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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ノック式電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20241128BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20241128BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400A
G06F3/046 B
B43K24/08 110
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022512051
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012445
(87)【国際公開番号】W WO2021200521
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2020061713
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大介
(72)【発明者】
【氏名】神山 良二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504878(JP,A)
【文献】特開2016-107615(JP,A)
【文献】特開平02-035512(JP,A)
【文献】実開平06-071180(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
B43K 24/00 -24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
前記筒状の筐体の軸心方向の一端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設される第1の位置指示部と、
前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設される第2の位置指示部と、
前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する部分を有するノック部を備え、前記第1の位置指示部の前記先端部の少なくとも芯体を、前記筒状の筐体の前記一端側の開口から突出する状態と、前記第1の位置指示部を前記先端部をも含めて前記筐体内に収納する状態とを、前記ノック部に対するノック操作により現出するようにするノックカム機構部と、
を備え、
前記第2の位置指示部は、前記先端部の少なくとも芯体側が、前記ノック部の前記筐体の他端側の開口から外部の突出する部分に収納される状態で、前記ノックカム機構部内に収納されており、
前記ノック部に対するノック操作により、前記第1の位置指示部の少なくとも芯体を、前記筒状の筐体の前記一端側の開口から突出する状態としたときに、前記ノック操作により前記筐体内に押し込まれた前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に復帰させて保持する保持機構部を備える
ことを特徴とするノック式電子ペン。
【請求項2】
前記保持機構部は、前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が所定の値以下のときには、前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に保持し、前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が所定の値を超えたときには、前記保持の状態を解除して、前記ノックカム機構部の動作を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項3】
前記保持機構部は、前記ノック部に対するノック操作により動作する、前記ノックカム機構部とは別のノックカム機構部で構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項4】
前記保持機構部は、前記第1の位置指示部を前記先端部をも含めて前記筐体内に収納する状態においても、前記ノックカム機構部の前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に保持する
ことを特徴とする請求項2に記載のノック式電子ペン。
【請求項5】
前記ノックカム機構部は、前記第1の位置指示部の前記先端部とは反対側の後端側が嵌合される回転子と、前記ノック部に対するノック操作に応じて軸心方向に移動し、前記ノック操作に応じて前記回転子を回転させる回転子駆動部とを備えており、
前記第2の位置指示部は、前記回転子駆動部の軸心方向の中空部内に配設されており、
前記保持機構部は、前記回転子駆動部を、前記筐体の軸心方向の他端側に弾性的に常に付勢させる付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項6】
記第2の位置指示部は、弾性部材により、前記回転子駆動部の前記中空部内において、前記筐体の軸心方向の他端側に弾性的に常に付勢させられている
ことを特徴とする請求項5に記載のノック式電子ペン。
【請求項7】
前記回転子駆動部は、前記弾性部材の付勢力に抗して軸心方向に移動可能とする状態で、軸心方向に結合される第1の部分と第2の部分とを備え、
前記回転子駆動部の前記中空部は、前記軸心方向に結合される前記第1の部分及び前記第2の部分を連通する中空部で形成され、
前記第1の部分の、前記第2の部分との結合側とは反対側の軸心方向の端部が、前記回転子と係合して前記回転子を回転させるように構成されていると共に、前記第2の部分の、前記第1の部分との結合側とは反対側の軸心方向の端部が、前記筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する前記ノック部とされており、
前記保持機構部は、前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力以下のときには、前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に保持し、前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力を超えたときには、前記保持の状態を解除して、前記ノックカム機構部の動作を開始させる
ことを特徴とする請求項6に記載のノック式電子ペン。
【請求項8】
前記保持機構部は、前記ノック部に対するノック操作により動作する、前記ノックカム機構部とは別のノックカム機構部で構成されており、
前記別のノックカム機構部の回転子は、前記第1の部分の外周側において摺動自在となるように配されていると共に、前記第2の部分の前記第1の部分との結合側の端縁と係合し、前記第2の部分の前記ノック部の前記ノック操作に応じて軸心方向の押圧力を受けて回転させられるように構成されており、
前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力以下のときには、前記別のノックカム機構部の回転子は、軸心方向への移動が阻止された、前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に保持し、
前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力を超えたときには、前記別のノックカム機構部の回転子が回転して、前記軸心方向への移動の阻止を解除して、前記ノックカム機構部の動作を開始させる
ことを特徴とする請求項7に記載のノック式電子ペン。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記別のノックカム機構部の前記回転子を介して、前記回転子駆動部を前記筐体の軸心方向の他端側に弾性的に常に付勢させる
ことを特徴とする請求項8に記載のノック式電子ペン。
【請求項10】
前記別のノックカム機構部の回転子は、円周方向に所定の間隔で設けられている複数個第1の突部を備え、
前記筐体の内壁面の円周方向には、前記別のノックカム機構部の前記回転子の前記複数個の第1の突部と係合される複数個の第2の突部とが形成されており、
前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力以下のときには、前記別のノックカム機構部の回転子の前記第1の突部は、前記筐体の内壁面の前記第2の突部と衝合して、前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に保持し、
前記ノック部に対するノック操作時の押圧力が、前記弾性部材の弾性力を超えたときには、前記別のノックカム機構部の回転子を回転させて、前記別のノックカム機構部の回転子の前記第1の突部と、前記筐体の内壁面の前記第2の突部とが衝合しない状態にして前記保持の状態を解除して、前記回転子駆動部を、前記別のノックカム機構部の回転子と共に、前記筐体の前記第1の開口側に移動するようにする
ことを特徴とする請求項8に記載のノック式電子ペン。
【請求項11】
前記付勢部材は、前記筐体の前記第2の突部と、前記別のノックカム機構部の回転子との間に設けられている
ことを特徴とする請求項10に記載のノック式電子ペン。
【請求項12】
前記第1の位置指示部及び前記第2の位置指示部は、電子ペンカートリッジの構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項13】
前記第1の位置指示部及び前記第2の位置指示部は、電磁誘導方式の位置指示部である
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項14】
前記第1の位置指示部と、前記第2の位置指示部とは、位置検出センサとインタラクションする信号の、周波数、信号パターン、変調方式のいずれかが異なるようにされている
ことを特徴とする請求項12に記載のノック式電子ペン。
【請求項15】
前記ノック部の前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する部分の先端部に消しゴムあるいは疑似消しゴムが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【請求項16】
前記第1の位置指示部は、静電容量方式の位置指示部とされ、前記第2の位置指示部は、電磁誘導方式の位置指示部とされてなる
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電子消しゴム機能付きの電子ペンに適用して好適なノック式電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の小型化の嗜好により、携帯型の電子機器も、より小型化の要求が強くなっている。そして、電子ペンは、この種の小型の電子機器に搭載される位置検出センサと共に使用されるようになっており、より細型のものが求められている。
【0003】
さらに、最近は、電子ペンは、文具の延長として捉えられ、そのペン筐体内部に設ける位置指示部の構成部品をモジュール化して、ボールペンの替え芯(リフィルやカートリッジ)と同様に取り扱えるようにする要望もある。以下、この明細書では、電子ペンのペン筐体の内部の位置指示部の構成部品をモジュール化して一体化し、ボールペンの替え芯のように交換可能に構成したものを電子ペンカートリッジと称することとする。
【0004】
出願人は、電子ペン用の電子ペンカートリッジを、ボールペンの替え芯と同様に取り扱えるように構成し、文具のノック式のボールペンの筐体をそのまま電子ペンのペン筐体として使用することができるようにしたノック式電子ペンを既に提案している(例えば特許文献1(特許第5959038号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5959038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子ペンの位置指示部により位置検出センサ上で筆記入力した情報の消去用として、筆記入力用の位置指示部と同様の構成の電子消しゴム機能部を備える電子ペンも提供されている。この場合には、筒状のペン筐体の軸心方向の一端側には、筆記入力用の位置指示部を配すると共に、筒状のペン筐体の軸心方向の他端側には、電子消しゴム機能部を構成する位置指示部を配するようにする。
【0007】
そのため、ノック式の電子ペンの場合には、ノック部側に電子消しゴム機能部を構成する位置指示部を設けることが考えられる。
【0008】
しかしながら、ノックカム機構部のノック部を押し下げることにより筆記入力用の位置指示部を筐体の一方の開口から突出させるようにした場合、ノック部は、その軸心方向の位置がロックされずに、軸心方向に自由に移動する状態となってしまう。このため、このノック部に電子消しゴム機能部を構成する位置指示部を設けた場合に、使用に際して、電子消しゴム機能部を構成する位置指示部の先端部側位置が軸心方向に移動してしまって安定に操作することができず、不便となる。
【0009】
この発明は、以上のように、ペン筐体のペン先側のみではなく、ペン先側とは反対側の後端部側にも位置指示部を設ける場合の問題点を解決することができるようにしたノック式電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、
筒状の筐体と、
前記筒状の筐体の軸心方向の一端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設される第1の位置指示部と、
前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設される第2の位置指示部と、
前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する部分を有するノック部を備え、前記第1の位置指示部の前記先端部の少なくとも芯体を、前記筒状の筐体の前記一端側の開口から突出する状態と、前記第1の位置指示部を前記先端部をも含めて前記筐体内に収納する状態とを、前記ノック部に対するノック操作により現出するようにするノックカム機構部と、
を備え、
前記第2の位置指示部は、前記先端部の少なくとも芯体側が、前記ノック部の前記筐体の他端側の開口から外部の突出する部分に収納される状態で、前記ノックカム機構部内に収納されており、
前記ノック部に対するノック操作により、前記第1の位置指示部の少なくとも芯体を、前記筒状の筐体の前記一端側の開口から突出する状態としたときに、前記ノック操作により前記筐体内に押し込まれた前記ノック部を、前記筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に復帰させて保持する保持機構部を備える
ことを特徴とするノック式電子ペンを提供する。
【0011】
上述の構成のノック式電子ペンにおいては、第1の位置指示部が、筒状の筐体の軸心方向の一端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設されており、ノックカム機構部のノック部に対するノック操作に応じて、第1の位置指示部の先端部の少なくとも芯体を、筒状の筐体の一端側の開口から突出する状態と、第1の位置指示部を先端部をも含めて筐体内に収納する状態とを、現出するように構成されている。
【0012】
そして、第2の位置指示部が、その先端部の少なくとも芯体側が、ノック部の筐体の他端側の開口から外部の突出する部分に収納される状態で、ノックカム機構部内に収納されることで、筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口側が位置指示用の先端部側となる状態で配設される。
【0013】
そして、上述の構成のノック式電子ペンは、ノック部に対するノック操作により、第1の位置指示部の少なくとも芯体を、筒状の筐体の一端側の開口から突出させる状態としたときには、ノック操作により筐体内に押し込まれたノック部を、筒状の筐体の軸心方向の他端側の開口から外部に突出する状態に復帰させて保持する保持機構部を備える。
【0014】
上述の構成のノック式電子ペンによれば、ノックカム機構部により、第1の位置指示部の先端部を筐体の軸心方向の一端側の開口から突出させた状態においては、保持機構部により、ノックカム機構部のノック部をも筐体の軸心方向の他端側の開口から突出する状態で保持される。したがって、第2の位置指示部として、例えば電子消しゴム機能部を設けた場合には、筐体の軸心方向の一端側から先端部が突出する第1の位置指示部で入力した筆記入力情報を消去するために、筐体を逆さまに持ち替えて、第2の位置指示器の先端部を位置検出センサ上で操作する場合に、第2の位置指示器の先端部の軸心方向の位置は、保持機構部により保持されるので、使い勝手が良くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明によるノック式電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図である。
図2】この発明によるノック式電子ペンの実施形態に用いる位置指示部の構成例を説明するための図である。
図3】この発明によるノック式電子ペンの実施形態の保持機構部の構成例を説明するための図である。
図4】この発明によるノック式電子ペンの実施形態の保持機構部の一部の構成例を説明するための図である。
図5】この発明によるノック式電子ペンの実施形態の保持機構部の一部の構成例を説明するための図である。
図6】この発明によるノック式電子ペンの実施形態の保持機構部の一部の構成例を説明するための図である。
図7】この発明によるノック式電子ペンの実施形態と共に使用される位置検出装置の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明によるノック式電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。この実施形態の電子ペンでは、カートリッジ式の構成とされた電磁誘導方式の電子ペンカートリッジを、電子ペンの筒状の筐体(ペン筐体と称する)内に着脱可能に収容する構成を備えている。
【0017】
図1は、この発明によるノック式電子ペンの実施形態の構成例を示す図である。なお、図1の例では、電子ペン1のペン筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0018】
この実施形態のノック式電子ペン1は、筒状、この例では円筒状のペン筐体2の中空部2a内に、第1の位置指示部の例としての筆記入力用の電子ペンカートリッジ3が収納されると共に、第2の位置指示部の例としての電子消しゴム機能部を構成する電子ペンカートリッジ4が収納されている構成とされている。
【0019】
図2は、筆記入力用の電子ペンカートリッジ3の構成例を示す図である。この実施形態では、電子消しゴム機能部を構成する電子ペンカートリッジ4は、筆記入力用の電子ペンカートリッジ3とほぼ同様の構成を有するので、ここでは、筆記入力用の電子ペンカートリッジ3の構成例を説明して、電子消しゴム機能部を構成する電子ペンカートリッジ4の構成例の説明は省略する。
【0020】
図2(A)は、筆記入力用の電子ペンカートリッジ3の全体の外観を示す図であり、図2(B)は、筆記入力用の電子ペンカートリッジ3のペン先側の拡大断面図である。
【0021】
この実施形態の電子ペンカートリッジ3においては、図2(A)及び(B)に示すように、芯体30と、コイル31が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア32と、筆圧検出部70を保持すると共に回路基板80(図2(B)参照)を保持するホルダー部33と、ホルダー部33に保持される筆圧検出部70と回路基板80とを収納して保護する機能を備えるカートリッジ筐体34と、カートリッジ筐体34の芯体30側とは反対側に結合されて設けられる後端部材35とからなる。
【0022】
芯体30は、この例では比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)からなる細い棒状の部材である。この例では、この芯体30は、図2(B)に示すように、フェライトコア32の貫通孔に嵌合固定されている芯パイプ部材32aに挿通され、そのペン先側30aとは反対側30bが、ホルダー部33に設けられている筆圧検出部70に、圧力伝達部材37を介して筆圧を伝達するように構成されている。コイルばね38は、芯体30に印可されている筆圧が消失したときに、芯体30を元の位置に戻すための復帰用の弾性部材である。
【0023】
筆圧検出部70は、この実施形態では、可変容量コンデンサをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)により構成されている。なお、筆圧検出部70は、この例のような半導体チップで構成されたものに限られるものではなく、また、可変容量コンデンサではなく、インダクタンスを可変させるようなものであってもよい。
【0024】
ホルダー部33は、例えば樹脂材料で構成され、図2(B)に示すように、筆圧検出部70を保持すると共に、フェライトコア32と嵌合する筒状部33aを備えると共に、コイル31と共振回路を構成するコンデンサ(図示は省略)を搭載する回路基板80の載置台部33bを備える。
【0025】
カートリッジ筐体34は、硬質の材料からなるパイプ形状の部材、この例では金属からなるパイプ形状の部材により構成され、筆圧検出部70及び回路基板80の電気的回路構成部分を保護する回路部保護部材を構成する。
【0026】
カートリッジ筐体34の芯体30側とは反対側に結合されて設けられる後端部材35は(図2(A)参照)、電子ペンカートリッジ3の芯体30側に衝撃荷重(衝撃圧力)が加わった時に、その衝撃荷重を吸収して電子ペンカートリッジ3を保護するショックアブソーバ(衝撃吸収部材)の役割をするコイルばね36を設けるためのもので、この実施形態では、後述するノックカム機構部5の回転子51の嵌合凹部に対する嵌合部の役割も有する。なお、このショックアブソーバ用のコイルばね36は、芯体30に印可される圧力が、筆圧検出部70で検出されるような筆圧検出範囲では弾性的に変位せず、芯体30に、前記筆圧検出範囲よりも大きな衝撃荷重(衝撃圧力)が加わった時に、弾性的に変位して、衝撃吸収するように構成されている。また、コイルばね36の弾性力は、コイルばね53の弾性力よりも大きい。
【0027】
図1の電子ペン1の説明に戻る。この実施形態では、筆記入力用の電子ペンカートリッジ(以下、筆記入力用カートリッジと称する)3は、その芯体30を含むペン先側が、ペン筐体2の軸心方向の一端側(ペン先側)の開口2b側となるように、ペン筐体2の中空部2a内に配される。そして、筆記入力用カートリッジ3は、ノックカム機構部5により、筆記入力用カートリッジ3の芯体30を含むペン先側が、ペン筐体2の開口2b側から出し入れされる構成を備える。
【0028】
ノックカム機構部5は、回転子51と、回転子51を回転駆動させると共に、軸心方向に移動させるようにする回転子駆動部(ノック棒)52と、回転子51を、常時、ペン筐体2の軸心方向の他端側の開口2c側に付勢するようにする弾性部材の例としてのコイルばね53とからなる。回転子駆動部52は、ペン筐体2の軸心方向の他端側の開口2cから外部に突出するノック部52KNを備える。
【0029】
そして、前述したように、筆記入力用カートリッジ3は、カートリッジ筐体34の芯体30側とは反対側に結合されて設けられる後端部材35が、回転子51の嵌合凹部(図示は省略)に嵌合されることで、電子ペン1に取り付けられている。そして、筆記入力用カートリッジ3を保護するショックアブソーバの役割をするコイルばね36が、図1(A),(C)及び図2(A)に示すように、カートリッジ筐体34の後端部と、回転子51との間に設けられる。
【0030】
電子消しゴム機能部を構成する電子ペンカートリッジ(以下、消しゴム機能カートリッジと称する)4は、その芯体40を含むペン先側が、ペン筐体2の軸心方向の他端側(後端側)の開口2c側となるような状態で、ノックカム機構部5の回転子駆動部52内に設けられている。この実施形態では、図1に示すように、消しゴム機能カートリッジ4は、そのペン先部が、ペン筐体2の後端側の開口2cから突出するノック部52KN内に位置するように、回転子駆動部52内に収納されている。
【0031】
なお、消しゴム機能カートリッジ4は、筆記入力用カートリッジ3の構成部品に対応するものとして40番台の参照符号を付した、芯体40、コイル41、フェライトコア42、ホルダー部材43、カートリッジ筐体44、後端部材45及びコイルばね46を備えている。また、消しゴム機能カートリッジ4は、筆記入力用カートリッジ3と同様に筆圧検出部70及び回路基板80をも備えている。
【0032】
そして、この実施形態では、ノックカム機構部5の回転子駆動部52のノック部52KNを、ペン筐体2の後端側の開口2cから外部に突出する状態に保持するようにするための保持機構部6が、回転子駆動部52に対して設けられている。この実施形態では、保持機構部6は、ノックカム機構部5とは別のノックカム機構部(ノックカム機構部を第1のノックカム機構部として、以下、第2のノックカム機構部と称する)の構成とされており、回転子61と、この回転子61を、常時、ペン筐体2の後端側の開口2c側に付勢するようにする付勢部材の例としてのコイルばね62とを備える。そして、回転子61を回転駆動させると共に軸心方向に移動させるようにする回転子駆動部は、ノックカム機構部5の回転子駆動部52の一部により構成されている。この保持機構部6の詳細な構成及びノックカム機構部5の構成については、後で詳述する。
【0033】
この実施形態では、後述するように、この保持機構部6により、ノックカム機構部5の回転子駆動部52のノック部52KNに対するノック操作時の押圧力が所定の値以下のときには、当該ノック部52KNを、ペン筐体2の後端側の開口2cから外部に突出する状態に保持し、ノック部52KNに対するノック操作時の押圧力が所定の値を超えたときには、保持の状態を解除して、ノック部52KNによるノック操作に応じてノックカム機構部5を動作開始させることができるように構成している。
【0034】
この場合に、保持機構部6による保持が解除されるノック部52KNに対するノック操作の押圧力の所定の値は、この実施形態では、電子ペン1のノック部52KN側を位置検出センサに近接あるいは接触させて、消しゴム機能カートリッジ4による消去指示をする際の使用者の通常の筆圧よりも大きい値とされている。すなわち、使用者が、電子ペン1のノック部52KN側を位置検出センサに近接あるいは接触させて、消しゴム機能カートリッジ4による消去指示をするときには、ノックカム機構部5が動作開始しないような値に選定されている。後述するように、この実施形態では、保持機構部6による保持が解除されるノック部52KNに対するノック操作の押圧力の所定の値は、消しゴム機能カートリッジ4の後端部45に設けられるショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力よりも大きい力とされる。
【0035】
以上のようにして、この実施形態では、筆記入力用カートリッジ3を、そのペン先部を含めてペン筐体2の中空部2a内に収納しているときにも、また、筆記入力用カートリッジ3のペン先部を、ペン筐体2のペン先側の開口2bから外部に突出させているときにも、ノックカム機構部5の回転子駆動部52のノック部52KNは、ペン筐体2の後端側の開口2cから外部に突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4の後端側に設けられているショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となるように構成されている。
【0036】
これにより、消しゴム機能カートリッジ4のペン先部が位置しているノック部52KNは、ノック操作の前であっても、後であっても、所定の値を超えて押圧力が印可されない限り、ペン筐体2の後端側の開口2cから外部に突出する状態を保持するので、消しゴム機能カートリッジ4を良好な使い勝手で、使用することができる。
【0037】
上述したように、この実施形態では、ノックカム機構部5のノック部52KNを所定の値よりも大きい押圧力で押下するノック操作をすると、後述するようにして、保持機構部6による回転子駆動部52の係止保持状態が解除され、これにより、筆記入力用カートリッジ3のペン先部を、ペン筐体2のペン先側の開口2bから突出させる状態と、筆記入力用カートリッジ3のペン先部を含めて、ペン筐体2の中空部2a内に収納させる状態とを交互に現出させることができる。
【0038】
図1(A)は、筆記入力用カートリッジ3のペン先側を含む全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、図1(B)は、そのときの回転子51と、ペン筐体2の内壁面に形成されている第1のカム本体21との係合状態を説明するための模式図である。また、図1(C)は、図1(A)の状態から、ノック部52KNに対する上述のようなノック操作をして、ノックカム機構部5により電子ペンカートリッジ3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから突出した状態にした後、ノック部52KNに対する押圧力を除去した状態を示しており、図1(D)は、そのときの回転子51と、ペン筐体2の内側に形成されている第1のカム本体21との係合状態を説明するための模式図である。
【0039】
図1(B)及び図1(D)に示すように、筐体2の内壁面の第1のカム本体21は、円周方向に所定の間隔で形成されている複数個の突部211を備える。この場合に、突部211の円周方向の幅は、突部211の形成間隔と等しくされている。複数個の突部211の隣り合うもの同士の間は、凹溝212とされている。したがって、筐体2の内壁面の第1のカム本体21は、複数個の突部211と複数個の凹溝212とが交互に形成されたものとなっている。
【0040】
一方、ノックカム機構部5の回転子51は、図1(B)及び図1(D)に示すように、ペン筐体2の内壁面の第1のカム本体21の突部211と衝合すると共に、凹溝212内に入り込むことが可能な突部511が、その外周面の円周方向に複数個、形成されている。そして、複数個の突部511の隣り合うもの同士の間は、凹溝512とされている。したがって、回転子51は、複数個の突部511と複数個の凹溝512とが交互に形成されたものとなっている。
【0041】
図1(A)に示すように、筆記入力用カートリッジ3のペン先側を含む全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されている状態においては、図1(B)に示すように、回転子51の突部511は、ペン筐体2の内壁面の第1のカム本体21の凹溝212内に入り込んだ状態となっている。
【0042】
この図1(A)の状態から、使用者が所定の値以上の押圧力で、ノック部52KNを押下するノック操作をすると、そのノック操作に応じて、回転子駆動部52が回転子51を、軸心方向に、ペン筐体2のペン先側の開口2b側に移動させる。このとき、回転子51の突部511は、第1のカム本体21の凹溝212に沿って移動する。
【0043】
そして、回転子駆動部52により、回転子51の突部511が第1のカム本体21の凹溝212から外れる位置にまで移動された後、使用者によるノック部52KNに対する押圧力が除去されると、コイルばね53の弾性力により、回転子51はペン筐体2の後端側の開口2c側に移動するように付勢されると共に、回転子駆動部52と回転子51との間の係合により、回転子51は回転して、図1(D)に示すように、回転子の突部511が、第1のカム本体21の突部211と衝合する状態となり、コイルばね53の弾性力により、この状態で係止する。
【0044】
すなわち、使用者がノック部52KNに対する押圧力を除去しても、回転子51と第1のカム本体21とは、図1(D)の状態を保持して、この回転子51の突部511が第1のカム本体21の突部211と衝合する係止状態により、筆記入力用カートリッジ3のペン先側が、ペン筐体2のペン先側の開口2bから、図1(C)に示すように突出する状態となる。
【0045】
そして、このとき、後述もするように、保持機構部6のコイルばね62により、回転子61を介してノックカム機構部5の回転子駆動部52が、ペン筐体2の後端部側の開口2c側に付勢されると共に、後述する回転子61の動作により、回転子駆動部52のノック部52KNが、ペン筐体2の後端部側の開口2cから突出する状態に保持される。したがって、図1(C)に示すように、この時には、回転子駆動部52と回転子51とは空間的に軸心方向に離間する状態となる。
【0046】
そして、この状態から、再度、使用者が所定の値(この例では、消しゴム機能カートリッジ4の後端側に設けられているショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力以上の押圧力)で、ノック部52KNを押下するノック操作をすると、後述するように回転子61の動作により保持機構部6による回転子駆動部52の保持が解除されて、回転子駆動部52が軸心方向に移動可能の状態となる。
【0047】
そして、使用者によるノック操作により、回転子駆動部52が軸心方向移動させられて回転子51がコイルばね53の弾性力に抗してペン筐体2のペン先側の開口2b側に変位させられると、回転子51が回転して、その突部511と第1のカム本体21の突部211との係合が解除され、その後、使用者によるノック部52KNに対する押圧力が除去されると、回転子51の突部511は、第1のカム本体21の凹溝212内に挿入される位置となって、コイルばね53の弾性力により、回転子51は、ペン筐体2の後端側の開口2c側に移動して、図1(A)に示す状態に戻る。
【0048】
この時、保持機構部6は、後述するように、図1(A)の状態から図1(C)の状態に移行するときと同様の動きをして、回転子駆動部52のノック部52KNが、ペン筐体2の後端部側の開口2cから突出する状態に保持される状態に戻る。
【0049】
なお、図1では図示を省略したが、周知のノック式ボールペンのノックカム機構部と同様に、回転子駆動部52の、回転子51との係合側の側周面には、ペン筐体2のカム本体21の凹溝212内に入り込んで摺動移動する突起が設けられており、この回転子駆動部52の突起が、ペン筐体2の内壁面のカム本体21の凹溝212の後端側の端部212a(図1(B)及び(D)参照)と係合することで、回転子駆動部52は、ペン筐体2の後端側の開口2cから抜け落ちないように構成されている。
【0050】
[保持機構部6の説明]
次に、図3図6を参照して、この実施形態のノック式電子ペン1の保持機構部6の構成例について説明する。
【0051】
図3(A)は、この実施形態のノック式電子ペン1のノックカム機構部5の回転子駆動部52及び保持機構部6の構成を説明するための断面図である。また、図3(B)は、ペン筐体2の、図3(A)のX-X線位置の横断面であり、後述する第2のカム本体22の構成を説明するための図である。
【0052】
図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、この実施形態においては、ノックカム機構部5の回転子駆動部52は、この実施形態では樹脂で構成され、軸心方向に結合される第1の部分521と第2の部分522とからなる。
【0053】
この実施形態では、第1の部分521は、消しゴム機能カートリッジ4のペン先側を除く後端側を収納する凹孔521aを備える円柱状形状を備え、その第2の部分522との結合側とは反対側(ペン筐体2のペン先側の開口2b側)521bが、回転子51と衝合し、回転子51を回転駆動させるための凹凸部を備える構成となっている。
【0054】
また、第2の部分522は、この実施形態では、円筒状形状を備え、その内径は、円柱状形状の第1の部分521の外径よりも若干大きい径とされていると共に、その外径は、ペン筐体2の内径よりも小さい径とされている。そして、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、この第2の部分522のペン筐体2の後端側の開口2cから突出する部分がノック部52KNを構成するようにされている。
【0055】
この第2の部分522のノック部52KNとなる部分の先端開口は、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、蓋部材54により閉塞されている。この実施形態では、この蓋部材54は、例えば物理的な消しゴムとなる弾性ゴムにより構成されている。もっとも、蓋部材54は、物理的な消しゴムとなる弾性ゴムではなく、疑似消しゴムとなるような部材(弾性部材が良い)で構成されていてもよい。
【0056】
そして、この実施形態では、図3(A)に示すように、第1の部分521の後端側の外周側面の互いに180度の角間隔隔てた位置には、軸心方向に直交する方向に張り出す突部521c及び521dが設けられている。また、第2の部分522には、第1の部分の突部521c及び521dが入り込む窓部522c及び522dが形成されている。この場合に、第2の部分522の窓部522c及び522dの軸心方向の長さは、第1の部分521の突部521c及び521dの軸心方向の長さよりも長く構成されている。
【0057】
第1の部分521は、第2の部分522の後端側から挿入され、突部521c及び521dが、窓部522c及び522dに入り込む状態で、第2の部分522と結合される。この結合状態においては、第2の部分522は、当該第2の部分522の窓部522c及び522dの軸心方向の長さが、第1の部分521の突部521c及び521dの軸心方向の長さよりも長いので、その分だけ、第1の部分521に対して軸心方向に移動可能である。
【0058】
そして、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、第1の部分521と第2の部分522とが結合した状態では、第1の部分521の凹孔521aと、円筒状の第2の部分の中空部522aとが連通する連通空間を構成し、この連通空間が回転子駆動部52の中空部を構成する。そして、この回転子駆動部52の連通空間の中空部内に、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、消しゴム機能カートリッジ4が、ノック部52KNの中空部内に、当該消しゴム機能カートリッジ4の芯体40を含むペン先側が位置するように収納される。
【0059】
この場合に、消しゴム機能カートリッジ4の後端部45には、ショックアブソーバの役割をするコイルばね46が、回転子駆動部52の第1の部分521の凹孔521aの底部と消しゴム機能カートリッジ4のカートリッジ筐体44との間に設けられ、消しゴム機能カートリッジ4の芯体40の先端側は、コイルばね46の弾性力により、常にノック部52KNの蓋部54に接触するように付勢されている。
【0060】
そして、この実施形態では、保持機構部6は、第2のノックカム機構部を構成することで、ノック部52KNを、ペン筐体2の後端側の開口2cから外部に突出する状態に保持し、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4の後端側に設けられているショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となるように構成する。
【0061】
この場合に、第2のノックカム機構部は、回転子61と、復帰用コイルばね62と、ペン筐体2の内壁面に形成される第2のカム本体22と、回転子61を軸心方向に移動させると共に回転駆動させる回転子駆動部を構成する回転子駆動部52の第2の部分522と、コイルばね46とで構成される。
【0062】
この実施形態では、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、回転子駆動部52の第2の部分522の、第1の部分521との結合側の端縁は、保持機構部6の回転子61と衝合して、この回転子61を、コイルばね62の弾性力に抗して、軸心方向に移動させると共に、回転させるように構成されている。
【0063】
そして、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、ペン筐体2の内壁面の、回転子駆動部52の第1の部分521の側周面が対向する位置には、第2のカム本体22が形成されている。この第2のカム本体22は、回転子61と係合して、回転子61を図3(A)及び図1(A),(C)に示す状態に係止する状態と、回転子61を回転子駆動部52と共に軸心方向に移動可能とする状態とを現出するように構成されている。
【0064】
第2のカム本体22は、図3(B)の横断面図に示すように、ペン筐体2の、半径r1の内周壁面から中空部内部に突出する、複数個、この例では3個の突部221が、円周方向に等角間隔で形成されて構成されており、これら3個の突部221の隣り合うものの間には、3個の凹溝222が形成されている。この例では、凹溝222の角範囲幅W1が、60度よりも若干大きい角度範囲幅、例えば63度となるように構成されている。
【0065】
なお、図3(B)に示すように、第2のカム本体22の3個の突部221の先端部は、回転子駆動部52の第1の部分521の外周の半径よりも若干大きい半径r2(<r1)の円周に含まれるように形成されており、このため、回転子駆動部52の第1の部分521は、第2のカム本体22の3個の突部221の先端部とは接触することなく、軸心方向に移動可能となっている。
【0066】
次に、この実施形態の第2のノックカム機構部の回転子61の構成を、図4図6を参照して説明する。この実施形態の第2のノックカム機構部の回転子61は、図4に示すようなリング状部材611と、図5に示すような脚部材612とが結合されることで、図6に示すようなものとして構成されている。
【0067】
図4(A)は、リング状部材611を、軸心方向に、回転子駆動部52の第2の部分522の端部522bとの係合側とは反対側から見た図である。また、図4(B)は、リング状部材611をその軸心方向に直交する方向から見た側面図である。このリング状部材611の内周壁面の半径は、図4(A)に示すように、回転子駆動部52の第1の部分521の外周の半径よりも若干大きい半径r2とされている。また、このリング状部材611の外周側面の半径は、図4(A)に示すように、ペン筐体2の内周壁面の半径r1よりも若干小さい半径r3とされている。
【0068】
そして、図4(A)に示すように、リング状部材611の内周壁面には、第2のカム本体22の凹溝222の角範囲幅W1よりも狭い所定の角範囲幅W2、この例では、W2=60度で軸心方向亘って形成されている3個の凹溝611b、611c、611dが形成されている。この3個の凹溝611b、611c、611dの壁面(凹溝の底面)は、図4(A)に示すように、半径r4(r2<r4<r3)のの円周に含まれるように形成されている。
【0069】
また、この例では、リング状部材611の回転子駆動部52の第2の部分522の端部522bとの係合側には、図4(B)に示すように、回転子61を回転させるための凹凸部611aが形成されている。なお、凹凸部611aは、半径r4から半径r3の範囲の厚さ部分に形成されている。
【0070】
脚部材612は、図5に示すように、外周側面の半径が半径r4、内周壁面の半径が半径r2とされた筒状体に、角範囲幅W2の3個の脚部612b,612c,612dが形成されるように、スリット状に凹溝が形成された構成とされている。換言すると、リング状板部612aの一方の端面から、軸心方向に3個の脚部612b,612c,612dが植立されるように形成されて構成されたものとなっている。
【0071】
そして、図4に示したリング状部材611の、凹凸部611a側から、図5に示した脚部材612を、3個の脚部612b,612c,612dを、リング状部材611の3個の凹溝611b、611c、611dに挿入するようにする。すると、図6(A)及び(B)に示すような回転子61が形成される。図6(A)は、回転子61を、リング状部材611の凹凸部611a側とは反対側から、軸心方向に見た図である。また、図6(B)は、回転子61をその軸心方向に直交する方向から見た側面図である。
【0072】
この図6(A)及び(B)に示すように、回転子61は、リング状部材611の凹凸部611aとは反対側に、脚部材612の3個の脚部612b、612c、612dが、突出しているような形状となる。この場合に、リング状部材611の凹凸部611aとは反対側の端面の外周縁は、図6(B)に示すように、脚部材612の3個の脚部612b、612c、612dよりも、軸心方向に直交する方向に張り出す張り出し部611eとなっている。
【0073】
この回転子61は、図3(A)及び図1(A),(C)に示すように、リング状部材611の中空部内に回転子駆動部52の第1の部分521を挿入するようにして、回転子駆動部52の第1の部分521の外周側面に取り付けられる。この場合に、回転子61は、回転子駆動部52の第1の部分521に対して軸心方向に摺動移動可能の状態とされている。
【0074】
そして、コイルばね62が、図3(A)に示すように、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の突部221と、回転子61のリング状部材611の張り出し部611eとの間に設けられる。これにより、コイルばね62の弾性力によって、回転子61は、常に、ペン筐体2の後端側の開口2c側に付勢され、回転子61の凹凸部611a側と回転子駆動部52の第2の部分522の端縁とが常に係合する状態に保持される。
【0075】
次に、以上のように構成されている保持機構部6の動作について説明する。図1(A)に示す筆記入力用カートリッジ3のペン先部を含む全体が、ペン筐体2の中空部内に収納されている状態では、回転子61の3個の脚部62b,612c,612dの先端部が、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の突部221の先端部(図3(B)の点線で示す位置よりも先端側)と衝合する状態となっている。これにより、ノックカム機構部5の回転子駆動部52は、ノック部52KNをペン筐体2の後端側の開口2cから突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4の後端側に設けられているショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となっている。
【0076】
この状態で、使用者が、ショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に打ち勝つような押圧力でノック部52KNを押下操作すると、回転子駆動部52の第2の部分522が、第1の部分521に対して軸心方向に移動する。
【0077】
この回転子駆動部52の第2の部分522の軸心方向への移動により、保持機構部6の回転子61が回転し、回転子61の3個の脚部612b,612c,612dが、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の凹溝222に入り込む状態となり、保持機構部6による回転子駆動部52の保持が解除される。このため、使用者のノック部52KNに対する押圧力により、回転子駆動部52の第1の部分521及び第2の部分522は、一体となって、軸心方向に移動して、前述したノックカム機構部5の動作を開始し、筆記入力用カートリッジ3のペン先部が、ペン筐体2のペン先側の開口2bから突出する状態となる。
【0078】
この状態で使用者がノック部52KNに対するノック操作を停止して押圧力を除去すると、前述したように、ノックカム機構部5の回転子51と、ペン筐体2の内壁面の第1のカム本体21とが、図1(D)の状態で係合することにより、筆記入力用カートリッジ3のペン先部が、ペン筐体2のペン先側の開口2bから突出する状態が保持される。
【0079】
そして、この時、保持機構部6のコイルばね62により、回転子駆動部52の第2の部分522が、ペン筐体2の後端側の開口2c側に弾性的に付勢され、回転子駆動部52は、前述したように、第1の部分521の先端部の側面部に設けられている突部(図示は省略)が、第1のカム本体21の凹溝212の端部212a(図1(B)及び(D)参照)に係合する位置まで移動する。そして、このコイルばね62による回転子駆動部52の、ペン筐体2の後端側の開口2c側への移動により、保持機構部6の回転子61の3個の脚部612b,612c,612dが、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の凹溝222を脱する状態になると、保持機構部6の回転子61が回転して、回転子61の3個の脚部612b,612c,612dの先端部が、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の突部221の先端部(図3(B)の点線で示す位置よりも先端側)と衝合する状態に戻る。
【0080】
したがって、図1(C)に示すように、筆記入力用カートリッジ3のペン先部がペン筐体2のペン先側の開口2bから突出する状態においても、回転子駆動部52は、そのノック部52KNがペン筐体2の後端側の開口2cから突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4を保護するショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となる。
【0081】
この状態から、再度、使用者が、ショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に打ち勝つような押圧力でノック部52KNを押下操作すると、回転子駆動部52の第2の部分522が、第1の部分521に対して軸心方向に移動し、上述と同様にして、回転子61が回転して、回転子61の3個の脚部612b,612c,612dが、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の凹溝222に入り込む状態となり、使用者のノック部52KNに対する押圧力により、回転子駆動部52の第1の部分521及び第2の部分522は、一体となって、軸心方向に移動して、前述したノックカム機構部5の動作を開始する。
【0082】
すなわち、図1(D)の状態にある回転子51と、ペン筐体2の内壁面の第1のカム本体21の突部211との係合が解除され、復帰用コイルばね53により、筆記入力用カートリッジ3がペン先部を含めてペン筐体2の中空部2a内に収納される図1(A)に示す状態に戻る。
【0083】
そして、この時にも、筆記入力用カートリッジ3のペン先側の開口2bから突出させる状態にするときと同様にして、保持機構部6のコイルばね62により、回転子駆動部52の第2の部分522が、ペン筐体2の後端側の開口2c側に弾性的に付勢され、回転子駆動部52は、前述したように、第1の部分521の先端部の側面部に設けられている突部(図示は省略)が、第1のカム本体21の凹溝212の端部212a(図1(B)及び(D)参照)に係合する位置まで移動する。そして、このコイルばね62による回転子駆動部52の、ペン筐体2の後端側の開口2c側への移動により、保持機構部6の回転子61の3個の脚部612b,612c,612dが、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の凹溝222を脱する状態になると、保持機構部6の回転子61が回転して、回転子61の3個の脚部612b,612c,612dの先端部が、ペン筐体2の内壁面の第2のカム本体22の3個の突部221の先端部(図3(B)の点線で示す位置よりも先端側)と衝合する状態に戻る。
【0084】
こうして、図1(A)に示すように、筆記入力用カートリッジ3のペン先部を含めて、ペン筐体2の中空部2a内に収納される状態においても、回転子駆動部52が、そのノック部52KNがペン筐体2の後端側の開口2cから突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4を保護するショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となる。
【0085】
[この実施形態のノック式電子ペン1と協働する位置検出装置について]
この実施形態のノック式電子ペン1と協働する位置検出装置の構成及びその動作について、図7を参照して説明する。
【0086】
この実施形態のノック式の電子ペン1は、上述したように、位置指示部として、筆記入力用カートリッジ3と、消しゴム機能カートリッジ4とを備える。図7に示すように、電子回路構成としては、筆記入力用カートリッジ3は、コイル31と、コンデンサ39と、筆圧検出部で構成される可変容量コンデンサ71Cとが並列に接続された共振回路3RCを備え、また、消しゴム機能カートリッジ4は、コイル41と、コンデンサ49と、筆圧検出部で構成される可変容量コンデンサ72Cとが並列に接続された共振回路4RCを備える。この場合に、共振回路3RCの共振周波数f1と、共振回路4RCの共振周波数f2とは異なるように構成される。
【0087】
位置検出装置は、位置検出センサ100と、位置検出回路200とで構成される。位置検出センサ100は、センサ基板101に、X軸方向ループコイル群102Xと、Y軸方向ループコイル群103Yとが形成されて構成されている。
【0088】
X軸方向ループコイル群102Xは、センサ基板101の横方向(例えば位置座標のX軸方向)に配列されたn(nは2以上の整数)個のループコイル102X1~102Xnからなっており、また、Y軸方向ループコイル群103Yは、センサ基板101の縦方向(例えば位置座標のY軸方向)に配列されたm(mは2以上の整数)個のループコイル103Y1~103Ymからなっている。
【0089】
位置検出センサ100は、位置検出回路200に接続される。図7の例においては、位置検出回路200は、選択回路201と、発振器202と、電流ドライバ203と、送受信切替回路204と、受信アンプ205と、周波数f1を通過中心周波数とするバンドバスフィルタ206と、周波数f2を通過中心周波数とするバンドパスフィルタ207と、筆記位置検出回路208と、消去位置検出回路209と、処理制御部210とを備えて構成されている。
【0090】
選択回路201は、X軸方向ループコイル群102X及びY軸方向ループコイル群103Yのうちの一のループコイルを順次選択して、当該選択されたループコイルにより、ノック式電子ペン1の筆記入力用カートリッジ3又は消しゴム機能カートリッジ4に対して信号を送信させると共に、筆記入力用カートリッジ3又は消しゴム機能カートリッジ4から帰還される信号を受信させる。
【0091】
選択回路201に対しては、処理制御部210により切替制御される送受信切替回路204が接続される。この送受信切替回路204が送信側端子Tに接続されるときには、発振器202から交流信号が選択回路201に供給され、受信側端子Rに接続されるときには、選択回路201からの信号が、受信アンプ205を通じてバンドパスフィルタ206及び207に供給される。
【0092】
バンドパスフィルタ206は、筆記入力用カートリッジ3の共振回路3RCからの帰還信号のみを抽出して、筆記位置検出回路208に供給する。また、バンドパスフィルタ207は、消しゴム機能カートリッジ4の共振回路4RCからの帰還信号のみを抽出して、消去位置検出回路209に供給する。
【0093】
筆記位置検出回路208及び消去位置検出回路209は、位置検出センサ100のループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、処理制御部210に出力する。
【0094】
処理制御部210は、筆記位置検出回路208からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて筆記入力用カートリッジ3のペン先部による指示位置のX座標値及びY座標値を筆記入力位置として算出する。処理制御部210は、また、消去位置検出回路209からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて消しゴム機能カートリッジ4のペン先部による指示位置のX座標値及びY座標値を消去位置として算出する。
【0095】
[実施形態のノック式電子ペンの効果]
上述したように、実施形態のノック式電子ペンによれば、ノック部52KNをノック操作して、ノックカム機構部5により筆記入力用カートリッジ3のペン先部を、ペン筐体2のペン先側の開口2bから突出させる状態にしたときにも、保持機構部6により、ノック部52KNがペン筐体2の後端側の開口2cから突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4を保護するショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となる。
【0096】
したがって、筆記入力用カートリッジ3のペン先部で筆記入力をしていた使用者が、筆記入力の訂正をするために、ペン筐体2を逆さまに持ち替えて、開口2cから突出するノック部52KN側を位置検出センサ100に近接させ、通常の筆圧で消去指示を安定にすることができる。
【0097】
また、この実施形態では、筆記入力用カートリッジ3のペン先部を含めてペン筐体2の中空部内に収納しているときにも、ノック部52KNがペン筐体2の後端側の開口2cから突出する状態で保持され、かつ、その保持状態が、消しゴム機能カートリッジ4を保護するショックアブソーバの役割をするコイルばね46の弾性力に抗する所定の押圧力が、ノック部52KNに加わらない限り維持される状態となっている。
【0098】
したがって、筆記入力用カートリッジ3のペン先部をペン筐体2のペン先側の開口2bから突出させない状態においても、使用者は、ペン筐体2の後端側の開口2cから突出するノック部52KN側を位置検出センサ100に近接させ、通常の筆圧で消去指示を安定にすることができる。
【0099】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態では、第1の位置指示部及び第2の位置指示部は、共に電子ペンカートリッジの構成としたが、このようなカートリッジの構成とすることは必須ではなく、ノックカム機構により、ペン筐体の開口からペン先部を突出する状態と、ペン筐体の中空部内に収納する状態とを現出することができるように構成されていればよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、保持機構部は、ノックカム機構を応用した構成としたが、ノック部を常にペン筐体の後端側の開口から突出するように保持する構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0101】
また、上述の実施形態では、第1の位置指示部を筆記入力用として、第2の位置指示部を、第1の位置指示部で筆記入力した情報の消去指示用としたが、このような例に限られるものではない。例えば、第1の位置指示部を静電容量方式の位置指示部で構成し、第2の位置指示部を電磁誘導方式の位置指示部として、異なる方式の筆記入力用とするように構成してもよい。その場合には、第2の位置指示部のペン先部が収納されるノック部は、ノックカム機構部の回転子駆動部から取り外しが可能として、第2の位置指示部のペン先側を、外部に露出させて、ペン筐体の後端側の開口から突出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…ノック式電子ペン、2…ペン筐体、3…筆記入力用の電子ペンカートリッジ、4…消しゴム機能用の電子ペンカートリッジ、5…ノックカム機構部、6…保持機構部、21…第1のカム本体、22…第2のカム本体、51…ノックカム機構部5の回転子、52…ノックカム機構部5の回転子駆動部、52KN…ノック部、53…ノックカム機構部5の復帰用コイルばね、61…保持機構部6を構成する別のノックカム機構部の回転子、62…保持機構部6を構成する別のノックカム機構部の復帰用コイルばね、521…回転子駆動部51の第1の部分、522…回転子駆動部52の第2の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7