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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】減圧乾燥装置および減圧乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
F26B5/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022164794
(22)【出願日】2022-10-13
(65)【公開番号】P2024057845
(43)【公開日】2024-04-25
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 翔也
(72)【発明者】
【氏名】高村 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】竹市 祐実
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-034739(JP,A)
【文献】特開2006-105524(JP,A)
【文献】特開2013-251329(JP,A)
【文献】特開2022-038284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0200475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却する冷却部と、
前記支持部によって支持された前記基板と前記冷却面との間隔が第1間隔となる第1状態と、前記支持部によって支持された前記基板と前記冷却面との間隔が前記第1間隔よりも広い第2間隔となる第2状態との間で、前記支持部および前記冷却面の少なくともいずれか一方を昇降させる第1昇降部と、
前記チャンバ内の気体を吸引して、前記チャンバ内の気圧を低下させる減圧機構と、
前記第1状態において前記チャンバ内の気圧を第1気圧とした後、前記第2状態において前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧よりも低い第2気圧とするように、前記第1昇降部および前記減圧機構を制御する制御部と
を備える、減圧乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧乾燥装置であって、
前記制御部は、前記第1状態において前記基板上の溶媒の蒸気圧曲線において圧力が前記第1気圧となるときの温度以下、かつ、前記第2状態において前記蒸気圧曲線において圧力が前記第2気圧となるときの温度以上に、前記冷却面を冷却するように前記冷却部を制御する、減圧乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の減圧乾燥装置であって、
前記制御部は、前記第1状態において前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒を蒸発させつつ、前記溶媒の蒸気を前記冷却面で凝縮させ、前記第2状態において前記チャンバ内の気圧を前記第2気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒および前記冷却面の溶媒の両方を蒸発させて前記塗布膜および前記冷却面を乾燥させる、減圧乾燥装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の減圧乾燥装置であって、
前記冷却面は、前記チャンバの天井面であり、
前記第1昇降部は前記支持部を昇降させる、減圧乾燥装置。
【請求項5】
請求項に記載の減圧乾燥装置であって、
前記冷却部は、前記チャンバの天板部の上面に取り付けられており、前記天板部を冷却して前記天板部の下面である前記冷却面を冷却する、減圧乾燥装置。
【請求項6】
請求項に記載の減圧乾燥装置であって、
前記天板部の前記上面に接した冷却位置と、前記天板部から離れた離間位置との間で、前記冷却部を昇降させる第2昇降部をさらに備える、減圧乾燥装置。
【請求項7】
請求項に記載の減圧乾燥装置であって、
前記冷却部の少なくとも一部は、前記チャンバの天板部に埋設されている、減圧乾燥装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の減圧乾燥装置であって、
前記冷却部は、前記チャンバ内に設けられ、前記冷却面を下面として有する冷却部材を含む、減圧乾燥装置。
【請求項9】
請求項8に記載の減圧乾燥装置であって、
前記第1昇降部は、前記冷却部材を昇降させる、減圧乾燥装置。
【請求項10】
請求項に記載の減圧乾燥装置であって、
前記支持部によって支持された前記基板を包囲する側面整流板と、
前記支持部によって支持された前記基板の下面と対面する底面整流板と
をさらに備え
記第1状態および前記第2状態の両方において、前記支持部によって支持された前記基板は前記側面整流板に包囲される、減圧乾燥装置。
【請求項11】
基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、
チャンバ内の支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却し、かつ、前記基板と前記冷却面との間隔が第1間隔となる状態で、前記チャンバ内の気圧を第1気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒を蒸発させつつ、前記溶媒の蒸気を前記冷却面で凝縮させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記基板と前記冷却面との間隔が前記第1間隔よりも広い第2間隔となる状態で、前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧よりも低い第2気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒および前記冷却面の溶媒の両方を蒸発させて前記塗布膜および前記冷却面を乾燥させる第2工程と
を備える、減圧乾燥方法。
【請求項12】
請求項11に記載の減圧乾燥方法であって、
前記第1工程において、冷却部を前記チャンバの天板部の上面に接触する冷却位置に下降させて、前記天板部の下面である前記冷却面を冷却し、
前記第2工程において、前記冷却部を前記チャンバの前記天板部から離れた離間位置に上昇させている、減圧乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減圧乾燥装置および減圧乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の基板に塗布されたフォトレジスト等の塗布膜を減圧乾燥する減圧乾燥装置が知られている。各種の基板には、例えば、各種のデバイスを形成するためのガラス基板、セラミック基板、半導体ウエハ、電子デバイス基板または印刷用の印刷版等の種々の基板が適用される。各種のデバイスには、例えば、半導体装置、表示パネル、太陽電池パネル、磁気ディスク、または光ディスク等が適用される。表示パネルには、例えば、液晶表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネル、プラズマ表示パネル、または電界放出ディスプレイ等が適用される。
【0003】
減圧乾燥装置を用いて塗布膜を乾燥する際には、例えば、チャンバ内において複数のピンが基板を支持している状態で、チャンバの底部の排気口を介して真空ポンプでチャンバ内から排気を行う。該排気により、チャンバ内の気圧が低下する。チャンバ内の気圧が低下すると、塗布膜の溶媒が蒸発するので、塗布膜を乾燥させることができる。そして、例えば、真空度が所定値に到達するとチャンバ内からの排気を停止し、チャンバ内に気体を供給することでチャンバ内を大気圧に戻す。気体には、例えば、窒素気体等の不活性気体または空気等が適用される。
【0004】
ところで、減圧乾燥装置では、減圧初期においてチャンバ内の気圧を急激に低下させると、基板上の塗布膜に突沸が生じる可能性がある。突沸が発生すると、例えば、塗布膜の膜厚がばらつき得る。
【0005】
特許文献1に記載された減圧乾燥装置は、このような突沸の発生を抑制することができる。特許文献1に記載の減圧乾燥装置では、基板を支持する支持ピンを昇降させる昇降部が設けられている。昇降部は減圧初期において支持ピンを上昇させることにより、基板とチャンバの天井面との間隔を狭くする。これにより、基板と天井面との間の気圧の低下速度が小さくなり、突沸の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-086766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板と天井面との間隔が狭くなると、基板上の塗布膜からの溶媒蒸気が基板と天井面との間の空間に滞留してしまう。特に、塗布膜の中央付近からの溶媒蒸気は滞留しやすい。つまり、塗布膜の周縁付近からの溶媒蒸気は、濃度拡散により、水平方向で外側に流れ得るものの、塗布膜の中央付近では濃度勾配が小さいのでそのまま滞留してしまう。このため、塗布膜の溶媒は、その中央部分よりも周縁部分において蒸発しやすくなる。つまり、塗布膜の乾燥ムラを招いてしまう。乾燥ムラは、例えば、乾燥した塗布膜の膜厚のばらつきを生じさせる、という問題がある。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、塗布膜に対する乾燥ムラの発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、前記基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部と、前記支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却する冷却部と、前記支持部によって支持された前記基板と前記冷却面との間隔が第1間隔となる第1状態と、前記支持部によって支持された前記基板と前記冷却面との間隔が前記第1間隔よりも広い第2間隔となる第2状態との間で、前記支持部および前記冷却面の少なくともいずれか一方を昇降させる第1昇降部と、前記チャンバ内の気体を吸引して、前記チャンバ内の気圧を低下させる減圧機構と、前記第1状態において前記チャンバ内の気圧を第1気圧とした後、前記第2状態において前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧よりも低い第2気圧とするように、前記第1昇降部および前記減圧機構を制御する制御部とを備える。
第2の態様は、第1の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記制御部は、前記第1状態において前記基板上の溶媒の蒸気圧曲線において圧力が前記第1気圧となるときの温度以下、かつ、前記第2状態において前記蒸気圧曲線において圧力が前記第2気圧となるときの温度以上に、前記冷却面を冷却するように前記冷却部を制御する。
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記制御部は、前記第1状態において前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒を蒸発させつつ、前記溶媒の蒸気を前記冷却面で凝縮させ、前記第2状態において前記チャンバ内の気圧を前記第2気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒および前記冷却面の溶媒の両方を蒸発させて前記塗布膜および前記冷却面を乾燥させる。
【0010】
の態様は、第1または第2の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記冷却面は、前記チャンバの天井面であり、前記第1昇降部は前記支持部を昇降させる。
【0011】
の態様は、第の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記冷却部は、前記チャンバの天板部の上面に取り付けられており、前記天板部を冷却して前記天板部の下面である前記冷却面を冷却する。
【0012】
の態様は、第の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記天板部の前記上面に接した冷却位置と、前記天板部から離れた離間位置との間で、前記冷却部を昇降させる第2昇降部をさらに備える。
【0013】
の態様は、第の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記冷却部の少なくとも一部は、前記チャンバの天板部に埋設されている。
【0014】
の態様は、第1または第2の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記冷却部は、前記チャンバ内に設けられ、前記冷却面を下面として有する冷却部材を含む。
【0015】
第9の態様は、第8の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記第1昇降部は、前記冷却部材を昇降させる。
10の態様は、第の態様にかかる減圧乾燥装置であって、前記支持部によって支持された前記基板を包囲する側面整流板と、前記支持部によって支持された前記基板の下面と対面する底面整流板とをさらに備え、前記第1状態および前記第2状態の両方において、前記支持部によって支持された前記基板は前記側面整流板に包囲される。
【0016】
11の態様は、基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、チャンバ内の支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却し、かつ、前記基板と前記冷却面との間隔が第1間隔となる状態で、前記チャンバ内の気圧を第1気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒を蒸発させつつ、前記溶媒の蒸気を前記冷却面で凝縮させる第1工程と、前記第1工程の後に、前記基板と前記冷却面との間隔が前記第1間隔よりも広い第2間隔となる状態で、前記チャンバ内の気圧を前記第1気圧よりも低い第2気圧に低下させて、前記基板上の前記塗布膜の溶媒および前記冷却面の溶媒の両方を蒸発させて前記塗布膜および前記冷却面を乾燥させる第2工程とを備える。
【0017】
12の態様は、第11の態様にかかる減圧乾燥方法であって、前記第1工程において、冷却部を前記チャンバの天板部の上面に接触する冷却位置に下降させて、前記天板部の下面である前記冷却面を冷却し、前記第2工程において、前記冷却部を前記チャンバの前記天板部から離れた離間位置に上昇させている。
【発明の効果】
【0018】
第1の態様から第3の態様によれば、第1状態において、チャンバ内の気体が第1気圧に低下する。これにより、塗布膜の溶媒が蒸発する。第1状態では、基板と冷却面との間隔は狭いので、塗布膜における突沸の発生を抑制することができる。一方で、塗布膜からの溶媒蒸気はすぐに冷却面に衝突し、上方に拡散することができない。溶媒蒸気は塗布膜の周縁付近では濃度拡散により水平方向の外側に流れるものの、塗布膜の中央付近では外側に流れにくく、留まりやすい。このため、溶媒蒸気の流れという観点では、塗布膜の溶媒は、その中央部分よりも周縁部分において蒸発しやすく、乾燥ムラが生じ得る。しかるに、第1態様から第3の態様によれば、冷却部が冷却面を冷却する。このため、溶媒蒸気を冷却面で凝縮させることができる。したがって、塗布膜の中央付近でも溶媒蒸気が滞留しにくく、塗布膜の中央部分と周縁部分との蒸発量の差を低減させることができる。つまり、塗布膜の乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0019】
その後、第2状態でチャンバ内の気圧がさらに低下するので、基板上の塗布膜の溶媒はさらに蒸発する。第2状態では、基板と冷却面との間隔が広いので、溶媒蒸気は容易に上方に拡散する。このため、第2状態では、塗布膜の乾燥ムラが生じにくい。しかも、チャンバ内の気圧がさらに低下するので、冷却面に付着した溶媒も蒸発させることができ、塗布膜のみならず冷却面も乾燥させることができる。
【0020】
の態様によれば、既設の第1昇降部を流用することができる。
【0021】
の態様によれば、上面視における温度分布のばらつきは、天板部における熱伝達により、天板部の上面から下面(冷却面)に向かうにつれて緩和される。つまり、冷却面における温度分布をより均一化させることができる。このため、塗布膜からの溶媒蒸気はより均一(言い換えれば、より一様)に冷却面で凝縮する。したがって、基板と冷却面との間における濃度分布の均一性を向上させることができ、塗布膜の乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0022】
の態様によれば、第2状態において、第2昇降部が冷却部を離間位置に上昇させることにより、冷却面の温度を上昇させ得る。このため、冷却面をより確実に乾燥させることができる。
【0023】
の態様によれば、冷却部は高い効率で冷却面を冷却することができる。
【0024】
8および第9の態様によれば、冷却部材の材料をチャンバとは別に選定できる。
【0025】
10の態様によれば、第1状態および第2状態の両方において、側面整流板が基板を包囲する。このため、第1状態でも第2状態でも、基板の周縁部への気流の集中を抑制できる。したがって、気流による乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0026】
11の態様によれば、第1工程において、チャンバ内の気圧が第1気圧に低下して塗布膜の溶媒が蒸発する。第1工程では、基板と冷却面との間隔は狭いので、塗布膜における突沸の発生を抑制することができる。一方で、塗布膜からの溶媒蒸気はすぐに冷却面に衝突し、上方に拡散することができない。溶媒蒸気は塗布膜の周縁付近では濃度拡散により水平方向の外側に流れるものの、塗布膜の中央付近では外側に流れにくく、留まりやすい。このため、溶媒蒸気の流れという観点では、塗布膜の溶媒は、その中央部分よりも周縁部分において蒸発しやすく、乾燥ムラが生じ得る。しかしながら、第11態様によれば、冷却面を冷却することにより、溶媒蒸気を冷却面で凝縮させる。このため、塗布膜の中央付近でも溶媒蒸気が滞留しにくく、塗布膜の中央部分と周縁部分との蒸発量の差を低減させることができる。したがって、塗布膜の乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0027】
第2工程では、チャンバ内の気圧がより低い第2気圧に低下する。これにより、基板上の塗布膜の溶媒はさらに蒸発する。第2工程では、基板と冷却面との間隔が広いので、溶媒蒸気は容易に上方に拡散する。このため、第2工程では、塗布膜の乾燥ムラが生じにくい。しかも、チャンバ内の気圧がさらに低下するので、冷却面の溶媒も蒸発させることができ、塗布膜のみならず冷却面も乾燥させることができる。
【0028】
12の態様によれば、第1工程において、より確実に溶媒蒸気を冷却面で凝縮させつつ、第2工程において、冷却面をより確実に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の横断面の一例を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を示す図である。
図4】基板の一例を示す斜視図である。
図5】基板の一部分の縦断面の一例を示す図である。
図6】制御部において実現される機能を概念的に示したブロック図である。
図7】第1実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】第1減圧処理におけるチャンバ内の様子の一例を概略的に示す図である。
図9】第1減圧処理におけるチャンバ内のうちの冷却面および基板の近傍を拡大して示す図である。
図10】比較構造にかかるチャンバの天板部および基板を拡大して示す図である。
図11】比較構造における上部空間内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。
図12】冷却部が冷却している状態での上部空間内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。
図13】第2減圧処理におけるチャンバ内の様子の一例を概略的に示す図である。
図14】第2実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図15】第2実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16】第3実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図17】第4実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図18】第5実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の一実施形態および各種変形例について、図面を参照しつつ説明する。図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。また、本明細書において、下方向は、重力方向であり、上方向は、重力方向とは逆の方向である。
【0031】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を概略的に示す図である。図2は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の横断面の一例を概略的に示す図である。図3は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を概略的に示す図である。図1の縦断面と図3の縦断面とは、約90度異なる方向からそれぞれ見たときの減圧乾燥装置1の構成を示している。図3では、図面の煩雑化を避けるために、後述する減圧機構30、給気部60、気圧計70および制御部80に関する構成が便宜的に省略されている。
【0032】
減圧乾燥装置1は、基板9の上面に形成された塗布膜90(図5参照)を乾燥させる装置である。
【0033】
基板9には、例えば、ガラス基板、半導体ウエハ、またはセラミック基板等が適用される。基板9は、例えば、第1主面としての第1面F1(図4および図5参照)と、この第1面F1とは逆の第2主面としての第2面F2(図5参照)と、を有する平板状の基板である。例えば、減圧乾燥装置1では、基板9の第1面F1が基板9の上面とされ、基板9の第2面F2が基板9の下面とされる。ここでは、基板9に矩形のガラス基板が適用された具体例を適宜挙げて説明する。基板9の第1面F1には、例えば、予め有機材料および溶媒を含む処理液が塗布されることで、塗布膜90が部分的に形成されている。処理液の塗布は、例えば、スリットコータまたはインクジェット装置等で行われる。処理液には、例えば、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む液(PI液ともいう)またはレジスト液等の塗布液が適用される。ポリイミド前駆体には、例えば、ポリアミド酸(ポリアミック酸)等が適用される。溶媒には、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-Methyl-2-Pyrrolidone)が適用される。また、例えば、減圧乾燥装置1が有機ELディスプレイの製造工程に適用される場合には、塗布膜90が、減圧乾燥装置1で乾燥されることによって有機ELディスプレイパネルの正孔注入層、正孔輸送層、または発光層となる態様が採用されてもよい。
【0034】
図4は、基板9の一例を示す斜視図である。図5は、基板9の一部分の縦断面の一例を示す図である。図4に示されるように、基板9は、例えば、上面視において、縦横の長さが異なる長方形状の形態を有する。基板9には、デバイス等が形成される領域(被形成領域とも塗布領域ともいう)A1が、複数配列されている。図4の例では、上面視において、基板9には、4つの矩形状の塗布領域A1が、2行2列のマトリックス状に配列されている。ただし、塗布領域A1の形状、数、配置は、この例に限定されるものではない。塗布膜90は、減圧乾燥装置1による減圧乾燥工程よりも前の塗布工程において、スリットコータまたはインクジェット装置等によって、各塗布領域A1の上面に、所望のパターンに従って形成される。所望のパターンには、例えば、回路のパターンが適用される。ここでは、例えば、図5で示されるように、各塗布領域A1の上面としての第1面F1は、塗布膜90に覆われた領域(被覆領域ともいう)A3と、塗布膜90に覆われていない露出した領域(露出領域ともいう)A4と、を有する。また、基板9のうちの塗布領域A1の周囲および隣り合う塗布領域A1の間の領域は、上面としての第1面F1に塗布膜90が形成されていない領域(非塗布領域ともいう)A2となっている。非塗布領域A2は、塗布膜90に覆われていない露出した領域(露出領域)A4でもある。
【0035】
<1-1.減圧乾燥装置の構成の概要>
次に減圧乾燥装置1の構成について概説する。図1および図2に示されるように、減圧乾燥装置1は、チャンバ10と、支持部20と、減圧機構30と、第1昇降部100と、冷却部40と、制御部80とを含んでいる。
【0036】
チャンバ10は、基板9を収容するための部分である。支持部20はチャンバ10内に設けられており、基板9を水平姿勢で支持する。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が上下方向に沿う姿勢である。
【0037】
減圧機構30はチャンバ10内の気体を吸引して、気体をチャンバ10の外部に排出する。この吸引により、チャンバ10内の気圧が低下する。チャンバ10内の気圧が低下することにより、基板9の第1面F1上の塗布膜90の溶媒が蒸発し、塗布膜90が乾燥する。
【0038】
冷却部40は冷却面40aを冷却する。冷却面40aは、支持部20によって支持された基板9の第1面F1と上下方向において対面する面である。図1の例では、冷却面40aはチャンバ10の天井面に相当する。冷却面40aは上面視において基板9よりも大きいサイズを有してもよい。つまり、冷却面40aは、基板9の第1面F1の全面と対面することができる程度のサイズを有していてもよい。冷却面40aは例えば水平な平坦面である。冷却部40が冷却面40aを冷却することにより、冷却面40aの温度を低下させることができる。
【0039】
基板9の第1面F1上の塗布膜90から蒸発した溶媒の蒸気(以下、溶媒蒸気と呼ぶ)は、冷却面40aにおいて冷却されて凝縮し得る。このため、冷却面40aには液状の溶媒91(後に説明する図8も参照)が付着し得る。この凝縮によって、後に詳述するように、塗布膜90の乾燥ムラの発生を抑制することができる。また、チャンバ10内の気圧のさらなる低下により、冷却面40aに付着した溶媒91を蒸発させることもできる。この凝縮および蒸発についても後に詳述する。
【0040】
図1の例では、第1昇降部100は支持部20を昇降させる。具体的には、第1昇降部100は上昇位置H1と下降位置H2との間で支持部20を昇降させる。上昇位置H1は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるときの支持部20の位置である。図1の例では、上昇位置H1に位置する支持部20および基板9を仮想線で示している。下降位置H2は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔よりも広い第2間隔となるときの支持部20の位置である。つまり、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態との間で、支持部20を昇降させる。第1間隔は例えば10mm以下であり、より具体的な一例として5mm程度である。第2間隔は例えば第1間隔の5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。数値の具体例を説明すると、第2間隔は例えば50mm以上であり、より具体的な一例として、80mm程度である。
【0041】
後に詳述するように、減圧初期において、第1昇降部100は支持部20を上昇位置H1に位置させる。その後、第1昇降部100は支持部20を下降位置H2に下降させる。この技術的意義についても後に詳述する。
【0042】
また、図1および図2の例では、減圧乾燥装置1は、給気部60と、底面整流板50と、側面整流板51と、気圧計70と、をさらに含んでいる。給気部60はチャンバ10内に気体を供給する。これにより、チャンバ10内の気圧を大気圧に戻すことができる。底面整流板50および側面整流板51はチャンバ10内に設けられており、チャンバ10内の気流を整える。気圧計70はチャンバ10内の気圧を計測し、その計測結果を示す電気信号を制御部80に出力する。制御部80は上述の減圧乾燥装置1の各種構成を制御する。例えば、制御部80は、気圧計70によって計測された気圧に基づいて減圧機構30を制御して、チャンバ10内の気圧を調整する。また、制御部80は冷却部40を制御して、冷却面40aの温度を調整し、第1昇降部100を制御して、支持部20の位置を調整する。
【0043】
次に、減圧乾燥装置1の各構成の詳細な一例について述べる。
【0044】
<1-1-1.チャンバ10>
チャンバ10には、基板9を収容するための内部空間10sを有する耐圧容器が適用される。チャンバ10は、例えば、図示を省略した装置フレーム上に固定されている。チャンバ10の形状は、例えば、扁平な直方体状である。チャンバ10は、例えば、略正方形状の底板部11と、4つの側壁部12と、略正方形状の天板部13と、を有する。4つの側壁部12は、例えば、底板部11の4つの端辺と、天板部13の4つの端辺とを、上下方向に接続している。例えば、4つの側壁部12のうちの1つの側壁部12には、搬入出口14と、この搬入出口14を開閉するゲート部(ゲートバルブともいう)15と、が設けられている。ゲート部15は、例えば、開閉駆動部16に連結もしくは接続されている。図3では、図面の煩雑化を避けるために、開閉駆動部16が概念的に示されている。開閉駆動部16には、例えば、エアシリンダ等の駆動装置が適用される。ここでは、例えば、開閉駆動部16の動作によって、ゲート部15は、搬入出口14を閉鎖している位置(閉鎖位置ともいう)と、搬入出口14を開放している位置(開放位置ともいう)との間で移動することができる。
【0045】
ここで、例えば、ゲート部15が閉鎖位置に位置する状態では、チャンバ10の内部空間10sが密閉される。例えば、ゲート部15が開放位置に位置する状態では、搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。
【0046】
<1-1-2.支持部20>
支持部20は、チャンバ10の内部空間10sに位置しており、チャンバ10の内部空間10sに収容された基板9を下方から支持することができる。支持部20は、例えば、複数の支持プレート21と、複数の支持ピン22と、を有する。複数の支持プレート21は、例えば、水平方向に間隔をあけて配列されている。各支持プレート21の上面には、複数の支持ピン22が立設されている。複数の支持ピン22は上面視において2次元的に分散配置される。複数の支持プレート21は、支持部20のベースとなる部分である。基板9は複数の支持プレート21の上方に配置され、複数の支持ピン22の上端部が基板9の下面としての第2面F2に接触することで、基板9が水平姿勢で支持される。
【0047】
<1-1-3.減圧機構30>
図1および図2に示されるように、チャンバ10の底板部11のうち基板9と上下方向において対向する部分には、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dが設けられている。減圧機構30は、例えば、排気配管31と、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdと、主バルブVeと、真空ポンプ32と、を有する。排気配管31は、例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dと、1つの主配管31eと、を有する。例えば、個別配管31aの一端は、排気口16aに接続しており、個別配管31bの一端は、排気口16bに接続しており、個別配管31cの一端は、排気口16cに接続しており、個別配管31dの一端は、排気口16dに接続している。例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dのそれぞれの他端は、合流して主配管31eの一端に接続されている。例えば、主配管31eの他端は、真空ポンプ32に接続している。例えば、個別バルブVaは、個別配管31aの経路上に設けられており、個別バルブVbは、個別配管31bの経路上に設けられており、個別バルブVcは、個別配管31cの経路上に設けられており、個別バルブVdは、個別配管31dの経路上に設けられている。例えば、主バルブVeは、主配管31eの経路上に設けられている。
【0048】
ここで、例えば、ゲート部15によって搬入出口14を閉鎖した状態で、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの少なくとも1つと、1つの主バルブVeとを開放し、真空ポンプ32を動作させると、チャンバ10内の気体が、排気配管31を介してチャンバ10の外部へ排出される。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sの気圧を低下させることができる。4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの排気量(吸引流量)を、個別に調節するためのバルブである。4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開状態と閉状態との間で切り替えられる弁(開閉弁ともいう)が適用される。主バルブVeは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの合計の排気量を調整するためのバルブである。主バルブVeには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開度が調節され得る弁(開度制御弁ともいう)が適用される。
【0049】
<1-1-4.第1昇降部100>
第1実施形態では、第1昇降部100はチャンバ10内において支持部20を昇降させる。換言すれば、第1昇降部100は、支持部20を昇降させることができる機構(昇降機構ともいう)を有する。図1では、図面の煩雑化を避けるために、第1昇降部100が概念的に示されている。第1昇降部100には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。図3に示されるように、第1昇降部100は、例えば、本体部100aと、移動部100bと、を有する。本体部100aは、例えば、チャンバ10の外部において、図示を省略した装置フレームに固定されている。移動部100bは、例えば、本体部100aに対して、上下方向に移動することができる。移動部100bには、例えば、棒状の部材等が適用される。移動部100bは、例えば、チャンバ10の底板部11の貫通孔11hに挿通された状態で位置している。そして、例えば、移動部100bの上端部に、支持部20が固定されている。ここでは、例えば、底板部11の下面と移動部100bとの間にベローズ等が設けられれば、底板部11と移動部100bとの隙間が密閉され得る。例えば、支持部20が複数の支持プレート21を有する場合には、移動部100bは、支持プレート21ごとに支持プレート21に固定されており且つ底板部11の貫通孔11hに挿通された棒状の部分(棒状部ともいう)と、複数の棒状部を連結している部分(連結部ともいう)と、連結部に接続されており且つ本体部100aに摺動可能に支持された部分(摺動部ともいう)と、を有する。第1昇降部100が支持部20を昇降させることにより、支持部20によって支持された基板9も昇降する。
【0050】
<1-1-5.冷却部40>
冷却部40の具体的な構成は特に制限されないものの、図1の例では、冷却部40は、冷却部材41と、第1冷媒配管42と、第2冷媒配管43と、冷媒冷却源44とを含む。なお図3では、図面の煩雑化を避けるために、冷却部40の構成を簡易的に示している。冷却部材41は板状形状を有する。この場合、冷却部材41は冷却板とも呼ばれ得る。冷却部材41は、その厚み方向が上下方向に沿う姿勢で、天板部13の上面に取り付けられている。冷却部材41は上面視において例えば長方形状を有する。冷却部材41の下面は天板部13の上面に密着しているとよい。冷却部材41は熱伝導率の高い材料(例えば金属など)によって形成され得る。
【0051】
図1の例では、冷却部材41の内部には冷媒流路41aが形成されている。冷媒流路41aは例えば上面視において蛇行していてもよく、渦巻き状に延びていてもよい。図1の例では、冷媒流路41aの流入口41bおよび流出口41cは冷却部材41の上面に形成されている。流入口41bは第1冷媒配管42の下流端に接続され、流出口41cは第2冷媒配管43の上流端に接続される。第1冷媒配管42の上流端および第2冷媒配管43の下流端は、冷媒冷却源44に接続されている。
【0052】
冷媒冷却源44には第2冷媒配管43の下流端から冷媒が流入する。冷媒は、液体であってもよく、気体であってもよい。具体的な一例として、冷媒には水を適用することができる。冷媒冷却源44は冷媒を冷却し、冷却後の冷媒を第1冷媒配管42の上流端に供給する。冷媒冷却源44は例えばヒートポンプであってもよい。冷媒冷却源44によって冷却された冷媒は第1冷媒配管42の上流端に流入し、第1冷媒配管42を通じて冷媒流路41aに流入する。低温の冷媒が冷媒流路41aを流れることにより、冷媒が冷却部材41と熱交換して冷却部材41を冷却する。この冷却部材41は天板部13と熱交換するので、天板部13も冷却される。冷媒流路41aを流れて温められた冷媒は第2冷媒配管43を通じて再び冷媒冷却源44に流入し、冷媒冷却源44によって再び冷却される。
【0053】
冷却部40がチャンバ10の天板部13を冷却すると、天板部13の下面(つまり、チャンバ10の天井面)である冷却面40aも冷却される。図1の例では、冷却部材41は上面視において基板9よりも大きなサイズを有する。つまり、上面視において冷却部材41の輪郭は基板9の輪郭を囲う。冷却部材41が上面視において長方形状を有している場合には、冷却部材41の長辺は基板9の長辺よりも長く、冷却部材41の短辺は基板9の短辺よりも長い。これにより、冷却部材41は、基板9の第1面F1の全面と対向する冷却面40aの全面を適切に冷却することができる。また、冷却部材41は上面視において正方形状を有していてもよい。この場合、冷却部材41の1辺は基板9の短辺よりも長くてもよい。これによれば、支持部20上に配置される基板9の向きに拘わらず、上面視において、冷却部材41は基板9よりも大きい。このため、基板9の向きに拘わらず、冷却部材41は、基板9の第1面F1の全面と対向する冷却面40aの全面を適切に冷却することができる。
【0054】
<1-1-6.底面整流板50>
底面整流板50は、減圧機構30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、底面整流板50は、支持部20に支持される基板9と、チャンバ10の底板部11との間に位置するように配置されている。底面整流板50は、例えば、チャンバ10の底板部11に、図示を省略した複数の支柱を介して固定されている。図2に示されるように、例えば、底面整流板50は、上面視において正方形状の形状を有する。そして、例えば、底面整流板50の上面視における各辺の長さは、長方形状の基板9の短辺よりも長い。このため、例えば、支持部20上に配置される基板9の向きに拘わらず、上面視において、底面整流板50は、基板9よりも大きい。また、底面整流板50は、例えば、第1昇降部100の移動部100bが挿通された状態にある貫通孔50hを有している。貫通孔50hにおいて、底面整流板50と移動部100bとは、ごく小さな間隔をあけて位置している。
【0055】
<1-1-7.側面整流板51>
側面整流板51は、底面整流板50とともに、減圧機構30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、側面整流板51は、下降位置H2に位置した支持部20によって支持される基板9と、チャンバ10の側壁部12との間に位置するように配置されている。ここでは、例えば、支持部20に支持される基板9の周囲を囲むように、4つの側面整流板51が配置されている。例えば、4つの側面整流板51は、全体として、基板9を包囲する四角筒状の整流板を形成している。また、例えば、底面整流板50および4つの側面整流板51は、全体として、有底筒状の箱状の整流板を形成している。なお、図1の例では、側面整流板51の上端は、上昇位置H1に位置した支持部20によって支持される基板9の第2面F2よりも下方に位置している。このため、支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9は4つの側面整流板51によって包囲されていない。
【0056】
ここで、例えば、支持部20が下降位置H2に位置した第2状態でのチャンバ10内の減圧時には、基板9の直上の気体は主として側面整流板51の上端に向かって流れる(後に説明する図13も参照)。該気体は、側面整流板51と側壁部12との間の空間、底面整流板50と底板部11との間の空間、および排気口16a,16b,16c,16dをこの記載の順に通って、チャンバ10の外部へ排出される。このように、気体が基板9から離れた空間を流れることで、基板9の近傍に気流が形成されにくくなる。そして、基板9の周縁部において集中的な気流の発生が生じにくくなる。これにより、例えば、基板9の上面に形成された塗布膜90の乾燥ムラの発生が抑制され得る。
【0057】
また、ここで、例えば、図2に示されるように、上面視において、4つの排気口16a,16b,16c,16dが、いずれも正方形状の底面整流板50の対角線52上に位置している構成が採用される。この場合には、例えば、各排気口16a,16b,16c,16dによって、底面整流板50の中央(2本の対角線52の交点)に対して対称な気流が形成され得る。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sにおいて、より均一な気流が形成され得る。
【0058】
<1-1-8.給気部60>
給気部60は、チャンバ10内に気体を供給する動作(給気ともいう)を行う部分である。図1で示されるように、チャンバ10の底板部11には、例えば、給気口16fが設けられている。給気口16fは、例えば、底面整流板50の下方に位置している。給気部60は、給気口16fに接続された給気配管61と、給気バルブVfと、給気源62と、を有する。例えば、給気配管61の一端は、給気口16fに接続している。例えば、給気配管61の他端は、給気源62に接続している。例えば、給気バルブVfは、給気配管61の経路上に設けられている。
【0059】
ここで、例えば、給気バルブVfを開放すると、給気源62から給気配管61および給気口16fを介して、チャンバ10の内部空間10sに気体が供給される。これにより、チャンバ10内の気圧を上昇させることができる。給気源62から供給される気体は、例えば、窒素気体等の不活性気体であってもよいし、クリーンドライエアであってもよい。クリーンドライエアは、例えば、一般的な環境における空気に対してパーティクルおよび水分を除去する清浄化を施すことで準備され得る。
【0060】
<1-1-9.気圧計70>
気圧計70は、チャンバ10の内部空間10sの気圧を計測するセンサである。図1に示されるように、気圧計70はチャンバ10の一部分に取り付けられている。気圧計70はチャンバ10の内部空間10sの気圧を計測し、その計測結果を制御部80へ出力することができる。
【0061】
<1-1-10.制御部80>
制御部80は、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御するためのユニット(電子回路)である。制御部80は、減圧機構30、冷却部40、給気部60および第1昇降部100等の構成を制御することができる。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ801、RAM(Random Access Memory)等のメモリ802、およびハードディスクドライブ等の記憶部803を有するコンピュータによって構成されている。記憶部803には、例えば、減圧乾燥装置1において基板9上の塗布膜90を減圧によって乾燥させる処理(減圧乾燥処理ともいう)を実行させるためのコンピュータプログラム(プログラムともいう)803pおよび各種のデータが記憶されている。記憶部803は、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。制御部80は、例えば、記憶部803からメモリ802にプログラム803pおよびデータを読み出して、プロセッサ801においてプログラム803pおよびデータに従った演算処理を行うことで、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御する。このため、例えば、プログラム803pは、減圧乾燥装置1において制御部80に含まれるプロセッサ801によって実行されることで、減圧乾燥処理を実行させることができる。
【0062】
また、制御部80には、例えば、入力部804、出力部805、通信部806およびドライブ807が接続されていてもよい。入力部804は、例えば、ユーザの動作等に応答して各種の信号を制御部80に入力する部分である。入力部804には、例えば、ユーザの操作に応じた信号を入力する操作部、ユーザの音声に応じた信号を入力するマイク、およびユーザの動きに応じた信号を入力する各種センサ等が含まれ得る。出力部805は、例えば、各種の情報をユーザが認識可能な態様で出力する部分である。出力部805には、例えば、表示部、プロジェクタ、およびスピーカ等が含まれ得る。表示部は、入力部804と一体化されたタッチパネルであってもよい。通信部806は、例えば、有線もしくは無線の通信手段等によってサーバ等の外部の装置との間で各種の情報の送受信を行う部分である。例えば、通信部806によって外部の装置から受信したプログラム803pが記憶部803に記憶されてもよい。ドライブ807は、例えば、磁気ディスクまたは光ディスク等の可搬性の記憶媒体807mの着脱が可能な部分である。このドライブ807は、例えば、記憶媒体807mが装着されている状態で、この記憶媒体807mと制御部80との間におけるデータの授受を行う。例えば、プログラム803pが記憶された記憶媒体807mがドライブ807に装着されることで、記憶媒体807mから記憶部803内にプログラム803pが読み込まれて記憶されてもよい。ここでは、記憶媒体807mは、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。
【0063】
図6は、制御部80において実現される機能を概念的に示したブロック図である。図6に示されるように、制御部80は、例えば、開閉駆動部16、第1昇降部100、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vd、主バルブVe、真空ポンプ32、給気バルブVf、冷却部40および気圧計70と、それぞれ電気的に接続されている。制御部80は、例えば、気圧計70から出力される計測値を参照しつつ、上記各部の動作を制御することができる。
【0064】
図6に概念的に示したように、制御部80は、実現される機能的な構成として、例えば、開閉制御部81、昇降制御部82、切替制御部83、排気制御部84、ポンプ制御部85、給気制御部86および冷却制御部87を有する。例えば、開閉制御部81は、開閉駆動部16の動作を制御する。例えば、昇降制御部82は、第1昇降部100の動作を制御する。例えば、切替制御部83は、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの開閉状態を個別に制御する。例えば、排気制御部84は、主バルブVeの開閉状態および開度を制御する。例えば、ポンプ制御部85は、真空ポンプ32の動作を制御する。例えば、給気制御部86は、給気バルブVfの開閉状態を制御する。例えば、冷却制御部87は、冷却部40の動作を制御する。制御部80における各部の機能は、例えば、上述したプログラム803p等に従った演算処理をプロセッサ801が行うことで実現される。
【0065】
<1-2.減圧乾燥処理>
次に、減圧乾燥装置1を用いた基板9の減圧乾燥処理について説明する。図7は、第1実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示すフローチャートである。この減圧乾燥処理のフローは、例えば、制御部80に含まれるプロセッサ801においてプログラム803pが実行されることで実現される。ここでは、例えば、図7のステップS1からステップS8の処理がこの記載の順に行われる。
【0066】
減圧乾燥装置1を用いて減圧乾燥処理を行う際には、例えば、まず、基板9をチャンバ10内に搬入する(ステップS1)。このとき、基板9の第1面F1には、未乾燥の塗布膜90が形成されている状態にある。ステップS1では、例えば、ゲート部15が制御部80の制御下で搬入出口14を開放し、図示を省略した搬送ロボットが、フォーク状のハンドに基板9を載置しつつ、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへ基板9を搬入する。この時点では、支持部20は、例えば、下降位置H2に位置している。なお、側面整流板51が搬送ロボットと干渉しないように、側面整流板51が移動可能に構成されてもよい。搬送ロボットは、例えば、支持部20の複数の支持プレート21の間へフォーク状のハンドを挿入しつつ、支持部20上に基板9を載置し、その後、チャンバ10の外部にフォークを退避させる。そして、ゲート部15は制御部80の制御下で搬入出口14を閉鎖する。以上のように、ステップS1では、チャンバ10内に配置された複数の支持ピン22に基板9を載置する工程(載置工程ともいう)が行われる。
【0067】
次に、減圧乾燥装置1は冷却処理を行う(ステップS2)。冷却処理は、冷却面40aを冷却する処理である。具体的には、制御部80が冷却部40を動作させることにより、冷却部40が冷却面40aを冷却し、冷却面40aの温度を低下させる。冷却部40は冷却面40aの温度を目標温度まで低下させる。目標温度は例えば摂氏5度以上かつ摂氏15度以下である。より具体的な一例として、目標温度は摂氏10度程度である。冷却部40は、基板9に対する減圧乾燥処理が完了するまで冷却面40aに対する冷却動作を継続してもよい。なお、冷却部40により冷却動作は、ステップS1よりも前に開始されてもよい。
【0068】
次に、減圧乾燥装置1は第1間隔調整処理を行う(ステップS3)。第1間隔調整処理は、基板9と冷却面40aとの間隔を第1間隔にする処理である。具体的には、制御部80が第1昇降部100を制御して、支持部20を上昇位置H1に上昇させる。支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9は側面整流板51の上端よりも上方に位置する(図1も参照)。
【0069】
次に、減圧乾燥装置1は第1減圧処理を行う(ステップS4:第1工程に相当)。第1減圧処理は、チャンバ10内の気圧を第1気圧(以下、第1目標気圧と呼ぶ)まで低下させる処理である。第1目標気圧は標準大気圧よりも低く、例えば10kPa以上に設定される。具体的には、制御部80は減圧機構30にチャンバ10内の気体を小さい第1吸引流量で吸引させることにより、チャンバ10内の気圧を低下させる。例えば、制御部80が主バルブVeの開度を後述の第2減圧処理時の開度よりも小さくしてもよい。これによれば、第1減圧処理において、チャンバ10内の気圧はより低い低下速度で低下する。
【0070】
ステップS3では、例えば、制御部80が、複数の個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれの開閉状態を個別に適宜制御してもよい。これにより、基板9の乾燥ムラの発生を抑制するように、チャンバ10内の気流を制御することができる。
【0071】
図8および図9は、第1減圧処理におけるチャンバ10内の様子の一例を概略的に示す図である。図8は、チャンバ10の全体を示しており、図9は、チャンバ10内のうちの冷却面40aおよび基板9の近傍を拡大して示している。
【0072】
図8に示されるように、第1減圧処理において、支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9と冷却面40aとの間隔は非常に狭い。そのため、上部空間10s1内の気圧の低下速度がより低くなり、基板9の第1面F1上の塗布膜90における突沸の発生を抑制することができる。
【0073】
一方で、第1状態では、支持部20によって支持された基板9は側面整流板51の上端よりも上方に位置している。このため、側面整流板51による整流機能は、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1にはほとんど作用しない。したがって、側面整流板51による乾燥ムラの発生抑制効果はあまり招来できない。第1状態では、基板9よりも下方の下部空間10s2は広いので、下部空間10s2内の気体は速やかに排出される。具体的には、下部空間10s2内の気体は側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間を通って、チャンバ10から排出される。図8では、この気流を模式的に破線の矢印で示している。
【0074】
第1減圧処理によって、チャンバ10内の気圧は低下するので、基板9の第1面F1上の塗布膜90の溶媒は蒸発する。図9では、塗布膜90からの溶媒蒸気の流れを破線の矢印で模式的に示している。第1減圧処理においては、冷却部40が冷却面40aを冷却しているので、塗布膜90からの溶媒蒸気は冷却面40aにおいて冷却されて凝縮する。つまり、図9に示されるように、冷却面40aに液状の溶媒91が付着する。言い換えれば、冷却面40aの目標温度は、チャンバ10内の気圧が第1目標気圧となる状態で、溶媒蒸気が凝縮する程度の温度に設定される。より具体的な一例として、冷却面40aの目標温度は、溶媒の蒸気圧曲線において圧力が第1目標気圧となるときの温度以下に設定される。これにより、冷却面40aのうち塗布膜90と対面する領域には、溶媒91がほぼ均一に一様に付着し得る。このように、上部空間10s1内の溶媒蒸気が冷却面40aで凝縮することにより、上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度が低下し、その上面視における溶媒蒸気の濃度分布がより均一化される。
【0075】
比較のために、冷却部40が設けられていない比較構造について説明する。図10は、比較構造にかかるチャンバ10の天板部13および基板9を拡大して示す図である。図9の例では、チャンバ10の天板部13の下面13aは冷却部40によって冷却されていない。天板部13の下面13aの温度は例えばおおむね常温である。
【0076】
第1減圧処理においては、基板9と下面13aとの間隔は狭いので、塗布膜90からの溶媒蒸気はすぐに天板部13の下面13aに衝突する。このため、上部空間10s1のうちの塗布膜90の中央部分と対向する中央領域では、溶媒蒸気が留まりやすい。一方、上部空間10s1のうちの塗布膜90の周縁部分と対向する周縁領域では、濃度拡散により溶媒蒸気は水平方向に流出することができる。そのため、塗布膜90の周縁部分は中央部分に比べて蒸発しやすくなる。つまり、塗布膜90に乾燥ムラが生じ得る。
【0077】
図11は、比較構造における上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。図11(a)は、上面視における溶媒蒸気の濃度分布を示し、図11(b)は、側面視における溶媒蒸気の濃度分布を示している。図11(a)では、溶媒蒸気の濃度分布を等高線T1から等高線T10で示している。等高線T1から等高線T10は、その符号の数字が小さいほど高い濃度を示している。つまり、等高線T1が等高線T1から等高線T10の間で最も高い濃度を示している。図11(b)では、溶媒蒸気の濃度分布を等高線T11から等高線T21で示している。等高線T11から等高線T21は、その符号の数字が小さいほど高い濃度を示している。つまり、等高線T11が等高線T11から等高線T21の間で最も高い濃度を示している。
【0078】
図11(a)から理解できるように、比較構造では、塗布膜90の周囲から外側に溶媒蒸気が流れている。また、図11(b)に示されているように、上部空間10s1のうちの塗布膜90の周縁部分と対面する周縁領域10rでは、溶媒蒸気の濃度は塗布膜90の外側に向かうにつれて低下する。このため、塗布膜90の周縁部分は中央部分に比べてより蒸発しやすくなることが分かる。
【0079】
図12は、冷却部40が冷却している状態での上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。図12(a)は、上面視における溶媒蒸気の濃度分布を示し、図12(b)は、側面視における溶媒蒸気の濃度分布を示している。図12(a)から理解できるように、溶媒蒸気は塗布膜90の周囲から外側にはあまり流れ出ていない。これは、塗布膜90からの溶媒蒸気が冷却面40aにおいて冷却されて凝縮するからである。つまり、塗布膜90のうちの中央部分からの溶媒蒸気も周縁部分からの溶媒蒸気も、冷却面40aとの温度差に応じた上昇気流で上方に流れて、冷却面40aで凝縮するのである(図9も参照)。このように周縁部分からの溶媒蒸気も冷却面40aにおいて凝縮するので、溶媒蒸気の外側への流れはあまり生じない。また、塗布膜90からの溶媒蒸気は上部空間10s1においてあまり滞留しない。
【0080】
図12(b)に示されているように、周縁領域10rにおいても、溶媒蒸気の濃度は上下方向において塗布膜90から離れるにしたがって低下するものの、水平方向においてはほぼ均一である。
【0081】
したがって、塗布膜90の中央部分における蒸発量と周縁部分における蒸発量との差を低減させることができ、乾燥ムラの発生を抑制することができる。また、冷却面40aでの溶媒蒸気の凝縮により、上部空間10s1における溶媒蒸気の濃度を低下させるので、塗布膜90の蒸発を促進させることもできる。このため、減圧乾燥処理におけるスループットを向上させることもできる。
【0082】
次に、例えばチャンバ10内の気圧が第1目標気圧に達すると、減圧乾燥装置1は第2間隔調整処理を行う(ステップS5)。第2間隔調整処理は、基板9と冷却面40aとの間隔を第2間隔とする処理である。具体的には、制御部80は第1昇降部100を制御して、支持部20を下降位置H2に下降させる。支持部20が下降位置H2に位置する第2状態では、基板9は側面整流板51の上端よりも下方に位置している。
【0083】
次に、減圧乾燥装置1は第2減圧処理を行う(ステップS6:第2工程に相当)。第2減圧処理は、チャンバ10内の気圧を第1目標気圧よりも低い第2気圧(以下、第2目標気圧と呼ぶ)に低下させる処理である。具体的には、制御部80は減圧機構30にチャンバ10内の気体を第1吸引流量よりも大きい第2吸引流量で吸引させることにより、チャンバ10内の気圧を低下させる。例えば、制御部80が主バルブVeの開度を第1減圧処理時の開度よりも大きくしてもよい。チャンバ10内の気圧は、第1減圧処理時の低下速度よりも高い低下速度で第2目標気圧まで低下する。第2減圧処理では、減圧乾燥装置1はチャンバ10内の気圧を所定期間に亘って第2目標気圧で維持させてもよい。第2目標気圧は例えば10kPa未満かつ0.1Pa以上である。
【0084】
ステップS6でも、例えば、制御部80が、複数の個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれの開閉状態を個別に適宜制御してもよい。これにより、基板9の乾燥ムラを抑制するように、チャンバ10内の気流を制御することができる。
【0085】
図13は、第2減圧処理におけるチャンバ10内の様子の一例を概略的に示す図である。図13に示されるように、支持部20が下降位置H2に位置する第2状態では、基板9と冷却面40aとの間隔は広い。言い換えれば、上部空間10s1の高さは大きい。このため、第1減圧処理とは異なって、塗布膜90からの溶媒蒸気は上方にも流れやすく、溶媒蒸気の滞留を招きにくい。上部空間10s1が大きいので、上部空間10s1内の気圧をより適切かつ速やかに第2目標気圧に低下させることができる。
【0086】
また、第2状態では、支持部20によって支持された基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。このため、側面整流板51による整流機能が基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1に作用する。つまり、基板9の周縁部への気流の集中を側面整流板51によって抑制することができる。したがって、気流による塗布膜90の乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0087】
チャンバ10内の気圧が第2目標気圧に達すると、塗布膜90の溶媒が沸騰して塗布膜90の乾燥がより高い速度で進行する。減圧機構30はチャンバ10内の気圧が第2目標気圧で略一定となるようにチャンバ10内の気体を吸引してもよい。つまり、減圧機構30は所定期間に亘ってチャンバ10内の気圧を第2目標気圧に維持してもよい。本実施の形態では、第2減圧処理において、冷却面40aに付着した溶媒91も蒸発する。言い換えれば、冷却面40aの目標温度は、チャンバ10内の気圧が第2目標気圧となる状態で、溶媒が蒸発する程度の温度に設定される。より具体的な一例として、冷却面40aの目標温度は、溶媒の蒸気圧曲線において圧力が第2目標気圧となるときの温度以上に設定される。
【0088】
塗布膜90および冷却面40aからの溶媒蒸気は、側面整流板51の上端側から、側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間の空間へ流入し、排気口16a,16b,16c,16dを通じて外部に排出される。図13では、これらの溶媒蒸気の流れを破線の矢印で模式的に示している。
【0089】
塗布膜90の沸騰が終了すると、つまり、所定期間が経過すると、減圧機構30はチャンバ10内の気圧をさらに低下させてもよい。言い換えれば、減圧機構30はチャンバ10内の気圧を第2目標気圧よりも低い第3目標気圧まで低下させてもよい。これにより、塗布膜90および冷却面40aをより確実に乾燥させることができる。
【0090】
以上のように、第2減圧処理においては、第1昇降部100が支持部20を下降位置H2に下降させ、かつ、減圧機構30がチャンバ10内の気圧を第2目標気圧以下とする。これにより、減圧乾燥装置1は第2減圧処理において、基板9の第1面F1上の塗布膜90のみならず冷却面40aをも乾燥させることができる。
【0091】
塗布膜90および冷却面40aの両方が十分に乾燥すると、制御部80は給気バルブVfを開放する。これにより、給気源62から給気配管61および給気口16fを通ってチャンバ10の内部空間10sへ気体が供給される(ステップS7)。これにより、チャンバ10内の気圧が、再び大気圧まで上昇する。
【0092】
そして、例えば、最後に、基板9をチャンバ10内から搬出する(ステップS8)。ステップS8では、例えば、まず、ゲート部15が制御部80の制御下で搬入出口14を開放し、図示を省略した搬送ロボットが、支持部20に載置された乾燥済みの基板9を、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の外部へ搬出する。これにより、1枚の基板9に対する減圧乾燥処理が終了し得る。
【0093】
以上のように、本実施の形態では、制御部80は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態においてチャンバ10内の気圧を第1気圧とした後、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態においてチャンバ10内の気圧を第2気圧とするように、第1昇降部100および減圧機構30を制御する。
【0094】
具体的には、まず第1減圧処理において、冷却部40が冷却面40aを冷却し、かつ、第1昇降部100が支持部20を上昇位置H1に上昇させた状態で、減圧機構30がチャンバ10内の気圧を第1目標気圧まで低下させる。第1減圧処理では、支持部20が上昇位置H1に位置しているので、基板9と冷却面40aとの間隔は狭い。このため、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1内の気圧の急激な低下を抑制することができ、塗布膜90の突沸の発生を抑制することができる。
【0095】
また、第1減圧処理において、冷却部40が冷却面40aを冷却している。より具体的には、冷却部40は、第1目標気圧下で溶媒蒸気が凝縮する程度の目標温度まで冷却面40aの温度を低下させる。このため、基板9上の塗布膜90からの溶媒蒸気が冷却面40aで凝縮する。したがって、上部空間10s1(特に中央領域)における溶媒蒸気の滞留を抑制することができ、塗布膜90の乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0096】
一方、第1減圧処理の後の第2減圧処理においては、第1昇降部100が支持部20を下降位置H2に下降させた状態で、減圧機構30がチャンバ10内の気圧を第2目標気圧以下に低下させる。支持部20が下降位置H2に位置しているので、基板9と冷却面40aとの間隔は広い。これにより、チャンバ10内の気圧をより適切かつ速やかに低下させることができる。したがって、塗布膜90をより適切かつ速やかに乾燥させることができる。なお、第2減圧処理では、基板9と冷却面40aとの間隔は広いので、溶媒蒸気の滞留は生じにくく、乾燥ムラの発生を招きにくい。
【0097】
また、第2減圧処理において、冷却面40aの温度は、第2目標気圧下で溶媒が蒸発する程度の温度である。このため、第2減圧処理において、基板9上の塗布膜90のみならず冷却面40aをも乾燥させることができる。したがって、次の基板9に対する減圧乾燥処理を行う前に、冷却面40aの乾燥処理を別途に行う必要がなく、次の基板9に対する減圧乾燥処理を速やかに行うことができる。これによれば、複数の基板9に対する減圧乾燥処理のスループットを向上させることができる。
【0098】
また、第1実施形態では、チャンバ10の天井面が冷却面40aに相当する。このため、冷却部40をチャンバ10の上面に外付けすれば、既設のチャンバ10をそのまま流用することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、冷却部材41が天板部13を冷却することで、天板部13の下面である冷却面40aを冷却している。上面視における冷却部材41内の温度分布は、冷媒流路41aの延在形状に応じてややばらつき得るものの、天板部13内の熱伝達により、温度分布のばらつきは冷却面40aに向かうにつれて緩和される。つまり、天板部13の冷却面40aにおける温度分布をより均一化することができる。このため、基板9の第1面F1上の塗布膜90からの溶媒蒸気を、より均一に冷却面40aにおいて凝縮させることができる。したがって、上部空間10s1における溶媒蒸気の濃度分布の均一性を高めることができる。これにより、乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔調整に、支持部20を昇降させる第1昇降部100を用いている。このため、既設の第1昇降部100をそのまま流用することができる。
【0101】
<2.第2実施形態>
図14は、第2実施形態に係る減圧乾燥装置1Aの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Aは第2昇降部45を除いて、減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。第2昇降部45は、冷却部40の冷却部材41を冷却位置H3と離間位置H4との間で昇降させる。冷却位置H3は、冷却部材41の下面がチャンバ10の天板部13の上面に接する位置であり、離間位置H4は、冷却部材41が天板部13から離れた位置である。図14の例では、離間位置H4に位置する冷却部材41が仮想線で模式的に示されている。第2昇降部45には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。
【0102】
図15は、第2実施形態に係る減圧乾燥処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、図15のステップS11からステップS19の処理がこの記載の順に行われる。冷却部材41は初期的には、冷却位置H3に位置している。
【0103】
減圧乾燥装置1AはまずステップS11からステップS15をこの順で行う。ステップS11からステップS15はそれぞれステップS1からステップS5と同様である。ただし、冷却部40による冷却面40aへの冷却動作は、実質的にはステップS15で終了し得る。
【0104】
ステップS15の次に、減圧乾燥装置1Aは冷却部離間処理を行う(ステップS16)。冷却部離間処理は、冷却部40を離間位置H4へ移動させる処理である。具体的には、制御部80は第2昇降部45を制御して、冷却部材41を冷却位置H3から離間位置H4へ上昇させる。冷却部材41が離間位置H4へ上昇することにより、冷却面40aに対する冷却動作は実質的に中断され得る。
【0105】
次に、減圧乾燥装置1AはステップS17からステップS19を行う。ステップS17からステップS19はそれぞれステップS6からステップS8と同様である。
【0106】
以上のように、第2実施形態によれば、第1減圧処理(ステップS14)において、冷却部材41は冷却位置H3に下降しており、天板部13の下面である冷却面40aを冷却する。このため、減圧乾燥装置1Aは第1減圧処理において溶媒蒸気をより確実に冷却面40aで凝縮させることができる。しかも、第2実施形態によれば、第2減圧処理(ステップS17)において、冷却部材41は離間位置H4に上昇している。このため、第2減圧処理において、冷却面40aに対する冷却動作は実質的に中断され得る。冷却部材41が冷却面40aから遠ざかることにより、冷却面40aの温度は時間の経過とともに上昇するので、冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進させることができる。したがって、減圧乾燥装置1Aは第2減圧処理において冷却面40aをより確実に乾燥させることができる。
【0107】
<3.第3実施形態>
図16は、第3実施形態に係る減圧乾燥装置1Bの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Bは、冷却部40の内部構成を除いて減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。
【0108】
図16に示されるように、減圧乾燥装置1Bの冷却部40の一部は、チャンバ10の天板部13に埋設されている。ここでは、天板部13が冷却部材41として機能する。天板部13は熱伝導率の高い材料(例えば金属)によって形成されてもよい。図16の例では、天板部13の内部には、冷却部40の一部である冷媒流路41aが形成されている。冷媒流路41aは例えば上面視において天板部13の内部を蛇行していてもよく、渦巻き状に延びていてもよい。図16の例では、冷媒流路41aの流入口41bおよび流出口41cは天板部13の上面に形成されている。流入口41bは第1冷媒配管42の下流端に接続され、流出口41cは第2冷媒配管43の上流端に接続される。
【0109】
冷媒冷却源44が冷媒を冷却しつつ循環させることにより、チャンバ10の天板部13を冷却することができる。つまり、天板部13の下面である冷却面40aが冷却される。
【0110】
減圧乾燥装置1Bを用いた減圧乾燥処理の流れの一例は第1実施形態における減圧乾燥処理と同様である。これにより、第3実施形態でも、乾燥ムラの発生を抑制しつつ、複数の基板9に対する減圧乾燥処理のスループットを向上させることができる。
【0111】
しかも、第3実施形態では、天板部13が冷却部材41として機能する。したがって、減圧乾燥装置1Bの部品点数を低減させることができ、減圧乾燥装置1Bのサイズおよび製造コストを低減させることができる。また、冷媒流路41aと冷却面40aとの間隔を低減させることができるので、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0112】
なお、天板部13に埋設される冷却部40の一部は、天板部13から熱を吸収する低温部分であり、例えば、冷却部40がペルチェ素子等の冷却素子を有している場合には、該冷却素子が天板部13に埋設される。
【0113】
<4.第4実施形態>
図17は、第4実施形態に係る減圧乾燥装置1Cの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Cは、冷却部40の内部構成を除いて減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。
【0114】
図17に示されるように、減圧乾燥装置1Cの冷却部40の一部は、チャンバ10の内部空間10sに位置している。具体的には、冷却部材41がチャンバ10の内部空間10sに位置している。冷却部材41は、チャンバ10内において、支持部20によって支持された基板9の第1面F1と対面する位置に設けられている。つまり、冷却部材41は支持部20によって支持された基板9よりも上方に設けられている。冷却部材41は、チャンバ10内において、その厚み方向が上下方向に沿う姿勢で設けられる。冷却部材41は不図示の固定部を通じてチャンバ10に固定される。冷却部材41は例えばネジ等の固定部によってチャンバ10の天板部13に固定されていてもよい。第4実施形態では、冷却部材41の下面が冷却面40aに相当する。
【0115】
図17の例では、第1冷媒配管42および第2冷媒配管43は天板部13を貫通しており、冷媒冷却源44はチャンバ10の外部に設けられている。冷媒冷却源44が冷媒を冷却しつつ冷媒を循環させることにより、冷却部材41が冷却される。つまり、冷却部材41の冷却面40aが冷却される。
【0116】
図17の例では、冷却部材41は上面視において基板9よりも大きなサイズを有する。冷却部材41の冷却面40aは上面視において基板9と同様の長方形状を有してもよい。この場合、冷却面40aの長辺は基板9の長辺よりも長く、冷却面40aの短辺は基板9の短辺よりも長い。これによれば、冷却面40aは上下方向において基板9の第1面F1の全面と対面することができる。また、冷却面40aは上面視において正方形状を有していてもよい。この場合、冷却面40aの1辺は基板9の短辺よりも長くてもよい。これによれば、支持部20上に配置される基板9の向きに拘わらず、上面視において、冷却面40aは基板9よりも大きい。このため、基板9の向きに拘わらず、冷却面40aは、基板9の第1面F1の全面と対向することができる。
【0117】
減圧乾燥装置1Cを用いた減圧乾燥処理の流れの一例は第1実施形態における減圧乾燥処理と同様である。これにより、第4実施形態でも、乾燥ムラの発生を抑制しつつ、複数の基板9に対する減圧乾燥処理のスループットを向上させることができる。
【0118】
しかも、第4実施形態では、冷却面40aは、チャンバ10とは別体の冷却部材41の下面である。このため、冷却面40aを有する冷却部材41の材料をチャンバ10への仕様要求とは別に選定することができる。つまり、冷却部材41の材料の選択性を向上させることができる。また、冷却面40aは冷却部材41の下面であるので、冷却部40の低温部分(ここでは冷媒流路41a)と冷却面40aとの間隔を狭くすることができる。このため、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0119】
<5.第5実施形態>
図18は、第5実施形態に係る減圧乾燥装置1Dの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Dは、第1昇降部100の昇降対象を除いて減圧乾燥装置1Cと同様の構成を有している。図18に示されるように、第1昇降部100は冷却部40を昇降させる。具体的には、第1昇降部100は冷却部40の冷却部材41を上昇位置H11と下降位置H12との間で昇降させる。下降位置H12は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるときの冷却部材41の位置である。図18では、下降位置H12に位置する冷却部材41を仮想線で示している。上昇位置H11は、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となるときの冷却部材41の位置である。つまり、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態との間で、冷却部材41を昇降させる。
【0120】
図18に示されるように、支持部20は、第1実施形態から第4実施形態でいう下降位置H2に位置している。つまり、支持部20によって支持された基板9は側面整流板51の上端よりも低い位置にあり、4つの側面整流板51によって包囲されている。第5実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態、および、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態の両方において、基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。
【0121】
下降位置H12は、冷却部材41の冷却面40aが側面整流板51の上端よりも下方となる位置であってもよい。つまり、冷却部材41は、上面視において、4つの側面整流板51によって囲まれた空間よりも小さいサイズを有する。
【0122】
上昇位置H11は、冷却部材41の冷却面40aが側面整流板51の上端よりも上方となる位置である。冷却部材41が上昇位置H11に位置する状態で、冷却面40aと側面整流板51の上端との間隔は、例えば、第1間隔の2倍以上であってもよく、5倍以上であってもよい。これによれば、基板9の直上の気体が側面整流板51の上端側から側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間の空間に流入しやすい。
【0123】
第1昇降部100には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。第1昇降部100の本体部100aは、例えば、チャンバ10の外部において、図示を省略した装置フレームに固定される。第1昇降部100の移動部100bは、例えば、本体部100aに対して、上下方向に移動することができる。移動部100bには、例えば、棒状の部材等が適用される。移動部100bは、例えば、チャンバ10の天板部13の貫通孔13hに挿通された状態で位置している。そして、例えば、移動部100bの下端部に、冷却部材41が固定されている。ここでは、例えば、天板部13の上面と移動部100bとの間にベローズ等が設けられれば、天板部13と移動部100bとの隙間が密閉され得る。
【0124】
減圧乾燥装置1Dを用いた減圧乾燥処理の流れの一例は第1実施形態における減圧乾燥処理と同様である。ただし、第1間隔調整処理(ステップS3)では、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるように、冷却部材41を下降位置H12に下降させる。また、第2間隔調整処理(ステップS5)では、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となるように、冷却部材41を上昇位置H11に上昇させる。これにより、第5実施形態でも、乾燥ムラの発生を抑制しつつ、複数の基板9に対する減圧乾燥処理のスループットを向上させることができる。
【0125】
しかも、第5実施形態では、冷却部材41がチャンバ10とは別体である。このため、第4実施形態と同様に、冷却部材41の材料の選択性を向上させることができる。また、冷却面40aは冷却部材41の下面であるので、第4実施形態と同様に、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0126】
また、第5実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔がより狭い第1間隔となる第1状態においても、支持部20によって支持された基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。このため、第1減圧処理(ステップS4)においても、4つの側面整流板51による整流機能が、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1にも作用する。したがって、乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0127】
<6.変形例>
本開示は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良等が可能である。
【0128】
上記一実施の形態では、第1昇降部100は支持部20または冷却部40を昇降させているものの、支持部20および冷却部40の両方を昇降させてもよい。要するに、第1昇降部100は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔よりも広い第2間隔となる第2状態との間で、支持部20および冷却面40aの少なくともいずれか一方を昇降させればよい。
【0129】
上記一実施形態では、例えば、チャンバ10が、4つの排気口16a,16b,16c,16dを有していたが、これに限られない。例えば、チャンバ10が有する排気口の数は、1つから3つおよび5つ以上の何れであってもよい。また、例えば、個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、なくてもよい。
【0130】
上記一実施形態では、減圧乾燥装置1,1A~1Dは、基板9上の塗布膜90を減圧によって乾燥させるものであったが、これに限られない。例えば、減圧乾燥装置1,1A~1Dは、減圧および加熱によって、基板9上の塗布膜90を乾燥させるものであってもよい。
【0131】
上記一実施形態では、チャンバ10の側壁部12に、基板9の搬入出口14が設けられていたが、これに限られない。例えば、チャンバ10の4つの側壁部12および天板部13が一体の蓋部を構成しており、この蓋部が底板部11から分離して上方へ退避することができる構造が採用されてもよい。この場合には、例えば、蓋部が開閉駆動部16等によって上下に移動されてもよい。そして、チャンバ10は、蓋部がOリング等のシール材を介して底板部11に接触して内部空間10sを密閉している状態(密閉状態)と、蓋部が底板部11から上方へ分離して内部空間10sを開放している状態(開放状態)と、に選択的に設定され得る。ここで、チャンバ10が開放状態にあれば、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。チャンバ10が閉鎖状態にあれば、内部空間10sからの排気および内部空間10sへの給気によって、基板9上の塗布膜90を減圧によって乾燥させることができる。
【0132】
上記一実施形態では、例えば、支持部20は種々の形態を有していてもよい。例えば、複数の支持プレート21は、一体的な1つの支持プレート21であってもよい。
【0133】
上記一実施形態では、例えば、底面整流板50がなくてもよいし、側面整流板51がなくてもよい。
【0134】
上記一実施形態では、例えば、減圧乾燥装置1における各種の動作は、例えば、入力部804に対するユーザの動作もしくは通信部806に対して外部の装置から入力された信号等に応答して、開始あるいは終了されてもよい。
【0135】
上記一実施形態では、例えば、制御部80において、実現される機能的な構成の少なくとも一部が、専用の電子回路等のハードウェアで構成されていてもよい。
【0136】
なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0137】
1,1A~1D 減圧乾燥装置
10 チャンバ
13 天板部
100 第1昇降部
20 支持部
30 減圧機構
40 冷却部
40a 冷却面
45 第2昇降部
50 底面整流板
51 側面整流板
80 制御部
9 基板
90 塗布膜
F1 上面(第1面)
S4,S14 第1工程(ステップ)
S6,S17 第2工程(ステップ)
図1
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