容体が心肺停止を示す場合、事前条件を参照し外傷の影響を示すか否かに応じて患者及び医師が事前に合議した医療処置に即した医療提案サブセットを選択する。例えば、患者が心肺停止の状態で、かつ、患者に外傷の影響はないという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「すべての心肺蘇生術を実施」することを選択する。また、例えば、患者が心肺停止の状態で、かつ、患者に外傷により重度後遺症が残るという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、軽度の「心肺蘇生術」を実施することを選択する。
【0118】
一方、患者の容体が心配停止でないことを示す場合、事前条件を参照し重度後遺症が残るか否かに応じて患者及び医師が事前に合議した医療処置に即した医療提案サブセットを選択する。例えば、患者が心肺停止でない状態で、かつ、患者に重度後遺症が残るという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「苦痛緩和処理」を選択する。また、例えば、患者が心肺停止でない状態で、かつ、患者に重度後遺症はないという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「侵襲的医療を含む医療処置」を選択する。
【0119】
なお、医療判断支援スマートコントラクトに予め登録された医療処置サブセットそれぞれには、固有の識別子が保持されており、この識別子で選択された医療処置サブセットが示す医療処置の識別を図ることができる。このため、医療判断支援スマートコントラクトは、選択した医療処置サブセットを示す識別子を、出力ステップに伝達すればよい。
【0120】
出力ステップでは、選定ステップで選定した1つの医療提案サブセットを示す識別子を医療提案情報として内容データに含む医療提案トランザクションデータを生成して出力する。
【0121】
これにより、医師は医療提案トランザクションデータで示される医療提案サブセットに基づいた医療処置を実施することで、患者の事前の意思表明を考慮した医療処置を実施できる。
【0122】
なお、医療判断支援スマートコントラクトに、医療実施結果を記録ステップをさらに含んでいてもよい(不図示)。この場合、送信元アドレスに医師アドレス21、内容データに医療処置の実施結果を含むトランザクションデータが発行されるとする。医療判断支援スマートコントラクトは、記録ステップにおいて、選定した1つの医療提案サブセットを示す識別子と、医療処置の実施結果とを紐づけて、分散台帳に記録すればよい。
【0123】
(実施例2)
続いて、患者と医師とが合議した結果得た医療処置として現行リビングウィル書式に即した医療処置サブセットが、医療判断支援スマートコントラクトに予め登録されている場合について説明する。なお、以下では、実施例1と同様のところの説明は省略する。
【0124】
図11は、実施例2に係る医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムを概念的に示す図である。図11には、医療判断支援スマートコントラクトが実行されることで、現行リビングウィル書式に即した医療処置サブセットが選定されるアルゴリズムが概念的に示されている。
【0125】
まず、患者の容体トランザクションデータと医師の見解トランザクションデータが医療判断支援コントラクトアドレス32に送信されると、医療判断支援スマートコントラクトの入力ステップが実行される。入力ステップでは、患者本人による意思表明が不可能な状況下における患者の容体を示す情報と、その状況下での患者についての医師の見解を示す情報を入力値として保持する。
【0126】
次に、医療判断支援スマートコントラクトは、署名確認ステップを実行し、登録済み署名と、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータそれぞれの内容データに含まれる入力署名と一致しているかを確認することで、入力値の信頼性を検証する。
【0127】
次に、医療判断支援スマートコントラクトは、選定ステップを実行する。患者の容体から意識回復が見込めない場合、事前条件を参照し外傷と内臓損傷との有無に応じて患者及び医師が事前に合議した医療処置に即した医療提案サブセットを選択する。
【0128】
例えば、患者の意識回復が見込めない状態で、かつ、患者に外傷がなく内臓損傷もないという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「すべての心肺蘇生術を実施」することを選択する。また、例えば、患者の意識回復が見込めない状態で、かつ、患者に外傷はないものの内臓損傷があるという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「胃瘻による継続的な栄養補給を希望」を実施することを選択する。
【0129】
また、例えば、患者の意識回復が見込めない状態で、かつ、患者に外傷があるものの内臓損傷はないという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「点滴による水分補給を希望」を実施することを選択する。また、例えば、患者の意識回復が見込めない状態で、かつ、患者に外傷も内臓損傷もあるという医師の見解が示されている場合には、医療提案サブセットとして、「水分・栄養補給はせず自然な最期を迎え」てもらうことを選択する。
【0130】
なお、上記の実施例1及び実施例2では、現行POLST書式及び現行リビングウィル書式に基づいた医療判断支援スマートコントラクトのアルゴリズムの処理フローについて説明したが、これに限らない。
【0131】
医療判断支援スマートコントラクトには、さらに、医療処置の料金に応じて、処置内容を選択する処理フローを含んでいてもよい。また、医療判断支援スマートコントラクトには、医療処置の料金に応じて、処置内容を選択する処理フローを行う際、さらに、その保険金または患者自身の口座残高を参照する処理フローを含んでいてもよい。
【0132】
[1.7 サーバ装置の構成]
図12は、本実施の形態に係るサーバ装置30の構成の一例を示すブロック図である。
【0133】
サーバ装置30は、図12に示すように、通信部301と、記憶部302と、ブロックチェーン制御部303と、データベース部304と、ワーキングメモリ305とを備える。サーバ装置30は、プロセッサがメモリを用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。以下、各構成要素について説明する。
【0134】
<通信部301>
通信部301は、通信ネットワーク40を介して、患者端末10及び医師端末20と、医学的ファクトの通信を行う。また、通信部301は、サーバ装置30が受信した医学的ファクトを記憶部302に記録させてもよい。
【0135】
本実施の形態では、通信部301は、例えば、患者端末10から医療判断支援スマートコントラクトを含む第3トランザクションデータまたは容体トランザクションデータを取得する。また、通信部301は、医師端末20から見解トランザクションデータを取得したり、医療処置実施結果トランザクションデータを取得したりする。また、通信部301は、医療判断支援スマートコントラクトが出力した医療提案トランザクションデータを医師端末20に送信する。
【0136】
<記憶部302>
記憶部302は、例えば医療判断支援スマートコントラクトが出力した医療提案トランザクションデータを記憶する。また、記憶部302は、ブロックチェーン制御部303の制御結果を記憶する。
【0137】
なお、記憶部302は、分散台帳を有する図1に示す記憶装置であってもよい。この場合、記憶部302には、分散台帳領域が区画され、当該分散台帳領域に分散台帳を有すればよい。なお、記憶部302は、ワーキングメモリ305を有していてもよい。この場合、記憶部302には、ワーキングメモリ領域が区画されればよい。
【0138】
<ブロックチェーン制御部303>
ブロックチェーン制御部303は、ブロックチェーンネットワークの形成、トランザクションデータの生成、分散台帳の同期またはコンセンサスアルゴリズムの実行を制御する。また、ブロックチェーン制御部303は、それぞれの制御結果を記憶部302に記憶する制御も行う。
【0139】
本実施の形態では、ブロックチェーン制御部303は、容体トランザクションデータに含まれる患者の生体情報及び見解トランザクションデータに含まれる患者の生体情報に対する医師の診断結果とに基づき、医療判断支援スマートコントラクトを実行させる。また、ブロックチェーン制御部303は、医療判断支援スマートコントラクトを実行させることで医療判断支援スマートコントラクトから得られた、患者に施されるべき医療処置に関する提案情報を出力する。
【0140】
また、ブロックチェーン制御部303は、コンセンサスアルゴリズムを実行し、医師端末20から取得した医療処置実施結果トランザクションデータを分散台帳に格納する。
【0141】
また、ブロックチェーン制御部303は、医師端末20から取得した医療処置実施結果トランザクションデータと、医療判断支援スマートコントラクトが出力した医療提案トランザクションデータとを紐づける。より詳細には、ブロックチェーン制御部303は、医療処置実施結果トランザクションデータに含まれる医療措置実施結果と、医療提案トランザクションデータに含まれる医療提案サブセットとを紐づける情報を記憶部302に記憶させる。なお、ブロックチェーン制御部303は、医療措置実施結果と医療提案サブセットとを紐づけた情報を、医療判断支援スマートコントラクトとは別のスマートコントラクトを実行させて、分散台帳に格納させてもよい。
【0142】
ブロックチェーン制御部303のその他の制御については、患者端末10におけるブロックチェーン制御部104と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
【0143】
<データベース部304>
データベース部304は、医学的ファクトのデータベースとして機能する。データベース部304には、医学的ファクトとして、レセプトデータなどの医療情報が記録されていてもよい。
【0144】
また、データベース部304は、例えば、通信部301を介して、患者端末10及び医師端末20に、医学的ファクトうち提案可能な医療処置の組み合わせを示すデータを医療提案サブセットとして送信する。なお、データベース部304は、ブロックチェーン制御部303で受信したトランザクションに含まれる内容データに示される医学的ファクトについて管理し、記憶部302に記憶する。
【0145】
<ワーキングメモリ305>
ワーキングメモリ305は、サーバ装置30のオンメモリとして機能するメモリである。ワーキングメモリ305は、分散台帳に記録されたブロックを読み出して、スマートコントラクトを保持することで、スマートコントラクトを稼働させる。なお、ワーキングメモリ305は、スマートコントラクトを指し示すコントラクトアドレスを保持してもよい。
【0146】
本実施の形態では、ワーキングメモリ305は、医療判断支援スマートコントラクトを指し示すコントラクトアドレスである医療判断支援コントラクトアドレス32を保持してもよい。さらに、ワーキングメモリ305は、稼働状態の医療判断支援スマートコントラクトを保持してもよい。
【0147】
[1.8 医療処置管理システムの動作等]
次に、以上のように構成された医療処置管理システム1の動作の概要について説明する。
【0148】
図13Aは、本実施の形態に係る医療処置管理システム1の患者の意思表明を分散台帳に格納するまでの動作の概要を示す図である。
【0149】
まず、ステップS1において、医療処置管理システム1は、患者と医師とに、医療処置の合議を行わせる。より具体的には、医療処置管理システム1は、患者と医師とに、患者本人による意思表明が不可能な状況下における患者の意思に沿った医療処置を合議させる。
【0150】
本実施の形態では、患者端末10は、例えば現行POLST書式に即した医療処置サブセットを取得し、患者が意思表示できない状況における医療処置に対する事前の患者の意思表明を決めるための質問などを表示する。患者は、医師と合議しながら、患者端末10により表示される質問に答える形で、患者本人による意思表明が不可能な状況下における患者の意思に沿った医療処置を決定する。決定された医療処置は、患者と医師とが合議した結果得た、患者本人が事前に意思表明した医療処置判断となる。
【0151】
次に、ステップS2において、医療処置管理システム1は、ステップS2において医療処置の合議を行った結果に基づいて、医療判断支援スマートコントラクトの生成を行う。より具体的には、医療処置管理システム1は、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化された医療判断支援スマートコントラクトを生成する。
【0152】
次に、ステップS3において、医療処置管理システム1は、ステップS2において生成した医療判断支援スマートコントラクトの稼働を行う。より具体的には、医療処置管理システム1は、ステップS2において生成した医療判断支援スマートコントラクトを分散台帳に格納してデプロイすることで、医療判断支援スマートコントラクトを稼働させる。
【0153】
このように、医療処置管理システム1は、患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断を実行可能にプログラム化された医療判断支援スマートコントラクトを分散台帳に格納して稼働させることで、患者の意思表明を、分散台帳に格納する。
【0154】
図13Bは、本実施の形態に係る医療処置管理システム1の分散台帳に格納された患者の意思に沿った医療措置を決定して実施したかを検証可能に記録するまでの動作の概要を示す図である。
【0155】
まず、ステップS4では、患者が医療処置を必要とするインシデントが発生したとする。ここで、インシデントが発生したとは、ステップS1で医師と医療処置の合議を行った患者が医療処置を必要とし、患者のバイタルデータが異常であるなど医療処置管理システム1を利用する必要がある状況が発生したことを意味する。この場合、医療処置管理システム1は、患者のセンサ情報を含む容体トランザクションデータと患者の生体情報に対する医師の診断結果に関する情報を含む見解トランザクションデータとを生成する。
【0156】
次に、ステップS5では、医療判断支援スマートコントラクトが実行される。より具体的には、医療処置管理システム1は、ステップS4において生成した容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを分散台帳に格納することで、医療判断支援スマートコントラクトを実行させる。
【0157】
次に、ステップS6では、医療判断支援スマートコントラクトは、実行結果として、患者への医療処置提案を出力する。より具体的には、医療判断支援スマートコントラクトは、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを入力として、一意に決定された提案情報であって患者に施されるべき医療処置に関する提案情報を出力する。
【0158】
次に、ステップS7では、ステップS6において出力された患者に施されるべき医療処置に関する提案情報に基づいて、医師により患者への医療処置が実施される。医師は、患者へ実施した医療処置に関する情報を、医療処置の実施結果として医療処置管理システム1に入力する。
【0159】
最後に、ステップS8では、ステップS7における医療処置の実施結果が記録される。より具体的には、医療処置管理システム1は、ステップS7における医療処置の実施結果を、ステップS6において出力された患者に施されるべき医療処置に関する提案情報と対応させて分散台帳に格納する。
【0160】
このようにして、医療処置管理システム1は、患者の意思を反映した医療処置プロセスの改ざん困難性、信頼性を担保することができる。すなわち、医療処置管理システム1は、改竄が極めて困難なブロックチェーンに、患者の意思表明を含む医療処置判断と医療処置判断結果に基づく医療処置の実施結果とを参照可能に記録する。これにより、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる。
【0161】
[1.8.1 医療判断支援スマートコントラクトのデプロイシーケンス]
続いて、医療処置管理システム1において医療判断支援スマートコントラクトが生成されてデプロイされるまでのシーケンスについて説明する。
【0162】
図14は、本実施の形態に係る医療処置管理システム1により医療判断支援スマートコントラクトが生成されて稼働するまでのシーケンスを示す図である。
【0163】
まず、サーバ装置30は、医療提案サブセットを送信する(S101)。本実施の形態では、サーバ装置30は、患者の事前の意思表明に用いられるリビングウィル書式またはPOLST書式などに則した医学的ファクトと医療処置の組み合わせとを示す医療提案サブセットを送信する。
【0164】
次に、患者は患者端末10を、医師は医師端末20を用いて、患者と医師とで医療処置の合議を行う(S102)。ここでは、医療判断支援スマートコントラクトの生成にも用いられる医療処置判断すなわち患者本人が事前に意思表明した医療処置判断を患者と医師との合議により決定する。本実施の形態では、患者端末10は、リビングウィル書式またはPOLST書式など即した医学的ファクトと医療処置の組み合わせを患者に示しながら質問し、患者は医者と合議しながら、質問に答えることで医療処置判断を決定する。なお、患者端末10は、医療処置判断を決定する処理を行いながら、決定された医療処置判断に基づく医療判断支援スマートコントラクトを生成している。詳細については、図13AのステップS1において説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0165】
次に、患者端末10及び医師端末20は、ステップS102の合議が終了したかを判断する(S103)。
【0166】
ステップS103のおいて、ステップS102の合議が終了したと判断した場合(S103でYes)、医師端末20は、医師端末20の署名を送信する(S104)。
【0167】
次に、患者端末10は、ステップS104において送信された医師端末20の署名を取得する(S105)。
【0168】
次に、患者端末10は、ステップS102において患者と医師とが合議した結果得た医療処置判断に基づき医療判断支援スマートコントラクトを生成する(S106)。本実施の形態では、患者端末10は、ステップS102の合議において患者による医療処置判断の決定とともに、医療判断支援スマートコントラクト(のドラフト)を生成している。このため、患者端末10は、医師端末20の署名を取得することで、当該医療判断支援スマートコントラクトの生成を完了させるために、医療判断支援スマートコントラクトを例えばバイナリプログラムなどプログラム化する。
【0169】
次に、患者端末10は、ステップS106において生成した医療判断支援スマートコントラクトを含む第3トランザクションデータを生成する(S107)。本実施の形態では、患者端末10は、例えば図6に示すように、内容データにバイナリ化されたプログラムとして生成された医療判断支援スマートコントラクトを、宛先アドレス及び送信元アドレスに患者アドレス11を含む第3トランザクションデータを生成する。
【0170】
次に、患者端末10は、ステップS107において生成した第3トランザクションデータを自分自身に送信することで(S108)、患者端末10が構成するブロックチェーンネットワークに医療判断支援スマートコントラクトをデプロイする(S109)。
【0171】
次に、医師端末20及びサーバ装置30は、ステップS109においてデプロイされることで送信された第3トランザクションデータを取得する(S110)。
【0172】
次に、患者端末10、医師端末20及びサーバ装置30は、同期する。より具体的には、患者端末10、医師端末20及びサーバ装置30はそれぞれ、コンセンサスアルゴリズムを実行し、ステップS110で取得した第3トランザクションデータをブロックに取り込み、そのブロックを分散台帳に格納する。
【0173】
次に、患者端末10、医師端末20及びサーバ装置30は、医療判断支援スマートコントラクトを稼働させる(S112)。
【0174】
[1.8.2 医療判断支援スマートコントラクトの実行シーケンス]
続いて、医療処置管理システム1において医療判断支援スマートコントラクトが実行されることで医療提案が出力され、医師による医療処置の実施結果を記録するまでのシーケンスについて説明する。
【0175】
図15は、本実施の形態に係る医療判断支援スマートコントラクトが実行され、医療処置の実施結果が記録されるまでのシーケンスを示す図である。
【0176】
まず、患者端末10は、患者の生体情報などのセンサ情報を取得している(S201)。具体的には、患者端末10は、例えば、患者ないし患者に取り付けられたモニタデバイスから患者の生体情報などのセンサ情報を取得する。
【0177】
次に、患者端末10は、ステップS201で取得したセンサ情報に基づき、患者のバイタルが異常であるかを確認する(S202)。
【0178】
ステップS202において患者のバイタルが異常である場合(S202でYes)、患者端末10は、患者の容体を示す患者のセンサ情報を含む容体トランザクションデータを生成する(S203)。なお、ステップS202のYesすなわち患者のバイタルが異常である場合とは、上述した図13BのステップS4のインシデント発生の場合に該当する。本実施の形態では、患者端末10は、例えば図7に示すように、内容データに患者の容体及び患者端末10の署名を、宛先アドレスに医療判断支援コントラクトアドレス32、送信元アドレスに患者アドレス11を含む容体トランザクションデータを生成する。
【0179】
次に、患者端末10は、ステップS203で生成した容体トランザクションデータを、ブロードキャストすることで、医師端末20及びサーバ装置30に送信する(S204)。
【0180】
次に、医師端末20及びサーバ装置30は、容体トランザクションデータを取得する(S205)。
【0181】
次に、医師端末20は、容体トランザクションデータに含まれる患者の容体に対する医師の診断結果を取得したかを確認する(S207)。
【0182】
ステップS207において診断結果を取得した場合(S207でYes)、医師端末20は、医師の見解を示す上記の患者の生体情報に対する医師の診断結果に関する情報を含む見解トランザクションデータを生成する(S209)。本実施の形態では、医師端末20は、例えば図8に示すように、内容データに医師の見解及び医師端末20の署名を、宛先アドレスに医療判断支援コントラクトアドレス32、送信元アドレスに医師アドレス21を含む見解トランザクションデータを生成する。
【0183】
次に、医師端末20は、ステップS208で生成した見解トランザクションデータを、サーバ装置30に送信する(S209)。
【0184】
次に、サーバ装置30は、ステップS209で送信された容体トランザクションデータを患者端末10に転送する(S210)。なお、医師端末20は、ステップS208で生成した見解トランザクションデータをブロードキャストすることで、患者端末10及びサーバ装置30に送信してもよい。この場合、ステップS210は行われない。
【0185】
次に、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とは、コンセンサスアルゴリズムを実行する(S211)。より具体的には、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とはそれぞれ、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータが正当なトランザクションデータであること(つまり正当性)を検証すると、それらを含むブロックを生成する。そして、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とは、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを含むブロックをそれぞれの分散台帳に格納する。すると、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とは、ブロックに取り込まれた容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを、分散台帳に格納されワーキングメモリに書き出されて稼働している医療判断支援スマートコントラクトに入力する。これにより、容体トランザクションデータ及び見解トランザクションデータを入力値として医療判断支援スマートコントラクトが実行される。
【0186】
次に、サーバ装置30は、医療判断支援スマートコントラクトの出力を取得する(S212)。
【0187】
次に、サーバ装置30は、ステップS212において取得した医療提案トランザクションデータを医師端末20に送信する(S213)。
【0188】
次に、医師端末20は、ステップS213で送信された医療提案トランザクションデータを取得する(S214)。医師端末20を用いている医師は、取得した医療提案トランザクションデータに含まれる提案情報に基づいて、患者への医療処置を実施する。そして、医師は、患者へ実施した医療処置に関する情報を、医療処置の実施結果として医師端末20に入力する。なお、サーバ装置30及び医師端末20は、別途、患者端末10とともに、取得した医療提案トランザクションデータを分散台帳に記録してもよい。
【0189】
次に、医師端末20は、医療処置の実施結果を取得したかを確認する(S215)。
【0190】
ステップS215において医療処置の実施結果を取得した場合(S215でYes)、医師端末20は、医療処置の実施結果を含む医療処置実施結果トランザクションデータを生成する(S216)。
【0191】
次に、医師端末20は、ステップS216で生成した医療処置実施結果トランザクションデータを、サーバ装置30に送信する(S218)。
【0192】
次に、サーバ装置30は、ステップS218で送信された医療処置実施結果トランザクションデータを患者端末10に転送する(S219)。なお、医師端末20は、ステップS216で生成した医療処置実施結果トランザクションデータをブロードキャストすることで、患者端末10及びサーバ装置30に送信してもよい。この場合、ステップS219は行われない。
【0193】
次に、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とは、コンセンサスアルゴリズムを実行する(S220)。より具体的には、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とはそれぞれ、医療処置実施結果トランザクションデータが正当なトランザクションデータであること(つまり正当性)を検証すると、医療処置実施結果トランザクションデータを含むブロックを生成する。そして、患者端末10と医師端末20とサーバ装置30とは、医療処置実施結果トランザクションデータを含むブロックをそれぞれの分散台帳に格納する。
【0194】
次に、サーバ装置30は、分散台帳に格納された医療処置実施結果トランザクションデータと医療提案トランザクションデータとから、医療提案情報と医療処置の実施結果とを連携して記録する(S221)。なお、医療提案情報と医療処置の実施結果とを連携して記録するためのスマートコントラクトが、分散台帳に格納されてワーキングメモリに書き出されることで稼働しているとする。この場合、サーバ装置30は、ブロックに取り込まれた医療処置実施結果トランザクションデータを、当該スマートコントラクトに入力してもよい。これにより、医療処置実施結果トランザクションデータと医療提案トランザクションデータを入力値としてスマートコントラクトが実行され、医療提案情報と医療処置の実施結果とを連携して記録される。
【0195】
[1.10 効果等]
以上のように、本開示の制御方法等によれば、患者本人による意思表明が不可能な状況下での医療処置の決定に関する医学的ファクトを含むあらゆる情報を分散台帳に記録できる。さらに、本開示の制御方法等によれば、患者の事前の意思表明を考慮して患者の容体等から医療処置の提案を、一意に決定する医療判断支援スマートコントラクトに、患者本人による意思表明が不可能な状況下での医療処置の提案をさせる。これにより、医療判断支援スマートコントラクトを含むあらゆる情報すなわち患者本人による意思表明が不可能な状況下での医療処置の決定に関するあらゆる情報の改ざんを困難にさせるので、患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる。さらに、当該あらゆる情報を分散台帳により改ざん困難にさせることで、医療情報の不正操作による攻撃を防ぐことができるので、高い信頼性をもって患者らの事前の意思表明を考慮した医療処置を決定して実施したかどうかを検証できる。
【0196】
(その他変形例)
なお、本開示を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上記各実施の形態に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本開示に含まれる。
【0197】
(1)上記の実施の形態では、患者端末10が1つのブロックチェーン制御部を有するとして説明したが、これに限定されない。患者端末10は、複数のブロックチェーン制御部を有していてもよいし、例えば、患者端末10と接続するモニタデバイスがブロックチェーン制御部を有してもよい。また、これらを組み合わせた構成であってもよい。
【0198】
(2)また、上記の実施の形態では、1つの患者端末10と、1つの医師端末20と、1つのサーバ装置30とでブロックチェーンネットワークを構成する場合を例にあげて説明したが、これに限定されない。例えば、複数の患者端末10と、複数の医師端末20と、複数のサーバ装置とでブロックチェーンネットワークを構成してもよい。また、1つの患者端末10と、複数の医師端末20と、複数のサーバ装置となど、組み合わせた構成でブロックチェーンネットワークを構成してもよい。
【0199】
(3)また、上記の実施の形態では、サーバ装置30は、データベース部304を有する場合を例にあげて説明したが、これに限定されない。例えば、複数のサーバ装置30が1つのデータベース部304を分割して有していてもよい。
【0200】
(4)上記の実施の形態では、患者端末10が医療判断支援スマートコントラクトを生成するとして説明したが、これに限定されない。患者端末10は医師端末20と連携して生成してもよいし、医師端末20が患者端末10と連携して生成してもよい。この場合には、医療判断支援スマートコントラクトを含むトランザクションデータの発行に患者端末10と医師端末20の署名をマルチシグとして必要としてもよい。
【0201】
(5)上記の実施の形態では、分散台帳を構築するブロックチェーン基盤すなわちブロックチェーンのプラットフォームとしてEthereumを用いる場合を例にあげて説明したが、これに限定されない。例えば、Hyperledger Fabricなど、ブロックチェーン上にスマートコントラクトを記述できるプラットフォームであればよく、プラットフォームの種類には限定されない。
【0202】
(6)上記の実施の形態では、スマートコントラクトの開発言語としてEthereumの開発言語であるSolidityを用いる例をあげて説明したが、これに限定されない。選択したブロックチェーンのプラットフォームにおいてスマートコントラクトの記述が可能な開発言語であればよい。
【0203】
(7)上記の実施の形態では、トランザクションデータに含まれるスマートコントラクトのデータ形式はバイナリデータである場合を例にあげて説明したが、これに限定されない。例えば、アプリケーション・バイナリ・インタフェースなど、選択したブロックチェーンのプラットフォームが実行可能なデータ形式であればよい。
【0204】
(8)上記の実施の形態では、医学的ファクトは、トランザクションデータに含められて送受信されたが、これに限定されない。患者端末10、医師端末20及びサーバ装置30が通信可能な形式であればよい。医学的ファクトは、例えば、P2P内でのファイルトランスポーテーションを用いて送受信されてもよいし、web上の通信で送受信されてもよい。
【0205】
(9)上記の実施の形態では、医療判断支援スマートコントラクトに対する入力は、患者端末10が送信する容体トランザクションデータと医師端末20が送信する見解トランザクションデータであるとして説明したが、これに限定されない。例えば患者端末10が生成する容体トランザクションデータを医師端末20が取得し、容体トランザクションデータに含まれる患者の容体を見解トランザクションデータにまとめたものを当該入力としてもよい。なお、医療判断支援スマートコントラクトに対する入力は、容体トランザクションデータと見解トランザクションデータとであるとして説明したが、トランザクションデータのデータ分割を指定するものではない。医療判断支援スマートコントラクト内のアルゴリズムが対応していれば容体トランザクションデータなどの1つのトランザクションデータが2つ以上に分割されて入力されてもよい。
【0206】
(10)また、上記の実施の形態では、医療判断支援スマートコントラクトに対する入力は、患者端末10が送信する容体トランザクションデータと医師端末20が送信する見解トランザクションとであるとして説明したが、これに限定されない。他のスマートコントラクトを含む分散台帳に記録されたデータを、医療判断支援スマートコントラクトを含むスマートコントラクトが参照する形式をとってもよい。他のスマートコントラクトとしては、例えば患者自身の遺言情報を記したスマートコントラクト、患者の家族の情報を記載したスマートコントラクトであってもよい。また、他のスマートコントラクトとしては、第三者の決定を医療判断支援スマートコントラクトの要領で記載したスマートコントラクトであってもよい。また、生前の医療だけでなく、臓器提供などを含む死亡時の対応を医療判断支援スマートコントラクトの要領で記載したスマートコントラクトであってもよい。他のスマートコントラクトとしては、さらに、これらを組み合わせたスマートコントラクトであってもよい。これらの場合には、予めスマートコントラクト内に参照先のスマートコントラクトないしトランザクションの条件が記述されていればよい。
【0207】
(11)上記の実施の形態では、医療判断支援スマートコントラクト内の署名確認処理において、トランザクションデータに含まれる署名が不正な署名であった場合には処理を中断すると説明したが、これに限定されない。この場合、医療判断支援スマートコントラクトは、患者端末10、医師端末20及び/またはサーバ装置30に、トランザクションデータに不正署名が含まれていたことを示すトランザクションデータを生成して送信してもよい。また、医療判断支援スマートコントラクトは、トランザクションデータに不正署名が含まれていたことを示すトランザクションデータを生成して送信する処理とともに、上記の中断処理を行ってもよい。
【0208】
(12)なお、上記の実施の形態における各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記録されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0209】
(13)上記の実施の形態における各装置は、構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記録されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0210】
また、上記の各装置を構成する構成要素の各部は、個別に1チップ化されていても良いし、一部又はすべてを含むように1チップ化されてもよい。
【0211】
また、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
【0212】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0213】
(14)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0214】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0215】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもdよい。
【0216】
また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記録しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0217】
また、前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、または前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本開示は、制御方法、プログラム及び制御装置に利用でき、例えば患者の意思決定、患者への診断結果を含む医学的ファクトを安全に管理したり共有したり、あらゆる医療処置データを管理したりして事後に検証可能となるシステムの制御方法、プログラム及び制御装置に利用できる。
【符号の説明】
【0219】
1 医療処置管理システム
10 患者端末
11 患者アドレス
20 医師端末
21 医師アドレス
30 サーバ装置
31 サーバアドレス
32 医療判断支援コントラクトアドレス
40 通信ネットワーク
101、201、301 通信部
102 センサ情報取得部
103 スマートコントラクト生成部
104、203 ブロックチェーン制御部
105、204 表示部
106、205、302 記憶部
202 医師見解生成部
303 ブロックチェーン制御部
304 データベース部
305 ワーキングメモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15