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特許7595053被覆部材付構造体、濾過機、及び異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】被覆部材付構造体、濾過機、及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01M3/26 L
G01M3/26 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022204177
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024089057
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】久谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹井 一剛
(72)【発明者】
【氏名】田村 晴海
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-234822(JP,A)
【文献】特開平4-083973(JP,A)
【文献】特開昭55-119432(JP,A)
【文献】特開昭63-052653(JP,A)
【文献】特開昭55-098326(JP,A)
【文献】実開昭52-067633(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0033282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部を減圧又は加圧可能な容器と、
前記容器内部に配された可動部材と、
前記可動部材の少なくとも一部を被覆する被覆部材と、
流体検知装置とを備え、
前記可動部材と前記被覆部材との間には空間が形成されており、
前記流体検知装置は、前記容器内部と前記空間とが前記被覆部材の破損によって連通したときに生じる前記容器内部の減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている、被覆部材付構造体。
【請求項2】
前記流体検知装置は、前記被覆部材が伸縮動作していないときの前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている、請求項1に記載の被覆部材付構造体。
【請求項3】
前記流体検知装置は、前記流体の流量又は前記空間内の圧力を測定する測定器を備え、予め設定された流量又は圧力の閾値と、流量又は圧力の測定値とに基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている、請求項1に記載の被覆部材付構造体。
【請求項4】
前記流体検知装置が前記容器の外部に配され、
前記空間と前記流体検知装置との間で流体を連通させうる流路を備えている、請求項1に記載の被覆部材付構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の被覆部材付構造体を備える濾過機であって、
前記容器は、濾過部を有し、
前記可動部材は、回転軸と前記回転軸に接続された回転翼とを有し、
前記被覆部材は、前記回転軸の少なくとも一部を被覆するように構成されている、濾過機。
【請求項6】
被覆部材付構造体の異常検知方法であって、
前記被覆部材付構造体は、
容器内部を減圧又は加圧可能な容器と、
前記容器内部に配された可動部材と、
前記可動部材の少なくとも一部を被覆する被覆部材と、を備え、
前記可動部材と前記被覆部材との間には空間が形成されており、
前記容器内部と前記空間とが前記被覆部材の破損によって連通したときに生じる前記容器内部の減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知する、異常検知方法。
【請求項7】
前記被覆部材付構造体を使用する前に前記容器内部を減圧状態又は加圧状態とし、該減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の状態を判断する、請求項6に記載の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部材付構造体、被覆部材付構造体を備える濾過機、及び被覆部材付構造体の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種装置において、可動部材を保護するために被覆部材が使用されている。被覆部材の一例としてのベローズは、可動部材の変形動作に伴って変形する筒状であり且つ蛇腹状の伸縮部材である。かかる被覆部材は、被覆部材と可動部材との間の空間に外部から流体が侵入しないよう遮断することでその機能を発揮するものである。
【0003】
被覆部材の一例であるベローズが備えられた装置の一例としては、下記特許文献1に記載のような遠心分離機が知られている。この遠心分離機は、分離したケーキを掻き取る回転翼を有する回転軸と、該回転軸を被覆するベローズとを備えている。また、特許文献1の遠心分離機は、回転翼の高さを調整可能なように回転軸が軸方向に移動するように構成されている。このとき、ベローズは、回転軸の軸方向における移動にともなって伸縮変形することとなる。
【0004】
かかるベローズは、度重なる伸縮動作によって破損する場合がある。そこで、特許文献1の遠心分離機は、回転軸とベローズとの間の空間に接続された破損検知手段を備えている。この破損検知手段は、前記空間に接続された圧力計を備えており、正常時のベローズの伸縮動作による前記空間の圧力の変動幅が、ベローズの破損時には低下することに基づいてベローズの破損を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-301028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、容器内部を減圧又は加圧可能な容器内に被覆部材が設けられた装置が存在する。例えば、濾過乾燥機は、減圧又は加圧可能な容器と、回転翼を有する軸部材(可動部材)と、該軸部材を被覆するベローズ(被覆部材)とを備えている。そして、かかる濾過乾燥機においても、ベローズが破損するおそれがありベローズの破損を検知するように構成されることが好ましい。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、容器内部が減圧状態又は加圧状態の容器内に配された被覆部材の破損をより正確且つ容易に検知することができる被覆部材付構造体、該被覆部材付構造体を備える濾過機、及び異常検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る被覆部材付構造体は、
容器内部を減圧又は加圧可能な容器と、
前記容器内部に配された可動部材と、
前記可動部材の少なくとも一部を被覆する被覆部材と、
流体検知装置とを備え、
前記可動部材と前記被覆部材との間には空間が形成されており、
前記流体検知装置は、前記容器内部と前記空間とが前記被覆部材の破損によって連通したときに生じる前記容器内部の減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている。
【0009】
かかる構成により、被覆部材が伸縮動作中の場合、及び、伸縮動作をしていない場合のいずれの場合であっても被覆部材の破損を検知することができ、被覆部材の破損をより迅速に検知することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る被覆部材付構造体は、
前記流体検知装置が、前記被覆部材が伸縮動作していないときの前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている。
【0011】
上記構成によれば、被覆部材の伸縮動作に起因した流体の流れや圧力の変動がないため、被覆部材の破損によって前記空間内に僅かな流体の移動が生じた場合であっても、正確に検知することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る被覆部材付構造体は、
前記流体検知装置が、前記流体の流量又は前記空間内の圧力を測定する測定器を備え、予め設定された流量又は圧力の閾値と、流量又は圧力の測定値とに基づいて前記被覆部材の破損を検知するように構成されている。
【0013】
被覆部材が破損すると容器内部の圧力が前記空間内にも伝わり、前記空間内の流体はそれによって流動するか又は圧力が変動するため、上記構成によれば、流体の流量又は圧力を測定することにより、被覆部材の破損を検知することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る被覆部材付構造体は、
前記流体検知装置が前記容器の外部に配され、
前記空間と前記流体検知装置との間で流体を連通させうる流路を備えている。
【0015】
流体検知装置が前記容器の外部に配されていることにより、該流体検知装置が容器内部に収容される被処理物や、該容器内部の圧力や温度に晒されることがないため、測定精度が低下しにくく、被覆部材の破損をより正確に検知することができる。また、該流体検知装置の交換作業が容易となる。
【0016】
本発明の一態様に係る濾過機は、上記いずれかの被覆部材付構造体を備えるものであり、
前記容器は、濾過部を有し、
前記可動部材は、回転軸と前記回転軸に接続された回転翼とを有し、
前記被覆部材は、前記回転軸の少なくとも一部を被覆するように構成されている。
【0017】
かかる構成によれば、濾過機内に配された被覆部材の破損をより正確且つ容易に検知することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る被覆部材付構造体の異常検知方法は、
前記被覆部材付構造体が、
容器内部を減圧又は加圧可能な容器と、
前記容器内に配された可動部材と、
前記可動部材の少なくとも一部を被覆する被覆部材と、を備え、
前記可動部材と前記被覆部材との間には空間が形成されており、
前記容器内部と前記空間とが前記被覆部材の破損によって連通したときに生じる前記容器内部の減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の破損を検知する。
【0019】
かかる構成によれば、被覆部材の破損をより正確且つ容易に検知することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る被覆部材付構造体の異常検知方法では、
前記被覆部材付構造体を使用する前に前記容器内部を減圧状態又は加圧状態とし、該減圧状態又は加圧状態に起因する前記空間内の流体の流れ又は圧力変動に基づいて前記被覆部材の状態を判断する。
【0021】
かかる構成によれば、被覆部材付構造体を安全に使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、容器内部が減圧又は加圧される容器内に配された被覆部材の破損をより正確且つ容易に検知することができる被覆部材付構造体、該被覆部材付構造体を備える濾過機、及び被覆部材付構造体の異常検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態の被覆部材付構造体を備える濾過乾燥機の概略側面図であり、容器の内部構造を示す図である。
図2図1の濾過乾燥機において、容器の内部に配された第1のベローズ(内部ベローズ)と回転軸との間の空間を拡大して示す図である。
図3図1の濾過乾燥機において、容器の外部に配された第2のベローズ(外部ベローズ)と回転軸との空間を拡大して示す図である。
図4図1の濾過乾燥機において、第1のベローズ(内部ベローズ)の異常を検知するために設けられた流体検知装置の拡大図である。
図5図1の濾過乾燥機において、第3のベローズの異常を検知するために設けられた流体検知装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る被覆部材付構造体について、濾過乾燥機を例示しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る濾過乾燥機1は、被処理物を収容する容器10と、容器10に収容された被処理物を撹拌するための撹拌装置20と、被処理物を乾燥させた乾燥物の取出口を開閉するための開閉装置30とを備えている。
【0026】
本実施形態の容器10は、上下方向に延びる円筒状の側壁部11と、側壁部11の上端部を塞ぐ天井部12と、側壁部11の下端部を塞ぐ下蓋部13とを有する。容器10は、側壁部11、天井部12、及び下蓋部13で囲われた容器内部V1を有する。容器内部V1に収容される被処理物としては、例えば、溶媒などの液状物と、該液状物に懸濁した固形物とを含むスラリー液が挙げられる。
【0027】
容器10は、容器内部V1に前記スラリー液などの流体を導入するための導入部14を有する。導入部14は、天井部12に形成された導入開口に接続された導入配管141と、導入配管141の流路の開閉を切り替え可能にする第1バルブ142とを備えている。
【0028】
下蓋部13は、容器内部V1に導入された前記スラリー液を濾過するための濾過部を有している。具体的には、下蓋部13は、側壁部11の下端部を閉塞する蓋本体131と、蓋本体131よりも上方に設けられて前記スラリー液に含まれる固形物を捕集しつつ液状物を通過させる濾板132とを有する。
【0029】
容器10は、濾板132を通過した液状物を外部に排出するための排出部15を有する。排出部15は、蓋本体131に形成された排出開口に接続された排出配管151と、排出配管151の流路の開閉を切り替え可能にする第2バルブ152とを備えている。また、容器10は、容器内部V1を減圧状態とするための減圧部16を有する。減圧部16は、減圧ポンプ(図示せず)に接続された減圧配管161と、減圧配管161の流路の開閉を切り替え可能な第3バルブ162とを備えている。
【0030】
図5に示すように、側壁部11は、濾板132に捕集された固形物の容器10の側方からの回収を可能にするための取出開口部111を有する。取出開口部111は、濾板132上で乾燥された固形物と水平方向において隣接し得る位置に形成されている。取出開口部111は、開閉装置30によって開閉の切り替えが可能となっている。
【0031】
本実施形態の容器10は、上記構成によって密閉された状態となるように構成されており、そのため、容器内部V1を減圧状態又は加圧状態とすることが可能である。例えば、前記減圧ポンプを駆動させて前記第3バルブ162を開状態とすることによって、容器内部V1は減圧状態となり得る。また、開状態の導入配管141を介して容器10内に空気、又は窒素などの不活性ガスが導入されることによって、容器内部V1は加圧状態となり得る。
【0032】
本実施形態の撹拌装置20は、容器10の天井部12を貫通するように設けられた可動部材としての回転軸21と、回転軸21の下端部(容器10の内部に配された端部)に接続されて容器内部V1に収容されたスラリー液などを撹拌する複数の回転翼22と、回転軸21を軸周りに回転させるモータ23a及び減速機23bと、回転軸21を軸方向に移動させる油圧装置24とを有する。
【0033】
ここで、前記可動部材とは、装置の運転中に、回転、伸縮、揺動といった何らかの運動を行う部材であり、被覆部材による被覆の対象となり得るものである。
【0034】
図1図3に示すように、回転軸21は、天井部12を貫通するように設けられていることによって、容器10の内部に配された部分と、容器10の外部に配された部分とを有する。回転軸21の容器10の外部に配された部分には、減速機23bが取付けられ、減速機23bを介してモータ23aの回転が伝達されるように構成されている。そして、回転軸21は、容器10の内部において第1のベローズ40aによって全体が被覆され、且つ、容器10の外部において減速機23bより上方は第2のベローズ40bに被覆されている。すなわち、本実施形態の濾過乾燥機1は、被覆部材としてのベローズ40を備え、該ベローズ40は、容器10の内部において回転軸21を被覆する内部ベローズ40aと、容器10の外部において回転軸21を被覆する外部ベローズ40bとを備えている。
【0035】
ここで、前記被覆部材とは、前記可動部材が回転、伸縮、揺動といった運動を行った場合であっても、該可動部材の少なくとも一部を被覆した状態を維持しつつ該可動部材の運動に追従して変形し得るもの、又は該可動部材の少なくとも一部を被覆した状態を維持しつつ該可動部材の運動によって生じる被処理物の流動によって変形し得るものである。
【0036】
回転軸21は、油圧装置24によって軸方向に移動し得る構成となっており、減速機23bは回転軸21が軸方向に移動してもモータ23aの回転を回転軸21へ伝達しうる構成となっている。回転軸21と減速機23bとの係合部分には、流体が連通可能な連通部が形成されている。したがって、本実施形態では、回転軸21と内部ベローズ40aとの間には第1の空間S1が形成され、且つ、回転軸21と外部ベローズ40bとの間には第2の空間S2が形成され、第1の空間S1と第2の空間S2は、減速機23bにおける連通部を介して流体が移動可能な状態となっている。言い換えると、本実施形態の濾過乾燥機1では、前記連通部を介して第1の空間S1から第2の空間S2にわたって延びる流体の流路が形成されている。なお、以下では、この流体の流路を第1の流路P1と称することとする。第1の流路P1は、正常時には、内部ベローズ40aによって容器内部V1と遮断されている。
【0037】
図5に示すように、本実施形態の開閉装置30は、側壁部11に形成された取出開口部111の前記取出口を閉塞する閉塞体31と、閉塞体31から容器10の外方に向かって延びる軸部材32と、軸部材32を軸方向に移動させる油圧装置33と、取出開口部111の外側で密閉空間を構成する筐体34とを有する。これによって、開閉装置30は、閉塞体31を取出開口部111に当接させて取出開口部111を閉状態とすることが可能であり、且つ、閉塞体31を取出開口部111から離反させて取出開口部111を開状態とすることが可能である。
【0038】
また、本実施形態の開閉装置30は、取出開口部111に対する閉塞体31のシール性能を確認可能とするために、筐体34の密閉空間V2は加圧可能に構成されている。具体的には、閉塞体31によって取出開口部111を閉塞した状態で筐体34内に空気又は窒素等の不活性ガスが供給されて加圧され、その圧力を監視することで、閉塞体31のシール性が確認され得る。
なお、筐体34は本発明における容器の一例であるため、筐体内部の密閉空間V2は本発明における容器内部に相当するものである。
【0039】
本実施形態の開閉装置30は、軸部材32の全体を被覆する第3のベローズ40cを有する。また、軸部材32と第3のベローズ40cとの間には、それぞれの軸部材32の長さ方向に沿って延びる第3の空間S3が形成されている。すなわち、本実施形態の濾過乾燥機1では、軸部材32と第3のベローズ40cとの間に延びる流体の流路が形成されている。なお、以下では、この流体の流路を第2の流路P2と称することとする。第2の流路P2は、正常時には、第3のベローズ40cによって容器内部V2と遮断されている。
【0040】
本実施形態のベローズ40は、金属製である。該金属としては、例えば、SUS316、SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼や、ニッケルを40質量%以上含むニッケル合金が挙げられる。なお、前記ベローズは、金属製に限定されず、例えば、樹脂製であってもよく、該樹脂としてはPTFEなどのフッ素樹脂が好ましい。
【0041】
本実施形態の濾過乾燥機1は、各ベローズ40の破損を検知するための流体検知装置50をさらに備えている。より具体的には、図4図5に示すように、本実施形態の濾過乾燥機1は、第1の流路P1に流体的に接続された第1の流体検知装置50a(図4)と、第2の流路P2に流体的に接続された第2の流体検知装置50b(図5)とを備えている。
【0042】
第1の流体検知装置50aは、容器内部V1と第1の流路P1とが内部ベローズ40aの破損によって連通したときに生じる流体の流れであって、容器内部V1の減圧状態又は加圧状態に起因する流体の流れに基づいて内部ベローズ40aの破損を検知するように構成されている。また、第2の流体検知装置50bは、容器内部V2と第2の流路P2とが第3のベローズ40cの破損によって連通したときに生じる流体の流れであって、容器内部V2の減圧状態又は加圧状態に起因する流体の流れに基づいて第3のベローズ40cの破損を検知するように構成されている。
【0043】
また、第1の流体検知装置50aは、内部ベローズ40aが伸縮動作していないときの第1の流路P1内の流体の流れに基づいて内部ベローズ40aの破損を検知するように構成されている。同様に、第2の流体検知装置50bは、第3のベローズ40cが伸縮動作していないときの第2の流路P2内の流体の流れに基づいて第3のベローズ40cの破損を検知するように構成されている。正常な各ベローズ40が伸縮動作していないときには、第1の流路P1及び第2の流路P2には流体の流れが生じないこととなる。よって、各ベローズ40が伸縮動作していないときに各流路に生じた僅かな流体の流れであっても、各ベローズ40の破損によるものと捉えることができる。
【0044】
第1の流体検知装置50aは、第1の流路P1における流体の物理的状態を測定する測定器51aと、測定器51aの測定値に基づいて内部ベローズ40aに破損が生じたか否かを判断する制御部(図示せず)とを有する。
【0045】
本実施形態の測定器51aは、第1の流路P1に接続された流量計である。より詳しくは、本実施形態の濾過乾燥機1は、減速機23bの上部に配置され、上端部に外部ベローズ40bが連結される連結部材60を備える。連結部材60は、回転軸21を取り囲む筒状の本体部61と、本体部61の側面から回転軸21の径方向に延びる筒状の連結部62とを有する。さらに、測定器(流量計)51aは、流体の流量を測定するセンサ部511を備え、センサ部511がセンサ取付部材512の中央に配置されるようにセンサ取付部材512に固定されている。センサ取付部材512は、T字型の配管部材であり、第1の端部512aから第2の端部512bへ直線状に延びる流路を有する筒状体と、該筒状体の中央部に前記流路と直交する方向に開口を有する第3の端部512cを有して構成されている。そして、センサ取付部材512の第1の端部512aが連結部62に連結され、且つ、第2の端部512bが大気圧下に開放されている。このように、本実施形態では、第1の流体検知装置50aが容器10の外部に配されたものとなっている。流量計51aは、センサ取付部材512の内部の流体の流量を測定し、その値を制御部へと送信する。
【0046】
本実施形態の流量計51aは、1mL/分以上、5L/分以下の流量を測定可能である。
【0047】
本実施形態の第1の前記流体検知装置50aは、ベローズが伸縮動作していない状態(すなわち、ベローズが静止している状態)でのみベローズの破損を検知するように構成することが好ましいが、ベローズが伸縮動作している最中も含めてベローズの破損を検知するように構成してもよい。
【0048】
また、本実施形態の第1の流体検知装置50aにおける制御部は、流量計51aの測定値(流量値)が予め設定された閾値を超えた場合に内部ベローズ40aに破損が生じたと判断するように構成されていてもよい。
【0049】
前記閾値としては、前記流体検知装置が、ベローズが伸縮動作していない状態で検知する場合と、ベローズが伸縮動作するときも含めて検知する場合とで、別々の値を設定することができる。
【0050】
前記流体検知装置が、ベローズが静止している状態でのみ検知する場合、前記閾値としては、破損以外の要因による微小な変化を検知(すなわち、誤検知)しない範囲で、できるだけ小さい値として設定することが好ましい。
【0051】
一方、前記流体検知装置が、ベローズが伸縮動作するときも含めて前記空間内の流体の流れ又は前記空間の圧力に基づいて前記ベローズの破損を検知する場合、正常時の内部ベローズ40aの伸縮動作によって測定され得る最大の流量値を少し(例えば10~20%)超える値が挙げられる。かかる流量値を閾値に設定することによって、ベローズが伸縮動作しているときにも正常な運転におけるベローズの伸縮動作を検知することなく、ベローズが破損した場合のみ正確に検知することが可能となる。
【0052】
本実施形態の制御部は、内部ベローズ40aに破損が生じたと判断したときに濾過乾燥機1の使用者に異常を通知する通知部を有する。例えば、前記通知部は、警報音を発するように構成されてもよく、ディスプレイにおける表示、制御盤や操作盤などに設けられたランプを点灯又は点滅するように構成されてもよい。
【0053】
本実施形態の濾過乾燥機1は、前記制御部によって内部ベローズ40aに破損が生じたと判断されたときは、前記通知部によって異常を通知するとともに、運転を停止する。容器10が減圧状態のときの運転停止の方法としては、例えば、回転軸21の回転を停止した後、減圧配管161の第3バルブ162を閉状態とし、空気又は不活性ガスを供給可能なパージライン(図示せず)によって容器内部V1の圧力を大気圧付近まで戻すことが好ましい。また、容器10が加圧状態のときの運転停止の方法としては、例えば、回転軸21の回転を停止した後、導入配管141の第1バルブ142を閉状態として加圧気体の供給を停止し、第2バルブ152を閉状態として液状物の排出を停止し、大気圧下に接続されているドレンライン(図示せず)を介して容器内部V1から気体を排出し、容器内部V1の圧力を大気圧付近まで戻すことが好ましい。
【0054】
図5に示すように、第2の流体検知装置50bは、第2の流路P2における流体の物理的状態を測定する測定器51bと、測定器51bによる測定値に基づいて第3のベローズ40cに破損が生じたか否かを判断する制御部(図示せず)とを有する。
【0055】
本実施形態の測定器51bは、第2の流路P2に接続された流量計である。より詳しくは、本実施形態の開閉装置30は、第2の流路P2に流体的に接続され筐体34の外側に延びる筒状の連結部材35を備えている。連結部材35は、筐体34の外側に配されて流量計51bが連結される連結端部351を有する。一方、流量計51bは、流量計51aと同様に構成されており、流体の流量を測定するセンサ部を有し、該センサ部がセンサ取付部材513の中央に配置されるようにセンサ取付部材513に固定されている。センサ取付部材513は、上述のセンサ取付部材512と同様に構成されている。流量計51aは、センサ取付部材513の内部の流体の流量を測定し、その値を制御部へと送信する。
【0056】
第2の流体検知装置50bは、前記第1の流体検知装置50aと同様に、ベローズが伸縮動作しないときにベローズの破損を検知するように構成することが好ましい。第2の流体検知装置50bにおける制御部は、流量計51bの測定値(流量値)が予め設定された閾値を超えた場合に第3のベローズ40cに破損が生じたと判断するように構成してもよい。閾値としては、上記した内部ベローズ40aと同様、破損以外の要因による微小な変化を検知(すなわち、誤検知)しない範囲で、できるだけ小さい値として設定することが好ましい。
【0057】
本実施形態の濾過乾燥機1は、第2の流体検知装置50bによって第3のベローズ40cに破損が生じたと判断された際には、前記通知部によって異常を通知するとともに、運転を停止し、大気圧下に接続されているか又は不活性ガスを供給可能なパージライン(図示せず)によって筐体34の容器内部V2の圧力を大気圧付近まで戻すことが好ましい。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る異常検知方法について、上記の濾過乾燥機1に適用する場合を例示して説明する。
【0059】
本実施形態の異常検知方法では、濾過乾燥機1で被処理物を処理する前の準備段階として、第1の流体検知装置50aを用いて内部ベローズ40aの使用前に状態確認(破損の有無の確認)を行ってもよい。同様に第2の流体検知装置50bを用いて第3のベローズ40cの使用前に状態確認(破損の有無)を行ってもよい。
【0060】
前記使用前の状態確認では、容器10や筐体34を減圧状態又は加圧状態とする。このとき、容器10の圧力は、ゲージ圧で0.1MPa以上とすることが好ましい。そして、第1の流体検知装置50aが第1の流路P1における流量が前記閾値未満であることを検知し、且つ、第2の流体検知装置50bが第2の流路P2における流量が前記閾値未満であることを検知した場合に、ベローズに破損がなく濾過乾燥機1が使用可能であると判断する。これによって、濾過乾燥機1を安全に使用することができる。
【0061】
また、本実施形態の異常検知方法では、濾過乾燥機1を用いて減圧濾過している際又は加圧濾過している際、さらには、減圧乾燥している際にも、継続的に第1の流体検知装置50aを用いて内部ベローズ40aの破損の検知を行い且つ第2の流体検知装置50bを用いて第3のベローズ40cの破損の検知を行う。これによって、濾過乾燥機1の運転中におけるいずれかのベローズ40に生じた破損が速やかに検知される。
【0062】
尚、本発明に係る被覆部材付構造体、濾過機、及び異常検知方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、流体検知装置50が測定器51として流量計を備える態様を示したが、本発明はこれに限定されず、前記流体検知装置は、前記測定器として圧力計を備えるものであってもよい。なお、圧力計の場合、測定時に前記第1の流路及び前記第2の流路は、大気圧に開放されない密閉系となるように圧力計の後段に弁を設置する。
【0064】
前記流体検知装置が圧力計を備える場合であっても、ベローズ等の被覆部材が伸縮動作していないときの圧力の変化に基づいて前記被覆部材に破損が生じたと判断するように構成することが好ましい。前記流体検知装置は、圧力計の測定値が予め設定された閾値を超えた場合に前記被覆部材に破損が生じたと判断するように構成することが好ましい。該閾値としては、密閉系とした際の圧力を正常値とし、この正常値から誤検知を防止し得る程度の高い及び低い値とすることができる。
【0065】
また、前記流体検知装置は、流体(液体又は気体)に含まれる成分に基づいて被覆部材の破損を検知するように構成されていてもよい。この場合、前記流体検知装置は、前記測定器として流体を検知する流体センサを備えることができ、流体センサはガスセンサとすることが好ましい。また、検知する成分としては、減圧乾燥後に容器10を大気圧下に戻すために使用される窒素などの不活性ガス、加圧濾過時に容器10に導入される窒素などの不活性ガス、前記スラリー液に含まれる有機溶剤の気化成分などが好適である。容器10又は筐体34内が加圧状態となった際、被覆部材が破損していると、これらのガス成分は容器内部と空間との圧力差によって前記第1の流路又は第2の流路の内部を流動し測定器51へと到達するため、これらのガス成分を検知した場合には直ちに被覆部材の破損と判断することができる。
【0066】
さらに、前記流体検知装置は、前記流量計、前記圧力計、及び前記流体センサからなる群より選択される2種以上の測定器を有していてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、前記流体検知装置が前記空間に前記連結部材を介して間接的に接続されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、前記流体検知装置は、前記空間に直接接続されていてもよい。
【0068】
この他、上記実施形態では、可動部材である各軸部材の全体が被覆部材であるベローズに被覆されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、可動部材である各軸部材はその一部分のみが被覆部材に被覆されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、被覆部材としてベローズを備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ベローズ以外の部材を採用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、可動部材として軸部材を備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、軸部材以外の部材を採用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…濾過乾燥機、10:容器、11:側壁部、111:取出開口部、12:天井部、13:下蓋部、131:蓋本体、132:濾板、14:導入部、141:導入配管、142:第1バルブ、15:排出部、151:排出配管、152:第2バルブ、16:減圧部、161:減圧配管、162:第3バルブ、20:撹拌装置、21:回転軸、22:回転翼、23a:モータ、23b:減速機、24:油圧装置、30:開閉装置、31:閉塞体、32:軸部材、33:油圧装置、34:筐体、35:連結部材、351:連結端部、40:ベローズ、40a:第1のベローズ(内部ベローズ)、40b:第2のベローズ(外部ベローズ)、40c:第3のベローズ、50:流体検知装置、50a:第1の流体検知装置、50b:第2の流体検知装置、51a:測定器、511:センサ部、512:センサ取付部材、512a:第1の端部、512b:第2の端部、512c:第3の端部、513:センサ取付部材、60:連結部材、61:本体部、62:連結部、V1:容器内部、V2:筐体の密閉空間(容器内部)、S1:第1の空間、S2:第2の空間、S3:第3の空間、P1:第1の流路、P2:第2の流路
図1
図2
図3
図4
図5