(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-27
(45)【発行日】2024-12-05
(54)【発明の名称】水素担体化合物を生成する方法及び再生する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/113 20060101AFI20241128BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20241128BHJP
C08G 77/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C01B33/113 Z
C01B3/00 B
C08G77/12
(21)【出願番号】P 2022525035
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020080468
(87)【国際公開番号】W WO2021084046
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-11
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520426151
【氏名又は名称】イシラブズ サス
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】バーチャー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ロメ、ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ベノワ、レミ
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-045859(JP,A)
【文献】特表2009-534322(JP,A)
【文献】特公昭42-004963(JP,B1)
【文献】特開昭59-190211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 -33/193
C01B 3/00
C08G 77/00 -77/62
C07F 7/00 - 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法であって、以下の連続する工程:
- シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を準備し、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を半水素化工程2(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を完全水素化工程2(f)に供してシラン(SiH
4)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、又は、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH
4)を部分的加水分解工程3(f)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、又は、
○ 工程2(e)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(c)から得られたシラノン(H
2SiO)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH
4)をもって次の工程に直接進み、
- 次に、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成し、又は、
○ 工程2(e)及び/又は工程3(d)及び/又は工程3(e)及び/又は工程3(f)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH
4)を酸素に媒介される部分的酸化工程4(c)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
液体シロキサン水素担体化合物を再生する方法であって、液体シロキサン水素担体化合物を加水分解的酸化に供して水素及びシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)を生成し、引き続き、請求項1に記載の方法を行って液体シロキサン水素担体化合物を再生する、方法。
【請求項3】
再生されたシロキサン水素担体化合物は、加水分解的酸化に供された前記シロキサン水素担体化合物と化学的に同一である、請求項2に記載の液体シロキサン水素担体化合物を再生する方法。
【請求項4】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(a)から得られたシラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項5】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、そして工程2(c)から得られた前記シラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を半水素化工程2(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(e)又は工程3(e)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項6】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、そして工程2(c)から得られた前記シラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項7】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程2(d)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(d)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項8】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程2(d)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生するか、又は、
○ 工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(e)から得られた前記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項9】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(a)から得られたシラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(e)から得られた前記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項10】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(d)から得られた前記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項11】
以下の連続する工程:
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ 前記シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、そして工程3(c)から得られた前記シラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して前記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項12】
前記シロキサン水素担体化合物は、
(I)式(I):
【化1】
(式中、nは、1以上の整数(繰返単位の数を表す)であり、かつ基R及びR’は、炭素を含まず、かつR及びR’は、Si及び水素及び/又は酸素を含む)の液体線状シロキサン水素担体化合物、及び、
(II)式(II)
【化2】
(式中、nは、1以上の整数(繰返単位H
2SiOの数を表す)である)を有する環状シロキサン化合物、
の中から選択される、請求項1~11の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【請求項13】
式(I)において、
nは2~500である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の前記の炭素不含のR基及びR’基は、-SiH
3、-SiH
2OH、-SiH(OH)
2、-Si(OH)
3から選択される、請求項12~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
式(II)において、
nは2~500である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項12~15の何れか1項に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法であって、前記化合物が、前記式(II)の環状シロキサン水素担体化合物及び前記式(I)の線状シロキサン水素担体化合物の混合物で構成され、ここで、前記式(II)の環状シロキサン水素担体化合物は、前記混合物の50mol%超に相当する、方法。
【請求項17】
前記式(I)の線状シロキサン水素担体化合物は、前記混合物の2.0mol%超で、かつ20mol%未満に相当する、請求項16に記載の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン水素担体化合物を生成する方法及び再生する方法に関する。本発明はまた、シロキサン水素担体化合物、及び上記シロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全で、便利な、そして環境に優しい方式の供給源において水素を貯蔵し、輸送し、そして放出し、かつ水素を効率的に、経済的に、そして安全に生成及び貯蔵する能力は、エネルギー媒介体としての水素の使用を大衆化するために克服すべき主たる課題である。
【0003】
現在では、水素は主に、パイプラインによるか、圧縮ガスとしてチューブトレーラーによるか、又はその液化形で特殊なタンカーによるかの何れかによって送達されている。
【0004】
水素の送達には典型的には6つの経路がある、即ち、水素をガスとしてパイプラインによって輸送することができ、水素を現場で生成することができ、水素を圧縮ガスとしてチューブトレーラーにおいて輸送することができ(例えば、特許文献1に開示されている)、水素を凝縮液体として極低温トラックにおいて輸送することができ(例えば、特許文献2に開示されている)、水素を固体状態の水素担体材料において貯蔵し、現場で放出することができ(例えば、特許文献3に開示されている)、そして液体状態の水素担体材料において貯蔵し、現場で放出することができる。
【0005】
水素は2つの手段によって現場で生成され得る。一方の方法によって現場で水素を生成し、定義されるもう一方の方法において捕捉水素として直接的に消費することができる。現場で生成するその他の手段は、水及び電気から水素を生成する水の電気分解によるものである。再生可能エネルギーを動力源とすると、環境に優しい水素が生成されると見なすことができる。
【0006】
極低温水素及び圧縮水素である現状の送達の解決手段に加えて、水素を提供する代替的な解決手段、即ち水素担体が現れている。水素担体は、水素を貯蔵し、必要なときにそれを放出する能力を有する固体状態又は液体状態の何れかの材料である。水素担体は、現状の解決手段と比較して、輸送又は貯蔵の何れについても利点をもたらす。固体状態の担体としては、金属粒子に吸着させて金属水素化物を生ずることにより、水素の取り込みを可能にする金属水素化物が挙げられる。中でも、水素化マグネシウムは低圧及び標準温度で安定しているため、輸送及び貯蔵に便利となる。必要なときに、材料を加熱することで、水素ガスが放出される。固体状態の解決手段は、再生可能エネルギーからのエネルギー貯蔵の同現場での可逆的な過程に最適であることが確認されている。実際は、固体材料の取り扱いは、気体又は液体の材料ほど取り扱いが便利ではない。
【0007】
液体水素担体は、特定の条件下で水素を放出することができる全ゆる液体状態の材料であり得る。液体有機水素担体(LOHC)の部類が、液体水素担体の中で最も代表的なものである。熱の形でエネルギーを必要とする触媒反応である水素化と呼ばれる過程の間に、水素は液体有機担体に化学的に結合する。典型的には、例えば、特許文献4又は特許文献5に記載されるように、トルエンなどの不飽和及び/又は芳香族の炭化水素である担体は、水素と反応して対応する飽和炭化水素を生成し、標準温度及び標準圧力で液体状態において輸送される。LOHC中に貯蔵される水素の量は水素化過程の収率に依存するが、液体担体の質量に対して含まれる水素は最大で7.2質量%である。次に、触媒反応であり、反応の吸熱的性質のため熱(典型的には300℃を上回る)の形で追加のエネルギーを必要とする脱水素と呼ばれる過程によって飽和炭化水素から水素が放出される。要求に応じて水素を生成するために、グリッド電力から熱が生成されるか(その起源及びその環境への影響に対する制御なしに)、又は有機担体の一部を燃焼することによって熱が回収され得る。
【0008】
特許出願である特許文献6及び特許文献7は、水素を生成する方法であって、a)1つ以上の基Si-Hを含む化合物(C)とフッ化物イオン源とを反応させることにより水素及び副生成物(C1)を形成し、b)得られた水素を回収することにある工程を含む、方法に関する。全ての実施例では、水素担体としてシラン化合物が使用されるが、ただし、実施例1~実施例2においてはポリメチルヒドロシロキサン(「PHMS」)が使用され、そして実施例8においてはテトラメチルジシロキサンが使用される。
【0009】
特許出願である特許文献8は、水素を生成する方法であって、i)1つ以上の基Si-Hを含む化合物(C)とリン系触媒とを、溶剤としての水中の塩基の存在下で接触させることにより、如何なるエネルギー入力(例えば、熱、電力など)も必要とせずに水素及び副生成物(C1)を形成する工程と、ii)得られた水素を回収する工程とを含む、方法に関する。全ての実施例では、水素担体としてシラン化合物が使用され、テトラメチルジシロキサンだけが、可能な水素担体のリストに列挙される唯一のシロキサン含有化合物である。特許文献8には、得られた副生成物(C1)をアシルハロゲン化物を用いて再循環させ、得られた生成物を金属水素化物と接触させることにより化合物(C)を再生する工程c)も開示されており、ここで、アシルハロゲン化物はCH3C(=O)Clであり、金属水素化物はLiAlH4である。
【0010】
特許出願である特許文献9は、水素を生成する方法であって、i)1つ以上の基Si-Hを含む化合物(C)とアミン系触媒とをアルコール又は水溶液から選択される溶剤中で接触させることにより、如何なるエネルギー入力(例えば、熱、電力など)も必要とせずに水素及び副生成物(C1)を形成する工程と、ii)得られた水素を回収する工程とを含む、方法に関する。殆どの実施例では、水素担体としてシラン化合物が使用されるが、ただし、実施例12においてはポリメチルヒドロシロキサン(「PHMS」)が使用され、そして実施例16においてはテトラメチルジシロキサンが使用される。特許文献9には、得られた副生成物(C1)をアシルハロゲン化物を用いて再循環させ、得られた生成物を金属水素化物と接触させることにより化合物(C)を再生する工程c)も開示されており、ここで、アシルハロゲン化物はCH3C(=O)Clであり、金属水素化物はLiAlH4である。
【0011】
特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9は既に、要求に応じて水素を放出する水素ベースの担体系の分野における飛躍的進歩を表しており、上記技術は更に、向上した効率、性能、及び費用対効果からも恩恵を受けることとなる。更に、特許文献8及び特許文献9の両方による水素ベースの担体の再生方法全体では、高価なLiAlH4還元剤を使用することが必要とされるため、酸化アルミニウム副生成物がもたらされ、その再処理法はエネルギーを消費し(電気分解工程には多くの電力が必要とされる)、汚染的であり、そして二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、フッ素化排液、及び多環式芳香族炭化水素(PAH)を放出するため、水素ベースの担体に適用可能なより環境に優しく、カーボンフリーな再生方法を開発するために、依然として幾らかの進展がなされるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2013/109918号パンフレット
【文献】国際公開第2011/141287号パンフレット
【文献】国際公開第2009/080986号パンフレット
【文献】国際公開第2014/082801号パンフレット
【文献】国際公開第2015/146170号パンフレット
【文献】国際公開第2010/070001号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2206679号明細書
【文献】国際公開第2011/098614号パンフレット
【文献】国際公開第2010/094785号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、水素送達及び水素インフラストラクチャの構築などの様々な用途のために、このようなクリーンなエネルギー媒介体の効率、性能、及び費用対効果を更に改善する必要がある。輸送される水素の量がより多く、効率、性能の向上を示し、費用対効果が高い改善が依然として必要とされている。追加のエネルギーを必要とせずに要求に応じて水素を放出することができる環境に優しい液体状態の水素担体が依然として緊急に必要とされている。更に、水素担体を、価値のある水素源として使用することができるだけでなく、炭素を含む反応物を必要とせずに、及び/又は炭素排出を伴わずに生成することもでき、そしてまた水素分離の副生成物から環境に優しく、そして実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに再生することもできる統合された浄化法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ここで、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要とせずに、及び/又は実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から液体シロキサン水素担体化合物を生成することができることが見出された。
【0015】
本発明によるシリカ化合物は、シリカ含有化合物、及び/又は上記シリカ含有化合物の2つ以上の混合物として定義され得る。
【0016】
本発明による1実施形態においては、シリカ化合物は、
・ 一般式SiO2,xH2Oのシリカ化合物、
・ [SiO2]n(ここで、nは、2以上である)、又は、
- 上記シリカ化合物の2つ以上の混合物、
から選択される。
【0017】
本発明によるケイ酸塩化合物は、ケイ酸塩含有化合物、及び/又は上記ケイ酸塩含有化合物の2つ以上の混合物として定義され得る。
【0018】
本発明による1実施形態においては、ケイ酸塩化合物は、
・ 一般式Na2xSiO2+xもしくはK2xSiO2+x(ここで、xは、0~2の間に含まれる整数である)のケイ酸ナトリウム化合物もしくはケイ酸カリウム化合物、又は、
・ 一般式[SiOx(OH)4-x]x-(ここで、xは、0~4の間に含まれる整数である)もしくは一般式[SiOx(OH)4-2x]n(ここで、n=1の場合にx=0又は1であり、n=2の場合にx=1/2又は3/2である)のケイ酸化合物、又は、
・ 構造(Si2O7)6-の二ケイ酸イオン、もしくは一般構造[SiO3
2-]n、[Si4O11
6-]nもしくは[Si2O5
2-]n(ここで、nは、2以上である)のマクロアニオンなどの高分子構造を有するケイ酸塩化合物、又は、
- 上記ケイ酸塩化合物の2つ以上の混合物、
から選択される。
【0019】
また、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要とせずに、及び/又は実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに、液体シロキサン水素担体化合物を再生することができることも見出された。
【0020】
本発明の生成方法/再生方法の最も重要な利点の1つは、これを連続的に適用可能であることにある。このような連続的な方法はまた、以下で説明されるように、原材料の投入を必要とせずに、及び/又は副生成物の排出を伴わずに操作され得る。
【0021】
また、一部の液体シロキサン水素担体化合物を使用することによって、
- 大量に、高収率で、非常に短時間で、非常に低い生成コストで、水素を放出するためのエネルギー入力なしに、水素を生成し得たこと、及び、
- エネルギーを貯蔵し、水素生成から出る副生成物を再循環することにより、実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに上記シロキサン水素担体化合物を作製することが可能であったこと、
も見出された。
【0022】
「水素担体化合物」という用語は、水素を貯蔵し、水素を輸送し、要求に応じて水素を放出することができる化学的化合物として理解され得る。本発明による水素担体化合物の特徴は、これらがエネルギー入力(例えば、熱、電力など)を必要とせずに水素を貯蔵/輸送/放出することができることである。
【0023】
液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法
本発明は、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要とせずに、及び/又は実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法に関する。
【0024】
以下に定義されるシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、本発明による液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法のための出発材料に好ましい供給源であるが、シリカ及び/又は他のケイ酸塩含有鉱物、例えば、ジルコン、翡翠、雲母、石英、クリストバライト、砂などを、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法のための出発材料の供給源として有利に使用することができる。本発明及び添付の特許請求の範囲の目的のためには、シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、好ましくは、本発明によるシロキサン水素担体化合物(複数を含む)の加水分解的酸化から生成されるシリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物である。
【0025】
シロキサン水素担体化合物を再生する方法
本発明はまた、液体シロキサン水素担体化合物を再生する方法であって、シロキサン水素担体化合物を加水分解的酸化して水素及びシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)を生成し、そして上記シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)を液体シロキサン水素担体化合物に変換する工程を含み、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要としない、及び/又は実質的な炭素排出を伴わない、好ましくは炭素排出を伴わない、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図10】シロキサンを生成する方法の工程図である。
【
図11】シロキサンを生成する方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による液体シロキサン水素担体化合物の生成及び再生を、以下の詳細な説明において更に詳細に説明する。追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要としない、及び/又は実質的な炭素排出を伴わない、好ましくは炭素排出を伴わない対応する方法の開発を成し遂げたことは、水素エネルギー、水素輸送、及び自動車産業用の水素の分野における飛躍的進歩を表している。
【0028】
シロキサン水素担体化合物
本発明の1実施形態においては、特許請求の範囲に記載の方法を使用することによって有利に生成及び/又は再生され得る液体シロキサン水素担体化合物は、
(I)式(I):
【化1】
(式中、nは、1以上の整数(繰返単位の数を表す)であり、かつ基R及びR’は、炭素を含まず、かつR及びR’は、Si及び水素及び/又は酸素を含む)の液体線状シロキサン水素担体化合物、又は、
(II)式(II)
【化2】
(式中、nは、1以上の整数(繰返単位H
2SiOの数を表す)である)を有する環状シロキサン化合物、
の中から選択される。
【0029】
1実施形態においては、本発明は、式(I)において、nは、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上である。本発明の1実施形態においては、nは、500以下、例えば50以下である。
【0030】
1実施形態においては、本発明は、式(II)において、nは、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上である。本発明の1実施形態においては、nは、500以下、例えば32以下、例えば17以下である。
【0031】
このような化合物は、それらのポリ(ヒドロメチル)シロキサン類似体(ROMenHnSinOnR’)と比較して大きな利点を表す。一例として、ポリ(ビス(ヒドロ))シロキサンは、ポリ(ヒドロメチル)シロキサンと比較して、2(正確に同じ重量の場合に2.61)倍を超える量の水素ガスを放出することができる。また、ポリ(ビス(ヒドロ))シロキサン化合物は、それらの骨格に炭素フラグメントを含む類似体と比較して、(本発明による水素生成及びシロキサン生成方法/再生方法において使用される場合に)完全なカーボンフリーな再循環性を示す。
【0032】
本発明の1実施形態においては、式(I)の上記の炭素不含のR基及びR’基は、-SiH3、-SiH2OH、-SiH(OH)2、-Si(OH)3から選択される。好ましい基は、-SiH3又はSiH2OHである。
【0033】
本発明による液体線状シロキサン水素担体化合物の例示的な例は、H3SiOH2nSinOnSiH3、H3SiOH2nSinOnSiH2OH、H3SiOH2nSinOnSiH(OH)2、H3SiOH2nSinOnSi(OH)3、(OH)3SiOH2nSinOnSi(OH)3、(OH)3SiOH2nSinOnSiH(OH)2、(OH)3SiOH2nSinOnSiH2OH、OHH2SiOH2nSinOnSiH2OH、OHH2SiOH2nSinOnSiH(OH)2、(OH)2HSiOH2nSinOnSiH(OH)2(式中、nは、1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数である)、又はこれらの化合物の2つ以上の混合物である。本発明の実施形態においては、nは、500以下、例えば50以下である。
【0034】
本発明の1実施形態においては、式(II)の上記環状シロキサン化合物は、以下の化合物の1つ以上の中から選択される。
【0035】
【表1-A】
【表1-B】
【表1-C】
【表1-D】
【0036】
式(I)による上記線状シロキサン水素担体化合物については、炭素不含の基(例えば、SiH3)の鎖端が選択される。それというのも、これは、(例えば、SiMe3などの他の炭素を含む鎖端と比較して)多くの利点:
- より低い分子量及びより良好な水素含有量により、シロキサン化合物のより良好な重量測定的効率(weight gravimetric efficiency)が可能となること、つまり、化合物により担持される水素の重量をその全体の分子量と比較した比率がより高いこと、
- 例えば、-SiH3フラグメントの加水分解可能な性質により、SiMe3と比較してSiH3鎖端が簡単かつ全く炭素排出を伴わずに再循環されること(これは、Si-Me結合の場合にはない)、
を表すからである。
【0037】
本発明の別の実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物は、上記で定義されたシロキサン水素担体化合物の何れかの2つ以上の混合物で構成される。
【0038】
この「混合物」の実施形態においては、式(I)の線状シロキサン水素担体化合物が混合物中の(molでの)物質量における主要な化学種に相当する(即ち、50mol%超に相当する)場合に、式(II)の環状シロキサン水素担体化合物の量を、混合物中での20mol%未満、例えば10mol%未満に制限することが有利である。1実施形態においては、上記混合物中に0.01mol%超、又は更には0.1mol%超の式(I)の環状シロキサン水素担体化合物が有利に存在し得る。
【0039】
本発明による1実施形態においては、「混合物」中の環状の化学種に対する線状の化学種のモル比は、例えば1H NMR分析によって決定され得る。
【0040】
この「混合物」の実施形態においては、式(II)の環状シロキサン水素担体化合物が混合物中の(molでの)物質量における主要な化学種に相当する(即ち、50mol%超に相当する)場合に、式(I)の線状ロキサン水素担体化合物の量を、混合物中において45mol%未満、例えば20mol%未満に制限することが有利である。1実施形態においては、上記混合物中において1.0mol%超、又は更には5.0mol%超の式(I)の線状シロキサン水素担体化合物が有利に存在し得る。
【0041】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力で0.1mPa・s~10000mPa・sの間の動的粘度を表す。本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物は、20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力で0.2mPa・s~50mPa・sの間の動的粘度を表す。シロキサン水素担体化合物の20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力での動的粘度は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、動的粘度はISO 1628-1規格に従って決定され得る。
【0042】
本発明による1実施形態においては、式(II)の液体環状シロキサン水素担体化合物の分子量は、130g/mol~800g/molの範囲であり得る。式(I)のシロキサン水素担体化合物の分子量は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、分子量は、GC-MS、例えば、Agilent GC/MSD 5975C装置において実施されるGC-MS分析によって決定され得る。
【0043】
本発明による1実施形態においては、式(I)の液体線状シロキサン水素担体化合物の数平均分子量(Mn)及び/又は分子量分布(D)は、それぞれ64g/mol~30000g/molの範囲及び1.1~50の範囲であり得る。式(I)の線状シロキサン水素担体化合物の平均分子量及び分子量分布は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、平均分子量及び分子量分布はISO 16014規格に従って決定され得る。
【0044】
本発明による1実施形態においては、式(II)の液体環状シロキサン水素担体化合物は、FT-IRによって分析した場合にSiH2単位に対応する800cm-1~1000cm-1の間の特徴的な強く鋭い吸収バンドを表す。本発明による1実施形態においては、式(II)の環状シロキサン水素担体化合物は、850cm-1~950cm-1の間の特徴的な強く鋭い吸収バンドを表す。
【0045】
本発明による1実施形態においては、上記液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、25℃でCDCl3中での1H NMRによって分析した場合に、SiH2O単位に対応する4.5ppm~4.9ppmの間の特徴的な共鳴を表す。1H NMR分析は、任意の適切な分光計、例えば400MHz Bruker分光計において実施され得る。
【0046】
本発明による1実施形態においては、上記液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、25℃でCDCl3中での29Si NMRによって分析した場合に、SiH2O単位に対応する-45ppm~50ppmの間の特徴的な共鳴を表す。29Si NMR分析は、任意の適切な分光計、例えば400MHz Bruker分光計において実施され得る。
【0047】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、20℃の温度及び589nmの波長で1~2の間の屈折率を表す。本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、20℃の温度及び589nmの波長で1.2~1.5の間の屈折率を表す。シロキサン水素担体化合物の屈折率は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、屈折率はASTM D1218規格に従って決定され得る。
【0048】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、1.01325×105Paの圧力で、30℃~500℃の間、例えば50℃~500℃の間の沸点、例えば50℃~200℃の間に含まれる沸点を表す。液体シロキサン水素担体化合物の沸点は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、沸点はISO 918規格に従って決定され得る。
【0049】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)の液体シロキサン水素担体化合物)は、0℃~500℃の間、好ましくは30℃~60℃の間の引火点を表す。シロキサン水素担体化合物の引火点は、任意の適切な方法に従って測定され得る。例えば、引火点はISO 3679規格に従って決定され得る。
【0050】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物は、式(II)の上記液体環状シロキサン化合物の2つ以上の任意の混合物で構成される。例えば、上記混合物は、混合物中の式(II)のシロキサン水素担体化合物のモル数の合計に対して、少なくとも5mol%の[H2SiO]4、少なくとも20mol%の[H2SiO]5、少なくとも5mol%の[H2SiO]6、及び少なくとも40mol%の[H2SiO]7+の化学種(即ち、nがそれぞれ2、3、4、及び5以上に等しい式(II)の化合物)を含み得る。
【0051】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物は、式(I)の上記液体線状シロキサン化合物の2つ以上の任意の混合物で構成される。上記混合物は、好ましくは、該混合物中の式(I)のシロキサン水素担体化合物のモル数の合計に対して、少なくとも50mol%、例えば80mol%超の式(I)のnが10~30の間に含まれる(即ち、10個~30個の間のH2SiOの繰返単位を有する)化合物を含む。
【0052】
本発明によれば、シロキサン水素担体化合物(例えば、式(I)及び式(II)のシロキサン水素担体化合物)は、(常温及び常圧(NTP)で、例えば、20℃の温度及び1.01325×105Paの絶対圧力で)液体である。
【0053】
水素生成
本発明はまた、水の存在下でのシロキサンの加水分解的酸化により水素を生成する方法であって、シロキサンが、上記の式(I)の化合物及び式(II)の化合物の中から選択される、方法に関する。
【0054】
本発明による1実施形態においては、水素を生成する方法は、水/[SiOH2]単位のモル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の1実施形態においては、シロキサン及び水の上記混合物は、水/[SiOH2]単位のモル比が2~10の間、例えば2~2.5の間に含まれることを特徴とする。
【0055】
本発明の1実施形態においては、水素を生成する方法は、水の存在下にシロキサンを加水分解的酸化する間に少なくとも1つの水素放出開始剤が存在することを特徴とする。式(I)のシロキサン水素担体化合物の加水分解的酸化に有利であり、従って水/シロキサンの反応により対応する水素放出がもたらされる限り、本発明により使用され得る水素放出開始剤の種類に関する制限はない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化に有利な全ゆる化合物を水素放出開始剤として有利に使用することができる。有用な水素放出開始剤は、以下のリスト:
- 無機塩基。例えば、無機塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である場合があり、水酸化ナトリウムが特に好ましい;
- プロトン酸。例えば、プロトン酸は、鉱酸又は有機酸、例えば、塩酸、硫酸、カルボン酸(メタン酸、エタン酸など)などであり得る;
- シロキサン水素担体化合物の加水分解的酸化を行うことができる求核分子を放出することができる化合物、例えば、式R R’R”R”’ZY(式中、Zは、N又はPであり、Yは、OH、F、Cl、又はBrであり、かつR、R’、R”、及びR”’は、有利には、C1~C15アルキル又はC6~C10アリールの中から選択され得て、ここで、R、R’、R”、R”’は、同一又は異なる)の化合物;
- シロキサン水素担体化合物の加水分解的酸化を促進することができる均一系有機金属触媒、例えば、鉄、ルテニウム、レニウム、ロジウム、銅、クロム、イリジウム、亜鉛、及び/又はタングステンなどに基づく有機金属錯体;
- シロキサン水素担体化合物の加水分解的酸化を促進することができる不均一系触媒、例えば、金属ナノ粒子、[M/AlO(OH)、M=Pd、Au、Rh、Ru、及びCu]、Pd/C、及び/又は好ましくは無機担体上に固定化された上述の金属の何れか;
の1つ以上の化合物の中から選択され得る。
【0056】
本発明の1実施形態においては、水素放出開始剤は、炭素不含の水素放出開始剤、例えば水酸化ナトリウムの中から選択される。
【0057】
本発明の1実施形態においては、シロキサン、水、及び水素放出開始剤の上記混合物は、水素放出開始剤/[SiOH2]単位のモル比が0.01以上であることを特徴とする。本発明の1実施形態においては、シロキサン、水、並びに水素放出開始剤の上記混合物は、水素放出開始剤/[SiOH2]単位のモル比が0.05~3の間、例えば0.05~0.35の間に含まれることを特徴とする。
【0058】
本発明の1実施形態においては、水素を生成する方法は、式(I)のシロキサン水素担体化合物、水、上記に定義された水素放出開始剤、及び別の触媒の混合物が存在することを特徴とする。式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物の加水分解的酸化の動力学(即ち、水素が放出される速度)を高め、従って水/シロキサン/水素放出開始剤/触媒の反応により対応する水素放出がもたらされる限り、本発明により追加的に使用され得る触媒の種類に関する制限はない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化の動力学を大幅に高める全ゆる化合物を、触媒として有利に使用することができる。本発明の1実施形態においては、シロキサン、水、水素放出開始剤、及び触媒の上記混合物は、[SiOH2]モノマー単位に対する触媒のモル比が0.01~0.5の範囲であることを特徴とする。好ましくは、[SiOH2]モノマー単位に対する触媒Cのモル比は0.02~0.1の範囲である。より好ましくは、[SiOH2]モノマー単位に対する触媒Cのモル比は0.05よりも低く、例えば0.04に等しい。
【0059】
本発明はまた、水素の生成のための、式(I)及び/又は式(II)の選択されたシロキサン水素担体化合物の使用に関する。
【0060】
水/式(I)及び/又は式(II)の水素担体化合物からの水素放出が追加のエネルギーを必要とし得ず、かつ水素産業の要件を満たす限り、本発明による水素生成方法に使用され得る方法に関して制限はない。
【0061】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法の温度は、広範囲に及ぶことができ、特に0℃~200℃の範囲であり得る。より好ましくは、この温度は、15℃~30℃の範囲である。
【0062】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法の圧力は、広範囲に及ぶことができ、特に1×105Pa~500×105Paの範囲であり得る。
【0063】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法は、溶剤の存在を許容し得る。式(I)及び/又は式(II)の水素担体化合物からの水素放出が水素産業の要件を満たす限り、本発明による水素生成方法に使用され得る溶剤の種類に関して制限はない。
【0064】
本発明による1実施形態においては、上記溶剤は、アルコール(例えば、メタノール)、水性溶剤、有機溶剤、及び/又は上記溶剤の2つ以上の混合物から選択される。本発明による水素生成方法の目的のために、上記溶剤は試薬と見なされる。
【0065】
本発明による1実施形態においては、上記溶剤は、ジエチルエーテル、ペンタン、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、又は上記の挙げられた溶剤の2つ以上の混合物から選択される。本発明による1実施形態においては、ジクロロメタンが好ましい。
【0066】
式(II)の環状シロキサン水素担体化合物が主要なシロキサン化学種に相当する場合に(既に本明細書において上記に定義されている)、溶剤と式(II)の環状シロキサン水素担体化合物との間の(反応混合物中の)質量比が1よりも低い、好ましくは0.5よりも低い(溶剤の質量を環状化合物の質量によって割ったもの)ように溶剤の量を制限することが有利である。
【0067】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法は、以下の工程、即ち、a)式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物及び触媒を接触させてシロキサン/触媒混合物を形成する工程と、b)該シロキサンと水素放出開始剤の水溶液とを触媒の存在下で合わせて水素を生成する工程とを含む。工程a)及び工程b)は、連続的に又は同時に行われ得る。
【0068】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物から水素を生成する方法において使用される反応混合物は、
- 式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物、
- 対応するケイ酸塩型の副生成物、
- 水素、
- 水、
- 水素放出開始剤(複数を含む)、並びに、
- 任意の触媒、及び、
- 任意の溶剤が、
上記反応混合物の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、例えば少なくとも99重量%に相当することを特徴とする。
【0069】
1実施形態においては、本発明はまた、本明細書において上記に記載された方法に従って水素を生成するデバイスであって、
- 式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体化合物及び任意の溶剤を含む反応混合物の入口と、
- 水素の出口と、
- 任意に、副生成物の収集器と、
- 任意に、本明細書において上記に記載されたポリマー担持触媒でコーティングされた、上記混合物との接触が意図される表面と、
を備える反応チャンバーを備える、デバイスに関する。
【0070】
液体シロキサンの生成及び液体シロキサンの再生
本明細書において上記で説明したように、本発明の主たる目的は、水素生成から出る副生成物を再循環することにより、環境に優しく、及び/又は実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに、水素担体化合物を生成することと、水素担体化合物を再生することの両方である。
【0071】
従って、本発明は、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要とせずに、及び/又は実質的な炭素排出を伴わずに、好ましくは炭素排出を伴わずに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から、好ましくはシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)から液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法に関する。
【0072】
本発明はまた、シロキサン水素担体化合物(複数を含む)を再生する方法であって、シロキサン水素担体化合物(複数を含む)を加水分解的酸化して水素及びシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(複数を含む)(B)を生成する工程と、上記シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(複数を含む)(B)をシロキサン水素担体化合物、好ましくは同じシロキサン水素担体化合物(複数を含む)に変換する工程とを含み、追加の反応物として水素及び/又は水及び/又はケイ素及び/又は酸素しか必要とせず、及び/又は実質的な炭素排出を伴わず、好ましくは炭素排出を伴わない、方法に関する。
【0073】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物、好ましくは式(I)及び/又は式(II)の液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法であって、以下の連続する工程:
- シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を準備し、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H2SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(formosilicic acid)(HSi(O)(OH))を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を半水素化工程2(e)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を完全水素化工程2(f)に供してシラン(SiH4)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H2SiO)を生成し、又は、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H2SiO)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)を部分的加水分解工程3(f)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、又は、
○ 工程2(e)から得られたジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(c)から得られたシラノン(H2SiO)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)をもって次の工程に直接進み、
- 次に、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H2SiO)を重合(例えば、重付加)工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成し、又は、
○ 工程2(e)及び/又は工程3(d)及び/又は工程3(e)及び/又は工程3(f)から得られたジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)を酸素に媒介される部分的酸化工程4(c)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成することを含む、方法が提供される。
【0074】
ケイ酸塩/シリカ
本発明の1実施形態においては、即ち、ケイ酸塩がシロキサンの生成方法/再生方法の出発材料として選択される場合に、有利には、ケイ酸塩の追加の処理(例えば、溶剤蒸発、酸による化学的処理、熱分解など)を使用してシリカ(SiO2)を得ることができ、そのシリカは、シロキサン法の原材料として使用される。
【0075】
本発明の1実施形態においては、シリカ及び/又はケイ酸塩化合物を追加の機械的処理、例えば、粉砕及び/又は篩別に供した後に、以下の工程、例えば工程2(a)、工程2(b)、工程2(c)、工程2(d)、工程2(e)、又は工程2(f)に供することができるであろう。
【0076】
例示的かつ非限定的な目的のために、
図1~
図8には、シロキサンの生成方法の例が詳説されており、
図9~
図11には個々の方法工程の例が示されている。
【0077】
本発明の1実施形態においては、また、液体シロキサン水素担体化合物、好ましくは式(I)及び/又は式(II)の液体シロキサン水素担体化合物を再生する方法であって、上記シロキサン水素担体化合物(複数を含む)を加水分解的酸化して水素及びシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)を生成し、引き続き、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H2SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を半水素化工程2(e)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を完全水素化工程2(f)に供してシラン(SiH4)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H2SiO)を生成し、又は、
○ 工程2(a)及び/又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H2SiO)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(d)及び/又は工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、及び/又は、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)を部分的加水分解工程3(f)に供してジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を生成し、又は、
○ 工程2(e)から得られたジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(c)から得られたシラノン(H2SiO)をもって次の工程に直接進み、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)をもって次の工程に直接進み、
- 次に、
○ 工程2(c)及び/又は工程3(a)及び/又は工程3(c)から得られたシラノン(H2SiO)を重付加工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を再生し、又は、
○ 工程2(e)及び/又は工程3(d)及び/又は工程3(e)及び/又は工程3(f)から得られたジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を再生し、又は、
○ 工程2(f)から得られたシラン(SiH4)を酸素に媒介される部分的酸化工程4(c)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を再生することを行うことを含む、方法が提供される。
【0078】
本発明による1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物(複数を含む)を再生する上記方法は、再生された液体シロキサン水素担体化合物(複数を含む)が、好ましくは初めの液体シロキサン水素担体化合物(複数を含む)と実質的に同じ、好ましくは全く同じであることを特徴とする。
【0079】
例示的かつ非限定的な目的のために、
図10、
図11には、シロキサン水素担体化合物[H
2SiO]
4から出発するする再生方法の一例が詳説されている。
【0080】
上記の再生されたシロキサン水素担体化合物を本発明による水素生成方法において有利に使用することができ、それによりサイクルの再開が可能となる。
【0081】
水素ベースのエネルギー担体としての本発明によるポリジヒドロシロキサン化合物によってもたらされる大きな利点(中心のケイ素原子に結合した非加水分解性メチル部の存在によるPHMS及びTMDSとは対照的に)は、水素遊離過程の間のそれらの完全な加水分解により、シリカ/ケイ酸塩化合物(複数を含む)(B)が固有にもたらされることであり、上記シリカ/ケイ酸塩化合物(複数を含む)(B)は、環境に優しい及び/又は実質的な炭素排出のない(好ましくは、完全にカーボンフリーな)方法用の直接的な出発材料であり、網羅的に例示された原子経済的な再生方法により正確な出発燃料油を回収することが可能となる。
【0082】
図2に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(a)から得られたシラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0083】
図3に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、そして工程2(c)から得られた上記シラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を半水素化工程2(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(e)又は工程3(e)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0084】
本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を水素化/脱水工程2(c)に供してシラノン(H2SiO)を生成し、そして、
○ 工程2(c)から得られた上記シラノン(H2SiO)を重付加(重合)工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0085】
図4に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程2(d)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(d)から得られたジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0086】
図5に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を部分的水素化工程2(d)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程2(d)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生するか、又は、
○ 工程3(c)から得られたシラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(e)から得られた上記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生するか、
の何れかを行うこと、
を含む。
【0087】
図6に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水素化工程3(a)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、
- 次に、
○ 工程3(a)から得られたシラノン(H
2SiO)を水和工程3(e)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(e)から得られた上記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0088】
図7に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化工程3(d)に供してジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を生成し、そして工程3(d)から得られた上記ジヒドロキシシラン(H
2Si(OH)
2)を重縮合工程4(b)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0089】
図8に例示される本発明の1実施形態においては、液体シロキサン水素担体化合物を生成する方法又は再生する方法は、以下の連続する工程:
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元工程2(a)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、又は、
○ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を元素ケイ素に媒介される不均化工程2(b)に供して一酸化ケイ素(SiO)を生成するか、
の何れかを行い、
- 次に、
○ 工程2(a)又は工程2(b)から得られた一酸化ケイ素(SiO)を水和工程3(b)に供して蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を生成し、
- 次に、
○ 工程3(b)から得られた蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))を水素化及び脱水工程3(c)に供してシラノン(H
2SiO)を生成し、そして工程3(c)から得られた上記シラノン(H
2SiO)を重付加工程4(a)に供して上記液体シロキサン水素担体化合物を生成又は再生すること、
を含む。
【0090】
工程2(a)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の還元による一酸化ケイ素(SiO)の形成
シリカ/ケイ酸塩型の生成物を還元して一酸化ケイ素(SiO)を形成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。本発明による1実施形態においては、上記還元は1段階で行われる。本発明による1実施形態においては、上記還元は高温で、例えば1500℃を上回る高温で行われる。
【0091】
例えば、本発明の1実施形態においては、以下の式:SiO2+H2→SiO+H2Oによって例示されるように、シリカ/ケイ酸塩化合物を水素ガスの存在下で還元してSiOを生成する。
【0092】
水素に加えて、他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。気相中で、例えばプラズマジェット中で両方の反応物を用いるか、又は不均一系の様式において、例えば流動床反応器中で固体シリカ/ケイ酸塩化合物を水素ガスと反応させることによるかの何れかで、反応を実施することができる。
【0093】
気相中での反応が好ましい。H2/SiO2のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。1実施形態においては、冷却源を使用して、所望の化学種をトラップすることもできる。全ゆる適切な冷却源、例えば、水冷却器、油冷却器、塩水冷却器、特殊熱交換器などを選択することができる。有利には、他の工程から熱を回収して、反応器を加熱し、及び/又はプラント設備を加熱し、及び/又は発電することなどができる。化合物SiOをもたらすこの工程2(a)による主反応に加えて、他の化合物、例えばH2SiO、及び/又はHSi(O)(OH)、及び/又はH2Si(OH)2、及び/又はSiH4、及び/又はSiも生成され得る。Siの生成は、副反応、即ち、次の式:SiO2+2H2→Si+2H2Oで例示されるように、元素ケイ素をもたらす完全な還元反応によって表される副反応と見なされる。上記Siは、生成された場合に、以下の不均化工程2(b)において有利に使用され得る。
【0094】
工程2(b)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の元素ケイ素に媒介される不均化による一酸化ケイ素(SiO)の形成
不均化工程2(b)によりSiOを生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。
【0095】
例えば、本発明による1実施形態においては、工程2(b)は、以下の式:SiO2+Si→2SiOによって例示されるように、シリカ/ケイ酸塩化合物を元素ケイ素の存在下で還元してSiOを生成することにある。
【0096】
Si/SiO2のモル比は、好ましくは0.5~1.5の間、例えば0.9~1.1の間に含まれる。全ゆる元素ケイ素源、例えば冶金グレードのケイ素、光電池グレードのケイ素、又はエレクトロニクスグレードのケイ素を使用することができる。本発明による1実施形態においては、以下の式:SiO2+2H2→Siによって例示されるように、元素ケイ素は、好ましくはシリカ/ケイ酸塩化合物の水素による完全な還元によって生成される。
【0097】
本発明による1実施形態においては、SiO2/Si混合物に触媒を添加して、上記不均化を促進することができる。全ゆる適切な触媒、例えば金属、鉱石、又は有機化合物を使用して、上記不均化を促進することができる。
【0098】
本発明による1実施形態においては、SiO2/Si混合物に添加剤を添加して、上記不均化を促進することができる。例えば、有機結合剤、充填剤などを使用することができる。本発明による1実施形態においては、上記不均化は高温で、例えば1500℃を上回る高温で行われる。
【0099】
本発明による1実施形態においては、上記不均化は還元雰囲気下で、例えば水素ガスの存在下で行われる。
【0100】
他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。この反応は吸熱性であるため、好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。
【0101】
工程2(c)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の水素化及び脱水によるシラノン(H2SiO)の形成
工程2(c)の水素化及び脱水によりH2SiOを生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程2(c)は、以下の式:SiO2+2H2→H2SiO+H2Oによって例示されるように、水素ガスの付加及びシリカ/ケイ酸塩化合物の脱酸素によりH2SiOを生成することにある。H2/SiO2のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間、例えば2~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、上記水素化は高温で、例えば1500℃を上回る高温で行われる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。
【0102】
他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。この反応は吸熱性であるため、好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。水素ガスによるシリカ/ケイ酸塩化合物の水素化/脱水反応は、副生成物として水を生成する。形成された水は、有利には、反応領域から連続的に除去され得る。形成された水を他の工程、例えば工程3(b)、工程3(e)、及び/又は工程3(f)の化学的反応物として及び/又は他の用途のための加熱源として有利に使用することができ、及び/又はそれを電気分解装置において変換して水素ガスを改質することができ、及び/又はそれを使用して蒸気タービンを動かすことで発電することができる。H2SiO化学種を、低温、例えば摂氏0度以下の温度で有利に単離することができる。H2SiO化学種は、他の化学種、例えばHSi(OH)のシス異性体及びトランス異性体と平衡状態にあり得る。化合物H2SiOをもたらすこの工程2(c)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO、及び/又はHSi(O)(OH)、及び/又はH2Si(OH)2、及び/又はSiH4、及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0103】
工程2(d)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の部分的水素化による蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))の形成
工程2(d)の部分的水素化により(HSi(O)(OH))を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程2(d)は、以下の式:SiO2+H2→HSi(O)(OH)によって例示されるように、シリカ/ケイ酸塩化合物へと水素ガスを付加して(HSi(O)(OH))を生成することにある。H2/SiO2のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、上記水素化は、高温で、例えば1500℃を上回る高温で行われる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。
【0104】
他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。この反応は吸熱性であるため、好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。(HSi(O)(OH))化学種を、低温、例えば摂氏0度以下の温度で有利に単離することができる。
【0105】
化合物HSi(O)(OH)をもたらすこの工程2(d)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO、及び/又はH2SiO、及び/又はH2Si(OH)2、及び/又はSiH4、及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0106】
工程2(e)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の半水素化によるジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)の形成
工程2(e)の水素化(即ち、半水素化)により(H2Si(OH)2)を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程2(e)は、以下の式:SiO2+2H2→H2Si(OH)2によって例示されるように、シリカ/ケイ酸塩化合物を水素ガスにより水素化して(H2Si(OH)2)を生成することにある。H2/SiO2のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間、例えば2~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、上記水素化は高温で、例えば1500℃を上回る高温で行われる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。この反応は吸熱性であるため、好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。
【0107】
化合物H2Si(OH)2をもたらすこの工程2(e)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO、及び/又はH2SiO、及び/又はHSi(O)(OH)、及び/又はSiH4、及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0108】
工程2(f)-シリカ/ケイ酸塩型の生成物の完全水素化によるシラン(SiH4)の形成
工程2(f)の完全水素化により(SiH4)を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程2(f)は、以下の式:SiO2+4H2→SiH4+2H2Oによって例示されるように、シリカ/ケイ酸塩化合物の水素ガスに支援される脱酸素によりSiH4を生成することにある。形成された水は、有利には、反応領域から連続的に除去され得る。形成された水を、他の工程、例えば工程3(b)、工程3(e)、及び/又は工程3(f)の化学的反応物として及び/又は他の用途のための加熱源として有利に使用することができ、及び/又はそれを電気分解装置において変換して水素ガスを改質することができ、及び/又はそれを使用して蒸気タービンを動かすことで発電することができる。
【0109】
H2/SiO2のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば4~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。この反応は吸熱性であるため、好ましくは、熱源が使用される。全ゆる熱源、例えば、熱油、スチーム、電気アーク技術、誘導加熱、マイクロ波、熱フィラメント、プラズマ技術を選択することができる。本発明による1実施形態においては、シリカ/ケイ酸塩型の生成物の電界の形での励起を適用して、水素化を促進することができる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。化合物SiH4をもたらすこの工程2(f)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO、及び/又はH2SiO、及び/又はHSi(O)(OH)、及び/又はH2Si(OH)2、及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0110】
工程3(a)-SiOの水素化によるシラノン(H2SiO)の形成
水素化工程3(a)によりH2SiOを生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(a)は、以下の式:SiO+H2→H2SiOによって例示されるように、SiOへの水素ガスの酸化的付加によりH2SiOを生成することにある。本発明による1実施形態においては、反応は気相中で行われる。H2/SiOのモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。H2SiO化学種は、他の化学種、例えばHSi(OH)のシス異性体及びトランス異性体と平衡状態にあり得る。化合物H2SiOをもたらすこの工程3(a)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiH4及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0111】
工程3(b)-SiOの水和による蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))の形成
加水分解工程3(b)によりHSi(O)(OH)を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(b)は、以下の式:SiO+H2O→HSi(O)(OH)によって例示されるように、SiOへの水の酸化的付加によりHSi(O)(OH)を生成することにある。本発明による1実施形態においては、反応は気相中で行われる。H2O/SiOのモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水和の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素又は水素などの不活性ガスを任意に使用することができる。化合物HSi(O)(OH)をもたらすこの工程3(b)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO2も生成され得る。上記SiO2は、生成された場合に、有利には前の工程2(a)、工程2(b)、工程2(c)、工程2(d)、工程2(e)、及び/又は工程2(f)において使用され得る。
【0112】
工程3(c)-蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))の水素化及び脱水工程3(c)によるシラノン(H2SiO)の生成
水素化及び脱水工程3(c)によりH2SiOを生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(c)は、以下の式:HSi(O)(OH)+H2→H2SiO+H2Oによって例示されるように、蟻ケイ酸への水素ガスの付加及び蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))の水素ガスによる脱酸素によりH2SiOを生成することにある。形成された水は、有利には、反応領域から連続的に除去され得る。形成された水を、他の工程、例えば工程3(b)、工程3(e)、及び/又は工程3(f)の化学的反応物として及び/又は他の用途のための加熱源として有利に使用することができ、及び/又はそれを電気分解装置において変換して水素ガスを改質することができ、及び/又はそれを使用して蒸気タービンを動かすことで発電することができる。本発明による1実施形態においては、反応は気相中で行われる。
【0113】
H2/HSi(O)(OH)のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。化合物H2SiOをもたらすこの工程3(c)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiH4及び/又はH2Si(OH)2及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0114】
工程3(d)-蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))の水素化工程3(d)によるジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)の生成
水素化工程3(d)によりH2Si(OH)2を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(d)は、以下の式:HSi(O)(OH)+H2→H2Si(OH)2によって例示されるように、蟻ケイ酸(HSi(O)(OH))への水素ガスの付加によりH2Si(OH)2を生成することにある。本発明による1実施形態においては、反応は気相中で行われる。H2/HSi(O)(OH)のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば1~50の間に含まれる。本発明による1実施形態においては、触媒、例えば金属、担体上に固定化された金属、鉱物、又は有機化合物を使用して、上記水素化の性能を増強することができる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。化合物H2Si(OH)2をもたらすこの工程3(d)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiH4及び/又はSiも生成され得る。上記Siは、生成された場合に、有利には前の不均化工程2(b)において使用され得る。
【0115】
工程3(e)-シラノン(H2SiO)の水和工程3(e)によるジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)の生成
水和工程3(e)によりH2Si(OH)2を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(e)は、以下の式:H2SiO+H2O→H2Si(OH)2によって例示されるように、シラノン(H2SiO)への水の付加によりH2Si(OH)2を生成することにある。本発明による1実施形態においては、反応は気相中で行われる。H2O/H2SiOのモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば0.5~50の間、例えば1~50の間に含まれる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素又は水素などの不活性ガスを任意に使用することができる。
【0116】
工程3(f)-シラン(SiH4)の部分的加水分解工程3(f)によるジヒドロキシシラン(H2Si(OH)2)の生成
加水分解工程3(f)によりH2Si(OH)2を生成するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。例えば、本発明による1実施形態においては、工程3(e)は、以下の式:SiH4+2H2O→H2Si(OH)2+2H2によって例示されるように、シラン(SiH4)の部分的加水分解によりH2Si(OH)2を生成することにある。H2O/SiH4のモル比は、好ましくは0.1~1000の間、例えば2~50の間に含まれる。他のガス(複数を含む)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスを任意に使用することができる。化合物H2Si(OH)2をもたらすこの工程3(f)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO2も生成され得る。上記SiO2は、生成された場合に、有利には前の工程2(a)、工程2(b)、工程2(c)、工程2(d)、工程2(e)、及び/又は工程2(f)において使用され得る。
【0117】
工程4(a)-H2SiOからのシロキサン水素担体化合物の生成/再生
H2SiOからのシロキサン水素担体化合物を生成/再生するために、全ゆる適切な方法を使用することができる。本発明による1実施形態においては、H2SiOを重合(重付加)して、シロキサン水素担体化合物を生成/再生する方法が提供される。反応が発熱性であるため、冷却源が有利に使用され得る。全ゆる冷却源、例えば、水冷却器、油冷却器、塩水冷却器、特殊熱交換器などを選択することができる。有利には、他の工程から回収された熱を回収して、反応器を加熱し、及び/又はプラント設備を加熱し、及び/又は発電することなどができる。
【0118】
工程4(b)-H2Si(OH)2からのシロキサン水素担体化合物の生成/再生
本発明による1実施形態においては、H2Si(OH)2を重縮合して、シロキサン水素担体化合物を生成/再生する方法が提供される。重縮合反応により、副生成物として水が生成される。形成された水は、有利には、反応領域から連続的に除去され得る。形成された水を、前の工程(複数を含む)、例えば工程3(b)、工程3(e)、及び/又は工程3(f)の化学的反応物として有利に使用することができ、及び/又はそれを電気分解装置において変換して、例えば水素ガスを改質することができる。反応が発熱性であるため、冷却源が有利に使用され得る。全ゆる冷却源、例えば、水冷却器、油冷却器、塩水冷却器、特殊熱交換器などを選択することができる。有利には、他の工程から回収された熱を回収して、反応器を加熱し、及び/又はプラント設備を加熱し、及び/又は発電することなどができる。
【0119】
工程4(c)-SiH4からのシロキサン水素担体化合物の生成/再生
本発明による1実施形態においては、酸素に媒介されるシランの部分的酸化によりシロキサン水素担体化合物を生成/再生する方法が提供される。この反応により、副生成物として水が生成される。形成された水は、有利には、反応領域から連続的に除去され得る。形成された水を、前の工程、例えば工程3(b)、工程3(e)、及び/又は工程3(f)の化学的反応物として有利に使用することができ、及び/又はそれを電気分解装置において変換して、例えば水素ガスを改質することができる。反応が発熱性であるため、冷却源が有利に使用され得る。全ゆる冷却源、例えば、水冷却器、油冷却器、塩水冷却器、特殊熱交換器などを選択することができる。有利には、他の工程から回収された熱を回収して、反応器を加熱し、及び/又はプラント設備を加熱し、及び/又は発電することなどができる。シロキサン水素担体化合物をもたらすこの工程4(c)による主反応に加えて、他の化合物、例えばSiO2も生成され得る。上記SiO2は、生成された場合に、有利には前の工程2(a)、工程2(b)、工程2(c)、工程2(d)、工程2(e)、及び/又は工程2(f)において使用され得る。
【0120】
溶剤での洗浄、ガスストリッピング、乾燥工程又は蒸留工程などの最終処理工程を有利に実施することができる。
【0121】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体の生成方法全体によって必要とされるエネルギー消費量は、生成される1kgのシロキサン当たり1kWh~200kWhの間、例えば、生成される1kgのシロキサン当たり1kWh~35kWhの間に含まれ得る。
【0122】
本発明による1実施形態においては、式(I)及び/又は式(II)のシロキサン水素担体の再生方法全体によって必要とされるエネルギー消費量は、遊離される1kgのH2当たり1kWh~2000kWhの間、例えば、遊離される1kgのH2当たり1kWh~400kWhの間に含まれ得る。
【0123】
本明細書に含まれる以下の用語及び表現は、以下のように定義される:
- 水素担体は、水素原子を含み、必要なときに分子の二水素(H2)として容易に放出可能である固体状態又は液体状態の何れかの材料である。
【0124】
本発明により、特許請求の範囲に記載の本発明の適用分野から離れることなく、他の多くの特定の形態の下で実施形態が可能となることは、当業者には明らかであるはずである。従って、本実施形態は例示として見なされるべきであって、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲まで変更されてもよく、本発明は上記の詳細に限定されるべきではない。