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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シール材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20241128BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
C09K3/10 M
C09K3/10 Q
C08L27/12
C08K3/013
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022515313
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014433
(87)【国際公開番号】W WO2021210435
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020072948
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中出 賢志郎
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-248167(JP,A)
【文献】特開平01-198674(JP,A)
【文献】特開2014-196779(JP,A)
【文献】特表2006-524283(JP,A)
【文献】国際公開第2001/090274(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/070854(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/061221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
C08L1/00-101/16
C08K3/00-13/08
F16J15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と無機充填材とを含み、
前記フッ素樹脂の結晶化度が50%以上であ
前記無機充填材の合計体積に対する前記フッ素樹脂の合計体積の比である、フッ素樹脂の体積/無機充填材の体積が40/60~70/30である、
シール材。
【請求項2】
前記無機充填材の平均粒径が1~30μmである、請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記無機充填材が、平均粒径が異なる2種以上の粒子を含む、請求項1または2に記載のシール材。
【請求項4】
前記シール材がガスケットである、請求項1~のいずれか1項に記載のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態はシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
充填材入りフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂と充填材とを混合してシート状に加工したものであり、フッ素樹脂の有する耐薬品性、耐熱性等の特性に加えて、充填材の持つ固有の機能・特性を付加、または、フッ素樹脂の欠点である耐クリープ性を改善したものであり、シール材等に多く用いられている。
【0003】
このような充填材入りフッ素樹脂シートとして、例えば特許文献1には、フッ素樹脂と修正モース硬度が8以上の無機充填材とを含有する充填材入りフッ素樹脂シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-235755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような従来の充填材入りフッ素樹脂シートは、シール性を向上させようとすると、耐クリープ性が低下し(応力緩和しやすく)、耐クリープ性を向上させようとすると(応力緩和を抑制しようとすると)、シール性が低下するため、シール性と耐クリープ性とはトレードオフの関係にあり、シール性および耐クリープ性のうち、どちらかの性質を向上させようとすると、他方が犠牲になっていた。
例えば、前記特許文献1などに記載された従来の充填材入りフッ素樹脂シートでは、シール性を向上させるためにフッ素樹脂量を増量すると、耐クリープ性が低下するため、シール材に要求される耐クリープ性を維持しつつ、シール性を向上させるには限界があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、シール材に要求される耐クリープ性を維持しつつ、シール性が向上したシール材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0008】
[1] フッ素樹脂と無機充填材とを含み、
前記フッ素樹脂の結晶化度が50%以上である、シール材。
【0009】
[2] 前記無機充填材の合計体積に対する前記フッ素樹脂の合計体積の比(フッ素樹脂の体積/無機充填材の体積)が40/60~70/30である、[1]に記載のシール材。
【0010】
[3] 前記無機充填材の平均粒径が1~30μmである、[1]または[2]に記載のシール材。
【0011】
[4] 前記無機充填材が、平均粒径が異なる2種以上の粒子を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシール材。
【0012】
[5] 前記シール材がガスケットである、[1]~[4]のいずれかに記載のシール材。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、従来の充填材入りフッ素樹脂シートが有していたのと同程度のシール材に要求される耐クリープ性を維持しつつ、従来の充填材入りフッ素樹脂シートよりシール性が向上したシール材を提供することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、ひずみ難く、引張強度の高いシール材を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪シール材≫
本発明の一実施形態に係るシール材(以下「本シール材」ともいう。)は、無機充填材と、結晶化度が50%以上であるフッ素樹脂とを含む。
本シール材は、前記効果を奏するため、ガスケット、特に配管(例:配管フランジ)やバルブ用のガスケット、バルブ開閉部材のシール材、容器やタンク等の蓋に用いられるガスケット、容器やタンク等に据付けられた計器や覗き窓などに用いられるガスケットとして好適に使用することができる。
本シール材の形状、大きさは特に制限されず、所望の用途に応じて決められた形状、大きさを選択すればよい。
【0015】
<フッ素樹脂>
フッ素樹脂としては、結晶化度が50%以上であるフッ素樹脂(以下「フッ素樹脂a」ともいう。)であれば特に制限されない。
本シール材に含まれる該フッ素樹脂aは、1種でもよく、2種以上でもよい。なお、本シール材は、フッ素樹脂aを1種または2種以上含んでいればよく、さらに結晶化度が50%未満であるフッ素樹脂bを含んでいてもよい。本シール材に含まれるフッ素樹脂の総量に対するフッ素樹脂aの含有量は、好ましくは30~100質量%である。
【0016】
前記フッ素樹脂aの結晶化度は、耐クリープ性を維持しつつシール性が向上したシール材を容易に得ることができる等の点から、50%以上であり、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上であり、その上限は、引張強度が高く、圧壊し難いシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは80%以下である。
なお、従来の充填材入りフッ素樹脂シートに含まれるフッ素樹脂の結晶化度は通常45%程度であり、前記フッ素樹脂aの結晶化度は、従来の充填材入りフッ素樹脂シートに含まれるフッ素樹脂の結晶化度に比べ顕著に高い。
【0017】
本発明におけるフッ素樹脂の結晶化度は、シール材に含まれているフッ素樹脂の結晶化度であり、シール材を作製する際の原料として用いるフッ素樹脂の結晶化度ではない。つまり、本シール材中に結晶化度が前記範囲にあるフッ素樹脂が含まれていればよく、シール材を作製する際の原料として用いるフッ素樹脂の結晶化度は、前記範囲内であっても、前記範囲外であってもよい。
本明細書におけるフッ素樹脂の結晶化度は、具体的には下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体(FEVE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。
これらの中では、結晶化度が前記範囲にあるフッ素樹脂を含む本シール材をより容易に得ることができ、成形性および加工性等の点から、PTFEまたは変性PTFEが好ましい。
【0019】
本シール材を作製する際の原料として用いるフッ素樹脂は、粉末状であってもよく、フッ素樹脂粉末の分散液であってもよい。本シール材を作製する際の原料としてフッ素樹脂粉末の分散液を用いると、無機充填材を容易に均一に分散させることができるという利点がある。
【0020】
本シール材中のフッ素樹脂aの含有量は、フッ素樹脂の有する特性がより発揮され、耐クリープ性を維持しつつシール性が向上したシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは8~82質量%、より好ましくは15~82質量%である。
【0021】
<無機充填材>
無機充填材としては特に制限されず、従来公知の無機充填材を用いることができる。
本シール材に含まれる無機充填材は、1種でもよく、2種以上でもよい。本シール材が2種以上の無機充填材を含む場合、種類(材質)の異なる2種以上の無機充填材を用いてもよく、平均粒径や形状の異なる2種以上の無機充填材を用いてもよい。
【0022】
無機充填材としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、炭素繊維等の炭素系充填材、マグネシア、シリカ、アルミナ、(溶融)ジルコニア等の酸化物系充填材、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物系充填材、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化タンタル等の炭化物系充填材、炭酸カルシウム等の炭酸塩系充填材、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩系充填材、タルク、マイカ、クレー、ざくろ石、トパーズ、ロックウール等の鉱物系充填材が挙げられる。
これらの中でも、高温状態であってもひずみ難い(変形し難い)シール材を容易に得ることができる等の点から、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、硫酸バリウム、クレーが好ましく、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、硫酸バリウム、クレーがより好ましい。
【0023】
無機充填材の形状は特に限定されず、粒子状(鱗片状を含む)、繊維状等のいずれの形状であってもよいが、粒子状であることが好ましい。
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒径は、高温時でも圧縮率の低いシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1~30μm、より好ましくは1~20μm、さらに好ましくは1~15μmである。
【0024】
なお、本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折散乱法によって測定される粒度分布において、累積個数が50%となるときの粒径(メジアン径)を意味する。前記粒度分布は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、品番:LB-550〕を用いて測定することができる。
【0025】
本シール材は、耐クリープ性を維持しつつシール性が向上した、高温時でも圧縮率の低いシール材を容易に得ることができる等の点から、平均粒径の異なる2種以上の無機充填材(粒子)を含むことが好ましい。
【0026】
このように、本シール材が平均粒径の異なる2種以上の無機充填材(粒子)を含む場合、高温時でも圧縮率の低いシール材を容易に得ることができる等の点から、平均粒径が7~30μmの範囲にある無機充填材Aと、平均粒径が1~5μmの範囲にある無機充填材Bとを含むことが好ましい。
該無機充填材Aの平均粒径は、より好ましくは7~20μmであり、該無機充填材Bの平均粒径は、より好ましくは2~5μmである。
【0027】
また、本シール材が前記無機充填材AおよびBを含む場合、これらの体積比(無機充填材Aの体積/無機充填材Bの体積)は、高温時でも圧縮率の低いシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは45/55~80/20、より好ましくは50/50~75/25である。
【0028】
本シール材中の、無機充填材の合計体積に対するフッ素樹脂、特にフッ素樹脂aの合計体積の比(フッ素樹脂の体積/無機充填材の体積)は、シール性に優れ、高温時でも圧縮率の低いシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは40/60~70/30、より好ましくは40/60~60/40、さらに好ましくは45/55~55/45である。
フッ素樹脂の含有量が前記範囲を下回る場合、シール性が低下しやすい傾向にあり、フッ素樹脂の含有量が前記範囲を上回る場合、耐クリープ性が低下しやすい傾向にある。
【0029】
<その他の成分>
本シール材は、前記フッ素樹脂および無機充填材(のみ)からなるシール材であってもよく、前記フッ素樹脂および無機充填材以外に、シール材に用いられてきた従来公知のその他の成分を、本発明の目的が阻害されない範囲内で含んでいてもよい。
該その他の成分としては、例えば、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジンなどの粘着性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、顔料などの着色剤、PPS等の樹脂の粉体、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。
これらのその他の成分は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0030】
<本シール材の製造方法>
本シール材は、例えば、フッ素樹脂、無機充填材、および必要により加工助剤や前記その他の成分を含有する樹脂組成物をシート状に成形することで製造することができる。
【0031】
該樹脂組成物に用いるフッ素樹脂は、粉末状でもよく、フッ素樹脂粉末を分散媒に分散させた分散液であってもよい。フッ素樹脂粉末の分散液を用いると、無機充填材を容易に均一に分散させることができる。
前記樹脂組成物におけるフッ素樹脂および無機充填材は、得られるシール材中の量が前記範囲となるように用いればよい。
【0032】
前記加工助剤としては特に制限されないが、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒などの石油系炭化水素溶媒が挙げられる。
石油系炭化水素溶媒は、商業的に容易に入手することができるものであってもよく、その例としては、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM〔以上商品名、エクソンモービル社製〕が挙げられる。
前記樹脂組成物における加工助剤の含有量は、シール材の種類などによって適宜選択すればよく、一概には決定できないが、通常、5~35質量%程度であることが好ましい。
【0033】
前記樹脂組成物は、フッ素樹脂、無機充填材、必要により、加工助剤、前記その他の成分などを任意の順序で一度に、または少量ずつ複数回に分けて均一な組成を有するように混合することによって調製することができる。なお、均一な組成を有する樹脂組成物を得るために、樹脂組成物に加工助剤を過剰量で添加し、十分に撹拌した後に、過剰量の加工助剤を、例えば、濾過、揮散などの手段によって除去してもよい。
【0034】
前記樹脂組成物をシート状に成形する方法としては特に制限されないが、前記樹脂組成物を用い、予備成形、圧延、(必要により乾燥)および焼成を順次行なうことによって製造することが好ましい。
【0035】
前記予備成形は、例えば、前記樹脂組成物を押出成形することによって行なうことができる。この押出成形により、プリフォーム(押出成形物)が得られる。該プリフォームの形状は特に限定されないが、その後のシート形成の効率、シート性状の均質性などを考慮すると、ロッド状またはリボン状であることが好ましい。
【0036】
前記圧延は、得られたプリフォームを圧延することが好ましい。プリフォームを圧延する方法としては、例えば、プリフォームを二軸ロールなどの圧延ロール間に通過させ、シート状に圧延成形する方法が挙げられる。プリフォームを圧延することによって得られた圧延シートをさらに複数回圧延してもよい。圧延を繰り返すことにより、圧延シートの内部をさらに緻密化させることができる。なお、二軸ロールを用いて圧延を繰り返す場合には、圧延を繰り返すごとに圧延ロールのロール間隔を狭くすることが好ましい。
二軸ロールを用いてプリフォームを圧延することにより圧延シートを製造する場合には、例えば、圧延ロール間距離を0.5~20mmに調整し、圧延ロールの表面の移動速度(シート押出速度)を5~50mm/秒に設定して圧延する方法が挙げられる。
【0037】
前記で得られた圧延シートに加工助剤が残存している場合には、必要により、当該圧延シートを常温で放置するか、またはフッ素樹脂の融点未満の温度で圧延シートを加熱することにより、加工助剤を除去してもよい。
【0038】
次に、前記で得られた圧延シートを焼成する。圧延シートを焼成する方法としては、例えば、圧延シートをフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱し、焼結させる方法などが挙げられる。加熱温度は、フッ素樹脂の種類によって異なるが、圧延シート全体を均一に焼成するとともに、高温でフッ素系ガスが発生することを抑制する等の点から、340~370℃程度であることが好ましい。
前記焼成後のシートは、通常、室温程度まで冷却して使用されるが、この際に徐冷することで、好ましくは1.0℃/分以下、より好ましくは0.85℃/分以下、さらに好ましくは0.7℃/分以下の降温スピードで冷却することで、結晶化度が前記範囲にあるフッ素樹脂を含むシール材を容易に得ることができる。
また、該冷却スピードは、引張強度の高いシール材を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1℃/分以上である。
【0039】
以上のようにして作製されたシートは、そのままの状態でガスケットとして用いてもよく、所望の形状に裁断した後にシール材として用いてもよい。
【実施例
【0040】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されない。
【0041】
[実施例1]
フッ素樹脂粉末〔AGC(株)製、ポリテトラフルオロエチレン粉末、品番:CD-1、密度:2200kg/m3〕1000g、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#1200、平均粒径:9.5μm〕1400g、助剤A〔エクソンモービル社製、商品名:アイソパーC、分留温度:97~104℃〕125gおよび助剤B〔エクソンモービル社製、商品名:アイソパーG、分留温度:158~175℃〕125gをニーダーで5分間混合した後、室温(25℃)で16時間放置することにより熟成させ、シート形成用組成物を調製した。
【0042】
前記で得られたシート形成用組成物を、室温(25℃)で、口金300mm×20mmの押出機で押出し、プリフォームを作製した。前記で得られたプリフォームを、ロール径700mm、ロール間隔20mm、ロール速度6m/min、ロール温度40℃の条件下にて二軸ロールで圧延した。この圧延されたシートをロール間隔が10mmである二軸ロールで再度圧延し、さらにこの圧延されたシートを、ロール間隔が5mmである二軸ロールで再度圧延し、最後にこの圧延されたシートをロール間隔が1.5mmである二軸ロールで圧延することにより、厚さが1.5mmの圧延シートを得た。
【0043】
前記で得られた圧延シートを室温(25℃)で24時間放置し、助剤を除去した後、電気炉内で350℃の温度で3時間焼成し、次いで、降温スピード0.7℃/分で徐冷することにより、シール材を作製した。このシール材におけるフッ素樹脂と無機充填材との体積比(フッ素樹脂/無機充填材)は51/49であった。
【0044】
[実施例2]
実施例1と同様にして、圧延シートを得、得られた圧延シートを室温(25℃)で24時間放置し、助剤を除去した後、電気炉内で350℃の温度で3時間焼成し、次いで、降温スピード0.5℃/分で徐冷することにより、シール材を作製した。
【0045】
[実施例3]
実施例1と同様にして、圧延シートを得、得られた圧延シートを室温(25℃)で24時間放置し、助剤を除去した後、電気炉内で350℃の温度で3時間焼成し、次いで、降温スピード0.25℃/分で徐冷することにより、シール材を作製した。
【0046】
[実施例4]
実施例1と同様にして、圧延シートを得、得られた圧延シートを室温(25℃)で24時間放置し、助剤を除去した後、電気炉内で350℃の温度で3時間焼成し、次いで、降温スピード0.1℃/分で徐冷することにより、シール材を作製した。
【0047】
[実施例5]
フッ素樹脂と無機充填材との体積比(フッ素樹脂/無機充填材)が40/60となるように、CD-1と炭化ケイ素粒子とを用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0048】
[実施例6]
フッ素樹脂と無機充填材との体積比(フッ素樹脂/無機充填材)が60/40となるように、CD-1と炭化ケイ素粒子とを用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0049】
[実施例7]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#4000、平均粒径:3μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0050】
[実施例8]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#8000、平均粒径:14μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0051】
[実施例9]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#7000、平均粒径:17μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0052】
[実施例10]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#5000、平均粒径:25μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0053】
[実施例11]
無機充填材として、シリカ〔(株)トクヤマ製、エクセリカ、平均粒径:10μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0054】
[実施例12]
無機充填材として、α-アルミナ〔昭和電工(株)製、A-420、平均粒径:3.9μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0055】
[実施例13]
無機充填材として、クレー〔昭和KDE(株)製、NK300、平均粒径:9.5μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0056】
[実施例14]
無機充填材として、硫酸バリウム〔竹原化学工業(株)製、W-10、平均粒径:10μm〕用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0057】
[実施例15]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#4000、平均粒径:3μm〕を350g、および、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#1200、平均粒径:9.5μm〕を1050g用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0058】
[実施例16]
無機充填材として、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#4000、平均粒径:3μm〕を700g、および、炭化ケイ素粒子〔信濃電気製錬(株)製、品番:#1200、平均粒径:9.5μm〕を700g用いた以外は実施例2と同様にして、シール材を作製した。
【0059】
[比較例1]
実施例1と同様にして、圧延シートを得、得られた圧延シートを室温(25℃)で24時間放置し、助剤を除去した後、電気炉内で350℃の温度で3時間焼成し、次いで、空冷することにより、シール材を得た。
【0060】
[比較例2]
フッ素樹脂と無機充填材との体積比(フッ素樹脂/無機充填材)が39/61となるように、CD-1と炭化ケイ素粒子とを用いた以外は比較例1と同様にして、シール材を作製した。
【0061】
[比較例3]
フッ素樹脂と無機充填材との体積比(フッ素樹脂/無機充填材)が73/27となるように、CD-1と炭化ケイ素粒子とを用いた以外は比較例1と同様にして、シール材を作製した。
【0062】
<シール材中のフッ素樹脂の結晶化度>
前記で得られたシール材中のフッ素樹脂の結晶化度を以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
装置として、セイコーインスツル(株)製のDSC6200を用い、30℃から5℃/分の昇温速度でシール材を昇温した時の、1回目の昇温曲線で観測される吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量(ΔH)を測定し、下記式から結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=ΔH×100/(ΔHb×w)
[ここで、ΔHbはフッ素樹脂の融解熱量値であり、wはシール材中のフッ素樹脂の含有量(質量%)である。]
【0063】
前記ΔHbは、用いた原料のフッ素樹脂の融解熱量を、前記シール材の融解熱量を測定する方法と同様にして測定することができるが、シール材に含まれるフッ素樹脂がPTFEの場合、本発明では、ΔHbとして、54.8mJ/mgの値を採用し、シール材に含まれるフッ素樹脂が変性PTFEである場合、本発明では、ΔHbとして、50.0mJ/mgの値を採用する。
【0064】
前記シール材中のフッ素樹脂含有量wは、具体的には、熱重量分析装置(TG)を用い、下記条件で測定した場合における、420~645℃付近にみられる重量減少量から算出することができる。
使用装置:TG/DTA6200(セイコーインスツル(株)製)
試験温度:30~800℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素ガス
【0065】
<シール性>
前記で得られたシール材から外形65mm、内形50mmのガスケットを作製した。作製したガスケットを、金属プラテンに挟み込み、応力19.8MPaを負荷した状態で内圧0.98MPaの窒素ガスを封入し、ガスケットから漏洩した窒素ガスをスリーブで捕集し、石鹸膜流量計を用いてシール性(漏洩量)を測定した。また、漏洩量が1.7×10-4Pa・m3/s以下の場合を○とし、漏洩量が1.7×10-4Pa・m3/sを超えた場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0066】
<耐クリープ性(応力緩和率)>
前記で得られたシール材から試験片を作成し、この試験片について加熱温度を100℃から200℃に変更した点を除いてJIS R 3453:2001に準拠して応力緩和率を測定した。また、応力緩和率が70%以下の場合を○とし、応力緩和率が70%を超えた場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0067】
<引張強さ>
前記で得られたシール材から試験片を作成し、JIS R 3453:2001に準拠して引張強さを測定した。また、引張強さが9.8MPa以上の場合を○とし、引張強さが5MPa以上9.8MPa未満の場合を△とし、引張強さが5MPa未満の場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】